説明

空調装置

【課題】ヒートポンプサイクルにおいて冷媒を貯留するアキュムレータの小型化が図れる空調装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプサイクル2は、複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル2の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、冷媒流通制御手段としての第1電磁弁31によって第1のバイパス通路30における冷媒の流通を許可するとともに、第1の冷媒流通阻止手段としての第2膨張弁26及び第2の冷媒流通阻止手段としての逆止弁25によって冷媒の流通を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルの運転によって室内の空調を実施する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として知られている特許文献1に記載の車両用空調装置は、圧縮機、室内放熱器、三方弁、第1の電磁弁、室外熱交換器、第1膨張弁、第2膨張弁、室内蒸発器、第2電磁弁、及びアキュムレータを有し、これらを環状に接続してなるヒートポンプサイクルを備えている。そして、送風機により取り入れた空気を車室内に向けて送るための通風路を有した空調ダクト内には、空気の流れ方向に順に、室内蒸発器、エアミックスドア、室内放熱器が並んで配置されている。当該車両用空調装置は、三方弁、電磁弁の作動を制御することにより、冷媒経路を変更して、暖房モード、除湿暖房モード、冷房モードのそれぞれを実施することができる。
【0003】
暖房モードでは、三方弁を制御して、蒸発器として作動する室外熱交換器から圧縮機の吸入側への通路を連通させ、第1の電磁弁を制御して室内放熱器から室外熱交換器への通路を連通させる。また、第2の電磁弁を制御して室外熱交換器から圧縮機の吸入側への通路を連通させる。これにより、冷媒経路は、圧縮機→室内放熱器→第1の電磁弁→第2膨張弁→室外熱交換器→三方弁→アキュムレータの順に冷媒が循環するように形成される。
【0004】
除湿暖房モードでは、三方弁及び第2膨張弁を閉栓するとともに、第1の電磁弁を制御して室内放熱器から室内蒸発器への通路を連通させる。また、第2の電磁弁を制御して室内蒸発器から圧縮機の吸入側への通路を連通させる。これにより、冷媒経路は、圧縮機→室内放熱器→第1の電磁弁→第1膨張弁→室内蒸発器→第2の電磁弁→アキュムレータの順に冷媒が循環するように形成される。
【0005】
冷房モードでは、三方弁を制御して室内放熱器から室外熱交換器への通路を連通させ、第2の電磁弁を制御して室内蒸発器から圧縮機の吸入側への通路を連通させる。また、第1の電磁弁及び第2膨張弁を閉栓して、室内放熱器からの冷媒を室外熱交換器に流すことにより、冷媒経路は、圧縮機→室内放熱器→三方弁→室外熱交換器→逆止弁→第1膨張弁→室内蒸発器→第2の電磁弁→アキュムレータの順に冷媒が循環するように形成される。
【0006】
上記いずれの運転モードにおいても、アキュムレータでは、冷媒が気液分離されて気相冷媒は圧縮機の吸入側に出力され、液相冷媒は一時的にアキュムレータに貯留される。アキュムレータに貯留される冷媒量は、サイクルに封入されている封入冷媒量から、サイクルのアキュムレータを除く冷媒通路に存在する冷媒量を除いた量である。そして、運転サイクルによってサイクルのアキュムレータを除く冷媒通路に存在する冷媒量に差があるため、アキュムレータに貯留される液相冷媒の量は運転モードに応じて変化するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4630772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用空調装置では、運転モードに応じてアキュムレータに貯留される液相冷媒の量が異なるため、アキュムレータの液冷媒貯留能力は、最大貯留量の運転モードと最小貯留量の運転モードの両方に対応できるように設定する必要がある。このため、アキュムレータが大型化してしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、ヒートポンプサイクルにおいて冷媒を貯留するアキュムレータの小型化が図れる空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち請求項1は、冷媒を吸入し吐出する圧縮機(21)と、除湿暖房サイクル運転時と暖房サイクル運転時に圧縮機(21)から吐出された冷媒が流入することにより室内へ送風される空気を加熱する加熱用室内熱交換器(7)と、暖房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱し、冷房サイクル運転時に放熱する室外熱交換器(23)と、除湿暖房サイクル運転時と冷房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用によって室内への送風空気を冷却する冷却用室内熱交換器(5)と、冷媒を気液分離して液冷媒を貯留するアキュムレータ(28)と、を少なくとも備えて構成されるヒートポンプサイクル(2,2A)を用いて、複数の運転モードにより空調される空調風を室内に提供する空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクル(2,2A)は、
加熱用室内熱交換器(7)の出口側冷媒通路と冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とを連絡するバイパス通路(30)と、
冷媒が加熱用室内熱交換器(7)側から冷却用室内熱交換器(5)側に向かってバイパス通路(30)を流れることを許可及び阻止する冷媒流通制御手段(31)と、
冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とバイパス通路(30)との接続部位よりも冷却用室内熱交換器(5)寄りに設けられて、冷媒が冷却用室内熱交換器(5)に流入することを阻止する第1の冷媒流通阻止手段(26)と、
冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とバイパス通路(30)との接続部位よりも室外熱交換器(23)寄りに設けられて、冷媒が室外熱交換器(23)側に流れることを阻止する第2の冷媒流通阻止手段(25)と、を有し、
複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル(2,2A)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、冷媒流通制御手段(31)によってバイパス通路(30)における冷媒の流通を許可するとともに、第1の冷媒流通阻止手段(26)及び第2の冷媒流通阻止手段(25)によって冷媒の流通を阻止することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ヒートポンプサイクルの冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、バイパス通路における冷媒の流通を許可し、第1の冷媒流通阻止手段によって冷媒が冷却用室内熱交換器に流入することを阻止し、第2の冷媒流通阻止手段によって冷媒が室外熱交換器側に流れることを阻止することにより、当該流れを阻止した部位において冷媒はそれ以上流れなくなるため、冷媒通路に冷媒の行き止まり部を形成できる。これにより、バイパス通路とバイパス通路から当該行き止まり部に至るまでの通路とによって、当該冷媒量が最も少ない運転モード時に冷媒を貯えておける冷媒貯留用通路を形成できるのである。この冷媒貯留用通路は、当該冷媒量が最も少ない運転モードにおいて冷媒流路として使用していない通路であるから、高圧冷媒を貯留するタンクとしての機能を果たし、貯留される冷媒量の分だけ、アキュムレータに貯留される冷媒量を少なくすることができる。当該冷媒量が最も少ない運転モードでは、他の運転モードに比べてアキュムレータに貯留される冷媒量が多いため、上記のように本発明によりアキュムレータの貯留冷媒量を低減することによって、当該冷媒量が最も少ない運転モードで必要とするアキュムレータの容量を抑制できる。したがって、ヒートポンプサイクルにおけるアキュムレータの小型化が図れる空調装置を提供できる。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載の発明において、ヒートポンプサイクル(2,2A)は、車両に設けられ、ヒートポンプサイクル(2,2A)を用いて複数の運転モードにより空調される空調風は車室内に提供されることを特徴とする。この発明によれば、車両用空調装置に適用する発明であることにより、アキュムレータの小型化が図れるため、車両用空調装置を車両に搭載するために必要なスペースを低減することができる。したがって、車両の小型化や軽量化、車室空間の大型化といった要求に対して、有用な車両用空調装置を提供できる。
【0013】
請求項3は、請求項1または請求項2に記載の発明において、複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル(2,2A)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードは、暖房サイクル運転であることを特徴とする。暖房サイクル運転では、室内への送風空気を冷却する必要がないため、冷却用室内熱交換器に冷媒を流通させない。したがって、暖房サイクル運転では、他の運転モードに比べて、ヒートポンプサイクルにおいて冷媒が流通する通路容積が小さい場合が多く、アキュムレータに冷媒が多く貯留されやすい。そこで、本発明によれば、暖房サイクル運転時に冷媒貯留用通路を形成するため、アキュムレータの小型化にとって有用である。
【0014】
請求項4は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、第1の冷媒流通阻止手段(26)は、除湿暖房サイクル運転時と冷房サイクル運転時に冷却用室内熱交換器(5)に流入する冷媒を減圧する開度調整可能な減圧装置(26)であることを特徴とする。この発明によれば、減圧装置の開度を全閉状態に調整することにより、冷媒通路を閉鎖することができるため、冷媒が冷却用室内熱交換器に流入することを阻止することができる。したがって、冷房サイクル運転時等に冷却用室内熱交換器に流入させる冷媒を減圧するための減圧装置を第1の冷媒流通阻止手段として使用できるので、新たな部品を追加することなく第1の冷媒流通阻止手段を構築できる。
【0015】
請求項5は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、第2の冷媒流通阻止手段(25)は、冷却用室内熱交換器(5)側から室外熱交換器(23)側への冷媒の流れを阻止する逆止弁(25)であることを特徴とする。この発明によれば、逆止弁が有する一方向への冷媒流れ作用を活用することにより、冷媒の流れを規制することができるため、冷却用室内熱交換器側から室外熱交換器側への冷媒流れを阻止することができる。したがって、新たな部品を追加することなく第2の冷媒流通阻止手段を構築できる。
【0016】
請求項6は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、冷媒流通制御手段(31)は、バイパス通路(30)を開閉する電磁弁(31)で構成されることを特徴とする。この発明によれば、電磁弁による通路開閉制御によって、バイパス通路を冷媒貯留用通路として容易に活用することができる。
