説明

空調用室内ユニット

【課題】角部の不均一な圧力場をターボファンの羽根が通過することで発生する圧力変動に伴うNZ音を抑制できる空調用室内ユニットを提供する。
【解決手段】ケーシング21と、ターボファンと、室内熱交換器と、を備える。ケーシング21は、側壁21bと上壁21aにより区画された収容空間を有するとともに、収容空間に空気が流入するベルマウスと、熱交換された空気を排出する吹出口と、を有する。室内熱交換器は、ターボファンの外周側に配置されると共にターボファンにより送り出された空気を熱交換することで加熱または冷却する。ケーシング21の側壁21bは室内熱交換器を取り囲むように矩形に形成されることで4つの角部21d,21eを有しており、少なくとも1つの角部21eが、圧力変化緩和部材である傾斜体29で埋められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケーシングが天井面内に埋設される空調用室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調用室内ユニット100は、図12に示されるように、ケーシング101内の収容空間Sにモータ102で駆動するターボファン103が中央部に配置されると共に、その周囲に空気を加熱または冷却する室内熱交換器104が配置され、室内の空気を吸込む吸込口105と、吸込んだ空気をターボファン103に導くベルマウス106と、熱交換した空気を排出する吹出口107と、を備えている。
室内の空気は、吸込口105からケーシング101内に流入し、ベルマウス106を通ってモータ102により駆動するターボファン103に導かれ、このターボファン103により昇圧され、室内熱交換器104を通過することで加熱または冷却され、所望の温度に調節されてから吹出口107を通って室内に戻される。なお、図中の白抜き矢印は、空気の流れを示している。
【0003】
この空調用室内ユニット100において、ターボファン103の羽根枚数と回転数の積とその整数倍を周波数とするNZ音(N:回転数、Z:羽根枚数)が発生することが知られている。
NZ音を抑制する技術として、例えば、特許文献1に記載された空気調和機が知られている。この空気調和機は、箱状のユニット本体内に遠心ファンを設けると共に、この遠心ファンの外周を囲むように熱交換器を設けている。特許文献1は、この熱交換器の内面に遠心ファンからの風の流れを整流する整流板を突設し、この整流板の上下方向のいずれか一方の端部を他方の端部よりも遠心ファンの送風方向下流側に位置するように配設したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−269738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する技術は、NZ音を抑制する一定の効果を奏するものの、NZ音の発生要因は明確となっていないものも含め多義に亘るために、NZ音を根絶するのは容易ではない。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、NZ音の新たな発生要因を見出すとともに、この要因に対応してNZ音を抑制できる空調用室内ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に矩形の筐体で構成さるケーシング101は、その角部において、吹出口107が途切れたり、室内熱交換器104の配管スペースになっていて閉塞しているなどして、回転するターボファン103の羽根車の周方向に対して不連続な特異な点となっている。本発明者等はこのことがNZ音の発生要因の一つであり、角部の不均一な圧力場を羽根22aが通過することで発生するNZ音の周波数を持つ圧力変動が吹出口107を介して室内の耳障りな騒音となることを確認した。特許文献1も含め、これまで知りうるNZ音の抑制手法では、この角部で発生する圧力変動に伴うNZ音を抑制する効果は得られていない。これに対して本発明者は、不均一な圧力場を羽根22aが通過することによる羽根22aにとっての周囲の圧力変化を緩和する部材を角部に設けることで当該要因によるNZ音を抑制できることを知見し、以下説明する本発明の空調用室内ユニットを提供するものである。
【0007】
本発明の空調用室内ユニットは、ケーシングと、ファンと、熱交換器と、を備える。
