説明

空調用床吹出し口装置

【課題】床面への取り付け設置を簡易的に行うことができて、設置機器類全体から室内天井付近などのそれぞれの方向に向けた広範囲の指向性にて空調空気を振り分け吹き出させることができ、しかも、構造がシンプルで低コストにて製作することができる空調用床吹出し口装置を提供する。
【解決手段】空調用床吹出し口装置Aであって、吹出し口Cに連通させて床面Fの裏側に取り付けられるケース部1と、このケース部1内に横架状に配設される吹出し指向性フィン2とを備えて構成されている。ケース部1は、吹出し口Cの開口形状と略同じ形状の上面吐出し口3を有する有底箱型形状に形成されて、空調空気の流れ方向Xに対して対向する一側壁面に空調空気の空気取入口4を備え、吹出し指向性フィン2は、空調空気の流れ方向Xに向け、かつ、上面吐出し口3の方向に向けた略上向き傾斜状に形成されて、空気取入口4に対して対向状に向き合うようにケース部1内に内設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用床吹出し口装置に係り、詳しくは、空調機からの空調空気(圧送空気、主に冷気)を供給路となる床下空間を流通させて床面の各要所から室内に吹き出させるために、床下(床裏面)に配設されて使用される床吹出し口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型計算機、サーバ機器、OA機器などの各種の機器類が多数台設置されているデータセンター、サーバルーム、コンピュータルームなどの大規模な室内では、設置機器類用の配線が行うことができるように床を二重床構造(フリーアクセスフロア)としている。
また、このような二重床構造の床面を有する室内では、床下空間を空調機から空調空気(圧送空気、主に冷気)を供給する供給路(床下チャンバ)として利用し、この床下空間に面する床面に設けられる吹出し口より室内に空調空気を吹き出させることで室内の空調(冷却)を行う床下空調方式が採用されていることが多い。
【0003】
ところで、近年におけるシステムの高集約化が進んでいることが原因となって、設置機器類からの発熱量が増大している室内では、床面に設けられている吹出し口から冷気を吹き出させるだけでは設置機器類から発生する熱気による温度上昇を抑えることができず、室内の一部の領域、特に、設置機器類の近傍などにおいては局所集中や熱負荷偏在などによる熱の滞留が原因となって熱溜りが発生する。この熱溜りが発生すると、設置機器類の冷却効果が極端に低下し、設置機器類に温度異常などによる障害を引き起こす。
【0004】
そこで、従来では、冷気を床面の必要とする場所(設置機器類の近く)から吹き出させるとともに、風量調整機能を備えた各種の空調用床吹出し口装置が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−174726号公報(段落番号0012、および図4などを参照)
【特許文献2】特開2006−284130号公報(段落番号0007、および図1、図2、図4などを参照)
【特許文献3】特開平10−281541号公報(段落番号0010〜0013、および図1などを参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1および特許文献2に記載されている従来技術は、空調機から床下空間を通して供給されてくる冷気を、室内の設置機器類に向けて強制的に吹き出させる上では有効なものと言える。
しかしながら、この従来技術では冷気を設置機器類に向けて強制的に吹き出させるために電動ファンを採用しているので、電気系統や電動ファンの消耗などによる故障を引き起こし易く。また、定期的なメンテナンスが必須となるなどの管理上においても大きな負担となるという課題がある。
また、このような電動方式の空調用床吹出し口装置では、電動ファンを動作させる電力を必要とするために、電力消費への配慮が望まれている近年の社会ニーズに適合しないものである。例えば、データセンターなどのように、サーバ機器以外の電力量(ランニングコスト)を極力抑えることを主眼として計画されてきている大規模な室内では、電動方式の空調用床吹出し口装置の設置が敬遠される傾向にある。
【0007】
また、このような電動方式の空調用床吹出し口装置では、床面への設置時において、配線などの作業が必要となるために、施工に時間が要する。そして、設置コストがかかるといった課題、さらに、電動方式故に製作コストが高くなるといった課題がある。
【0008】
