説明

空調装置

【課題】間仕切りのない形で省エネ的に有効な空調空間を確保でき、レイアウト変更等による移転、移設が容易な空調装置を提供する。
【解決手段】開放空間内の局所4に空調された空気を給気して空調する空調装置1であって、局所4の上方に配置され、局所4に向けて下降する空調された空気の平行気流SAを供給する天井吹出し面15と、局所4の下部において側方に配置された吸気口20と、吸気口20に向けて、局所4の床2面上に沿ったスリット状の空調された空気の気流NAを吹出す吹出し口26と、吸気口20と天井吹出し面15を連通させる流路21を備え、流路21には、吸気口20から流路21内に吸い込んだ空気を天井吹出し面15に向けて送風させるファン22と、吸気口20から流路21内に吸い込んだ空気を空調する空調機23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場などの開放空間内の局所を省エネルギーに空調する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば炉のある工場などでは、人の滞在に好適な空間を局所的に得るために、(1)ノズルによりスポット空調する、(2)区画した休憩室などを設けて空調する、(3)空調機を設置し、炉等の周囲を冷却する、などといった方策が採られている。また本出願人は、特許文献1として、クリーンルームの天井面から高清浄領域に向けて清浄空気を噴出す方式を開示している。更にまた、特許文献2として、室内の局所に向けて冷却気流を吹出し、局所を挟んで吹出し位置と反対側において吸引する空調装置を開示している。このように、広い室内等において居住者などの周りに局所的な空調空間を形成することにより、余分な空調負荷を排除することで省エネを達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−53219号公報
【特許文献2】特開2004−257621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、(1)の方式は、ノズルから吹き出された気流に周囲の高温雰囲気が誘引混合されてしまい、冷気を感じにくく、いわゆる「焼け石に水」の効果しか得られない。(2)の方式は、空調は効くものの、作業性が悪くなり、かつ、レイアウト変更に手間とコストがかかってしまう。(3)の方式は、エネルギーロスが大きく、また、エネルギーロスを小さくすると、空調が効かなくなるという問題がある。また、特許文献1、2の技術においても、レイアウト変更などに対する容易性に改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、間仕切りのない形で省エネ的に有効な空調空間を確保でき、レイアウト変更等による移転、移設が容易な空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、開放空間内の局所に空調された空気を給気して空調する空調装置であって、前記局所の上方に配置され、前記局所に向けて下降する空調された空気の平行気流を供給する天井吹出し面と、前記局所の下部において側方に配置された吸気口と、前記吸気口に向けて、前記局所の床面上に沿ったスリット状の空調された空気の気流を吹出す吹出し口と、前記吸気口と前記天井吹出し面を連通させる流路を備え、前記流路には、前記吸気口から前記流路内に吸い込んだ空気を前記天井吹出し面に向けて送風させるファンと、前記吸気口から前記流路内に吸い込んだ空気を空調する空調機が設けられていることを特徴とする、空調装置が提供される。
【0007】
この空調装置において、前記天井吹出し面は、前記流路が内部に設けられ、前記局所に対向する前記吸気口が下部に設けられた壁面と、前記局所に対向する前記吹出し口が下部に設けられた支柱により、前記局所の床面の上方に支持されていても良い。この場合、前記天井吹出し面の周縁部は、前記壁面に隣接する部分を除き、外側に行くほど下向きの平行気流の吹出し速度が小さくなっていても良い。また、前記天井吹出し面の周囲には、前記壁面に隣接する部分を除き、前記開放空間内の空気を下向きに吹出すエアーカーテン機構が設けられていても良い。
【0008】
また、この空調装置において、前記支柱の下部から前記局所の床面上に沿って延長部が設けられ、前記局所に対向する前記延長部の内面に、前記吹出し口が設けられていても良い。また、前記支柱の下部に、前記局所に対向して前記吹出し口が設けられていても良い。また、前記空調機で空調された空気の一部を前記壁面の内面に沿って流す第2の流路が設けられていても良い。また、前記空調機が、前記天井吹出し面の上方を覆うように配置されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工場などの開放空間内において、人の滞在に好適な空間を間仕切りのない形で局所的に作り出すことができる。本発明の空調装置は、容易にユニット化することができ、レイアウト変更等による移転、移設が容易となる。
