説明

空調装置

【課題】コンパクトでメンテナンスも容易な熱媒体循環型の空調装置を提供する。
【解決手段】電動機1により駆動するヒート回路用ポンプ4の吐出ライン4dに、作動油の温度を上げるための昇温用リリーフバルブ8と、リリーフ解除用バイパスバルブ9とを並列に接続する。これらの昇温用リリーフバルブ8およびリリーフ解除用バイパスバルブ9をミニタンク10に接続する。ミニタンク10とヒート回路用ポンプ4の吸込口4sとを接続するラインからリターンライン11aを分岐し、このリターンライン11a中に降温用バイパスバルブ11を設ける。ミニタンク10に接続した循環ポンプ14の吐出ラインにエアコンユニット15のヒータコア16を設ける。ミニタンク10に、油温を検知するための温度センサ29を設け、この温度センサ29を温度制御器30の入力部に接続する。温度制御器30の出力部は、リリーフ解除用バイパスバルブ9および降温用バイパスバルブ11のソレノイドに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体循環型の空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場内または一定ヤード内で稼働される作業機械としては、騒音防止のため、また外部から電力供給が可能であるため、油圧回路の駆動源をエンジンから電動化して、電動機で油圧ポンプを駆動して作動する電動式油圧ショベルなどが用いられている。この種の電動式作業機械では、エンジンで駆動する作業機械と異なり、水冷式の冷却装置を持たないためエアコンユニットに暖房用の温水を送ることができない。
【0003】
そのため、従来は、水タンク内の水を電気ヒータで沸かして、エアコンユニットに暖房用の温水を供給するようにした作業機械の空調装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−61230号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術では、大型の水タンクが必要になり、この水タンクは搭載スペースが大きく、小型の作業機械では搭載が困難であるとともに、水の管理が必要であり、メンテナンスが容易でない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、コンパクトでメンテナンスも容易にできる熱媒体循環型の空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、電動機により駆動されるヒート回路用ポンプと、ヒート回路用ポンプにより熱媒体が循環される流路中に設けられた昇温用リリーフバルブと、昇温用リリーフバルブに並列に接続されたリリーフ解除用バイパスバルブと、昇温用リリーフバルブにより昇温された熱媒体から外部へ熱を放出する暖房用のヒータコアと、熱媒体の温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出された熱媒体の温度が目標温度になるとリリーフ解除用バイパスバルブを開き、熱媒体の温度が目標温度より低い規定温度に下がるとリリーフ解除用バイパスバルブを閉じる温度制御器とを具備した空調装置である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の空調装置における熱媒体が、作業機械を作動する油圧アクチュエータ作動用の作動油の一部を用いるものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の空調装置において、熱媒体を収容するとともに熱媒体を冷却する機能を有する熱媒体タンクと、ヒート回路用ポンプにより循環される熱媒体の一部を熱媒体タンクに取出すことが可能な降温用バイパスバルブと、熱媒体タンクからヒート回路用ポンプへの熱媒体の吸込を可能とするチェックバルブとを備え、温度制御器は、熱媒体の温度が所定温度まで上昇したときに降温用バイパスバルブを開くように制御するものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項3記載の空調装置において、ヒート回路用ポンプにより熱媒体が循環される流路中に設けられ熱媒体タンクより容量の小さな小容量タンクと、小容量タンクの熱媒体をヒータコアを経て循環させる循環ポンプとを具備し、温度センサは、小容量タンクに設けられたものである。
