説明

空調用レジスタ

【課題】部品点数及び組付け工数の低減を図ることのできる空調用レジスタを提供する。
【解決手段】空調用レジスタは、リテーナ10、バレル40、弾性部材50及び節度部60を備える。リテーナ10では、外筒部11内に同軸状に収容された内筒部21が、それらの中心軸線L1,L2を中心として回動し得るように外筒部11に支持される。バレル40は、複数のブレード42を内筒部21内に有し、かつ、軸46,47により内筒部21に回動可能に支持される。弾性部材50は、軸47及び内筒部21間に介在され、軸47との弾性接触により軸47に摺動抵抗を付与する。節度部60は、外筒部11における円環状の内壁部17の周方向に凹凸を連続形成してなる波状部61と、上記弾性部材50の一部により構成されて波状部61に係合される係合部53とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきて室内に吹出される空調用空気の向きを調整する空調用レジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネル等においては、空調装置から送られてくる空調用空気(温風や冷風)の吹出し口に空調用レジスタが設けられる。そして、意匠上の理由から、上記空調用レジスタとして丸型レジスタと呼ばれるタイプが用いられる場合もある。例えば、特許文献1に開示された空調用レジスタ(丸型レジスタ)は、リテーナ、バレル及び弾性部材を主要な構成部品として備える。リテーナは、空調用空気の流路を有する外筒部を備えるとともに、外筒部内に同軸状に収容された内筒部を備える。内筒部は、外筒部及び内筒部の両中心軸線を中心として回動し得るように外筒部に支持される。バレルは、リテーナから吹出される空調用空気の風向きを変えるための複数のブレードを内筒部内に有しており、軸により内筒部に回動可能に支持される。弾性部材は、軸及び内筒部間に介在され、軸と弾性接触することにより、その軸に摺動抵抗を付与する。
【0003】
上記タイプの空調用レジスタ(丸型レジスタ)によれば、外筒部に対してバレルを通じて内筒部を回動させるとともに、内筒部に対しバレルを回動させることで、複数枚のブレードの向きを任意に設定することができ、リテーナから吹出される空調用空気の風向きを調整することができる。
【0004】
さらに、上記空調用レジスタ(丸型レジスタ)では、外筒部に対する内筒部の回動操作に節度感を付与する節度部が設けられる。上記特許文献1では、内筒部の円環状の内壁部には、その周方向に凹凸を連続形成してなる波状部が設けられる。一方、外筒部に設けられた有底の筒部には、硬球と、その硬球を波状部側へ付勢するばねとが配置される。そのため、バレルを通じて内筒部が外筒部に対し中心軸線を中心として回動操作されると、波状部の凹凸に合わせてばねが伸縮させられて波状部における硬球の位置が変化する。このばねの伸縮に伴い操作荷重が変化することで、内筒部の回動操作に節度感が付与され、操作フィーリングの向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−127658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載された空調用レジスタ(丸型レジスタ)では、内筒部の回動操作に節度感を付与するために、上記主要な部品とは別に硬球及びばねを追加する構成を採っているため、空調用レジスタ全体の部品点数が多くなる。また、外筒部の有底の筒部内に硬球及びばねを組付ける工程が必要となり、その分、空調用レジスタの組付け工数が多くなる問題もある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数及び組付け工数の低減を図ることのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、空調用空気の流路を有する外筒部を備えるとともに、前記外筒部内に同軸状に収容された内筒部を備え、前記内筒部が、前記外筒部及び前記内筒部の両中心軸線を中心として回動し得るように前記外筒部に支持されてなるリテーナと、前記リテーナから吹出される前記空調用空気の風向きを変えるための複数のブレードを前記内筒部内に有し、かつ、軸により前記内筒部に回動可能に支持されるバレルと、前記軸及び前記内筒部間に介在され、前記軸との弾性接触により前記軸に摺動抵抗を付与する弾性部材と、前記リテーナの前記内筒部の回動操作に節度感を付与する節度部とを備える空調用レジスタであって、前記外筒部は、前記中心軸線の周りに円環状の内壁部を有し、前記節度部は、前記内壁部の周方向に凹凸を連続形成してなる波状部と、前記弾性部材の一部により構成されて前記波状部に係合される係合部とを備えることを要旨とする。
