説明

空調装置付き高気圧エアーチェンバー

【課題】 この発明は、高気圧エアーチェンバー内の環境を使用者にとって最適な環境にすることにある。
【解決手段】 人体を収容できる高気圧エアーチェンバーの本体部10内に高圧空気を供給する空気供給機構200を備え、空気供給機構20と本体部10内とを繋ぐ空気給気路にサーモモジュール53を備えた熱交換装置50が配置され、本体部10内に設けられた温度センサ61の出力に応じて制御部60がサーモモジュール53の出力を制御し、本体部10内に供給する高圧空気の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高気圧の密閉環境を作り出す高気圧エアーチェンバーに関し、特にチェンバー内の空調に関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉された空間内を通常の大気圧以上に気圧を上げ、その空間内に使用者が一定時間留まることにより、美容、健康増進などをはかる加圧空気チェンバーがある。
【0003】
従来から、この種の装置は、例えば、高気圧エアーチェンバーとして、気密を保持し得る布状シートから形成された円筒の袋状のもので、ファスナーの開閉部を有するものが使用されていた。このような高気圧エアーチェンバーは、長手方向に設けられたファスナーを開けてそこから人が入って内部に横たわり、ファスナーを閉めてから内部空間に徐々に空気を送り込んで1.3気圧前後の高気圧環境を作り出すものである。このような高気圧の密閉空間内に数十分〜数時間程度寝ることで、筋肉や靭帯の損傷・骨折等の早期治癒や、筋肉の軽い疲労感の解消や、血液の循環を促進することができるものである。
【0004】
このような従来型の高気圧エアーチェンバーは、骨折等の早期治癒や筋肉疲労の解消効果があるため、従来はスポーツ選手等によく利用されていた。ところが近年では、血液循環の促進効果に基づいてエステティック美容分野等における利用が検討されている。
【0005】
ところで、内部空間に空気を送るために加圧ポンプを使用しているが、その駆動源であるモータ等からの発熱により、高気圧エアーチェンバー内に供給される空気が温風となり、チェンバー内の温度が上昇し、チェンバー内の使用者に不快感を与える等の問題がある。
【0006】
このチェンバー内の温度の上昇を防止するために、保冷剤とラジエタで構成した冷却装置で、供給される空気の熱を取り、カプセル内の温度上昇を回避する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−143590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に記載のものにおいては、保冷剤の効果がある場合には、ある程度供給空気の温度を下げることができるが、保冷剤の効果がなくなると供給空気の温度を下げることはできない。このため、保冷剤を交換する等の手間がかかる。
【0009】
また、供給空気の温度制御は、保冷剤の温度に左右されるため、好ましい温度制御はできないという問題がある。
【0010】
この発明の目的は、上記した従来の問題点に鑑みなされたものにして、高気圧エアーチェンバー内の環境を使用者にとって最適な環境にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、人体を収容できる高気圧エアーチェンバー内に高圧空気を供給する空気供給機構を備え、空気供給機構とチェンバーとを繋ぐ空気給気路にサーモモジュールを備えた熱交換装置が配置され、チェンバー内の温度に対応してサーモモジュールの出力を制御し、チェンバー内に供給する高圧空気の温度を制御することを特徴とする。
【0012】
また、前記空気供給機構は、コンプレッサを有する空気供給装置と、空気供給装置に接続された給気パイプと、給気パイプに接続され供給される空気を所定の温度に変換する熱交換装置と、熱交換装置に接続された給気パイプと、前記チェンバー内の下方部に設けられた空気排出ダクトと、を備えて構成することができる。
【0013】
また、前記チェンバー内の温度を測定する温度センサと、前記サーモモジュールに与える電流量を制御する制御部とを、備え、前記制御部は、温度センサの出力に応じて、サーモモジュールに与える電流量を制御し、前記チェンバー内に供給する高圧空気の温度を制御するように構成すればよい。
【発明の効果】
【0014】
