説明

空調装置筐体

【課題】追加組立手順が不要で、特に筐体部品を組立又は分解するためのスペースが小さく、容易に、かつ素早く組み立てることができる、自動車の暖房、換気又は空調ユニット用の空調装置の筐体ユニットを提供する。
【解決手段】凸部4を有する第1の筐体部品2と、溝5を有する第2の筐体部品3とが、少なくとも1つの実矧ぎ継ぎ連結部1、4、5を用いて確実に固定される空調装置筐体であって、第1の筐体部品2は、凸部4の延長部分として形成され、少なくとも局部で、溝5に設けられた切り欠きにかみ合うことができる少なくとも一つの掛け金の先端を有し、もって空調装置筐体は、凸部4が第2の筐体部品3の溝5に嵌合する実矧ぎ継ぎによる連結機構と、凸部4の掛け金の先端が切り欠きにかみ合う係合による連結機構とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置の筐体、詳細には、少なくとも2つの筐体部品を含む、自動車の暖房または換気装置に関するものであり、筐体部品は、請求項1に一般的に記載されている、少なくとも1つの実矧ぎ継ぎ連結部と、掛け金の先端及び切り欠きのかみ合いによる少なくとも1つの係合部とを用いて、装置に確実に固定することができる。
【背景技術】
【0002】
空調装置筐体の組立てに際しては、技術者は、筐体部品をできるだけ素早く取り付ける必要があること、十分なレベルの密閉を達成すること、および取り付け、保守などのために車内で利用できるスペースの量について、特に考慮する必要がある。
【0003】
最新式の空調装置は、通常、いくつかの筐体部品を用いて製造される。密閉連結部は、しばしば、筐体部品を取り囲むセルフクリッピングデバイスを用いて、あるいはボルト締め、固着または溶接などによって行われる。
【0004】
実開昭58-163305号(特許文献1)及び実開昭60-030806号(特許文献2)には、それぞれ、少なくとも2つの筐体部品を含む、自動車の暖房、換気または空調ユニット用の空調装置の筐体であって、上記筐体部品は、少なくとも1つの実矧ぎ継ぎ連結部を用いて固定されることが可能となっており、かつ上記筐体部品の凸部は、少なくとも局部で、溝に設けられている切り欠きにかみ合わされるようになっている、最少の1つの掛け金の先端を含む空調装置の筐体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58-163305号公報
【特許文献2】実開昭60-030806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空調装置筐体の組立が面倒になるか、または余分の部品を必要とするので、比較的コストがかかり、また、例えば、セルフクリッピングデバイスの場合には、セルフクリッピングデバイスを開閉するために、十分なスペースを確保しなければならないので、従来のものは満足しうるものではない。
【0007】
また特許文献1及び2では、実矧ぎ継ぎ連結部と、凸部及び切り欠きによるかみ合わせ連結部とが並行に設けられている(凸部及び切り欠きによるかみ合わせ連結部が、実矧ぎ継ぎ連結部の外側に設けられている)ので、連結部全体に大きなスペースを要し、しかも密閉度が十分とはいえなかった。
【0008】
本発明の目的は、上述の追加組立手順のいずれも必要とせずに、特に、筐体部品を組立または分解するために余分のスペースを必要とせずに、容易に、かつ素早く組み立てることができる、空調装置の筐体ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特に自動車の暖房、換気、または空調装置用の、少なくとも2つの筐体部品を含む空調装置筐体を提案するもので、筐体部品は、少なくとも1つの実矧ぎ継ぎ連結部を用いて、装置にほぼ確実に固定することが可能であり、凸部は、少なくとも局部で、凸部の切り欠きにかみ合わされ得る掛け金先端と係合するようになっている。
【0010】
換言すれば、本発明は、連結部品が実矧ぎ継ぎ連結部自体に含まれる、少なくとも2つの筐体部品用の連結機構を提案するものである。
【0011】
ここで、1つの筐体部品が、このために、他の筐体部品に設けられた溝と嵌合しうる、ある種の凸部を備えていることを理解されたい。形状を適切に選ぶことによって、このために設けられる実矧ぎ継ぎ表面は、いわゆるラビリンスシールを形成する。ラビリンスシールは、密閉リップなどのような追加の密閉デバイスを備えることができる。
【0012】
普通の技術者が、筐体部品間に可能な最高の密閉を得ることを求めず、従って、実矧ぎ継ぎ連結部が密閉機能を低下させることもあり得るとき、密閉材料は、実矧ぎ継ぎ連結部に使用されないので、普通の技術者は、通常これを考慮しないということに留意する必要がある。
【0013】
さらに、掛け金機構は、実矧ぎ継ぎ連結部の全範囲と嵌合し得ることを理解すべきである。換言すれば、本質的に実矧ぎ継ぎ連結部の全作動面は、掛け金機構を備えることができる。このことは、例えば、高圧下で動作するか、または激しい振動に曝されることになる空調装置筐体ユニットにおいて有利である。