【0009】
上記の構成によれば、バレルが支持された内筒部は、そのバレルと一緒になって、中心軸線を中心として外筒部に対して回動可能である。また、バレルは、軸を支点として内筒部に対して回動可能である。そのため、バレルを通じて内筒部を外筒部に対し回動操作するとともに、バレルを内筒部に対し回動操作することで、複数枚のブレードの傾きを調整し、外筒部内の流路を流れる空調用空気を、リテーナから任意の方向へ吹出させることが可能となる。
【0010】
上記軸を支点とした上記バレルの内筒部に対する回動操作は、上記弾性部材から軸に付与される摺動抵抗に抗して行なわれる。この摺動抵抗により、バレルの回動操作時の荷重(操作荷重)が作り出される。
【0011】
また、上記バレルを通じた内筒部の外筒部に対する回動操作は、弾性部材の一部により構成される係合部を波状部上で移動させることにより行なわれる。係合部の上記移動は、係合している凹凸の形状に合わせて係合部を弾性変形及び弾性復元させることにより行なわれる。この係合部の弾性変形及び弾性復元に伴い、内筒部の回動操作時の荷重(操作荷重)が変化し、同回動操作に節度感が付与される。
【0012】
このように、請求項1に記載の発明では、弾性部材が、内筒部に対するバレルの回動操作時の操作荷重を作り出す機能に加え、外筒部に対する内筒部の回動操作に節度感を付与する機能を発揮する。そのため、ばねによって硬球を波状部に押付けて節度感を付与するものとは異なり、ばね及び硬球が不要となり、それらの部品の分だけ、空調用レジスタの部品点数が少なくなる。また、ばね及び硬球を組付ける工程が不要となり、その分、空調用レジスタの組付け工数が少なくなる。
【0013】
上記弾性部材としては、例えば、請求項2に記載の発明によるように、熱可塑性エラストマーにより形成されたものを用いることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記外筒部の前記内壁部は、前記内筒部が前記外筒部内に同軸状に収容された状態で、前記弾性部材に接近する箇所に形成されていることを要旨とする。
【0014】
上記の構成によれば、リテーナの形成のために、内筒部が外筒部内に同軸状に収容されると、外筒部における円環状の内壁部が弾性部材に接近し、同弾性部材の一部が係合部として波状部の一部の凹凸に係合される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記内筒部には、前記弾性部材がその一部を露出させた状態で装着される被着部が設けられており、前記弾性部材の前記被着部からの露出部分は、前記内筒部を前記外筒部内に同軸状に収容する際に、前記係合部として前記波状部に係合されることを要旨とする。
【0016】
上記の構成によれば、バレルの軸が内筒部に支持される際に、その内筒部に設けられた被着部に弾性部材が装着されると、弾性部材の一部は被着部から露出する。この弾性部材の被着部からの露出部分は、内筒部を外筒部内に同軸状に収容する際に、係合部として波状部に係合される。
【0017】
このように、弾性部材を内筒部の被着部に装着し、内筒部を外筒部内に同軸状に収容する作業を行なうと、弾性部材を介して軸を内筒部に対し回動可能に支持する作業と、弾性部材の係合部を波状部に係合させる作業とが行なわれる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記被着部は、一部に切欠きを有する筒状の枠部を備え、前記弾性部材は、前記被着部への装着に際し、自身の一部を前記切欠きから露出させた状態で前記枠部に嵌入されるものであることを要旨とする。
【0019】
上記の構成によれば、筒状の枠部に弾性部材の多くの部分が嵌入されると、その弾性部材の一部が切欠きを通じて枠部(被着部)の外部に露出する。そして、この露出した部分は係合部として波状部の一部の凹凸に係合される。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明において、前記弾性部材は方形板状をなしており、その一部の角部が前記係合部として前記波状部に係合されることを要旨とする。
【0021】
弾性部材が方形板状をなす場合には、その弾性部材には複数(4つ)の角部が存在する。そのため、上記請求項6に記載の発明によるように、複数の角部のうちの1つを係合部として利用して波状部に係合させれば、弾性部材に特別に係合部を設けなくてもすむ。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1つに記載の発明において、前記弾性部材の前記係合部には孔が設けられていることを要旨とする。