【0017】
請求項7は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、加熱用室内熱交換器(7)の出口側冷媒通路と冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とを連絡するバイパス通路(30)は、第1のバイパス通路であり、
さらに、室外熱交換器(23)の出口側冷媒通路と冷却用室内熱交換器(5)の出口側冷媒通路とを連絡する第2のバイパス通路(40)を備え、
第2の冷媒流通阻止手段(25)には、複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル(2A)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、室外熱交換器(23)を流出した冷媒を、冷却用室内熱交換器(5)に流入させないで第2のバイパス通路(40)に流入させるように冷媒流路を切り換える切換弁(60)が含まれることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、例えば冷媒が冷却用室内熱交換器に流入しないように制御する暖房サイクル運転モード等を実施するために設けられる切換弁を活用することにより、冷媒の流れを規制することができるため、冷却用室内熱交換器側から室外熱交換器側への冷媒流れを阻止することができる。したがって、新たに部品を追加することなく第2の冷媒流通阻止手段を構築できる。
【0019】
請求項8は、冷媒を吸入し吐出する圧縮機(21)と、除湿暖房サイクル運転時と暖房サイクル運転時に圧縮機(21)から吐出された冷媒が流入することにより室内へ送風される空気を加熱する加熱用室内熱交換器(7)と、暖房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱し、冷房サイクル運転時に放熱する室外熱交換器(23)と、除湿暖房サイクル運転時と冷房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用によって室内への送風空気を冷却する冷却用室内熱交換器(5)と、冷媒を気液分離して液冷媒を貯留するアキュムレータ(28)と、を少なくとも備えて構成されるヒートポンプサイクル(2B)を用いて、複数の運転モードにより空調される空調風を室内に提供する空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクル(2B)は、
加熱用室内熱交換器(7)の出口側冷媒通路と冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とを連絡する第1の連絡通路(20B2)と、
暖房サイクル運転時に、加熱用室内熱交換器(7)を流出した冷媒が冷却用室内熱交換器(5)の出口側冷媒通路に流入するように設けられた第2の連絡通路(20B3)と、
冷却用室内熱交換器(5)の出口側冷媒通路であって、暖房サイクル運転時に第2の連絡通路(20B3)を通って冷媒が流入する部位よりも冷却用室内熱交換器(5)寄りに設けられて、冷却用室内熱交換器(5)側から圧縮機(21)の吸入部側に向かう冷媒の流れを流入することを阻止する冷媒流通阻止手段(73)と、
冷媒が加熱用室内熱交換器(7)側から冷却用室内熱交換器(5)側に向かって冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路を流れることを許可する冷媒流通制御手段(26A)と、を有し、
複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル(2B)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、冷媒流通制御手段(26A)によって冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路における冷媒の流通を許可するとともに、冷媒流通阻止手段(73)によって冷媒の流通を阻止することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、ヒートポンプサイクルの冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、冷媒流通制御手段(26)によって冷却用室内熱交換器の入口側冷媒通路における冷媒の流通を許可するとともに、冷媒流通阻止手段によって冷媒が冷却用室内熱交換器側から圧縮機の吸入部側に向かうことを阻止することにより、当該流れを阻止した部位において冷媒はそれ以上流れなくなるため、冷媒通路に冷媒の行き止まり部を形成できる。これにより、第1の連絡通路から当該行き止まり部に至るまでの通路によって、当該冷媒量が最も少ない運転モード時に冷媒を貯えておける冷媒貯留用通路を形成できるのである。この冷媒貯留用通路は、当該冷媒量が最も少ない運転モードにおいて冷媒流路として使用していない通路であるから、高圧冷媒を貯留するタンクとしての機能を果たし、貯留される冷媒量の分だけ、アキュムレータに貯留される冷媒量を少なくすることができる。当該冷媒量が最も少ない運転モードでは、他の運転モードに比べてアキュムレータに貯留される冷媒量が多いため、上記のように本発明によりアキュムレータの貯留冷媒量を低減することによって、当該冷媒量が最も少ない運転モードで必要とするアキュムレータの容量を抑制できる。したがって、ヒートポンプサイクルにおけるアキュムレータの小型化が図れる空調装置を提供できる。
【0021】
なお、上記各技術的手段や特許請求の範囲の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用する第1実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明を適用する第2実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。
【図3】本発明を適用する第3実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態である第1実施形態について図1にしたがって説明する。図1は本実施形態に係る車両用空調装置の構成を示した概略図である。図1において、黒塗り太矢印は冷房サイクル運転時の冷媒流れを示し、白抜き太矢印は暖房サイクル運転時の冷媒流れを示し、斜線太矢印は除湿暖房(直列)サイクル運転時の冷媒流れを示し、破線太矢印は除湿暖房(並列)サイクル運転時の冷媒流れを示している。以下に、除湿暖房(直列)サイクル運転及び除湿暖房(並列)サイクル運転は、まとめて除湿暖房サイクル運転と称することがある。
【0025】
本実施形態の車両用空調装置は、ヒートポンプサイクル2及び空調ユニットケース1を備え、車室内に対して冷房、暖房、及び除湿暖房する空調運転を行う装置であり、例えばガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等に搭載することができる。
【0026】
内部に空気の通風路を備える空調ユニットケース1は、車室内前方のインストルメントパネルの裏側に設けられている。空調ユニットケース1には一方側に空気取入口である内気吸入口3a及び外気吸入口3bが形成され、他方側に車室内に吹き出される空調された空気が通過するフェイス吹出し開口8、フット吹出し開口9、デフロスタ吹出し開口10が少なくとも形成されている。
【0027】
フェイス吹出し開口8は車室内の乗員の上半身に向かって吹き出される空調空気が通過する開口であり、フット吹出し開口9は車室内の乗員の足元に吹き出される空調空気が通過する開口であり、デフロスタ吹出し開口9は車両のフロントガラスの内面に吹き出される空調空気が通過する開口である。これらの各開口は、それぞれ吹出しダクト(図示せず)を介して車室内空間に接続されており、それぞれ、フェイス吹出し開閉ドア11、フット吹出し開閉ドア12、デフロスタ吹出し開閉ドア13によって吹出しモードに対応して開閉される。内気吸入口3aと外気吸入口3bは、内外気切替えドア3によって空気取入れモードに対応してその開放、閉鎖が切替え自在に行われる。
【0028】
空調ユニットケース1は、一方側に、内外気切替えドア3を備える内外気切替箱と、その吸込部が内気吸入口3aと外気吸入口3bに接続されている送風機4とを備えている。例えば、冬季等の暖房時には、外気導入モードを行うことにより外気吸入口3から湿度の低い外気を導入し、通風路を通して空調してフロントガラスの内面に吹き出すことにより防曇効果を高めることができる。また、内気循環モードを行うことにより内気吸入口3aから温度の高い内気を導入し、通風路を通して空調し乗員の足元に向けて吹き出すことにより暖房負荷を軽減することができる。
【0029】
送風機4は遠心多翼ファン4b(例えばシロッコファン)とこれを駆動するモータ4aとからなり、遠心多翼ファン4bの周囲はスクロールケーシングで囲まれている。また、空調ユニットケース1は複数のケース部材からなり、その材質は例えばポリプロピレン等の樹脂成形品である。
【0030】
送風機4の吹出口は、遠心多翼ファン4bの遠心方向に延びるように設けられた通風路に接続されている。この通風路は、送風空気の上流側から順に、冷却用室内熱交換器である蒸発器5が横断する通路1aと、蒸発器5を通過した空調空気が流下する冷風通路1bと、加熱用室内熱交換器である凝縮器7に流入する空気が通る温風通路1cと、冷風通路1bと温風通路1cとを流れてきた空気が混合される空気混合部1dと、からなっている。送風機4よりも送風空気の下流側における空調ユニットケース1内の通風路には、上流側から下流側に進むにしたがい順に、蒸発器5、エアミックスドア6、凝縮器7が配置されている。
【0031】
なお、空調ユニットケース1内の通風路には、加熱手段の一例であるヒータコアやPTCヒータが設けられていてもよい。ヒータコアは、例えば暖房サイクル運転時において、内部を流れる車両走行用エンジンの冷却水の熱を放熱することにより周囲の空気を加熱する。PTCヒータは、暖房サイクル運転や冷房サイクル運転において送風空気を加熱する補助的な加熱手段であり、通電発熱素子部を備え、通電発熱素子部に通電が行われることによって発熱し、周囲の空気を暖めることができる。
【0032】
蒸発器5は、送風機4直後の通路全体を横断するように配置されており、送風機4から吹き出された空気全部が通過するようになっている。蒸発器5は冷房運転時や除湿運転時において内部を流れる冷媒の吸熱作用によって、冷風通路1bに流入する手前の送風空気を除湿したり冷却したりする冷却用熱交換器として機能する。空気が通過する蒸発器5の出口部(蒸発器5の下流側部位)には、蒸発器5によって冷却された空気の温度を検出する蒸発器後温度センサ14が設けられている。蒸発器後温度センサ14によって検出された信号は制御装置100に入力される。
【0033】
凝縮器7は、少なくともその伝熱部分がフット吹出し開口9寄りのみに位置して配置されており、蒸発器5よりもさらに送風空気の下流側に配置されている。凝縮器7は暖房サイクル運転時、除湿サイクル運転時及び冷房サイクル運転時において内部を流れる冷媒の放熱作用によって送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。凝縮器7の直後の通路であって、空気混合部1dに流入する手前の通路には凝縮器7を通過する空気の温度を検出する凝縮器後温度センサ15が設けられている。凝縮器後温度センサ15によって検出された信号は制御装置100に入力される。
【0034】
