説明

空間多重通信装置及び方法

【課題】複数の光源と受光素子とを1対1に対応付けて空間多重数を増加させることによって伝送効率を向上し、かつそれぞれ光源から発光された光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して干渉を与える場合であっても、各受光素子における受信信号の復号性能を向上した空間多重通信装置を提供する。
【解決手段】受光素子群において信号品質の高い順に各受光素子における受信信号を復号し、それぞれ復号結果で得られた高精度な干渉量の推定・除去をすることによって、各受光素子における復号性能を向上することができ、複数の光源と受光素子とを1対1に対応付けることによって、空間多重数も減少させることなく高効率な情報伝送を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元に配置された複数の光源からの光信号を、複数の光源にそれぞれ対応する2次元に配置された受光素子で受光し、受光した信号を復号することによって情報データ通信を行う空間多重通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2次元のディスプレイデバイスや紙媒体等を利用した広告とともに、当該広告に関連する情報を携帯端末で受信するサービスが提供されつつある。その主たるものとして、QRコードのように2次元のバーコードを利用したURLの通知などが挙げられる。これをさらに発展した形態として、動的な2次元情報を伝達する方法が提案されている。例えば、非特許文献1では、複数の光源を有する送信器と、複数の受光素子を有する受信器との間で情報の伝達を行っている。図11は、従来技術における空間多重通信システムの概念図である。図11において、LED101は、伝達すべき情報データを動的に変調された光信号として発光する。レンズ102は、LED101によって発光された複数の光信号を空間的に分離し、イメージセンサ103において2次元に配置された受光素子に受光させる。このように従来技術における空間多重通信システムは、イメージセンサ103のすべてのピクセルで独立して復号処理を行うことで、並列処理を可能としている。
【0003】
図12は、一般的な空間多重通信装置100のブロック図である。図12において、空間多重通信装置100は、送信部110と受信部120とから構成される。送信部110は、空間多重処理部111と、複数の光源(第1の光源112−1、第2の光源112−2、・・・・、第Nの光源112−N)とから構成される。受信部120は、複数の受光素子(第1の受光素子121−1、第2の受光素子121−2、・・・・、第Nの受光素子121−N)と、空間分離処理部122とから構成される。送信部110において、空間多重処理部111は、空間多重通信を行うために入力された情報データS10を分解し、第1〜Nの光源112−1〜Nに対して、それぞれ第1〜Nの発光制御信号S11−1〜Nを出力する。第1〜Nの光源112−1〜Nは、それぞれ入力された第1〜Nの発光制御信号S11−1〜Nを第1〜Nの光信号S20−1〜Nとして発光する。ここで、送信部110の第1〜Nの光源112−1〜Nから発光された第1〜Nの光信号S20−1〜Nは、受信部120において、レンズ等の光学デバイスを利用して集光・結像される。これにより、第1〜Nの光信号S20−1〜Nは、受信部120において、送信部110の第1〜Nの光源112−1〜Nにそれぞれ対応する第1〜Nの受光素子121−1〜Nによって受光される。第1〜Nの受光素子121−1〜Nは、受光した第1〜Nの光信号S20−1〜Nを第1〜Nの受光信号S21−1〜Nに変換し、空間分離処理部122に出力する。空間分離処理部122は、入力された第1〜Nの受光信号S21−1〜Nを復号し、情報データS30として出力する。
【0004】
図12に示した送信部110について、さらに詳しく説明する。図13は、送信部110における空間多重処理部111の詳細な構成を示すブロック図である。図13(a)において、空間多重処理部111は、シリアル/パラレル変換部(以下、「SP変換部」と記述する)113と、第1〜Nの発光制御部114−1〜Nとから構成される。SP変換部113は、情報データS10を並列化し、第1〜Nの発光制御部114−1〜Nに対して、第1〜Nの部分情報データS10−1〜Nを出力する。第1〜Nの発光制御部114−1〜Nは、それぞれ入力された第1〜Nの部分情報データS10−1〜Nに基づいて、第1〜Nの光源112−1〜Nに対して、発光パワーを制御する第1〜Nの発光制御信号S11−1〜Nを出力する。
【0005】
また、空間多重処理部111は、発光制御部とSP変換部との順番を入れ替える構成であっても構わない。具体的には、図13(b)に示すように、空間多重処理部111は、情報データS10に基づいて、発光パワーを制御する発光制御信号S11を出力する発光制御部114と、発光制御信号S11を並列化し、第1〜Nの発光制御信号S11−1〜Nを出力するSP変換部113とから構成される。
【0006】
次に、図12に示した受信部120について、さらに詳しく説明する。図14は、受信部120における空間分離処理部122の詳細な構成を示すブロック図である。図14(a)において、空間分離処理部122は、第1〜Nのデータ復号部123−1〜Nと、パラレル/シリアル変換部(以下「PS変換部」と記述する)124とから構成される。第1〜Nのデータ復号部123−1〜Nは、第1〜Nの受光素子121−1〜Nから出力される第1〜Nの受光信号S21−1〜Nを、それぞれ第1〜Nの部分情報データS22−1〜Nに復号する。PS変換部124は、第1〜Nのデータ復号部123−1〜Nで復号された第1〜Nの部分情報データS22−1〜Nを直列化し、合成された情報データS30を出力する。
【0007】
また、空間分離処理部122は、復号部とPS部との順番を入れ替える構成であっても構わない。具体的には、図14(b)に示すように、空間分離処理部122は、第1〜Nの受光素子121−1〜Nから出力される第1〜Nの受光信号S21−1〜Nを直列化し、合成された受光信号S21を出力するPS変換部124と、合成された受光信号S21を復号し、情報データS30を出力する復号部123とから構成される。
【0008】
以下に、送信部110および受信部120における信号の流れについて、具体的なデータを用いて説明する。一例として、情報データは“0”と“1”との2値データとし、光源および受光素子をそれぞれ4個ずつ用いた場合を説明する。送信部110から情報データS10を(“1000111101011001”)として送信する場合を考える。この場合、SP変換部113から出力される第1の部分情報データS10−1は、情報データS10の1・5・9・13番目である(“1101”)とし、第2の部分情報データS10−2は、情報データS10の2・6・10・14番目である(“0110”)とし、第3の部分情報データS10−3は、情報データS10の3・7・11・15番目である(“0100”)とし、第4の部分情報データS10−4は、情報データS10の4・8・12・16番目である(“0111”)とする。
【0009】
第k(kは1〜4の整数)の発光制御部114−kは、第kの部分情報データS10−kの“0”と“1”とに基づいて、それぞれ振幅レベルが“A0”と“A1”との信号を、第kの発光制御信号S11−kとして出力する。第kの光源112−kは、第kの発光制御信号S11−kの振幅レベル“A0”と“A1”とに基づいて、信号光パワーが“B0”と“B1”との第kの光信号S20−kを出力する。
【0010】
第kの受光素子121−kは、第kの光源112−kから出力された信号光パワーが“B0”と“B1”との第kの光信号S20−kに対して、それぞれ信号光パワーが“C0”と“C1”となった第kの光信号S20−kを受光する。第kの受光素子121−kは、それぞれ受光した第kの光信号S20−kの信号光パワー“C0”と“C1”とに基づいて、信号光パワーが“D0”と“D1”との第kの受光信号S21−kを出力する。第kのデータ復号部123−kは、第kの受光信号S21−kの信号光パワー“D0”と“D1”とに基づいて、第kの受光信号S21−kを2値判定し、2値データ“0”と“1”とに復号された第kの部分情報データS22−kを出力する。PS変換部124は、第1〜4の部分情報データS22−1〜4の(“1101”)、(“0110”)、(“0100”)、および(“0111”)を、送信部110のSP変換部113とは逆の手順で直列化する。これにより、PS変換部124から情報データS30(“1000111101011001”)が出力される。
【0011】
このように、複数の光源と複数の受光素子とを用いた空間多重通信を実現している。理想的には、複数の光源とこれらに対応する複数の受光素子とが、1対1で独立した情報伝搬路を形成し、空間多重通信を実現することによって、単数の光源および受光素子を用いた空間通信の場合と比較して、高効率な情報伝達が可能となる。
【0012】
さらに、2次元イメージ通信において、より多くの光源と受光素子とを利用し、空間多重数を多く設けることによって、大容量の情報伝達をより高効率に行うことができる。近年、携帯端末(例えば携帯電話やデジタルカメラ)に搭載されている撮像素子の画素数(受光素子の数)は、日増しに増加する傾向を示しており、より高精度、高精細な画像・動画の取得が可能となっている。これらの大きな画素数の撮像素子等を2次元イメージ通信に利用した場合には、非常に高効率な情報伝送が可能になるものと期待される。
