説明

空間分解された化学元素の定量的な局所分析及び分布分析並びに照射された表面領域のその場観察を実施するための方法及び装置

【課題】
既存のレーザー顕微解剖装置(LMD)での使用に適したレーザー照射チャンバーが、LMDと組み合わせて試料の元素濃度の定量的に場所分解されたナノ局所分析及び分布分析と同じ試料のナノメートルの範囲内の表面のトポグラフィーの顕微鏡による検出との双方を可能にする。オプション的には、試料が当該試料を有するスライドガラスから除去される必要なしに、その他の検査が続く。当該検査のため、試料の分析すべき領域が、LMDの顕微鏡によって検査される。
【解決手段】
この場合、当該試料は、カバーガラス(スライドガラス)の下面に存在する。同時に、このカバーガラスは、スライドガラスの下で且つLMDの内部に取り付けられたレーザー照射チャンバーの一部である。当該試料の一部が照射されて分析される。オプション的には、組織の、金属が検出された特定の領域が、既存のLMD装置によってその他の分析のために適切に切除され、レーザー照射後にスライドガラスの下に取り付けられる試料容器内に収集される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々の細胞又は細胞内小器官の基体、特に薄い組織片中の元素濃度を定量測定するために局所分析及び分布分析(「イメージング」又は「マッピング」)を実施するための方法に関し、並びにマイクロメートルの範囲からナノメートルの範囲までの側面分解能での化学分析の前後に試料表面のその場観察(トポグラフィー)を実施するための方法に関する。さらに、本発明は、当該方法を実施するために適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査すべき試料物質を直接照射するための、元素の質量分析法では、元素の側面分布をμmの範囲内の場所分解能で定量測定し且つng/g及びサブng/gの濃度範囲内までの微量元素を測定するための分析方法として、例えば焦点合わせしたレーザービームを使用する様々な方法が使用される。例えば、レーザー照射法−誘導結合プラズマ質量分析法(laser ablation inductively coupled plasma mass spectrometry - LA-ICP-MS)が公知である。当該方法は、固体の試料物質の微量分析、同位体分析、表面分析及び超局所分析のために使用される。しかしながら、例えば個々の細胞又は細胞内小器官に対する分析のときに要求されるように、高い側面分解能で、特に5μm未満のマイクロスケール及びナノスケールより下で薄い組織片内の元素分布及び元素濃度(マッピング又はイメージング分析)を測定することはできない点が、この方法の欠点である。
【0003】
例えば、紫外線帯域内の波長(λ−266nm又は213nm)を有するNd:YAGレーザーのようなレーザーが、当該分析で次第に多く使用されている。このレーザーは、多くの場合は試料採取のために高感度のICP質量分析装置と組み合わせて使用される。現時点では、数μm〜数百μmのレーザースポット径を有するNd:YAGレーザーシステムが、超局所分析のために商業的に使用可能である(例えば、LSX 231,500 CETAC Technologies, Ohama, USA又はUP 213,266 New WAVE Research, Fremont, USA)。μmの範囲より下の側面分解能の場合、通常は、生体マトリックスが、このような商業的なレーザー照射システムによって高い効率で直接照射され得ないことが欠点であると認識されている。この場合、制限要因は、当該レーザーが理論通りに下回ることのできない回折限界である。このことは、可能な最小分解能限界が当該レーザーの波長の範囲内にあることを意味する。それ故に、1μmより下の場所分解能は、理論的に全く不可能である。
【0004】
しかしながら、医療の分子生物学の多くの課題のためには、例えば(脳部分内のような)生物試料内の金属の分布分析のためには、使用すべき分析方法の側面分解能が、マイクロメートルの下の範囲内で要求されるか又は数百nmからnmの範囲内まで要求される。このような場所分解能は、個々の細胞内小器官に対する直接のナノ分析を実施可能にする。さらに、健康な組織片と比較した病気の組織片の金属分布の定量情報が、多くの課題に対して必要である。
【0005】
