空間光フィルタとして機能を果たす共振光空洞と抽出器を有する有機発光ダイオード
本発明によれば、抽出器は、反射による集束器であり、抽出器の入力部(311)は、その出力部(313)よりも大きな表面積を有し、抽出器(31)の反射性横壁(312)は、所定の光空洞に対してこの抽出器を透過する限界波長λC-limに対応する臨界角θlimが存在するように適応された形状を有する。本発明は、画像を表示するダイオードパネルに使用される。本発明は視野角の拡大と、色と表示される画像の純度を改善する効果とをもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部電極と上部電極の間で、下部反射層と上部反射層との間に挿入された有機電界発光層を備え、それら間に電界発光層により発光される光の波長の範囲でこの層に垂直方向に共振光空洞を形成し、電極の少なくとも1つと電界発光層に対してこの電極と同じ側に位置される反射層とが、ダイオードにより発光される光に対して透明または半透明であるダイオードに関する。本発明は、また複数のこのようなダイオードを備えた画像ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この形状のダイオードを開示しており、その反射層の1方が電極として働き、他の電極は透明であり、電界発光層に対して他の反射層と同じ側に位置し、他の反射層は半透明であり、誘電体副層の積層反射膜から形成されている。
【0003】
そのようなダイオードの電極間に電流を流したときに、電界発光層による発光される光の一部は、光空洞内で共振し、透明電極と誘電体反射膜を介してダイオードから出射され、発光はこの層の面に垂直な方向で最大発光強度を有する。
【0004】
図1は、このダイオードの垂直方向に対して測定した視野角(または放射角度)に関するこのタイプのダイオードの発光強度の分布を示す。ここで検討するダイオードは、以下の構造を有する。基板/Ag(反射性を有し、不透明の下側金属電極)/有機層(電界発光層を含む)/Ag(厚さ2nmまたは20nm)/ZnSe、ここでZnSe誘電体層はAg/ZnSe積層の最小の吸収が得られるようにするものである。また、ZnSe誘電体層は、特許文献2、3、4に記載されているように、Ag/ZnSe積層の光学的な性質を最適化するように適合されるものである。それゆえ、図1はAg上部電極(厚さ2nmまたは20nm)の厚さにかかわらず、発光ダイオードからの発光の空間分布は、(破線で示す)ランバート型光源と比較するとより狭く、方向性が強い。
【0005】
【特許文献1】米国公開特許第2004−051447号明細書
【特許文献2】欧州特許第1、076、368号明細書
【特許文献3】欧州特許第1、439、589号明細書
【特許文献4】欧州特許第1、443、572号明細書
【特許文献5】米国特許第6、326、224号明細書
【特許文献6】米国特許第5、949、187号明細書
【特許文献7】欧州特許第0、801、429号明細書
【特許文献8】米国公開特許第2003−034938号明細書
【特許文献9】国際特許第2005−098987号明細書
【特許文献10】米国公開特許第2004−150329号明細書
【特許文献11】米国特許第6、603、243号明細書
【非特許文献1】W.T.ウェルフォード(Welford)とR.ウインストン(Winston)による「高集束非画像光学(High Collection Nonimaging Optics)」、アカデミックプレス社(Academic Press),1989.
【0006】
特許文献5は、ダイオードに組み込まれた共振型光空洞が色の純化を達成できることを教示している。特許文献6に示されているように、いくつかの空洞(すなわちマイクロキャビティー)が存在してもよい。
【0007】
さらに、本明細書において図2として再現される上述の特許文献1の図7に示されるように、光空洞は、波長とともに発光の角度分布を変化させる。この図は、発光波長の関数として発光強度最大値の(x軸上の)角度位置を示す。発光強度最大値がダイオードに垂直に向かう(すなわち視野角=0°)波長は、空洞の垂直方向の共振波長に対応する。特許文献7、8、および9も、光学共振空洞の特性の関数として、発光強度の角度分布のこのような変化を開示している。
【0008】
図4は、赤色発光し、以下の構造を有する有機ダイオードからの発光の角度分布を示す。その構造は、基板/Al(反射性を有し、不透明の下部金属電極)/有機層(電界発光層を含む)/Ag(20nm)/ZnSe(85nm)である。この分布は、同じ電界発光層の蛍光スペクトルの3つの異なる波長、すなわち650nm(実線)、630nm(破線)、および615nm(点線)に対して与えられている。この図4から、すでに図2に示してあるが、(ここでは3つの波長だけが示されているが)発光波長の関数として発光強度の最大点の角度位置が変化するということを導出できる。図3は、電界発光層の材料に固有な発光スペクトル分布を示す。
【0009】
発光波長の関数として発光強度最大点の角度位置のこのような変化により、ダイオードの前に位置する観測者は、選択されたこのダイオードの視野角に従い異なる発光の色の陰に気付く。
【0010】
この色の純度の問題を解決するために、特許文献1は、収束レンズと、このレンズの絞りを形成する開口を備えるマスクとを具備した光抽出デバイスをダイオードに付け加えることを提案している。絞りは、このレンズの光軸上に置かれ、ダイオードからの発光光線の中の(視野角ゼロの)このダイオードの垂直方向に近い方向の光線だけを通し、「遮断角度」よりも大きな視野角で出射される光線を遮断するように配置され、レンズのほぼ焦点面に置かれる。遮断角度は絞りの開口に比例し、一般的にはレンズの焦点距離に対応するレンズと絞りの距離に反比例する。発光強度が遮断角度よりも大きな放射角度で最大となるような光線の大部分を除去することにより、上記文献において提案された抽出デバイスは、ダイオードの発光の色純度を大幅に改善する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されたダイオードの欠点の1つは、抽出デバイスの構成要素の位置決めに関する制約である。他の欠点は、これらダイオードからの発光が非常に顕著な方向依存性を有し、発光の空間分布はランバート光源よりも遥かに狭くなる。特許文献1に記載された抽出デバイスの他の欠点は、少なくとも画像ディスプレイを形成するためにダイオードをアレイ状に並べたときに、各ダイオード上にレンズを配置することが必要となり、それにより軸合わせ上の制約を取り込むこととなり、これがディスプレイを製造する上で大きな不利になることである。
【0012】
本発明の目的は、上記の欠点の1つ以上を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明の1つの対象は、下部電極と上部電極との間で、下部反射層と上部反射層との間に有機電界発光層を備え、それらの間に上記電界発光層により発光される光の波長の範囲で共振光空洞を形成し、上記電極の少なくとも1つと上記電界発光層に対してこの電極と同じ側に位置される上記反射層とが、上記発光される光に対して透明または半透明であるダイオードであって、このダイオードが透明または半透明である上記電極と上記反射層とを介し、上記電界発光層に光学的に結合する光入射部と、上記ダイオードの外側に向かい、上記入射部よりは小さい面積を有する光出射部と、上記入射部と上記出射部とにより区切られた反射性側壁とを備える少なくとも1つの光抽出器を含むダイオードである。
【0014】
上記下部反射層と上記上部反射層は一般的には平行である。半透明である上記反射層は、それゆえ、ここでは半反射的である。
【0015】
上記電極が光空洞を区切るための反射層としても働くのが好適である。例えば、電極の一方は、アルミニウムまたは銀の層のような、厚い反射性で不透明な金属層で形成される。他の電極は、例えば20nm厚の銀の層のような、反射性でかつ半透明であるために十分に薄い金属副層と、この電極の光学的な性質を最適化するように、物性と厚さの観点から、例えばZnSeで作成される透明誘電体副層とから形成される。このとき、上記電極間の距離Dcは共振空洞の高さに対応する。特許文献8が教えるように、この空洞の共振条件は式1で表される。
2π×2DC/λCN+F=2πm (式1)
ここで、mは整数であり、一般的には1に等しい。Fは、共振空洞の境界を区切る反射層のそれぞれの波長λCNの光線の反射における全位相変化を表す。上述の式1は、共振空洞を区切る反射層に垂直な方向に伝播する光線に対する共振波長λCNを与える。垂直方向から外れた伝播方向に対しては、共振波長は図2と図4に示すように減少する。
【0016】
図4において、垂直方向の共振波長はλCN=650nm(実線)である。破線(630nm)と点線(615nm)は、垂直方向の共振波長λCNから遠く離れても、ダイオードから垂直方向に発する光の強度が依然としてかなり大きいこと、それゆえに垂直方向の放射に対応するダイオードにより発せられる光の波長範囲が存在することを示す。