【0010】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の空調装置において、冷房回路用のコンプレッサと、ヒート回路用ポンプから吐出された熱媒体圧により作動してコンプレッサを駆動するコンプレッサ駆動用流体圧モータと、冷房時は熱媒体の一定流量をコンプレッサ駆動用流体圧モータに供給し暖房時は熱媒体の全流量を昇温用リリーフバルブに供給する優先バルブとを具備したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、ヒート回路用ポンプにより熱媒体を循環させながら昇温用リリーフバルブのリリーフ作用により加熱し、暖められた熱媒体を暖房に用いるので、従来のヒータ加熱温水方式のような大型の水タンクを必要としないので、空調装置がコンパクトになり、その搭載が容易になるとともに、水の管理がいらないのでメンテナンスが容易になる。また、温度センサにより検出された熱媒体の温度が目標温度より低い規定温度に下がると、温度制御器がリリーフ解除用バイパスバルブを閉じ、ヒート回路用ポンプから昇温用リリーフバルブを経て熱媒体を循環させるので、リリーフ作用により熱媒体を効率良く加熱するとともに、温度センサにより検出された熱媒体の温度が目標温度になると、温度制御器が昇温用リリーフバルブに並列に接続されたリリーフ解除用バイパスバルブを開いて昇温用リリーフバルブのリリーフ作用を解除するので、熱媒体の温度を適切に調節でき、ヒータコアより適切な熱量を外部へ放出して適切な暖房を行なうことができる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、作業機械の稼働により作動油の温度が上昇すると、リリーフ解除用バイパスバルブが自動的に開いて、昇温用リリーフバルブの作動頻度が少なくなるので、水を加熱する場合に比較して、油圧アクチュエータ作動用の作動油が有する熱エネルギを暖房に効率良く利用でき、省エネ化を図れる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、熱媒体の温度が所定温度まで上昇したときは温度制御器により降温用バイパスバルブを開いて、熱媒体の一部を熱媒体タンクに逃がし、適切な温度の熱媒体をチェックバルブを介してヒート回路用ポンプに吸込ませることで、過剰に上昇しすぎた熱媒体の温度を効率よく降温制御できる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、熱媒体タンクより容量の小さな小容量タンクに設けられた温度センサにより熱媒体の温度を検出し、温度制御器を介してリリーフ解除用バイパスバルブおよび降温用バイパスバルブにより小容量タンク内の熱媒体を温度制御するので、熱媒体タンク内の熱媒体を温度制御する場合より、小容量タンク内の熱媒体を短時間で設定された温度に制御でき、この小容量タンクから循環ポンプにより適切な温度の熱媒体をヒータコアへ迅速に供給できるとともに、小容量タンクにより空調装置をコンパクトに構成できる。
【0015】
請求項5に記載された発明によれば、冷房時はヒート回路用ポンプから吐出された熱媒体の一定流量をコンプレッサ駆動用流体圧モータに供給して、冷房回路用のコンプレッサを駆動するので、ヒート回路用ポンプから吐出された熱媒体圧を暖房時だけでなく冷房時も有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を、図1および図2に示された一実施の形態、図3に示された他の実施の形態と、図4に示された作業機械を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図4は、水冷式の冷却装置を備えていない作業機械としての電動式油圧ショベルMを示し、下部走行体T上に上部旋回体Sが旋回可能に設けられ、この上部旋回体Sに、キャブCおよびフロント作業装置Fとともに、エンジンを動力源としない動力装置Dが設けられている。
【0018】
図1に示されるように、この電動式油圧ショベルMの動力装置Dは、バッテリまたは工業用電源などから電気エネルギの供給を受ける電動機1を動力源とし、この電動機1の出力軸が、この電動機1の動力を複数のポンプに配分するポンプドライブ装置2に接続され、このポンプドライブ装置2の複数の出力軸に、走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、フロント作業装置用油圧シリンダなどの各油圧アクチュエータを作動する油圧ショベル本体油圧回路に作動油を供給する複数のメインポンプ3a、3bと、これらのメインポンプ3a、3bにより油圧ショベル本体油圧回路に供給される油圧アクチュエータ作動用の作動油の一部をヒート回路Hの熱媒体として循環させるヒート回路用ポンプ4とが接続されている。ヒート回路用ポンプ4には、熱媒体タンクとしてのメインタンク5より熱媒体としての作動油を補給することができる。
