説明

空調用ルーバ

【課題】 空調装置から空調ダクトを介して供給される調和空気を吹出口から効率よく吹出すことにより、居住空間における作業環境を良好にする。
【解決手段】 ルーバ底部12の上側に取付けられるカバー部18には、前向きに開口した吹出口21を設け、このカバー部18の内カバー19内の空間部19Jには、流入口16から空間部19J内に上向きに流入する調和空気の風向きを変更して吹出口21に向けて流通させる風向き変更片26〜29を設ける構成としている。また、吹出口21には、調和空気の吹出し方向を上,下に可変に調整するフィン22,23,24を設ける。従って、ルーバ底部12の流入口16から流入した調和空気は、風向き変更片26〜29によって吹出口21に向けて流通するから、フィン22,23,24の角度に関係なく、吹出口21から居住空間に吹出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置の室内機から供給される調和空気を居住空間に吹出すのに用いて好適な空調用ルーバに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車、各種作業機械、飛行機等ように、居住空間に乗込んで操作を行うものは、その居住空間における作業環境を良好にするために、温度等を調整した調和空気を吐出する空調装置を備えている。この空調装置が調和空気を吐出する吐出口には空調ダクトが接続され、該空調ダクトの先端側には、調和空気を居住空間に向けて吹出すための空調用ルーバが設けられている。
【0003】
この空調用ルーバは、下方から上方に向けて調和空気が流入する流入口を有するルーバ底部と、該ルーバ底部の上側に取付けられ背面側が閉塞され内部に空間部を画成するカバー部と、該カバー部の背面と反対側に位置するように前向きに開口して設けられ調和空気を居住空間に吹出す吹出口と、該吹出口に設けられ調和空気の吹出し方向を可変に調整するフィンとにより大略構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これにより、空調装置を運転したときには、空調ダクトを通じて空調用ルーバに調和空気を供給することができる。そして、ルーバ底部の流入口から上向きに流入した調和空気は、カバー部に前向きに開口した吹出口から居住空間に流出させることができる。この吹出口から調和空気を流出させるときに、吹出口に設けたフィンの角度を調整することにより、調和空気の吹出し方向を上,下方向に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−175156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1によるものでは、調和空気の吹出口に上,下方向に回動可能にフィンを設けているから、このフィンの角度を調整することにより、上方から下方までの広い範囲で目標とする高さ位置に合わせて調和空気を吹出すことができる。
【0007】
ここで、空調ダクトから流入口を通じてカバー部内に流入する調和空気は、下方から上方に向けて流通するから、フィンを上向きに回動させた状態では、上向きに流通する調和空気がフィンに対して鋭角に当たることになる。従って、フィンに当たった調和空気は、そのままフィンに沿って吹出口から吹出すことができる。
【0008】
しかし、フィンを下向きに回動させたときには、上向きに流通する調和空気がフィンに対して鈍角に当たることになる。この場合には、フィンに当たった調和空気がカバー部内に戻ってしまうから、効率よく調和空気を吹出すことができないという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、空調装置から空調ダクトを介して供給される調和空気を吹出口から効率よく吹出すことができ、居住空間における作業環境を良好にできるようにした空調用ルーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による空調用ルーバは、下方から上方に向けて調和空気が流入する流入口を有するルーバ底部と、該ルーバ底部の上側に取付けられ背面側が閉塞され内部に空間部を画成するカバー部と、該カバー部の背面と反対側に位置するように前向きに開口して設けられ調和空気を居住空間に吹出す吹出口と、該吹出口に設けられ調和空気の吹出し方向を可変に調整するフィンとからなる。