(レーザー顕微解剖装置−LMDを用いる)商業的な器具では、焦点合わせされた赤外線及び紫外線のレーザービームが、正確に特定された領域を組織から切除するために使用される。最少量の特殊な組織の分子遺伝学的検査を適切に可能にする当該レーザー顕微解剖装置(LMD)は、生きている単一細胞の選択された領域に対する隔離された検査も可能にする。マイクロメートルより下の範囲内又は部分的にサブマイクロメートルの範囲内の場所分解能を有する高性能のこのようなLMDシステムは今日では、医学(病理学)、分子生物学及び細胞生物学におけるルーチンワーク及び研究課題のために、例えば周辺の健康な対照細胞と比較した単一癌細胞のバイオプシーの場合のように、単一細胞若しくは細胞領域又は小さい組織片を分離して分析するために使用されるか又はDNA鎖も分離して分析するために使用される。現存する商業的なシステムは、試料表面の顕微鏡観察の優れた可能性を有し、非常に焦点合わせされたレーザービームによって組織片を非常に正確に切除する。このレーザービームは、特殊なレーザー光学系の使用の下でサブマイクロメートルまでの(0.5μmまでの)高い場所分解能を実現する。この場合、−ここでは、試料物質の照射が、試料テーブルの規定された移動によって制御される−当該レーザー照射システムとは違って、レーザービームが、約0.07μmの精度を有する高品質の光学系によって試料上を既定通りに移動する。引き続き、切除される組織試料が、大抵は一般的な細胞溶解(cell lysis)後に生物分子の質量分析的にオフラインでさらに分析される。しかしながら、LMDによるオンラインでの元素の定量分析は、規則的には不可能である。このようなLMDシステムは、商業的に入手可能なレーザー照射システムと比べて 多くの顕著な利点、例えば或る程度の改良された場所分解能又は著しく改良された顕微鏡の分解能を有し、又は特殊な免疫染色技術(免疫染色)及び非常に特殊なソフトウェアパケットに関連して特殊な細胞(例えば、着色された組織片中の癌細胞)を確認することも有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、一方ではナノメートルの範囲内の定性局所分析及び定性分布分析を可能にし、同時に様々な試料物質中の元素濃度の定量測定を可能にし、他方では分析前後の検査された試料表面をリアルタイムで簡単に表示して観察することができる、簡単な方法を提供することにある。
【0007】
本発明のその他の課題は、この方法を実施するために適した装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこの課題は、請求項7に記載の全ての特徴を有する方法及び請求項1に記載の全ての特徴を有する装置によって解決される。この方法及びこの装置の好適な構成は、請求項1及び7を引用する従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明の対象
本発明は、ナノメートルの範囲内の様々な試料物質における定性局所分析及び定性分布分析並びに元素濃度の定量測定を可能にし、さらに分析前後の検査すべき試料の局所表面を観察する可能性を有する、簡単な方法を実施可能である。
【0010】
試料表面上に限定して供給される焦点合わせされたレーザービームによって、前もって観察されて特定された試料の部分を切除する可能性と組み合わせた非常に発展し且つ高分解能の光学系を既に有するレーザー顕微解剖装置(LMD)が公知である。本発明の範囲内では、通常のレーザー顕微解剖装置で今日まで使用された、嵌め込まれるスライドガラスを有する被検査物体載置台が好適に変更され得る結果、これによって、選択された試料領域内の元素分布の定量測定と一緒に、レーザー照射もその場で実施され得ることが実証されている。
【0011】
したがって、本発明は、試料表面の高分解能の顕微鏡観察と組み合わせた、ラインスキャンモード中に検査された分析領域の、特定のレーザー照射による生物試料の薄い組織片の正確な切除に関するLMDの利点を、レーザー照射ICP−MSの、元素の定量質量分析技術の利点に結合させる。例えば脳の研究において神経変性疾患、癌組織の成長若しくは老化過程の観察時に必要であるように又は任意の生物試料物質の生きている単一細胞若しくは細胞内小器官中の金属分布の観察時に必要であるように、本発明は、金属含有量及び非金属含有量に関する分析試料の化学組成を測定するための実用的な定量化技術を有益に可能にする。
【0012】
本発明の方法の場合、第1ステップでは、レーザー照射チャンバー内に存在する検査すべき試料が、顕微鏡によって検査され、或る領域が、照射と微量元素の質量分析とのために選出される。このため、好ましくは、レーザー顕微解剖装置(LMD)の高分解能光学系が使用され得る。第2ステップでは、当該選出された領域が、レーザー誘導照射され、化学元素が、LMD内に同様に既に存在するレーザーによって分布分析される。当該分布分析はオプション的には、化学元素を定量化するための特定の元素濃度を有する選択された少なくとも1つの標準と一緒に、特に複数の標準試料と一緒に実施される。次いで第3ステップでは、結果に応じて、対応する類似の領域が、特にレーザー顕微解剖装置(LMD)によってさらなる検査のために試料から切除され、切除された組織の一般的な細胞溶解後に生物分子質量分析法によって金属結合蛋白質又は燐蛋白質の構造の解明に関して分析され得る。