一方、特許文献3に記載されている従来技術では、特許文献1および特許文献2のように、配線などの作業を必要とせずに床面への設置を容易に行うことができ、しかも、長期の使用において故障などを引き起こす心配がないものの、例えば、サーバルームのように、数台のサーバ機器が多段状に搭載されているサーバラックなどに対し、ラックの高さ方向に向けて冷気を万遍に吹き出し行き渡らせることができない。
そのために、冷気が届くラックの下段側に搭載されているサーバ機器から発生する熱気との混合・攪拌による空調(冷却)作用は得られるものの、冷気が届き難いラックの上段側や室内天井などにおいては、冷気との混合・攪拌が得られずに熱が滞留するおそれがある。
つまり、サーバ機器などは、内部温度を下げるために、前面や底面から風を吸い込み、背面や上面から排気するものであるが、ラックの中段から上段側におけるサーバ機器の前面やその近傍などに熱溜りが発生すると、サーバ機器は、冷気との混合・攪拌がなされていない風を再び吸い込むことになるために、前記のように冷却効果が極端に低下し、温度異常などによる障害を引き起こす結果となる。
【0009】
そこで、本発明は、前記課題を解消するために創案されたものであり、床面への取り付け設置を簡易的に行うことができて、設置機器類全体から室内天井などのそれぞれの方向に向けた広範囲の指向性にて空調空気を吹き出させることができ、しかも、構造がシンプルで低コストにて製作することができる空調用床吹出し口装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明では、床下空間を通して圧送されてくる空調空気を、床面の吹出し口から室内に吹き出させる空調用床吹出し口装置であって、
前記吹出し口に連通させて前記床面の裏側に取り付けられるケース部と、このケース部内に横架状に内設される1乃至数枚の吹出し指向性フィンと、を備えて構成され、前記ケース部は、前記吹出し口の開口形状と略同じ上面吐出し口を有する有底箱状に形成され、かつ、少なくとも前記空調空気の流れ方向に対向する周壁一側面に前記空調空気の空気取入口を備え、前記吹出し指向性フィンは、前記空調空気の流れ方向に向け、かつ、前記上面吐出し口の方向に向けた略上向き傾斜状に形成されて、前記空気取入口に対して対向させた状態で前記ケース部内に内設されていることを特徴とする。
なお、前記ケース部は、前記空調空気の吹出し口となる開口パネル(グレーチングパネルやパンチングパネルなど)の裏側に取付金具や止めネジを用いて取り付けられて、二重床構造(フリーアクセスフロア)における床面の必要場所に配設されるように、上面吐出し口の開口周縁に金具挿通孔またはネジ挿通孔を有する取付縁部材を備えている。
【0011】
ここで、前記ケース部は、前記空気取入口と対向する周壁他側面を、前記上面開口部の方向に向けた上向き傾斜状の指向性壁面としてなることが好適であり、また、前記吹出し指向性フィンは、前記ケース部内における前記空調空気の流れ方向に適宜の間隔をおいた数列にて配設されるとともに、前記指向性壁面側から前記空気取入口側に至るに従ってケース底壁から横架下端縁までの高さを次第に高くしていることが好適なものとなる。
また、前記吹出し指向性フィンは、前記上面開口部の方向に向けた上向き傾斜角度を適宜可変し得るように形成されていること、そして、前記空気取入口に、前記ケース部内への前記空調空気の取入流量を調整する開口可変部材を、さらに備えていることが好適なものとなる。
【0012】
このような構成によれば、床下空間を通して圧送(流通されてくる空調空気は、その流れ方向に対向して開口されているケース部の空気取入口からケース部内に流入される。ケース部内に流入された空調空気は、上向き傾斜角度が異なる各吹出し指向性フィンによって指向された吹出し方向にて吹出し口から室内に向けて吹き出す。
これにより、空調機から床下空間を通して圧送されてくる空調空気は、室内の必要とする場所において、必要とする方向に向けて吹き出す。例えば、熱溜りが発生し易い室内天井や設置機器類の風吸い込み前面などの必要とする方向に向けて局所的に、かつ、多くの空調空気を効率的に吹き出せることができる。
【0013】
また、空調空気を室内の必要とする方向に向けて吹き出させることを、吹出し指向性フィンと同じく、空調空気の流れ方向に向けて上向きに傾斜させたケース部の指向性壁面(空気取入口と対向する周壁面)において作用させることができる。
また、室内の必要とする方向に向けて吹き出させる空調空気の吹出し風量は、空気取入口に備えられている開口可変部材によって調整することができる。
【0014】
