説明

空質浄化装置

【課題】脱臭速度が向上した空質浄化装置を提供する。
【解決手段】筐体110、及び基材と、前記基材に担持された、少なくとも酸化チタンを含む光触媒と、前記基材に担持された吸着剤とを有し、前記筐体110内に配置された光触媒性部材106を備え、前記光触媒性部材106が前記筐体110内における気流に沿って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒性部材を用いた空質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒の有機物分解作用は約30年前に見出された。酸化チタンなどある種の半導体に光を照射すると、電子及び正孔が生成され、生成した電子及び正孔が半導体表面でスーパーオキサイドアニオンやヒドロキシラジカルを生成する。生成したスーパーオキサイドアニオンやヒドロキシラジカルが有機分子を攻撃することにより、有機物が分解される。この種の作用を持つ半導体材料が光触媒と呼ばれている。代表的な光触媒として酸化チタンが挙げられる。
【0003】
今までにこの光触媒による有機分解作用を利用した製品やデバイスが数多く提案されている。中でも空気中の臭気(有機ガス)成分を光触媒作用で分解するデバイスやフィルターの開発が盛んに行われている。例えば、光触媒を吸着剤と組み合わせることにより脱臭速度を向上させること(例えば、特許文献1参照)、光触媒とハイシリカゼオライトとを組み合わせることによりエチレンなどの特定のガスに対する分解速度を向上させること(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。その他には、光触媒膜を担持する基材として光透過性を有する長繊維により形成された基材等を使用し、光触媒モジュールの処理効率を向上させること等が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平1−189322号公報
【特許文献2】特開平7−16473号公報
【特許文献3】特開2002−239394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光触媒性部材の脱臭性能向上には、できる限り多量の触媒を基材に担持することが望ましい。
【0005】
しかしながら、従来の空質浄化装置では、光触媒を担持している基材に気流を通過させる構成であることから、多くの触媒を基材に担持することができず、脱臭速度が低いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、脱臭速度を向上させることができる空質浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するため、本発明の空質浄化装置は、筐体、及び基材と、前記基材に担持された、少なくとも酸化チタンを含む光触媒と、前記基材に担持された吸着剤とを有し、前記筐体内に配置された光触媒性部材を備え、前記光触媒性部材が前記筐体内における気流に沿って配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空質浄化装置によれば、基材により多くの光触媒を担持することが可能となるため、気相中の臭気ガスの脱臭速度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において「脱臭」とは、気相中の臭気成分や有機物等を吸着及び/または分解す
ることをいう。好適には気相中の臭気成分や有機物の濃度を低減させることをいい、より好適には、吸着剤の吸着作用によって気相中の臭気成分や有機物等を吸着し、酸化チタン光触媒に紫外光を照射して臭気成分等を分解して、臭気成分や有機物の濃度を低減させることをいう。臭気成分としては、例えば、アセトアルデヒド、酢酸、アンモニア、硫黄化合物ガス(硫化水素、メチルメルカプタン等)等が挙げられ、中でも本発明の光触媒性部材はアセトアルデヒドの脱臭に適している。
【0010】
本発明は、空質浄化用の装置において、光触媒を担持している基材を気流に沿って配置することを特徴とする。例えば、基材としてシート状の部材を用い、基材の主面が、気流に対して略平行となるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の空質浄化装置は、筐体、及び基材と、前記基材に担持された、少なくとも酸化チタンを含む光触媒と、前記基材に担持された吸着剤とを有し、前記筐体内に配置された光触媒性部材を備え、前記光触媒性部材が前記筐体内における気流に沿って配置されている。このようにすると、気流が通過するための孔を基材に設ける必要がなくなる。そのため、従来の基材と比較して多くの光触媒を担持させることが可能となるので、脱臭速度を向上させることができる。
【0012】
本発明の空質浄化装置において、酸化チタンとしては、例えば、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンが挙げられる。この中で、高い光触媒活性を有することから、アナタース型酸化チタンが好ましい。本発明において「アナタース型酸化チタン」とは、粉末X線回折スペクトル測定において(使用電極:銅電極)、回折角度2θ=25.5度付近に回折ピークが現れる酸化チタンのことをいう。