【非特許文献1】宮内聡 他、「高速CMOSイメージセンサを用いた二次元送受信器による並列光空間通信の提案」、信学技報 CS−2004−18、OCS2004−28、PN2004−23、2004年5月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、撮像素子の画素数が増加するに従って、各画素(受光素子)の面積は反比例的に小さくなる。一方、カメラのように、レンズ等を用いて2次元配置された光源からの光信号を集光・結像した場合、受光素子上に形成される光源の光スポットサイズは、回折限界と呼ばれる現象により無限小とはならない。このため、光源から発光された光信号が、当該光源と1対1に対応している受光素子に隣接する受光素子に対して干渉を与える。
【0014】
図15は、受光素子と光源の光スポットとの関係を示す図である。上述したように受光素子上に形成される光源の光スポットは、回折限界のために当該光源に対応する受光素子の範囲内に収めることができない。このため、光源の光スポットは、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して干渉を与えている。このような光源の光スポットが、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して干渉を与え、受信部において受光した受信信号を誤った情報データとして復号してしまう。受信信号を誤った情報データとして復号してしまう場合について、以下に具体的に説明する。
【0015】
図16は、受信信号を誤った情報データとして復号していることを示す図である。図16において、2次元平面状に光源および受光素子が4行×4列に配置されている。ここで、n行×m列配列の情報データを(“1行1列目の値”,“1行2列目の値”,・・・,“1行m列目の値”,“2行1列目の値”,・・・,“n行m列目の値”)と表し、n行×m列配列のi行j列目の位置を(Pi,Qj)と表すこととする。ただし、nおよびmは正の整数、iはn以下の正の整数、jはm以下の正の整数である。また、送信部における光源(Pi,Qj)は、受信部における受光素子(Pi,Qj)に対応しており、光源(Pi,Qj)からの光信号は、受光素子(Pi,Qj)で受光するものとする。以降も同様とする。
【0016】
図16(a)は、光源から発光した送信信号Snd10を示す図である。図16(a)に示すように送信信号Snd10は、(“1”,“1”,“1”,“0”,“1”,“0”,“1”,“1”,“1”,“1”,“0”,“1”,“0”,“1”,“1”,“1”)である。図16(b)は、光源からの光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して与える干渉パターンIfc10を示す図である。図16(b)において、干渉パターンIfc10は、受光素子が対応する光源からの光信号によって受ける信号光パワーを“1”とした場合、それぞれ左右上下の受光素子に与える干渉量は“0.1”であり、それぞれ左上、右上、左下、右下に与える干渉量は“0.05”であることを示している。図16(c)は、受光素子が受光した受信信号Rcv10を示す図である。受光素子は、送信信号Snd10に対して干渉パターンIfc10の影響を受けた受信信号Rcv10を受光する。図16(c)において、例えば、受信信号Rcv10(P1,Q1)は、送信信号Snd10(P1,Q1)の信号光パワー“1”と、送信信号Snd10(P1,Q2)の信号光パワー“1”による干渉量“0.1”と、送信信号Snd10(P2,Q1)の信号光パワー“1”による干渉量“0.1”によるものである。なお、送信信号Snd10(P2,Q2)の信号光パワーによる干渉も考慮されるが、当該信号光パワーは“0”であるため、送信信号Snd10(P2,Q2)による干渉量はない。つまり、受信信号Rcv10(P1,Q1)の信号光パワーは、“1.2”である。受信信号Rcv10のその他の位置における信号光パワーについても同様に干渉パターンIfc10を考慮すると、受信信号Rcv10は、(“1.2”,“1.3”,“1.25”,“0.25”,“1.3”,“0.55”,“1.35”,“1.25”,“1.25”,“1.35”,“0.55”,“1.3”,“0.25”,“1.25”,“1.3”,“1.2”)となる。この受信信号Rcv10において、信号光パワーが0.5未満は“0”とし、0.5以上は“1”とする2値判定をし、受信信号Rcv10を復号する。図16(d)は、受信信号Rcv10を復号して得られた復号データDcd10を示す図である。復号データDcd10は、(“1”,“1”,“1”,“0”,“1”,“1”,“1”,“1”,“1”,“1”,“1”,“1”,“0”,“1”,“1”,“1”)となる。この結果から分かるように、送信信号Snd10(P2,Q2)の値が“0”であるのに対し、復号データDcd10(P2,Q2)の値が“1”となっている。さらに、送信信号Snd10(P3,Q3)の値が“0”であるのに対し、復号データDcd10(P3,Q3)の値が“1”となっている。このように、受信信号Rcvの復号処理において、干渉による誤りが生じている。
【0017】
このような干渉に対して、非特許文献1では、隣接し合う受光素子を1つの受光素子群と見なして、1つの光源からの光信号を受光する受光面積を広げることにより、干渉を回避している。図17は、隣接し合う受光素子を1つの受光素子群と見なしていることを示す図である。図17において、図15に示した4行×4列に配列した受光素子は、2行×2列に配列した受光素子群と見なされている。つまり、4つの受光素子を1つの受光素子群と見なし、当該受光素子群が対応する光源からの光信号を受光する。これにより、上述したような干渉による誤ったデータの復号を回避している。しかし、この方法では、複数の受光素子に対して1つの光源が対応するため、空間多重数が減少し、伝送効率が低下してしまう。
【0018】
それ故に、本発明の目的は、複数の光源と受光素子とを1対1に対応付けて空間多重数を増加させることによって伝送効率を向上し、かつ受光素子数(画素数)を増加することによって、それぞれ光源から発光された光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して干渉を与える場合であっても、各受光素子における受信信号の復号性能を向上した空間多重通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成させるために、本発明の第1の空間多重通信装置の受信部は、複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いて空間多重通信を行う受信部であって、複数の光源と1対1に対応付けられ、複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、データ復号部で復号された受信信号に基づいて、第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、干渉量推定部で推定された干渉量を第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を干渉除去部に、干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部とを備える。
【0020】
好ましい復号順序は、複数の受光素子で構成される受光素子群において、当該受光素子群の外縁部に位置する受光素子から中心部に位置する受光素子の順に規定されることを特徴とする。
また、好ましい復号順序は、受信信号が復号されていない隣接する受光素子が少ない受光素子から順に規定されることを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成させるために、本発明の第2の空間多重通信装置の受信部は、複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いて空間多重通信を行う受信部であって、複数の光源と1対1に対応付けられ、複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、復号位置決定部が選択する受光素子の復号順序を決定する復号順序決定部と、復号順序決定部で決定された復号順序に従って、受光した受信信号を復号する干渉推定除去復号部と、復号順序を決定する場合は、復号位置決定部と復号順序決定部とを接続し、復号順序に従って受光した受信信号を復号する場合は、復号位置決定部と干渉推定除去復号部とを接続するスイッチとを備え、復号順序決定部は、複数の受光素子のそれぞれにおいて、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を推定する第1の干渉量推定部と、第1の干渉量推定部で推定された干渉量を記憶する第1の干渉量記憶部と、干渉量が少ない受光素子から順に復号順序を決定し、当該復号順序を記憶し、さらに当該復号順序を復号位置決定部に復号位置情報として通知する復号順序記憶部とを備え、干渉推定除去復号部は、第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、データ復号部で復号された受信信号に基づいて、第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する第2の干渉量推定部と、第2の干渉量推定部で推定された干渉量を第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を干渉除去部に、干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する第2の干渉量記憶部とを備える。
【0022】
