説明

空間情報データベース生成装置及び空間情報データベース生成プログラム

【課題】高い測量精度を実現することができる空間情報データベース生成装置及び空間情報データベース生成プログラムを提供する。
【解決手段】正射投影作成部18が光学カメラ10により取得された地表面の光学画像から正射投影図を作成し、DSM生成部20が正射投影図からDSMを生成する。また、レーザ点群データ生成部22が、レーザ測量装置による地表面のレーザ測量結果に基づき、三次元点群データを生成する。オブジェクト生成部24は、DSMの高さデータ及び三次元点群データの高さデータを、建物等のオブジェクト毎に一塊化する。合成部26は、上記一塊化したDSMの高さデータ及び三次元点群データから同一のオブジェクトを抽出し、それぞれの座標情報に基づいて対応付けを行って、各オブジェクト毎に、光学画像の高さ情報を、三次元点群データの高精度な高さ情報に置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間情報データベース生成装置及び空間情報データベース生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地表面の形状を測量する方法が種々開発されている。例えば、航空機または人工衛星を用いた測量では、光学カメラにより取得した画像により平面位置を測量するとともに、上記画像をオーバーラップして撮影し、画像が重なる領域をステレオ処理することにより対象物の高さデータを取得する。下記特許文献1には、人工衛星から光学カメラにより取得したステレオ画像により地表面の三次元データベースを生成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−141575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の技術においては、光学カメラを使用した測量であるので、測量精度、特に高さ情報の精度を高くすることができないという問題があった。
【0004】
ここで、高さ情報の測量精度を高くするためにはレーザ測量を行うことが考えられる。しかし、上記特許文献1の第0009段落にも記載されているように、従来はレーザ測量により収集した高さデータの集まりから一塊のオブジェクト(建物等)を抽出する技術がまだ確立されていないため、光学カメラにより取得した写真画像に基づいて手動にて建物の輪郭を指定し、高さデータをオブジェクト単位に纏める必要があった。また、上記オブジェクトと写真画像とを合成しようとしても、レーザ測量と光学カメラによる測量とでは互いに別の機材でデータが収集されているため、観測座標系が異なり、容易に位置合わせを行うことができないという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い測量精度を実現することができる空間情報データベース生成装置及び空間情報データベース生成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の空間情報データベース生成装置の発明は、所定の高さから地表面の光学画像を取得する光学画像取得手段と、所定の高さから地表面の高さ情報をレーザ測量にて取得するレーザ測量手段と、前記光学画像を取得した位置と前記レーザ測量を行った位置の座標情報を取得する座標取得手段と、前記光学画像に含まれる高さ情報と前記レーザ測量にて取得された高さ情報との相似性及び前記座標情報とに基づき、前記光学画像と前記レーザ測量にて取得された高さ情報とを合成する合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の空間情報データベース生成装置において、前記合成手段が、前記光学画像から正射投影図を生成し、前記正射投影図から作成した数値表層モデルの高さ情報を各対象物毎に一塊化するとともに、前記レーザ測量にて取得された高さ情報を各対象物毎に一塊化し、前記一塊化した各対象物の位置情報に基づいて前記光学画像に前記レーザ測量にて取得された高さ情報を合成することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の空間情報データベース生成プログラムの発明は、コンピュータに、光学画像から正射投影図を生成し、前記正射投影図から作成した数値表層モデルの高さ情報を各対象物毎に一塊化し、レーザ測量にて取得された高さ情報を各対象物毎に一塊化し、前記一塊化した各対象物の位置情報に基づいて前記光学画像に前記レーザ測量にて取得された高さ情報を合成する処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明によれば、高精度の空間情報データベースを生成することができる空間情報データベース生成装置及び空間情報データベース生成プログラムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0011】
図1には、本発明にかかる空間情報データベース生成装置の一実施形態の構成例が示される。図1において、空間情報データベース生成装置は、光学カメラ10、レーザ測量装置12、座標取得装置14及び制御装置16を含んで構成されている。なお、本実施形態の空間情報データベース生成装置は、航空機または人工衛星から地表面の測量を行ったデータにより空間情報データベースを生成するものである。