【0013】
本発明の空質浄化装置において、光触媒が、構成元素としてフッ素を含有する酸化チタンであることが好ましい。このようにすると、光触媒の脱臭速度係数が大きくなるので、脱臭速度をさらに向上させることができる。
【0014】
ここで、光触媒である構成元素としてフッ素を含有する酸化チタンにおいて、フッ素の重量比が2.5%以上3.5%以下であることが好ましい。
【0015】
フッ素含有量が2.5重量%以上であれば、例えば、電気陰性度の大きなフッ素が酸化チタン表面に位置するようになる。このフッ素の電子吸引作用によって、近接する水酸基が活性化され水酸ラジカルが生じ易くなる。その結果、光触媒反応が促進され、脱臭速度を向上できると考えられるからである。また、フッ素含有量が3.5重量%以下であれば、例えば、酸化チタン表面における光触媒反応に必要な水酸基の数を確保でき、脱臭速度を維持できると考えられるからである。
【0016】
フッ素の含有量は、例えば、吸光光度分析法(JIS K 0102)を用いて求めることができる。
【0017】
光触媒に含有するフッ素は、光触媒活性及び脱臭速度の向上の観点から、光触媒における全てのフッ素のうち90重量%以上が酸化チタンと化学結合していることが好ましい。より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは100重量%、すなわち酸化チタン光触媒に含まれるフッ素の全量が酸化チタンと化学結合していることである。
【0018】
本発明において「酸化チタンとフッ素との化学結合」とは、酸化チタンとフッ素とが化学的に結合していることをいう。好適には担持や混合ではなく酸化チタンとフッ素とが原子レベルで結びついている状態のことをいい、より好適には酸化チタンとフッ素とがイオン結合していることをいう。本発明において「化学結合しているフッ素」とは、例えば、
酸化チタン光触媒に含有されているフッ素のうち水に溶出しないフッ素のこという。酸化チタンと化学結合しているフッ素の量は、酸化チタン光触媒を水中に分散させ、pH調整剤(例えば、塩酸、アンモニア水)でpH=3以下またはpH=10以上に保持し、水中へのフッ素イオンの溶出量を比色滴定等により測定し、酸化チタン光触媒に含有するフッ素の総量から上記溶出量を差し引くことにより算出できる。本発明において「酸化チタンとフッ素とがイオン結合している」とは、酸化チタン光触媒を光電子分光分析装置で分析した際に、フッ素の1s軌道(F1s)のピークトップが683eV〜686eVの範囲となる場合をいう。これは、フッ素とチタンとがイオン結合したフッ化チタンのピークトップの値が上記範囲内であることに由来する。
【0019】
光触媒は、ナトリウムを含んでもよいが、光触媒活性及び脱臭速度の向上の点から、ナトリウムを含まないことが好ましい。ナトリウムを含む場合、光触媒全体に占めるナトリウムの含有量(A重量%)と、光触媒全体に占めるフッ素の含有量(B重量%)との比(A/B)は、光触媒活性及び脱臭速度の向上の点から、0.01以下であることが好ましく、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.001以下である。
【0020】
光触媒の比表面積は、光触媒と臭気成分との接触面の増加、また光触媒反応効率の向上の点から、200〜350m/gが好ましく、より好ましくは250〜350m/gである。ここで、本発明において比表面積とは、BET法(窒素の吸着・脱離方式)により測定した、光触媒の粉末1g当たりの表面積値のことをいう。比表面積が200m/g以上の場合、分解する対象物との接触面積を大きくすることができる。
【0021】
吸着剤としては、例えば、アルミノケイ酸塩及びシリカゲル等が挙げられる。中でも、アルミノケイ酸塩が好ましく、アルミノケイ酸塩としては、例えば、ゼオライトが挙げられる。ゼオライトの中でも、紫外光の透過性及び脱臭性能の点から、ハイシリカゼオライトが好ましく、臭気成分の吸着力の点から、ZSM−5型ゼオライトがより好ましい。ゼオライトにおけるシリカとアルミナのモル成分比(シリカ/アルミナ)は、例えば、10以上であり、好ましくは1500以上である。
【0022】
ゼオライトは、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、HSZ−890HOA(東ソー株式会社製、ZSM−5型、シリカ/アルミナ比:1500〜2000(平均:1890)、平均粒径8〜14μm、カチオンタイプ:H、比表面積(BET):280〜330m/g)、HiSiv(TM)−3000(ユニオン昭和株式会社製、平均粒径:12.7μm、カチオンタイプ:Na、細孔径:6オングストローム以下、比表面積(BET):400m/g以上)等が挙げられる。
【0023】
光触媒性部材における光触媒と吸着剤との重量比(酸化チタン光触媒の重量:吸着剤の重量)は、例えば、9:1〜1:9であり、脱臭性能の点から8:2〜5:5が好ましく、より好ましくは7:3である。
【0024】