蒸発器5よりも下流側であって凝縮器7よりも上流側の通風路には、蒸発器5を通過した空気を、凝縮器7を通る空気と凝縮器7を通過しない空気とに分けたり、切り替えたりして、これらの空気の風量比率を調整できるエアミックスドア6が設けられている。
【0035】
エアミックスドア6は、アクチュエータ等によりそのドア本体位置を変化させることで、冷風通路1bの一部または全部を塞ぐことができる。そして、エアミックスドア6による凝縮器7側の温風通路1cの開度は、当該通路の横断方向の開口(ホット側の開口)が開放される割合のことであり、0から100%の範囲で調整可能である。また、エアミックスドア6による凝縮器7に対して反対側の冷風通路1bの開度は、当該通路の横断方向の開口(クール側の開口)が開放される割合のことであり、0から100%の範囲で調整可能である。
【0036】
ヒートポンプサイクル2は、サイクル20内を流れる冷媒(例えば、R134a、二酸化炭素等)の状態変化を利用することにより、冷房用の蒸発器5と暖房用の凝縮器7によって車室内に対して冷房、暖房及び除湿といった空調運転を行うことができる。
【0037】
ヒートポンプサイクル2は、主要部品として、図1に示すように冷媒を吸入して吐出する圧縮機21、凝縮器7、第1膨張弁22、室外熱交換器23、第2膨張弁26、蒸発器5、及びアキュムレータ28を冷媒通路によって環状に接続してサイクル20を構成している。さらにヒートポンプサイクル2は、室外熱交換器23の出口側通路と蒸発器5の出口側通路とを連結する第2のバイパス通路40と、第2のバイパス通路40を開閉する第2電磁弁41と、凝縮器7の出口側通路と第1膨張弁22の入口側通路とを連結する第1のバイパス通路30と、第1のバイパス通路30を開閉する第1電磁弁31と、凝縮器7の出口側通路側から第1のバイパス通路30を流れてきた冷媒が室外熱交換器23の方に逆流することを防止する逆止弁25と、を備えている。したがって、逆止弁25は、蒸発器5の入口側冷媒通路と第1のバイパス通路30との接続部位よりも室外熱交換器23寄りに設けられて、冷媒が室外熱交換器23側に流れることを阻止する第2の冷媒流通阻止手段を構成する。
【0038】
また、蒸発器5の出口側通路には、蒸発器5でのフロストを防止するために蒸発圧力を一定圧力以上に制御する圧力制御弁27が設けられている。圧縮機21の出口には、圧縮機21によって吐出された高圧側冷媒の圧力を検出する吐出圧センサ29が設けられている。
【0039】
凝縮器7は、圧縮機21から吐出された冷媒と空調ユニットケース1内の通風路を流れる空気とを熱交換させて当該空気を加熱する。第1膨張弁22は、暖房サイクル運転時及び除湿暖房サイクル運転時に開度制御されて凝縮器7から流入した冷媒を減圧し、冷房サイクル運転時に全開状態に制御される減圧装置であり、制御装置100によってその作動が全開から全閉の開度まで制御される。室外熱交換器23は、第1膨張弁22で減圧された冷媒と送風機24によって供給された空気(外気)とを熱交換して冷媒の熱を外気に放熱する熱交換器である。室外熱交換器23は、暖房サイクル運転時及び除湿暖房(並列)サイクル運転時には蒸発器として機能し、冷房サイクル運転時には凝縮器として機能し、除湿暖房(直列)サイクル運転時には蒸発器または凝縮器として機能する。
【0040】
送風機24はファンとこれを駆動するモータ24aとからなり、その作動は制御装置100によって制御される。第2膨張弁26は、冷房サイクル運転時及び除湿暖房サイクル運転時に開度制御されて蒸発器7に流入する冷媒を減圧し、暖房サイクル運転時に全閉状態に制御される開度調整機能を有する減圧装置であり、制御装置100によってその作動が全開から全閉の開度まで制御される。したがって、第2膨張弁26は、蒸発器5の入口側冷媒通路と第1のバイパス通路30との接続部位よりも蒸発器5寄りに設けられて、冷媒が蒸発器5に流入することを阻止する第1の冷媒流通阻止手段を構成する。第1電磁弁31は、その作動が制御装置100によって制御される開閉弁であり、冷房サイクル運転時及び除湿暖房(直列)サイクル運転時に閉状態に制御され、暖房サイクル運転時及び除湿暖房(並列)サイクル運転時に開状態に制御される。したがって、第1電磁弁31は、冷媒が凝縮器7側から蒸発器5側に向かって第1のバイパス通路30を流れることを許可及び阻止する冷媒流通制御手段を構成する。第2電磁弁41は、その作動が制御装置100によって制御される開閉弁であり、冷房サイクル運転時及び除湿暖房(直列)サイクル運転時に閉状態に制御され、暖房サイクル運転時及び除湿暖房(並列)サイクル運転時に開状態に制御される。
【0041】
各サイクル運転時における、第1膨張弁22、第2膨張弁26、第1電磁弁31、及び第2電磁弁41の動作状態は、以下の(表1)に示すとおりである。
【表1】

【0042】
上記構成により、ヒートポンプサイクル2には、図1の黒塗り太矢印で示す冷房サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→第2膨張弁26→蒸発器5→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。冷房サイクル運転では、第1電磁弁31が閉状態に制御されることにより、凝縮器7を流出した高圧の冷媒が第1のバイパス通路30を通じて蒸発器5に流れることを防止している。
【0043】
またヒートポンプサイクル2には、図1の白抜き太矢印で示す暖房サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→第2のバイパス通路40(第2電磁弁41)→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。この暖房サイクル運転では、第2電磁弁41を開状態に制御することにより、第2のバイパス通路40を開放する。さらに、第1電磁弁31を開状態に制御することにより、第1のバイパス通路30を開放する。これによって、凝縮器7の出口側通路(凝縮器7の出口部と第1膨張弁22の入口部とを接続する冷媒通路)と、第2膨張弁26の入口側通路(室外熱交換器23の出口部と蒸発器5の入口部とを接続する冷媒通路)とが連通するようになる。
【0044】
この第1のバイパス通路30の開放により、凝縮器7を流出した冷媒の一部は、第1のバイパス通路30を通り、蒸発器5側に流通可能であるように思われるが、第2膨張弁26が全閉状態であるため、第2膨張弁26で蒸発器5に向かう通路が遮閉されて蒸発器5には流れない。さらに、反対側の室外熱交換器23寄りの冷媒通路においては逆止弁25の存在によって、冷媒の逆流(逆止弁25から室外熱交換器23に向かう流れ)が抑止される。この結果、暖房サイクル運転時には、第1のバイパス通路30と、逆止弁25と第2膨張弁26間の通路とを合わせた、行き止まりの通路(以下、冷媒貯留用通路ともいう)に冷媒を貯留しておくことができる。つまり、暖房サイクル運転時には、冷媒が流通する通路として使用されていない冷媒貯留用通路を構成する配管部分に高圧の冷媒を導入して、冷媒を貯留可能なタンクとして活用できるのである。この冷媒通路を活用したタンクの形成により、当該タンクに冷媒を貯留する分、従来のヒートポンプサイクルに比べてアキュムレータに貯留する冷媒量を低減することができる。
【0045】
またヒートポンプサイクル2には、図1の斜線太矢印で示す除湿暖房(直列)サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→第2膨張弁26→蒸発器5→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。
【0046】
またヒートポンプサイクル2には、図1の破線太矢印で示す除湿暖房(並列)サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→第2のバイパス通路40(第2電磁弁40)→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路と、凝縮器7→第1のバイパス通路30(第1電磁弁31)→第2膨張弁26→蒸発器5→アキュムレータ28の冷媒経路とが形成されうる。除湿暖房(並列)サイクル運転では、凝縮器7を流出後、第1のバイパス通路30に分流した高圧の冷媒が、第2のバイパス通路40を経由してアキュムレータ28に流入することがないように、逆止弁25の逆流抑止機能が効果的に作用しているのである。
【0047】
圧縮機21は、回転数制御が可能である圧縮機であり、インバータ51によって、周波数を調整した交流電圧が印加されて、モータの回転速度が制御される。インバータ51は、車載のバッテリ50から直流電源の供給を受け、制御装置100によって制御される。
【0048】
制御装置100は、車室内の空調を制御する装置であり、マイクロコンピュータと、車室内前面に設けられた操作パネル110上の各種スイッチや各種センサからの信号が入力される入力回路と、各種アクチュエータに出力信号を送る出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、操作パネル110等から送信された運転命令に基づいた演算に使用される各種プログラムを有している。
【0049】
制御装置100は、操作パネル110等からの情報により、エアコン環境情報、エアコン運転条件情報、および車両環境情報を受信して各種プログラムによる演算を行い、圧縮機21の回転数、各種弁の開度状態、送風機4および送風機24による風量、各種ドア3,11〜13の開閉状態等を算出する。制御装置100は、これら各部の運転を算出結果にしたがって制御する。
【0050】
次に、上記構成に係る車両用空調装置の各運転モードの作動を説明する。操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、制御装置100は圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべき運転モードを冷房運転と判定すると、第1膨張弁22を全開状態に、第2膨張弁26を制御開度に、第1電磁弁31及び第2電磁弁41を閉状態になるように制御する。さらに制御装置100は、冷房運転であるので、主に温風通路1cを閉じるようにエアミックスドア6の開度を制御し、吹出しモードが主にフェイス吹出しとなるようにフェイス吹出し開閉ドア11を制御する。制御装置100は、例えば外気吸入口3bから外気を取り入れる外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0051】
冷房サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入するが、エアミックスドア6は温風通路1cを閉じるように開度を制御されるため、凝縮器7の周囲を通過する送風量はなく熱交換は行われない。そして冷媒は、室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに周囲の空気に熱を奪われて冷却され霧状冷媒となる。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。
【0052】
その後、霧状冷媒は第2膨張弁26で減圧されて蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、必要に応じて圧力制御弁27で圧力制御されてからアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。蒸発器5で吸熱され冷却された冷風はさらに通風路を進んで主にフェイス吹出し開口8から乗員の上半身に向けて吹き出されて車室内を冷房する。
【0053】
