説明

空間的変動性傾斜角を有する液晶層

【課題】空間的変動性傾斜角を有する液晶層を提供する。
【解決手段】空間的変動性傾斜角を有する液晶層を含む光学要素を作製する方法は、線状光重合可能なポリマー層で基板をコーティングすること、線状光重合可能なポリマー層を、直線偏光した紫外線光で、斜め角度で照射すること、および、照射された線状光重合可能なポリマー層の表面上に液晶材料の層をコーティングすることを含む。液晶材料は、その傾斜角と直線偏光した紫外線光の総投与量との間に予め決められた関係を有する。線状光重合可能なポリマー層は、隣接または周囲領域より大きな面内複屈折率を有する液晶層内に複数の離散領域の形成を誘発するのに十分である直線偏光した紫外線光の少なくとも1つの投与量で照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互引用]
本出願は、参照により組込まれる2009年8月7日に出願された米国仮出願第61/232,313号からの優先権を主張する。
【0002】
[マイクロフィッシュ付録]
該当無し
【0003】
本出願は、一般に、空間的変動性傾斜角を有する液晶(LC)層に関し、特に、空間的変動性LCP傾斜角を有する液晶ポリマー(LCP)を作る方法、LCPで作られる光学要素、およびLCPの用途に関する。
【背景技術】
【0004】
空間的変動性傾斜角を有する液晶(LC)は、種々の用途で使用されてきた。たとえば、プログラマブルな液晶(LC)ベースの空間光変調器(SLM)上に符合化された、回折格子およびより複雑な薄いホログラムは、光ビームの波面を変更する方法として積極的に研究されてきた。LC/SLM上に符合化されたプログラマブルな薄いホログラムは、非常に多様性があるが、これらの能動的コンポーネントは、多くの用途について費用対効果に優れていない。さらに、これらのプログラマブルな薄いホログラムは、比較的小さな操向角を提供することが知られている。たとえば、最新式のLCオン・シリコン(LCoS)パネルは、10μm未満のピクセル・ピッチを有する可能性があり、0.5μmの波長でかつ回折格子周期について2つのピクセルの最小値を利用すると、約1.4°の最大ビーム偏向角を提供する。全ての他のプログラマブルなホログラム出力(たとえば、リプレイと呼ばれる)は、さらに小さな偏向角を有するであろう。
【0005】
より最近、空間的変動性傾斜角を有する液晶ポリマー(LCP)を使用して、上述した回折格子および/またはより複雑な薄いホログラムなどの光学要素を形成することに対する関心が増加してきた。たとえば、米国出願第20090009668号(Tan他)は、LCP膜に基づく偏光選択性回折光学要素を提案している。LCP膜は、ピクセルのアレイを含み、ピクセルはそれぞれ、固定液晶ダイレクタで符合化されるため、各液晶ダイレクタは、LCP膜に垂直な共通面内に配向し、面外傾斜の予め決められたパターンを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮出願第61/232,313号
【特許文献2】米国出願第20090009668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回折格子および/またはより複雑なホログラムなどの、空間的変動性傾斜角を有するLCP層を有する光学コンポーネントを形成する方法を提供する。本発明はまた、空間的変動性傾斜角を有するLCPを含む光学コンポーネントおよび前記光学コンポーネントを含むシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、空間的変動性傾斜角を有する液晶層を含む光学要素を作製する方法が提供され、方法は、a)線状光重合可能なポリマー層で基板をコーティングするステップと、b)線状光重合可能なポリマー層を、直線偏光した紫外線光で、斜め角度で照射するステップと、c)照射された線状光重合可能なポリマー層の表面上に液晶材料の層をコーティングするステップとを含み、液晶材料は、その傾斜角と直線偏光した紫外線光の総投与量との間に予め決められた関係を有し、線状光重合可能なポリマー層は、隣接領域より大きな面内複屈折率を有する液晶層内に複数の離散領域の形成を誘発するのに十分である直線偏光した紫外線光の少なくとも1つの投与量で照射される。
【0009】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面と組合せて考えられる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】LC層に対する座標系の略図である。
【図1b】LC層の光学軸についての座標系の略図である。
【図1c】離散的に変動した傾斜軸を有する基板上のLC層の側面図を示す略図である。