光触媒性部材は、酸化チタン及び/または吸着剤と基材との接着性向上の点から、その他の成分として、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、モンモリロナイト及びカオリン等が挙げられる。光触媒性部材におけるバインダーの割合は、バインダーの種類及び結着力等に応じて適宜決定できるが、脱臭性能向上の点から、少ないことが好ましい。バインダーがコロイダルシリカである場合、光触媒性材料における光触媒及び吸着剤の合計とバインダーとの重量比(光触媒及び吸着剤の合計重量:バインダーの重量)は、例えば、10:0〜5:5であり、好ましくは9:1〜7:3である。
【0025】
本発明の空質浄化装置において、光触媒性部材が、バインダーとしてコロイダルシリカ
をさらに有することが好ましい。コロイダルシリカは紫外光を透過するので、バインダーとしてコロイダルシリカを用いることにより、光触媒と吸着剤とを基材に確実に担持させ、かつ酸化チタンの励起に必要な紫外光を良好に透過させることができる。
【0026】
本発明の空質浄化装置において、基材としては、繊維布帛、パンチングメタル、ラス材等を用いることができる。繊維布帛としては、編物、織物及び不織布が挙げられる。中でも、圧損の点から、編物及び織物が好ましく、より好ましくは織物である。布帛に使用される繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、フェノール系繊維などの合成繊維;ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、活性炭素繊維などの無機繊維;木材パルプ、麻パルプ、コットンリンターパルプなどの天然繊維;再生繊維等が挙げられ、中でも、光透過性の点からガラス繊維が好ましい。基材として、ガラス繊維織布を使用することが好ましい。
【0027】
基材は、シート状(平板状)で使用してもよい。また、例えばプリーツ加工や、コルゲート加工によりハニカムに成形して使用してもよい。
【0028】
光触媒性部材は、例えば、上述した光触媒及び吸着剤を基材に塗布等することにより製造することができる。光触媒及び吸着剤を溶媒等に分散させた後、基材に塗布してもよい。溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール等が使用できる。また、光触媒及び吸着剤とバインダーとを混合し、その混合物を基材に塗布してもよい。予めバインダーを基材に塗布し、その後光触媒及び吸着剤を塗布してもよい。塗布法としては、例えば、スラリー塗布、スピンコート、吹き付け塗布、キャスティング塗工等が挙げられる。
【0029】
上記フッ素を含有する酸化チタン光触媒は、例えば、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下であるアナタース型酸化チタンの水分散液とフッ素化合物とを混合し、混合液のpHが3を超える場合は酸を用いてpHを3以下に調整することによって、混合液中で酸化チタンとフッ素化合物とを反応させることにより製造できる。n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下であるアナタース型酸化チタンとしては、例えば、堺化学工業株式会社製SSP−25等が使用できる。その水分散液としては、例えば、堺化学工業株式会社製CSB−M等が使用できる。フッ素化合物としては、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸等が挙げられる。
【0030】
本発明の空質浄化装置において、基材の開孔率が0%以上25%以下であることが好ましい。基材の開孔率が0%以上10%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
基材の開孔率は、例えば、基材の面積と開口部の面積とを用いて下記式(数1)より算出することができる。
【0032】
【数1】

【0033】
本発明の空質浄化装置は、筐体内に配置され、光触媒性部材に紫外線を照射する光源と、筐体内に気流を発生させるための送風機とをさらに備えていてもよい。ここで、送風機としては、例えば、シロッコファン等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
(実施例1)
本実施例では、本発明に係る空質浄化装置において、基材の開孔率を変えて脱臭性能を評価した。
【0036】
まず、本実施例において用いた測定装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施例において用いた測定装置101の構成を示す斜視図である。
【0037】
図1に示すように、測定装置101は、アクリル製ボックス(内容積:100L)105と、その中に配置された空質浄化装置103及び撹拌用ファン102を含む。アクリル製ボックス105は、臭気成分を導入する導入口108と、アクリル製ボックス105内の空気をサンプリング可能な排出口109を備える。排出口109には、3分毎に自動サンプリングが可能なガスクロマトグラフ(商品名:GC−14B、島津製作所製)を接続した(図示せず)。ガスクロマトグラフのカラムには、GASCHROPACK56(商品名、GLサイエンス製)を使用した。
【0038】