次に、暖房サイクル運転時の冷媒の流れを説明する。制御装置100は操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを暖房サイクル運転と判定すると、第1膨張弁22を制御開度に、第2膨張弁26を全閉状態に、第1電磁弁31及び第2電磁弁41を開状態になるように制御する。さらに制御装置100は、暖房運転時であるので吹出しモードが設定温度に応じて主にフット吹出しまたはデフ吹出しとなるようにフット吹出し開閉ドア12またはデフロスタ吹出し開閉ドア13を制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0054】
暖房サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして冷媒は、第1膨張弁22に流入し、第1膨張弁22で減圧される。第1膨張弁22によって低圧に減圧された冷媒は室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに周囲の空気から吸熱して蒸発する。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。室外熱交換器23で蒸発したガス冷媒は第2のバイパス通路40及び第2電磁弁41を経由してアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0055】
暖房サイクル運転時には、第1膨張弁31が開状態に制御され、かつ第2膨張弁26が全閉状態に制御されることにより、第2のバイパス通路30の容積と、逆止弁25と第2膨張弁26との間を接続する通路の容積とで占める通路容積が、凝縮器7を流出した高圧冷媒の一部を貯えることが可能なタンクとして機能する。ヒートポンプサイクル2では、暖房サイクル運転時は他の運転モード時と比較して冷媒が流通する流路容積が小さいため、サイクル20のアキュムレータを除く冷媒通路に存在する冷媒量が少なく、その分、冷媒タンクとしてのアキュムレータ28に貯留される冷媒量が大きくなる。したがって、従来の暖房サイクル運転において、アキュムレータ28に貯留される冷媒量を減少させることができれば、その減少分はアキュムレータ28の冷媒貯留能力を低減できるので、アキュムレータ28の容積を小さくでき、小型化が図れるのである。そこで、本実施形態のヒートポンプサイクル2は、前述のように、サイクル20内に冷媒の流通に無関係な冷媒を貯留できる通路容積を確保するので、アキュムレータ28の冷媒貯留量を小さくでき、アキュムレータ28の容積低減に寄与することができる。
【0056】
暖房サイクル運転時に空調ユニットケース1内に取り込まれた低温の空気(例えば冬期の外気)は、蒸発器5を通過した後、エアミックスドア6によって主に温風通路1cを流れ、凝縮器7によって加熱され温風となる。そして、暖房時にデフ吹出しモードが行われる場合は、この温風は凝縮器7を通過した後、開放されたデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向けて吹き出される。また、暖房時にフット吹出しモードが行われる場合は、この温風は凝縮器7を通過した後、開放されたフット吹出し開口9フット吹出し開口11を通って乗員の足元に向けて吹き出される。
【0057】
次に、除湿暖房サイクル運転が行われた場合の冷媒の流れを説明する。除湿暖房サイクル運転には、除湿暖房(直列)サイクル運転と除湿暖房(並列)サイクル運転とがある。制御装置100は、操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを除湿暖房(直列)サイクル運転と判定すると、第1膨張弁22及び第2膨張弁26をそれぞれの制御開度に、第1電磁弁31及び第2電磁弁41を閉状態になるように制御する。さらに制御装置100は、除湿暖房運転時であるので主にデフ吹出しまたはフット吹出しとなるように各吹出し開閉ドアを制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0058】
除湿暖房(直列)サイクル運転では、蒸発器5の吸熱作用および凝縮器7の放熱作用により、空調ユニットケース1内の送風空気はまず蒸発器5で冷却、除湿され、その後に凝縮器7で加熱されて温風となる。この温風は主にデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向かって吹き出され、防曇効果を発揮するとともに車室内を除湿暖房する。
【0059】
除湿暖房(直列)サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして冷媒は、第1膨張弁22で減圧された後、室外熱交換器23で周囲の空気から吸熱して蒸発、もしくは放熱して凝縮する。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。室外熱交換器23を流出した冷媒は、さらに第2膨張弁26で減圧されてから蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、必要に応じて圧力制御弁27で圧力制御されてからアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0060】
制御装置100は、操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを除湿暖房(並列)サイクル運転と判定すると、第1膨張弁22及び第2膨張弁26をそれぞれの制御開度に、第1電磁弁31及び第2電磁弁41を開状態になるように制御する。さらに制御装置100は、除湿暖房運転時であるので主にデフ吹出しまたはフット吹出しとなるように各吹出し開閉ドアを制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0061】
除湿暖房(並列)サイクル運転では、蒸発器5の吸熱作用および凝縮器7の放熱作用により、空調ユニットケース1内の送風空気はまず蒸発器5で冷却、除湿され、その後に凝縮器7で加熱されて温風となる。この温風は主にデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向かって吹き出され、防曇効果を発揮するとともに車室内を除湿暖房する。
【0062】
除湿暖房(並列)サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして、凝縮器5を流出した冷媒は、その一部が第1のバイパス通路30を通って第2膨張弁26に流入し、第2膨張弁26で減圧されてから蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、圧力制御弁27で圧力制御されてからアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。また凝縮器5を流出した冷媒の残余は、第1膨張弁22に流入して減圧される。第1膨張弁22によって低圧に減圧された冷媒は室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに、周囲の空気から吸熱して蒸発する。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。室外熱交換器23で蒸発したガス冷媒は、第2のバイパス通路40を経由してアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0063】
以下に、本実施形態に係る空調装置の効果について述べる。本実施形態の空調装置によれば、ヒートポンプサイクル2は、凝縮器7の出口側冷媒通路と蒸発器5の入口側冷媒通路とを連絡する第1のバイパス通路30と、冷媒が凝縮器7側から蒸発器5側に向かって第1のバイパス通路30を流れることを許可及び阻止する冷媒流通制御手段と、蒸発器5の入口側冷媒通路と第1のバイパス通路30との接続部位よりも蒸発器5寄りに設けられて、冷媒が蒸発器5に流入することを阻止する第1の冷媒流通阻止手段と、蒸発器5の入口側冷媒通路と第1のバイパス通路30との接続部位よりも室外熱交換器23寄りに設けられて、冷媒が室外熱交換器23側に流れることを阻止する第2の冷媒流通阻止手段とを有する。そして複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル2の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、冷媒流通制御手段によって第1のバイパス通路30における冷媒の流通を許可するとともに、第1の冷媒流通阻止手段及び第2の冷媒流通阻止手段によって冷媒の流通を阻止する。
【0064】
上述のように従来のヒートポンプサイクルにおいては、暖房サイクル運転は、冷房サイクル運転、除湿暖房(直列)サイクル運転、及び除湿暖房(並列)サイクル運転の場合に比べて、ヒートポンプサイクルにおける冷媒が流通しうる通路が短いため、その通路容積は小さい。このため、暖房サイクル運転の場合は、冷媒が流通しうる通路に存在する冷媒量が少ないので、アキュムレータに貯留される冷媒量が多い。したがって、すべての運転に対応できる冷媒貯留量を確保するためには、アキュムレータの冷媒貯留能力を暖房サイクル運転時に適合させる必要があり、アキュムレータの小型化が図れない。
【0065】
そこで、本実施形態によれば、ヒートポンプサイクル2の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、第1のバイパス通路30における冷媒の流通を許可し、第1の冷媒流通阻止手段によって冷媒が蒸発器5に流入することを阻止し、第2の冷媒流通阻止手段によって冷媒が室外熱交換器23側に流れることを阻止する。これにより、第1の冷媒流通阻止手段及び第2の冷媒流通阻止手段によって冷媒流れを阻止した部位において冷媒はそれ以上流れなくなるため、冷媒通路に冷媒の行き止まり部を形成することができる。これにより、第1のバイパス通路30と、第1のバイパス通路30から冷媒の行き止まり部に至るまでの通路とによって、当該冷媒量が最も少ない運転モード時に冷媒を貯えておける冷媒貯留用通路を形成できる。
【0066】
この冷媒貯留用通路は、当該冷媒量が最も少ない運転モードにおいて冷媒流路として使用していない通路であるから、高圧冷媒を貯留するタンクとしての機能を果たす。よって、このタンクで貯留される冷媒量の分だけ、アキュムレータ28に貯留される冷媒量を少なくすることができる。当該冷媒量が最も少ない運転モードでは、他の運転モードに比べてアキュムレータ28に貯留される冷媒量が多いため、本実施形態によりアキュムレータ28の貯留冷媒量を低減することによって、当該冷媒量が最も少ない運転モードで必要とするアキュムレータ28の容量を抑制できる。したがって、ヒートポンプサイクル2におけるアキュムレータ28の小型化が図れる。
【0067】
また、ヒートポンプサイクル2は、車両に設けられ、ヒートポンプサイクル2を用いて複数の運転モードにより空調される空調風は車室内に提供される。これによれば、車両用空調装置に使用するアキュムレータの小型化が図れるため、車両用空調装置を車両に搭載するために必要なスペースを低減することができる。したがって、車両の小型化や軽量化、車室空間の大型化といった要求に対して大きな効果が得られる。
【0068】
また、暖房サイクル運転では、室外熱交換器23を冷媒の吸熱作用を利用した蒸発器として機能させるため、蒸発器5に冷媒を流通させない冷媒経路となる。したがって、暖房サイクル運転では、他の運転モードに比べて、ヒートポンプサイクル2において冷媒が流通する通路容積が小さい場合が多く、アキュムレータ28に冷媒が多く貯留されやすい。そこで、複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル2の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードを暖房サイクル運転とすることにより、暖房サイクル運転時に冷媒貯留用通路を形成するため、アキュムレータ28の小型化に有用な車両用空調装置を提供できる。