また、床吹出し口装置の床面への取り付け設置は、吹出し口が設けられる床面の各部要所に敷設される開口パネルの裏面に、取付部材または止めネジを用いた簡易的な作業によって行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の空調用床吹出し口装置によれば、熱溜りが発生する場所や熱気が発生する設置機器類に向けた局所的な吹出し指向性にて空調空気を吹出し口から室内に吹き出させることができる。
これにより、熱溜りを解消し、しかも、設置機器類などの必要とする方向に向けて多くの空調空気を吹き出させることができるので、設置機器類の冷却効果が極端に低下し、温度異常などによる障害を引き起こすなどを確実に防ぐことができる。
また、電力を使用することなく、局所的な吹出し指向性にて空調空気を室内に吹き出させることができるので、電力量(ランニングコスト)を極力抑えることを主眼として計画されてきているデータセンターなどの大規模な室内空調に有効である。
【0016】
また、床下空間に面する床面の裏側に取り付け設置する際に、従来技術のように、配線などを必要とせずに、開口パネルの裏面側に取り付けるという簡易的な作業によって設置することができる。
しかも、構造がシンプルであることから、取扱い性に優れ、低コストにて製作し、提供することがでる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る空調用床吹出し口装置を適用させた床下空調方式の室内の一例を示す概略図である。
【図2】同空調用床吹出し口装置を示す縦断側面図である。
【図3】図2のIII-III線縦断背面図である。
【図4】同空調用床吹出し口装置を斜め前方から見たときの斜視図である。
【図5】同空調用床吹出し装置を開口パネルの裏側に取付金具を用いて取り付けたときの状態を示す要部の縦断背面図である。
【図6】同空調用床吹出し装置を開口パネルの裏側に止めネジを用いて取り付けたときの状態を示す要部の縦断背面図である。
【図7】空気取入口に開口可変部材を備えた床吹出し装置の他の実施形態を示す要部の縦断側面図である。
【図8】吹出し指向性フィンの上向き傾斜角度を可変し得るようにした床吹出し装置の他の実施形態を示す要部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る空調用床吹出し口装置を適用させた床下空調方式の室内の一例を示す概略図であり、図2は、同空調用床吹出し口装置を示す縦断側面図であり、図3は、同縦断背面図であり、図4は、同斜視図であり、図5および図6は、要部の縦断背面図である。
【0019】
本実施形態に係る空調用床吹出し口装置(以後、「床吹出し口装置」と称する)Aは、図1に示すように、床下空調方式が採用された室内に空調空気(圧送空気、主に冷気)を吹き出す吹出し口Cを床面Fの各部要所に設けるために、該床面Fを構築する際に敷設される開口パネルPの裏側に取り付けられて、室内の壁面などに沿って設置される空調機Bから送り出される冷気が圧送される床下空間Mに吊持状に設置されるものである。
なお、図1において、矢印Xは、床下空間Mを圧送(流通)する冷気の流れ方向を示すものでる。
【0020】
≪床吹出し口装置の構成≫
床吹出し口装置Aは、図2〜図4に示すように、ケース部1と、このケース部1内に内設される吹出し指向性フィン2とを備えて構成されている。
【0021】
≪ケース部の構成≫
ケース部1は、吹出し口Cの開口形状と略同じ形状の上面吐出し口3を有する有底箱型形状に形成されている。
具体的に説明すると、ケース部1は、開口パネルPと平面視形状が略同じ形状で、開口パネルPよりも一回りほど小さい上面吐出し口3を有する有底箱型形状に形成されている。
そして、ケース部1は、図1に示すように、床下空間Mに設置された状態において、空調機Bからの冷気の流れ方向Xに対向する周壁一側面(背面壁)に空気取入口4を備えている。
さらに、ケース部1は、空気取入口4と対向する周壁他側面(前面壁)を、冷気の流れ方向Xに向けて、かつ、上面吐出し口3の方向に向けた所定角度の略上向き傾斜状に形成している。これにより、ケース部1の周壁他側面は、空気取入口4からケース部1内に流入されてくる冷気を、吹出し指向性フィン2と同様に、吹出し口Cから室内の必要とする方向に向けて吹き出させる指向性壁面5として作用するものである。
【0022】
また、ケース部1は、図3に示すように、上面吐出し口3の開口周縁における吹出し指向性フィン2が架橋状に取り付けられる周壁両側面に取付縁部材6を備えている。
【0023】
この取付縁部材6は、図5に示すように、ケース部1を開口パネルPの裏側に取付金具7を用いて取り付けるためのものであり、断面視で略L字形状を呈する型材(L形アングル材)などを用いて周壁両側面の幅寸法に相当する長さに形成されて、ケース部1にスポット溶接やネジ止めなどの固着手段によって取り付けられるようになっている。