ケーシングは、上壁と側壁により区画された収容空間を有するとともに、収容空間に空気が流入する吸込口と、熱交換された空気を排出する吹出口と、を有する。
ファンは、ケーシングの収容空間に配置され、吸込口から吸込まれた空気を昇圧して送り出す。
熱交換器は、ファンの外周側に配置されると共にファンにより送り出された空気を熱交換することで加熱または冷却する。
本発明の空調用室内ユニットは、ケーシングの側壁が熱交換器を取り囲むように矩形に形成されることで4つの角部を有しており、少なくとも1つの角部に、圧力変化緩和部材が設けられる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明における圧力変化緩和部材としては、第1形態及び第2形態の少なくとも2つの形態を含む。
第1形態による圧力変化緩和部材は、角部を埋める傾斜体からなる。この傾斜体は、熱交換器に対向する面の面積が、上壁から離れるのにしたがって小さくなる。
第1形態は、直角またはそれに近い角で側壁の向きが変わる角部の角度(以下、角部の段差、という)を緩やかにすることで、角部で発生する羽根にとっての圧力変化の程度を緩和、つまり小さくする。しかも、熱交換器に対向する面の面積が、上壁から離れるのにしたがって小さくすることで、傾斜体が吹出口を塞がないようにして、圧力損失を増やすことなくNZ音の発生を抑制する。
【0009】
第2形態による圧力変化緩和部材は、角部よりもファンの回転方向の後ろ側に設けられ、側壁から熱交換器に向けて張り出す単数または複数の立ち壁からなる。
第2形態は、角部の不均一な圧力場を羽根が通過することで発生した圧力変動が角部から吹出口に向けて拡がるのを遮ることで、NZ音の発生を抑制する。
【0010】
第2形態による立ち壁は、熱交換器に対向する面を傾斜させることができる。そうすると、ファンから与えられる圧力波が立ち壁の当該傾斜面に到達するタイミングがずれるので、圧力波が増幅するのを抑えることができる。
また、第2形態による立ち壁は、角部に対向する面を傾斜させることができる。そうすると、角部で反射した圧力波が立ち壁の当該傾斜面に到達するタイミングがずれるので、圧力波が増幅するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空調用室内ユニットによると、少なくとも1つの角部に圧力変化緩和部材が設けられることにより、角部の不均一な圧力場をなだらかにし、羽根にとっての圧力変化を緩和することで、NZ音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における天井埋込型空気調和機の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態におけるケーシングを示し、実際に天井に埋め込まれる状態と上下を反転させて示す斜視図である。
【図3】第1実施形態における空調用室内ユニットの一つの角部近傍を示す拡大平面図である。
【図4】第1実施形態におけるケーシングの一つの角部近傍を示し、ケーシングの収容空間側から視た拡大側面図である。
【図5】第1実施形態におけるケーシングの変形例を示し、実際に天井に埋め込まれる状態と上下を反転させた斜視図である。
【図6】第2実施形態におけるケーシングを示し、実際に天井に埋め込まれる状態と上下を反転させた斜視図である。
【図7】第2実施形態におけるケーシングの変形例に関し、(a)は要部拡大斜視図を示し、(b)は当該変形例の効果を示すグラフ、(c)は同位相の圧力波を加算する例を示すグラフである。
【図8】第2実施形態におけるケーシングの他の変形例を示し、実際に天井に埋め込まれる状態と上下を反転させた斜視図である。
【図9】図8に示す第2実施形態におけるケーシングの変形例を示す要部拡大斜視図である。
【図10】図8に示す第2実施形態におけるケーシングの変形例を示す要部拡大斜視図である。
【図11】実施形態によるNZ音低減の効果を示すグラフであり、(a)は第1実施形態による効果を、(b)は第2実施形態による効果を示す。
【図12】天井埋込型空気調和機の一般的な構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、添付する図1〜図5に示すこの発明の第1実施形態を詳細に説明する。