【0019】
ヒート回路Hは、ヒート回路用ポンプ4の吐出ライン4dの流路中に、熱媒体としての作動油の温度を上げるための昇温用リリーフバルブ8と、この昇温用リリーフバルブ8に並列に接続されたリリーフ解除用バイパスバルブ9とが設けられ、これらの昇温用リリーフバルブ8およびリリーフ解除用バイパスバルブ9は、メインタンク5より容量の小さな小容量タンクとしてのミニタンク10に接続されている。
【0020】
このミニタンク10とヒート回路用ポンプ4の吸込口4sとを接続するラインからリターンライン11aが分岐され、このリターンライン11a中には、作動油をメインタンク5に取出すことが可能な降温用バイパスバルブ11が設けられている。また、メインタンク5からヒート回路用ポンプ4の吸込口4sに対して作動油の吸込を可能とするチェックバルブ12を有する吸込ライン12aが設けられている。
【0021】
暖房回路Aは、ミニタンク10に、電動機13により駆動される循環ポンプ14の吸込口が接続され、この循環ポンプ14の吐出ラインは、電動式油圧ショベルMのキャブC内に設置された空調装置ユニット(以下、「エアコンユニット」という)15の暖房用のヒータコア16を経て、ミニタンク10に戻されている。このヒータコア16は、昇温用リリーフバルブ8により昇温された作動油から外部へ熱を放出する熱交換器である。
【0022】
一方、冷房回路Bは、冷媒を圧縮するコンプレッサ17を備え、このコンプレッサ17は、クラッチ18およびベルト伝動装置19を介して、電動機28により駆動される。
【0023】
さらに、冷房回路Bは、エアコンユニット15のヒータコア16に併設された冷媒蒸発用のエバポレータ20を備え、このエバポレータ20は、上流側に膨張弁(図示せず)を内蔵し、さらに上流側の管路中には、冷媒中から水分を除去するレシーバドライヤ21と、冷媒を凝縮するコンデンサ22とが設置されている。
【0024】
このコンデンサ22は、油圧ショベル本体油圧回路の作動油を冷却するオイルクーラ24に併設され、電動機25により駆動される共通の冷却ファン26より冷却風の供給を受ける。
【0025】
オイルクーラ24は、メインタンク5に戻される作動油を冷却するもので、このため、メインタンク5は、熱媒体としての作動油を冷却する機能を有する。
【0026】
ミニタンク10には、作動油の温度(油温)を検知するための温度センサ29が設けられ、この温度センサ29は、温度制御器30の入力部に接続され、この温度制御器30の出力部は、リリーフ解除用バイパスバルブ9および降温用バイパスバルブ11の各ソレノイドに接続されている。
【0027】
図2は、温度制御器30のブロック図を示し、温度センサ29と、目標温度を設定する目標温度設定器31とが、減算器32に接続され、この減算器32が、昇温用リリーフバルブ8と並列に設けられたリリーフ解除用バイパスバルブ9を制御するリリーフ制御器33と、リターンライン11aの降温用バイパスバルブ11を制御するリターン制御器34に接続されている。
【0028】
次に、この図1および図2に示された実施の形態の作用を説明する。
【0029】
暖房回路Aの暖房機能を説明すると、ヒート回路用ポンプ4から吐出された作動油は昇温用リリーフバルブ8で暖められ、ミニタンク10から再度ヒート回路用ポンプ4の吸込口4sに戻るヒート回路Hを構成し、メインポンプ3a、3bにより油圧ショベル本体油圧回路に供給される作動油の一部をヒート回路用ポンプ4によりヒート回路Hで循環させながら、昇温用リリーフバルブ8のリリーフ作用により加熱し、暖められた作動油をミニタンク10から循環ポンプ14によりキャブC内のヒータコア16に供給することで暖房に用いる。
【0030】
このヒート回路Hの温度調整は、図2に示された減算器32で、温度センサ29の信号と目標温度設定器31の信号との偏差を算出し、リリーフ制御器33でリリーフ解除用バイパスバルブ9の制御信号を設定する。リリーフ制御器33は、油温が目標温度t1になるとオフになり、リリーフ解除用バイパスバルブ9を開く状態に切換え、油温が目標温度t1より低い規定温度t2に下がるとオンになり、リリーフ解除用バイパスバルブ9を閉じる状態に切換える特性を備えている。
【0031】