そして、この取付縁部材6は、長さ方向(ケース部1の前後方向)の両端部側における上辺部6aに、取付金具7の後記するネジ部7a−2を挿通させるネジ挿通孔8を備えている。
これにより、開口パネルPの裏側に取付金具7を用いてケース部1を取り付けて、吹出し口Cが設けられる床面、例えば、図1に示すように、サーバラックなどの設置機器類Dの設置近傍に位置する床面Fに床吹出し装置Aを簡易的に設置することができるようにしている。
【0024】
ケース部1を開口パネルPの裏側に取り付ける取付金具7は、図5に示すように、開口パネルPに引っ掛けるように取り付けられる吊持部材7aと、この吊持部材7aのネジ部7a−2に螺着させるナット部材7bとを備えて形成されている。
吊持部材7aは、開口パネルPの格子部9の間にわたり表面側から掛止される略下向きコの字形状の引掛け部7a−1と、この引掛け部7a−1の裏面中央部において固着させるネジ部7a−2とから略T字形状に形成されている。
【0025】
また、ケース部1の開口パネルPの裏側への取り付けとして、図6に示すように、止めネジ10を用いて行うことができる。この場合、周壁両側面に備えられる取付縁部材6の上辺部6aの幅を、開口パネルPの対向する両辺縁部にそれぞれ至るように広く形成し、当該幅広上辺部6a−1にネジ挿通孔11を設けて、開口パネルP側に設けられているネジ孔12に止めネジ10を用いたネジ止めにて取り付けることができる。
これにより、前記したように、設置機器類Dの設置近傍に位置する床面Fに床吹出し装置Aを簡易的に設置することができる。
【0026】
≪吹出し指向性フィンの構成≫
吹出し指向性フィン2は、空気取入口4からケース部1内に流入されてくる冷気を、室内の必要とする方向に向けた指向性にて吹出し口Cから室内に吹き出させる役目を成すものである。
この吹出し指向性フィン2は、図2に示すように、上面吐出し口3に向けて急な傾斜を有する上辺部2aと、緩やかな傾斜を有する下辺部2bとから側面視で略くの字形状や略への字形状に形成されている。
このように形成されている吹出し指向性フィン2は、ケース部1の周壁両側面にスポット溶接やネジ止めなどの固着手段によって取り付けられることで、空気取入口4と対向させた状態でケース部1内に架橋状に、そして、冷気の流れ方向Xに向け、かつ、上面吐出し口3の方向に向けた略上向き傾斜状態でケース部1内に内設される。
【0027】
また、吹出し指向性フィン2は、図1および図2に示すように、冷気の流れ方向Xに適宜の間隔をおいた数列で、かつ、上面吐出し口3との間で成す上向き傾斜角度θ1,θ2を変えてケース部1内に配設されるとともに、指向性壁面5側から空気取入口4に至るに従ってケース底壁1aから下辺縁部2cまでの通路高さL1,L2を次第に高くしてなる。
【0028】
具体的に説明すると、吹出し指向性フィン2は、ケース部1の指向性壁面5側に位置して上向き傾斜角度θ1にて配設される吹出し指向性フィン2−1と、空気取入口4側に位置して上向き傾斜角度θ2にて配設される吹出し指向性フィン2−2との高さ(架橋板幅)を変えた2種類からなる。
そして、上辺縁部2dを上面吐出し口3側に略同じ高さ位置に合わせた状態で吹出し指向性フィン2−1の下辺縁部2cとケース底壁1aとの間の通路高さL1よりも、指向性フィン2−2の下辺縁部2cとケース底壁1aとの間の通路高さL2の方が高くなるようにしている。
【0029】
なお、前記の上向き傾斜角度θ1〜θ3については特に限定されるものではない。つまり、上向き傾斜角度θ1〜θ3は、吹出し口から室内に向けて冷気を吹き出す方向に合わせて任意に設定されるものである。
一例として挙げるならば、吹出し指向性フィン2−1の上向き傾斜角度θ1を70°、吹出し指向性フィン2−2の上向き傾斜角度θ2を80°、指向性壁面5の上向き傾斜角度θ3を60°とすることができる。また、吹出し指向性フィン2−1の上辺部2aと下辺部2bとのなす角度θ4を140°、吹出し指向性フィン2−2の上辺部2aと下辺部2bとのなす角度θ5を130°とすることができる。そして、指向性壁面5とケース部1の上面吐出し口3との成す角度θ5を60°とすることができる。
これにより、例えば、図1および図2に示すように、空気取入口4からケース部1内に流入されてくる冷気のうち、空気取入口4の開口高さ方向の上部側において流入されてくる冷気は、空気取入口4側に位置する吹出し指向性フィン2−2によって指向された吹出し方向Y1にて吹出し口Cから室内に吹き出す。そして、空気取入口4の開口高さ方向の中間部において流入されてくる冷気は、指向性壁面5側に位置する吹出し指向性フィン2−1によって指向された吹出し方向Y2にて吹出し口Cから室内に吹き出す。さらに、空気取入口4の開口高さ方向の下部側において流入されてくる空調空気K3は、指向性壁面5によって指向された吹出し方向Y3にて吹出し口Cから室内に吹き出すようになっている。