【0017】
上記抽出器の入射部と出射部は、一般的には平面であり、ダイオードの反射層に平行であり、それゆえに垂直方向の放射に垂直である。
【0018】
上記抽出器は、入射部よりも小さな面積を有する出射部を有しているので、この抽出器は集束器として働く。反射性側壁を有するので、この抽出器は反射による集束器として働く。抽出器から離れる光線は、反射を受けることなく直接それを通過したものか、または反対に側壁で1回以上反射を受けた後に通過したものである。
【0019】
それゆえに、この抽出器の動作は反射によるものであり、特許文献10に記載されているような屈折によるものではない。特許文献10では側壁は(本発明による反射とは異なり)屈折性のものであり、この屈折は発光を垂直方向に近い方向に偏向しようとするものである。
【0020】
上記抽出器の全ての側壁が反射性であるとは限らない。行および/または列に分布したダイオードを備えるディスプレイの場合には、各抽出器は任意の1つの行または任意の1つの列の全てのダイオードに共通である。その場合、この抽出器は2つの対向する反射性側壁を備え、この抽出器の他の2つの側壁は行または列の端に移動し、しかも必ずしも反射性ではない。上記抽出器の入射部は、このとき、複数のダイオードに光学的に結合する。この構成では、行の各ダイオードは抽出器の対向する2つの反射性側壁だけを「見る」ことになる。
【0021】
上記ダイオードはまた、いくつかの並置される抽出器を含み、これらの抽出器の入射部がダイオードの放射面の全てをカバーするようにしてもよい。このとき、放射面はいくつかの抽出器の入射部と結合するようになる。そのような場合でも、これらの抽出器もいくつかのダイオードに共通であってもよい。
【0022】
集束効果を得るためには、ダイオードの少なくとも1つの抽出器の反射性側壁はその入射部方向に向かうことが望ましい。このことは、上記反射性側壁上の任意の点での法線が抽出器の内部を介してこの入射部を切断しているか、さもなければ、この入射部に平行であることを意味している。
【0023】
少なくとも1つの抽出器の反射性側壁は、入射部を介して入射され、上記側壁により少なくとも1回は反射し、その出射部を介して抽出器から出射する任意の出射光線が、抽出器の入射部でのこの光線の放射角度よりも大きな放射角度でそこから出射するのに適した形状を有することが好適である。
【0024】
このようにして、発光強度の角度分布は広がり、有利なことには、ランバート分布に近づく。この効果は、同様の反射器を使用しながら、特許文献11(列11、パラグラフ1、および図17を参照)に記載の光システムにより提供されるものとは正反対のものであることは注目すべきである。この文献では、目的が垂直方向の視野を制限することに置かれ、視野(特に水平方向の視野)を広げることを目的とする本発明とは反対であるからである。
【0025】
反射性側壁の形状を定義することは、上記抽出器の深さ、すなわち入射部と出射部間の距離を定義することを含む。それはその端部がこれら側壁を定義する、これらの部分の形状と面積を含む。
【0026】
上記少なくとも1つの抽出器の上記反射性側壁は、遮断角度θlimと呼ばれる角度が存在するような適当な形状を有することが好適である。まず放射角度とは、上記下部反射層と上記上部反射層との垂直方向に対して測定されるものとする。そこで、遮断角度θlimとは次のようなものである。上記遮断角度θlimを超えない放射角度でその入射部を介して入射した発光光線は、その出射部を介してこの抽出器から出射する。そして、この遮断角度θlimよりも大きな放射角度で入射部を介して入射した発光光線は、その出射部を介して抽出器から出射できない。
【0027】
実際には、遮断角度よりも少し大きな放射角度を有するが、その出射部を介して抽出器から出射するような光線がいくらかは存在し、遮断角度よりわずかに小さな放射角度を有するが、その出射部を介して抽出器から出射できない光線がいくらかは存在する、という意味で遮断角度は絶対的な角度ではない。
【0028】
図4を参照すると、本発明によるダイオードの抽出器は、それゆえに、遮断角度θlimよりも大きな放射角度に対して発光強度が最大となるような波長を有する発光光線の大部分を除去することになる。この角度、およびそれによる反射性側壁の形状を適当に選択することにより、ここで提案された抽出デバイスは、ダイオードによる発光の波長を空間的に選択し、このダイオードの発光の色純度を改善し、または変化させることを可能とするものである。これは上記の特許文献1に記載のレンズと絞りに基づくデバイスと同様であるが、このレンズに基づくデバイスの、構成要素の位置決めに関する制約を回避しているという利点を有するものである。
【0029】
反射性側壁の形状を定義するステップは、抽出器の深さ、すなわち入射部と出射部との間の距離を定義するステップを含む。それは、端面がこれらの壁を区切る入射部と出射部の形状と面積を定義するステップも含む。λC-limをλCNより短い範囲で選択された遮断波長であるとして、光線が範囲[λCN、λC-lim]外の波長を有するときはいつでも、電界発光層からの発光光線の大部分を除外するのが望ましい場合は、抽出器の形状は上記遮断角度θlimがこの遮断波長λC-limに対応するように決定される。
【0030】
第1の変形例においては、少なくとも1つの抽出器の上記反射性側壁は、異なる光学的屈折率を有する2つの透明材料間の界面により形成され、これらの壁の形状とこの光学的屈折率の差は、上記発光光線が上記抽出器の内部からおよびその入射部から来て、上記壁にぶつかり、全内部反射により反射して上記壁を離れるように適応されることが好適である。これらの条件は特許文献10に記載されたものとは逆であり、この文献では、これらの光線は、反対に、界面により屈折して透過する。
【0031】
第2の変形例によれば、上記反射性側壁は、金属化されているのが好適である。このとき、上記抽出器の内部から来て上記壁にぶつかる任意の発光光線は上記壁に反射されて離れる。
【0032】
上記抽出器の上記反射性側壁は、上記下部反射層と上記上部反射層の垂直方向に向かう面に対して対称な対となることが好適である。ダイオードベースのディスプレイの任意の1行または任意の1列のダイオードの全てに共通な上記の抽出器の場合には、この抽出器は、このとき上記行または上記列に平行な面に対して対称な2つの対向する反射性側壁を備えている。入射部と出射部が長方形または正方形である場合には、一般に、第1の面に対して対称な第1の対向する側壁の対があり、第1の面に垂直な第2の面に対して対称な第2の対向する側壁の対がある。
【0033】
上記反射性側壁は上記下部反射層と上記上部反射層との垂直方向に向かう対称軸を有するのが好適である。
【0034】
上記側壁と、上記下部反射層と上記上部反射層の垂直方向に向かう面であり、上記対称面に直交する面であるこの壁の任意の断面と、または上記対称軸を通る任意の断面とが交差する2つの線のそれぞれは、直線、または軸が上記垂直方向にある放物線であるのが好適である。利点としては、上記出射部が上記入射部よりも小さな面積を有するので、このような形状が集束効果を実現することを可能とし、このような抽出器は上記で定義された遮断角度を有するので、ダイオードにより発光された光の波長の空間的選択を可能とするものである。壁が対称軸を有する場合、これらの反射性側壁は、この場合、円錐または放物面を形成する。
【0035】
上記下部反射層と上記上部反射層との垂直方向に向かう、上記対称面に垂直な、この壁の任意の断面と、または上記対称軸を通る任意の断面と上記側壁との2つの交差線のそれぞれは、
一方では、上記交差線と上記入射部とに共通の点と上記交差線と上記出射部とに共通の点を結ぶ直線と、
他方では、放物線であって、その軸が後者の共通の点と、上記のものとは対称であり、他方の交差線と上記入射部とに共通の点を結ぶ直線にほぼ平行であり、その焦点がこの他方の交差線と上記出射部の端部とに共通の点にほぼ一致するような放物線と、
により区切られた表面内にあるのが好適である。
【0036】
このように定義された放物線は、「CPC(複合放物線集束器)放物線」と呼ばれる。この表面の輪郭はここではこの表面に含まれる。
【0037】
上記側壁と断面との2つの交差線のそれぞれは、このCPC放物線とほぼ一致するのが好適である。上記断面内での、この放物線と上記抽出器の入射部の端部との共通点E、E’での、CPC型の放物線のそれぞれへの法線は上記対称面または上記対称軸に垂直であることを指摘する。
【0038】