【0013】
当該本発明の方法の利点は、特に上述した3つのステップが商業的な設備によって実施され得て且つ試料及び場合によっては適切な標準が定量化のためにスライドガラス上に常に保持され得る点にある。この設備の場合、レーザ照射チャンバーを有する新規の被検査物体載置台を構成するだけで済む。
【0014】
この方法は、固有のレーザー照射チャンバーによって可能になる。このレーザー照射チャンバーの場合、レーザー光に対して透過性のカバーガラスが、スライドガラスによって形成される。このスライドガラスは、同時にレーザー顕微解剖装置用に使用され得る。試料と分析に必要な標準試料(脳の研究では、生体マトリックスに合わせられた人工の実験室用の標準試料が多くの場合に使用される)との双方が、交換可能なこのスライドガラスに固定され得る。この場合、試料及び標準試料が、スライドガラスの下面に存在するように、試料及び標準試料を有するスライドガラスが、検査のためにレーザー顕微解剖装置内に格納される。その前に、当該スライドガラスが、レーザー照射チャンバーの下部を形成する容器と一緒にレーザー照射チャンバーを密閉する。その結果、試料及び標準試料が、このレーザー照射チャンバーの内部に存在する。さらに、こうして形成されたレーザー照射チャンバーは、照射された物質のキャリアガス(例えば、アルゴン)用の流入管及び流出管を有する。この場合、この流出管は、分析装置、特に誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)に直接連結され得る。好ましくは、通常のスライドガラス又はカバーガラス支持体内に挿入されたスライドガラスの代わりに、完全なレーザー照射チャンバーが、被検査物体載置台として既存のレーザー顕微解剖装置内に格納され得るように、当該レーザー照射チャンバーの寸法が選択されている。
【0015】
検査すべき試料が、最初にLMD装置の顕微鏡の既存の高分解能光学系(約150倍の倍率)によって検査され得る。(20μmより下のスポット径を有する)対応するパワー密度を有する同様に既存のレーザーが、照射のために試料に向かって焦点合わせされる。その結果、当該生物試料が完全に照射される。
【0016】
当該試料物質の照射と協働して、同じ条件化で、スライドガラス上に存在する標準試料も照射される。こうして照射された当該試料物質及び標準物質は、好ましくはキャリアガスによって、例えばアルゴンの流れによって高感度で且つ選択式の誘導結合プラズマ質量分析装置の融合結合プラズマ中に搬送されてイオン化される。引き続き、イオンが、この誘導結合プラズマ質量分析装置の分離システム内で公知の方式で分離されて検出される。元素の組成が、極微量の範囲まで測定され、当該検査された試料物質が分布分析される。例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分析も、代わりの分析装置として考慮され得る。
【0017】
検査された試料中の金属及び非金属の分布分析の結果が得られた後に、引き続き本発明の方法によって、金属又は燐(例えば、血小板)が検出された組織の特定の類似の領域を、金属蛋白質及び/又は燐蛋白質のさらなる分析のために切除することも可能である。このため、選択された領域が、焦点合わせされたレーザービームによって照射され(切除され)、当該照射(切除)に適した試料容器内に収集される。これらの試料容器は、当該レーザー照射検査後にスライドガラスの下に取り付けられる。
【0018】
当該方法を実施するために適した本発明のレーザー照射チャンバーは、モジュール構造を有する。LA−ICP−MS分析中の混入を阻止するため、当該レーザー照射チャンバーは、カバーガラスとこのカバーガラスの支持体と特にテフロン製の文字通り扁平なレーザー照射チャンバーとから構成される。当該カバーガラス支持体及びその他のレーザー照射チャンバーは、手段によって気密に互いに結合されている。このような適した手段は、例えば挟持部材又はねじ留め部材でもよい。この場合、場合によっては、追加のパッキングが、レーザー照射チャンバーの側壁とカバーガラスとの間に配置されている。カバーガラスは、特に一般的に既存のスライドガラスでもよい。このスライドガラスは、LMD装置のレーザー光の波長に対して透過性である。検査のため、試料及び場合によっては標準試料が、当該試料及び当該標準試料の下面を下にして支持され得る。
【0019】