【0030】
なお、図示を省略しているが、吹出し指向性フィン2のケース部1内への内設列数は、前記の2列に限らず、3乃至5列などの数列にて内設させて、よりきめ細かな指向性にて冷気を室内に向けて吹出し口Cから吹き出させることができる。
【0031】
[作用説明]
つぎに、以上のように構成されている本実施形態に係る床吹出し口装置Aについて簡単に説明する。ここでは、図1〜図6を適宜参照しながら説明する。
床吹出し口装置Aは、図5および図6に示すように、取付金具7や止めネジ12にて開口パネルPの裏側に取り付けられた状態で床面Fの各部要所における床下空間Mに吊持状に設置される。この設置は、ケース部1の空気取入口4を空調機Bから吹き出されて床下空間Mを通して圧送されてくる冷気の流れ方向Xに対して対向させた状態で行われる。
【0032】
そして、このようにして床下空間Mに吊持状に設置される床吹出し装置Aのケース部1内に、空気取入口4から冷気が流入されてくると、図1および図2に示すように、空気取入口4の上部側からの冷気は、流入直前に位置する吹出し指向性フィン2−2によって指向された吹出し方向Y1にて吹出し口Cから室内に向けて吹き出す。そして、空気取入口4の中間部からの冷気は、指向性壁面5側に位置する吹出し指向性フィン2−2によって指向された吹出し方向Y2にて吹出し口Cから室内に向けて吹き出す。さらに、空気取入口4の下部側からの冷気は、指向性壁面5によって指向された吹出し方向Y3にて吹出し口Cから室内に向けて吹き出す。
つまり、吹出し口Cから吹出し方向Y1にて吹き出された冷気は、図1に示すように、設置機器類Bから排気された熱気が溜まり易い室内天井T側へ向けて吹き出し、当該天井T側に溜まる熱気との混合・攪拌が行われて熱溜りを防ぐ。
また、吹出し方向Y2にて吹き出された冷気は、設置機器類Bの高さ方向の上半部側に向けて吹き出し、当該上半部側において滞留している熱との混合・攪拌が行われ、また、吹出し方向Y3にて吹き出された冷気は、サーバラックなどの設置機器類Bの高さ方向の下半部側に向けて吹き出し、当該下半部側において滞留している熱との混合・攪拌が行われる。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る床吹出し装置Aによれば、設置機器類B全体から室内天井Tなどにおける空調(冷却)が床下空間Mから室内に吹き出す冷気によって確実に行われることとなり、設置機器類Bの冷却効果が低下することがなく温度管理を継続的に、かつ、良好に行うことができる。
【0034】
[他の実施形態の説明]
図7は、空気取入口に開口可変部材を備えた床吹出し装置の他の実施形態を示す要部の縦断側面図である。
また、本実施形態に係る床吹出し装置Aは、図7に示すように、室内への冷気の吹出し風量を調整するための開口可変部材13をケース部1の空気取入口4に備えた構成を採用している。
【0035】
開口可変部材13は、空気取入口4の縦方向に沿わせてブラインド状に並設される多数枚の開閉羽根13aと、この開閉羽根13a群を開方向と閉方向に回動させる調整軸部13bとから構成されている。
そして、開口可変部材13の調整軸部13bは、開閉羽根13a群と連繋されてケース部1の上面吹出し口3からケース底壁1aに向けて配設され、上端にはドライバなどの適宜の工具を噛合連繋されるための噛合溝などを有する頭部14を備えている。
これにより、開口パネルPの上面(床上)から開閉羽根13a群を開方向と閉方向に回動させて空気取入口4からケース部1内への冷気の流入風量を調整し得るようにしている。つまり、吹出し口Cから室内への冷気の吹出し風量の調整を、開口パネルPの上面から手軽に行うことができるようになっている。
【0036】
なお、図示を省略しているが、開閉羽根13a群を空気取入口4に横方向に沿わせて並設させた並設形態、または、吹出し指向性フィン2による室内への吹出し方向に障害が出ないように、ケース部1の上面吐出し口3に沿わせて多数枚の開閉羽根を並設させた並設形態として、吹出し口Cから室内への冷気の吹出し風量の調整を行うことができるようにすることもできる。
【0037】
[他の実施形態の説明]
図8は、吹出し指向性フィンの上向き傾斜角度を可変し得るようにした床吹出し装置の他の実施形態を示す要部の縦断側面図である。