このとき側壁はCPCを形成し、これによりダイオードからの発光の角度分布を拡大しながら、集束効率の最適化を可能とし、これは特許文献1に記載のレンズと絞りに基づくデバイスとは異なる点である。更に、このとき遮断角度はこの抽出器のいわゆる「極限光線」と垂直方向とのなす角度に対応する。この極限光線は上記断面内にあって、一方では、抽出器の入射部の端部と、この抽出器の反射性側壁とこの断面との第1の交差線とに共通の点を通り、他方では、出射部の端部と、上記対称面または上記対称軸に関する第1のものと対称である、壁とこの断面との第2の交差線との共通の点を通る光線として定義される。
【0039】
非特許文献1は、CPC型抽出器の側壁の形状及び入射部と出射部の深さおよび面積比に関して詳しく定義してある。特に、この文献の第4章、第3節を参照のこと。特許文献11は、共振空洞のない発光ダイオードディスプレイの視野角を制限するための適用例を示している。2a’を、上述したように定義された断面内におけるこのCPC型抽出器の出射部の2つの対向する端部間の距離とし、2aを、同じくこの断面内における入射部の2つの対向する端部間の距離とし、θcを遮断角度としたとき、これら3つのパラメータは式2で関係付けられる。
a=a’/sinθc (式2)
抽出器の深さL、すなわち入射部と出射部との間の距離は式3で表される。
L=(a+a’)cosθc (式3)
【0040】
このように、例えば、θlim=25℃(図4参照)であれば、a’=0.42aとL=1.42aであり、顕著な色純化効果が得られる(図3参照。遮断は約600nmで現れる。)。このように、ダイオードの発光面の幅が200μmであれば、それは光学的結合により、CPC抽出器の入射部の幅に対応し(a=100μm、それゆえa’=42μm)、そのときL=129μmとなる。
【0041】
ダイオードは、複数の抽出器を備えるのが好適である。このとき、これらの抽出器は、入射部がダイオードの出射面の全体をカバーするように並置するのが好適である。
【0042】
ダイオードの抽出器の出射部間の空間は不透明で非反射性であるものとし、すなわち「黒い格子(black matrix)」を形成するのが有利であり、これにより周囲の光の中でダイオードの発光コントラストを改善する。抽出器の集束比が高いほど、この「黒い格子」用に利用可能な面積が大きくなり、周囲光の中での発光のコントラストがよくなる。
【0043】
また、本発明の課題は、1つまたは同一の基板上に分布された本発明による複数のダイオードを備える画像ディスプレイでもある。
【0044】
それぞれのダイオードは、複数の抽出器を備えるのが好適である。このようにすることにより、それぞれの抽出器とそれぞれのダイオード間の位置合わせの制約条件を除去し、それによりこの抽出器の深さを低減することができる。
【0045】
これら抽出器は、ディスプレイ全体をカバーする透明材料の同一の層内に形成されるのが好適である。この層は「抽出層」と呼ばれる。
【0046】
第1の変形例によれば、この抽出層は電界発光層に関して基板とは反対側に置かれて、電界発光層を劣化の危険性から保護するための封入層としても働く。
【0047】
第2の変形例によれば、この抽出層は基板として働く。
【0048】
ディスプレイのダイオードは行と列に分布され、抽出器のそれぞれは任意の1列のいくつかのダイオードに共通であることが好適である。
【0049】
抽出器のそれぞれは、任意の1列のダイオードの全てに共通であることが好適である。
【0050】
画像ディスプレイに適合するように上記列が垂直に配置される時は、任意の1列のいくつかのダイオードに共通なそれぞれの抽出器の上記反射性側壁は、上記垂直方向に向かい上記列に平行な面に対して対称な対であることが好適である。
【0051】
このように、これらの反射性側壁が、この抽出器の入射部を介して入射され上記側壁で少なくとも1回反射して離れた発光光線が出射部を介してこの抽出器から、抽出器の入射部での光線の放射角度よりも大きな放射角度で出射するように適当な形状を有するときは、有利なことに、ディスプレイの水平方向の発光分布は広がり、すなわちディスプレイの水平方向の視野角が広がる。
【0052】
本発明は、非限定的な例示の方法で与える以下の記述を、添付の図面を参照しながら読むことによりさらに鮮明に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
記述を単純にし、本発明が従来技術を越えて提供する差異と利点を明確にするために、同じ機能を備える構成要素には同一の参照番号が使用される。
【0054】
ここで、本発明の一実施形態が、行と列に分配され、1つおよび同一の基板1上に配置された複数のダイオード2を備える画像ディスプレイの場合の図5〜図8を参照して記載される。図6を参照すると、ダイオード2のそれぞれは、反射層を形成する厚い金属製の下部電極21と、有機電界発光層22と、これも半反射層を形成する半透明上部電極23とを備えている。有機電界発光層22は、従来様式では、第1の種類のキャリアの注入と輸送のための副層222と、第2の種類のキャリアを遮断するための副層223と、実際の電界発光の部分である副層221と、上記第1の種類のキャリアを遮断するための副層224と、上記第2の種類のキャリアを注入して輸送するための副層225とを備えている。上記のキャリアの種類は電子および正孔に対応するものである。上部電極23は、例えば、銀で作成されるような薄い金属の副層と、これらの副層の積層に必要な光学的特性を与えるために適当な、厚い誘電体副層とを備える。
【0055】
2つの電極21と23との間の空間は、共振光空洞を形成する。これら2つの電極21と23との間の距離Dcは、この空洞の高さに相当するが、上記で説明されたように、これらの電極の垂直方向に層22により発光された波長λCNの光線が共振するために適している。式4が成り立つことが好適である。
2π×2Dc/λCN+F=2π (式4)
ここで、Fは電極21、23のそれぞれで波長λCNの光線が反射する際の位相変化の合計である。
【0056】
図5を参照すると、上部電極23を介して発光するダイオード2の発光面は抽出/封止層3で被覆される。この層3は、透明ベース30と、このベースを被覆する抽出器31のアレイとを備える。図7を参照すると、抽出器31のそれぞれは正方形である入射部311と、これも正方形である、入射部よりは小さな面積を有する出射部313とを有する。抽出器31のそれぞれは、ここでは平面であり、その輪郭はそれゆえに台形である反射性側壁312も含む。図8を参照すると、抽出器31のそれぞれは、従って、正方形の錐台を形成し、それゆえに、垂直方向に向かう2つの垂直な対称面を有する。図5を参照すると、それぞれのダイオードの発光面は、透明ベース30を介しいくつかの抽出器31の入射部に光学的に結合する。各入射部311の面積は、各ダイオードの発光面の面積よりもかなり小さく、少なくとも10分の1であるのが好適である。図7を参照すると、層3のベース30の厚さは例えば100μmであり、各抽出器の高さは例えば16μmであり、入射部311上の1辺は例えば25μmであり、その出射部313上の1辺は例えば12μmである。
【0057】
層3の全体は、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)のような熱形成剤である高分子材料に圧縮モールドにより形成される。この層3は、ダイオード2の上部電極23を層3のベース30に光学的に結合させるために適当な接着剤を使用して、ダイオードをサポートする基板に接着される。抽出器31の入射部311がダイオードの発光面の面積よりもかなり小さい面積を有するので、組み立ては位置合わせの制約なく可能となるという利点がある。
【0058】
実現されるものは、視野角が抽出器の形状により水平面内にも垂直面内にも広がるディスプレイである。
【0059】
図9は、このディスプレイの別の実施形態を示す。各抽出器31’は、任意の1列の複数のダイオードに共通であり、垂直方向に向かいこの列に平行な唯一の対称面を有する。上記の図7に示した構成要素は、この対称面に垂直でまた、垂直方向に向いた任意の断面内に在る。実現できるものは、視野角が抽出器の形状により、この場合は、水平面内にのみ広がるディスプレイであることが利点である。
【0060】
図10と図11に示す好適な代替実施形態では、抽出器の反射性側壁はCPC型である。この場合より正確には、各抽出器31の側壁312’と抽出器の任意の対称面に垂直な断面との交差線は、CPC型の放物線を形成する。対称軸を有する抽出器の場合には、この断面は、このときこの軸を通る。図14は、CPC型の放物線に対する光線の軌跡の特性を詳細に示す。点EとE’は抽出器の入射部の端部を表し、点FとF’は出射部の端部を表し、線F’E’に沿う放物線は点Fを焦点として有し、F’Eに平行で点Fを通る直線を軸として有し、線FEに沿う放物線は点F’を焦点として有し、FE’に平行でF’を通る直線を軸として有する。
【0061】
このようなCPC放物線の1つの特性は、断面内で、入射部との交差線にある各放物線の点、ここでは点EとE’での接線は垂直方向に平行であり、それゆえにここでは入射部と出射部の面に垂直である。
【0062】