空質浄化装置103は、筐体110、ブラックライト104、シート状の光触媒性部材(100mm×200mm)106及び送風機107を備えている。送風機107により、光触媒性部材106の面に沿った方向、すなわち光触媒性部材106の面と略平行の方向に気流を発生させることが可能である。ブラックライト104は、ブラックライトブルー蛍光灯(品番:FL6BL−B、松下電器製、最大波長:352nm、定格ランプ電力:6W、紫外放射出力:0.6W)を使用した。ブラックライト104は、光触媒性部材106の上面に対して、照度1.0mW/cmの紫外線(365nm)が照射されるように配置した。照度は、紫外線積算光量計(商品名:UVD−S365、ウシオ電機製)を用いて測定した。
【0039】
次に、本実施例において用いた光触媒性部材106の作製手順について説明する。
【0040】
酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製、アナタース型、粒径:5〜10nm、比表面積:270m/g以上)の濃度が150g/Lとなるように酸化チタンに純水を加え、これを撹拌して、酸化チタン分散液を調製した。この酸化チタン分散液に、酸化チタンに対してフッ素(元素)に換算して5.0重量%に相当するフッ化水素酸(和光純薬社製、特級)を添加し、pH3に保持しながら25℃で60分間反応させた。得られた反応物を水洗した。水洗は、反応物を濾過して回収される濾液の電気伝導度が1mS/cm以下となるまで行った。そして、これを空気中において130℃で5時間乾燥させて酸化チタン光触媒を調製した。
【0041】
吸光光度分析法(JIS K 0102)により酸化チタン光触媒中のフッ素含有量を求めたところ、3.3重量%であった。
【0042】
酸化チタン光触媒を光電子分光分析装置で分析したところ、F1sのピークトップが683eV〜686eVの範囲となるスペクトルを示した。つまり、得られた酸化チタン光触媒において、酸化チタンとフッ素とがイオン結合していることが確認できた。
【0043】
酸化チタン光触媒を粉末X線回折装置(使用電極:銅電極)で分析したところ、回折角度2θ=25.5度において回折ピークが現れた。つまり、得られた酸化チタン光触媒はアナタース型酸化チタンであった。
【0044】
得られた酸化チタン光触媒490gと、ゼオライト(商品名:HSZ−890HOA、東ソー製、シリカ/アルミナ比(モル比):1950)210gとを乳鉢により1分間乾
式混合した。酸化チタン光触媒とゼオライトとの混合物700gをコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO、日産化学製)に分散させてペースト状にし、開孔率の異なる4種類の基材(ガラスクロス、商品名:V375H、V385H、ユニチカ製、200cm(100mm×200mm))に添着することにより光触媒性部材を作製した。基材の開効率は0%、10%、25%及び50%の4種類である。なお、開孔率が50%の基材は、商品名V375Hのガラス繊維不織布(ユニチカ株式会社製)から開孔率が50%となるように一部の繊維を抜くことにより作製した。
【0045】
撹拌用ファン102を回転させながら、光触媒性部材106を配置した図1の測定装置101内の空気を乾燥空気で置換した。ついで、窒素で希釈した標準ガス(アセトアルデヒド:524ppm)を1.80L導入し、アクリル製ボックス105内のアセトアルデヒド濃度を10ppmとした。アセトアルデヒドを導入した直後に、ブラックライトを点灯し、送風機107を回転させて光触媒性部材106による脱臭を開始した。脱臭開始後から3分毎にガスクロマトグラフを用いてアセトアルデヒド濃度を測定した。
【0046】
脱臭開始後3分後から15分後のアセトアルデヒド濃度の時間変化を対数近似し、その傾きの絶対値を脱臭速度係数とした。また、開孔率0%の基材について得られた脱臭速度を基準にして、脱臭速度の減少率を求めた。求められた脱臭速度の減少率を開孔率と比較し、開孔率よりも減少率が下回った場合を○、同じか上回った場合を×として判定を行った。得られた脱臭速度係数、脱臭速度の減少率及び判定結果を下記(表1)に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
上記(表1)に示すように、開孔率25%以下の基材を用いた場合では、脱臭速度の減少率が開孔率を下回った。これは、開孔率に相当する分だけ光触媒性部材106が紫外光を受光する面積が減少しているにもかかわらず、脱臭速度が維持されたことを意味している。さらに、開孔率10%以下であると、脱臭速度の減少率は開孔率と比較して顕著に小さくなった。以上の結果から、光触媒性部材における基材の開孔率は0%以上25%以下であることが好ましく、開孔率が10%以下であることがさらに好ましいことがわかった。
【0049】
(実施例2)
本実施例においては、酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製)に対してフッ素を含有させない点以外は、実施例1と同様の手順により光触媒性部材を作製した。基材としては開孔率が10%のものを用いた。
【0050】
実施例1と同様に、作製した光触媒性部材を図1に示す測定装置101内に配置し、実施例1と同様の方法により脱臭性能を評価した。
【0051】