【0010】
また、壁面に隣接する部分を除き、天井吹出し面の周縁部の平行気流の吹出し速度を、天井吹出し面の中央部の平行気流の吹出し速度に比べて小さくするか、あるいは、天井吹出し面の周囲にエアーカーテン機構を設けることにより、周囲の雰囲気をなるべく誘引混合せずに局所を効率良く空調できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態にかかる空調装置の斜視図である。
【図2】図1における、A−A断面図である。
【図3】整流格子の斜視図である。
【図4】本発明の別の実施の形態にかかる空調装置の斜視図である。
【図5】図4における、B−B断面部分図である。
【図6】図4における、C−C高さでの断面図である。
【図7】本発明の別の実施の形態にかかる空調装置の斜視図である。
【図8】図7における、D−D断面部分図である。
【図9】図7における、E−E断面図である。
【図10】本発明の別の実施の形態にかかる空調装置の斜視図である。
【図11】図10における、F−F断面部分図である。
【図12】壁面の内面に沿って空気を流す第2の流路が設けられている本発明の別の実施の形態にかかる空調装置の斜視図である。
【図13】空調機が天井吹出し面の上方を覆うように配置されている本発明の別の実施の形態にかかる空調装置の斜視図である。
【図14】冷却ユニット(空調機)の斜視図である。
【図15】1本の支柱の下部に設けられた延長部の内面に吹出し口が設けられている実施の形態の説明図である。
【図16】吹出し口を一つにした実施の形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の一例を説明する。なお、以下の形態では、例えば炉のある工場などの開放空間において、局所4を冷房空調する場合を想定して説明する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1、2に示すように、この空調装置1は、工場等の開放空間の床2の上に設置され、開放空間の内部において、熱負荷としての人3が存在している執務空間、作業空間などの局所4に給気し、部分的な空調を行うものとして構成されている。空調装置1は、床2の上方に配置される天井チャンバ10と、この天井チャンバ10を床2上の所定高さに支持する壁面11および2本の支柱12を備えている。なお、この空調装置1では、支柱12は四角柱の形状である。これら天井チャンバ10、壁面11、支柱12の内方に、人3の出入りが自由な局所4が形成される。空調装置1は、天井チャンバ10、壁面11、支柱12を一体的に備える1ユニットとして構成されており、空調装置1はユニットとして、一体的に床2上を移動し、所望の箇所に設置することができる。
【0014】
天井チャンバ10の下面には、局所4の床2に対向するように、天井吹出し面15が形成されている。この天井吹出し面15から空調された空気の平行気流SAが、例えば0.15〜0.45m/s程度のゆっくりとした風速で下向きに給気される。天井吹出し面15には、図3に示すように、平板16を縦にして格子状に組み合わせた整流機構(整流格子)17が取り付けられている。天井吹出し面15から例えば0.15〜0.45m/s程度のゆっくりとした風速で下向きに給気されることにより、空調された空気の平行気流SAが、天井吹出し面15の全体から下向きに層流状に給気が行われ、局所4に存在している人3の周りに、平行気流SAが下向きに給気される。この場合、天井吹出し面15から吹き出された空気は、整流機構17を通過する際に、より確実に平行気流SAに整流されることとなる。有効な整流を行うために、整流機構17の開口部の高さh(平板16の高さh)は、開口部の幅a、bよりも大きいことが好ましく、1.5a≦h、1.5b≦hとするのが良い。なお、整流機構17に代えて、あるいは、整流機構17に加えて、フィルタ等で均圧化しても良い。
【0015】
壁面11の内面(局所4に向かって露出するように配置されている面)18の下部には、局所4に対向する吸気口20が設けられている。吸気口20は、局所4の下部側方に配置されており、壁面11の下部において、床2と平行となるように、壁面11(内面18)の幅方向に伸びて形成されている。
【0016】
壁面11の内部は流路21になっている。この流路21の下部は、壁面11の内面18の下部に設けられた吸気口20に連通し、流路21の上部は、天井チャンバ10の内部に連通している。流路の内部には、吸気口20から流路21内に吸い込んだ空気(還気RA)を天井チャンバ10に向けて送風させるファン22と、還気RAを冷却して冷房空調する空調機23が設けられている。
【0017】
2本の支柱12の下部には、局所4の床面2上に沿って延長部25が設けられている。これら2本の支柱12の下部に設けられた延長部25はお互いに近づく方向に延びて設けられている。延長部25は、局所4を挟んで、壁面11と対向する位置関係にあり、延長部25と壁面11の間に局所4が形成される。
【0018】
局所4に対向する延長部25の内面には、局所4の床面上に沿ってスリット状の気流NAを吹出す吹出し口26が設けられている。吹出し口26は、前述の吸気口20と向かい合うように、局所4の下部側方に配置されており、支柱12の下部に取り付けられた延長部25内面において、床2と平行となるように、延長部25の幅方向に伸びて形成されている。
【0019】
支柱12および延長部25の内部はいずれも空洞であり、天井チャンバ10の内部は、支柱12を通じて延長部25の内部まで連通している。これにより、流路21内のファン22の動力で天井チャンバ10に送風された冷房空調された空気が、延長部25の内部まで供給され、床面上に沿ったスリット状の気流NAとなって、吹出し口26から局所4の下方に吹き出される。
【0020】
また、天井チャンバ10の下面(天井吹出し面15)と壁面11の上部には、局所4に存在している人3の周りを照らす照明27なども設けられている。
【0021】
以上のように構成された空調装置1にあっては、ファン22の稼動により、局所4にある空気が還気RAとなって吸気口20から流路21内に吸い込まれる。そして、流路の内部において、還気RAは空調機23により冷却される。こうして冷房空調された空気(還気RAが冷房空調された空気)が、ファン22の稼動により、天井チャンバ10に向けて送風される。そして、天井チャンバ10の下面に形成された天井吹出し面15から、冷房空調された空気が平行気流SAとなって慣性で下降していき、局所4に存在している人3の周りに下向きに給気される。こうして、局所4に対する冷房空調運転が行われる。
【0022】
また、空調機23により冷房空調された還気RAは、吸気口20からファン22によって天井チャンバ10に送風され、更に、延長部25の内部まで供給される。そして、延長部25の内部まで供給された空気(還気RAが冷房空調された空気)は、床4面上に沿ったスリット状の気流NAとなって、吹出し口26から局所4の下方(例えば、局所4に存在している人3のひざ下程度の高さ)に吹き出される。
【0023】
こうして、天井吹出し面15から給気されて、局所4に存在している人3の周りを冷房空調した空気(平行気流SA)は、局所4の床2近傍まで来ると、吹出し口26から床4面上に沿ってスリット状に吹き出された気流NAによって横向きに付勢され方向転換させられる。より詳しくは、吸気口20の吸引力とあいまって流れ方向を一方向に規制され、四散することなく、壁面11下部の吸気口20に向かって移動させられる。そして、ファン22の動力で、還気RAとなって吸気口20から流路21内に吸い込まれる。
【0024】
この空調装置1によれば、天井吹出し面15から給気されて、局所4の冷房空調運転に使用された空気(平行気流SA)を、局所4の床2近傍において、吹出し口26から吹き出した気流NAによって押し込まれ、押し込み方向に横向きに方向転換させ、還気RAとして、壁面11下部の吸気口20から流路21内に効率よく吸い込むことができる。こうして流路21内に効率よく吸い込んだ還気RAを、空調機23で冷房空調した後、天井チャンバ10下面の天井吹出し面15から、平行気流SAとして局所4に給気する。このように、局所4へ給気した平行気流SAを、局所4の外部に漏らさずに吸気口20から流路21内に回収して、再び平行気流SAとして再利用することにより、空調機23における冷房負荷をなるべく小さくさせ、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。
【0025】
また、この空調装置1によれば、人3の滞在に好適な局所空間を間仕切りのない形で局所的に作り出すことができ、人3は、局所4に対して自由に出入りすることができる。なお、移動性を確保するためには、図1に示したように、2本の支柱12から設けられた延長部25の先端同士の間に、適当な隙間を形成しておくとよい。
【0026】
加えて、この空調装置1は、天井チャンバ10、壁面11、支柱12を一体的に備える1ユニットとして構成されているので、レイアウト変更等があっても、ユニットとして一体的に床2上を移動させ、空調装置1を所望の箇所に設置することができる。このため、移転、移設が容易である。また、ユニットを細分化しておくことにより、工場などの開放空間内において、任意の場所で空調装置1を現地組み立てすることも可能である。
【0027】
次に、本発明の別の実施の形態にかかる空調装置1aを説明する。なお、先に図1、2で説明した空調装置1と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、異なる構成要素についてのみ説明する。
【0028】
図4〜6に示すように、この空調装置1aでは、支柱12が円柱形状である。そして、この円柱形状の支柱12の下部には、局所4に対向する位置に、局所4の床面上に沿ってスリット状の気流NAを吹出す吹出し口30が設けられている。図6に示すように、支柱12の下部側面において、壁面11に設けられた吸気口20と向かい合う位置に吹出し口30が開口しており、各吸気口20からは、上から見て扇状に広がるように気流NAが吹き出される。吹出し口30は、床2と平行に横に広がって開口しており、これにより、天井チャンバ10から支柱12を通じて延長部25まで送風された空気が、床面上に沿ったスリット状の気流NAとなって、吹出し口26から局所4の下方に吹き出される。
【0029】
図4に示すように、この空調装置1aでは、支柱12の内部に、補助的なブースターファン31が設けられている。また、この空調装置1aでは、壁面11の下部に設けられた吸気口20の形状が、中央が高く、両端が低い、略三角形になっている。
【0030】
この空調装置1aにおいても同様に、ファン22の稼動により、天井吹出し面15から局所4へ平行気流SAが給気され、局所4の冷房空調運転に使用された空気(平行気流SA)が、局所4の床2近傍において、吹出し口26から吹き出された気流NAにより横向きに方向転換させられる。その後、還気RAとして、壁面11下部の吸気口20から流路21内に効率よく吸い込まれ、空調機23で冷房空調された後、再び、天井チャンバ10下面の天井吹出し面15から、平行気流SAとして局所4に給気される。こうして、なるべく小さい冷房負荷で、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。また同様に、この空調装置1aも、天井チャンバ10、壁面11、支柱12を一体的に備える1ユニットとして構成されているので、移転、移設が容易である。
【0031】
加えて、この空調装置1aは、延長部25を省略し、支柱12の下部に気流NAの吹出し口30が設けられている。このため、局所4に対する人3の出入りや、物品等の搬入出が更に容易となる。
【0032】
また、この空調装置1aは、支柱12の内部にブースターファン31が設けられている。このため、天井チャンバ10内の空気をブースターファン31の動力で支柱12内に引き込み、支柱12下部の吹出し口26まで確実に送風することができる。その結果、吹出し口26から床4面上に沿って気流NAをより強くスリット状に吹き出すことができ、局所4の冷房空調運転に使用された下向きの平行気流SAを、局所4の床2近傍においてより確実に横向きに方向転換させることができる。
【0033】
なお、この空調装置1aでは、上述のように、2本の支柱12の下部において各吹出し口30からそれぞれ扇状に広がるように局所4に向かって床面上に沿ったスリット状の気流NAが吹き出される。このため、この空調装置1aでは、局所4の床2近傍で横向きに方向転換させられた空気(還気RA)が、壁面11下部の吸気口20の中央部により多く集められることとなる。そこで、この空調装置1aは、壁面11の下部に設けられた吸気口20の形状が、中央が高く、両端が低い、略三角形になっている。このため、吸気口20の中央では開口面積が大きく、そのように中央部に多く集められた空気(還気RA)が、円滑に吸気口20を通過でき、ファン22の動力で流路21内に効率よく吸い込まれる。その結果、局所4へ給気した平行気流SAを、局所4の外部に漏らさずに流路21内に回収できるので、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。
【0034】
次に、本発明の更に別の実施の形態にかかる空調装置1bを説明する。なお、先に図1〜6で説明した空調装置1、1aと実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、異なる構成要素についてのみ説明する。
【0035】
図7〜9に示すように、この空調装置1bは、基本的には、図4〜6で説明した空調装置1aと同様の構成を有しており、円柱形状の支柱12の下部に、局所4の床面上に沿ってスリット状の気流NAを吹出す吹出し口30が設けられている。また、支柱12の内部に、補助的なブースターファン31が設けられ、壁面11の下部に設けられた吸気口20の形状が、中央が高く、両端が低い、略三角形になっている。
【0036】
但し、この空調装置1bでは、天井吹出し面15の上に、通気に対する抵抗部材35が装着されている。抵抗部材35は、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部に配置されている。抵抗部材35は、例えばフィルタであり、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部では、抵抗部材35を通過する際に、平行気流SAに対して抵抗が加えられる。このため、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部では、天井吹出し面15の中央部に比べて、平行気流SAの速度が小さくなる。
【0037】
図8、9に示すように、抵抗部材35の厚さは、天井吹出し面15の中央部から見て外側に行くほど大きく(厚く)なっている。このため、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部では、平行気流SAが抵抗部材35を通過する際に、天井吹出し面15の中央部から見て外側に行くほど大きい抵抗が生じている。その結果、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部では、天井吹出し面15の中央部から見て外側では、平行気流SAの速度が相対的に小さく、内側では、平行気流SAの速度が相対的に大きくなるように、速度勾配が形成されている。
【0038】
この空調装置1bにおいても同様に、ファン22の稼動により、天井吹出し面15から局所4へ平行気流SAが給気され、局所4の冷房空調運転に使用された空気(平行気流SA)が、局所4の床2近傍において、吹出し口26から吹き出された気流NAにより横向きに方向転換させられる。その後、還気RAとして、壁面11下部の吸気口20から流路21内に効率よく吸い込まれ、空調機23で冷房空調された後、再び、天井チャンバ10下面の天井吹出し面15から、平行気流SAとして局所4に給気される。こうして、なるべく小さい冷房負荷で、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。また同様に、この空調装置1aも、天井チャンバ10、壁面11、支柱12を一体的に備える1ユニットとして構成されているので、移転、移設が容易である。
【0039】
また、この空調装置1bも、延長部25を省略し、支柱12の下部に気流NAの吹出し口30が設けられているので、局所4に対する人3の出入りや、物品等の搬入出が更に容易である。また、支柱12の内部に設けられたブースターファン31により、支柱12下部の吹出し口26まで確実に送風することができ、吹出し口26から床4面上に沿って気流NAをより強くスリット状に吹き出すことができる。また、吸気口20の中央部に多く集められた空気(還気RA)が、円滑に吸気口20を通過でき、局所4へ給気した平行気流SAを、局所4の外部に漏らさずに流路21内に回収できる。
【0040】
加えて、この空調装置1bは、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部に抵抗部材35が配置されている。このため、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部では、天井吹出し面15の中央部に比べて、平行気流SAの速度が小さい。その結果、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部では、局所4の外側にある空気(通常は実質的に静止している)と平行気流SAとの速度差が小さくなり、周囲の雰囲気をなるべく誘引混合せずに局所4を効率良く空調できるようになる。
【0041】
また、周囲の雰囲気をなるべく誘引混合せずに、平行気流SAを局所4から流路21内に回収できるので、局所4を更に省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。この場合、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部において、天井吹出し面15の中央部から見て外側では、平行気流SAの速度が相対的に小さく、内側では、平行気流SAの速度が相対的に大きくなるように、速度勾配が形成されている。かかる速度勾配を利用して局所4の外側にある空気と平行気流SAとの速度差を解消することにより、天井吹出し面15の中央部では、平行気流SAの速度を増加させて、局所4に存在している人3の周りを有効に冷房空調運転することが可能となる。
【0042】
次に、本発明の更に別の実施の形態にかかる空調装置1cを説明する。なお、先に図1〜9で説明した空調装置1、1a、1bと実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、異なる構成要素についてのみ説明する。
【0043】
図10、11に示すように、この空調装置1cは、基本的には、図4〜6で説明した空調装置1aと同様の構成を有しており、円柱形状の支柱12の下部に、局所4の床面上に沿ってスリット状の気流NAを吹出す吹出し口30が設けられている。また、壁面11の下部に設けられた吸気口20の形状が、中央が高く、両端が低い、略三角形になっている。
【0044】
但し、この空調装置1cでは、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周囲に、エアーカーテン機構40が設けられている。図11に示すように、エアーカーテン機構40の上面にはファン41が取り付けられ、下面にはエアーカーテン用吹き出し口42が開口している。また、エアーカーテン用吹き出し口42には、先に図3で説明した整流機構17と同様の、エアーカーテン用整流機構43が取り付けられており、ファン41の稼動でエアーカーテン用吹き出し口42から下向きに吹き出されるエアーカーテン気流EAは、この整流機構43を通過する際に、下向きの平行気流とされる。
【0045】