抽出器のCPC放物線というこの断面形状の利点は、遮断角度θlim以下の放射角度でダイオードにより発光される光線の集束を最適化することである。この遮断角度は、それゆえこの抽出器のいわゆる「極限光線」、ここではそれぞれ第1と第2のCPC放物線に対するFE’とF’E、とダイオードの面の垂直方向との間の角度に対応する。
【0063】
本発明によるディスプレイの抽出器がCPC型形状であるので、有利なことには、抽出器の断面内で、遮断角度θlimを超えない放射角度を有するダイオードからの発光光線は、図10と14に示すように、これら抽出器の出口でより広い立体角に亘って再分配されることである。放射立体角の拡がりは、明確に抽出器の側壁とこの面との交差がCPC型の放物線を形成する断面内で起こる。このように、いくつかの対称面または対称軸でも有するCPC抽出器を使用すると、それゆえ図8に示したものと同様の抽出層を有する抽出器を使用すると、ディスプレイのダイオードの放射立体角は全ての方向に拡がり、当然、視野立体角も広がる。反対に、単一の対称面だけを有し、それゆえに図9に示したものと同様の抽出層を有するCPC抽出器を使用すると、ディスプレイのダイオードの放射立体角は、主にこの対称面に垂直な面内で広がり、当然その視野立体角も広がる。
【0064】
本発明によるディスプレイの抽出器のこのCPC型の形状であることによる利点として、抽出器の断面において遮断角度θlimにより制限された立体角の外側へのダイオードからの発光光線は、反射によりダイオードへ送り返され、それゆえ抽出器の出口での発光立体角から除かれる。
【0065】
λCNをダイオードの電界発光層により垂直方向へ発光される光線の共振波長であるとし(この場合、2π×2DC/λCN+F=2πが成立する。上記参照)、少なくとも、電極21、23のそれぞれの全位相変化Fが実質的に波長に依存しなければ、遮断角度に等しい放射角度θlimで発光強度が最大となる光線の波長λC-limは式5で与えられる。
λC-lim=λCNcosθlim (式5)
【0066】
このように、λC-limをλCNより短い遮断波長であるとして、これらの光線が範囲[λCN、λC-lim]から外れた波長を有するときはいつでも、電界発光層22からの発光光線の大部分を除外するのが望ましいときは、遮断角度θlimがこの遮断波長λC-limに対応するように、より詳しくは式5が成り立つように、抽出器の形状が決定される。それゆえに、抽出器はまた、光空洞と組み合わせて、色に対する空間的フィルタ機能を有し、ダイオードから発光される色の純度の改善または調節を可能とするものであることがわかる。
【0067】
それゆえに、CPC形状を有する抽出器はディスプレイの視野角を広くして、それにより光空洞に固有の欠点を修正し、また発光の色純度を改善するものであることがわかる。
【0068】
図12に示されたような他の変形例によれば、抽出器の反射性側壁は、図13に示された平面形状312'''、と、上記し、図10、11および14に示されたCPC型の中間の形状を有する。この場合、より詳しくは、抽出器の任意の対称面(または対称軸を通る任意の面)に垂直な断面と各抽出器31の側壁312”との交差線は、直線EFと、点EとFを通るCPC放物線とで区切られた表面内で、直線E’F’と、点E’とF’を通るCPC放物線とで区切られた面内に存在する。この境界、つまり直線と放物線―はこれらの表面内に存在する。このような「中間」の形状の利点は、CPC形状よりも製造が簡単であり、尚、視野角を広げ、空間的に色をフィルタリングする観点から十分に許容できる性能のレベルを提供することである。
【0069】
本発明は、画像を表示するための有機発光ダイオードディスプレイを参照して記述してきたが、以下に記載の請求項の技術範囲から逸脱することなしに、本発明は無機の発光ダイオードディスプレイ、ダイオードベースの照明パネル、または個別の有機または無機のダイオードに適用可能であることが当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】視野角の関数として、従来技術の2つのダイオードの発光強度の分布を示す図である。
【図2】特許文献1の図7に対応するものであり、観測角度(視野角)の関数として、垂直方向で約550nmで共振する共振光空洞を備える従来技術のダイオードの発光強度が最大の波長を示す図である。
【図3】赤色で発光する従来技術の有機材料に固有の電界発光スペクトルを示す図である。
【図4】図3の材料で作成された電界発光層と、垂直方向で650nmの波長で共振する光空洞を含む従来技術のダイオードの発光強度の分布を3つの異なる波長に対して視野角の関数として示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態によるダイオードベースのディスプレイの断面図である。
【図6】図5のディスプレイの1つのダイオードの詳細断面図である。
【図7】図5のディスプレイの抽出器の詳細断面図である。
【図8】図5のディスプレイの変形例であり、抽出器が正方形の断面を有する錐形であるものを示す図である。
【図9】図5のディスプレイの変形例であり、抽出器がダイオードの列で共通であるものを示す図である。
【図10】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、CPC型を示す図である。
【図11】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、CPC型を示す図である。
【図12】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、1部切り詰めたCPC型を示す図である。
【図13】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、CPC型内に在る台形を示す図である。
【図14】図10と図11に示す変形例による抽出器の入射部と出射部の間でのCPC型放物線に対する光線の軌跡を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部電極と上部電極の間で、下部反射層と上部反射層との間に挿入された有機電界発光層を備え、それら間に電界発光層により発光される光の波長の範囲でこの層に垂直方向に共振光空洞を形成し、電極の少なくとも1つと電界発光層に対してこの電極と同じ側に位置される反射層とが、ダイオードにより発光される光に対して透明または半透明であるダイオードに関する。本発明は、また複数のこのようなダイオードを備えた画像ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この形状のダイオードを開示しており、その反射層の1方が電極として働き、他の電極は透明であり、電界発光層に対して他の反射層と同じ側に位置し、他の反射層は半透明であり、誘電体副層の積層反射膜から形成されている。
【0003】
そのようなダイオードの電極間に電流を流したときに、電界発光層による発光される光の一部は、光空洞内で共振し、透明電極と誘電体反射膜を介してダイオードから出射され、発光はこの層の面に垂直な方向で最大発光強度を有する。
【0004】
図1は、このダイオードの垂直方向に対して測定した視野角(または放射角度)に関するこのタイプのダイオードの発光強度の分布を示す。ここで検討するダイオードは、以下の構造を有する。基板/Ag(反射性を有し、不透明の下側金属電極)/有機層(電界発光層を含む)/Ag(厚さ2nmまたは20nm)/ZnSe、ここでZnSe誘電体層はAg/ZnSe積層の最小の吸収が得られるようにするものである。また、ZnSe誘電体層は、特許文献2、3、4に記載されているように、Ag/ZnSe積層の光学的な性質を最適化するように適合されるものである。それゆえ、図1はAg上部電極(厚さ2nmまたは20nm)の厚さにかかわらず、発光ダイオードからの発光の空間分布は、(破線で示す)ランバート型光源と比較するとより狭く、方向性が強い。
【0005】
【特許文献1】米国公開特許第2004−051447号明細書
【特許文献2】欧州特許第1、076、368号明細書
【特許文献3】欧州特許第1、439、589号明細書
【特許文献4】欧州特許第1、443、572号明細書
【特許文献5】米国特許第6、326、224号明細書
【特許文献6】米国特許第5、949、187号明細書
【特許文献7】欧州特許第0、801、429号明細書
【特許文献8】米国公開特許第2003−034938号明細書
【特許文献9】国際特許第2005−098987号明細書
【特許文献10】米国公開特許第2004−150329号明細書
【特許文献11】米国特許第6、603、243号明細書
【非特許文献1】W.T.ウェルフォード(Welford)とR.ウインストン(Winston)による「高集束非画像光学(High Collection Nonimaging Optics)」、アカデミックプレス社(Academic Press),1989.