上記のように、係合部に孔が設けられることで、設けられない場合に比べ、係合部が弾性変形しやすくなる。さらに、孔の大きさ、孔の形状、孔の数等を適宜設定することで、係合部の弾性変形のしやすさを変えて、節度部が付与する節度感を容易に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の空調用レジスタによれば、節度部として硬球及びばねが用いられるものに比べ、部品点数及び組付け工数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における空調用レジスタを空気出口側から見た状態を示す斜視図。
【図2】リテーナの外筒部を空気入口側から見た状態を示す斜視図。
【図3】空調用レジスタの構成部品を示す分解斜視図。
【図4】外筒部における空調用空気の流路が開放された状態の空調用レジスタの平断面図。
【図5】同じく外筒部における空調用空気の流路が開放された状態の空調用レジスタの側断面図。
【図6】空調用レジスタにおける節度部及びその周辺部分を示す部分平断面図。
【図7】外筒部における空調用空気の流路が塞がれた状態の空調用レジスタの側断面図。
【図8】弾性部材の変更例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を車両用の空調用レジスタに具体化した一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
車室内において、車両の運転席及び助手席の前方にはインストルメントパネル(図示略)が設けられている。このインストルメントパネルにおいては、空調装置から送られてくる空調用空気(温風や冷風)の吹出し口が開口されており、この吹出し口に本実施形態の空調用レジスタが組付けられる。空調用レジスタの主な機能は、空調装置から送られてきて吹出し口から車室内に吹出される空気の向き(風向き)を調整したり、車室内への空調用空気の吹出しを止めたりすることである。
【0026】
空調用レジスタは図1に示す外観を呈している。この空調用レジスタは、図2及び図3に示すように、リテーナ10、バレル40、弾性部材50及び節度部60を備えている。次に、これら各部の構成について説明する。
【0027】
<リテーナ10>
リテーナ10は、外筒部11と、その外筒部11よりも小径の内筒部21とを備えている。これらの外筒部11及び内筒部21はいずれも樹脂材料によって形成されている。
【0028】
図3及び図4に示すように、外筒部11は、その中心軸線L1に沿って延び、かつ両端を開放してなる略円筒形状をなしている。外筒部11は、内部に空調用空気Aの流路を有している。外筒部11の一方(図4の右方)の端部は、空調用空気Aの入口(以下「空気入口12」という)を構成し、他方(図4の左方)の端部は空調用空気Aの出口(以下「空気出口13」という)を構成している。空気入口12及び空気出口13はいずれも円形をなしている。
【0029】
外筒部11の外周面であって空気入口12側の端部には、その全周にわたって環状突部14が一体形成されている。外筒部11の外周面の空気出口13側の端部であって、中心軸線L1を挟んで互いに対向する位置には、インストルメントパネルに対しその裏側から接する取付け座15が突設されている。各取付け座15にはビス孔16が形成されており、このビス孔16に通されたビス(図示略)によって、外筒部11がインストルメントパネルに固定されるようになっている。
【0030】
外筒部11内の空気出口13側の部位であって、同外筒部11の中心軸線L1の周りには円環状の内壁部17が形成されている(図2参照)。
内筒部21は、その中心軸線L2に沿って延びる円筒状の周壁部22と、周壁部22の空気入口12側の端部に一体形成された網目部23とを備えている。周壁部22の外周面であって、空気出口13側の端部には、その全周にわたってフランジ部24が一体形成されている。また、周壁部22の外周面であって、空気入口12側の端部には、複数(本実施形態では3つ)の爪部25が等角度毎に設けられている。
【0031】
内筒部21は、その中心軸線L2を、外筒部11の上記中心軸線L1に合致させた状態で、外筒部11内に収容されている。すなわち、内筒部21は外筒部11内に同軸状に収容されている。内筒部21が上記のように外筒部11内に収容された状態では、フランジ部24は、外筒部11の上述した円環状の内壁部17に近接する(図4参照)。
【0032】
そして、図5及び図7に示すように、各爪部25が上記外筒部11の環状突部14に係合されている。この係合により、各爪部25は、中心軸線L1,L2に沿う方向へ移動することを規制されるが、同中心軸線L1,L2の周りで移動することは許容される。こうした各爪部25と環状突部14との係合関係により、内筒部21は、中心軸線L1,L2を中心として回動し得るように外筒部11に支持されている。