【0069】
また、第1の冷媒流通阻止手段は、除湿暖房サイクル運転時と冷房サイクル運転時に蒸発器に流入する冷媒を減圧する開度調整可能な第2膨張弁26である。この構成によれば、第2膨張弁26の開度を全閉状態に調整することにより、冷媒通路を閉鎖することができるため、冷媒が蒸発器5に流入することを阻止することができる。したがって、冷房サイクル運転時等に蒸発器5に流入させる冷媒を減圧するための第2膨張弁26を第1の冷媒流通阻止手段として使用できるので、新たな部品を追加することなく、部品点数の増加を抑制できる。
【0070】
また、第2の冷媒流通阻止手段は、蒸発器5側から室外熱交換器23側への冷媒の流れを阻止する逆止弁25である。この構成によれば、逆止弁25が有する一方向への冷媒流れ作用を活用することにより、冷媒の流れを規制することができるため、蒸発器5側から室外熱交換器23側への冷媒流れを阻止することができる。したがって、新たな部品を追加することなく、部品点数の増加を抑制できる。
【0071】
また、冷媒流通制御手段は、第1のバイパス通路30を開閉する第1電磁弁31で構成される。この構成によれば、第1電磁弁31による通路開閉制御によって、第1のバイパス通路30を冷媒貯留用通路として容易に活用することができる。
【0072】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るヒートポンプサイクル2Aは、第1実施形態のヒートポンプサイクル2に対して、第2電磁弁41、及び逆止弁25の代わりに、三方弁60を備える形態である。第2実施形態は、以下に特に説明しない実施形態、例えば、構成、各部の作動、各運転モードの作動及び作用、作用効果等については第1実施形態と同様である。図2は、第2実施形態に係るヒートポンプサイクル2Aを備えた車両用空調装置の構成を示す概略図である。
【0073】
図2に示すように、ヒートポンプサイクル2Aが備える三方弁60は、室外熱交換器23の出口側通路に、第2のバイパス通路40を接続するか、または第2膨張弁26の入口側通路を接続するかを切り換えることができる切換弁である。三方弁60の動作状態は、制御装置100によって制御される。
【0074】
ヒートポンプサイクル2Aには、図2の黒塗り太矢印で示す冷房サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→三方弁60→第2膨張弁26→蒸発器5→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。
【0075】
またヒートポンプサイクル2Aには、図2の白抜き太矢印で示す暖房サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→三方弁60→第2のバイパス通路40→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。この暖房サイクル運転では、三方弁60によって室外熱交換器23の出口側通路と第2のバイパス通路40とを接続することにより、室外熱交換器23を流出した冷媒はアキュムレータ28を経て圧縮機21に吸入される。さらに、第1電磁弁31を開状態に制御することにより、第1のバイパス通路30を開放する。これによって、凝縮器7の出口側通路(凝縮器7の出口部と第1膨張弁22の入口部とを接続する冷媒通路)と、第2膨張弁26の入口側通路(室外熱交換器23の出口部と蒸発器5の入口部とを接続する冷媒通路)とが連通するようになる。
【0076】
この第1のバイパス通路30の開放により、凝縮器7を流出した冷媒の一部は、第1のバイパス通路30を通り、蒸発器5側に流通可能であるように思われるが、第2膨張弁26が全閉状態であるため、第2膨張弁26で蒸発器5に向かう通路が遮閉されて蒸発器5には流れない。さらに、反対側の室外熱交換器23寄りの冷媒通路においては、三方弁60の存在によって、冷媒通路が遮断されるため、冷媒の逆流(三方弁60から室外熱交換器23に向かう流れ)が抑止される。この結果、暖房サイクル運転時には、第1のバイパス通路30と、三方弁60と第2膨張弁26間の通路と、を合わせた通路に冷媒を貯留しておくことができる。つまり、暖房サイクル運転時には、冷媒が流通する通路として使用されていない配管部分に高圧の冷媒を導入して、冷媒を貯留可能なタンクとして活用できるのである。この冷媒通路を活用したタンクの形成により、当該タンクに冷媒を貯留する分、従来のヒートポンプサイクルに比べてアキュムレータに貯留する冷媒量を低減することができる。
【0077】
またヒートポンプサイクル2Aには、図2の斜線太矢印で示す除湿暖房(直列)サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→三方弁60→第2膨張弁26→蒸発器5→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。
【0078】
またヒートポンプサイクル2Aには、図2の破線太矢印で示す除湿暖房(並列)サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1膨張弁22→室外熱交換器23→三方弁60→第2のバイパス通路40→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路と、凝縮器7→第1のバイパス通路30(第1電磁弁31)→第2膨張弁26→蒸発器5→アキュムレータ28の冷媒経路とが形成されうる。除湿暖房(並列)サイクル運転では、凝縮器7を流出後、第1のバイパス通路30に分流した高圧の冷媒が、第2のバイパス通路40を経由してアキュムレータ28に流入することがないように、三方弁60の冷媒通路切り替え機能が働いているのである。
【0079】
次に、上記構成に係る車両用空調装置の各運転モードの作動を説明する。操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、制御装置100は圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべき運転モードを冷房運転と判定すると、第1膨張弁22を全開状態に、第2膨張弁26を制御開度に、第1電磁弁31を閉状態に、三方弁60を第2膨張弁26の入口側通路が冷媒流通状態になるように制御する。さらに制御装置100は、冷房運転であるので、主に温風通路1cを閉じるようにエアミックスドア6の開度を制御し、吹出しモードが主にフェイス吹出しとなるようにフェイス吹出し開閉ドア11を制御する。制御装置100は、例えば外気吸入口3bから外気を取り入れる外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0080】
冷房サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入するが、エアミックスドア6は温風通路1cを閉じるように開度を制御されるため、凝縮器7の周囲を通過する送風量はなく熱交換は行われない。そして冷媒は、室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに送周囲の空気に熱を奪われて冷却され霧状冷媒となる。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。
【0081】
その後、霧状冷媒は第2膨張弁26で減圧されて蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、必要に応じて圧力制御弁27で圧力制御されてからアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。蒸発器5で吸熱され冷却された冷風はさらに通風路を進んで主にフェイス吹出し開口8から乗員の上半身に向けて吹き出されて車室内を冷房する。
【0082】
次に、暖房サイクル運転時の冷媒の流れを説明する。制御装置100は操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを暖房サイクル運転と判定すると、第1膨張弁22を制御開度に、第2膨張弁26を全閉状態に、第1電磁弁31を開状態に、三方弁60を第2のバイパス通路40が冷媒流通状態になるように制御する。さらに制御装置100は、暖房運転時であるので吹出しモードが設定温度に応じて主にフット吹出しまたはデフ吹出しとなるようにフット吹出し開閉ドア12またはデフロスタ吹出し開閉ドア13を制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0083】
暖房サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして冷媒は、第1膨張弁22に流入し、第1膨張弁22で減圧される。第1膨張弁22によって低圧に減圧された冷媒は室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに周囲の空気から吸熱して蒸発する。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。室外熱交換器23で蒸発したガス冷媒は第2のバイパス通路40を経由してアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0084】
暖房サイクル運転時には、第1膨張弁31が開状態に制御され、かつ第2膨張弁26が全閉状態に制御されることにより、第2のバイパス通路30の容積と、逆止弁25と第2膨張弁26との間を接続する通路の容積とで占める通路容積が、凝縮器7を流出した高圧冷媒の一部を貯えることが可能なタンクとして機能する。ヒートポンプサイクル2では、暖房サイクル運転時は他の運転モード時と比較して冷媒が流通する流路容積が小さいため、サイクル20のアキュムレータを除く冷媒通路に存在する冷媒量が少なく、その分、冷媒タンクとしてのアキュムレータ28に貯留される冷媒量が大きくなる。したがって、従来の暖房サイクル運転において、アキュムレータ28に貯留される冷媒量を減少させることができれば、その減少分はアキュムレータ28の冷媒貯留能力を低減できるので、アキュムレータ28の容積を小さくでき、小型化が図れるのである。そこで、本実施形態のヒートポンプサイクル2は、前述のように、サイクル20内に冷媒の流通に無関係な冷媒を貯留できる通路容積を確保するので、アキュムレータ28の最大冷媒貯留量を小さくでき、アキュムレータ28の容積低減に寄与することができる。
【0085】
暖房サイクル運転時に空調ユニットケース1内に取り込まれた低温の空気(例えば冬期の外気)は、蒸発器5を通過した後、エアミックスドア6によって主に温風通路1cを流れ、凝縮器7によって加熱され温風となる。そして、暖房時にデフ吹出しモードが行われる場合は、この温風は凝縮器7を通過した後、開放されたデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向けて吹き出される。また、暖房時にフット吹出しモードが行われる場合は、この温風は凝縮器7を通過した後、開放されたフット吹出し開口9フット吹出し開口11を通って乗員の足元に向けて吹き出される。
【0086】