一方、温度偏差により、リターン制御器34で降温用バイパスバルブ11の制御信号を設定する。すなわち、リターン制御器34は、目標温度より高い規定温度t3でオンとなり、降温用バイパスバルブ11を開く状態に切換え、このオンになる規定温度t3より低い規定温度t4でオフになり、降温用バイパスバルブ11を閉じる状態に切換える特性を備えている。
【0032】
したがって、ヒート回路Hの油温が規定温度t2より低いときは、リリーフ解除用バイパスバルブ9を閉じて、昇温用リリーフバルブ8で油温を上げ、この油温が目標温度t1になるとリリーフ解除用バイパスバルブ9が開き、昇温用リリーフバルブ8による加熱を停止する。
【0033】
一方、油温が目標温度を超えた規定温度t3で、降温用バイパスバルブ11をオンにしてヒート回路Hの作動油の一部をメインタンク5に逃がして油温を下げ、規定温度t4まで油温が下がると、降温用バイパスバルブ11がオフになり、降温用バイパスバルブ11を閉じる。
【0034】
このようにしてヒート回路Hで暖められた作動油は、暖房回路Aの循環ポンプ14でエアコンユニット15のヒータコア16に供給されキャブC内が暖められる。
【0035】
また、冷房回路Bの冷却機能を説明すると、コンプレッサ17で圧縮された冷媒は、コンデンサ22に送られて、ここで冷却ファン26により冷却されて凝縮する。この凝縮で液化された冷媒は、レシーバドライヤ21にて水分を除去されて貯められ、エバポレータ20にて内蔵された膨張弁の作用で蒸発される。
【0036】
このとき、冷媒は、気化熱としてエバポレータ20の周囲の空気から熱を吸収するので、周囲の空気は熱を奪われて冷却される。この空気をキャブC内に冷却風として供給する。エバポレータ20で蒸発された冷媒は、コンプレッサ17に送られて再び圧縮され、コンデンサ22に送られる。
【0037】
次に、この図1および図2に示された実施の形態の効果を説明する。
【0038】
ヒート回路用ポンプ4により熱媒体としての作動油を循環させながら昇温用リリーフバルブ8のリリーフ作用により加熱し、暖められた作動油を暖房に用いるので、従来のヒータ加熱温水方式のような大型の水タンクを必要とせず、空調装置がコンパクトになり、その電動式油圧ショベルMへの搭載が容易になるとともに、水の管理が不要であるのでメンテナンスが容易になる。
【0039】
また、温度センサ29により検出された作動油の温度が目標温度t1より低い規定温度t2に下がると、温度制御器30がリリーフ解除用バイパスバルブ9を閉じ、ヒート回路用ポンプ4から昇温用リリーフバルブ8を経て作動油を循環させるので、リリーフ作用により作動油を効率良く加熱するとともに、温度センサ29により検出された作動油の温度が目標温度t1になると、温度制御器30が昇温用リリーフバルブ8に並列に接続されたリリーフ解除用バイパスバルブ9を開いて昇温用リリーフバルブ8のリリーフ作用を解除するので、作動油の温度を適切に調節でき、ヒータコア16より適切な熱量を外部へ放出して適切な暖房を行なうことができる。
【0040】
電動式油圧ショベルMの稼働により作動油の油温が目標温度t1より上昇すると、リリーフ解除用バイパスバルブ9が自動的に開いて、昇温用リリーフバルブ8の作動頻度が少なくなるので、従来のように水を加熱する場合に比較して、油圧アクチュエータ作動用の作動油が有する熱エネルギを暖房に効率良く利用でき、省エネ化を図れる。
【0041】
作動油の温度が規定温度t3まで上昇したときは温度制御器30により降温用バイパスバルブ11を開いて、ヒート回路Hの作動油の一部をメインタンク5に逃がし、このメインタンク5に戻されるメインポンプ3a、3bの作動油はオイルクーラ24で冷却されるので、適切に冷却された作動油をチェックバルブ12を介してヒート回路用ポンプ4に吸込ませることができ、過剰に上昇しすぎた作動油の温度を効率よく降温制御できる。
【0042】
メインタンク5より容量の小さなミニタンク10に設けられた温度センサ29により作動油の温度を検出し、温度制御器30を介してリリーフ解除用バイパスバルブ9および降温用バイパスバルブ11によりミニタンク10内の作動油を温度制御するので、メインタンク5内の作動油を温度制御する場合より、ミニタンク10内の作動油を短時間で設定された温度に制御でき、このミニタンク10から循環ポンプ14により適切な温度の作動油をヒータコア16へ迅速に供給できるとともに、ミニタンク10により空調装置をコンパクトに構成できる。
【0043】
次に、図3に基づき、他の実施の形態を説明する。なお、図1および図2に示された実施の形態と同様の部分には、同一符号を付する。
【0044】