【0033】
周壁部22の空気出口13側の端部において、中心軸線L1,L2を挟んで相対向する箇所には、一対の支持孔26,27が設けられている。一方(図5及び図7の下方)の支持孔26は、丸孔によって構成されている。
【0034】
図3及び図6に示すように、他方(図3の上方)の支持孔27は、周壁部22の空気出口13側の箇所に設けられた被着部28内に位置している。被着部28は、一部に切欠き31を有する四角筒状の枠部29を備えている。この切欠き31は、四角筒状の枠部29の角部の1つに相当する箇所に形成されている。枠部29を構成する4つの壁32のうち、空気出口13に対してより近い側の2つは、切欠き31の形成により他の2つよりも短くなっていて、上記フランジ部24に繋がっている。そして、この切欠き31を有する枠部29(4つの壁32)によって囲まれた空間が、上記他方の支持孔27を構成している。
【0035】
<バレル40>
図1及び図3に示すように、バレル40は、互いに平行となるように一定間隔毎に配列された複数枚(本実施形態では3枚)のブレード41〜43を備えている。各ブレード41〜43は、外筒部11の空気出口13から吹出される空調用空気Aの風向きを変えるためのものであり、円板状に形成されている。配列方向についての中央のブレード42は、両側のブレード41,43よりも大径状をなしている。各ブレード41〜43が、図4に示すように、少なくとも中心軸線L1,L2に対し平行な状態にされたときには、外筒部11における空調用空気Aの流路が開放されるとともに、同ブレード41〜43の下流側の一部が外筒部11の空気出口13から突出する。
【0036】
図3及び図7に示すように、上記複数のブレード41〜43は、それぞれ円弧状をなす一対の連結部44,45によって連結されている。連結部44からは軸46がブレード42の径方向外方(図7では下方)へ突出し、連結部45からは軸47がブレード42の径方向外方(軸46とは逆方向:図7では上方)へ突出している。
【0037】
一方(図7の下方)の軸46は丸棒状をなし、内筒部21の上記支持孔26に回動可能に係合(支持)されている。他方(図3及び図7の各上方)の軸47は、先端が開口された略円管状をなしており、後述する弾性部材50を介して、内筒部21の上記支持孔27に回動可能に支持されている。これらの支持により、バレル40は両軸46,47を支点として内筒部21に対し回動自在となっている。
【0038】
上記各ブレード41〜43、両連結部44,45及び両軸46,47は樹脂材料によって一体に形成されている。
<弾性部材50>
弾性部材50は、軸47及び内筒部21間に介在され、軸47と弾性接触することにより、その軸47に摺動抵抗を付与するために用いられている。
【0039】
弾性部材50は、熱可塑性エラストマー(TPE:Thermo Plastic Elastomer)によって形成されている。熱可塑性エラストマーは、高温で可塑化(流動性)され、プラスチックのように加工が可能で、常温ではゴム弾性体(エラストマー)の性質を示す高分子材料である。本実施形態では、弾性部材50は、結晶化速度が速く、射出成形性に優れ、機械的強度、耐薬品性、低温柔軟性等が良好なポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)によって形成されている。
【0040】
図3及び図6に示すように、弾性部材50は方形板状をなしていて、4つの角部51を有している。ただし、各角部51の先端部分は平らに形成されており、尖っていない。この弾性部材50の大部分は上記枠部29に嵌入されている。枠部29に嵌入された状態では、弾性部材50の1つの角部51についてのみ、上記切欠き31を通じて枠部29の外部であって空気出口13側(図6の左側)へ露出している。
【0041】
弾性部材50の中心部には貫通孔52が形成されており、上記バレル40の軸47がこの貫通孔52に圧入されている。
<節度部60>
図2及び図6に示すように、節度部60は、バレル40を通じた内筒部21の回動操作に適度な節度感を付与するために設けられている。節度部60の一部は、外筒部11の上記内壁部17に形成された波状部61によって構成されている。この波状部61は、上記内壁部17の周方向(中心軸線L1,L2の周り)に凹凸62を連続して設けることによって形成されている。本実施形態では、波状部61は内壁部17の全周にわたって形成されている。波状部61は、外筒部11と同様の樹脂材料によって、同外筒部11と一体に形成されている。
【0042】