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記カバー部内の空間部には、前記流入口から前記空間部内を上向きに流入する調和空気を前記吹出口に向けて風向きを変える風向き変更片を設ける構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記風向き変更片は、前記ルーバ底部から上方に延びた状態で複数本立設する構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記風向き変更片は、その基端側が前記ルーバ底部に取付けられ、中間部が前記空間部内を上側に延び、先端側が前記吹出口に向け傾斜して延びる構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記カバー部は、内部に前記空間部を画成する内カバーと、該内カバーを外側から覆うように重ねて設けられた外カバーとにより形成し、前記吹出口は、前記内カバーの開口と外カバーの開口とを重ね合わせることにより形成し、前記フィンは、その側方位置に設けた支持ピンを前記内カバーと外カバーとの間に挟むことにより前記カバー部に回動可能に取付ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、風向き変更片は、流入口からカバー部の空間部内を上向きに流入する調和空気の風向きを変更することにより、この調和空気をカバー部に前向きに開口した吹出口に向け流通させることができる。従って、吹出口に向かって流れる調和空気は、吹出口に設けたフィンを下側に向けた場合でも、このフィンに対して鋭角に当たることになる。これにより、調和空気をフィンに沿わせるようにして吹出口から居住空間に吹出すことができる。
【0016】
この結果、調和空気は、風向き変更片による風向きの変更によって吹出口に向けて流通させることができ、フィンの角度に拘わらず、居住空間に無駄なく供給することができる。これにより、調和空気を居住空間に効率よく吹出すことができるから、居住空間における作業環境を良好にすることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、風向き変更片は、ルーバ底部から上方に延びるように形成することができる。この風向き変更片を複数本立設することにより、流入口から上向きに流入する調和空気の風向きを、複数本の風向き変更片によって効果的に変更することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、風向き変更片は、その基端側によってルーバ底部に取付けることができる。また、風向き変更片の中間部は、空間部内を上側に延びて形成しているから、調和空気の流れを邪魔することなく、上向きに流通させることができる。さらに、風向き変更片の中間部に沿って上側に流れた調和空気は、風向き変更片の先端側の傾斜によって吹出口に向けて風向きを変えることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、重ねられる内カバーと外カバーとを利用し、フィンの側方位置に設けた支持ピンを挟むことにより、吹出口の位置に該フィンを回動可能に取付けることができる。また、内カバーと外カバーとを重ね合わせることにより、それぞれの開口を利用して吹出口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】キャブ内の構造を図1中の矢示II−II方向からみた横断面図である。
【図3】キャブボックスを取外して運転席、フロア部材、運転席、空調ダクト、空調用ルーバ等を示す外観斜視図である。
【図4】本実施の形態による空調用ルーバを単体で拡大して示す外観斜視図である。
【図5】空調用ルーバを拡大して示す断面図である。
【図6】空調用ルーバを分解した状態で示す分解断面図である。
【図7】1個の部品として一体成形されたルーバ底部と各風向き変更片とを示す外観斜視図である。
【図8】図7に示すルーバ底部と各風向き変更片との平面図である。
【図9】上段フィンを単体で拡大して示す正面図である。
【図10】中段フィンを単体で拡大して示す正面図である。
【図11】下段フィンを単体で拡大して示す正面図である。
【図12】連結レバーを単体で拡大して示す正面図である。