【0006】
特許文献5は、ダイオードに組み込まれた共振型光空洞が色の純化を達成できることを教示している。特許文献6に示されているように、いくつかの空洞(すなわちマイクロキャビティー)が存在してもよい。
【0007】
さらに、本明細書において図2として再現される上述の特許文献1の図7に示されるように、光空洞は、波長とともに発光の角度分布を変化させる。この図は、発光波長の関数として発光強度最大値の(x軸上の)角度位置を示す。発光強度最大値がダイオードに垂直に向かう(すなわち視野角=0°)波長は、空洞の垂直方向の共振波長に対応する。特許文献7、8、および9も、光学共振空洞の特性の関数として、発光強度の角度分布のこのような変化を開示している。
【0008】
図4は、赤色発光し、以下の構造を有する有機ダイオードからの発光の角度分布を示す。その構造は、基板/Al(反射性を有し、不透明の下部金属電極)/有機層(電界発光層を含む)/Ag(20nm)/ZnSe(85nm)である。この分布は、同じ電界発光層の蛍光スペクトルの3つの異なる波長、すなわち650nm(実線)、630nm(破線)、および615nm(点線)に対して与えられている。この図4から、すでに図2に示してあるが、(ここでは3つの波長だけが示されているが)発光波長の関数として発光強度の最大点の角度位置が変化するということを導出できる。図3は、電界発光層の材料に固有な発光スペクトル分布を示す。
【0009】
発光波長の関数として発光強度最大点の角度位置のこのような変化により、ダイオードの前に位置する観測者は、選択されたこのダイオードの視野角に従い異なる発光の色の陰に気付く。
【0010】
この色の純度の問題を解決するために、特許文献1は、収束レンズと、このレンズの絞りを形成する開口を備えるマスクとを具備した光抽出デバイスをダイオードに付け加えることを提案している。絞りは、このレンズの光軸上に置かれ、ダイオードからの発光光線の中の(視野角ゼロの)このダイオードの垂直方向に近い方向の光線だけを通し、「遮断角度」よりも大きな視野角で出射される光線を遮断するように配置され、レンズのほぼ焦点面に置かれる。遮断角度は絞りの開口に比例し、一般的にはレンズの焦点距離に対応するレンズと絞りの距離に反比例する。発光強度が遮断角度よりも大きな放射角度で最大となるような光線の大部分を除去することにより、上記文献において提案された抽出デバイスは、ダイオードの発光の色純度を大幅に改善する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されたダイオードの欠点の1つは、抽出デバイスの構成要素の位置決めに関する制約である。他の欠点は、これらダイオードからの発光が非常に顕著な方向依存性を有し、発光の空間分布はランバート光源よりも遥かに狭くなる。特許文献1に記載された抽出デバイスの他の欠点は、少なくとも画像ディスプレイを形成するためにダイオードをアレイ状に並べたときに、各ダイオード上にレンズを配置することが必要となり、それにより軸合わせ上の制約を取り込むこととなり、これがディスプレイを製造する上で大きな不利になることである。
【0012】
本発明の目的は、上記の欠点の1つ以上を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明の1つの対象は、下部電極と上部電極との間で、下部反射層と上部反射層との間に有機電界発光層を備え、それらの間に上記電界発光層により発光される光の波長の範囲で共振光空洞を形成し、上記電極の少なくとも1つと上記電界発光層に対してこの電極と同じ側に位置される上記反射層とが、上記発光される光に対して透明または半透明であるダイオードであって、このダイオードが透明または半透明である上記電極と上記反射層とを介し、上記電界発光層に光学的に結合する光入射部と、上記ダイオードの外側に向かい、上記入射部よりは小さい面積を有する光出射部と、上記入射部と上記出射部とにより区切られた反射性側壁とを備える少なくとも1つの光抽出器を含むダイオードである。
【0014】
上記下部反射層と上記上部反射層は一般的には平行である。半透明である上記反射層は、それゆえ、ここでは半反射的である。
【0015】
上記電極が光空洞を区切るための反射層としても働くのが好適である。例えば、電極の一方は、アルミニウムまたは銀の層のような、厚い反射性で不透明な金属層で形成される。他の電極は、例えば20nm厚の銀の層のような、反射性でかつ半透明であるために十分に薄い金属副層と、この電極の光学的な性質を最適化するように、物性と厚さの観点から、例えばZnSeで作成される透明誘電体副層とから形成される。このとき、上記電極間の距離Dcは共振空洞の高さに対応する。特許文献8が教えるように、この空洞の共振条件は式1で表される。
2π×2DC/λCN+F=2πm (式1)
ここで、mは整数であり、一般的には1に等しい。Fは、共振空洞の境界を区切る反射層のそれぞれの波長λCNの光線の反射における全位相変化を表す。上述の式1は、共振空洞を区切る反射層に垂直な方向に伝播する光線に対する共振波長λCNを与える。垂直方向から外れた伝播方向に対しては、共振波長は図2と図4に示すように減少する。
【0016】
図4において、垂直方向の共振波長はλCN=650nm(実線)である。破線(630nm)と点線(615nm)は、垂直方向の共振波長λCNから遠く離れても、ダイオードから垂直方向に発する光の強度が依然としてかなり大きいこと、それゆえに垂直方向の放射に対応するダイオードにより発せられる光の波長範囲が存在することを示す。
【0017】
上記抽出器の入射部と出射部は、一般的には平面であり、ダイオードの反射層に平行であり、それゆえに垂直方向の放射に垂直である。
【0018】
上記抽出器は、入射部よりも小さな面積を有する出射部を有しているので、この抽出器は集束器として働く。反射性側壁を有するので、この抽出器は反射による集束器として働く。抽出器から離れる光線は、反射を受けることなく直接それを通過したものか、または反対に側壁で1回以上反射を受けた後に通過したものである。
【0019】
それゆえに、この抽出器の動作は反射によるものであり、特許文献10に記載されているような屈折によるものではない。特許文献10では側壁は(本発明による反射とは異なり)屈折性のものであり、この屈折は発光を垂直方向に近い方向に偏向しようとするものである。
【0020】
上記抽出器の全ての側壁が反射性であるとは限らない。行および/または列に分布したダイオードを備えるディスプレイの場合には、各抽出器は任意の1つの行または任意の1つの列の全てのダイオードに共通である。その場合、この抽出器は2つの対向する反射性側壁を備え、この抽出器の他の2つの側壁は行または列の端に移動し、しかも必ずしも反射性ではない。上記抽出器の入射部は、このとき、複数のダイオードに光学的に結合する。この構成では、行の各ダイオードは抽出器の対向する2つの反射性側壁だけを「見る」ことになる。
【0021】
上記ダイオードはまた、いくつかの並置される抽出器を含み、これらの抽出器の入射部がダイオードの放射面の全てをカバーするようにしてもよい。このとき、放射面はいくつかの抽出器の入射部と結合するようになる。そのような場合でも、これらの抽出器もいくつかのダイオードに共通であってもよい。
【0022】
集束効果を得るためには、ダイオードの少なくとも1つの抽出器の反射性側壁はその入射部方向に向かうことが望ましい。このことは、上記反射性側壁上の任意の点での法線が抽出器の内部を介してこの入射部を切断しているか、さもなければ、この入射部に平行であることを意味している。
【0023】
少なくとも1つの抽出器の反射性側壁は、入射部を介して入射され、上記側壁により少なくとも1回は反射し、その出射部を介して抽出器から出射する任意の出射光線が、抽出器の入射部でのこの光線の放射角度よりも大きな放射角度でそこから出射するのに適した形状を有することが好適である。
【0024】
このようにして、発光強度の角度分布は広がり、有利なことには、ランバート分布に近づく。この効果は、同様の反射器を使用しながら、特許文献11(列11、パラグラフ1、および図17を参照)に記載の光システムにより提供されるものとは正反対のものであることは注目すべきである。この文献では、目的が垂直方向の視野を制限することに置かれ、視野(特に水平方向の視野)を広げることを目的とする本発明とは反対であるからである。
【0025】
反射性側壁の形状を定義することは、上記抽出器の深さ、すなわち入射部と出射部間の距離を定義することを含む。それはその端部がこれら側壁を定義する、これらの部分の形状と面積を含む。
【0026】
上記少なくとも1つの抽出器の上記反射性側壁は、遮断角度θlimと呼ばれる角度が存在するような適当な形状を有することが好適である。まず放射角度とは、上記下部反射層と上記上部反射層との垂直方向に対して測定されるものとする。そこで、遮断角度θlimとは次のようなものである。上記遮断角度θlimを超えない放射角度でその入射部を介して入射した発光光線は、その出射部を介してこの抽出器から出射する。そして、この遮断角度θlimよりも大きな放射角度で入射部を介して入射した発光光線は、その出射部を介して抽出器から出射できない。
【0027】
実際には、遮断角度よりも少し大きな放射角度を有するが、その出射部を介して抽出器から出射するような光線がいくらかは存在し、遮断角度よりわずかに小さな放射角度を有するが、その出射部を介して抽出器から出射できない光線がいくらかは存在する、という意味で遮断角度は絶対的な角度ではない。
【0028】
図4を参照すると、本発明によるダイオードの抽出器は、それゆえに、遮断角度θlimよりも大きな放射角度に対して発光強度が最大となるような波長を有する発光光線の大部分を除去することになる。この角度、およびそれによる反射性側壁の形状を適当に選択することにより、ここで提案された抽出デバイスは、ダイオードによる発光の波長を空間的に選択し、このダイオードの発光の色純度を改善し、または変化させることを可能とするものである。これは上記の特許文献1に記載のレンズと絞りに基づくデバイスと同様であるが、このレンズに基づくデバイスの、構成要素の位置決めに関する制約を回避しているという利点を有するものである。
【0029】