また、本実施形態に係る床吹出し装置Aは、図8に示すように、吹出し指向性フィン2の上面吐出し口3方向に向けた上向き傾斜角度を任意に調整可変し得るように、吹出し指向性フィン2をケース部1内に内設させた構成を採用している。
【0038】
この実施形態では、吹出し指向性フィン20の上辺縁部20d側をケース部1の周壁両側面に回動自在に枢着し、下辺縁部20c側には周壁両側面にそれぞれ設けた略弓形の長孔15から外部に飛び出す螺軸16を備えるとともに、当該外部において螺軸16に螺合される摘み17を備えている。
これにより、摘み17を緩めることで、上辺縁部20d側の枢着部Zを支点に吹出し指向性フィン20の上向き傾斜角度θを任意に調整することができる。つまり、吹出し口Cから室内への冷気の吹出し指向性を任意に調整することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項6に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、ケース部1の空気取入口4をラッパ口形状に形成、特に横幅方向に広く拡開させたラッパ口形状に形成することができる。これにより、ケース部1が小さく形成されていても、ラッパ口形状の空気取入口から多くの冷気をケース部1内に取り込みながら、吹出し口Cから室内に吹き出させることができる。
【0040】
また、空気取入口4は、床下空間Mの冷気の流れ方向Xに対向するケース部1の周壁一側面(背面)側のみに設けた一方向のみならず、周壁両側面のうち、一方または双方に設けた二方向または三方向とすることができる。この場合、吹出し指向性フィン2を取り付けるための縦枠部材などを開口する周壁両側面の一方または双方に設ける。
【符号の説明】
【0041】
A 床吹出し装置
1 ケース部
1a ケース底壁
2,20 吹出し指向性フィン
2a 上辺部
2b 下辺部
2c,20c 下辺縁部
2d,20d 上辺縁部
3 上面吐出し口
4 空気取入口
5 指向性壁面
6 取付縁部材
7 取付金具
12 止めネジ
13 開口可変部材
B 空調機
C 吹出し口
F 床面
P 開口パネル
T 室内天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下空間を通して圧送されてくる空調空気を、床面の吹出し口から室内に吹き出させる空調用床吹出し口装置であって、
前記吹出し口に連通させて前記床面の裏側に取り付けられるケース部と、このケース部内に横架状に内設される1乃至数枚の吹出し指向性フィンと、を備えて構成され、
前記ケース部は、前記吹出し口の開口形状と略同じ上面吐出し口を有する有底箱型形状に形成され、かつ、少なくとも前記空調空気の流れ方向に対向する周壁一側面に前記空調空気の空気取入口を備え、
前記吹出し指向性フィンは、前記空調空気の流れ方向に向け、かつ、前記上面吐出し口の方向に向けた略上向き傾斜状にて形成されて、前記空気取入口に対して対向させた状態で前記ケース部内に内設されることを特徴とする空調用床吹出し口装置。
【請求項2】
前記ケース部は、前記空気取入口と対向する周壁他側面を、前記空調空気の流れ方向に向けた上向き傾斜状の指向性壁面としてなることを特徴とする請求項1に記載の空調用床吹出し口装置。
【請求項3】
前記吹出し指向性フィンは、前記空調空気の流れ方向に適宜の間隔をおいた数列で、かつ、上向き傾斜角度を変えて前記ケース部内に配設されているとともに、前記指向性壁面側から前記空気取入口に至るに従ってケース底壁から下辺縁部までの通路高さを次第に高くしてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調用床吹出し口装置。
【請求項4】
前記吹出し指向性フィンは、前記上面吐出し口の方向に向けた上向き傾斜角度を適宜可変し得るように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調用床吹出し口装置。
【請求項5】
前記空気取入口に、前記上面吹出し口からの室内への前記空調空気の吹出し風量を調整する開口可変部材を、さらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空調用床吹出し口装置。
【請求項6】
前記ケース部の前記上面吐出し口の開口縁辺部に、前記吹出し口となる開口パネルの裏面側に取付金具または止めネジを用いて取り付ける取付縁部材を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空調用床吹出し口装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate