空調設備を設けたベランダ構造
【課題】べランダやバルコニーの眺望を損なうことなく利用可能なスペースを広く確保する。
【解決手段】放熱面と放熱面に沿って熱媒体を流す流路を有し、ベランダやバルコニーの外壁面W1、手摺H1、床面F1等に設置される、熱交換パネル12、13、14、15と、前記熱交換パネルと独立してベランダやバルコニー周囲の外部から隠蔽された空間R3に設置され、これらの熱交換パネル2へ熱媒体を加圧供給する圧縮機16とを備えており、圧縮機16と熱交換パネル2は熱媒体を連結する管路が設けてある。圧縮機16を分離独立して見えない場所に設置したので室内からベランダを通しての眺望が空調設備によって邪魔されない。必要に応じて熱交換パネルに沿って空気流を起こすファン11を設けて熱交換の効率を向上させる。
【解決手段】放熱面と放熱面に沿って熱媒体を流す流路を有し、ベランダやバルコニーの外壁面W1、手摺H1、床面F1等に設置される、熱交換パネル12、13、14、15と、前記熱交換パネルと独立してベランダやバルコニー周囲の外部から隠蔽された空間R3に設置され、これらの熱交換パネル2へ熱媒体を加圧供給する圧縮機16とを備えており、圧縮機16と熱交換パネル2は熱媒体を連結する管路が設けてある。圧縮機16を分離独立して見えない場所に設置したので室内からベランダを通しての眺望が空調設備によって邪魔されない。必要に応じて熱交換パネルに沿って空気流を起こすファン11を設けて熱交換の効率を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等の集合住宅における空調設備を設けたべランダ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等の集合住宅において、各戸毎に設置されている空調設備は、一般に、図7に示すように空調室外機A1をベランダやバルコニーまたは廊下等に設置している。
【0003】
空調室外機A1は、箱状のケーシングA2を有し、このケーシングA2の中に、圧縮機A3や熱交換パネルA4、及び熱交換パネルA4における外気との熱交換を促進するためのファンA5等が収容されている。
【0004】
しかしながら、超高層のマンションでは、ベランダやバルコニーをあまり広くすることができない。また、一般のマンションにおいても、ベランダや廊下に室外機を設置すると利用可能なスペースが狭くなり、外観上も好ましいものではなかった。ベランダに設置した室外機を隠蔽する部材を設けたり、収納空間を設けると、ベランダの利用可能スペースが更に小さくなってしまう。
【0005】
特に、ベランダやバルコニーに、図7のように空調室外機A1を上下に2台積重ねて設置している場合は、上部空間も制限されてスペースが狭くなるばかりでなく、室内からの眺望も悪化させてしまうことがあった。
【0006】
そこで、これらの問題を回避するために、例えば、特許文献1(特開平5−296499号公報)や、特許文献2(特開2006−38403号公報)では、室外機を共用廊下側のメーターボックス内に配置することが提案されている。
また、特許文献3(特開2007−32884号公報)においては、放熱板から発生した熱を、壁と放熱板または2枚の放熱板の間を煙突効果によって空気を自然に上昇させて放熱するようにして熱交換をおこない、大型ファンを不要とした空調システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−296499号公報
【特許文献2】特開2006−38403号公報
【特許文献3】特開2007−32884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、及び特許文献2に開示された室外機をメーターボックス内に収納する手法は、空調設備からの排熱によってメーターボックス内の温度が上昇する。更に、閉じた空間であるため空気の流通が悪いので室外機の放熱効率が低下する問題があった。
【0009】
また、特許文献3の空調システムにおいては、板状の室外機を壁に貼り付ける形態として、屋内の空調機、壁、室外機をサンドイッチ状に重なる設置をおこなうことで内部を熱媒体が通過するパイプを不要とする構造としているため、設置場所が制約され、放熱板の放熱面積を広く確保することが構造上困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、前述の従来技術における問題を解消し、べランダやバルコニーの景観を損なうことなく利用可能なスペースを広く確保することができるバルコニー構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