【0012】
光学カメラ10は、例えばデジタルカメラにより構成され、地表面の光学画像を取得する。なお、図1では、光学カメラ10が1台だけ記載されているが、同時に2方向から光学画像を取得してステレオ処理が可能となるように構成されている。これにより、三次元位置情報を含む光学画像情報を得ることができる。
【0013】
レーザ測量装置12は、レーザ光の照射装置及び受光装置を含んで構成され、レーザ光を地表面に照射し、反射して戻ってくるまでの時間から距離を求め、地表面の高さ情報を取得する。この場合、レーザ光照射時の角度を考慮することで計測対象の3次元位置を計測することができる。なお、予め指定された計測範囲に対して所定の点数(例えば、2点/m)にて計測を行うので、測量結果としては、三次元位置情報と受光強度(レーザ反射強度)とを数値化した点群データ(三次元点群データ)と呼ばれる点データの集まりが得られる。なお、上記三次元位置情報には、後述する座標取得装置14が取得する座標情報を含ませるのが好適である。
【0014】
座標取得装置14は、例えばGPS(Global Positioning System、全地球測位システム)受信機とIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)とを含んで構成され、上記光学カメラ10及びレーザ測量装置12による測量位置の座標情報を取得する。取得した座標情報は、対応する光学画像及び三次元点群データに関連付けられる。
【0015】
制御装置16は、コンピュータ等のデータ処理装置により構成され、上記光学カメラ10が取得した光学画像に含まれる高さ情報と上記レーザ測量装置12が取得した高さ情報との相似性を求め、この相似性と上記座標取得装置14が取得した座標情報とに基づき、上記光学画像に上記高さ情報を合成する。合成処理については後述する。
【0016】
図2には、図1に示された空間情報データベース生成装置を航空機に搭載し、地表面の測量を行う場合の説明図が示される。図2において、航空機100には、図1で述べた空間情報データベース生成装置のうち、少なくとも光学カメラ10、レーザ測量装置12及び座標取得装置14が搭載されている。座標取得装置14は、GPS衛星(ナブスター衛星)102から所定の信号を受信し、IMUと協働して座標情報を取得する。この際、GPS地上参照局(国土地理院電子基準局)104の補正データを使用して、上記取得した座標情報を補正してもよい。
【0017】
航空機100が測量地域の上空を飛行し、各測量点a,b,…,i,…で光学カメラ10及びレーザ測量装置12により地表面の光学撮影及びレーザ測量を行う。また、座標取得装置14が、光学撮影及びレーザ測量を行った時点で座標を取得する。これにより、光学撮影した画像及びレーザ測量した点に座標情報を関連付けることができる。
【0018】
図3には、図1に示された制御装置16の一実施形態の機能ブロック図が示される。図3において、制御装置16は、正射投影作成部18、DSM生成部20、レーザ点群データ生成部22、オブジェクト生成部24及び合成部26を含んで構成されている。これら制御装置16の各機能は、中央処理装置(例えばCPUを用いることができる)及びCPUの処理動作を制御するプログラムにより実現され、例えばパーソナルコンピュータ上で構成することができる。
【0019】
正射投影作成部18は、光学カメラ10で取得した地表面の光学画像から正射投影図(ツルーオルソ)を作成する。この正射投影図では、画素毎に高さ情報を有している。
【0020】
DSM生成部20は、上記正射投影図の高さ情報を使用して、建物、樹木等を含む地表面の数値表層モデル(DSM:Digital Surface Model)を生成する。正射投影図では、地表面に存在する建物等の倒れこみが発生しないので、DSMを容易に生成することができる。
【0021】
レーザ点群データ生成部22は、レーザ測量装置12による地表面のレーザ測量結果に基づき、三次元点群データを生成する。
【0022】
オブジェクト生成部24は、上記DSM生成部20が生成したDSMの高さデータ及びレーザ点群データ生成部22が生成した地表面の三次元点群データの高さデータを、建物等の対象物(オブジェクト)毎に一塊化する。
【0023】
合成部26は、上記オブジェクト生成部24が一塊化したDSMの高さデータ及び三次元点群データ毎に、座標取得装置14が取得した座標情報を抽出し、この座標情報に基づいて各オブジェクト毎に光学画像と三次元点群データとを合成する。この合成処理では、光学画像が有している高さ情報が、レーザ測量により得られた三次元点群データの高精度な高さ情報に置き換えられる。これにより、高精度の高さ情報を有する光学画像を得ることができ、高精度の空間情報データベースを生成できる。
【0024】
図4には、上記制御装置16の動作例のフローが示される。また、図5(a)、(b)、(c)には、制御装置16における光学画像と三次元点群データとの合成処理の説明図が示される。なお、図4では、光学カメラ10により取得された地表面の光学画像と、レーザ測量装置12による地表面のレーザ測量結果とが制御装置16に入力されていることを前提としている。
【0025】