また、エアーカーテン機構40の内部には、フィルタ等の抵抗部材45が設けられている。この抵抗部材45の厚さは、天井吹出し面15に近い側では薄く、天井吹出し面15から外側に離れるほど厚くなっている。このため、エアーカーテン用吹き出し口42から下向きに吹き出されるエアーカーテン気流EAは、天井吹出し面15に近い側では速度が相対的に大きくなり、天井吹出し面15から外側に離れた位置では、速度が相対的に小さくなるように、速度勾配が形成されている。
【0046】
この空調装置1cにおいても同様に、ファン22の稼動により、天井吹出し面15から局所4へ平行気流SAが給気され、局所4の冷房空調運転に使用された空気(平行気流SA)が、局所4の床2近傍において、吹出し口26から吹き出された気流NAにより横向きに方向転換させられる。その後、還気RAとして、壁面11下部の吸気口20から流路21内に効率よく吸い込まれ、空調機23で冷房空調された後、再び、天井チャンバ10下面の天井吹出し面15から、平行気流SAとして局所4に給気される。こうして、なるべく小さい冷房負荷で、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。また同様に、この空調装置1aも、天井チャンバ10、壁面11、支柱12を一体的に備える1ユニットとして構成されているので、移転、移設が容易である。
【0047】
また、この空調装置1cも、延長部25を省略し、支柱12の下部に気流NAの吹出し口30が設けられているので、局所4に対する人3の出入りや、物品等の搬入出が更に容易である。また、吸気口20の中央部に多く集められた空気(還気RA)が、円滑に吸気口20を通過でき、局所4へ給気した平行気流SAを、局所4の外部に漏らさずに流路21内に回収できる。
【0048】
加えて、この空調装置1cは、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周囲に、エアーカーテン機構40が設けられている。このため、壁面11に隣接する部分を除き、天井吹出し面15の周縁部では、エアーカーテン用吹き出し口42から下向きに吹き出されるエアーカーテン気流EAによって、外部からの空気の侵入が遮断される。その結果、周囲の雰囲気をなるべく誘引混合せずに局所4を効率良く空調できるようになる。
【0049】
また、周囲の雰囲気をなるべく誘引混合せずに、平行気流SAを局所4から流路21内に回収できるので、局所4を更に省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。また、エアーカーテン用吹き出し口42から下向きに吹き出されるエアーカーテン気流EAは、抵抗部材45の作用により、天井吹出し面15に近い側では速度が相対的に大きくなり、天井吹出し面15から外側に離れた位置では、速度が相対的に小さくなるように、速度勾配が形成される。かかる速度勾配を利用して局所4の外側にある空気とエアーカーテン気流EAとの速度差を解消することにより、誘引混合による外部からの空気の侵入をより有効に遮断することができる。また、エアーカーテン気流EAには、局所4の外側にある空気が利用されるが、このようにエアーカーテン気流EAに内側で速度が大きく、外側で速度が小さくなる速度勾配が形成されていることにより、エアーカーテン気流EAは、床2に到達した後、局所4の外側に逃げやすくなる。その結果、外部から局所4内への空気の侵入が更に効果的に防止される。
【0050】
次に、本発明の更に別の実施の形態にかかる空調装置1dを説明する。なお、先に図1〜11で説明した空調装置1、1a、1b、1cと実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、異なる構成要素についてのみ説明する。
【0051】
図12に示すように、この空調装置1dでは、壁面11の内部に形成された流路21内に、冷却コイル等で構成される空調機23が配置されている。流路21内において空調機23の側方には、空調機23で冷房された空気の一部を壁面11の内面18に沿って流す第2の流路50と、空調機23で冷房された残りの空気を、第2の流路50を経ずに再び流路21内に戻す出口51が設けられている。また、第2の流路50の上部と下部には、第2の流路50内を通った空気を再び流路21内に戻す出口52が設けられている。また、この空調装置1dでは、壁面11の上部に配置された仕切板53にファン22が取り付けてある。
【0052】
この空調装置1dにおいても同様に、ファン22の稼動により、天井吹出し面15から局所4へ平行気流SAが給気され、局所4の冷房空調運転に使用された空気(平行気流SA)が、局所4の床2近傍において、吹出し口26から吹き出された気流NAにより横向きに方向転換させられる。その後、還気RAとして、壁面11下部の吸気口20から流路21内に効率よく吸い込まれ、空調機23で冷房空調された後、再び、天井チャンバ10下面の天井吹出し面15から、平行気流SAとして局所4に給気される。こうして、なるべく小さい冷房負荷で、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。また同様に、この空調装置1dも、天井チャンバ10、壁面11、支柱12を一体的に備える1ユニットとして構成されているので、移転、移設が容易である。