節度部60は、上記波状部61のほかに、この波状部61の一部の凹凸62に係合される係合部53を備えている。この係合部53は、上記弾性部材50の一部によって構成されている。本実施形態では、上記枠部29から切欠き31を通じて空気出口13側へ露出した1つの角部51がこの係合部53として機能するようになっている。節度部60は、内筒部21の回動に伴い、係合部53が波状部61上を移動する際に弾性変形及び弾性復元することにより節度感を付与する。
【0043】
空調用レジスタは上記のように構成されている。この空調用レジスタの製造に際しては、図2及び図3に示すように、まず上述した各構成部品(リテーナ10の外筒部11及び内筒部21、バレル40、弾性部材50、波状部61等)がそれぞれ形成される。
【0044】
次に、バレル40が内筒部21に組付けられる。この組付けに際しては、バレル40を内筒部21の周壁部22内に収容することと、一方の軸46を支持孔26に嵌入することと、弾性部材50を介して他方の軸47を内筒部21に支持することが行なわれる。
【0045】
弾性部材50を介して軸47を内筒部21に支持する際には、軸47が四角筒状の枠部29の略中央に位置させられる。この状態で、図6に示すように、枠部29に弾性部材50の多くの部分が嵌入される。この嵌入の過程で、軸47が弾性部材50の貫通孔52に圧入されるとともに、弾性部材50の一部(1つの角部51)が切欠き31を通じて枠部29(被着部28)の外部に露出する。弾性部材50の多くの部分が枠部29に嵌入されることで、同弾性部材50が被着部28に装着された状態となる。この状態では、一方の軸46が弾性部材50を介さず内筒部21に回動可能に支持され、他方の軸47が弾性部材50を介して内筒部21に回動可能に支持される。
【0046】
ここで、方形板状をなす本実施形態の弾性部材50には、複数(4つ)の角部51が存在する。そのため、上記のように枠部29に弾性部材50の多くの部分が嵌入されることで、複数の角部51のうちの1つが、切欠き31を通じて空気出口13側に露出する。
【0047】
続いて、上記のようにバレル40の支持された内筒部21が外筒部11内に挿入される。この挿入に伴い、内筒部21のフランジ部24が外筒部11の円環状の内壁部17に接近する。また、内筒部21の各爪部25が外筒部11の環状突部14に接近する。
【0048】
これらの接近の過程で、弾性部材50のうち切欠き31から露出した角部51が波状部61に当接して凹凸62に係合する。このように、上記弾性部材50の被着部28からの露出部分(1つの角部51)は、内筒部21を外筒部11内に同軸状に収容する際に、波状部61の凹凸62に係合されることで係合部53として機能する。
【0049】
また、上記当接(係合)に前後して、上記各爪部25が上記環状突部14に当接する。この状態からさらに内筒部21が外筒部11内に挿入されると、上記弾性部材50の係合部53が若干弾性変形する。これとともに、各爪部25が中心軸線L1,L2から遠ざかる側へ弾性変形することで環状突部14を乗り越えて外筒部11に係合する(図5及び図7参照)。
【0050】
このように、弾性部材50を内筒部21の被着部28に装着し、内筒部21を外筒部11内に同軸状に収容する作業を行なうと、弾性部材50を介して内筒部21に軸47を回動可能に支持する作業と、弾性部材50の係合部53を波状部61の凹凸62に係合させる作業とが行なわれる。
【0051】
次に、上記のように製造された本実施形態の空調用レジスタの作用について説明する。
この空調用レジスタでは、バレル40の軸47とリテーナ10の内筒部21との間に介在された弾性部材50が、貫通孔52において軸47に弾性接触している。弾性部材50は、非円板状である方形板状をなしていて、四角筒状の枠部29に嵌入されているため、同枠部29内で回動することはない。この弾性接触により軸47に摺動抵抗が付与され、バレル40の内筒部21に対する回動が規制されている。また、この弾性部材50の一部は係合部53として、外筒部11の内壁部17に設けられた波状部61の凹凸62に係合している。この係合により、内筒部21の外筒部11に対する回動が規制されている。
【0052】
空調装置から送られてくる空調用空気Aは、空調用レジスタのリテーナ10内を通過した後に外筒部11の空気出口13から吹出す。空調用空気Aは、リテーナ10内を通過する際にバレル40のブレード41〜43に沿って流れることで、空気出口13からの吹出し方向を決定される。
【0053】
ここで、バレル40が支持された内筒部21は、そのバレル40と一緒になって、中心軸線L1,L2を中心として外筒部11に対して回動可能である。また、バレル40は、軸46,47を支点として内筒部21に対して回動可能である。中心軸線L1,L2の延びる方向と、バレル40の両軸46,47を通る軸線L3(図4、図5参照)の延びる方向とが直交しているため、バレル40は、外筒部11に対して2軸を中心として回動可能となる。そのため、バレル40を通じて内筒部21を外筒部11に対し回動操作するとともに、バレル40を内筒部21に対し回動操作することで、中心軸線L1,L2に対する、すなわち空調用空気Aの流れ方向に対するブレード41〜43の傾きを調整し、空調用空気Aを空気出口13から任意の方向へ吹出させることが可能となる。