【図13】変形例による空調用ルーバを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る空調用ルーバを建設機械としての油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図12に従って詳細に説明する。
【0022】
図1において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械の代表例である油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0023】
5は上部旋回体3の左前側に設けられたキャブで、該キャブ5内は、オペレータが搭乗して各種操作を行うための居住空間となっている。キャブ5は、図2に示す如く、後述するフロア部材6とキャブボックス7とにより構成されている。
【0024】
6はキャブ5の床面を構成するフロア部材で(図2、図3参照)、該フロア部材6は、前,後方向に長尺な長方形状の板体として形成されている。また、フロア部材6のほぼ中央位置には後述の運転席8が設けられている。
【0025】
7はフロア部材6と共にキャブ5を構成するキャブボックスで、該キャブボックス7は、フロア部材6上にオペレータの居住空間を画成するものである。このキャブボックス7には、作業時の視界を確保するための前窓7A、右窓7B等を有し、左側にはオペレータが出入りする乗降口を開閉するドア7Cが設けられている。
【0026】
8はキャブ5内に位置してフロア部材6上に設けられた運転席で、該運転席8は、居住空間に搭乗したオペレータが着座するものである。また、運転席8の後側には、後述する空調装置の室内機9が配設されている。
【0027】
9は運転席8の後側に位置してフロア部材6上に設けられた空調装置の室内機を示している。この室内機9は、所望の温度に調整した冷風または温風を調和空気としてキャブ5内の居住空間に供給することにより、該キャブ5内をオペレータが望む温度環境に調整するものである。また、室内機9は、電動式の送風ファン、冷風を発生するエバポレータ、温風を発生するヒータコア、風向を切換える切換板(いずれも図示せず)等を内蔵している。室内機9はエンジン側に設けられるコンデンサ、コンプレッサ等からなる空調装置の室外機(いずれも図示せず)と接続されている。
【0028】
10はキャブ5内の右端に設けられた空調ダクトで、該空調ダクト10は、図3に示すように、室内機9から供給される調和空気を居住空間の所望の位置まで導くものである。空調ダクト10は、基端側が室内機9の調和空気の吐出口に接続され、先端側がフロア部材6の右側を前側に延びると共に前側位置で屈曲して上側に延びたダクト本体10A(点線で図示)と、該ダクト本体10Aを覆うように設けられた略L字状のダクトカバー10Bと、該ダクトカバー10Bの足元位置に設けられた足元吹出口10Cとにより大略構成されている。また、ダクト本体10Aの先端部(ダクトカバー10Bの前側上部)には後述の空調用ルーバ11が設けられている。
【0029】
次に、本実施の形態による空調用ルーバ11の構成について、図3ないし図12を参照しつつ説明する。
【0030】
図3において、11は空調ダクト10のダクト本体10Aの先端部(ダクトカバー10Bの前側上部)に設けられた空調用ルーバを示している。この空調用ルーバ11は、空調装置の室内機9から空調ダクト10を通じて供給される調和空気を、キャブ5内の居住空間に吹出すものである。このときに、空調用ルーバ11は、調和空気の吹出し方向を左,右方向(水平方向)と上,下方向(垂直方向)とに可変に調整することができる。ここで、空調用ルーバ11の構成を説明するのに際し、図5、図6の左側を後側または背面側とし、その反対側を前側として説明するものとする。
【0031】
そして、空調用ルーバ11は、図4ないし図6に示すように、空調ダクト10のダクト本体10Aの先端部に接続される後述のルーバ底部12と、該ルーバ底部12の上側に取付けられたカバー部18と、該カバー部18の前側に開口して設けられ調和空気を居住空間に吹出す吹出口21と、該吹出口21に設けられ調和空気の吹出し方向を上,下方向で可変に調整する3枚のフィン22,23,24と、カバー部18内に流入する調和空気を前記吹出口21に向け風向きを変える風向き変更片26〜29とにより大略構成されている。
【0032】