【0053】
加えて、この空調装置1dでは、空調機23で冷房空調された空気の一部が第2の流路50に導入され、冷房空調された空気が壁面11の内面18に沿って流される。これにより、局所4に露出している壁面11の内面18が冷却され、内面18からの冷輻射熱によって、局所4が冷房されることとなる。この内面18からの冷輻射熱と、天井吹出し面15からの給気により、外部からの空気混合のない状態で、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。この場合、空調機23で空気を例えば15℃に冷却することにより、局所4に露出した内面18の温度は20℃となる。また、天井吹出し面15から局所4に給気される平行気流SAの温度は例えば29℃となり、空調装置1の外部の温度が35℃の条件下で局所4の温度は30℃に保たれ、還気RAの温度は例えば32℃となる。また、第2の流路50内の空気の流速V1、出口51から流路21内に戻される空気の流速V2、流路21内の空気の流速V3、ファン22の吐出側での空気の流速V4は、V1<V2<V3<V4となるのが良く、温度によっては、V3<V2でも良い。
【0054】
次に、本発明の更に別の実施の形態にかかる空調装置1eを説明する。なお、先に図1〜12で説明した空調装置1、1a、1b、1c、1dと実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、異なる構成要素についてのみ説明する。
【0055】
図13に示すように、この空調装置1eでは、天井チャンバ10の内部において、天井吹出し面15の上方を覆うように空調機23が配置されている。この場合、空調機23は、例えば図14に示すように、複数本のU字形状の冷却コイル60に複数枚の冷却フィン61を取り付けた構成である。各冷却コイル60には、供給ヘッダ62と戻りヘッダ63を通じて水や代替フロン等の冷媒が供給される。この空調装置1eでは、このように冷却コイル60と冷却フィン61で構成された空調機23によって、天井吹出し面15の上方全体が覆われている。
【0056】
この空調装置1eにおいても同様に、ファン22の稼動により、天井吹出し面15から局所4へ平行気流SAが給気され、局所4の冷房空調運転に使用された空気(平行気流SA)が、局所4の床2近傍において、吹出し口26から吹き出された気流NAにより横向きに方向転換させられる。その後、還気RAとして、壁面11下部の吸気口20から流路21内に効率よく吸い込まれ、空調機23で冷房空調された後、再び、天井チャンバ10下面の天井吹出し面15から、平行気流SAとして局所4に給気される。こうして、なるべく小さい冷房負荷で、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。また同様に、この空調装置1dも、天井チャンバ10、壁面11、支柱12を一体的に備える1ユニットとして構成されているので、移転、移設が容易である。
【0057】
加えて、この空調装置1eでは、局所4の上方にある天井吹出し面15全体が冷却コイル60と冷却フィン61で構成された空調機23によって冷却されるので、天井吹出し面15からの冷輻射熱によって、局所4が冷房されることとなる。この天井吹出し面15からの冷輻射熱と、天井吹出し面15からの給気により、外部からの空気混合のない状態で、局所4を省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。
【0058】
しかも、この空調装置1eでは、流路21内における空気の混合による温度上昇およびエントロピーの増大がなく、天井吹出し面15全体から冷房された平行気流SAを局所4に給気できるので、空調機23による冷却温度を比較的高く設定できる。このため、冷房効率を高めることができ、局所4を更に省エネルギで冷房空調運転することが可能となる。
【0059】
なお、この空調装置1eでは、空調機23を通過して冷却された空気が、支柱12の内部に円滑に流入できるように、壁面11から離れるに従って空調機23が天井吹出し面15から上方に離れるように傾斜(テーパ)を設けると良い。また、空調機23には結露を生じさせないように、冷水コイルの場合は冷水温度を結露温度(DP)以上に制御し、また、直棒コイルの場合は、冷媒蒸発温度を結露温度(DP)以上に制御して対処する。
【0060】