評価の結果、本実施例の光触媒性部材を用いた空質浄化装置の脱臭速度係数は、0.082であった。上記(表1)に示すように、フッ素含有量が3.3重量%の酸化チタン光触媒を用いた光触媒性部材を備える空質浄化装置の場合、開孔率10%の基材を用いたときの脱臭速度係数は0.276であった。この結果から、フッ素を含有する酸化チタンの方が脱臭速度係数は大きく、脱臭特性に優れていることが示された。
【0052】
(実施例3)
本実施例では、シート状の光触媒性部材の両面から紫外光を照射することが可能な空質浄化装置を用いて、脱臭性能を評価した。
【0053】
まず、本実施例において用いた空質浄化装置の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施例において用いた空質浄化装置203の構成を示す斜視図である。
【0054】
図2に示すように、空質浄化装置203は、筐体210、ブラックライト204、304、シート状の光触媒性部材(100mm×200mm)206及び送風機207を備えている。実施例1において用いた空質浄化装置103と同様に、送風機207により、光触媒性部材206の面に沿った方向、すなわち光触媒性部材206の面と略平行の方向に気流を発生させることが可能である。ブラックライト204、304は、実施例1と同じ種類のものを用いた。ブラックライト204は、光触媒性部材206の上面に対して、照度0.5mW/cm以上の紫外線(365nm)が照射されるように配置し、ブラックライト304は、光触媒性部材206の下面に対して、照度0.5mW/cm以上の紫外線(365nm)が照射されるように配置した。
【0055】
光触媒性部材206の作製手順は実施例1と同様であるため説明を省略する。基材は、開孔率10%のものを用いた。
【0056】
作製した空質浄化装置203を、アクリル製の環境試験室(内容積:1m)に配置した。次いで、環境試験室内においてアセトアルデヒドの水希釈液を蒸気拡散させ、室内のアセトアルデヒド濃度を1ppmとした。その後、ブラックライト204、304を点灯し、送風機207を動作させることにより、脱臭を開始した。送風機207の動作は、風速が約1m/sとなるように調節した。
【0057】
脱臭開始から10分後、30分後、60分後及び90分後に環境試験室内の臭気を採取した。採取した臭気(3L)をDNPH(ジニトロフェニル)で濃縮し、液体クロマトグラフィーを用いてアセトアルデヒド濃度を測定した。得られた結果を図3に示す。
【0058】
図3より、本実施例において用いた空質浄化装置203によって、脱臭開始後60分で90%以上のアセトアルデヒドを脱臭することができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば脱臭、消臭、空気浄化等の目的で使用される浄化デバイスに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例において用いた測定装置の構成を示す斜視図
【図2】本発明の他の実施例において用いた空質浄化装置の構成を示す斜視図
【図3】同実施例において測定されたアセトアルデヒドの脱臭特性を示すグラフ
【符号の説明】
【0061】
101 測定装置
102 撹拌用ファン
103,203 空質浄化装置
104,204,304 ブラックライト
105 アクリル製ボックス
106,206 光触媒性部材
107,207 送風機
108 導入口
109 排出口
110,210 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、及び
基材と、
前記基材に担持された、少なくとも酸化チタンを含む光触媒と、
前記基材に担持された吸着剤とを有し、
前記筐体内に配置された光触媒性部材を備え、
前記光触媒性部材が前記筐体内における気流に沿って配置されている空質浄化装置。
【請求項2】
前記基材の開孔率が、0%以上25%以下である、請求項1記載の空質浄化装置。
【請求項3】
前記光触媒が、構成元素としてフッ素を含有する酸化チタンである、請求項1または2に記載の空質浄化装置。
【請求項4】
前記構成元素としてフッ素を含有する酸化チタンにおけるフッ素の重量比が、2.5%以上3.5%以下である、請求項3記載の空質浄化装置。
【請求項5】
前記吸着剤がゼオライトである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空質浄化装置。
【請求項6】
前記光触媒性部材が、バインダーとしてコロイダルシリカをさらに有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空質浄化装置。
【請求項7】
前記筐体内に配置され、前記光触媒性部材に紫外線を照射する光源、及び
前記筐体内に気流を発生させるための送風機をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の空質浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−10716(P2012−10716A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283839(P2008−283839)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】