好ましい復号順序は、既知のパイロット信号を利用して、複数の受光素子のそれぞれにおいて、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を測定することによって決定されることを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成させるために、本発明の第1の空間多重通信装置は、複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いた受信部との間で空間多重通信を行う空間多重通信装置であって、送信部は、情報データを符号化する符号化部と、符号化された情報データを分解し、並列化する空間多重処理部と、それぞれ入力された情報データに基づいて、送信信号を発光する複数の光源とを備え、受信部は、複数の光源と1対1に対応付けられ、複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、データ復号部で復号された受信信号に基づいて、第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、干渉量推定部で推定された干渉量を第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を干渉除去部に、干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部とを備える。
【0024】
好ましい送信部は、復号順序に対応して、複数の光源のそれぞれに入力する情報データの順序を決定することを特徴とする。
また、好ましい送信部は、干渉量が小さい受光素子に対応する光源に、より優先度の高い情報データを割り当てることを特徴とする。
また、好ましい送信部は、干渉量が小さい受光素子に対応する光源に、より少ない発光パワーを設定することを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成させるために、本発明の第2の空間多重通信装置は、複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いた受信部との間で空間多重通信を行う空間多重通信装置であって、送信部は、情報データを符号化する符号化部と、符号化された情報データを分解し、並列化する空間多重処理部と、それぞれ入力された情報データに基づいて、送信信号を発光する複数の光源とを備え、空間多重処理部は、干渉量が小さい受光素子に対応する光源に、より多くの情報データ量を割り当てる多値化部を備えることを特徴とし、受信部は、複数の光源と1対1に対応付けられ、複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、データ復号部で復号された受信信号を2値化する2値化部と、データ復号部で復号された受信信号に基づいて、第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、干渉量推定部で推定された干渉量を第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を干渉除去部に、干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部とを備え、2値化部は、多値化部によって多値化された光信号を受光する受光素子を対象として、2値化処理を行うことを特徴とする。
【0026】
上記目的を達成させるために、本発明の空間多重通信装置の受信部に用いる集積回路は、複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いて空間多重通信を行う受信部に用いる集積回路であって、複数の光源と1対1に対応付けられ、複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、データ復号部で復号された受信信号に基づいて、第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、干渉量推定部で推定された干渉量を第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を干渉除去部に、干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部として機能する回路を集積する。
【発明の効果】
【0027】
上述のように、本発明の空間多重通信装置によれば、複数の光源と受光素子とを1対1に対応付けて空間多重数を増加させることによって伝送効率を向上し、かつ受光素子数(画素数)を増加することによって、それぞれ光源から発光された光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して干渉を与える場合であっても、各受光素子における復号性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置について説明する。なお、本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置の概要は、図11および図12に示した従来技術における空間多重通信装置と同様であるため説明を省略する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部1000を示す図である。図1において、受信部1000は、第1〜Nの受光素子1001−1〜Nと、空間分離処理部1010とから構成される。空間分離処理部1010は、復号位置決定部1011と、干渉除去部1012と、データ復号部1013と、干渉量推定部1014と、干渉量記憶部1015とから構成される。
【0030】
復号位置決定部1011は、予め規定された順序に従って、第1〜Nの受光素子1001−1〜Nから受信信号を復号する対象の受光素子を選択する。干渉除去部1012は、復号位置決定部1011において選択された受光素子が受光した受信信号から、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を除去する。データ復号部1013は、干渉除去部1012から出力される干渉量が除去された受信信号を復号し、情報データS300として出力する。干渉量推定部1014は、データ復号部1013で出力された復号されたデータに基づいて、受信信号を復号する対象となっている受光素子に対応する光源からの光信号が他の受光素子に与える干渉量を推定する。干渉量記憶部1015は、干渉量推定部1014で推定された干渉量を受光素子ごとに記憶し、さらに、当該干渉量を干渉量情報S101として干渉除去部1012に通知する。これにより、干渉除去部1012は、干渉量情報S101に基づいて、それぞれの受光素子が受けている干渉量を受信信号から除去する。
【0031】
ここで、復号位置決定部1011が第1〜Nの受光素子1001−1〜Nから受信信号を復号する対象の受光素子を選択する順序について、以下に説明する。図15に示したように、各光源から発光した光信号が、受光素子上に同一サイズの光スポットとなって重なり合う場合、受光素子群の中心部は、隣接する受光素子の数が多いため、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号における干渉量が大きい。従って、受光素子群の中心部で受光した光信号は、誤った復号結果になる可能性が高いと言える。一方、受光素子群の外縁部、特に、受光素子群の四隅に位置する受光素子に関しては、受光素子群の中心部の受光素子よりも干渉量が小さくなる。受光素子群の四隅に位置する受光素子は、受信信号の信号品質が最も高い状態で復号を行うことができる。受信信号の信号品質が最も高い状態で復号処理を行えば、信頼性の高い復号結果が得られるため、この復号結果に基づいて、その他の受光素子が受光した未復号の受信信号における干渉量を高精度に推定することが可能となる。つまり、その他の受光素子においては、未復号の受信信号から高精度に推定された干渉量を除去することによって、復号性能を向上することが可能となる。
【0032】
以上のように、干渉量が少なく信号品質の高い受信信号を受光する受光素子で受光した受信信号から順に復号を行い、当該復号結果に基づいて、その他の受光素子への干渉量を推定・除去する手順を繰り返すことによって、受光素子群全体の復号性能を向上することができる。
【0033】
上述した手順によって受信信号を復号する処理について、以下に具体的に説明する。一例として、2次元平面状に光源および受光素子を4行×4列に配置した場合を考える。図2は、4行×4列に配置された受光素子において受光した受信信号を復号する手順を示す図である。図2(a)、(b)および(c)は、それぞれ図16(a)、(b)および(c)に示した送信信号Snd10、干渉パターンIfc10、および受信信号Rcv10と同様である。光源から発光された送信信号Snd10は、干渉パターンIfc10に示す干渉量によって、受信信号Rcv10となって受光素子で受光される。
【0034】