【0014】
ここで提案する筐体部品連結の場合には、外側セルフクリッピング機構がないので、または、掛け金機構が実矧ぎ継ぎ連結部自体の部位に含まれるために、考慮する必要がなく、組立または保守のための追加スペースの必要はない。
【0015】
さらに、掛け金機構を用いて、筐体部品は、密閉が必要である部位に正確に力を入れてパチンと閉じられる。従って余分の補強などは、力を密閉部位に向けるために、筐体部品と嵌合する必要がない。
【0016】
本発明によると、例えば固着または溶接のような追加手順の必要が無くなる。
【0017】
掛け金の先端は、バネ作用により、これを他の筐体部品に押し付ける凸部の表面部位と有利に相互作用する面を呈する。
【0018】
想定される表面は、丸みを帯びるか、面取りされ、または同様に嵌合するようになっている。表面形状の重要な態様は、表面を集めることによって、凸部を他の筐体部品に押し付けるようにすることである。その結果、凸部を他の筐体部品に押し付けるある許容範囲を、十分な密閉をより簡単な組立手順で達成するために設定することができる。
【0019】
好ましい設計は、掛け金の先端を、凸部の延長部分として構成することである。このようにすると、掛け金の先端を、凸部の延長方向に沿って溝に挿入することが可能であり、これは、特に簡単な形状でよく、製造することも容易である。
【0020】
さらに、切り込みは、掛け金の先端が挿入される通過開口を画定していると、有利である。このようにして、筐体部品の確実な連結は、掛け金の先端が、溝または通過開口を貫通して完全に挿入された後に、やっと達成される。従って、最適な連結を生じる位置決めを、組立時に容易に把握することができる。さらに、このような形状は、製造するのが特に簡単である。
【0021】
掛け金の先端は、ラッチの方向に対して、直角に好ましく曲がっている。この曲がった掛け金の先端の場合には、掛け金の先端は、組立時にほとんど変形せず、むしろ溝は外側へ押される。従って、掛け金の先端が、組立時に変形または破壊する恐れは、無視できるほど小さい。
【0022】
有利な設計では、掛け金の先端は、少なくとも1つの鋸歯形状の部位を有する。このように、関係している筐体部品が階段状に連結され得るように、鋸歯形状は、凸部の一表面部位と相互作用する。確実なラッチは、例えば、すべての嵌合ラッチ連結部、または実矧ぎ継ぎ連結部が集められた後にだけ起きるので、組立中に、位置決めに関していくつかの補正を行うことができる。
【0023】
さらに、掛け金の先端が、通過開口を貫通して挿入される部位で、密閉リップを、すべての筐体部品と嵌合させることが有利である。これは、任意の所要の密閉機能を提供するか、または密閉の有効性を増大させる、最も簡単な方法であろう。
【0024】
さらに、射出成形プロセスを用いて、筐体部品を製造することが有利であり、これにより、空調装置の筐体ユニットを、本発明に基づいて、安くかつ容易に製造することが可能になる。さらに、いわゆる2成分射出成形プロセスの場合には、密閉リップまたは密閉積層は、1つのプロセス工程で製作することができる。
【0025】
本発明の他の利点および特徴について、添付図面に示す好ましい実施形態の次の説明により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に基づいて空調装置の筐体の2つの筐体部品を連結する実矧ぎ継ぎ連結部の断面を示す。
【図2】図1の実矧ぎ継ぎ連結部の別の断面を示す。
【図3】図2の実矧ぎ継ぎ連結部の凸部と溝の別の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明に基づいて空調装置筐体の第1筐体部品(2)を第2筐体部品(3)に連結する実矧ぎ継ぎ連結部の断面を示す。実矧ぎ継ぎ連結部(1)は、通例、筐体部品(2)および(3)を共に固定できるように設計される。
【0028】
第1筐体部品(2)は、第2筐体部品(3)の溝に嵌合する凸部(4)を備えている。凸部(4)を溝(5)に挿入することによって、満足する密閉を達成するように、いわゆるラビリンスシールが、筐体部品(2)と(3)との間に形成される。
【0029】
図2は、図1の実矧ぎ継ぎ連結部(1)のラッチが起きる場所における断面を示す。同一の部品に同じ符号を割り当ててある。
【0030】
図2によると、筐体部品(2)および(3)がしっかりと嵌合させることが容易にわかる。第1筐体部品(2)は、第2筐体部品(3)の切り込み(11)に挿入され得る凸部(4)の延長部分として、掛け金先端(10)と嵌合する。通過開口を貫通後の掛け金の先端(10)は、この位置で溝(5)とラッチして、筐体部品(2)および(3)を共にロックできるように、切り込み(11)は、第2筐体部品(3)を貫通する通過開口として設計されている。
【0031】
掛け金の先端(10)は、溝(5)と係合する後方つかみ面(12)と嵌合する。或る許容範囲内で、力が凸部(4)にいつも加えられて、凸部(4)を第2筐体部品(3)に押し付けるように、後方つかみ面(12)は面取りされている。ラビリンスシールがこのようにして形成されるので、筐体部品(2)と(3)との間に、十分な密閉が達成される。