反射性側壁の形状を定義するステップは、抽出器の深さ、すなわち入射部と出射部との間の距離を定義するステップを含む。それは、端面がこれらの壁を区切る入射部と出射部の形状と面積を定義するステップも含む。λC-limをλCNより短い範囲で選択された遮断波長であるとして、光線が範囲[λCN、λC-lim]外の波長を有するときはいつでも、電界発光層からの発光光線の大部分を除外するのが望ましい場合は、抽出器の形状は上記遮断角度θlimがこの遮断波長λC-limに対応するように決定される。
【0030】
第1の変形例においては、少なくとも1つの抽出器の上記反射性側壁は、異なる光学的屈折率を有する2つの透明材料間の界面により形成され、これらの壁の形状とこの光学的屈折率の差は、上記発光光線が上記抽出器の内部からおよびその入射部から来て、上記壁にぶつかり、全内部反射により反射して上記壁を離れるように適応されることが好適である。これらの条件は特許文献10に記載されたものとは逆であり、この文献では、これらの光線は、反対に、界面により屈折して透過する。
【0031】
第2の変形例によれば、上記反射性側壁は、金属化されているのが好適である。このとき、上記抽出器の内部から来て上記壁にぶつかる任意の発光光線は上記壁に反射されて離れる。
【0032】
上記抽出器の上記反射性側壁は、上記下部反射層と上記上部反射層の垂直方向に向かう面に対して対称な対となることが好適である。ダイオードベースのディスプレイの任意の1行または任意の1列のダイオードの全てに共通な上記の抽出器の場合には、この抽出器は、このとき上記行または上記列に平行な面に対して対称な2つの対向する反射性側壁を備えている。入射部と出射部が長方形または正方形である場合には、一般に、第1の面に対して対称な第1の対向する側壁の対があり、第1の面に垂直な第2の面に対して対称な第2の対向する側壁の対がある。
【0033】
上記反射性側壁は上記下部反射層と上記上部反射層との垂直方向に向かう対称軸を有するのが好適である。
【0034】
上記側壁と、上記下部反射層と上記上部反射層の垂直方向に向かう面であり、上記対称面に直交する面であるこの壁の任意の断面と、または上記対称軸を通る任意の断面とが交差する2つの線のそれぞれは、直線、または軸が上記垂直方向にある放物線であるのが好適である。利点としては、上記出射部が上記入射部よりも小さな面積を有するので、このような形状が集束効果を実現することを可能とし、このような抽出器は上記で定義された遮断角度を有するので、ダイオードにより発光された光の波長の空間的選択を可能とするものである。壁が対称軸を有する場合、これらの反射性側壁は、この場合、円錐または放物面を形成する。
【0035】
上記下部反射層と上記上部反射層との垂直方向に向かう、上記対称面に垂直な、この壁の任意の断面と、または上記対称軸を通る任意の断面と上記側壁との2つの交差線のそれぞれは、
一方では、上記交差線と上記入射部とに共通の点と上記交差線と上記出射部とに共通の点を結ぶ直線と、
他方では、放物線であって、その軸が後者の共通の点と、上記のものとは対称であり、他方の交差線と上記入射部とに共通の点を結ぶ直線にほぼ平行であり、その焦点がこの他方の交差線と上記出射部の端部とに共通の点にほぼ一致するような放物線と、
により区切られた表面内にあるのが好適である。
【0036】
このように定義された放物線は、「CPC(複合放物線集束器)放物線」と呼ばれる。この表面の輪郭はここではこの表面に含まれる。
【0037】
上記側壁と断面との2つの交差線のそれぞれは、このCPC放物線とほぼ一致するのが好適である。上記断面内での、この放物線と上記抽出器の入射部の端部との共通点E、E’での、CPC型の放物線のそれぞれへの法線は上記対称面または上記対称軸に垂直であることを指摘する。
【0038】
このとき側壁はCPCを形成し、これによりダイオードからの発光の角度分布を拡大しながら、集束効率の最適化を可能とし、これは特許文献1に記載のレンズと絞りに基づくデバイスとは異なる点である。更に、このとき遮断角度はこの抽出器のいわゆる「極限光線」と垂直方向とのなす角度に対応する。この極限光線は上記断面内にあって、一方では、抽出器の入射部の端部と、この抽出器の反射性側壁とこの断面との第1の交差線とに共通の点を通り、他方では、出射部の端部と、上記対称面または上記対称軸に関する第1のものと対称である、壁とこの断面との第2の交差線との共通の点を通る光線として定義される。
【0039】
非特許文献1は、CPC型抽出器の側壁の形状及び入射部と出射部の深さおよび面積比に関して詳しく定義してある。特に、この文献の第4章、第3節を参照のこと。特許文献11は、共振空洞のない発光ダイオードディスプレイの視野角を制限するための適用例を示している。2a’を、上述したように定義された断面内におけるこのCPC型抽出器の出射部の2つの対向する端部間の距離とし、2aを、同じくこの断面内における入射部の2つの対向する端部間の距離とし、θcを遮断角度としたとき、これら3つのパラメータは式2で関係付けられる。
a=a’/sinθc (式2)
抽出器の深さL、すなわち入射部と出射部との間の距離は式3で表される。
L=(a+a’)cosθc (式3)
【0040】
このように、例えば、θlim=25℃(図4参照)であれば、a’=0.42aとL=1.42aであり、顕著な色純化効果が得られる(図3参照。遮断は約600nmで現れる。)。このように、ダイオードの発光面の幅が200μmであれば、それは光学的結合により、CPC抽出器の入射部の幅に対応し(a=100μm、それゆえa’=42μm)、そのときL=129μmとなる。
【0041】
ダイオードは、複数の抽出器を備えるのが好適である。このとき、これらの抽出器は、入射部がダイオードの出射面の全体をカバーするように並置するのが好適である。
【0042】
ダイオードの抽出器の出射部間の空間は不透明で非反射性であるものとし、すなわち「黒い格子(black matrix)」を形成するのが有利であり、これにより周囲の光の中でダイオードの発光コントラストを改善する。抽出器の集束比が高いほど、この「黒い格子」用に利用可能な面積が大きくなり、周囲光の中での発光のコントラストがよくなる。
【0043】
また、本発明の課題は、1つまたは同一の基板上に分布された本発明による複数のダイオードを備える画像ディスプレイでもある。
【0044】
それぞれのダイオードは、複数の抽出器を備えるのが好適である。このようにすることにより、それぞれの抽出器とそれぞれのダイオード間の位置合わせの制約条件を除去し、それによりこの抽出器の深さを低減することができる。
【0045】
これら抽出器は、ディスプレイ全体をカバーする透明材料の同一の層内に形成されるのが好適である。この層は「抽出層」と呼ばれる。
【0046】
第1の変形例によれば、この抽出層は電界発光層に関して基板とは反対側に置かれて、電界発光層を劣化の危険性から保護するための封入層としても働く。
【0047】
第2の変形例によれば、この抽出層は基板として働く。
【0048】
ディスプレイのダイオードは行と列に分布され、抽出器のそれぞれは任意の1列のいくつかのダイオードに共通であることが好適である。
【0049】
抽出器のそれぞれは、任意の1列のダイオードの全てに共通であることが好適である。
【0050】
画像ディスプレイに適合するように上記列が垂直に配置される時は、任意の1列のいくつかのダイオードに共通なそれぞれの抽出器の上記反射性側壁は、上記垂直方向に向かい上記列に平行な面に対して対称な対であることが好適である。
【0051】
このように、これらの反射性側壁が、この抽出器の入射部を介して入射され上記側壁で少なくとも1回反射して離れた発光光線が出射部を介してこの抽出器から、抽出器の入射部での光線の放射角度よりも大きな放射角度で出射するように適当な形状を有するときは、有利なことに、ディスプレイの水平方向の発光分布は広がり、すなわちディスプレイの水平方向の視野角が広がる。
【0052】
本発明は、非限定的な例示の方法で与える以下の記述を、添付の図面を参照しながら読むことによりさらに鮮明に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
記述を単純にし、本発明が従来技術を越えて提供する差異と利点を明確にするために、同じ機能を備える構成要素には同一の参照番号が使用される。
【0054】
ここで、本発明の一実施形態が、行と列に分配され、1つおよび同一の基板1上に配置された複数のダイオード2を備える画像ディスプレイの場合の図5〜図8を参照して記載される。図6を参照すると、ダイオード2のそれぞれは、反射層を形成する厚い金属製の下部電極21と、有機電界発光層22と、これも半反射層を形成する半透明上部電極23とを備えている。有機電界発光層22は、従来様式では、第1の種類のキャリアの注入と輸送のための副層222と、第2の種類のキャリアを遮断するための副層223と、実際の電界発光の部分である副層221と、上記第1の種類のキャリアを遮断するための副層224と、上記第2の種類のキャリアを注入して輸送するための副層225とを備えている。上記のキャリアの種類は電子および正孔に対応するものである。上部電極23は、例えば、銀で作成されるような薄い金属の副層と、これらの副層の積層に必要な光学的特性を与えるために適当な、厚い誘電体副層とを備える。
【0055】
2つの電極21と23との間の空間は、共振光空洞を形成する。これら2つの電極21と23との間の距離Dcは、この空洞の高さに相当するが、上記で説明されたように、これらの電極の垂直方向に層22により発光された波長λCNの光線が共振するために適している。式4が成り立つことが好適である。
2π×2Dc/λCN+F=2π (式4)
ここで、Fは電極21、23のそれぞれで波長λCNの光線が反射する際の位相変化の合計である。
【0056】
図5を参照すると、上部電極23を介して発光するダイオード2の発光面は抽出/封止層3で被覆される。この層3は、透明ベース30と、このベースを被覆する抽出器31のアレイとを備える。図7を参照すると、抽出器31のそれぞれは正方形である入射部311と、これも正方形である、入射部よりは小さな面積を有する出射部313とを有する。抽出器31のそれぞれは、ここでは平面であり、その輪郭はそれゆえに台形である反射性側壁312も含む。図8を参照すると、抽出器31のそれぞれは、従って、正方形の錐台を形成し、それゆえに、垂直方向に向かう2つの垂直な対称面を有する。図5を参照すると、それぞれのダイオードの発光面は、透明ベース30を介しいくつかの抽出器31の入射部に光学的に結合する。各入射部311の面積は、各ダイオードの発光面の面積よりもかなり小さく、少なくとも10分の1であるのが好適である。図7を参照すると、層3のベース30の厚さは例えば100μmであり、各抽出器の高さは例えば16μmであり、入射部311上の1辺は例えば25μmであり、その出射部313上の1辺は例えば12μmである。