この実施形態によれば、チャンバー内に供給する高圧空気の温度を制御することができるので、室内温度に関係なくチャンバー内を使用者に最適な環境に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の高気圧エアーチェンバーの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】この発明の高気圧エアーチェンバーの一実施形態においてドアを開けた状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の高気圧エアーチェンバーの各構成部分示す模式図である。
【図4】この発明の高気圧エアーチェンバーに用いられる空気供給機構の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の高気圧エアーチェンバーに用いられる熱交換装置を示す上面図である。
【図6】この発明の高気圧エアーチェンバーに用いられる熱交換装置のサーモモジュールを取り外した状態の上面図である。
【図7】この発明の高気圧エアーチェンバーに用いられる熱交換装置のサーモモジュールを取り外した状態の側面図である。
【図8】この発明の高気圧エアーチェンバーに用いられる空気供給装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0017】
図1はこの発明の高気圧エアーチェンバーの一実施形態を示す斜視図、図2はドアを開けた状態を示す斜視図、図3はこの発明の高気圧エアーチェンバーの各構成部分示す模式図である。
【0018】
図1ないし図3に示すように、高気圧エアーチェンバーは、FRPを主体として形成された本体部10と本体部10に開閉自在に装着されたドア14を備える。
【0019】
この実施形態の本体部10は、ベース部11と中間部12と上部13に、側面から見て斜め方向に3分割可能に構成されており、ベース部11と中間部12の接地面と接触する箇所の所定の位置に複数の台座16(又はキャスター)が設けられている。ベース部11と中間部12のそれぞれ斜め方向の接触面とが密閉状態でかみ合わされるように形成され、両者の接触面を合わせて、図示しないボルト、ナットにより両者が組み付けられる。中間部12と上部13のそれぞれ斜め方向の接触面が密閉状態でかみ合わされるように形成され、両者の接触面を合わせて、図示しないボルト、ナットにより両者が組み付けられる。これらベース部11、中間部12、上部13を組み付けることにより、本体部10が形成される。各部11、12、13を組み合わせた本体部10は、各部の接合部から空気が漏れないように、密閉状態で組み付けられるように構成されている。
【0020】
上部13には、人の進入、退出を行う開口部130が前方向に面して設けられる。そして、この開口部130を密閉するように閉じるドア14がヒンジ131により開閉自在に取り付けられ、ダンパー17にて容易な開閉を可能にしている。ドア14は、前方から上方向に大きく解放可能なように取り付けられ、使用者の侵入、退出を容易にしている。
【0021】
本体部10の内部には、リクライニングが可能な椅子20が設置されている。ドア14には、窓18が設けられ、椅子20に座った使用者の状態を確認できるとともに、使用者も外部を視認することができる。
【0022】
本体部10の側面には、外部よりドア14をロックまたは解除するためのレバー30が設けられている。
【0023】
本体部10には、当該高気圧エアーチェンバー内に高気圧の空気を供給するために、空気供給機構200が設けられている。この空気供給機構200は、ロータリーポンプなどで構成された空気供給装置40と、この空気供給装置40に接続された給気パイプ41と、給気パイプ41に接続され供給される空気を所定の温度に変換する熱交換装置50と、熱交換装置50に接続された給気パイプ52と、本体部10内の下方部に設けられた空気排出ダクト53と、を備える。
【0024】
本体部10には、本体内を所定の圧力に調整するための圧力調整バルブ63が設けられている。そして、本体部10内には、本体部10内の温度を測定するための温度センサ61と本体部10内の圧力を測定するための圧力センサ62が設けられている。
【0025】
温度センサ61、圧力センサ62の出力は、高気圧エアーチェンバーの動作を制御するためのマイクロコンピュータ等で構成された制御部60に与えられる。この制御部60は、与えられたセンサ出力により、熱交換装置50の動作並びに圧力調整バルブ63の動作を制御し、本体部10内を所定の圧力並びに所定の温度に維持する。
【0026】
制御部60には、操作パネルなどを有する操作部30からの指示出力が与えられ、操作部30にて入力した本体部10内の温度、圧力、動作時間に応じて制御部60は、熱交換装置50、空気供給装置40、圧力調整バルブ63等を制御する。