12は空調用ルーバ11の底部側を形成するルーバ底部で、該ルーバ底部12は、空調用ルーバ11を空調ダクト10に取付ける基部を構成するものである。そして、ルーバ底部12は、図7、図8に示す如く、前側が広幅となる略D字状の外形をもった環状の底板部13と、該底板部13の周囲から上側に突出した周縁部14と、前記底板部13の内周側から下側に突出した短尺な円筒状の嵌合筒部15と、前記底板部13と嵌合筒部15の内周側に形成された流入口16と、該流入口16に設けられたメッシュ部17とにより大略構成されている。なお、ルーバ底部12は、後述の風向き変更片26〜29と一緒に、例えば樹脂材料を用いた射出成形によって1個の部品として一体成形されている。
【0033】
ここで、底板部13の前側位置には、後述するねじ部材30が挿通されるねじ挿通孔13Aが上,下方向に貫通して設けられている。また、周縁部14の前側には、後述する外カバー20の係合爪20Gが係合する係合溝14Aが設けられ、後側には、外カバー20の係合突起20Hが係合する係合爪14Bが設けられている。
【0034】
嵌合筒部15は、空調ダクト10のダクト本体10Aの先端部または該ダクト本体10Aの先端部と接続可能なダクトカバー10Bの上部に対し回動可能に嵌合するものである。この嵌合筒部15には、空調ダクト10に対して嵌合したときに、水平方向の回動を許しつつ抜止めする爪部15Aが1箇所または周方向の複数箇所に設けられている。
【0035】
また、流入口16は、上,下方向を軸線とする貫通孔をなし、これにより、空調ダクト10を介して供給される調和空気は、流入口16を通って下方から上方に向けてほぼ垂直方向に流通することになる。
【0036】
さらに、流入口16内に設けられたメッシュ部17は、図7、図8に示すように、空調ダクト10のダクト本体10A内に硬貨、紙屑等の異物が侵入するのを防止するものである。メッシュ部17は、大きな開口面積を確保できるように六角形状の通気孔17Aを隣接して多数個並べることにより、所謂ハニカム形状に形成されている。このメッシュ部17上には、後述の風向き変更片26〜29が立設されている。
【0037】
18はルーバ底部12の上側に取付けられたカバー部を示している。このカバー部18は、後述の内カバー19と外カバー20とを重ね合わせることにより二重構造として形成されている。
【0038】
まず、内カバー19は、図4、図6に示すように、中央付近が最も高くなる凸球面状に形成され、閉塞された後側が背面部19Aとなり、該背面部19Aと反対側の前側が頂部から裾部までほぼ直線状(平面状)延びた斜面部19Bとなっている。また、斜面部19Bには、例えば上側が円弧状をなし、下側が矩形状をなした略D字状の開口19Cが形成されている。この開口19Cの左,右方向の側辺部に対応する位置には、後述する外カバー20の上段切欠き部20D、中段切欠き部20E、下段切欠き部20Fに対応するように、上,下方向に間隔をもって上段押え部19D、中段押え部19E、下段押え部19Fが形成されている。
【0039】
また、内カバー19の前側には、ルーバ底部12を構成する底板部13のねじ挿通孔13Aに対応する位置にねじ穴19Gが形成され、後側には、外カバー20の係合爪20Jに係合する係合段部19Hが設けられている。ここで、凸球面状に形成された内カバー19内には空間部19Jが画成され、この空間部19Jには後述の風向き変更片26〜29が配置されている。
【0040】
外カバー20は、内カバー19の外面に密着するように設けられ、該内カバー19とほぼ同様の形状で該内カバー19よりも僅かに大きく形成されている。即ち、外カバー20は、後側が背面部20Aとなり、反対側の前側が斜面部20Bとなり、該斜面部20Bには略D字状の開口20Cが形成されている。また、開口20Cの左,右の側辺部には、前述した内カバー19の上段押え部19D、中段押え部19E、下段押え部19Fに対向するように、上段切欠き部20D、中段切欠き部20E、下段切欠き部20Fが形成されている。
【0041】
一方、ルーバ底部12に取付けられる外カバー20の下部には、その前側に位置してルーバ底部12を構成する周縁部14の係合溝14Aに係合する係合爪20Gが設けられ、背面側には、周縁部14の係合爪14Bが係合する係合突起20Hが設けられている。さらに、係合突起20Hよりも上側には、内カバー19の係合段部19Hと係合する係合爪20Jが設けられている。