【0054】
ちなみに、図4は、各ブレード41〜43が両中心軸線L1,L2に対し平行にされて、外筒部11における空調用空気Aの流路が開放され、空調用空気Aが空気出口13から真っ直ぐ乗員側へ吹出す場合を示している。
【0055】
また、図7に示すように、各ブレード41〜43が中心軸線L1,L2に対し直交するようにバレル40が回動されると、各ブレード41〜43と外筒部11又は内筒部21との間の隙間が僅かとなって、外筒部11内の空調用空気Aの流路がブレード41〜43によって塞がれた状態となり、空調用空気Aの空気出口13からの吹出しが止められる。
【0056】
上記軸46,47を中心とする上記バレル40の内筒部21に対する回動操作は、上記弾性部材50から軸47に付与される摺動抵抗に抗して行なわれる。この摺動抵抗により、バレル40の回動操作時の荷重(操作荷重)が作り出される。
【0057】
また、上記バレル40を通じた内筒部21の外筒部11に対する回動操作は、波状部61の凹凸62に係合している弾性部材50の係合部53を、別の凹凸62に係合する位置まで移動させることにより行なわれる。係合部53の上記移動は、係合している凹凸62の形状に合わせて係合部53を弾性変形及び弾性復元させることにより行なわれる。この係合部53の弾性変形及び弾性復元に伴い、係合部53が波状部61における係合位置を変える際に回動操作に要する力(操作荷重)が変化し、内筒部21の回動操作に節度感が付与される。
【0058】
このように、本実施形態では、弾性部材50が、バレル40の回動操作時の操作荷重を作り出す機能に加え、内筒部21の回動操作に節度感を付与する機能を発揮する。そのため、ばねによって硬球を波状部に押付けて節度感を付与するもの(特許文献1)とは異なり、ばね及び硬球が不要となり、また、ばね及び硬球を組付ける工程が不要となる。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)空調用レジスタとして、リテーナ10、バレル40、弾性部材50及び節度部60を備えるものを対象とする(図3)。リテーナ10では、外筒部11内に同軸状に収容された内筒部21を、それらの中心軸線L1,L2を中心として回動し得るように外筒部11に支持する。バレル40として、複数のブレード41〜43を内筒部21内に有するものを用い、軸46,47により内筒部21に回動可能に支持する。軸47及び内筒部21間に弾性部材50を介在させ、弾性部材50の軸47との弾性接触により軸47に摺動抵抗を付与する(図5)。節度部60として、外筒部11における円環状の内壁部17の周方向に凹凸62を連続形成してなる波状部61と、弾性部材50の一部により構成されて波状部61に係合される係合部53とを備えるものを用いている(図2、図6)。そして、内筒部21の回動に伴い係合部53が波状部61上を移動する際に、その係合部53を弾性変形及び弾性復元させることにより、内筒部21の回動操作に節度感を付与するようにしている。このように、弾性部材50に、バレル40の回動操作時の操作荷重を作り出す機能と、内筒部21の回動操作に節度感を付与する機能とを発揮させるようにしている。
【0060】
そのため、ばねによって硬球を波状部に押付けて節度感を付与するもの(特許文献1)に比べ、空調用レジスタの部品点数を少なくし、また、組付け工数を少なくすることができる。
【0061】
(2)外筒部11の内壁部17を、内筒部21が外筒部11内に同軸状に収容された状態で、弾性部材50に接近する箇所に形成している(図5、図7)。
そのため、リテーナ10の形成のために内筒部21を外筒部11に同軸状に収容する作業を行なうことで、波状部61の一部の凹凸62に弾性部材50の係合部53を係合させることができる。
【0062】
(3)内筒部21に、弾性部材50がその一部を露出させた状態で装着される被着部28を設ける。そして、内筒部21を外筒部11内に同軸状に収容する際に、弾性部材50の被着部28からの露出部分が、係合部53として波状部61に係合されるようにしている(図5、図6)。
【0063】
そのため、弾性部材50を内筒部21の被着部28に装着し、内筒部21を外筒部11内に同軸状に収容する作業を行なうことで、弾性部材50を介して内筒部21に軸47を回動可能に支持する作業と、弾性部材50の一部を係合部53として波状部61の凹凸62に係合させる作業とを行なうことができる。
【0064】