【0027】
図4は空気供給機構の構成を示すブロック図、図5は熱交換装置を示す上面図、図6は熱交換装置のサーモモジュールを取り外した状態の上面図、図7は熱交換装置のサーモモジュールを取り外した状態の側面図、図8は空気供給装置を示す斜視図である。
【0028】
図4及び図8に示すように、空気供給装置40には、モータを駆動源とするコンプレッサ40a、コンプレッサ40aからの高圧空気を空冷ファン43の空冷による熱交換で冷却するラジエタ42を備えている。コンプレッサ40からの高圧空気は給気パイプ41からラジエタ42内を通り、このラジエタ42により、コンプレッサ40にて室温より20℃程度上昇した高圧空気が10℃程度冷却され、給気パイプ41より熱交換装置50に与えられる。
【0029】
図4〜図7に示すように、熱交換装置50は、ペルチェ素子を有するサーモモジュール53で構成され、ラジエタ42で冷却された高圧空気をサーモモジュール53で更に冷却し、給気パイプ52から所望の温度、例えば、18℃〜21℃の温度に温度調整された高圧空気が空気排出ダクト53より排出される。
【0030】
熱交換装置50は、この実施形態では、熱伝導率の良好な金属、例えばアルミニウムなどで構成された筺体56に、4個のサーモモジュール53が装着されている。すなわち、筺体56の対向する面に2個ずつサーモモジュール53が装着されている。サーモモジュール53は、例えば、ペルチェ素子の規格が57Wのものが用いられ、ペルチェ素子に取り付けられたヒートシンク54をファン55で排熱するように構成されている。
【0031】
筺体56の中には、給気パイプ41、51と接続される温度調整用パイプ52aが複数回曲げられて配設され、そして、この筺体56内には温度調整用の水など液体が充填され、この液体をサーモモジュール53で冷却若しくは加熱することにより、温度調整用パイプ52a内を流れる高圧空気を冷却または加熱して、給気パイプ52から空気排出ダクト53に送られ、本体部10内に所定の温度の高圧空気が排出される。
【0032】
上記の熱交換装置50は、本体部10内の温度を10℃下げるのに約10分、10℃上昇させるのに約5分で行える。所定の温度に到達すると、制御部60は、熱交換装置50のサーモモジュール53に与える電流量を制御する。
【0033】
次に、この高気圧エアーチェンバーにおける高圧空気供給動作につき説明する。高気圧エアーチェンバーを使用する際には、操作部30にて、本体部10内の温度、圧力を設定する。本体部10内は、大気圧よりも気圧が高い高気圧状態に維持された密閉空間を構成する。気圧は1.0気圧〜1.3気圧の間に設定され、本体部10内の温度は20℃〜23℃の間に設定される。本体部10内の温度は20℃〜23℃の間に設定する場合には、空気排出ダクト53より排出して供給される高圧空気は18℃〜21℃の間の温度に制御される。
【0034】
制御部60は、本体部10内に設けた圧力センサ62及び温度センサ61より圧力調整バルブ63,熱交換装置50を制御する。
【0035】
まず、室内温度が高く、空気供給装置40より与えられる空気が18℃〜21℃よりも高い場合、例えば、10℃以上高い場合には、制御部60は、サーモモジュール53がフルパワーで冷却するように、ペルチェ素子に規格値の最大量に近い電流を流すように制御する。この時ペルチェ素子に与える電流は、規格の90%程度の電流を与える。
【0036】
サーモモジュール53のペルチェ素子は与えられた電流により、筺体56内の液体を冷却し、温度調整用パイプ52a内を流れる高圧空気を冷却する。この時、ペルチェ素子はヒートシンク54、ファン55により、外部側は放熱され、効率良く筺体56内の液体を冷却する。
【0037】
制御部60は、温度センサ61の出力により、本体部10内の温度を判断し、本体部10内の温度が、設定された温度に近づくと、サーモモジュール53へ与える電流量を制御して、サーモモジュール53の動作出力を小さくする。この制御は、サーモモジュール53自体に与える電流量を少なく制御したり、また、サーモモジュール53の駆動をパルス制御で行っている場合には、パルス幅を制御したり、与える電流のON/OFF期間の制御を行うことにより、適宜制御すればよい。
【0038】
また、制御部60が圧力センサ62の出力により、本体部10内が所定の圧力以上になると、圧力調整バルブ63により、本体部10内の空気を外部に排出し、圧力を調整する。
【0039】