復号位置決定部1011において、先ず、受信信号Rcv10を受光した受光素子のうち、信号品質が最も高い四隅が復号処理の対象とされる。干渉除去部1012は、四隅の受光素子が受光した受信信号から、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を除去する処理を行う。しかし、最初に選択された受光素子に対しては、後述するような干渉量推定部1014による干渉量の推定が行われていないため、干渉除去部1012では、四隅の受光素子が受光した受信信号から、デフォルト値“0”を除去する処理を行うこととなる。最初に選択される受光素子は、信号品質が高く、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量が小さいため、干渉量を“0”としても以降の処理への影響は少ない。データ復号部1013では、一例として、干渉除去部1012を介して入力された受信信号Rcv10の信号光パワーが0.5未満は“0”とし、0.5以上は“1”とする2値判定をし、受信信号Rcv10を復号するものとする。受信信号Rcv10において、(P1,Q1)の値は、“1.2”であるため“1”に復号され、(P1,Q4)の値は、“0.25”であるため“0”に復号され、(P4,Q1)の値は、“0.25”であるため“0”に復号され、(P4,Q4)の値は、“1.2”であるため“1”に復号される(図2(d))。干渉量推定部1014は、この復号結果(図2(d))と干渉パターンIfc10に基づいて、四隅の受光素子に対応する光源からの光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に与える干渉量を推定する。(P1,Q1)における信号光パワー“1”は、(P1,Q2)および(P2,Q1)に“0.1”の干渉量を与え、(P2,Q2)に“0.05”の干渉量を与える。(P1,Q4)における信号光パワーは“0”であるため、隣接する(P1,Q3)、(P2,Q3)、および(P2,Q4)に与える干渉量はない。同様に、(P4,Q1)および(P4,Q4)に隣接する受光素子における干渉量も推定できる。このように推定された干渉量は、受光素子ごとに干渉量記憶部1015に記憶される(図2(e))。
【0035】
次に、復号位置決定部1011において、受信信号Rcv10を受光した受光素子のうち、四隅に次いで信号品質が高い最外辺部が復号処理の対象とされる。干渉除去部1012は、干渉量記憶部1015から通知された干渉量情報S101に基づいて、受信信号Rcv10から干渉量を除去する。受信信号Rcv10(P1,Q2)の値“1.3”から、上述したように干渉量記憶部1015で記憶されている干渉量“0.1”を除去し、その値を“1.2”とする。その他の受光素子においても、同様に干渉量を除去する(図2(f))。データ復号部1013では、干渉量を除去した受信信号(図2(f))に基づいて、復号処理を行う。(P1,Q2)の値は、“1.2”であるため、“1”に復号される。同様に、(P1,Q3)、(P2,Q1)、(P2,Q4)、(P3,Q1)、(P3,Q4)、(P4,Q2)、および(P4,Q3)においても値が0.5以上であるため、“1”に復号される(図2(g))。干渉量推定部1014は、この復号結果(図2(g))と干渉パターンIfc10に基づいて、最外辺部の受光素子に対応する光源からの光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に与える干渉量を推定する。ただし、既に受信信号の復号済みの受光素子については考慮する必要はない。(P2,Q2)は、(P1,Q2)における信号光パワー“1”による干渉量“0.1”と、(P1,Q3)における信号光パワー“1”による干渉量“0.05”と、(P2,Q1)における信号光パワー“1”による干渉量“0.1”と、(P3,Q1)における信号光パワー“1”による干渉量“0.05”とを受ける。つまり、(P2,Q2)の干渉量は、“0.3”と推定され、干渉量記憶部1015に記憶される。同様に、(P2,Q3)、(P3,Q2)、および(P3,Q3)における干渉量も、0.3と推定され、干渉量記憶部1015に記憶される(図2(h))。
【0036】
次に、復号位置決定部1011において、受信信号Rcv10を受光した受光素子のうち、受信信号を未復号の中心部が復号処理の対象とされる。干渉除去部1012は、干渉量記憶部1015から通知された干渉量情報S101に基づいて、最外辺部の受光素子における受信信号の復号処理前の状態(図2(f))から干渉量を除去する。(P2,Q2)の値“0.5”から、上述したように干渉量記憶部1015に記憶されている干渉量“0.3”を除去し、その値を“0.2”とする。また、(P2,Q3)の値“1.35”から、上述したように干渉量記憶部1015に記憶されている干渉量“0.3”を除去し、その値を“1.05”とする。その他の受光素子においても、同様に干渉量を除去する(図2(i))。データ復号部1013では、干渉量を除去した受信信号(図2(i))に基づいて、復号処理を行う。(P2,Q2)の値は、“0.2”であるため、“0”に復号され、(P2,Q3)の値は、“1.05”であるため、“1”に復号される。同様に、(P3,Q2)は、“1”に復号され、(P3,Q3)は、“0”に復号される(図2(j))。
【0037】
以上により、受信信号Rcv10を復号した結果、復号データDcd100は、(“1”,“1”,“1”,“0”,“1”,“0”,“1”,“1”,“1”,“1”,“0”,“1”,“0”,“1”,“1”,“1”)となる(図2(k))。図16(d)に示したような復号データDcd10(P2,Q2)および(P3,Q3)における復号誤りは発生していない。
【0038】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部1000によれば、受光素子群において信号品質の高い四隅、最外辺部、中心部の順に各受光素子における受信信号を復号し、それぞれ復号結果で得られた高精度な干渉量の推定・除去をすることによって、各受光素子における復号性能を向上することができる。また、複数の光源と受光素子とを1対1に対応付けているため、空間多重数も減少させることなく高効率な情報伝送を行うことができる。
【0039】
なお、本実施形態に係る空間多重通信装置の受信部は、図1に示した受信部1000に限定されるものではない。図3は、本発明の第1の実施形態に係る他の空間多重通信装置の受信部1100を示す図である。図3において、受信部1100は、図1に示した受信部1000と比較して、干渉量推定部の位置が異なっている。図3において、図1に示した同様の構成については、同様の参照符号を付して説明を省略する。受信部1100における干渉量推定部1114は、復号位置決定部1011で出力された復号前の受信信号に基づいて、受信信号を復号する対象となっている受光素子に対応する光源からの光信号が他の受光素子に与える干渉量を推定する。この干渉量の推定方法は、例えば受信信号を復号する対象となる受光素子の受光強度に応じて、図2(b)に示す隣接する受光素子への干渉量を比例的に増減させる方法などが考えられる。このような受信部1100の構成であっても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0040】
なお、送信部において、情報データS10を各光源に割り当てる順序と受信部の復号順序とを合わせておくことが望ましい。例えば、受信部における復号順序に合わせて、送信部において情報データS10を予め並び替える機能を、従来技術として説明した図13におけるSP変換部113の前段に備える。また、SP変換部113に情報データS10を並び替える機能を有しても構わない。これにより、受信部の各受光素子において受光した受信信号は、データ復号部1013によって順に復号された後、さらに複雑な並び替えをする必要がなくなり、より高効率な復号処理が可能となる。
【0041】
なお、干渉パターンによっては、光源からの光信号において当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対する干渉量が小さい場合もあり、この場合、四隅や最外辺部に位置する受光素子が受光する受信信号は、非常に高品質であると言える。このような高品質の信号に対応する光源には、誤りに対して厳しい情報(例えば、通信制御情報など)を割り当ててもよい。さらに、他の受光素子への干渉を低減する目的で、光源の発光パワーを低下させてもよい。しかし、本実施形態における復号の手順では、一旦、復号結果を誤ってしまうと、その後に復号される受光素子の干渉量推定・除去が正しく行えなくなり、誤りが伝搬する恐れがある。従って、復号順序の早い受光素子に対応する光源においては、所定の発光パワーを保持し、このような誤り伝搬現象を防ぐ必要もある。
【0042】
なお、本実施形態では、受光素子群において信号品質の高い四隅、最外辺部、中心部の順に各受光素子における受信信号を復号したが、復号順序はこれに限定されるものではない。各受光素子の相対的な位置関係に基づく具体的な復号順序としては、例えば、受光素子群の四隅に配置された受光素子における受信信号を最初に復号し、続いて最外辺部に配置された受光素子における受信信号を復号し、この時点で受信信号が復号されていない受光素子に関して、再び四隅、最外辺部の順に選択する手順を繰り返す方法が考えられる。
【0043】
また、受光素子群の中心に近づく受光素子ほど、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号によって与えられる干渉量が大きくなる特性を利用して、受光素子群が正方形ではない、例えば、長方形等の場合、受光素子群の中心から最も離れている受光素子のうちいずれかの受光素子における受信信号を最初に復号する。次に、この時点で受信信号が復号されていない受光素子に関して、再び受光素子群の中心から最も離れている受光素子のうち、いずれかの受光素子における受信信号を復号する。このような手順を繰り返す方法も考えられる。
【0044】
また、隣接する受光素子の数が少ない受光素子ほど、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号によって与えられる干渉量が少なくなる特性を利用し、受信信号が復号されていない隣接する受光素子が少ない受光素子を選択し、当該受光素子における受信信号を復号する。このような手順を繰り返す方法も考えられる。
【0045】