【0032】
図3は、図2の実矧ぎ継ぎ連結部(1)の断面を示す。この場合にも、同一の部品に同じ符号を割り当ててある。
【0033】
図3により、掛け金の先端(10)が凸部(5)の切り込み(11)の通過開口を貫通し、対応するラッチ作用を伴って、どの程度挿入されたかが容易に分かる。膨らみ(15)が、ラッチ方向に対して垂直に掛け金の先端(10)上に示されている。
【0034】
組立時、掛け金の先端(10)は、切り込み(11)の通過開口を貫通して、凸部(5)に挿入される。掛け金の先端(10)の設計によって、その膨らみ(15)と一体になって、掛け金の先端(10)は、組立時にほとんど変形せず、しかし、変形して外側に押されるのは、むしろ溝(5)である。
【0035】
掛け金の先端(10)が、その組立位置で、筐体部品(3)と直接に接触している状態にあるとき、それは、掛け金の先端(10)の移動によって解き放たれることは不可能であり、そのため、連結部のどんな意図的でない緩みも、ほぼ除外される。さらに、掛け金の先端(10)が、組立中に相当程度変形することはないので、それが破壊する恐れは無い。
【0036】
要約すれば、前の手順とは対照的に、本発明の概念は、筐体部品間の連結を可能にすることに基づいており、この連結部は、筐体部品自体に、すなわち、密閉実矧ぎ継ぎ連結部に含まれることが分かる。
【0037】
以上、本発明の好ましい設計について、十分に説明したけれども、さまざまな変更が、特許請求の範囲の枠内で、本発明の概念および請求される保護から逸脱せずに可能であることを、技術者は認識すべきである。すなわち、形状設計上の正確な複製は、重要な要素ではなく、むしろ可能となる機能性であること、そしてこのスペースを取らない機能性は、前の基礎的アプローチとは対照的に、実矧ぎ継ぎ連結部によってもたらされることを、技術者は認識するべきである。
【符号の説明】
【0038】
1 実矧ぎ継ぎ連結部
2 第1筐体部品
3 第2筐体部品
4 凸部
5 溝
10 掛け金の先端
11 切り込み
12 後方つかみ面
15 膨らみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの筐体部品(2,3)を含む、自動車の暖房、換気または空調ユニット用の空調装置の筐体であって、少なくとも1つの凸部(4)を有する第1の筐体部品(2)と、少なくとも1つの溝(5)を有する第2の筐体部品(3)とが、少なくとも1つの実矧ぎ継ぎ連結部(1、4、5)を用いて、確実にともに固定されることが可能となっており、前記第1の筐体部品(2)は、前記凸部(4)の延長部分として形成され、少なくとも局部で、前記溝(5)に設けられた切り欠き(11)にかみ合うことができる少なくとも一つの掛け金の先端(10)を有し、もって前記空調装置筐体は、前記凸部(4)が前記第2の筐体部品(3)の溝(5)に嵌合する実矧ぎ継ぎによる連結機構と、前記凸部(4)の掛け金の先端(10)が前記切り欠き(11)にかみ合う係合による連結機構とを有することを特徴とする空調装置の筐体。
【請求項2】
前記掛け金の先端(10)が、前記凸部(4)が前記他の筐体部品(3)に押し付けられるように、溝(5)の面と相互作用する表面(12)を有する、請求項1に記載の空調装置の筐体。
【請求項3】
前記切り欠き(11)は、前記掛け金の先端(10)を挿入しうる通過開口を画定している、請求項1又は2に記載の空調装置の筐体。
【請求項4】
前記掛け金の先端(10)は、前記ラッチ方向に対して直角に曲がっている請求項1〜3のいずれか一項に記載の空調装置の筐体。
【請求項5】
前記掛け金の先端(10)は、少なくとも1つの鋸歯形状の部位を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の空調装置の筐体。
【請求項6】
前記掛け金の先端(10)が前記通過開口を貫通する部位で、筐体部品(2,3)が密閉リップとそれぞれ嵌合するようになっている請求項3〜5のいずれか一項に記載の空調装置の筐体。
【請求項7】
筐体部品(2,3)は、射出成形プロセスを用いて製造されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の空調装置の筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−82451(P2013−82451A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2717(P2013−2717)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2008−65599(P2008−65599)の分割
【原出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(599120831)ヴァレオ クリマシステメ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】