図1に示すように、天井埋込型空気調和機10は、空調用室内ユニット11と、空調用室外ユニット12と、冷媒配管13と、を主な要素として備えている。空調用室外ユニット12は、図示を省略するが、冷媒を圧縮するための圧縮機と、冷媒と室外の空気と熱交換を行う室外熱交換器と、室外の空気を室外熱交換器に吹き付ける室外ファンと、を備えている。冷媒配管13は、空調用室内ユニット11及び空調用室外ユニット12の間で冷媒を循環できるように両者間に接続されている。
【0014】
空調用室内ユニット11は、図1〜図4に示すように、ケーシング21と、このケーシング21の収容空間Sの内部に配置されるモータ(図示省略)と、モータにより回転するターボファン22と、室内の空気がケーシング21内に流入する吸込口23と、空気を吸込口23からターボファン22に導くベルマウス24と、空気を加熱または冷却する室内熱交換器25と、室内熱交換器25を通過する過程で熱交換された空気をケーシング21内から室内に流出させる吹出口26と、を主たる要素として備えている。
【0015】
ケーシング21は、図2に示すように一方端が開口する箱状の形態をなしており、室内の天井よりも上側に埋め込まれる。ケーシング21は、その上壁21aと側壁21bで区画される収容空間Sに前述したモータ、ターボファン22、ベルマウス24、室内熱交換器25等を収容する。
ケーシング21は、上壁21aと側壁21bとを有している。側壁21bは、上壁21aに対して略垂直に立ち上がっている。上壁21a及び側壁21bは、例えば、外側に配置される鉄板からなる強度構造部と、この強度構造部の内側に固定される発泡材などからなる断熱部と、から構成することが好ましい。なお、上壁21aの内周面側を便宜上天面21aと呼ぶことがある。
【0016】
モータは、天面21aの平面方向の略中央に固定されており、略鉛直方向に向けて延出されるその主軸にターボファン22が固定される。このターボファン22は、よく知られているように、モータの主軸に固定された主板と、この主板に対して下方に対向するシュラウドとを備え、主板とシュラウドとの間には周方向に沿って固定される複数の羽根22aが配設されている。
【0017】
ケーシング21は、下方(図2では上方)が開口部となっており、この開口部に天井カバー27が天井とほぼ水平をなすように取付けられている。この天井カバー27は中央部分が開口されており、開口よりも外側の天井カバー27に4つの吹出口26が形成されている。また、天井カバー27の開口に格子状の吸込みグリル28が固定される。
【0018】
ベルマウス24は、天井カバー27の上部に固定され、吸込みグリル28の上方であって、ターボファン22の下方に配置されている。また、ベルマウス24は、上面部にモータや吹出口26に設けられた図示しないルーバーなどを制御する電子機器を収容する部分を備えている。
【0019】
室内熱交換器25は、よく知られているように、所定隙間をもって積層された複数のフィンを複数の伝熱管が貫通するように配置されて構成され、本実施形態では、ケーシング21の形状に合わせて矩形をなしている。この室内熱交換器25は、図3に示すように、ターボファン22の外側であって、ケーシング21における側壁21bの内側に配置され、天面21aの下面に固定される。
【0020】
ここで、ケーシング21の側壁21bは平面視して矩形状をなす。この側壁21bは、4つの直線部21cと、この4つの直線部21cを繋ぐ角部21d、21eと、を備えている。
図3に示すように、ケーシング21の角部21eの内側に室内熱交換器25の端部が進入するように仕切板42が固定されることで、収容部43が区画されており、この収容部43に室内熱交換器25の伝熱管に冷媒(熱交換媒体)を給排する冷媒配管13の端部が収容される。
【0021】
上述した空調用室内ユニット11は、ターボファン22が回転することで、室内の空気が吸込口23からケーシング21の内部に流入し、ターボファン22を通って昇圧された後に室内熱交換器25に至る。ここで、昇圧された空気は、ターボファン22と室内熱交換器25との空間部を周方向に流れ、室内熱交換器25を通過するときに内部を流れる冷媒と熱交換された後に側壁21bに至り、その後各吹出口26から室内に供給される。なお、ターボファン22は反時計回りに回転する。
【0022】