(4)被着部28を、一部に切欠き31を有する筒状の枠部29によって構成する。そして、弾性部材50の一部を切欠き31から露出させた状態で、弾性部材50の多くの部分を枠部29に嵌入させることにより、弾性部材50を被着部28に装着するようにしている(図5、図6)。
【0065】
そのため、筒状の枠部29に弾性部材50の多くの部分を嵌入する作業を行なうだけで、その弾性部材50の一部を、切欠き31を通じて枠部29(被着部28)の外部に露出させ、波状部61に係合する係合部53として機能させることができる。
【0066】
(5)方形板状をなす弾性部材50が用いられている本実施形態にあって、その弾性部材50の角部51の1つを係合部53として波状部61に係合させるようにしている(図6)。
【0067】
このように、複数の角部51のうちの1つを係合部53として利用して波状部61に係合させているため、弾性部材50に特別に係合部53を設けなくてもすむ。弾性部材50として従前のものをそのまま用いることができる。
【0068】
また、4つの角部51は同じ形状をなしているため、どの角部51についても切欠き31から露出させて係合部53とすることができる。従って、弾性部材50の一箇所のみに、切欠き31から露出させる部分を設ける場合に比べ、枠部29に対する弾性部材50の位置決めがしやすく、弾性部材50の多くの部分を枠部29に嵌入(被着部28に装着)しやすい。
【0069】
さらに、節度部60の使用により、万が一、係合部53が摩耗して節度感が弱まった場合には、枠部29から弾性部材50を一旦取外し、係合部53として未だ使用していない角部51を枠部29から露出させ、これを新たな係合部53として波状部61の凹凸62に係合させることもできる。
【0070】
(6)構成部品が全て樹脂材料で形成されているため、一体での廃棄が可能となり、廃棄が容易となる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
【0071】
<被着部28について>
・被着部28は、弾性部材50を回動不能に保持できるものであればよく、この条件を満たす範囲内で形状等が変更されてもよい。被着部28を構成する枠部29は、例えば、四角筒状とは異なる筒状であってもよいし、非筒状であってもよい。
【0072】
<バレル40について>
・ブレード41〜43の数が、上記実施形態(3枚)とは異なる数に変更されてもよい。
【0073】
・各ブレード41〜43は、円板状とは異なる形状をなすものであってもよい。
・ブレード41〜43の配列方向における各ブレード41〜43の大小関係が、上記実施形態とは異なる大小関係に変更されてもよい。
【0074】
<弾性部材50について>
・図6において二点鎖線で示すように、弾性部材50の係合部53の一部に孔54が設けられてもよい。
【0075】
このように係合部53に孔54が設けられることで、設けられない場合に比べ、係合部53が弾性変形しやすくなる。さらに、孔54の大きさ、孔54の形状、孔54の数等を適宜設定することで、係合部53の弾性変形のしやすさを変えて、節度部60が付与する節度感の強弱を容易に調整することが可能となる。
【0076】
なお、この孔54は係合部53を貫通するものであってもよいし、貫通しないもの(底のあるもの)であってもよい。
・弾性部材50は、軸47と支持孔27との間に加え、バレル40の軸46と、内筒部21の支持孔26との間に介在されてもよい。すなわち、弾性部材50はバレル40の両方の軸46,47に設けられてもよい。
【0077】
・弾性部材50の角部51は、図8に示すように尖ったものであってもよいし、先端が丸められた(曲面状に形成された)ものであってもよい。
・弾性部材50は、方形板状とは異なる形の板状をなすものであってもよいし、非板状をなすものであってもよい。
【0078】
・係合部53は弾性部材50の一部によって構成されるものであればよく、必ずしも角部51によって構成されなくてもよい。
・上記実施形態における弾性部材50の1つの角部に相当する箇所が、他の角部51とは異なる形状に変形され、その変形部分に係合部53が設けられてもよい。図8はその一例を示す。この例では、弾性部材50の1つの角部に相当する箇所が、貫通孔52の径方向外方(図8では左方)へ膨出し、かつ空洞部56を有する膨出部55となっている。この空洞部56により膨出部55は環状をなしており、空洞部56のない場合に比べて弾性変形しやすくなっている。そして、この膨出部55の膨出端(貫通孔52から最も離れた箇所)には、係合部53が一体に設けられている。この場合にも、係合部53は、弾性部材50の一部により構成されて波状部61に係合される。
【0079】
・弾性部材50は、係合部53の部位のみ、他の部位とは異なる弾性材料によって形成されたものであってもよい。
