説明

空調装置

【課題】電気ヒータにより加熱した温水を用いる暖房において、大容量の電気ヒータを必要としない空調装置を提供する。
【解決手段】メインポンプ2,3の内部漏れ油をドレン油として外部へ排出するドレンポートに、ドレン油を冷却するとともにドレン油から吸収した熱で水を温める熱交換器としてのドレン油用オイルクーラ15を接続する。ドレン油用オイルクーラ15の通水管部には、インライン型の電気ヒータ18を内蔵した加熱槽18Tを連通接続し、この加熱槽18Tを温水ポンプ19の吸込口に連通接続する。温水ポンプ19の吐出口は、3方切換弁型の電磁弁21の入口ポートに連通接続する。電磁弁21の一方の出口ポートは、ドレン油用オイルクーラ15の通水管部に循環接続し、また、電磁弁21の他方の出口ポートは、暖房用の放熱器としてのヒータコア22を経て、同じくドレン油用オイルクーラ15の通水管部に循環接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能に特徴を有する空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の自動車や油圧ショベルなどの作業機械は、エンジンを搭載しているので、このエンジンの廃熱を暖房の熱源として利用し、ラジエータなどの水冷式の冷却装置(ラジエータ)から空調装置本体に温水を送っている。この場合、エンジンの廃熱の多くは、冷却装置から大気中に放熱されている。
【0003】
一方、電動機で油圧ポンプを駆動して作動する電動式油圧ショベルでは、エンジンで油圧ポンプを駆動する油圧ショベルと異なり、水冷式の冷却装置を持たないため、空調装置本体に温水を送ることができない。そのため、電気ヒータで温水を沸かして作業機械の空調装置本体に供給している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−61230号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の電動式油圧ショベルは、電気ヒータで温水を沸かしているため、大容量の電気ヒータが必要である。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、電気ヒータにより加熱された温水を用いる暖房において、大容量の電気ヒータを必要としない空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、油圧機器から漏出された高温のドレン油を水で冷却するとともにその水を予熱するドレン油用オイルクーラと、このドレン油用オイルクーラで予熱した水を電気ヒータで加熱する加熱槽と、これらのドレン油用オイルクーラおよび加熱槽で加熱された温水を放熱する暖房用の放熱器とを具備した空調装置である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の空調装置において、温水を放熱器に供給する経路中に設けられた電磁弁と、この電磁弁を、水温が規定温度に達するまでは電気ヒータで加熱された温水をドレン油用オイルクーラに循環させる状態に維持し、水温が規定温度以上になると電気ヒータで加熱された温水を放熱器に導く経路に切換える制御器とを具備したものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の空調装置における油圧機器が、作業機械に搭載されたメインポンプであり、放熱器は、作業機械に搭載されたキャブ内に設置されたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、油圧機器の高温のドレン油を用いてドレン油用オイルクーラにより予め温めた温水を、加熱槽の電気ヒータにより加熱して、暖房用の放熱器に温水を供給するので、従来のような大容量の電気ヒータを必要とせず、暖房用の動力を削減でき、省エネルギ化を図れる。また、油圧機器の摺動部などの隙間から漏れるドレン油は、油圧アクチュエータからの戻り油やタンク内の作動油より、温度の立上り速度が大きく、高温になっているので、水を直ぐに温めることができる。
【0010】
請求項2に記載された発明によれば、制御器により電磁弁を制御して、水温が規定温度に達するまでは電気ヒータで加熱された温水をドレン油用オイルクーラに循環させる状態に維持し、水温が規定温度以上になると電気ヒータで加熱された温水を放熱器に導く経路に電磁弁を切換えるので、電磁弁を切換える前は、水温を短時間で規定温度まで加熱できるとともに、電磁弁を切換えた後は、適切に温度管理された温水を放熱器に供給できる。
【0011】
請求項3に記載された発明によれば、油圧機器を、作業機械に搭載されたメインポンプとし、放熱器を、作業機械に搭載されたキャブ内に設置したので、作業機械のメインポンプで発生した熱をキャブ内の暖房に有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、図1および図2に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、全体のシステム構成を示し、図1に示された本発明のシステム構成図の一実施例を示し、1は、作業機械としての油圧ショベルに搭載された電動機であり、この電動機1の駆動軸には、油圧ショベルの各種油圧アクチュエータを駆動する油圧機器としてのメインポンプ2,3が接続されて、駆動される。電動機1およびメインポンプ2,3は、油圧ショベルの上部旋回体に搭載されている。