【0042】
21はカバー部18の背面と反対側に位置するように前向きに開口して設けられた吹出口である。この吹出口21は、内カバー19の開口19Cと外カバー20の開口20Cとを重ね合わせることにより、例えば上側が円弧状をなし、下側が矩形状をなした略D字状の開口として形成されている。そして、吹出口21は、空調ダクト10から空調用ルーバ11内に流入した調和空気を居住空間に吹出すもので、ルーバ底部12の流入口16による調和空気の流れ方向(略垂直方向)と異なる横向き(略水平方向)に開口して設けられている。また、吹出口21は、後述の各フィン22,23,24が設けられている。
【0043】
22は吹出口21の上側部分を閉塞するように回動可能に設けられた上段フィンで、該上段フィン22の左,右方向の端縁には、図9に示すように、上,下方向の中間部に位置して回動支点となる支持ピン22Aが左,右方向に突出して設けられている。また、各支持ピン22Aの先端部には、後述の中段フィン23と下段フィン24と連動して回動するための連動腕22Bが支持ピン22Aの径方向に延びて設けられている。上段フィン22の内側面には、上,下方向に延びるようにして板状のリブ22Cが立設されている。さらに、上段フィン22は、各支持ピン22Aが内カバー19の上段押え部19Dと外カバー20の上段切欠き部20Dとの間に回動可能に支持されることにより、各支持ピン22Aを中心にして回動することができる。
【0044】
23は吹出口21の上,下方向の中間部分を閉塞するように回動可能に設けられた中段フィンで、該中段フィン23は、上段フィン22の下側に配置された左,右方向に長尺な長方形状の板体からなっている。また、図10に示すように、中段フィン23には、前述した上段フィン22とほぼ同様に、左,右方向の端縁に回動支点となる支持ピン23Aが設けられ、該各支持ピン23Aの先端部に連動腕23Bが設けられ、内側に位置する面にリブ23Cが立設されている。さらに、中段フィン23は、各支持ピン23Aが内カバー19の中段押え部19Eと外カバー20の中段切欠き部20Eとの間に回動可能に支持されることにより、各支持ピン23Aを中心にして回動することができる。
【0045】
24は吹出口21の下側部分を閉塞するように回動可能に設けられた下段フィンで、該下段フィン24は、中段フィン23の下側に配置された左,右方向に長尺な長方形状の板体からなっている。また、図11に示すように、下段フィン24には、前述した上段フィン22とほぼ同様に、左,右方向の端縁に回動支点となる支持ピン24Aが設けられ、該各支持ピン24Aの先端部に連動腕24Bが設けられ、内側に位置する面にリブ24Cが立設されている。さらに、下段フィン24は、各支持ピン24Aが内カバー19の下段押え部19Fと外カバー20の下段切欠き部20Fとの間に回動可能に支持されることにより、各支持ピン24Aを中心にして回動することができる。
【0046】
25は各フィン22,23,24の左,右両側に設けられた連結部材(片方のみ図示)で、該連結部材25は、図12に示すように、長板からなり、長さ方向に間隔をもって3個の取付孔25A,25B,25Cが形成されている。そして、連結部材25の取付孔25Aには上段フィン22の連動腕22Bが回動可能に取付けられ、取付孔25Bには中段フィン23の連動腕23Bが回動可能に取付けられ、取付孔25Cには下段フィン24の連動腕24Bが回動可能に取付けられている。これにより、各連結部材25は、3枚のフィン22,23,24の回動動作(開閉動作)を連動させることができる。
【0047】
26〜29はカバー部18内に設けられた本実施の形態の特徴部分である複数本の風向き変更片を示している。この風向き変更片26〜29は、図5に示すように、ルーバ底部12の流入口16から空間部19J内を上向きに流入する調和空気を吹出口21に向けて風向きを変えるものである。ここで、風向き変更片26〜29は、ルーバ底部12から上方に延びた状態で複数本立設され、具体的には、図7、図8に示すように、前,後方向に4列で、前側から2本、1本、2本、1本の順で合計6本設けられている。この風向き変更片26〜29の本数と配置形態は、メッシュ部17の通気孔17Aの大きさ、配置または取付けられる部材の構造等により変更されるもので、この本数、形状、配置に限定されるものではない。
【0048】
6本の風向き変更片26〜29のうち、最前部(第1列)に位置する2本の風向き変更片26は、メッシュ部17の前側寄りに位置する通気孔17Aの位置に配置されている。この風向き変更片26は、下側の基端部26Aが通気孔17Aの周囲に固着され、中間部26Bが基端部26Aから空間部19J内を上側に延び、先端部26Cが中間部26Bの上部から吹出口21に向け傾斜して延びている。
【0049】
ここで、前記基端部26Aと中間部26Bは、前側が開口するように上,下方向(鉛直方向)に延びた半円筒体として形成されている。これにより、半円筒体からなる基端部26Aと中間部26Bは、メッシュ部17の通気孔17Aの周囲に設けることができ、該通気孔17Aの調和空気の流れを邪魔することなく、この調和空気を先端部26Cに向けて流通させることができる。
【0050】
また、先端部26Cは、例えば吹出口21(閉じた状態の各フィン22,23,24)に対してほぼ直交するような角度をもって横向きに傾斜して延びている。これにより、先端部26Cは、通気孔17Aから基端部26A、中間部26Bに沿って上向きに流れる調和空気の流れの向き(風向き)を変え、調和空気を前側に開口した吹出口21(各フィン22,23,24)に向けて流通させることができる。
【0051】
次に、風向き変更片26の後側に位置する第2列の風向き変更片27は、その高さ寸法が第1列の風向き変更片26の高さ寸法よりも高く設定されている以外は、ほぼ同様に形成されている。即ち、第2列の風向き変更片27は、基端部27A、中間部27Bおよび先端部27Cにより構成されている。
【0052】
風向き変更片27の後側に位置する第3列の風向き変更片28は、その高さ寸法が第2列の風向き変更片27の高さ寸法よりも高く設定されている以外は、ほぼ同様に形成されている。即ち、第3列の風向き変更片28は、基端部28A、中間部28Bおよび先端部28Cにより構成されている。
【0053】
風向き変更片28の後側に位置する最後列(第4列)の風向き変更片29は、その高さ寸法が第3列の風向き変更片28の高さ寸法よりも高く設定されている以外は、ほぼ同様に形成されている。即ち、第4列の風向き変更片29は、基端部29A、中間部29Bおよび先端部29Cにより構成されている。
【0054】
30はルーバ底部12とカバー部18とに亘って設けられたねじ部材である。このねじ部材30は、ルーバ底部12の上側にカバー部18を取付けた状態で、ルーバ底部12を構成する底板部13のねじ挿通孔13Aに下側から挿通し、カバー部18を構成する内カバー19のねじ穴19Gに螺着することにより、両者間を強固に結合することができる。
【0055】
このように構成された空調用ルーバ11は、吹出口21の各フィン22,23,24を下向きに開口させた場合でも、各風向き変更片26〜29の先端部26C〜29Bにより、各フィン22,23,24の内面に対し調和空気を鋭角となる角度α(各フィン22,23,24でほぼ共通の角度となるために上段フィン22にのみ図示している)で当てることができる。これにより、各フィン22,23,24の内面に対し鋭角に当たった調和空気は、カバー部18内に逆流することなく、そのまま吹出口21から吹出す(流出させる)ことができる。
【0056】
また、各風向き変更片26〜29は、前側から後側に向けて高さ寸法が順次高くなるように設定しているから、前側に位置する風向き変更片26〜28に邪魔されることなく、吹出口21に向けて多くの調和空気を効率よく流通させることができる。
【0057】
さらに、各風向き変更片26〜29とルーバ底部12とメッシュ部17とは、1個の部品として一体成形している。この場合、ルーバ底部12をカバー部18と別個に設け、該ルーバ底部12の流入口16に設けたメッシュ部17から上側に立上げて各風向き変更片26〜29を設ける構成としているから、成形型を用いて各風向き変更片26〜29を1回の成形加工で形成することができる。
【0058】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0059】
まず、オペレータは、キャブ5に搭乗し、走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、キャブ5内のオペレータは、左,右の作業レバーを操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0060】
油圧ショベル1の作業時には、キャブ5内の居住空間の作業環境を良好にするために、空調装置を運転して居住空間に調和空気を供給する。この空調装置の運転時に、室内機9からの調和空気は、空調ダクト10のダクト本体10Aを介してキャブ5(居住空間)の前側まで導かれて空調用ルーバ11に流入する。そして、空調用ルーバ11に流入した上向きの調和空気は、風向き変更片26〜29によって前向きに開口した吹出口21に向けて案内することができ、各フィン22,23,24間を通して居住空間内に吹出すことができる。
【0061】
このときに、空調用ルーバ11を水平方向に回転させて吹出口21を前側に向けることにより、キャブボックス7の前窓7Aの曇りを取ることができる。また、吹出口21を後側ないし右側に向けることにより、右窓7Bの曇りを取ることができる。さらに、吹出口21をオペレータの向けることにより、調和空気をオペレータに向け効率よく供給することができる。しかも、各フィン22,23,24を上,下方向に回動することにより、調和空気の吹出し方向を上,下で調整することができる。
【0062】
かくして、本実施の形態によれば、空調用ルーバ11のカバー部18内には、ルーバ底部12の流入口16から上向きに流入する調和空気の風向きを変え、カバー部18に前向きに開口して設けられた吹出口21に向ける各風向き変更片26〜29を設ける構成としている。従って、吹出口21に向かって流れる調和空気は、該吹出口21に設けた各フィン22,23,24を下側に向けた場合でも、該各フィン22,23,24に対して鋭角に当てることができるから、該各フィン22,23,24に沿わせるように調和空気を吹出口21から居住空間に吹出すことができる。
【0063】
この結果、空調装置の室内機9から空調ダクト10を介して供給される調和空気は、各風向き変更片26〜29による風向きの変更によって吹出口21に向けて流通させることができ、各フィン22,23,24の角度に拘わらず、居住空間に効率よく供給することができる。これにより、キャブ5内の居住空間におけるオペレータの作業環境を良好にすることができる。
【0064】
また、ルーバ底部12の流入口16には、多数個の通気孔17Aからなるメッシュ部17を設ける構成としているから、誤って硬貨、紙屑等の異物が吹出口21からカバー部18内に入り込んだ場合でも、メッシュ部17は空調ダクト10のダクト本体10A側に異物が侵入するのを防止することができ、信頼性を向上することができる。
【0065】
しかも、各風向き変更片26〜29は、下側の基端部26A〜29Aをメッシュ部17の通気孔17Aの周囲に固着し、中間部26B〜29Bを基端部26Aから空間部19J内に向け上側に延ばし、先端部26C〜29Cを中間部26Bの上部から吹出口21に向け傾斜するように延ばす構成としている。また、基端部26A〜29Aと中間部26B〜29Bは、上,下方向に延びる半円筒体として形成している。従って、基端部26A〜29Aと中間部26B〜29Bは、各通気孔17Aを通る調和空気の流れを邪魔することなく、調和空気を先端側の先端部26C〜29Cまで円滑に流通させることができる。そして、各通気孔17Aを通過して上向きに流れる調和空気は、先端部26C〜29Cに当てることにより風向きを変えて吹出口21に向け流通させることができる。これにより、簡単な構成で調和空気の進路を変更することができる。
【0066】
また、前,後方向で4列設けた風向き変更片26〜29は、前側から後側に向けて高さ寸法が順次高くなるように設定している。従って、各風向き変更片27〜29は、前側に位置する各風向き変更片26〜28に邪魔されることなく、吹出口21に向けて多くの調和空気を効率よく流通させることができる。これにより、吹出口21の全面から調和空気を吹出すことができ、冷房運転、暖房運転の効率を高めることができる。
【0067】
また、重ねられる内カバー19と外カバー20とを利用し、各フィン22,23,24の支持ピン22A,23A,24Aを挟むことにより、吹出口21の位置に該各フィン22,23,24を回動可能に取付けることができる。また、内カバー19の開口19Cと外カバー20の開口20Cとを重ね合わせることにより、それぞれの開口19C,20Cを利用して吹出口21を簡単に形成することができる。
【0068】