・弾性部材50は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとは異なる種類の熱可塑性エラストマーによって形成されたものであってもよい。さらには、弾性部材50は、熱可塑性エラストマーとは異なる種類の弾性材料によって形成されたものであってもよい。
【0080】
<波状部61について>
・波状部61は、必ずしも円環状の内壁部17の全周にわたって形成されなくてもよく、必要な領域(内筒部21が回動されたときに弾性部材50の係合部53が係合する領域)のみに設けられてもよい。
【0081】
・波状部61における凹凸62の断面形状は特に限定されない。この断面形状は例えば鋸歯状であってもよい。
<適用箇所について>
・本発明は、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に配設される空調用レジスタにも適用可能である。
【0082】
・本発明の空調用レジスタは、空調装置等の空気の吹出し口に設けられ、室内に吹出す空気の向きを調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
<その他の事項>
・上記実施形態では、空調用空気Aの流路をバレル40(ブレード41〜43)によって塞ぐ構成が採用されたが、このバレル40とは別の機構、例えばシャットダンパによって塞ぐ構成が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…リテーナ、11…外筒部、17…内壁部、21…内筒部、28…被着部、29…枠部、31…切欠き、40…バレル、41〜43…ブレード、46,47…軸、50…弾性部材、51…角部、53…係合部、54…孔、60…節度部、61…波状部、62…凹凸、A…空調用空気、L1,L2…中心軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の流路を有する外筒部を備えるとともに、前記外筒部内に同軸状に収容された内筒部を備え、前記内筒部が、前記外筒部及び前記内筒部の両中心軸線を中心として回動し得るように前記外筒部に支持されてなるリテーナと、
前記リテーナから吹出される前記空調用空気の風向きを変えるための複数のブレードを前記内筒部内に有し、かつ、軸により前記内筒部に回動可能に支持されるバレルと、
前記軸及び前記内筒部間に介在され、前記軸との弾性接触により前記軸に摺動抵抗を付与する弾性部材と、
前記リテーナの前記内筒部の回動操作に節度感を付与する節度部と
を備える空調用レジスタであって、
前記外筒部は、前記中心軸線の周りに円環状の内壁部を有し、
前記節度部は、前記内壁部の周方向に凹凸を連続形成してなる波状部と、前記弾性部材の一部により構成されて前記波状部に係合される係合部とを備えることを特徴とする空調用レジスタ。
【請求項2】
前記弾性部材は熱可塑性エラストマーにより形成されている請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記外筒部の前記内壁部は、前記内筒部が前記外筒部内に同軸状に収容された状態で、前記弾性部材に接近する箇所に形成されている請求項1又は2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
前記内筒部には、前記弾性部材がその一部を露出させた状態で装着される被着部が設けられており、
前記弾性部材の前記被着部からの露出部分は、前記内筒部を前記外筒部内に同軸状に収容する際に、前記係合部として前記波状部に係合される請求項1〜3のいずれか1つに記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
前記被着部は、一部に切欠きを有する筒状の枠部を備え、
前記弾性部材は、前記被着部への装着に際し、自身の一部を前記切欠きから露出させた状態で前記枠部に嵌入されるものである請求項4に記載の空調用レジスタ。
【請求項6】
前記弾性部材は方形板状をなしており、その一部の角部が前記係合部として前記波状部に係合される請求項1〜5のいずれか1つに記載の空調用レジスタ。
【請求項7】
前記弾性部材の前記係合部には孔が設けられている請求項1〜6のいずれか1つに記載の空調用レジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−28227(P2013−28227A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164440(P2011−164440)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】