なお、復号順序に関しては、上記に限定されるものではなく、復号性能を向上可能な復号順序であればいかなる方法であっても構わない。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態においては、各受光素子が当該受光素子に対応する光源以外からの光信号によって与えられる干渉量を実際に測定し、当該測定結果に基づいて復号順序を決定する手順について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部2000を示す図である。図4において、受信部2000は、第1〜Nの受光素子2001−1〜Nと、空間分離処理部2010とから構成される。さらに、空間分離処理部2010は、復号位置決定部2011と、スイッチ2012と、復号順序決定部2020と、干渉推定除去復号部2030とから構成される。
【0047】
復号順序決定部2020は、第1の干渉量推定部2021と、第1の干渉量記憶部2022と、復号順序記憶部2023とから構成されており、実際の情報データを伝送する前や伝送途中に、既知のパイロット信号を用いて、他の受光素子に対する干渉量を予め測定し、受信信号を復号する受光素子の順序を決定する。この場合、復号順序を決定するために、スイッチ2012は、復号位置決定部2011と復号順序決定部2020の第1の干渉量推定部2021とを接続する。干渉推定除去復号部2030は、干渉除去部2031と、データ復号部2032と、第2の干渉量推定部2033と、第2の干渉量記憶部2034とから構成されており、復号順序決定部2020で決定された復号順序に基づいて、実際に受光した受信信号に関して干渉推定・除去および復号を行う。この場合、実際に受光した受信信号を復号するために、スイッチ2012は、復号位置決定部2011と干渉推定除去復号部2030の干渉除去部2031とを接続する。
【0048】
復号順序決定部2020が、復号順序を決定する手順について、具体的に説明する。図5は、4行×4列に配置された受光素子において受光した受信信号の復号順序を決定する手順を示す図である。先ず、各受光素子が当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量が最大となる場合、つまり、送信部におけるすべての光源が発光している場合を考える(図5(a))。この場合、各受光素子が受ける干渉量のみを測定する手順として、パイロット信号を用いる方法が考えられる。図6は、パイロット信号を用いて各受光素子が受ける干渉量のみを測定する手順を示す図である。図6(a)において、送信部は第1のパイロット信号PS01を受信部に送信する。第1のパイロット信号PS01は、光源(P1,Q1)からの信号光パワーのみを“0”として、その他の信号光パワーを“1”とする光信号である。受信部において、受光素子(P1,Q1)で受光した信号光パワー“0.25”は、第1の干渉量推定部2021によって測定され、第1の干渉量記憶部2022に記憶される。このように、受光素子(P1,Q1)が受ける干渉量の最大値が分かる。図6(b)において、送信部は第2のパイロット信号PS02を受信部に送信する。第2のパイロット信号PS02は、光源(P1,Q2)からの信号光パワーのみを“0”として、その他の信号光パワーを“1”とする光信号である。同様に、受光素子(P1,Q2)が受ける干渉量の最大値“0.4”が分かる。以降、同様の処理を(P4,Q4)まで繰り返すと、各受光素子が受ける干渉量のみが実測できる(図5(c))。当該干渉量の測定結果に基づいて、受信信号の復号を行う受光素子を干渉量が少ない受光素子から順に行う。なお、パイロット信号を用いた干渉量の推定方法は、図6に示す方法に限られるものではない。例えば、全ての光源を発光させた状態において、受光パワーが大きい受光素子は、対応する光源以外からの光信号による干渉量が大きく、逆に、受光パワーが小さい受光素子は、当該干渉量が小さいと判断することが可能である。これは、各受光素子における受光パワーが、対応する光源からの信号光パワーと、対応する光源以外からの信号光による干渉との和となるためであり、各光源の信号光パワーを一定とすれば、受光パワーの大小が干渉量の大小に対応するためである。この方法により、全ての受光素子の干渉量を一括して推定することが可能となり、図6に示すような、各受光素子の干渉量を逐次的に推定する手間を省くことができる。
【0049】
図5(c)に示すように受光素子(P1,Q1)の干渉量が“0.25”で最小となるため、復号順序を「1」と決定し、復号順序記憶部2023に記憶する(図5(d))。なお、すべての光源が発光している状態において、受光素子(P1,Q1)で受光した受信信号を復号する際の干渉量は、実際の情報データの伝送時に想定される干渉量の最大値となっている(図5(e))。次に、受光素子(P1,Q1)で受光した受信信号が復号されたと仮定し、当該受光素子に対応する光源からの光信号が他の受光素子に与える干渉量を推定する。図5(b)は、光源からの光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して与える干渉パターンIfc10を示す図である。従って、受光素子(P1,Q1)に対応する光源からの光信号が与える干渉量は、受光素子(P1,Q2)に“0.1”、受光素子(P2,Q1)に“0.1”、および受光素子(P2,Q2)に“0.05”と推定できる。このように推定した干渉量を除去した結果(図5(f))に基づいて、受信信号の復号を行う受光素子を干渉量が少ない受光素子から順に行う。図5(f)に示すように受光素子(P1,Q4)の干渉量が“0.25”で最小となるため、復号順序を「2」と決定し、復号順序記憶部2023に記憶する(図5(g))。このように同様の処理を繰り返すことにより、最終的には、全ての受光素子の復号順序が決定し(図5(m))、それぞれの復号時における干渉量の最大値を把握することができる(図5(n))。
【0050】
なお、上述した手順では、最小の干渉量となる受光素子が複数存在した場合に、当該受光素子のうち、左上に配置されている受光素子を優先的に選択していたが、最小の干渉量となる受光素子であれば、どの受光素子を優先的に選択しても構わない。
【0051】
次に、上述した手順によって決められた復号順序に基づいて、受信信号を復号する処理について、以下に具体的に説明する。図7は、上述した手順によって決められた復号順序に基づいて、4列×4行に配置された受光素子において受光した受信信号を復号する手順を示す図である。図7(a)、(b)および(c)は、それぞれ図2(a)、(b)および(c)に示した送信信号Snd10、干渉パターンIfc10、および受信信号Rcv10と同様である。光源から発光された送信信号Snd10は、干渉パターンIfc10に示す干渉量によって、受信信号Rcv10となって受光素子で受光される。さらに、図7(d)は、復号順序決定部2020によって上述した手順に基づいて決められた復号順序Odr10を示す図である。復号順序Odr10は、復号順序記憶部2023に記憶されており、復号位置情報S201として復号位置決定部2011に通知されている。
【0052】
復号位置決定部2011において、先ず、受信信号Rcv10を受光した受光素子のうち、復号順序Odr10の「1」となっている受光素子(P1,Q1)が復号処理の対象とされる。干渉除去部2031は、受光素子(P1,Q1)が受光した受信信号から、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を除去する処理を行う。しかし、本発明の第1の実施形態でも述べたように、最初に選択された受光素子に対しては、干渉量の推定が行われていないため、干渉除去部2031では、受光素子(P1,Q1)が受光した受信信号から、デフォルト値“0”を除去する処理を行うこととなる。最初に選択される受光素子は、信号品質が高く、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量が小さいため、干渉量を“0”としても以降の処理への影響は少ない。データ復号部2032では、一例として、干渉除去部2031を介して入力された受信信号Rcv10の信号光パワーが0.5未満は“0”とし、0.5以上は“1”とする2値判定をし、受信信号Rcv10を復号するものとする。受信信号Rcv10(P1,Q1)の値は、“1.2”であるため“1”に復号される(図7(e))。第2の干渉量推定部2033は、この復号結果と干渉パターンIfc10に基づいて、受光素子(P1,Q1)に対応する光源からの光信号が、受光素子(P1,Q1)に隣接する受光素子に与える干渉量を推定する。(P1,Q1)における信号光パワー“1”は、(P1,Q2)および(P2,Q1)に“0.1”の干渉量を与え、(P2,Q2)に“0.05”の干渉量を与える。このように推定された干渉量は、受光素子ごとに第2の干渉量記憶部2034に記憶される(図7(f))。
【0053】
次に、復号位置決定部2011において、受信信号Rcv10を受光した受光素子のうち、復号順序Odr10の「2」となっている受光素子(P1,Q4)が復号処理の対象とされる。干渉除去部2031は、第2の干渉量記憶部2034から通知された干渉量情報S202に基づいて、受信信号Rcv10から干渉量を除去する(図7(g))。データ復号部2032では、干渉量を除去した受信信号(図7(g))に基づいて、復号処理を行う。受信信号Rcv10(P1,Q4)の値は、“0.25”であるため、“0”に復号される(図7(h))。第2の干渉量推定部2033は、この復号結果と干渉パターンIfc10に基づいて、受光素子(P1,Q4)に対応する光源からの光信号が、受光素子(P1,Q4)に隣接する受光素子に与える干渉量を推定する。(P1,Q4)における信号光パワーは、“0”であるため、隣接する(P1,Q3)、(P2,Q3)、および(P2,Q4)に与える干渉量はない。このように推定された干渉量は、受光素子ごとに第2の干渉量記憶部2034に記憶される(図7(i))。以下、同様に干渉量の推定・除去・復号を繰り返すことにより、最終的に受信信号Rcv10の復号データDcd200が得られる(図7(o))。