さらに、ルーバ底部12をカバー部18と別個に設け、該ルーバ底部12の流入口16に設けたメッシュ部17から上側に立上げて各風向き変更片26〜29を設ける構成としているから、成形型を用いて各風向き変更片26〜29を形成することができる。これにより、ルーバ底部12とメッシュ部17と各風向き変更片26〜29とを、1個の部品として一体成形することができ、製造コストの低減、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0069】
なお、実施の形態では、ルーバ底部12の流入口16にメッシュ部17を設け、該メッシュ部17に各風向き変更片26〜29を取付けることにより、該各風向き変更片26〜29をカバー部18内に配置する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図13に示す変形例のように、内カバー19′の左,右の側部間に亘って延びる傾斜板からなる風向き変更片41〜44を設ける構成としてもよい。この変形例によっても、前述した実施の形態と同様に、ルーバ底部12の流入口16から上向きに流入する調和空気の風向きを変えて吹出口21に向けて流通させることができる。
【0070】
また、実施の形態では、カバー部18を外カバー20と内カバー19との2部材から構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばカバー部を1部材から構成してもよい。
【0071】
さらに、実施の形態では、空調用ルーバ11を建設機械としての油圧ショベル1のキャブ5内に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、空調用ルーバ11は、例えば自動車、飛行機等の居住空間を有し、空調装置を備えたものに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
5 キャブ
9 室内機
10 空調ダクト
10A ダクト本体
11 空調用ルーバ
12 ルーバ底部
16 流入口
17 メッシュ部
17A 通気孔
18 カバー部
19,19′ 内カバー
19A,20A 背面部
19C,20C 開口
20 外カバー
21 吹出口
22 上段フィン
23 中段フィン
24 下段フィン
26〜29,41〜44 風向き変更片
26A〜29A 基端部
26B〜29B 中間部
26C〜29C 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から上方に向けて調和空気が流入する流入口を有するルーバ底部と、該ルーバ底部の上側に取付けられ背面側が閉塞され内部に空間部を画成するカバー部と、該カバー部の背面と反対側に位置するように前向きに開口して設けられ調和空気を居住空間に吹出す吹出口と、該吹出口に設けられ調和空気の吹出し方向を可変に調整するフィンとからなる空調用ルーバにおいて、
前記カバー部内の空間部には、前記流入口から前記空間部内を上向きに流入する調和空気を前記吹出口に向けて風向きを変える風向き変更片を設ける構成としたことを特徴とする空調用ルーバ。
【請求項2】
前記風向き変更片は、前記ルーバ底部から上方に延びた状態で複数本立設する構成としてなる請求項1に記載の空調用ルーバ。
【請求項3】
前記風向き変更片は、その基端側が前記ルーバ底部に取付けられ、中間部が前記空間部内を上側に延び、先端側が前記吹出口に向け傾斜して延びる構成としてなる請求項1または2に記載の空調用ルーバ。
【請求項4】
前記カバー部は、内部に前記空間部を画成する内カバーと、該内カバーを外側から覆うように重ねて設けられた外カバーとにより形成し、
前記吹出口は、前記内カバーの開口と外カバーの開口とを重ね合わせることにより形成し、
前記フィンは、その側方位置に設けた支持ピンを前記内カバーと外カバーとの間に挟むことにより前記カバー部に回動可能に取付ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の空調用ルーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−126248(P2012−126248A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279200(P2010−279200)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】