次に、除湿暖房サイクル運転が行われた場合の冷媒の流れを説明する。除湿暖房サイクル運転には、除湿暖房(直列)サイクル運転と除湿暖房(並列)サイクル運転とがある。制御装置100は、操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを除湿暖房(直列)サイクル運転と判定すると、第1膨張弁22及び第2膨張弁26をそれぞれの制御開度に、第1電磁弁31を閉状態に、三方弁60を第2膨張弁26の入口側通路が冷媒流通状態になるように制御する。さらに制御装置100は、除湿暖房運転時であるので、主にデフ吹出しまたはフット吹出しとなるように各吹出し開閉ドアを制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0087】
除湿暖房(直列)サイクル運転では、蒸発器5の吸熱作用および凝縮器7の放熱作用により、空調ユニットケース1内の送風空気はまず蒸発器5で冷却、除湿され、その後に凝縮器7で加熱されて温風となる。この温風は主にデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向かって吹き出され、防曇効果を発揮するとともに車室内を除湿暖房する。
【0088】
除湿暖房(直列)サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして冷媒は、第1膨張弁22で減圧された後、室外熱交換器23で周囲の空気から吸熱して蒸発、もしくは放熱して凝縮する。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。室外熱交換器23を流出した冷媒は、さらに第2膨張弁26で減圧されてから蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、必要に応じて圧力制御弁27で圧力制御されてからアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0089】
制御装置100は、操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを除湿暖房(並列)サイクル運転と判定すると、第1膨張弁22及び第2膨張弁26をそれぞれの制御開度に、第1電磁弁31及び第2電磁弁41を開状態になるように制御する。さらに制御装置100は、除湿暖房運転時であるので主にデフ吹出しまたはフット吹出しとなるように各吹出し開閉ドアを制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0090】
除湿暖房(並列)サイクル運転では、蒸発器5の吸熱作用および凝縮器7の放熱作用により、空調ユニットケース1内の送風空気はまず蒸発器5で冷却、除湿され、その後に凝縮器7で加熱されて温風となる。この温風は主にデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向かって吹き出され、防曇効果を発揮するとともに車室内を除湿暖房する。
【0091】
除湿暖房(並列)サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして、凝縮器5を流出した冷媒は、その一部が第1のバイパス通路30を通って第2膨張弁26に流入し、第2膨張弁26で減圧されてから蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、圧力制御弁27で圧力制御されてからアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。また凝縮器5を流出した冷媒の残余は、第1膨張弁22に流入して減圧される。第1膨張弁22によって低圧に減圧された冷媒は室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに周囲の空気から吸熱して蒸発する。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。室外熱交換器23で蒸発したガス冷媒は、第2のバイパス通路40を経由してアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0092】
本実施形態によれば、第2の冷媒流通阻止手段には、複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル2Aの冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、室外熱交換器23を流出した冷媒を、蒸発器5に流入させないで第2のバイパス通路40に流入させるように冷媒流路を切り換える切換弁としての三方弁60が含まれる。
【0093】
この構成によれば、例えば冷媒が蒸発器5に流入しないように制御する暖房サイクル運転モード等を実施するために設けられる三方弁60を活用することにより、冷媒の流れを規制することができるため、蒸発器5側から室外熱交換器23側への冷媒流れを阻止することができる。したがって、新たに部品を追加することなく第2の冷媒流通阻止手段を構築できるとともに、部品点数の増加を抑制できる。
【0094】
(第3実施形態)
本発明の一実施形態である第3実施形態について図3にしたがって説明する。図3は第3実施形態に係る車両用空調装置の構成を示した概略図である。図3において、黒塗り太矢印は冷房サイクル運転時の冷媒流れを示し、白抜き太矢印は暖房サイクル運転時の冷媒流れを示し、斜線太矢印は除湿暖房サイクル運転時の冷媒流れを示している。
【0095】
第3実施形態の車両用空調装置は、空調ユニットケース1側に関わる各構成部品及び各部品の作動が第1実施形態と同様であり、ヒートポンプサイクル2Bの構成が第1実施形態とは異なる。以下、ヒートポンプサイクル2Bについて第1実施形態とは異なる形態を説明する。したがって、第3実施形態は、以下に特に説明しない実施形態、作用効果等については第1実施形態と同様である。
【0096】
図3に示すように、ヒートポンプサイクル2Bは、サイクル20B1と、サイクル20B1における特定の部位間を接続する第3の連絡通路20B4と、サイクル20B1の特定部位と第3の連絡通路20B4の特定部位とを接続する第1の連絡通路20B2と、サイクル20B1における特定の部位間を接続する第2の連絡通路20B3と、を備えて構成される。サイクル20B1は、冷媒を吸入して吐出する圧縮機21、凝縮器7、三方弁70、室外熱交換器23、逆止弁71、第2膨張弁26A、蒸発器5、第2電磁弁73、及びアキュムレータ28を冷媒通路によって環状に接続して構成される回路である。
【0097】
第3の連絡通路20B4は、サイクル20B1における、室外熱交換器23及び逆止弁71間の通路と、凝縮器7の出口側通路とを接続する通路である。第3の連絡通路20B4には、凝縮器7寄りに第1電磁弁72が設けられ、室外熱交換器23寄りに第1膨張弁22Aが設けられている。したがって、第3の連絡通路20B4には、凝縮器7から室外熱交換器23に向かって、第1電磁弁72、第1膨張弁22Aの順に設けられている。第1の連絡通路20B2は、サイクル20B1における逆止弁71及び第2膨張弁26A間の通路と、第3の連絡通路20B4における第1電磁弁72及び第1膨張弁22A間の通路とを接続する通路である。第2の連絡通路20B3は、サイクル20B1における、三方弁70に接続可能な通路と、第2電磁弁73及びアキュムレータ28間の通路とを接続する通路である。
【0098】
第1電磁弁72は、凝縮器7の出口側から室外熱交換器23または第1の連絡通路20B2に流れる冷媒の流通を許可及び遮断する開閉弁であり、制御装置100によってその作動が制御される。第1膨張弁22Aは、固定絞り等の固定式膨張弁であり、暖房サイクル運転時に凝縮器7から流入した冷媒を減圧する。逆止弁71は、サイクル20B1において冷媒が第2膨張弁26A側から室外熱交換器23側に逆流することを阻止する弁である。したがって、逆止弁71は、蒸発器5の入口側冷媒通路と第1の連絡通路20B2との接続部位よりも室外熱交換器23寄りに設けられて、冷媒が室外熱交換器23側に流れることを阻止する第2の冷媒流通阻止手段を構成する。室外熱交換器23は、第1膨張弁22Aで減圧された冷媒と周囲の空気(外気)とを熱交換する熱交換器である。また室外熱交換器23は、暖房サイクル運転時には蒸発器として機能し、冷房サイクル運転時には凝縮器として機能し、除湿暖房サイクル運転時には冷媒は流れない。
【0099】
三方弁70は、室外熱交換器23側通路に第2の連絡通路20B3を接続するか、凝縮器7の出口側通路を接続するか、あるいは室外熱交換器23側通路、凝縮器7の出口側通路及び第2の連絡通路20B3のいずれの通路間も接続しない全閉状態か、を切り換えることができる切換弁である。三方弁70の動作状態は、制御装置100によって制御される。第2膨張弁26Aは、冷房サイクル運転時及び除湿暖房サイクル運転時に開度制御されて蒸発器7に流入する冷媒を減圧し、暖房サイクル運転時に全開状態に制御される開度調整機能を有する減圧装置であり、制御装置100によってその作動が全開から全閉の開度まで制御される。第2膨張弁26Aは、冷媒が凝縮器7側から蒸発器5側に向かって蒸発器5の入口側冷媒通路を流れることを許可する冷媒流通制御手段を構成する。
【0100】
第2電磁弁73は、その作動が制御装置100によって制御される開閉弁であり、冷房サイクル運転時及び除湿暖房サイクル運転時に開状態に制御され、暖房サイクル運転時に閉状態に制御される。したがって、第2電磁弁73は、蒸発器5の出口側冷媒通路であって、暖房サイクル運転時に第2の連絡通路20B3を通って冷媒が流入する部位よりも蒸発器5寄りに設けられて、蒸発器5側から圧縮機21の吸入部側に向かう冷媒の流れを流入することを阻止する第1の冷媒流通阻止手段を構成する。
【0101】
各サイクル運転時における、三方弁70、第1膨張弁22A、第2膨張弁26A、第1電磁弁72、及び第2電磁弁73の動作状態は、以下の(表2)に示すとおりである。
【表2】

【0102】
上記構成により、ヒートポンプサイクル2Bには、図3の黒塗り太矢印で示す冷房サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→三方弁70→室外熱交換器23→逆止弁71→第2膨張弁26A→蒸発器5→第2電磁弁73→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。
【0103】
またヒートポンプサイクル2Bには、図3の白抜き太矢印で示す暖房サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第3の連絡通路20B4(第1電磁弁72→第1膨張弁22A)→室外熱交換器23→三方弁70→第2の連絡通路2B3→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。この暖房サイクル運転では、三方弁70によって室外熱交換器23側通路と第2の連絡通路20B3とを接続し、第1電磁弁72を開状態に制御することにより、第3の連絡通路20B4を開放して、凝縮器7の出口側通路と、室外熱交換器23及び逆止弁71間の通路とを接続する。また、第2電磁弁73を閉状態に制御することにより、室外熱交換器23を流出した後の低温のガス冷媒(0℃以下である)が蒸発器5に流入しないようにして、蒸発器5がフロストすることを防止する。さらに逆止弁71によって、凝縮器7を流出した高圧冷媒が第1膨張弁22Aを通過しないで室外熱交換器23に流入することを防止することができる。
【0104】