図3に示されるように、電動機1の出力軸が、この電動機1の動力を複数のポンプに配分するポンプドライブ装置2に接続され、このポンプドライブ装置2の複数の出力軸に、油圧ショベル本体油圧回路の複数のメインポンプ3a、3bと、ヒート回路用ポンプ4とが接続され、これらのポンプは、熱媒体タンクとしてのメインタンク5より熱媒体としての作動油を吸込む。
【0045】
ヒート回路Hは、ヒート回路用ポンプ4の吐出ライン4d中に優先バルブ35が設けられ、この優先バルブ35のパイロットライン中に電磁切換弁36が設けられている。
【0046】
優先バルブ35は、電磁切換弁36がオン(パイロットライン遮断状態)のときは、ヒート回路用ポンプ4の吐出ライン4dを、コンプレッサ駆動用流体圧モータとしての油圧モータ37に連通し、また、電磁切換弁36がオフ(パイロットライン連通状態)のときは、ヒート回路用ポンプ4の吐出ライン4dを、作動油温度を上げるための昇温用リリーフバルブ8と、この昇温用リリーフバルブ8に並列に接続されたリリーフ解除用バイパスバルブ9とに連通させるように制御するものである。これらの昇温用リリーフバルブ8およびリリーフ解除用バイパスバルブ9は、ヒート回路H内に設けた小容量タンクとしてのミニタンク10に接続されている。
【0047】
このミニタンク10とヒート回路用ポンプ4の吸込口4sとを接続するラインからリターンライン11aが分岐され、このリターンライン11a中には、作動油をメインタンク5に逃がす降温用バイパスバルブ11が設けられている。また、メインタンク5からヒート回路用ポンプ4の吸込口4sに対して作動油を吸込可能なチェックバルブ12を有する吸込ライン12aが設けられている。
【0048】
暖房回路Aは、ミニタンク10に、電動機13により駆動される循環ポンプ14の吸込口が接続され、この循環ポンプ14の吐出ラインは、電動式油圧ショベルMのキャブC内に設置された空調装置ユニット(以下、「エアコンユニット」という)15のヒータコア16を経て、ミニタンク10に戻されている。
【0049】
一方、冷房回路Bは、冷媒を圧縮するコンプレッサ17を備え、このコンプレッサ17は、クラッチ18およびベルト伝動装置19を介して、油圧モータ37により駆動される。
【0050】
さらに、冷房回路Bは、エアコンユニット15のヒータコア16に併設された冷媒蒸発用のエバポレータ20を備え、このエバポレータ20は、上流側に膨張弁(図示せず)を内蔵し、さらに上流側の管路中には、冷媒中から水分を除去するレシーバドライヤ21と、冷媒を凝縮するコンデンサ22とが設置されている。
【0051】
このコンデンサ22は、油圧ショベル本体油圧回路の作動油を冷却するオイルクーラ24に併設され、電動機25により駆動される共通の冷却ファン26より冷却風の供給を受ける。
【0052】
ミニタンク10には、作動油の温度(油温)を検知するための温度センサ29が設けられ、この温度センサ29は、温度制御器30の入力部に接続され、この温度制御器30の出力部は、リリーフ解除用バイパスバルブ9および降温用バイパスバルブ11の各ソレノイドに接続されている。温度制御器30は、既に図2に基づいて説明したので、ここでは説明を省略する。
【0053】
次に、この図3に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0054】
ヒート回路用ポンプ4から吐き出される作動油は優先バルブ35から昇温用リリーフバルブ8またはコンプレッサ駆動用の油圧モータ37に供給される。
【0055】
すなわち、コンプレッサ17を駆動しないときは、電磁切換弁36をオフにして優先バルブ35を図3に示された状態にすることで、ヒート回路用ポンプ4の全流量を昇温用リリーフバルブ8側に流し、一方、コンプレッサ17を駆動するときは、電磁切換弁36をオンにして優先バルブ35を切換えることで、ヒート回路用ポンプ4からの一定流量を油圧モータ37に供給してコンプレッサ17を駆動し、残りの流量を昇温用リリーフバルブ8側に流す。
【0056】
したがって、暖房のときは、電磁切換弁36をオフにして、ヒート回路用ポンプ4の圧油の全流量を昇温用リリーフバルブ8側に供給して、この昇温用リリーフバルブ8で油温を上げる。この際の、温度制御方法は、図1および図2に示された実施の形態と同じであるので省略する。
【0057】
一方、冷房のときは、電磁切換弁36をオンにして、一定流量を油圧モータ37に供給し、コンプレッサ17を駆動する。なお、図3に示された冷房回路Bは、図1および図2に示された冷房回路Bと同様であるので、その冷房機能の説明は省略する。
【0058】