このように、この実施形態によれば、温度センサ61と圧力センサ62の出力に応じて、本体部10内に供給する高圧空気の温度を制御するとともに、本体部10内の圧力を所望の圧力に制御できるので、本体部10内は使用者に最適な環境に維持することができる。
【0040】
次に、室内温度が低く、空気供給装置40より与えられる空気が18℃〜21℃よりも低い場合には、制御部60は、サーモモジュール53が規格値の最大量に近いフルパワーで加熱するように、ペルチェ素子に電流を流すように制御する。この時ペルチェ素子に与える電流は、規格の90%程度の電流を与える。ペルチェ素子は与える電流の方向により、冷却、加熱を容易に切り替えることができる。
【0041】
サーモモジュール53のペルチェ素子は与えられた電流により、筺体56内の液体を加熱し、温度調整パイプ52a内を流れる高圧空気を加熱する。この時、ペルチェ素子はヒートシンク54、ファン55により、外部側は放熱され、効率良く筺体56内の液体を加熱する。
【0042】
制御部60は、温度センサ61の出力により、本体部10内の温度を判断し、本体部10内の温度が、設定された温度に近づくと、サーモモジュール53へ与える電流量を前述と同様に制御して、サーモモジュール53の動作出力を小さくする。
【0043】
このように、この実施形態によれば、室内温度が低い場合においても、温度センサ61と圧力センサ62の出力に応じて、本体部10内に供給する高圧空気の温度を制御するとともに、本体部10内の圧力を所望の圧力に制御できるので、本体部10内は使用者に最適な環境に維持することができる。
【0044】
なお、上記した実施形態においては、空気供給装置40には、コンプレッサ40aからの高圧空気を空冷ファン43の空冷による熱交換で冷却するラジエタ42を備えているが、ラジエタ42を無くし、コンプレッサ40aから直接熱交換装置に高圧空気を与えるように構成してもよい。ただし、この場合、熱交換装置の負荷が大きくなるので、所定の温度に到達するまでの時間が多くかかる。
【0045】
また、上記した実施形態においては、高気圧エアーチェンバーは、FRPを主体として形成された本体部を用いているがこれに限らず、気密を保持し得る布状シートから形成された円筒の袋状のもので、ファスナーの開閉部を有するもの等にも適用できる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 本体部
40 空気供給装置
40a コンプレッサ
41 給気パイプ
42 ラジエタ
43 空冷ファン
50 熱交換装置
52 給気パイプ
52a 温度調整用パイプ
53 サーモモジュール
54 ヒートシンク
55 ファン
53 空気排出ダクト
60 制御部
61 温度センサ
62 圧力センサ
200 空気供給機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を収容できる高気圧エアーチェンバー内に高圧空気を供給する空気供給機構を備え、空気供給機構とチェンバーとを繋ぐ空気給気路にサーモモジュールを備えた熱交換装置が配置され、チェンバー内の温度に対応してサーモモジュールの出力を制御し、チェンバー内に供給する高圧空気の温度を制御することを特徴とする空調装置付き高気圧エアーチェンバー。
【請求項2】
前記空気供給機構は、コンプレッサを有する空気供給装置と、空気供給装置に接続された給気パイプと、給気パイプに接続され供給される空気を所定の温度に変換する熱交換装置と、熱交換装置に接続された給気パイプと、前記チェンバー内の下方部に設けられた空気排出ダクトと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の空調装置付き高気圧エアーチェンバー。
【請求項3】
前記チェンバー内の温度を測定する温度センサと、前記サーモモジュールに与える電流量を制御する制御部とを、備え、前記制御部は、温度センサの出力に応じて、サーモモジュールに与える電流量を制御し、前記チェンバー内に供給する高圧空気の温度を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調装置付き高気圧エアーチェンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−207412(P2010−207412A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57057(P2009−57057)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(592051213)株式会社フジワーク (4)
【Fターム(参考)】