ところが、ターボファン22の回転によって昇圧するとき、側壁21bに繋がる吹出し口26は角部21d、21eで途切れており、特に角部21eの内側には仕切板42がターボファン22に接近して設置されているため、空気の圧力が高くなりやすい。不均一な空気の圧力場は、NZ音の発生要因となる。
そこで、空調用室内ユニット11では、ターボファン22から室内熱交換器25を介した側壁21bの間の空間部のターボファン22吐出側周方向の空気の羽根22aにとっての圧力変化を緩和する圧力変化緩和部材を設ける。本実施形態では、この圧力変化緩和部材として、ケーシング21における角部21eを傾斜体29で埋めている。この傾斜体29は、室内熱交換器25と側壁21bの間に配置されることになる。なお、ここでは角部21eについて説明するが、他の角部21dに傾斜体29を設けることができることは言うまでもない。
【0023】
傾斜体29は、図2〜図4に示すように、三角錐状の形態をなしており、室内熱交換器25に対向する傾斜面29aを備えている。傾斜面29aは、その底辺29b(三角形の底辺)が上壁(天面)21aに接しており、上壁21aから離れるのにしたがって、面積が小さくなる。この例では、当該底辺に対向する頂点29cが側壁21bの下端縁に近接している。
以上の傾斜体29を設けることで、角部21eの段差が緩やかになり、仕切板42からケーシング21の直線部21cにかけてターボファン22吐出側周方向に発生する羽根22aにとっての圧力の変化を緩和、つまり小さくすることができる。
【0024】
そして、空調用室内ユニット11においては、室内の空気は、モータにより回転駆動するターボファン22の働きにより、吸込口23からケーシング21の内部に流入する。この吸込口23から流入した空気は、ベルマウス24によりターボファン22の内部に導かれ、昇圧される。つまり、複数の羽根22aにより、ここを通過した空気にエネルギが与えられる。
【0025】
ターボファン22により昇圧されることで、エネルギが高められた空気は、室内熱交換器25に至る。そして、この空気は、ターボファン22と室内熱交換器25との間に周方向に沿って形成された空間部を旋回しながら、室内熱交換器25を通過し、ここで室内熱交換器25の内部の冷媒と熱交換する。室内熱交換器25を通過した空気は、室内熱交換器25のフィンに沿って外側に流れ、さらに、側壁21bに沿って鉛直方向に流れの向きを変え、吹出口26から室内に供給される。このとき、傾斜体29は、ターボファン22の吐出側の空気の羽根22aにとっての圧力変化を小さくできるので、NZ音の発生が抑制される。また、吹出口26は三角形状の傾斜面29aの頂点29c側に位置するので、吹出口26を塞ぐことなく、かつ圧損を増やすことなくNZ音の発生を抑制できる。なお、この効果の一例を図11(a)に示すが、3次のNZ音を低減できることが実験により確認された。
【0026】
なお、以上の実施形態においては角部21eに傾斜体29を設けたが、設ける場所はここに限定されるものではない。例えば、他の3つの角部21dのいずれか一つ又は全部に選択的に傾斜体29を設けることができる。
また、傾斜体29の形態はこれに限定されず、角部の段差を緩やかにすることで発生する羽根22aにとっての圧力変化を小さくする形態を本発明は広く採用することができる。
【0027】
さらに、以上の実施形態では吹出口26を4つ備える例を示しているが、吹出口を2つ備える空調用室内ユニットに本発明を適用できる。このユニットは、よく知られているように、各々が長めに設定された2つの吹出口が所定の間隔を隔てて平行に配置されている。図5に、これに適したケーシング121が示されている。このケーシング121は、4つの角部121dの全てに傾斜体129を設けている。この傾斜体129は、室内熱交換器25に対向する傾斜面129aが不定形をなしているが、いずれも天面121側から離れるのにしたがって面積が小さくなる点で傾斜体29(傾斜面29a)と同じである。
【0028】
以上説明した第1実施形態では、傾斜体29が側壁21bに接している例を示しているが、側壁21bと傾斜体29の間に隙間があっても、傾斜体29による効果を得ることができる。ただし、傾斜29が側壁21bに接している方が、傾斜体29による効果は大きい。
また、傾斜体29の室内熱交換器25に対向する面は、平坦面に限らず、湾曲した面であっても、その効果を得ることができる。