レーザー照射チャンバーを組み立てるため、例えば最初に、検査すべき試料及び標準試料を有するカバーガラス(スライドガラス)が、当該試料及び当該標準試料の下面を下にして、特殊な顕微鏡テーブルに適合したカバーガラス支持体内に挿入され得る。引き続き、このカバーガラス支持体は、容器と気密に結合される。その結果、空気が、レーザー照射チャンバー内に流入せず、キャリアガスArが、このレーザー照射チャンバーから周囲に流出しない。当該照射された物質が、キャリアガスArによってICP−MSの誘導結合プラズマ中に適切に搬送される。
【0020】
しかし、この代わりに、スライドガラスの下面に試料及び標準試料を有するこのスライドガラスが、場合によってはパッキングを介して容器上に最初に配置され、この容器上に配置されたカバーガラス支持体によってこの容器と気密に結合されてもよい。引き続き、レーザー照射チャンバーの全体が、レーザー顕微解剖装置内に格納される。当該スライドガラス用に開発された、LA−ICP−MSのこの特殊なレーザー照射チャンバーは、元素の質量分析前に既存の移動ユニットによって前方から水平にLMD装置内に挿入される。
【0021】
したがって、レーザー照射チャンバーの全体が、レーザー顕微解剖装置と結合され、LMDの被検査物体載置台用の既存の位置決め装置によって対物レンズの下で位置決めされ得る。
【0022】
したがって、既存のレーザー顕微解剖装置(LMD)での使用に適した本発明のレーザー照射チャンバーによって、試料が、当該試料を有するスライドガラスから除去される必要なしに、又は、スライドガラスが、幾つかの検査装置内に挿入される必要なしに、顕微鏡による検査が、LA−ICP−MSのオンライン検査と簡単に組み合わせられ得て、オプション的にはさらに別の検査とも簡単に組み合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1a】本発明のレーザー照射チャンバーを上から見た図である。
【図1b】本発明のレーザー照射チャンバーを横から見た図である。
【図2】本発明のレーザー照射チャンバー(10)を既存のレーザー顕微解剖装置と好適に組み合わせたものが明示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の構成を限定することなしに、本発明の構成を2つの図に基づいて詳しく説明する。
【0025】
a)チャンバーを上から見た図とb)チャンバーを横から見た図を有する図1は、本発明のレーザー照射チャンバーの詳しい配置を示す。このレーザー照射チャンバーは、特別に適合された支持体によってスライドガラスと一緒に従来のレーザー顕微解剖装置(LMD)内に挿入され得る。
【0026】
本発明の照射チャンバーは、LA−ICP−MSを用いて例えば組織片又は個々の細胞のような生物試料の微小領域を直接分析するために適している。
【0027】
好ましくは、通常のスライドガラスフレームの代わりに、(試料及び標準物質をスライドガラスの下面で支持する)スライドガラスを有する既に取り付けられたレーザー照射チャンバーが、存在するLMD装置内に前方から入れられる。しかし、当該スライドガラスは、LMDの特別に開発したテーブル上に固定されてもよい。この場合、スライドガラスの支持体が、既にこのテーブルの一部であり得る。このテーブルは、ここではスライドガラス用の凹部だけを有する。このスライドガラスは、レーザー照射チャンバーの下面としての容器にパッキングを介して気密されるように(例えば、ねじ留めすることによって又は挟持することによって)下から接合されている。試料及び標準試料が、スライドガラスの下面、すなわちレーザー照射チャンバーの内部に常に存在する。
【0028】
最も簡単で且つ最も有効なバリエーションは、検査すべき分析領域がレーザービームの焦点内に移動されるように、レーザー照射チャンバーをLMDの外部に構成し、分析(顕微鏡検査及び元素分析)のために前方からLMD装置内に挿入することである。レーザー照射チャンバーの当該挿入のため、精密な挿入ユニットが、LMD内に既に存在する。第1ステップでは、試料の表面が、当該配置を使用して顕微鏡の照明モードで観察され、分析領域が選択される。第2ステップでは、この分析領域が、好ましくは同じ当該配置によって画定されて照射され、その金属分布及びその非金属分布に関して質量分析される。したがって、外部のレーザー照明チャンバー内への搬送による試料の移動又は追加調整が不要である。
【0029】
別のバリエーションでは、引き続き、試料が完全に照射されるか又はさらなる検査のために切除される。このため、試料及び場合によっては標準試料を有するスライドガラスが、本発明のレーザー照射チャンバーから除去され、LMDの既存の試料テーブルの下に存在する試料容器を有するこの既存の試料テーブル内に組み込まれ、このLMD内に挿入される。こうして、この試料の適切に特定された領域を、焦点合わせされたレーザービームによってこのLMD内で切除し、このLMDの下に存在する試料容器内に集めることができる。したがって、一方では試料中に存在する蛋白質の組織及び配列を特定することができ、他方ではICP−MSを有するLA−ICP−MSの分析結果の有効性を、類似の試料領域の情報にしたがって確認することができる。後者の技術は、検査した試料物質又は標準物質中の例えば金属濃度及び燐濃度の平均濃度に関して情報提供可能にする。