【0054】
このように、復号順序決定部2020によって決められた復号順序に基づいて、受信信号Rcv10を復号した場合、得られた復号データDcd200は、本発明の第1の実施形態で得られた復号データDcd100と同様の結果であり、復号誤りは発生していない。
【0055】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部2000によれば、各受光素子における干渉量を測定した結果から決められた復号順序に基づいて、各受光素子における受信信号を復号し、それぞれ復号結果で得られた高精度な干渉量の推定・除去をすることによって、各受光素子における復号性能を向上することができる。また、複数の光源と受光素子とを1対1に対応付けているため、空間多重数も減少させることなく高効率な情報伝送を行うことができる。
【0056】
なお、本実施形態では、復号順序を決定していく過程において、復号順序が決定した受光素子に対応する光源からの光信号が他の受光素子に与える干渉量を、干渉パターンIfc10に基づいて推定していたが、これに限定されるものではない。例えば、復号順序が決定した受光素子に対応する光源からの光信号が他の受光素子に与える干渉量を、パイロット信号等を用いて実際に測定しても構わない。同様に、干渉量を除去する過程においても、受信信号を復号した受光素子に対応する光源からの光信号が他の受光素子に与える干渉量を、予めパイロット信号等を用いて実際に測定しても構わない。
【0057】
また、本実施形態では、すべての受光素子に対して、同一の干渉パターンIfc10に基づいて干渉量を推定していたが、空間多重通信装置の動作環境、送信部における光源の発光パワー、および受信部における受光素子の特徴等によって干渉量が変化することが考えられる。従って、これらの条件に合った複数の干渉パターンに基づいて干渉量を推定しても構わない。
【0058】
なお、図5(n)に示した各受光素子の復号時の干渉量(最大値)に基づいて、干渉量が小さい受光素子に対応する光源に対して、優先度の高いデータを割り当てても構わない。さらに、他の受光素子への干渉を低減する目的で、光源の発光パワーを低下させてもよい。しかし、本実施形態における復号の手順では、一旦、復号結果を誤ってしまうと、その後に復号される受光素子の干渉量推定・除去が正しく行えなくなり、誤りが伝搬する恐れがある。従って、復号順序の早い受光素子に対応する光源においては、所定の発光パワーを保持し、このような誤り伝搬現象を防ぐ必要もある。
【0059】
また、図5(n)に示した干渉量(最大値)は、受光素子で受光した受信信号がすべて正しく復号されることを前提として導出されたものである。しかし、実際には復号誤りが発生することにより、それ以降の干渉量推定に誤差を含む可能性がある。従って、例えば復号順序が後になるにつれて干渉量を高めに補正した補正干渉量に基づいて、上術した優先度の高いデータの割り当てや発光パワーの低下を行う方法も考えられる。或いは、別の補正方法として、隣接する受光素子が多い受光素子に対して、当該隣接する受光素子の数に応じて補正量を大きくする方法等も考えられる。
【0060】
なお、第1の干渉量推定部2021と第2の干渉量推定部2033とは、それぞれ同様の機能を有するものであるため、1個の干渉量推定部としても構わない。また、第1の干渉量記憶部2022と第2の干渉量記憶部2034とは、それぞれ同様の機能を有するものであるため、1個の干渉量推定部としても構わない。
【0061】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係る空間多重通信装置の送信部3001を示す図である。送信部3001は、空間多重処理部311の多値化部301を除いて、図13(a)に示した従来技術における送信部と同様の構成である。図9は、本発明の第3の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部3002を示す図である。受信部3002は、空間分離処理部3010のデータ復号部3013と2値化部3020とを除いて、図1に示した本発明の第1の実施形態における受信部と同様の構成である。図8および図9において、図13(a)および図1に示した同様の構成要素については、同様の参照符号を付して説明を省略する。
【0062】
送信部3001における多値化部301には、SP変換部113から出力される部分情報データのうち複数の部分情報データが入力される。多値化部301は、入力された複数の部分情報データに基づいて多値化情報データを生成する。多値化部301で生成された多値化情報データは、第1の発光制御部114−1で発光制御信号に変換され、第1の光源112−1から光信号として発光される。図9に示した受信部3002において、このような多値化されたデータを含む受信信号を復号する手順を以下に具体的に説明する。
【0063】
一例として、2次元平面状に光源および受光素子を4行×4列に配置し、(P1,Q1)が4値データの信号を扱う場合を考える。この時、情報データ“00”、“01”、“11”、および“10”は、送信信号の信号光パワー“0”、“0.33”、“0.66”、および“1”がそれぞれ対応するものとする。図10(a)は、送信信号Snd11を示す図である。送信信号Snd11(P1,Q1)は、情報データ“11”に対応する信号光パワー“0.66”が出力されるものとする。図10(b)は、光源からの光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に対して与える干渉パターンIfc11を示す図である。図10(b)において、干渉パターンIfc11は、受光素子が対応する光源からの光信号によって受ける信号光パワーを“1”とした場合、それぞれ左右上下の受光素子に与える干渉量は“0.05”であり、それぞれ左上、右上、左下、右下に与える干渉量は“0”であることを示している。図10(c)は、受光素子が受光した受信信号Rcv11を示す図である。
【0064】
光源から発光された送信信号Snd11は、干渉パターンIfc11に示す干渉量によって、受信信号Rcv11となって受光素子で受光される。受信信号Rcv11(P1,Q1)は、送信信号Snd11(P1,Q1)の信号光パワー“0.66”と、送信信号Snd11(P1,Q2)の信号光パワー“1”による干渉量“0.05”と、送信信号Snd11(P2,Q1)の信号光パワー“1”による干渉量“0.05”とによるものである。つまり、受信信号Rcv11(P1,Q1)の信号光パワーは、“0.76”である。受信信号Rcv11のその他の位置における信号光パワーについても同様に干渉パターンIfc11を考慮すると、図10(c)に示すようになる。
【0065】
復号位置決定部1011において、先ず、受信信号Rcv11を受光した受光素子のうち、信号品質が最も高い四隅が復号処理の対象とされる。干渉除去部1012は、四隅の受光素子が受光した受信信号から、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を除去する処理を行う。しかし、本発明の第1の実施形態でも述べたように、最初に選択された受光素子に対しては、干渉量の推定が行われていないため、干渉除去部1012では、四隅の受光素子が受光した受信信号から、デフォルト値“0”を除去する処理を行うこととなる。最初に選択される受光素子は、信号品質が高く、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量が小さいため、干渉量を“0”としても以降の処理への影響は少ない。データ復号部3013では、一例として、干渉除去部1012を介して入力された受信信号Rcv11の信号光パワーが0.5未満は“0”とし、0.5以上は“1”とする2値判定をし、受信信号Rcv11を復号する。ただし、(P1,Q1)に関しては、信号光パワーが0.167未満は“0”とし、0.167以上0.5未満は“0.33”とし、0.5以上0.833未満は“0.66”とし、0.833以上は“1”とする4値判定をする。この点が、本発明の第1の実施形態で述べたデータ復号部1013と異なる点である。受信信号Rcv11(P1,Q1)の値は、“0.76”であるため“0.66”に復号され、(P1,Q4)の値は、“0.1”であるため“0”に復号され、(P4,Q1)の値は、“0.1”であるため“0”に復号され、(P4,Q4)の値は、“1.1”であるため“1”に復号される(図10(d))。干渉量推定部1014は、この復号結果(図10(d))と干渉パターンIfc11に基づいて、四隅の受光素子に対応する光源からの光信号が、当該光源に対応する受光素子に隣接する受光素子に与える干渉量を推定する。(P1,Q1)における信号光パワー“0.66”は、(P1,Q2)および(P2,Q1)に“0.033”の干渉量を与える。(P1,Q4)における信号光パワーは“0”であるため、隣接する(P1,Q3)および(P2,Q4)に与える干渉量はない。同様に、(P4,Q1)における信号光パワーは“0”であるため、隣接する(P3,Q1)および(P4,Q2)に与える干渉量はない。(P4,Q4)における信号光パワーは“1”であるため、隣接する(P3,Q4)および(P4,Q3)に“0.05”の干渉量を与える。このように推定された干渉量は、受光素子ごとに干渉量記憶部1015に記憶される(図10(e))。
【0066】