【0014】
油圧ショベルに搭載された空調装置は、冷媒を圧縮するコンプレッサ4を備え、このコンプレッサ4を駆動する電動機5との間に回転伝達機構6が設けられている。
【0015】
この回転伝達機構6は、電動機5の回転軸に設けられたプーリ6aと、コンプレッサ4の回転軸に設けられたプーリ6bとの間にベルト6cが巻掛けられたものであり、コンプレッサ4の回転軸には、コンプレッサ4の駆動を入り切りする電磁クラッチ7が設けられている。
【0016】
コンプレッサ4の吐出側は、電動機8により駆動されるファン9により冷媒を冷却して凝縮させるためのコンデンサ(凝縮器)10に連通接続され、このコンデンサ10には、油圧回路の戻り油冷却用オイルクーラ11が隣接して設置されている。
【0017】
コンデンサ10は、レシーバドライヤ12に連通接続され、このレシーバドライヤ12は、エバポレータ(蒸発器)13に連通接続され、このエバポレータ13は、コンプレッサ4に循環接続されて、冷房装置が構成されている。戻り油冷却用オイルクーラ11は、油圧ショベルの各種油圧アクチュエータを作動させる油圧回路14の作動油を冷却する熱交換器である。
【0018】
メインポンプ2,3の内部漏れ油をドレン油として外部へ排出するドレンポートには、ドレン油を冷却するとともにドレン油から吸収した熱で水を温める熱交換器としてのドレン油用オイルクーラ15が接続され、このドレン油用オイルクーラ15は、フィルタ16を経てタンク17に接続されている。
【0019】
ドレン油用オイルクーラ15の通水管部には、インライン型の電気ヒータ18を内蔵した加熱槽18Tが連通接続され、さらに、この加熱槽18Tは、温水ポンプ19の吸込口に連通接続されている。この温水ポンプ19は、電動機20により駆動される。
【0020】
温水ポンプ19の吐出口は、3方切換弁型の電磁弁21の入口ポートに連通接続され、この電磁弁21の一方の出口ポートは、ドレン油用オイルクーラ15の通水管部に循環接続され、また、電磁弁21の他方の出口ポートは、上記エバポレータ13に併設された暖房用の放熱器としてのヒータコア22を経て、同じくドレン油用オイルクーラ15の通水管部に循環接続されている。
【0021】
加熱槽18Tの電気ヒータ18、温水ポンプ19の電動機20、電磁弁21のソレノイドは、制御器23の出力部に接続されている。この制御器23の信号入力部には、油圧ショベルのキャブ内温度を設定する温度設定器24、加熱槽18T内の水温を検出する水温センサ25、空調装置を制御する空調装置制御器26が、それぞれ接続されている。
【0022】
冷房用のエバポレータ13および暖房用のヒータコア22は、油圧ショベルの上部旋回体に搭載されたキャブの内部に設置された空調装置本体27に内蔵されている。
【0023】
図2は、制御器23の構成を示す制御ブロック図であり、この制御器23は空調装置制御器26の信号により作動する。
【0024】
この図2において、温度設定器24および水温センサ25は、温度設定器24の信号と水温センサ25の信号とを比較する減算器28に接続され、この減算器28はヒータ制御器29に接続され、このヒータ制御器29は、電気ヒータ18に接続され、温度偏差によって電気ヒータ18をオン/オフ制御する。
【0025】
また、水温センサ25はバルブ制御器30に接続され、このバルブ制御器30は、水温センサ25によって検出された温度により電磁弁21をオン/オフ制御する。
【0026】
次に、図1および図2に示された実施の形態の作用効果を図3に示されたフローチャートを参照しながら説明する。なお、図1に示されたエバポレータ13などの冷房機能は、従来の空調装置と同様であるので説明を省略し、暖房機能のみについて説明する。
【0027】
(ステップS1)
図1において、空調装置制御器26からの起動信号があったか否かが判断される。
【0028】
(ステップS2)
空調装置制御器26の起動信号があった場合は、制御器23が起動されて、電動機20により温水ポンプ19が駆動される。
【0029】
(ステップS3)
油圧ショベルが作動すると、メインポンプ2,3のドレン油がドレン油用オイルクーラ15、フィルタ16を経てタンク17に流れる。このとき、メインポンプ2,3の摺動部などの隙間から漏れてくるドレン油は、他の油圧回路14の戻り油やタンク17内の作動油より高温になっているので、電動機20による温水ポンプ19の駆動により水が循環すると、ドレン油用オイルクーラ15によって、その水が温められる。
【0030】
(ステップS4)
図2において、温度設定器24で設定された設定温度信号と、水温センサ25により検出された加熱槽18Tの検出水温信号とを、減算器28で比較して、その温度偏差が一定範囲内に収まったか否かを、ヒータ制御器29で判断する。
【0031】
(ステップS5)
設定温度と検出水温の温度偏差が一定範囲内に収まらない場合(検出水温が設定温度より一定値以上低い場合)は、ヒータ制御器29により電気ヒータ18をオンに制御し、水を温める。
【0032】
(ステップS6)
検出水温が上昇して、設定温度と検出水温の温度偏差が一定範囲内に収まった場合は、ヒータ制御器29により電気ヒータ18をオフに制御する。
【0033】