【0030】
したがって、原理的には、2つの異なる方法工程が考えられる。以下で、これらの方法工程を短く説明する。
【0031】
1a)試料が、場合によっては標準試料と一緒にLMD内のスライドガラス上に存在する。検査すべき領域が選択される。
【0032】
b)スライドガラスが、LMD内に保持され、容器(レーザー照射チャンバーの下部)と一緒にレーザー照射チャンバーに組み立てられる。当該組み立ては、試料テーブルの下の狭められた広がりに起因して困難であるものの、原理的に実施可能である。当該レーザー照射チャンバーは気密に閉鎖される。LA−ICP−MSは、既知の分析プロトコルにしたがって選択された領域を検査する。
【0033】
c)当該スライドガラスが、レーザー照射チャンバーから除去され、切除すべき組織試料用の当該収集容器と一緒にLMD内に再び個別に組み込まれる。
【0034】
2a)試料及び場合によっては標準試料を有するスライドガラスが、容器(レーザー照射チャンバーの下部)と一緒にレーザー照射チャンバーに組み立てられ、LMD内に挿入される。最初に領域が選択され、引き続きLA−ICP−MSが検査される。
【0035】
b)当該スライドガラスが、レーザー照射チャンバーから除去され、切除すべき組織試料用の当該収集容器と一緒にLMD内に再び個別に組み込まれる。
【0036】
提唱されていて且つ好適な当該第2の工程では、スライドガラスを有するレーザー照射チャンバーが、完全にLMDの外部で組み立てられ且つ気密に閉鎖され、引き続き例えば外部からLMD内に挿入されて固定される。当該両バリエーションでは、スライドガラスは同時に、レーザー照射チャンバーのカバーガラスである。LMDのレーザーを使用するレーザー照射と同じ実験条件の下で、分析すべき組織試料の選択された領域が、標準試料と一緒に確かなラインスキャンモードで(1本の直線ずつ)照射される。この場合、試料の表面が、焦点合わせされたレーザービーム、特に高出力のNd:YAGレーザーの光子によって照射される。この場合、試料の表面上の場所分解能(レーザースポット径)は、数μmでなければならない。この場合、適切な器具が、20μmより明らかに小さいスポット径を実現する。
【0037】
カバーが同時にスライドガラスの下に固定された試料を有するこのスライドガラスとして使用される本発明のレーザー照射チャンバーの配置の場合、LMDの対物レンズが、スライドガラスにほぼ達し、同時に試料にほぼ達することが有益に可能である。これによって、これによって、サブマイクロメートルの範囲内までの分解能が初めて可能になる。したがって、試料物質の照射が、1μm未満、特に0.5μm未満のスポット径によって有益に可能である。
【0038】
当該既存のLMD器具によって、試料表面が、レーザー照射の前後に顕微鏡によって検査されるだけではなくて、別のステップ中に金属及び燐が検出された組織の特定の領域を金属蛋白質のさらなる分析のために適切に切除して試料容器内に適切に収集することができる。当該試料容器は、レーザー照射後にスライドガラスの下に取り付けられる。このため、LMD試料テーブルの下に存在する試料容器を有するこのLMD試料テーブルの最初の配置が再生される必要がある。
【0039】
図2中には、本発明のレーザー照射チャンバー(10)を既存のレーザー顕微解剖装置と好適に組み合わせたものが明示されている。容器とスライドガラスとを有する本発明のレーザー照射チャンバーの全体が、従来の通常のカバーガラスの代わりに当該LMD装置内に簡単に挿入され得る。
【0040】
レーザビームが一応固定されていて、試料だけが変位装置によって希望する位置に移行される通常のレーザー照射チャンバーのほかに、或るレーザー顕微解剖装置では、通常は、試料が、調整可能な顕微鏡テーブルによって観察のために正しい位置に以降され、引き続きレーザービームが、ミラーを介して対応する位置に案内される。分析すべき領域が、特殊なペグによる画面上に写し出され、実験パラメータ(焦点内のレーザービーム直径、レーザービームの速度、線間距離)の入力後にラインスキャンモードで照射される。
【符号の説明】
【0041】
1 カバーガラス、例えば従来のスライドガラス
2 カバーガラス支持体
3 容器(レーザー照射室の下部)
4 試料
5 分析結果を定量化するための標準試料
6 容器及びスライドガラス又はカバーガラス支持体を気密に結合させるための手段