次に、復号位置決定部1011において、受信信号Rcv11を受光した受光素子のうち、四隅に次いで信号品質が高い最外辺部が復号処理の対象とされる。干渉除去部1012は、干渉量記憶部1015から通知された干渉量情報S101に基づいて、受信信号Rcv11から干渉量を除去する。受信信号Rcv11(P1,Q2)の値“1.083”から、上述したように干渉量記憶部1015で記憶されている干渉量“0.033”を除去し、その値を“1.05”とする。その他の受光素子においても、同様に干渉量を除去する(図10(f))。データ復号部3013では、干渉量を除去した受信信号(図10(f))に基づいて、復号処理を行う。以下、本発明の第1の実施形態でも説明したように同様に干渉量の推定・除去・復号を繰り返すことにより、最終的に受信信号Rcv11の復号データDcd300が得られる(図10(k))。
【0067】
次に、2値化部3020は、復号データDcd300(P1,Q1)を2値化し、2値化後の復号データDcd301を情報データとして出力する(図10(l))。
【0068】
このように、送信部3001における多値化部301で多値化されたデータを含む信号であっても、受信部3002に2値化部を備えることにより、受信信号Rcv11を正しく復号することができる。また、干渉量が小さい部分において、多値データを扱わせることによって、2値データを扱っている部分と同等の信号光パワーで伝送を行うことができる。ただし、受光素子(P1,Q1)で受光した受信信号は、送信部3001の多値化部301によって4値化されたデータであり、受信部3002のデータ復号部3013および2値化部3020において、4値判定および2値化処理を行うことは、予め把握しておく必要がある。
【0069】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る空間多重通信装置の送信部3001および受信部3002によれば、多値化されたデータを含む信号であっても、各受光素子における受信信号を復号し、それぞれ復号結果で得られた高精度な干渉量の推定・除去をすることによって、各受光素子における復号性能を向上することができる。また、一部多値化されたデータを伝送しているため、本発明の第1および第2の実施形態で示した伝送効率より、さらに高効率な伝送を行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態では、送信部3001において、SP変換部113と第1の発光制御部114−1との間にのみ多値化部301を配置しているが、これに限定されるものではない。例えば、送信部3001において、SP変換部113と第1〜Nの発光制御部114−1〜Nのいずれかとの間に多値化部を配置しても構わない。また、多値化部は複数個配置しても構わない。
【0071】
また、受信部3002において、データ復号部3013の後段に2値化部3020を配置しているが、これに限定されるものではない。例えば、データ復号部3013の前段に2値化部3020を配置しても構わない。
【0072】
なお、多値化部は、SP変換部113と第1〜Nの発光制御部114−1〜Nとの間に配置したが、例えば、SP変換部113や第1〜Nの発光制御部114−1〜Nに多値化の機能を含めても構わない。同様に、2値化部は、データ復号部3013の後段に配置したが、例えば、データ復号部3013に2値化の機能を含めても構わない。
【0073】
なお、本実施形態では、送信信号Snd11(P1,Q1)のみを多値化データとしていたが、これに限定されるものではない。例えば、信号品質が良好である受光素子群の四隅、或いは最外辺部に位置する受光素子に対応する光源からの光信号を多値化データとしても構わない。また、本発明の第2の実施形態で示した図5(n)において、各受光素子の復号時の干渉量(最大値)に基づいて、干渉量が小さい受光素子に対応する光源に対して、多値データを割り当てても構わない。
【0074】
さらに、送信部の各光源にそれぞれ異なる多値データを割り当てても構わない。例えば、信号品質が良好である受光素子群の四隅に位置する受光素子に対応する光源からの光信号を16値データとし、最外辺部に位置する受光素子に対応する光源からの光信号を8値データとして、その他を4値データとすること等が考えられる。
【0075】
なお、本発明の第1〜3の実施形態では、光源および受光素子が2次元に配置された場合を例として説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、1次元配置や3次元配置等であっても構わない。また、光源と受光素子との利用に限定するものではなく、指向性の強い複数の送信および受信アンテナを利用した無線通信にも適用することが可能である。さらに、光源と受光素子は1対1に対応していることを想定しているが、これに限定されるものではなく、複数の受光素子群を1つの受光素子として扱う場合にも同様に、上記復号順序を規定した復号方法を適用しても構わない。
【0076】
なお、本発明の第1〜3の実施形態に係る空間多重通信装置の送信部および受信部を構成する各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSI(集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、又はウルトラLSI等と称される)として実現される。これらは、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全部を含むように1チップ化されてもよい。
また、集積回路化の手法は、LSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別の技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る空間多重通信装置の送信部および受信部は、高効率伝送を実現する通信装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部1000を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る4行×4列に配置された受光素子において受光した受信信号を復号する手順を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部1100を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部2000を示す図
【図5】本発明の第2の実施形態に係る4行×4列に配置された受光素子において受光した受信信号の復号順序を決定する手順を示す図
【図6】本発明の第2の実施形態に係るパイロット信号を用いて各受光素子が受ける干渉量のみを測定する手順を示す図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る4行×4列に配置された受光素子において受光した受信信号を復号する手順を示す図
【図8】本発明の第3の実施形態に係る空間多重通信装置の送信部3001を示す図
【図9】本発明の第3の実施形態に係る空間多重通信装置の受信部3002を示す図
【図10】本発明の第3の実施形態に係る4行×4列に配置された受光素子において受光した受信信号を復号する手順を示す図
【図11】従来技術における空間多重通信システムの概念図
【図12】一般的な空間多重通信装置100のブロック図
【図13】図11に示した送信部110における空間多重処理部111の詳細な構成を示すブロック図
【図14】図11に示した受信部120における空間分離処理部122の詳細な構成を示すブロック図
【図15】受光素子と光源の光スポットとの関係を示す図
【図16】受信信号を誤った情報データとして復号していることを示す図
【図17】隣接し合う受光素子を1つの受光素子群と見なしていることを示す図
【符号の説明】
【0079】
100 空間多重通信装置
101 LED
102 レンズ
103 イメージセンサ
110、3001 送信部
111、311 空間多重処理部
112−1〜N 光源
113 SP変換部
114−1〜N、114 発光制御部
120、1000、1100、2000、3002 受信部
121−1〜N、1001−1〜N、2001−1〜N 受光素子
122、1010、2010、3010 空間分離処理部
123−1〜N、123、1013、2032、3013 データ復号部
124 PS変換部
1011、2011 復号位置決定部
1012、2031 干渉除去部
1014、1114、2021、2033 干渉量推定部
1015、2022、2034 干渉量記憶部
2012 スイッチ
2020 復号順序決定部
2023 復号順序記憶部
2030 干渉推定除去復号部
301 多値化部
3020 2値化部
S10、S30、S300 情報データ
S10−1〜N、S22−1〜N 部分情報データ
S11、S11−1〜N 発光制御信号
S20 光信号
S21、S21−1〜N 受光信号
S101、S202 干渉量情報
S201 復号位置情報
Snd10、Snd11 送信信号
Ifc10、Ifc11 干渉パターン
Rcv10、Rcv11 受信信号
Odr10 復号順序
Dcd10、Dcd100、Dcd200、Dcd300、Dcd301 復号データ
PS01〜16 パイロット信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いて空間多重通信を行う受信部であって、
前記複数の光源と1対1に対応付けられ、前記複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、
予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、