図4において、正射投影作成部18が上記光学画像から正射投影図を作成し、DSM生成部20が正射投影図からDSMを生成する(S1)。
【0026】
図5(a)は、2つの建物A,Bが存在する測量地域の光学画像から生成したDSMの例である。光学画像の場合には、建物A,Bの輪郭が鮮明なDSMとすることができる。
【0027】
また、図4において、レーザ点群データ生成部22が、レーザ測量装置12による地表面のレーザ測量結果に基づき、三次元点群データを生成する(S2)。
【0028】
図5(b)には、図5(a)と同じ測量地域をレーザ測量した場合の概念図である。レーザ測量では、建物A,B及びその周辺にレーザ光を照射し、照射点の高さ情報を取得する。その高さ情報を取得した点(レーザ測量点)が図5(b)の白丸(○)で表されている。
【0029】
次に、オブジェクト生成部24が、DSMの高さデータ及び三次元点群データの高さデータを、建物等のオブジェクト毎に一塊化する(S3)。
【0030】
DSMの高さデータを一塊化すると、例えば図5(a)に示される建物A,Bが、別々のオブジェクトとして認識される。また、三次元点群データの高さデータを一塊化すると、図5(c)に示されるように、建物A,B上のレーザ測量点がグルーピングされ、建物A,Bに属する測量点の組を別オブジェクトとして認識することができる。これにより、DSMの高さデータ及び三次元点群データの高さデータを、相似性を有するオブジェクト毎に対応付けることが可能となる。
【0031】
次に、合成部26が、上記一塊化したDSMの高さデータ及び三次元点群データから同一のオブジェクトを抽出し、対応付けを行う(S4)。この対応付けは、座標取得装置14が取得し、光学画像及び三次元点群データに持たせておいた座標情報を使用し、各オブジェクトの位置情報(地上座標を含む地表面座標)が一致するか否かを判定して行う。これにより、例えば図5(a)の建物A,Bと、図5(c)の建物A,Bとの対応付けを行うことができる。
【0032】
さらに、合成部26は、対応づけられたオブジェクト毎に、光学画像が有している高さ情報を、レーザ測量により得られた三次元点群データの高精度な高さ情報に置き換える(S5)。
【0033】
以上の工程により、レーザ測量により取得した高精度の高さ情報を光学画像に反映した、高精度の空間情報データベースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる空間情報データベース生成装置の一実施形態の構成例を示す図である。
【図2】本発明にかかる空間情報データベース生成装置を航空機に搭載し、地表面の測量を行う場合の説明図である。
【図3】図1に示された制御部の一実施形態の機能ブロック図である。
【図4】図1に示された制御部の動作例のフロー図である。
【図5】光学画像と三次元点群データとの合成処理の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10 光学カメラ、12 レーザ測量装置、14 座標取得装置、16 制御装置、18 正射投影作成部、20 DSM生成部、22 レーザ点群データ生成部、24 オブジェクト生成部、26 合成部、100 航空機、102 GPS衛星、104 GPS地上参照局。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さから地表面の光学画像を取得する光学画像取得手段と、
所定の高さから地表面の高さ情報をレーザ測量にて取得するレーザ測量手段と、
前記光学画像を取得した位置と前記レーザ測量を行った位置の座標情報を取得する座標取得手段と、
前記光学画像に含まれる高さ情報と前記レーザ測量にて取得された高さ情報との相似性及び前記座標情報とに基づき、前記光学画像と前記レーザ測量にて取得された高さ情報とを合成する合成手段と、
を備えることを特徴とする空間情報データベース生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の空間情報データベース生成装置において、前記合成手段は、前記光学画像から正射投影図を生成し、前記正射投影図から作成した数値表層モデルの高さ情報を各対象物毎に一塊化するとともに、前記レーザ測量にて取得された高さ情報を各対象物毎に一塊化し、前記一塊化した各対象物の位置情報に基づいて前記光学画像に前記レーザ測量にて取得された高さ情報を合成することを特徴とする空間情報データベース生成装置。
【請求項3】
コンピュータに、
光学画像から正射投影図を生成し、
前記正射投影図から作成した数値表層モデルの高さ情報を各対象物毎に一塊化し、
レーザ測量にて取得された高さ情報を各対象物毎に一塊化し、
前記一塊化した各対象物の位置情報に基づいて前記光学画像に前記レーザ測量にて取得された高さ情報を合成する処理を実行させることを特徴とする空間情報データベース生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−32063(P2009−32063A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196004(P2007−196004)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】