【0057】
層3の全体は、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)のような熱形成剤である高分子材料に圧縮モールドにより形成される。この層3は、ダイオード2の上部電極23を層3のベース30に光学的に結合させるために適当な接着剤を使用して、ダイオードをサポートする基板に接着される。抽出器31の入射部311がダイオードの発光面の面積よりもかなり小さい面積を有するので、組み立ては位置合わせの制約なく可能となるという利点がある。
【0058】
実現されるものは、視野角が抽出器の形状により水平面内にも垂直面内にも広がるディスプレイである。
【0059】
図9は、このディスプレイの別の実施形態を示す。各抽出器31’は、任意の1列の複数のダイオードに共通であり、垂直方向に向かいこの列に平行な唯一の対称面を有する。上記の図7に示した構成要素は、この対称面に垂直でまた、垂直方向に向いた任意の断面内に在る。実現できるものは、視野角が抽出器の形状により、この場合は、水平面内にのみ広がるディスプレイであることが利点である。
【0060】
図10と図11に示す好適な代替実施形態では、抽出器の反射性側壁はCPC型である。この場合より正確には、各抽出器31の側壁312’と抽出器の任意の対称面に垂直な断面との交差線は、CPC型の放物線を形成する。対称軸を有する抽出器の場合には、この断面は、このときこの軸を通る。図14は、CPC型の放物線に対する光線の軌跡の特性を詳細に示す。点EとE’は抽出器の入射部の端部を表し、点FとF’は出射部の端部を表し、線F’E’に沿う放物線は点Fを焦点として有し、F’Eに平行で点Fを通る直線を軸として有し、線FEに沿う放物線は点F’を焦点として有し、FE’に平行でF’を通る直線を軸として有する。
【0061】
このようなCPC放物線の1つの特性は、断面内で、入射部との交差線にある各放物線の点、ここでは点EとE’での接線は垂直方向に平行であり、それゆえにここでは入射部と出射部の面に垂直である。
【0062】
抽出器のCPC放物線というこの断面形状の利点は、遮断角度θlim以下の放射角度でダイオードにより発光される光線の集束を最適化することである。この遮断角度は、それゆえこの抽出器のいわゆる「極限光線」、ここではそれぞれ第1と第2のCPC放物線に対するFE’とF’E、とダイオードの面の垂直方向との間の角度に対応する。
【0063】
本発明によるディスプレイの抽出器がCPC型形状であるので、有利なことには、抽出器の断面内で、遮断角度θlimを超えない放射角度を有するダイオードからの発光光線は、図10と14に示すように、これら抽出器の出口でより広い立体角に亘って再分配されることである。放射立体角の拡がりは、明確に抽出器の側壁とこの面との交差がCPC型の放物線を形成する断面内で起こる。このように、いくつかの対称面または対称軸でも有するCPC抽出器を使用すると、それゆえ図8に示したものと同様の抽出層を有する抽出器を使用すると、ディスプレイのダイオードの放射立体角は全ての方向に拡がり、当然、視野立体角も広がる。反対に、単一の対称面だけを有し、それゆえに図9に示したものと同様の抽出層を有するCPC抽出器を使用すると、ディスプレイのダイオードの放射立体角は、主にこの対称面に垂直な面内で広がり、当然その視野立体角も広がる。
【0064】
本発明によるディスプレイの抽出器のこのCPC型の形状であることによる利点として、抽出器の断面において遮断角度θlimにより制限された立体角の外側へのダイオードからの発光光線は、反射によりダイオードへ送り返され、それゆえ抽出器の出口での発光立体角から除かれる。
【0065】
λCNをダイオードの電界発光層により垂直方向へ発光される光線の共振波長であるとし(この場合、2π×2DC/λCN+F=2πが成立する。上記参照)、少なくとも、電極21、23のそれぞれの全位相変化Fが実質的に波長に依存しなければ、遮断角度に等しい放射角度θlimで発光強度が最大となる光線の波長λC-limは式5で与えられる。
λC-lim=λCNcosθlim (式5)
【0066】
このように、λC-limをλCNより短い遮断波長であるとして、これらの光線が範囲[λCN、λC-lim]から外れた波長を有するときはいつでも、電界発光層22からの発光光線の大部分を除外するのが望ましいときは、遮断角度θlimがこの遮断波長λC-limに対応するように、より詳しくは式5が成り立つように、抽出器の形状が決定される。それゆえに、抽出器はまた、光空洞と組み合わせて、色に対する空間的フィルタ機能を有し、ダイオードから発光される色の純度の改善または調節を可能とするものであることがわかる。
【0067】
それゆえに、CPC形状を有する抽出器はディスプレイの視野角を広くして、それにより光空洞に固有の欠点を修正し、また発光の色純度を改善するものであることがわかる。
【0068】
図12に示されたような他の変形例によれば、抽出器の反射性側壁は、図13に示された平面形状312'''、と、上記し、図10、11および14に示されたCPC型の中間の形状を有する。この場合、より詳しくは、抽出器の任意の対称面(または対称軸を通る任意の面)に垂直な断面と各抽出器31の側壁312”との交差線は、直線EFと、点EとFを通るCPC放物線とで区切られた表面内で、直線E’F’と、点E’とF’を通るCPC放物線とで区切られた面内に存在する。この境界、つまり直線と放物線―はこれらの表面内に存在する。このような「中間」の形状の利点は、CPC形状よりも製造が簡単であり、尚、視野角を広げ、空間的に色をフィルタリングする観点から十分に許容できる性能のレベルを提供することである。
【0069】
本発明は、画像を表示するための有機発光ダイオードディスプレイを参照して記述してきたが、以下に記載の請求項の技術範囲から逸脱することなしに、本発明は無機の発光ダイオードディスプレイ、ダイオードベースの照明パネル、または個別の有機または無機のダイオードに適用可能であることが当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】視野角の関数として、従来技術の2つのダイオードの発光強度の分布を示す図である。
【図2】特許文献1の図7に対応するものであり、観測角度(視野角)の関数として、垂直方向で約550nmで共振する共振光空洞を備える従来技術のダイオードの発光強度が最大の波長を示す図である。
【図3】赤色で発光する従来技術の有機材料に固有の電界発光スペクトルを示す図である。
【図4】図3の材料で作成された電界発光層と、垂直方向で650nmの波長で共振する光空洞を含む従来技術のダイオードの発光強度の分布を3つの異なる波長に対して視野角の関数として示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態によるダイオードベースのディスプレイの断面図である。
【図6】図5のディスプレイの1つのダイオードの詳細断面図である。
【図7】図5のディスプレイの抽出器の詳細断面図である。
【図8】図5のディスプレイの変形例であり、抽出器が正方形の断面を有する錐形であるものを示す図である。
【図9】図5のディスプレイの変形例であり、抽出器がダイオードの列で共通であるものを示す図である。
【図10】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、CPC型を示す図である。
【図11】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、CPC型を示す図である。
【図12】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、1部切り詰めたCPC型を示す図である。
【図13】本発明によるダイオードの抽出器の側壁と垂直方向断面との交差の形の変形例であり、CPC型内に在る台形を示す図である。
【図14】図10と図11に示す変形例による抽出器の入射部と出射部の間でのCPC型放物線に対する光線の軌跡を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極(21)と上部電極(23)との間で、下部反射層と上部反射層との間に挿入された有機電界発光層(22)を備え、それらの間に前記電界発光層(22)により発光される光の波長の範囲で共振光空洞を形成し、前記電極の少なくとも1つ(23)と前記電界発光層に対してこの電極と同じ側に位置される前記反射層とが、前記発光される光に対して透明または半透明であるダイオード(2)であって、
透明または半透明である前記電極(23)と前記反射層とを介し、前記電界発光層(22)に光学的に結合する光入射部(311)と、
前記ダイオードの外側に向かい、前記入射部よりは小さい面積を有する光出射部(313)と、
前記入射部(311)と前記出射部(313)とにより区切られた反射性側壁(312)と
を備える少なくとも1つの光抽出器(31)を含むことを特徴とするダイオード(2)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの抽出器(31)の前記反射性側壁(312)は、その入射部(311)を介して入射し、前記側壁(312)により少なくとも1回は反射され、その出射部(313)を介して前記抽出器から出射する任意の発光光線が、この光線の抽出器の入り口での放射角度よりも大きな放射角度で出射するのに適した形状を有することを特徴とする請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
前記少なくとも1つの抽出器(31)の前記反射性側壁(312)は、遮断角度θlimと呼ばれる角度が存在するのに適した形状を有することを特徴とし、
前記遮断角度θlimは、前記放射角度が前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に対して測定される角度であるとして、前記遮断角度θlimを超えない放射角度でその入射部(311)を介して入射した前記発光光線がその出射部(313)を介してこの抽出器から出射し、前記遮断角度θlimを超えた放射角度でその入射部(311)を介して入射した前記発光光線がその出射部(313)を介してこの抽出器から出射しないという条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のダイオード。