暖房サイクル運転では、第2電磁弁73による通路閉鎖と、第2膨張弁26Aによる通路開放とによって、第2膨張弁26Aから蒸発器5を経由して第2電磁弁73に至るまでの行き止まりの通路(以下、冷媒貯留用通路ともいう)を形成することができる。そして凝縮器7を流出した冷媒の一部は、第1電磁弁72と第1膨張弁22Aとの間の通路から第1の連絡通路20B2に流入するが、逆止弁71の存在によって、逆止弁71から室外熱交換器23に向かう流れが抑止されて、蒸発器5に向かう流れが許容される。
【0105】
この結果、暖房サイクル運転時には、冷媒貯留用通路に冷媒を貯留しておくことができる。つまり、暖房サイクル運転時には、冷媒が流通する通路として使用されていない冷媒貯留用通路を構成する配管部分と蒸発器5に高圧の冷媒を導入して、冷媒を貯留可能なタンクとして活用できるのである。この冷媒貯留用通路を活用したタンクの形成により、当該タンクに冷媒を貯留する分、従来のヒートポンプサイクルに比べてアキュムレータに貯留する冷媒量を低減することができる。
【0106】
またヒートポンプサイクル2Bには、図3の斜線太矢印で示す除湿暖房サイクル運転時に、圧縮機21→凝縮器7→第1電磁弁72→第1の連絡通路20B2→第2膨張弁26A→蒸発器5→第2電磁弁73→アキュムレータ28→圧縮機21の冷媒経路が形成されうる。除湿暖房サイクル運転では、前述する3つのいずれの通路間も接続しない全閉状態に三方弁70を制御することにより、凝縮器7を流出した高圧の冷媒は第2膨張弁26Aで減圧されてから蒸発器5に流入するようになる。また、除湿暖房サイクル運転では、凝縮器7を流出後、第1の連絡通路20B2に流入した高圧の冷媒が、室外熱交換器第23に流入することがないように、逆止弁71の逆流抑止機能が効果的に作用している。
【0107】
次に、上記構成に係る車両用空調装置の各運転モードの作動を説明する。操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、制御装置100は圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべき運転モードを冷房運転と判定すると、三方弁70を室外熱交換器23側通路と凝縮器7の出口側通路とを接続する状態に、第2膨張弁26Aを制御開度に、第1電磁弁72を閉状態に、第2電磁弁73を開状態になるように制御する。さらに制御装置100は、冷房運転であるので、温風通路1cを閉じるようにエアミックスドア6の開度を制御し、主に吹出しモードがフェイス吹出しとなるようにフェイス吹出し開閉ドア11を制御する。制御装置100は、例えば外気吸入口3bから外気を取り入れる外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0108】
冷房サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入するが、エアミックスドア6は温風通路1cを閉じるように開度を制御されるため、凝縮器7の周囲を通過する送風量はなく熱交換は行われない。そして凝縮器7を流出した冷媒は、室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに周囲の空気に熱を奪われて冷却され霧状冷媒となる。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。
【0109】
その後、霧状冷媒は第2膨張弁26Aで減圧されて蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、アキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。蒸発器5で吸熱され冷却された冷風はさらに通風路を進んで主にフェイス吹出し開口8から乗員の上半身に向けて吹き出されて車室内を冷房する。
【0110】
次に、暖房サイクル運転時の冷媒の流れを説明する。制御装置100は操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを暖房サイクル運転と判定すると、三方弁70を室外熱交換器23側通路と第3の連絡通路20B4とを接続する状態に、第2膨張弁26Aを全開状態に、第2電磁弁73を閉状態になるように制御する。さらに制御装置100は、暖房運転時であるので吹出しモードが設定温度に応じてフット吹出しまたはデフ吹出しとなるようにフット吹出し開閉ドア12またはデフロスタ吹出し開閉ドア13を制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0111】
暖房サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして冷媒は、第1膨張弁22Aに流入し減圧される。第1膨張弁22Aによって低圧に減圧された冷媒は室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23内を通るときに周囲の空気から吸熱して蒸発する。この際、必要に応じて送風機24により室外熱交換器23に向けて送風することにより、熱交換を促進する。室外熱交換器23で蒸発したガス冷媒は第2の連絡通路20B3を経由してアキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0112】
暖房サイクル運転時には、第2膨張弁26Aが開状態に制御され、かつ第2電磁弁73が全閉状態に制御されることにより、第2膨張弁26Aから蒸発器5を経由して第2電磁弁73に至る通路の容積で占める通路容積が、凝縮器7を流出した高圧冷媒の一部を貯えることが可能なタンクとして機能する。ヒートポンプサイクル2Bでは、暖房サイクル運転時は他の運転モード時と比較して冷媒が流通する流路容積が小さいため、ヒートポンプサイクル2Bを構成する通路内に存在する冷媒量が少なく、その分、冷媒タンクとしてのアキュムレータ28に貯留される冷媒量が大きくなる。したがって、従来の暖房サイクル運転において、アキュムレータ28に貯留される冷媒量を減少させることができれば、その減少分はアキュムレータ28の冷媒貯留能力を低減することができるので、アキュムレータ28の容積を小さくでき、その小型化が図れるのである。そこで、本実施形態のヒートポンプサイクル2Bは、前述のように、サイクル内に冷媒の流通に無関係な冷媒を貯留できる通路容積を確保するので、アキュムレータ28の冷媒貯留量を小さくでき、アキュムレータ28の容積低減に寄与することができる。
【0113】
暖房サイクル運転時に空調ユニットケース1内に取り込まれた低温の空気(例えば冬期の外気)は、蒸発器5を通過した後、エアミックスドア6によって主に温風通路1cを流れ、凝縮器7によって加熱され温風となる。そして、暖房時にデフ吹出しモードが行われる場合は、この温風は凝縮器7を通過した後、開放されたデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向けて吹き出される。また、暖房時にフット吹出しモードが行われる場合は、この温風は凝縮器7を通過した後、開放されたフット吹出し開口9フット吹出し開口11を通って乗員の足元に向けて吹き出される。
【0114】
次に、除湿暖房サイクル運転が行われた場合の冷媒の流れを説明する。制御装置100は、操作パネル110のエアコンスイッチがON状態のとき、圧縮機21を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを除湿暖房サイクル運転と判定すると、三方弁70を全閉状態に、第2膨張弁26Aを制御開度に、第1電磁弁72及び第2電磁弁73を開状態になるように制御する。さらに制御装置100は、除湿暖房運転時であるので主にデフ吹出しまたはフット吹出しとなるように各吹出し開閉ドアを制御する。制御装置100は、例えば外気導入モードを選択するように内外気切替えドア3を制御する。
【0115】
除湿暖房サイクル運転では、蒸発器5の吸熱作用および凝縮器7の放熱作用により、空調ユニットケース1内の送風空気はまず蒸発器5で冷却、除湿され、その後に凝縮器7で加熱されて温風となる。この温風は主にデフロスタ吹出し開口10を通ってフロントウィンドウの内面に向かって吹き出され、防曇効果を発揮するとともに車室内を除湿暖房する。
【0116】
除湿暖房サイクル運転時、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は凝縮器7に流入し凝縮器7内を通るときに周囲の送風空気に熱を奪われて冷却され凝縮される。そして冷媒は、第2膨張弁26Aで減圧されてから蒸発器5に流入し、送風機4によって空調ユニットケース1内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器5内で蒸発する。蒸発器5を流出したガス冷媒は、開状態の第2電磁弁73を通過した後、アキュムレータ28で気液分離された後、圧縮機21に吸入される。
【0117】
以下に、本実施形態に係る空調装置の効果について述べる。本実施形態の空調装置によれば、ヒートポンプサイクル2Bは、凝縮器7の出口側冷媒通路と蒸発器5の入口側冷媒通路とを連絡する第1の連絡通路20B2と、暖房サイクル運転時に、凝縮器7を流出した冷媒が蒸発器5の出口側冷媒通路に流入するように設けられた第2の連絡通路20B3と、蒸発器5の出口側冷媒通路であって、暖房サイクル運転時に第2の連絡通路20B3を通って冷媒が流入する部位よりも蒸発器5寄りに設けられて、蒸発器5側から圧縮機21の吸入部側に向かう冷媒の流れを流入することを阻止する冷媒流通阻止手段と、冷媒が凝縮器7側から蒸発器5側に向かって蒸発器5の入口側冷媒通路を流れることを許可する冷媒流通制御手段と、を有する。そして、複数の運転モードのうち、ヒートポンプサイクル2Bの冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、冷媒流通制御手段によって蒸発器5の入口側冷媒通路における冷媒の流通を許可するとともに、冷媒流通阻止手段によって冷媒の流通を阻止する。
【0118】
上述のように従来のヒートポンプサイクルにおいては、暖房サイクル運転は、冷房サイクル運転、及び除湿暖房サイクル運転の場合に比べて、ヒートポンプサイクルにおける冷媒が流通しうる通路が長いため、その通路容積は大きい。このため、暖房サイクル運転の場合は、冷媒が流通しうる通路に存在する冷媒量が少ないので、アキュムレータに貯留される冷媒量が大きい。したがって、すべての運転に対応できる冷媒貯留量を確保するためには、アキュムレータの小型化が図れない。
【0119】
そこで、本実施形態によれば、ヒートポンプサイクル2Bの冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、蒸発器5の入口冷媒通路の冷媒の流通を許可するとともに、冷媒流通阻止手段によって冷媒が蒸発器5側から圧縮機21の吸入部側に向かうことを阻止する。これにより、当該流れを阻止した部位において冷媒はそれ以上流れなくなるため、冷媒通路に冷媒の行き止まり部を形成することができる。これにより、第2膨張弁26Aから当該行き止まり部に至るまでの通路によって、当該冷媒量が最も少ない運転モード時に冷媒を貯えておける冷媒貯留用通路を形成できる。この冷媒貯留用通路は、当該冷媒量が最も少ない運転モードにおいて冷媒流路として使用していない通路であるから、高圧冷媒を貯留するタンクとしての機能を果たすことができ、貯留される冷媒量の分だけ、アキュムレータ28に貯留される冷媒量を少なくすることができる。当該冷媒量が最も少ない運転モードでは、他の運転モードに比べてアキュムレータ28に貯留される冷媒量が多いため、このようにアキュムレータ28に貯留される冷媒量を低減することによって、当該冷媒量が最も少ない運転モードにおいて必要とされるアキュムレータ28の容量を抑制できる。したがって、ヒートポンプサイクル2Bにおけるアキュムレータ28の小型化を提供できる。