以上、本発明の好適な実施の形態を例示して説明したが、本発明はここに示した形態に限定されない。以上に説明した実施の形態ではいずれも空調の一例として局所4を冷房空調する場合を想定して説明したが、本発明は、局所4を暖房運転する場合にも適用できる。また、冷暖房する場合の他、クリーンブースのような局所に清浄な空気を給気する場合や、局所を所定の湿度に保つ場合等、局所を種々の条件に空調する場合に適用できる。そのような場合についても、開放空間に形成される局所に対して、清浄な空気や所定の湿度にした空気を拡散なく到達させることにより、空調効率を向上させ、省エネ化を達成することができる。なお、流路21内に設けられる送風用のファン22の風量は、空調機23の風量の約2〜5倍とし、給気温度差を小さくするとよい。
【0061】
また、図1等では、天井チャンバ10を2本の支柱12で支持する例を示したが、図15、16に示すように、天井チャンバ10を1本の支柱12で支持することも可能である。このように支柱12を1本にすれば、局所4に対する人3の出入りが更に自由となる。なお、支柱12の下部にスリット状の気流NAを吹出す吹出し口26を設けても良いが、図15、16に示すように、支柱12の下部に、局所4の床面2上に沿う延長部25を設け、この延長部25の内面に吹出し口26を設けても良い。この場合、図15に示すように、延長部25の内面において、支柱12の両側に位置する一対の吹出し口26としても良い。また、図16に示すように、延長部25の内面全体に単一の吹出し口26を開口させても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、工場などの開放空間内の局所を空調する技術に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b、1c、1d、1e 空調装置
2 床
3 人
4 局所
10 天井チャンバ
11 壁面
12 支柱
15 天井吹出し面
16 平板
17 整流機構
18 内面
20 吸気口
21 流路
22 ファン
23 空調機
25 延長部
26 吹出し口26
27 照明
30 吹出し口
31 ブースターファン
35 抵抗部材
40 エアーカーテン機構
41 ファン
42 エアーカーテン用吹き出し口
43 エアーカーテン用整流機構
45 抵抗部材
50 第2の流路
51、52 出口
53 仕切板
60 冷却コイル
61 冷却フィン
62 供給ヘッダ
63 戻りヘッダ
EA エアーカーテン気流
NA スリット状の気流
SA 平行気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放空間内の局所に空調された空気を給気して空調する空調装置であって、
前記局所の上方に配置され、前記局所に向けて下降する空調された空気の平行気流を供給する天井吹出し面と、前記局所の下部において側方に配置された吸気口と、前記吸気口に向けて、前記局所の床面上に沿ったスリット状の空調された空気の気流を吹出す吹出し口と、前記吸気口と前記天井吹出し面を連通させる流路を備え、
前記流路には、前記吸気口から前記流路内に吸い込んだ空気を前記天井吹出し面に向けて送風させるファンと、前記吸気口から前記流路内に吸い込んだ空気を空調する空調機が設けられていることを特徴とする、空調装置。
【請求項2】
前記天井吹出し面は、前記流路が内部に設けられ、前記局所に対向する前記吸気口が下部に設けられた壁面と、前記局所に対向する前記吹出し口が下部に設けられた支柱により、前記局所の床面の上方に支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記壁面に隣接する部分を除き、天井吹出し面の周縁部の平行気流の吹出し速度が、天井吹出し面の中央部の平行気流の吹出し速度に比べて小さいことを特徴とする、請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記天井吹出し面の周囲には、前記壁面に隣接する部分を除き、前記開放空間内の空気を下向きに吹出すエアーカーテン機構が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の空調装置。
【請求項5】
前記支柱の下部から前記局所の床面上に沿って延長部が設けられ、
前記局所に対向する前記延長部の内面に、前記吹出し口が設けられていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載のに記載の空調装置。
【請求項6】
前記支柱の下部に、前記局所に対向して前記吹出し口が設けられていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載のに記載の空調装置。
【請求項7】
前記空調機で空調された空気の一部を前記壁面の内面に沿って流す第2の流路が設けられていることを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の空調装置。
【請求項8】
前記空調機が、前記天井吹出し面の上方を覆うように配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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