【請求項4】
前記少なくとも1つの抽出器(31)の前記反射性側壁(312)は、異なる光学的屈折率を有する2つの透明材料間の界面により形成されることを特徴とし、
これらの壁の形状とこれらの光学的屈折率の差は、前記発光光線が前記抽出器(31)の内部からおよびその入射部(311)から来て、前記壁にぶつかり、全内部反射により反射して前記壁(312)を離れるように適応されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項5】
前記反射性側壁は、金属化されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項6】
前記抽出器の前記反射性側壁は、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう面に対して対称な対となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項7】
前記反射性側壁は、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう対称軸を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項8】
前記側壁(312)と、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう面であり、前記対称面に直交する面であるこの壁の断面と、または前記対称軸を通る任意の断面とが交差する2つの線のそれぞれは、直線、または軸が前記垂直方向である放物線を形成することを特徴とする請求項6または7に記載のダイオード。
【請求項9】
前記側壁(312)と、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう面であり、前記対称面に直交する面であるこの壁の任意の断面と、または前記対称軸を通る任意の断面とが交差する2つの線のそれぞれは、
一方では、前記交差線および前記入射部(311)に共通の点(E’;E)と前記交差線および前記出射部(313)に共通の点(F’;F)とを結ぶ直線により、
他方では、放物線であって、その軸が後者の共通点(F’;F)と、前記のものとは対称であり、他方の交差線と前記入射部(311)とに共通な点(E;E’)を結ぶ直線にほぼ平行であり、その焦点がこの他方の交差線と前記出射部(313)の端部とに共通な点(F;F’)とほぼ一致するような放物線により
区切られた表面内にあることを特徴とする請求項6または7に記載のダイオード。
【請求項10】
前記抽出器(31)を複数含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項11】
前記ダイオードが同一の基板(1)上に分布していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のダイオード(2)を複数備える画像ディスプレイ。
【請求項12】
前記ダイオード(2)が行および列状に配列され、抽出器(31’)のそれぞれが任意の1つの列のいくつかのダイオードに共通であることを特徴とする請求項11に記載の画像ディスプレイ。
【請求項13】
前記画像ディスプレイに適合するように前記列が垂直方向に配列された時に、任意の1列のいくつかのダイオードに共通な抽出器(31’)のそれぞれの前記反射性側壁(312)は、前記垂直方向に向かい、前記列に平行である面に関して対称な対であることを特徴とする請求項12に記載の画像ディスプレイ。
【請求項1】
下部電極(21)と上部電極(23)との間で、下部反射層と上部反射層との間に挿入された有機電界発光層(22)を備え、それらの間に前記電界発光層(22)により発光される光の波長の範囲で共振光空洞を形成し、前記電極の少なくとも1つ(23)と前記電界発光層に対してこの電極と同じ側に位置される前記反射層とが、前記発光される光に対して透明または半透明であるダイオード(2)であって、
透明または半透明である前記電極(23)と前記反射層とを介し、前記電界発光層(22)に光学的に結合する光入射部(311)と、
前記ダイオードの外側に向かい、前記入射部よりは小さい面積を有する光出射部(313)と、
前記入射部(311)と前記出射部(313)とにより区切られた反射性側壁(312)と
を備える少なくとも1つの光抽出器(31)を含むことを特徴とするダイオード(2)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの抽出器(31)の前記反射性側壁(312)は、その入射部(311)を介して入射し、前記側壁(312)により少なくとも1回は反射され、その出射部(313)を介して前記抽出器から出射する任意の発光光線が、この光線の抽出器の入り口での放射角度よりも大きな放射角度で出射するのに適した形状を有することを特徴とする請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
前記少なくとも1つの抽出器(31)の前記反射性側壁(312)は、遮断角度θlimと呼ばれる角度が存在するのに適した形状を有することを特徴とし、
前記遮断角度θlimは、前記放射角度が前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に対して測定される角度であるとして、前記遮断角度θlimを超えない放射角度でその入射部(311)を介して入射した前記発光光線がその出射部(313)を介してこの抽出器から出射し、前記遮断角度θlimを超えた放射角度でその入射部(311)を介して入射した前記発光光線がその出射部(313)を介してこの抽出器から出射しないという条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のダイオード。
【請求項4】
前記少なくとも1つの抽出器(31)の前記反射性側壁(312)は、異なる光学的屈折率を有する2つの透明材料間の界面により形成されることを特徴とし、
これらの壁の形状とこれらの光学的屈折率の差は、前記発光光線が前記抽出器(31)の内部からおよびその入射部(311)から来て、前記壁にぶつかり、全内部反射により反射して前記壁(312)を離れるように適応されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項5】
前記反射性側壁は、金属化されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項6】
前記抽出器の前記反射性側壁は、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう面に対して対称な対となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項7】
前記反射性側壁は、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう対称軸を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項8】
前記側壁(312)と、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう面であり、前記対称面に直交する面であるこの壁の断面と、または前記対称軸を通る任意の断面とが交差する2つの線のそれぞれは、直線、または軸が前記垂直方向である放物線を形成することを特徴とする請求項6または7に記載のダイオード。
【請求項9】
前記側壁(312)と、前記下部反射層と前記上部反射層の垂直方向に向かう面であり、前記対称面に直交する面であるこの壁の任意の断面と、または前記対称軸を通る任意の断面とが交差する2つの線のそれぞれは、
一方では、前記交差線および前記入射部(311)に共通の点(E’;E)と前記交差線および前記出射部(313)に共通の点(F’;F)とを結ぶ直線により、
他方では、放物線であって、その軸が後者の共通点(F’;F)と、前記のものとは対称であり、他方の交差線と前記入射部(311)とに共通な点(E;E’)を結ぶ直線にほぼ平行であり、その焦点がこの他方の交差線と前記出射部(313)の端部とに共通な点(F;F’)とほぼ一致するような放物線により
区切られた表面内にあることを特徴とする請求項6または7に記載のダイオード。
【請求項10】
前記抽出器(31)を複数含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のダイオード。
【請求項11】
前記ダイオードが同一の基板(1)上に分布していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のダイオード(2)を複数備える画像ディスプレイ。
【請求項12】
前記ダイオード(2)が行および列状に配列され、抽出器(31’)のそれぞれが任意の1つの列のいくつかのダイオードに共通であることを特徴とする請求項11に記載の画像ディスプレイ。
【請求項13】
前記画像ディスプレイに適合するように前記列が垂直方向に配列された時に、任意の1列のいくつかのダイオードに共通な抽出器(31’)のそれぞれの前記反射性側壁(312)は、前記垂直方向に向かい、前記列に平行である面に関して対称な対であることを特徴とする請求項12に記載の画像ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−515347(P2009−515347A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539400(P2008−539400)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067978
【国際公開番号】WO2007/051799
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067978
【国際公開番号】WO2007/051799
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】
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