(ステップS7)
水温センサ25の検出水温信号は、バルブ制御器30にも入力され、加熱槽18Tの水温が規定温度に達したか否かが判断される。
【0034】
(ステップS8)
加熱槽18Tの水温が規定温度に達するまでは、バルブ制御器30が電磁弁21を図1に示されたオフ位置に制御して、温水ポンプ19から吐出された水が、電磁弁21からドレン油用オイルクーラ15に供給され、加熱槽18Tを経て温水ポンプ19に循環され、ドレン油用オイルクーラ15で高温ドレン油から通水管部内の循環水に移動した熱により水を加熱して、水温を上昇させる。このとき、ヒータ制御器29による電気ヒータ18のオン/オフ制御も同時になされる。
【0035】
(ステップS9)
加熱槽18Tの検出水温が規定温度に達すると、バルブ制御器30は、電磁弁21をオンに制御して、油圧ショベルのキャブ内に設置された空調装置本体27のヒータコア22に温水を流し、温水の熱をキャブ内の暖房に利用する。
【0036】
次に図示された実施形態の効果を説明すると、油圧ショベルのメインポンプ2,3などから漏出された高温のドレン油を用いてドレン油用オイルクーラ15により予め温めた温水を、加熱槽18Tの電気ヒータ18により加熱して、暖房用の放熱器に温水を供給するので、従来のような大容量の電気ヒータを必要とせず、暖房用に消費される動力を削減でき、省エネルギ化を図れる。
【0037】
また、メインポンプ2,3などの摺動部などの隙間から漏れるドレン油は、油圧アクチュエータからの戻り油やタンク17内の作動油より、温度の立上り速度が大きく、高温になっているので、水を直ぐに温めることができる。
【0038】
さらに、制御器23により電磁弁21を制御して、水温が規定温度に達するまでは、電気ヒータ18で加熱された温水を温水ポンプ19からドレン油用オイルクーラ15に循環させる状態に維持し、水温が規定温度以上になると、温水ポンプ19から吐出された温水をヒータコア22に導く経路に電磁弁21を切換えるので、電磁弁21を切換える前は、水温を短時間で規定温度まで加熱できるとともに、電磁弁21を切換えた後は、適切に温度管理された温水をヒータコア22に供給できる。
【0039】
そして、油圧機器を、油圧ショベルの上部旋回体に搭載されたメインポンプ2,3とし、ヒータコア22を、油圧ショベルに搭載されたキャブ内に設置したので、油圧ショベルのメインポンプ2,3で発生した熱をキャブ内の暖房に有効利用できる。
【0040】
このように、原動機の冷却装置として水冷式の冷却装置(ラジエータ)を備えていない電動式油圧ショベルなどに搭載された空調装置の暖房機能で効果を発揮する。
【0041】
なお、油圧機器としては、メインポンプ2,3のほかに、油圧回路14中のリリーフ弁などでも良く、例えば、パイロット回路などのリリーフ弁から漏出されたドレン油をドレン油用オイルクーラ15を経てタンク17に回収することで、そのドレン油を温水ポンプ19からの水で冷却するとともにその水を予熱するようにしても良い。
【0042】
本発明は、作業機械などに搭載された暖房装置として有用な空調装置である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る空調装置の一実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】同上空調装置の制御器の構成を示す制御ブロック図である。
【図3】同上空調装置の制御フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
2,3 油圧機器としてのメインポンプ
15 ドレン油用オイルクーラ
18 電気ヒータ
18T 加熱槽
21 電磁弁
22 放熱器としてのヒータコア
23 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機器から漏出された高温のドレン油を水で冷却するとともにその水を予熱するドレン油用オイルクーラと、
このドレン油用オイルクーラで予熱した水を電気ヒータで加熱する加熱槽と、
これらのドレン油用オイルクーラおよび加熱槽で加熱された温水を放熱する暖房用の放熱器と
を具備したことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
温水を放熱器に供給する経路中に設けられた電磁弁と、
この電磁弁を、水温が規定温度に達するまでは電気ヒータで加熱された温水をドレン油用オイルクーラに循環させる状態に維持し、水温が規定温度以上になると電気ヒータで加熱された温水を放熱器に導く経路に切換える制御器と
を具備したことを特徴とする請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
油圧機器は、作業機械に搭載されたメインポンプであり、
放熱器は、作業機械に搭載されたキャブ内に設置された
ことを特徴とする請求項1または2記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−274462(P2009−274462A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7318(P2008−7318)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】