さらに、傾斜体29の仕様、例えば、天面21a側における角部21d,21eからの張出し寸法、傾斜体29の上下方向の寸法、傾斜面の傾斜度合いは、傾斜体29が設けられる空調用室内ユニット11に応じて適宜定めればよい。
【0029】
[第2実施形態]
以下、本発明による第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、ケーシング221を除いて天井埋込型空気調和機10の構成は第1実施形態と同じであるから、以下ではケーシング221を中心に説明する。また、第1実施形態のケーシング21と同じ構成については第1実施形態と同じ符号を付している。
ケーシング221は、図6に示すように、角部21eよりもターボファン22の回転方向(反時計回り)の後ろ側に、立ち壁229を備える。この立ち壁229は、側壁21bと天面21aに接し、側壁21bから室内熱交換器25に対向するケーシング221の内側に向けて張出している。また、立ち壁229は、天面21aから下方に向けて所定の位置まで延設している。立ち壁229は、ケーシング221の内側に対向する側面229aと、側面229aと側壁21bとを繋ぐ一対の側面229b,229cと、を備えている。側壁229b,229cは角部21d、21eに対向する。また、側壁229aと側壁229b、229cとは直交する。側面229aは側壁21bに対して傾斜している。
【0030】
第2実施形態は、図6に示すように、角部の圧力不均一場をターボファン22の羽根22aが通過することで発生した音波となる圧力変動が吹出口26へ伝播拡大するのを立ち壁229が遮断して、NZ音を低減することができる。
本発明者の検討によると、ターボファン22のある回転数における高次のNZ音の周波数と一致する四つの角部が腹となる音響振動モードの発生を抑えることにより、当該周波数と合致した高次のNZ音の増幅を抑制することができる。その実験例を図11(b)に示す。
【0031】
立ち壁229は側面229aが傾斜しているが、ターボファン22から到達する圧力波W1が立ち壁229の側面229aに衝突するタイミングを立ち壁229の高さ方向でずらすことで、圧力波が増幅するのを抑えることができる。また、立ち壁229が吹出口26への空気の流れの抵抗となるのを抑えることができる。
【0032】
以上の例では、ケーシング21の内側に対向する側面229aを傾斜面としているが、図7(a)に示すように、角部21eに対向する側面229bを傾斜面とすることもできる。そうすることで、以下の効果を奏する。
側面229bは角部21eからの距離が先端のL1と基端のL2とで相違している。したがって、ケーシング21の角部21eで反射して到達する圧力波が立ち壁229に衝突するタイミングがその高さ方向の位置によりずれることで、圧力波W2が増幅するのを抑えることができる。
また、圧力波W2が角部21eと立ち壁229の間で往来する距離が異なるので位相がずれ、圧力波W2が増幅するのを避けることができる。このことが図7(b)に示されている。つまり、側面229aの基端側から位置A、位置B及び位置Cにおける圧力波W2は、図7(b)のように各々の位相がずれている。側面229bの基端から先端までの全体としての圧力波は(同図の「全体」)、位置A、位置B及び位置Cにおける圧力波W2を加算したものとなるが、各々の圧力波W2の位相がずれているので、図7(c)に示す同位相の圧力波を加算したものに比べて、小さくなる。
【0033】
立ち壁229は、図8に示すように、1つの角部21eに対して2つ(複数)設けることができる。
2つの立ち壁229を設ける場合も種々の形態を採用することができる。
例えば、図9に示すように2つの立ち壁230,231を設ける。立ち壁230は角部21eの近くに配置され、立ち壁231は立ち壁230よりも角部21eから遠くに配置される。そして、角部21eから立ち壁230までの距離L3と、立ち壁230から立ち壁231までの距離L4と、は相違する(L3<L4)。そうすることで、角部21eから反射した圧力波W2が、角部21eと立ち壁230の間と、角部21eと立ち壁231の間で、行き来する距離が異なるためにお互いの位相がずれ、これら圧力波W2が増幅するのを抑えることができる。なお、角部21eで反射した圧力波W2は、立ち壁230で遮られるが、回折されることにより、角部21eと立ち壁231の間で行き来する。また、立ち壁230と立ち壁231の間においても、圧力波W2の行き来は生じるが、これも、角部21eと立ち壁230の間、及び、角部21eと立ち壁231の間、とは行き来する距離が異なるため、圧力波W2が増幅するのを抑えるのに寄与する。