【0120】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0121】
第1実施形態および第2実施形態のヒートポンプサイクルでは、冷媒が凝縮器7側から蒸発器5側に向かって第1のバイパス通路30を流れることを許可及び阻止する冷媒流通制御手段として、第1電磁弁31を備えるが、代わりに三方弁によって冷媒流通制御手段を構成してもよい。この場合、三方弁は、第2膨張弁26の入口側通路に第1のバイパス通路30を接続するか、または室外熱交換器23の出口側通路(逆止弁25が設けられる通路)を接続するかを切り換えることができる切換弁である。
【0122】
上記実施形態の空調ユニットケース1には、他方側にフェイス吹出し開口8、フット吹出し開口9、及びデフロスタ吹出し開口10が形成されているが、この他、リアフット吹出し開口等が形成されてもよい。リアフット吹出し開口は車室内の後席乗員の足元に吹き出される空調空気が通過する。空調ユニットケース1に形成されたこれらの各開口は、それぞれ吹出しダクトを介して車室内空間に接続されており、また吹出しモードに対応して吹出し開閉ドアによって開閉されるようになっている。
【0123】
第1または第2実施形態における第1膨張弁22は、固定絞り等の固定式膨張弁であるが、膨張弁に流入する前の冷媒圧力によって膨張弁を流出した後の冷媒圧力が定まる機構を備えていればよく、第1膨張弁22は、例えば、前後で一定の差圧が生じる差圧式膨張弁であってもよい。
【0124】
第3実施形態における第2膨張弁26Aは、制御装置100によってその作動が全開から全閉の開度まで制御される開度可変式の減圧装置であるが、開度が一定に保たれる固定絞り等の固定式膨張弁であってもよく、この場合であっても、冷媒が凝縮器7側から蒸発器5側に向かって蒸発器5の入口側冷媒通路を流れることを許可する冷媒流通制御手段として機能する。
【0125】
第3実施形態における第1膨張弁22Aは、固定絞り等の固定式膨張弁であるが、膨張弁に流入する前の冷媒圧力によって膨張弁を流出した後の冷媒圧力が定まる機構を備えていればよく、第1膨張弁22Aは、例えば、前後で一定の差圧が生じる差圧式膨張弁であってもよい。
【0126】
第1実施形態では、第1のバイパス通路30に流入した冷媒は、暖房サイクル運転時に逆止弁25によって、室外熱交換器23側またはアキュムレータ28側には逆流しないようになっている。この逆止弁25は、通路を開閉可能な開閉弁に置き換えてもよく、置き換えた場合でも同様の逆流抑止効果が得られる。
【0127】
第3実施形態では、逆止弁71によって、凝縮器7を流出した高圧の冷媒が第1膨張弁22Aを通過しないで室外熱交換器23に流入することを防止するが、逆止弁71を通路を開閉可能な開閉弁に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…空調ユニットケース
2,2A,2B…ヒートポンプサイクル
5…蒸発器(冷却用室内熱交換器)
7…凝縮器(加熱用室内熱交換器)
20B2…第1の連絡通路
20B3…第2の連絡通路
21…圧縮機
23…室外熱交換器
25…逆止弁(第2の冷媒流通阻止手段)
26…第2膨張弁(第1の冷媒流通阻止手段)
26A…第2膨張弁(冷媒流通制御手段)
28…アキュムレータ
30…第1のバイパス通路(バイパス通路)
31…第1電磁弁(冷媒流通制御手段)
40…第2のバイパス通路
60…三方弁(切換弁)
73…第2電磁弁(冷媒流通阻止手段)
100…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入し吐出する圧縮機(21)と、除湿暖房サイクル運転時と暖房サイクル運転時に前記圧縮機(21)から吐出された冷媒が流入することにより室内へ送風される空気を加熱する加熱用室内熱交換器(7)と、前記暖房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱し、冷房サイクル運転時に放熱する室外熱交換器(23)と、前記除湿暖房サイクル運転時と前記冷房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用によって室内への前記送風空気を冷却する冷却用室内熱交換器(5)と、冷媒を気液分離して液冷媒を貯留するアキュムレータ(28)と、を少なくとも備えて構成されるヒートポンプサイクル(2,2A)を用いて、複数の運転モードにより空調される空調風を室内に提供する空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクル(2,2A)は、
前記加熱用室内熱交換器(7)の出口側冷媒通路と前記冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とを連絡するバイパス通路(30)と、
冷媒が前記加熱用室内熱交換器(7)側から前記冷却用室内熱交換器(5)側に向かって前記バイパス通路(30)を流れることを許可及び阻止する冷媒流通制御手段(31)と、
前記冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路と前記バイパス通路(30)との接続部位よりも前記冷却用室内熱交換器(5)寄りに設けられて、冷媒が前記冷却用室内熱交換器(5)に流入することを阻止する第1の冷媒流通阻止手段(26)と、
前記冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路と前記バイパス通路(30)との接続部位よりも前記室外熱交換器(23)寄りに設けられて、冷媒が前記室外熱交換器(23)側に流れることを阻止する第2の冷媒流通阻止手段(25)と、を有し、
前記複数の運転モードのうち、前記ヒートポンプサイクル(2,2A)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、前記冷媒流通制御手段(31)によって前記バイパス通路(30)における冷媒の流通を許可するとともに、前記第1の冷媒流通阻止手段(26)及び前記第2の冷媒流通阻止手段(25)によって冷媒の流通を阻止することを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記ヒートポンプサイクル(2,2A)は、車両に設けられ、
前記ヒートポンプサイクル(2,2A)を用いて複数の運転モードにより空調される空調風は車室内に提供されることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記複数の運転モードのうち、前記ヒートポンプサイクル(2,2A)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードは、前記暖房サイクル運転であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記第1の冷媒流通阻止手段(26)は、前記除湿暖房サイクル運転時と前記冷房サイクル運転時に前記冷却用室内熱交換器(5)に流入する冷媒を減圧する開度調整可能な減圧装置(26)であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項5】
前記第2の冷媒流通阻止手段(25)は、前記冷却用室内熱交換器(5)側から前記室外熱交換器(23)側への冷媒の流れを阻止する逆止弁(25)であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項6】
前記冷媒流通制御手段(31)は、前記バイパス通路(30)を開閉する電磁弁(31)で構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項7】
前記加熱用室内熱交換器(7)の出口側冷媒通路と前記冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とを連絡するバイパス通路(30)は、第1のバイパス通路であり、
さらに、前記室外熱交換器(23)の出口側冷媒通路と前記冷却用室内熱交換器(5)の出口側冷媒通路とを連絡する第2のバイパス通路(40)を備え、
前記第2の冷媒流通阻止手段(25)には、前記複数の運転モードのうち、前記ヒートポンプサイクル(2A)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、前記室外熱交換器(23)を流出した冷媒を、前記冷却用室内熱交換器(5)に流入させないで前記第2のバイパス通路(40)に流入させるように冷媒流路を切り換える切換弁(60)が含まれることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項8】
冷媒を吸入し吐出する圧縮機(21)と、除湿暖房サイクル運転時と暖房サイクル運転時に前記圧縮機(21)から吐出された冷媒が流入することにより室内へ送風される空気を加熱する加熱用室内熱交換器(7)と、前記暖房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱し、冷房サイクル運転時に放熱する室外熱交換器(23)と、前記除湿暖房サイクル運転時と前記冷房サイクル運転時に減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用によって室内への前記送風空気を冷却する冷却用室内熱交換器(5)と、冷媒を気液分離して液冷媒を貯留するアキュムレータ(28)と、を少なくとも備えて構成されるヒートポンプサイクル(2B)を用いて、複数の運転モードにより空調される空調風を室内に提供する空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクル(2B)は、
前記加熱用室内熱交換器(7)の出口側冷媒通路と前記冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路とを連絡する第1の連絡通路(20B2)と、
前記暖房サイクル運転時に、前記加熱用室内熱交換器(7)を流出した冷媒が前記冷却用室内熱交換器(5)の出口側冷媒通路に流入するように設けられた第2の連絡通路(20B3)と、
前記冷却用室内熱交換器(5)の出口側冷媒通路であって、前記暖房サイクル運転時に前記第2の連絡通路(20B3)を通って冷媒が流入する部位よりも前記冷却用室内熱交換器(5)寄りに設けられて、前記冷却用室内熱交換器(5)側から前記圧縮機(21)の吸入部側に向かう冷媒の流れを流入することを阻止する冷媒流通阻止手段(73)と、
冷媒が前記加熱用室内熱交換器(7)側から前記冷却用室内熱交換器(5)側に向かって前記冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路を流れることを許可する冷媒流通制御手段(26A)と、を有し、
前記複数の運転モードのうち、前記ヒートポンプサイクル(2B)の冷媒通路に存在する冷媒量が最も少ない運転モードの運転時に、前記冷媒流通制御手段(26A)によって前記冷却用室内熱交換器(5)の入口側冷媒通路における冷媒の流通を許可するとともに、前記冷媒流通阻止手段(73)によって冷媒の流通を阻止することを特徴とする空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−254670(P2012−254670A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127623(P2011−127623)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】