電動式油圧ショベルMのキャブC内の温度は、冷風と温風とを混合して調整するので、冷房中においても前記暖房時の油温制御と同様の作用でリリーフ解除用バイパスバルブ9および降温用バイパスバルブ11を制御して作動油温度を調整する。
【0059】
そして、この図3に示された実施の形態によれば、冷房時はヒート回路用ポンプ4から吐出された作動油の一定流量を優先バルブ35によりコンプレッサ駆動用の油圧モータ37に供給して、冷房回路用のコンプレッサ17を駆動するので、ヒート回路用ポンプ4から吐出された作動油圧を暖房時だけでなく冷房時も有効利用できる。なお、図1および図2に示された実施の形態と同様な効果も奏するが、その効果の説明は省略する。
【0060】
本発明は、エンジンの冷却装置として水冷式の冷却装置を備えていない電動式油圧ショベルMに冷房装置および暖房装置を設置する場合に好適であるが、電動式自動車などの空調装置にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る空調装置のシステム構成の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】同上空調装置の温度制御器の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る空調装置のシステム構成の他の実施の形態を示す回路図である。
【図4】同上空調装置を搭載した作業機械を示す側面図である。
【符号の説明】
【0062】
M 作業機械としての電動式油圧ショベル
B 冷房回路
1 電動機
4 ヒート回路用ポンプ
5 熱媒体タンクとしてのメインタンク
8 昇温用リリーフバルブ
9 リリーフ解除用バイパスバルブ
10 小容量タンクとしてのミニタンク
11 降温用バイパスバルブ
12 チェックバルブ
14 循環ポンプ
16 ヒータコア
17 コンプレッサ
29 温度センサ
30 温度制御器
35 優先バルブ
37 コンプレッサ駆動用流体圧モータとしての油圧モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機により駆動されるヒート回路用ポンプと、
ヒート回路用ポンプにより熱媒体が循環される流路中に設けられた昇温用リリーフバルブと、
昇温用リリーフバルブに並列に接続されたリリーフ解除用バイパスバルブと、
昇温用リリーフバルブにより昇温された熱媒体から外部へ熱を放出する暖房用のヒータコアと、
熱媒体の温度を検出する温度センサと、
温度センサにより検出された熱媒体の温度が目標温度になるとリリーフ解除用バイパスバルブを開き、熱媒体の温度が目標温度より低い規定温度に下がるとリリーフ解除用バイパスバルブを閉じる温度制御器と
を具備したことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
熱媒体は、作業機械を作動する油圧アクチュエータ作動用の作動油の一部を用いる
ことを特徴とする請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
熱媒体を収容するとともに熱媒体を冷却する機能を有する熱媒体タンクと、
ヒート回路用ポンプにより循環される熱媒体の一部を熱媒体タンクに取出すことが可能な降温用バイパスバルブと、
熱媒体タンクからヒート回路用ポンプへの熱媒体の吸込を可能とするチェックバルブとを備え、
温度制御器は、熱媒体の温度が所定温度まで上昇したときに降温用バイパスバルブを開くように制御する
ことを特徴とする請求項1または2記載の空調装置。
【請求項4】
ヒート回路用ポンプにより熱媒体が循環される流路中に設けられ熱媒体タンクより容量の小さな小容量タンクと、
小容量タンクの熱媒体をヒータコアを経て循環させる循環ポンプとを具備し、
温度センサは、小容量タンクに設けられた
ことを特徴とする請求項3記載の空調装置。
【請求項5】
冷房回路用のコンプレッサと、
ヒート回路用ポンプから吐出された熱媒体圧により作動してコンプレッサを駆動するコンプレッサ駆動用流体圧モータと、
冷房時は熱媒体の一定流量をコンプレッサ駆動用流体圧モータに供給し暖房時は熱媒体の全流量を昇温用リリーフバルブに供給する優先バルブと
を具備したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−37234(P2008−37234A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213325(P2006−213325)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】