7 パッキング
10 レーザー照射チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガス用の流入管及び流出管を有する容器と、レーザー光に対して透過性であって同時に試料を収容するために適しているカバーガラスを有するカバーガラス支持体と、カバーガラス及び容器を気密に結合するための手段とを備えるレーザー照射チャンバー。
【請求項2】
前記レーザー照射チャンバーは、前記カバーガラスと前記容器との間に配置されている少なくとも1つの追加のパッキングを有する請求項1に記載のレーザー照射チャンバー。
【請求項3】
前記レーザー照射チャンバーは、カバーガラス及び容器を気密に結合するための手段として挟持部材又はねじ留め部材を有する請求項1又は2に記載のレーザー照射チャンバー。
【請求項4】
前記レーザー照射チャンバーは、テフロン製のカバーガラス支持体を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー照射チャンバー。
【請求項5】
前記レーザー照射チャンバーは、カバーガラスとしてスライドガラスを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー照射チャンバー。
【請求項6】
前記レーザー照射チャンバーは、既存のレーザー顕微解剖装置(LMD)での使用に適している請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー照射チャンバー。
【請求項7】
レーザー照射法−誘導結合プラズマ質量分析法(LA−ICP−MS)によって及びレーザー顕微解剖装置(LMD)によって、空間分解された化学元素の定量的な局所分析及び分布分析並びに照射された表面領域のその場観察を実施するための方法において、
試料が、カバーガラスの下面に固定され、
前記カバーガラスが、容器上のカバーガラス支持体と一緒に請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー照射チャンバーに組み立てられ、
前記レーザー照射チャンバーが、前記試料と一緒に前記レーザー顕微解剖装置内に挿入され、
前記レーザー顕微解剖装置のレーザーが、前記カバーガラスを透過して前記試料上に焦点合わせされ、選択された領域又は試料の全体が限定されて照射されることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記試料に加えて、少なくとも1つの標準試料(好ましくは、定量化のための複数の標準参照物質)も、前記カバーガラスの下面に対して固定される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
従来のスライドガラスが、カバーガラスとして使用される請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料を有する前記レーザー照射チャンバーの、前記レーザー顕微解剖装置内への挿入後に初めて、検査すべき領域が選択され、引き続き当該選択された領域が、レーザー照射法−誘導結合プラズマ質量分析法によって検査される請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザー照射法−誘導結合プラズマ質量分析法による検査後に、前記試料を有する前記スライドガラスが、前記レーザー照射チャンバーから除去され、切除される試料用の収集容器と一緒に前記レーザー顕微解剖装置内に再び挿入される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザー顕微解剖装置内に存在するレーザーが、レーザー照射のために使用される請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
355nmの波長を有するレーザーが使用される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1μm未満、特に0.5μm未満のスポット径を有する試料物質が照射される請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−523548(P2012−523548A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503856(P2012−503856)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000295
【国際公開番号】WO2010/115394
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】