放熱面と放熱面に沿って熱媒体を流す流路を有する熱交換パネルがベランダの側壁部に設けてあり、熱交換パネルから分離独立した位置に圧縮機が隠蔽されて設置されており、熱交換パネルと圧縮機の間を結ぶ熱媒体用の連結管が設けてある空調設備を設けたベランダ構造である。
熱交換パネルは、ベランダの手摺、床面、もしくは天井のいずれかに設置してある空調設備を設けたベランダ構造である。
【発明の効果】
【0012】
圧縮機を熱交換パネルから独立させて隠蔽された空間に設置しているため、圧縮機と熱交換パネル、ファン等をケーシング内に収容している従来の空調室外機のように、ベランダやバルコニーを室外機の設置スペースが占有してしまうことがなく、利用可能なスペースを広く確保でき、また、室外機の設置によって眺望が損なわれることがない。
【0013】
熱交換パネルの面積を大きくしたり、壁面や床面、手摺等に分散して設置することで、ファンを設けることなく自然対流だけ熱交換を可能とし、ファンの回転音よる騒音を低減、またはなくすことができる。
【0014】
熱交換パネルの放熱面を表裏両面とし、且つ、裏側の放熱面を外部から隠蔽された空間に配置してファンによって冷却する構造としたことにより、熱交換パネルの裏側も放熱面として有効に利用することができ、コンパクトな構造とすることができる。
【0015】
隠蔽された空間に配置される熱交換パネルの裏側の放熱面に外部の空気を供給して効果的に冷却できるように、ファンを用いているため、べランダやバルコニーの景観を損なうことがなく、運転騒音も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のベランダを室内側から見た透視図。
【図2】空調室外機の熱交換パネルの実施例の詳細構造図。
【図3】空調室外機の熱交換パネルの他の実施例の詳細構造図。
【図4】空調室外機の熱交換パネルの他の実施例の詳細構造図。
【図5】他の実施例のベランダ構造の側面図。
【図6】空調室外機の熱交換パネルの部分構造図。
【図7】従来の空調設備を設置したベランダを室内側から見た透視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明のベランダ構造の一実施例を室内側から見た透視図であり、ファンによって強制的に冷却用の空気を送らずとも自然対流によって必要な熱交換がおこなわれる面積とした扁平な熱交換パネル2がベランダの側壁面Wに取り付けられている。熱交換パネル2の表面側は、空気の流通を妨げない種々の意匠をほどこしたものとしてある。空調設備の圧縮機3は、側壁面W上方の天井Cの下の空間R1に室内からは見えないように設置されている。また、ベランダに出た場合でも、空調設備が存在することを認識されないようにパネル等で隠蔽してある。
なお、図1中、空間R1の輪郭と圧縮機3は破線で示している。また、同図において、Fはベランダの床面、Hは手摺を示す。
【0018】
図2に示すように、熱交換パネル2は、縦方向に多数形成された櫛歯状のフィン4によって構成される放熱面を有する一対の放熱板5、6と、これらの放熱板5、6の間には空調設備の熱媒体の流路となる管路7が設けてあり、放熱板5、6に管路7は溶接などで固定してあり、全体として扁平なパネルとしてある。
【0019】
本実施例においては、これら一対の放熱板5、6は、軽量で加工がし易く伝熱性にも優れているアルミニウム製である。また、管路7は伝熱性を高めるために空調設備において一般的に使用されている銅管製である。
【0020】
熱交換パネル2に設けられた熱媒体が通る管路7の流入側は、図示していないが、図1の空間R1に設置されている圧縮機3の出口に連結されていて、この圧縮機3で圧縮されて高温になった熱媒体は、管路7を通過する間に放熱板5、6のそれぞれのフィン4から周囲の大気との間で熱交換がおこなわれる。
【0021】
熱交換パネル2で冷却された熱媒体は、通常の空調装置と同様に膨張弁を通過して室内に設置された室内機において熱を吸収して屋内を冷房した後、再び圧縮機3によって圧縮される。
【0022】
熱交換パネル2は、側壁面Wの手前にこれと平行に配置され、その上端部と天井C、下端部と床面Fの隙間にはそれぞれ、防塵フィルタ9、10が着脱自在に装着されており、これらの隙間から熱交換パネル2と側壁面Wとの間に形成されている空間R2に塵埃が侵入しないようにしてある。
【0023】
前記空間R2の天井Cの近傍位置には必要に応じてファン11が設けられている。ファンの設置空間をできるだけ小さくするのが好ましく、一例を挙げるとクロスフローファンを使用するのが好ましい。図2に示すように、ファン11の吹出口11Aは、熱交換パネル2の前記空間R2側に向いている放熱板6のほぼ全幅に等しい幅として細長いスリット状に形成されており、出っ張らないようにしてある。
【0024】
ファン11は、熱交換パネル2の上方の防塵フィルタ9を通じ、吸入口(図示しない)から外部の空気を吸い込み、これを吹出口11Aから吹き出して、図2に示す熱交換パネル2の裏側の放熱板6の各フィン4に沿って下方へ流れる空気流を発生させ、この空気流によって放熱板6からの放熱を促進させる。
【0025】
放熱板6のフィン4に沿って下降した空気流は、図1に示す、熱交換パネル2下方の防塵フィルタ10を通ってベランダの床面Fの近傍で外部へ排出される。そのため、従来の室外機のように、ベランダに出た時に、体に空調設備からの熱風または冷風が当たって不快な思いをすることがない。
【0026】
一方、熱交換パネル2の表側の放熱板5からの放熱は、この放熱板5のフィン4近傍に生じる自然対流やベランダに吹き込む風による空気流によって自然におこなわれる。本実施例においては、ベランダの側壁面Wのほぼ全面積を熱交換パネル2に利用でき、しかも、熱交換パネル2の表裏両面に放熱板5、6を設けているため、従来の室外機と比較して格段に広い放熱面積とすることが可能であり、ファンによって空気を強制的に送ることなく熱交換をおこなうことが可能である。
【0027】
そのため、従来の空調室外機のように熱交換パネルを冷却するための大きなファンを用いる必要がなく、運転騒音を低減できる。また、扁平なパネル状の熱交換パネル2がベランダの側壁面Wに配置され、且つ、ベランダの天井付近の上部空間R1に圧縮機3を配置しているため、ベランダの利用可能なスペースを広くできるとともに、室内からベランダを通しての眺望が開けるという利点がある。
図3に示す熱交換パネルの実施例は、フィン4を管路7の片側にのみ設けた例である。
図4は熱交換パネル2の他の実施例であり、従来の空調装置の熱交換部と同様に放熱のためのアルミなどの薄い金属製のフィン4が多数並列されてあり、熱媒体の流路となる管路7がフィン4を貫通して配管してある。熱交換のための空気流は、フィン4の間を熱交換パネル2に対して直角方向に流れるものである。
【0028】
図5は、本発明のベランダ構造の他の実施例を示す側面図であり、ベランダの異なる位置に4つの扁平なパネル状の熱交換パネル12、13、14、15が設置してある。圧縮機16は、ベランダの天井C1と上階のベランダのフロアの間の空間に設置してあり、室内からもまた、ベランダに出ても見えないように隠蔽してある。
【0029】
これらの熱交換パネル12、13、14、15のうち、熱交換パネル12は、ベランダの側壁面W1に設置されており、詳細な図示は省略するが、前述した図1及び図2〜図4に示した実施例の熱交換パネル2と同様に、放熱面として機能する多数のフィンを表面に有する放熱板17を有している。
【0030】
この熱交換パネル12は、表側のみに放熱板17が設けられ、その裏側には熱媒体を通す管路が設けられていて、表面の放熱板17からの強制的に空気流を起こすファンを使用することなく空気の自然対流による放熱で前記管路を流れる熱媒体の熱交換がおこなわれる構造になっている。
【0031】
熱交換パネル13は、ベランダの手摺H1に取り付けられており、これも詳細な図示は省略しているが、表裏両面が大気に接して放熱面として機能し、内部に熱媒体を通す流路が形成された放熱板18から構成されている。
【0032】
この実施例においては、放熱板18は、手摺H1に取り付けるために、極めて薄い形状とし、ステンレス板材のプレス成形により製作されていて、風雨に耐えられる強度や耐食性を持たせてある。また、表面には筋目状の凹凸パターンを形成することでデザイン性を高めるとともに放熱効率を高めている。
【0033】
熱交換パネル14は、ベランダの天井C1の下にこれと間隔を空けて取り付けられており、前述した圧縮機16は、天井C1と熱交換パネル14との間に画成される外部から隠蔽された空間R3に設置されている。
【0034】
この熱交換パネル14は、先に説明した図2の実施例の熱交換パネル2と同様の構造のものを水平向きに設置しているもので、下側の放熱板19と同一構造の放熱板を上側にも有している。空間R3内における前記上側の放熱板の一端側にはファン20が付設されている。
【0035】
このファン20は、空間R3内に外部の空気を吸い込んで、熱交換パネル14の上側の放熱板の長手方向の一端側から他端側へ向けて流し、他端側から外部へ排気することにより当該上側の放熱板の強制冷却をおこなう。一方、熱交換パネル14の下側の放熱板19は、外気によって自然冷却されるようにしている。
【0036】
また、熱交換パネル15は、複数の細長い矩形状の放熱床ユニット21から構成されていて、これらの放熱床ユニット21がベランダの床面F1に敷き詰められている。
【0037】
図6に示すように、これらの放熱床ユニット21は、ベランダの床面に設置することから、その材質は、軽量で且つ伝熱性に優れていることに加え、強度と耐食性も要求されるため、本実施例のものにおいては、アルミニウム材で製作されており、必要に応じて補強材が下面側に設けてある。
【0038】
同図に示すように放熱床ユニット21の上面には、多数の球面状の突起22が形成されている。これらの突起22は滑り止めの役割とともに、放熱面積を増加して放熱効率を高める役割を果たしている。
【0039】
また、放熱床ユニット21の下面側には、ベランダの床面F1に支持されるリブ23a、23bが、幅方向の左右両側と中央の3箇所に長手方向に連続して形成されており、幅方向に隣合う2つのリブ23a、23bと、床面F1と間でそれぞれ導風路24が形成されている。
【0040】
それぞれの導風路24内には、熱媒体を通す複数の流路25がリブ23a、23bと並行して放熱床ユニット21の下面に溶接等で固定してある。これらの流路25は、図示していないが、その上流側は前述した図5に示す圧縮機16の出口側に図示しない管路を介して連結されており、また、これらの流路25の下流側は、これも図示しない管路を介して室内機に連結されている。
【0041】
また、図5に示すように、床面F1の室内側の端部には、溝Pが形成されていて、この溝Pの内部には、ファン26が収容されている。
ファン26は、外部の空気を吸い込んでそれぞれの放熱床ユニット21と床面F1との間に形成されている前述した導風路24の一端側から他端側に向かう空気流を発生させ、前述の流路25を通過する熱媒体を冷却するようにしてある。
【0042】
なお、各導風路24を通過して温められた空気は、それぞれの導風路の他端から外部に排出されるようにしてある。また、図5においては図示を省略しているが、建物躯体の窓サッシS側と手摺H1側でそれぞれベランダの床面F1より高く形成された段部T1、T2と、各放熱床ユニット21の長手方向両端部間にはそれぞれ隙間が設けられている。
【0043】
これらの隙間にはそれぞれ、各放熱床ユニット21の下方へ塵埃の侵入を防止するためのフィルタが着脱可能に装着されていて、ファン26による外部の空気の導入と各導風路24から外部への空気の排気は、これらのフィルタを通しておこなわれるようになっている。なお、ファン26を収容している溝Pには、図示しない排水口に向けて勾配を設けてあり、外部から浸入した雨水が留まらないようにしてある。
【0044】
熱交換パネルの放熱板や放熱床ユニットのサイズ、形状、素材、設置位置等は、設置するベランダやバルコニーの形状や構造、広さ等に適合するように、条件に応じて様々に変更することが可能である。更に、放熱板や放熱床ユニットは、陽極酸化処理等の表面処理により様々に着色することにより、耐候性とともに意匠性を高めることができる。
【0045】
複数の熱交換パネルを用いる場合には、それぞれの熱交換パネルに対して個別に圧縮機を用いるようにしてもよく、また、各部屋の室内機のそれぞれに対して個別に熱交換パネルや圧縮機を対応させるようにしてもよい。
【0046】
以上に説明した本発明のベランダ構造は、集合住宅の廊下側にも適用できるものであり、空調設備の圧縮機と熱交換パネルを分離独立させて適宜レイアウトすることによって廊下に設置されて障害物となる空調室外機をなくし、すっきりした廊下とすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1、1A 室外機
2 熱交換パネル
3 圧縮機
4 フィン
5、6 放熱板
7 管路
9、10 防塵フィルタ
11 ファン
11A 吹出口
12、13、14、15 熱交換パネル
16 圧縮機
17、18、19 放熱板
20 ファン
21 放熱床ユニット
22 突起
23a、23b リブ
24 導風路
25 流路
26 ファン
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等の集合住宅における空調設備を設けたべランダ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等の集合住宅において、各戸毎に設置されている空調設備は、一般に、図7に示すように空調室外機A1をベランダやバルコニーまたは廊下等に設置している。
【0003】
空調室外機A1は、箱状のケーシングA2を有し、このケーシングA2の中に、圧縮機A3や熱交換パネルA4、及び熱交換パネルA4における外気との熱交換を促進するためのファンA5等が収容されている。
【0004】
しかしながら、超高層のマンションでは、ベランダやバルコニーをあまり広くすることができない。また、一般のマンションにおいても、ベランダや廊下に室外機を設置すると利用可能なスペースが狭くなり、外観上も好ましいものではなかった。ベランダに設置した室外機を隠蔽する部材を設けたり、収納空間を設けると、ベランダの利用可能スペースが更に小さくなってしまう。
【0005】
特に、ベランダやバルコニーに、図7のように空調室外機A1を上下に2台積重ねて設置している場合は、上部空間も制限されてスペースが狭くなるばかりでなく、室内からの眺望も悪化させてしまうことがあった。
【0006】
そこで、これらの問題を回避するために、例えば、特許文献1(特開平5−296499号公報)や、特許文献2(特開2006−38403号公報)では、室外機を共用廊下側のメーターボックス内に配置することが提案されている。
また、特許文献3(特開2007−32884号公報)においては、放熱板から発生した熱を、壁と放熱板または2枚の放熱板の間を煙突効果によって空気を自然に上昇させて放熱するようにして熱交換をおこない、大型ファンを不要とした空調システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−296499号公報
【特許文献2】特開2006−38403号公報
【特許文献3】特開2007−32884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、及び特許文献2に開示された室外機をメーターボックス内に収納する手法は、空調設備からの排熱によってメーターボックス内の温度が上昇する。更に、閉じた空間であるため空気の流通が悪いので室外機の放熱効率が低下する問題があった。
【0009】
また、特許文献3の空調システムにおいては、板状の室外機を壁に貼り付ける形態として、屋内の空調機、壁、室外機をサンドイッチ状に重なる設置をおこなうことで内部を熱媒体が通過するパイプを不要とする構造としているため、設置場所が制約され、放熱板の放熱面積を広く確保することが構造上困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、前述の従来技術における問題を解消し、べランダやバルコニーの景観を損なうことなく利用可能なスペースを広く確保することができるバルコニー構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
放熱面と放熱面に沿って熱媒体を流す流路を有する熱交換パネルがベランダの側壁部に設けてあり、熱交換パネルから分離独立した位置に圧縮機が隠蔽されて設置されており、熱交換パネルと圧縮機の間を結ぶ熱媒体用の連結管が設けてある空調設備を設けたベランダ構造である。
熱交換パネルは、ベランダの手摺、床面、もしくは天井のいずれかに設置してある空調設備を設けたベランダ構造である。
【発明の効果】
【0012】
圧縮機を熱交換パネルから独立させて隠蔽された空間に設置しているため、圧縮機と熱交換パネル、ファン等をケーシング内に収容している従来の空調室外機のように、ベランダやバルコニーを室外機の設置スペースが占有してしまうことがなく、利用可能なスペースを広く確保でき、また、室外機の設置によって眺望が損なわれることがない。
【0013】
熱交換パネルの面積を大きくしたり、壁面や床面、手摺等に分散して設置することで、ファンを設けることなく自然対流だけ熱交換を可能とし、ファンの回転音よる騒音を低減、またはなくすことができる。
【0014】
熱交換パネルの放熱面を表裏両面とし、且つ、裏側の放熱面を外部から隠蔽された空間に配置してファンによって冷却する構造としたことにより、熱交換パネルの裏側も放熱面として有効に利用することができ、コンパクトな構造とすることができる。
【0015】
隠蔽された空間に配置される熱交換パネルの裏側の放熱面に外部の空気を供給して効果的に冷却できるように、ファンを用いているため、べランダやバルコニーの景観を損なうことがなく、運転騒音も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のベランダを室内側から見た透視図。
【図2】空調室外機の熱交換パネルの実施例の詳細構造図。
【図3】空調室外機の熱交換パネルの他の実施例の詳細構造図。
【図4】空調室外機の熱交換パネルの他の実施例の詳細構造図。
【図5】他の実施例のベランダ構造の側面図。
【図6】空調室外機の熱交換パネルの部分構造図。
【図7】従来の空調設備を設置したベランダを室内側から見た透視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明のベランダ構造の一実施例を室内側から見た透視図であり、ファンによって強制的に冷却用の空気を送らずとも自然対流によって必要な熱交換がおこなわれる面積とした扁平な熱交換パネル2がベランダの側壁面Wに取り付けられている。熱交換パネル2の表面側は、空気の流通を妨げない種々の意匠をほどこしたものとしてある。空調設備の圧縮機3は、側壁面W上方の天井Cの下の空間R1に室内からは見えないように設置されている。また、ベランダに出た場合でも、空調設備が存在することを認識されないようにパネル等で隠蔽してある。
なお、図1中、空間R1の輪郭と圧縮機3は破線で示している。また、同図において、Fはベランダの床面、Hは手摺を示す。
【0018】
図2に示すように、熱交換パネル2は、縦方向に多数形成された櫛歯状のフィン4によって構成される放熱面を有する一対の放熱板5、6と、これらの放熱板5、6の間には空調設備の熱媒体の流路となる管路7が設けてあり、放熱板5、6に管路7は溶接などで固定してあり、全体として扁平なパネルとしてある。
【0019】
本実施例においては、これら一対の放熱板5、6は、軽量で加工がし易く伝熱性にも優れているアルミニウム製である。また、管路7は伝熱性を高めるために空調設備において一般的に使用されている銅管製である。
【0020】
熱交換パネル2に設けられた熱媒体が通る管路7の流入側は、図示していないが、図1の空間R1に設置されている圧縮機3の出口に連結されていて、この圧縮機3で圧縮されて高温になった熱媒体は、管路7を通過する間に放熱板5、6のそれぞれのフィン4から周囲の大気との間で熱交換がおこなわれる。
【0021】
熱交換パネル2で冷却された熱媒体は、通常の空調装置と同様に膨張弁を通過して室内に設置された室内機において熱を吸収して屋内を冷房した後、再び圧縮機3によって圧縮される。
【0022】
熱交換パネル2は、側壁面Wの手前にこれと平行に配置され、その上端部と天井C、下端部と床面Fの隙間にはそれぞれ、防塵フィルタ9、10が着脱自在に装着されており、これらの隙間から熱交換パネル2と側壁面Wとの間に形成されている空間R2に塵埃が侵入しないようにしてある。
【0023】
前記空間R2の天井Cの近傍位置には必要に応じてファン11が設けられている。ファンの設置空間をできるだけ小さくするのが好ましく、一例を挙げるとクロスフローファンを使用するのが好ましい。図2に示すように、ファン11の吹出口11Aは、熱交換パネル2の前記空間R2側に向いている放熱板6のほぼ全幅に等しい幅として細長いスリット状に形成されており、出っ張らないようにしてある。
【0024】
ファン11は、熱交換パネル2の上方の防塵フィルタ9を通じ、吸入口(図示しない)から外部の空気を吸い込み、これを吹出口11Aから吹き出して、図2に示す熱交換パネル2の裏側の放熱板6の各フィン4に沿って下方へ流れる空気流を発生させ、この空気流によって放熱板6からの放熱を促進させる。
【0025】
放熱板6のフィン4に沿って下降した空気流は、図1に示す、熱交換パネル2下方の防塵フィルタ10を通ってベランダの床面Fの近傍で外部へ排出される。そのため、従来の室外機のように、ベランダに出た時に、体に空調設備からの熱風または冷風が当たって不快な思いをすることがない。
【0026】
一方、熱交換パネル2の表側の放熱板5からの放熱は、この放熱板5のフィン4近傍に生じる自然対流やベランダに吹き込む風による空気流によって自然におこなわれる。本実施例においては、ベランダの側壁面Wのほぼ全面積を熱交換パネル2に利用でき、しかも、熱交換パネル2の表裏両面に放熱板5、6を設けているため、従来の室外機と比較して格段に広い放熱面積とすることが可能であり、ファンによって空気を強制的に送ることなく熱交換をおこなうことが可能である。
【0027】
そのため、従来の空調室外機のように熱交換パネルを冷却するための大きなファンを用いる必要がなく、運転騒音を低減できる。また、扁平なパネル状の熱交換パネル2がベランダの側壁面Wに配置され、且つ、ベランダの天井付近の上部空間R1に圧縮機3を配置しているため、ベランダの利用可能なスペースを広くできるとともに、室内からベランダを通しての眺望が開けるという利点がある。
図3に示す熱交換パネルの実施例は、フィン4を管路7の片側にのみ設けた例である。
図4は熱交換パネル2の他の実施例であり、従来の空調装置の熱交換部と同様に放熱のためのアルミなどの薄い金属製のフィン4が多数並列されてあり、熱媒体の流路となる管路7がフィン4を貫通して配管してある。熱交換のための空気流は、フィン4の間を熱交換パネル2に対して直角方向に流れるものである。
【0028】
図5は、本発明のベランダ構造の他の実施例を示す側面図であり、ベランダの異なる位置に4つの扁平なパネル状の熱交換パネル12、13、14、15が設置してある。圧縮機16は、ベランダの天井C1と上階のベランダのフロアの間の空間に設置してあり、室内からもまた、ベランダに出ても見えないように隠蔽してある。
【0029】
これらの熱交換パネル12、13、14、15のうち、熱交換パネル12は、ベランダの側壁面W1に設置されており、詳細な図示は省略するが、前述した図1及び図2〜図4に示した実施例の熱交換パネル2と同様に、放熱面として機能する多数のフィンを表面に有する放熱板17を有している。
【0030】
この熱交換パネル12は、表側のみに放熱板17が設けられ、その裏側には熱媒体を通す管路が設けられていて、表面の放熱板17からの強制的に空気流を起こすファンを使用することなく空気の自然対流による放熱で前記管路を流れる熱媒体の熱交換がおこなわれる構造になっている。
【0031】
熱交換パネル13は、ベランダの手摺H1に取り付けられており、これも詳細な図示は省略しているが、表裏両面が大気に接して放熱面として機能し、内部に熱媒体を通す流路が形成された放熱板18から構成されている。
【0032】
この実施例においては、放熱板18は、手摺H1に取り付けるために、極めて薄い形状とし、ステンレス板材のプレス成形により製作されていて、風雨に耐えられる強度や耐食性を持たせてある。また、表面には筋目状の凹凸パターンを形成することでデザイン性を高めるとともに放熱効率を高めている。
【0033】
熱交換パネル14は、ベランダの天井C1の下にこれと間隔を空けて取り付けられており、前述した圧縮機16は、天井C1と熱交換パネル14との間に画成される外部から隠蔽された空間R3に設置されている。
【0034】
この熱交換パネル14は、先に説明した図2の実施例の熱交換パネル2と同様の構造のものを水平向きに設置しているもので、下側の放熱板19と同一構造の放熱板を上側にも有している。空間R3内における前記上側の放熱板の一端側にはファン20が付設されている。
【0035】
このファン20は、空間R3内に外部の空気を吸い込んで、熱交換パネル14の上側の放熱板の長手方向の一端側から他端側へ向けて流し、他端側から外部へ排気することにより当該上側の放熱板の強制冷却をおこなう。一方、熱交換パネル14の下側の放熱板19は、外気によって自然冷却されるようにしている。
【0036】
また、熱交換パネル15は、複数の細長い矩形状の放熱床ユニット21から構成されていて、これらの放熱床ユニット21がベランダの床面F1に敷き詰められている。
【0037】
図6に示すように、これらの放熱床ユニット21は、ベランダの床面に設置することから、その材質は、軽量で且つ伝熱性に優れていることに加え、強度と耐食性も要求されるため、本実施例のものにおいては、アルミニウム材で製作されており、必要に応じて補強材が下面側に設けてある。
【0038】
同図に示すように放熱床ユニット21の上面には、多数の球面状の突起22が形成されている。これらの突起22は滑り止めの役割とともに、放熱面積を増加して放熱効率を高める役割を果たしている。
【0039】
また、放熱床ユニット21の下面側には、ベランダの床面F1に支持されるリブ23a、23bが、幅方向の左右両側と中央の3箇所に長手方向に連続して形成されており、幅方向に隣合う2つのリブ23a、23bと、床面F1と間でそれぞれ導風路24が形成されている。
【0040】
それぞれの導風路24内には、熱媒体を通す複数の流路25がリブ23a、23bと並行して放熱床ユニット21の下面に溶接等で固定してある。これらの流路25は、図示していないが、その上流側は前述した図5に示す圧縮機16の出口側に図示しない管路を介して連結されており、また、これらの流路25の下流側は、これも図示しない管路を介して室内機に連結されている。
【0041】
また、図5に示すように、床面F1の室内側の端部には、溝Pが形成されていて、この溝Pの内部には、ファン26が収容されている。
ファン26は、外部の空気を吸い込んでそれぞれの放熱床ユニット21と床面F1との間に形成されている前述した導風路24の一端側から他端側に向かう空気流を発生させ、前述の流路25を通過する熱媒体を冷却するようにしてある。
【0042】
なお、各導風路24を通過して温められた空気は、それぞれの導風路の他端から外部に排出されるようにしてある。また、図5においては図示を省略しているが、建物躯体の窓サッシS側と手摺H1側でそれぞれベランダの床面F1より高く形成された段部T1、T2と、各放熱床ユニット21の長手方向両端部間にはそれぞれ隙間が設けられている。
【0043】
これらの隙間にはそれぞれ、各放熱床ユニット21の下方へ塵埃の侵入を防止するためのフィルタが着脱可能に装着されていて、ファン26による外部の空気の導入と各導風路24から外部への空気の排気は、これらのフィルタを通しておこなわれるようになっている。なお、ファン26を収容している溝Pには、図示しない排水口に向けて勾配を設けてあり、外部から浸入した雨水が留まらないようにしてある。
【0044】
熱交換パネルの放熱板や放熱床ユニットのサイズ、形状、素材、設置位置等は、設置するベランダやバルコニーの形状や構造、広さ等に適合するように、条件に応じて様々に変更することが可能である。更に、放熱板や放熱床ユニットは、陽極酸化処理等の表面処理により様々に着色することにより、耐候性とともに意匠性を高めることができる。
【0045】
複数の熱交換パネルを用いる場合には、それぞれの熱交換パネルに対して個別に圧縮機を用いるようにしてもよく、また、各部屋の室内機のそれぞれに対して個別に熱交換パネルや圧縮機を対応させるようにしてもよい。
【0046】
以上に説明した本発明のベランダ構造は、集合住宅の廊下側にも適用できるものであり、空調設備の圧縮機と熱交換パネルを分離独立させて適宜レイアウトすることによって廊下に設置されて障害物となる空調室外機をなくし、すっきりした廊下とすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1、1A 室外機
2 熱交換パネル
3 圧縮機
4 フィン
5、6 放熱板
7 管路
9、10 防塵フィルタ
11 ファン
11A 吹出口
12、13、14、15 熱交換パネル
16 圧縮機
17、18、19 放熱板
20 ファン
21 放熱床ユニット
22 突起
23a、23b リブ
24 導風路
25 流路
26 ファン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱面と放熱面に沿って熱媒体を流す流路を有する熱交換パネルがベランダの側壁部に設けてあり、熱交換パネルから分離独立した位置に圧縮機が隠蔽されて設置されており、熱交換パネルと圧縮機の間を結ぶ熱媒体用の連結管が設けてある空調設備を設けたベランダ構造。
【請求項2】
請求項1において、熱交換パネルが複数である空調設備を設けたベランダ構造。
【請求項3】
請求項2において、熱交換パネルがベランダの手摺、床面、もしくは天井のいずれかに設置してある空調設備を設けたベランダ構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、熱交換パネルが放熱面を表裏両面に有するとともに、裏側の放熱面に沿って送風するファンが設けてある空調設備を設けたベランダ構造。
【請求項1】
放熱面と放熱面に沿って熱媒体を流す流路を有する熱交換パネルがベランダの側壁部に設けてあり、熱交換パネルから分離独立した位置に圧縮機が隠蔽されて設置されており、熱交換パネルと圧縮機の間を結ぶ熱媒体用の連結管が設けてある空調設備を設けたベランダ構造。
【請求項2】
請求項1において、熱交換パネルが複数である空調設備を設けたベランダ構造。
【請求項3】
請求項2において、熱交換パネルがベランダの手摺、床面、もしくは天井のいずれかに設置してある空調設備を設けたベランダ構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、熱交換パネルが放熱面を表裏両面に有するとともに、裏側の放熱面に沿って送風するファンが設けてある空調設備を設けたベランダ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−2673(P2013−2673A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132013(P2011−132013)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
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