【0034】
図9に示す形態は、立ち壁230と立ち壁230の側壁21から内側に突出する量(以下、単に突出量)が同じ例を示しているが、例えば図10に示すように、2つの立ち壁232と立ち壁233の突出量を異ならせることもできる。そうすることにより、角部21eから反射する圧力波が立ち壁233に直接到達されるので、上述した効果をより顕著に得ることができる。また、図10の例では、立ち壁233は、角部21eに対向する側面233bを傾斜面としているので、図7を用いて説明したように、圧力波が増幅するのを抑える効果も享受できる。
【0035】
以上説明した第2実施形態では、立ち壁229(立ち壁330〜333も同様)が側壁21bに接している例を示しているが、側壁21bと立ち壁229の間に隙間があっても、立ち壁229による効果を得ることができる。ただし、立ち壁229が側壁21bに接している方が、立ち壁229による効果は大きい。
また、以上説明した第2実施形態では、傾斜面としての側面229bは、上壁21aから離れるのにしたがって側壁21bに近づくように傾斜しているが、傾斜がこれとは逆、つまり、上壁21aから離れるのにしたがって側壁21bから遠くなるように傾斜していても、傾斜面による効果を同様に得ることができる。これは、角部21e,21dに各々対向する側面229b,229cについても同様である。
さらに、立ち壁229の仕様、例えば、立ち壁229の側壁21bからの張り出し寸法、立ち壁229の上下方向の寸法、傾斜面の傾斜度合いは、立ち壁229が設けられる空調用室内ユニット11に応じて適宜定めればよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。例えば、天井埋込型空気調和機10はあくまで例示であり、変更を加えた空気調和機に本発明を適用できることは言うまでもない。また、吸音性能を有するプラスチックにより、角部21d、21eを構成し、あるいは、傾斜体29、立ち壁129を構成することは、本発明の効果をより顕著にするうえで有効である。
【符号の説明】
【0036】
10 天井埋込型空気調和機
11 空調用室内ユニット
12 空調用室外ユニット
13 冷媒配管
21,121,221 ケーシング
21a 上壁(天面)
21b,121b 側壁
21d,21e,121d 角部
22 ターボファン
23 吸込口
25 室内熱交換器
26 吹出口
29,129 傾斜体
229,230,231,232,233 立ち壁
229a,229b,229c,233b 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と上壁により区画された収容空間を有するとともに、前記収容空間に空気が流入する吸込口と、熱交換された空気を排出する吹出口と、を有するケーシングと、
前記ケーシングの前記収容空間に配置され、前記吸込口から吸込まれた空気を昇圧して送り出すファンと、
前記ファンの外周側に配置されると共に前記ファンにより送り出された空気を加熱または冷却する熱交換器と、を備え、
前記ケーシングの前記側壁は、前記熱交換器を取り囲むように矩形に形成されることで、4つの角部を有し、
少なくとも1つの前記角部に、圧力変化緩和部材が設けられる、
ことを特徴とする空調用室内ユニット。
【請求項2】
前記圧力変化緩和部材は、
前記角部を埋める傾斜体からなり、
前記傾斜体は、前記熱交換器に対向する面の面積が、前記上壁から離れるのにしたがって小さくなる、
請求項1に記載の空調用室内ユニット。
【請求項3】
前記圧力変化緩和部材は、
前記角部よりも前記ファンの回転方向の後ろ側に設けられ、前記側壁から前記熱交換器に向けて張出す単数または複数の立ち壁である
請求項1に記載の空調用室内ユニット。
【請求項4】
前記立ち壁は、前記熱交換器に対向する面が傾斜している、
請求項3に記載の空調用室内ユニット。
【請求項5】
前記立ち壁は、前記角部に対向する面が傾斜している、
請求項3または4に記載の空調用室内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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