第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、
前記干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、
前記データ復号部で復号された受信信号に基づいて、前記第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、
前記干渉量推定部で推定された干渉量を前記第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を前記干渉除去部に、前記干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部とを備える、空間多重通信装置の受信部。
【請求項2】
前記復号順序は、前記複数の受光素子で構成される受光素子群において、当該受光素子群の外縁部に位置する受光素子から中心部に位置する受光素子の順に規定されることを特徴とする、請求項1に記載の空間多重通信装置の受信部。
【請求項3】
前記復号順序は、前記受信信号が復号されていない隣接する受光素子が少ない受光素子から順に規定されることを特徴とする、請求項1に記載の空間多重通信装置の受信部。
【請求項4】
複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いて空間多重通信を行う受信部であって、
前記複数の光源と1対1に対応付けられ、前記複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、
第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、
前記復号位置決定部が選択する受光素子の前記復号順序を決定する復号順序決定部と、
前記復号順序決定部で決定された復号順序に従って、前記受光した受信信号を復号する干渉推定除去復号部と、
前記復号順序を決定する場合は、前記復号位置決定部と復号順序決定部とを接続し、前記復号順序に従って前記受光した受信信号を復号する場合は、前記復号位置決定部と干渉推定除去復号部とを接続するスイッチとを備え、
前記復号順序決定部は、
前記複数の受光素子のそれぞれにおいて、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を推定する第1の干渉量推定部と、
前記第1の干渉量推定部で推定された干渉量を記憶する第1の干渉量記憶部と、
前記干渉量が少ない受光素子から順に復号順序を決定し、当該復号順序を記憶し、さらに当該復号順序を前記復号位置決定部に復号位置情報として通知する復号順序記憶部とを備え、
前記干渉推定除去復号部は、
第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、
前記干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、
前記データ復号部で復号された受信信号に基づいて、前記第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する第2の干渉量推定部と、
前記第2の干渉量推定部で推定された干渉量を前記第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を前記干渉除去部に、前記干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する第2の干渉量記憶部とを備える、空間多重通信装置の受信部。
【請求項5】
前記復号順序は、既知のパイロット信号を利用して、前記複数の受光素子のそれぞれにおいて、当該受光素子に対応する光源以外からの光信号による干渉量を測定することによって決定されることを特徴とする、請求項6に記載の空間多重通信装置の受信部。
【請求項6】
複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いた受信部との間で空間多重通信を行う空間多重通信装置であって、
前記送信部は、
情報データを符号化する符号化部と、
前記符号化された情報データを分解し、並列化する空間多重処理部と、
それぞれ入力された情報データに基づいて、送信信号を発光する複数の光源とを備え、
前記受信部は、
前記複数の光源と1対1に対応付けられ、前記複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、
予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、
第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、
前記干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、
前記データ復号部で復号された受信信号に基づいて、前記第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、
前記干渉量推定部で推定された干渉量を前記第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を前記干渉除去部に、前記干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部とを備える、空間多重通信装置。
【請求項7】
前記送信部は、前記復号順序に対応して、前記複数の光源のそれぞれに入力する情報データの順序を決定することを特徴とする、請求項6に記載の空間多重通信装置。
【請求項8】
前記送信部は、前記干渉量が小さい受光素子に対応する光源に、より優先度の高い情報データを割り当てることを特徴とする、請求項6に記載の空間多重通信装置。
【請求項9】
前記送信部は、前記干渉量が小さい受光素子に対応する光源に、より少ない発光パワーを設定することを特徴とする、請求項6に記載の空間多重通信装置。
【請求項10】
複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いた受信部との間で空間多重通信を行う空間多重通信装置であって、
前記送信部は、
情報データを符号化する符号化部と、
前記符号化された情報データを分解し、並列化する空間多重処理部と、
それぞれ入力された情報データに基づいて、送信信号を発光する複数の光源とを備え、
前記空間多重処理部は、前記干渉量が小さい受光素子に対応する光源に、より多くの情報データ量を割り当てる多値化部を備えることを特徴とし、
前記受信部は、
前記複数の光源と1対1に対応付けられ、前記複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、
予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、
第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、
前記干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、
前記データ復号部で復号された受信信号を2値化する2値化部と、
前記データ復号部で復号された受信信号に基づいて、前記第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、
前記干渉量推定部で推定された干渉量を前記第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を前記干渉除去部に、前記干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部とを備え、
前記2値化部は、前記多値化部によって多値化された光信号を受光する受光素子を対象として、2値化処理を行うことを特徴とする、空間多重通信装置。
【請求項11】
複数の光源を用いた送信部と、複数の受光素子を用いて空間多重通信を行う受信部に用いる集積回路であって、
前記複数の光源と1対1に対応付けられ、前記複数の光源から発光される光信号を受光する複数の受光素子と、
予め第1〜N(Nは正の整数)で規定された復号順序に従って、受光素子を選択する復号位置決定部と、
第1〜N番目の受光素子のそれぞれについて、第K(Kは1以上N以下の整数)番目の受光素子が選択されるごとに、第K〜N番目の受光素子で受光された受信信号から、第(K−1)番目の受光素子に対応する光源からの光信号による干渉量(ただし、K=1の場合はデフォルト値“0”)を除去する干渉除去部と、
前記干渉除去部で干渉量が除去された、第K番目の受光素子で受光された受信信号を復号するデータ復号部と、
前記データ復号部で復号された受信信号に基づいて、前記第K番目の受光素子に対応する光源からの光信号が、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を推定する干渉量推定部と、
前記干渉量推定部で推定された干渉量を前記第1〜N番目の受光素子ごとに記憶し、前記第(K+1)〜N番目の受光素子に与える干渉量を前記干渉除去部に、前記干渉除去部において除去に用いられる干渉量として通知する干渉量記憶部として機能する回路を集積する、空間多重通信装置の受信部に用いる集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−152835(P2009−152835A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328559(P2007−328559)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】