【図1d】連続して変動した傾斜軸を有する基板上のLC層の側面図を示す略図である。
【図2】LCP層内に可変傾斜斜め配向を課すためのLPP用のLPUV露光システム・セットアップを示す略図である。
【図3】ROP119/ROF5106システムについての、面内複屈折率挙動対LPUV投与量を示すプロットである。
【図4】本発明の一実施形態によるLCP傾斜角回折格子構造の実施例を示す図である。
【図5】本発明の別の実施形態による、方位角配向回折格子と組合せた、LCP傾斜角回折格子構造の実施例を示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態による、LCP層内の連続する傾斜角勾配の実施例を示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態による、より高い傾斜を有するLCP層の領域内に低傾斜ドメイン(LTD)を有するLCP層の実施例を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態による、低い傾斜の回折格子線上に核形成されたLTDを有するLCP層の実施例を示す図である。
【図9】ランダムな傾斜角および均一な方位角配向を有するLDデバイスを示す略図である。
【図10】(a)の1軸O板ダイレクタの、(b)の面内および面外複屈折率コンポーネントへの投影を示す図である。
【図11】λ=400nmにおいてLCP1軸材料を使用してA板構成ピクセルと比較したときの、所与のLCダイレクタ傾斜の位相差を示すプロットである。
【図12】各XYサイトにおける位相変調を時間的に変化させることによってスペックルを低減するための、XYランダムLCダイレクタ極傾斜を有する位相セルを含むレーザベースの照明システムのサブシステムを示す略図である。
【0011】
添付図面全体を通して、同じ特徴は、同じ参照数字によって特定されることが留意されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、LC層がその上に堆積される基板のエリアにわたって空間的に変動した、そのダイレクタまたは光学軸の傾斜角を有する液晶(LC)材料層を作る方法に関する。LC材料は、従来の液晶(非ポリマー)または液晶ポリマー(LCP)であってよい。用語、傾斜角は、LCの光学軸と基板の平面との間の角度を指す。正の1軸LC材料の場合、光学軸はまた、遅軸(SA)と呼ばれる。
【0013】
図1aを参照すると、LC層10は、基板11上に堆積されて示される。基板11の平面は、x−y平面に平行であるように示され、一方、z軸は、主表面に垂直である。本発明の一実施形態によれば、LC層の傾斜軸は、基板のエリアにわたって空間的に変動する(すなわち、x−y平面にわたって変動する)。図1bを参照すると、ベクトルαとして示される光学軸は、極角θおよび方位角φによって画定されうる。方位角φは、基板の平面に関連するある任意の参照方向(たとえば、x軸であるように示される)に対して測定された、基板の平面に投影された光学軸の方位角配向を指す。極角θは、ダイレクタの傾斜角であり、ベクトルがx−y平面からずれる角度に相当する。
【0014】
0°に等しい空間的に一定の傾斜角を有するLC材料は、通常、A板と呼ばれ、均質な配向を持つと言われる。90°に等しい空間的に一定の傾斜角を有するLC材料は、通常、C板と呼ばれ、ホメオトロピック配向を持つと言われる。0°と90°との間の均一な傾斜角を有するLC材料は、通常、O板と呼ばれ、A板とC板の両方のリターダンス成分を持つと理解される。
【0015】
一般に、空間的変動性傾斜角は、傾斜角が、予め決められたまたはランダムな順序でLC層の表面にわたって変動することを意味する。たとえば、前者に関して、図1cは、離散パターンを有する空間的に変動した傾斜軸を示し、一方、図1dは、連続したパターン(たとえば、ある勾配)に追従する空間的に変動した傾斜軸を示す。LC材料の傾斜角が変動するにつれて、面内(in-plane)(または、A板成分)有効複屈折率Δnも変動する。たとえば、正の1軸LC材料の傾斜が0°〜90°に増加するにつれて、そのΔn値は、LC材料の内因性Δn値からゼロまで減少する。Δnd(dはLC材料層の物理的厚さ)の積である面内(A板)リターダンスΓは、Δnに直接依存する。したがって、LC材料の傾斜角が変動するにつれて、面外(out-of-plane)(C板)リターダンスΓも変動する。Δnの変動の別の結果は、平均の面内屈折率nA,avgの変動である。
【0016】
一般に、空間的変動性傾斜角は、0°と90°との間の2つ以上の異なる傾斜角を有するO板を形成することが可能なLC材料層において生じる。より具体的には、LC材料は、基板上にコーティングされ、基板のエリアにわたって、傾斜角は、連続して、離散的に、またはランダムに変動するようにさせられる。傾斜角θが、LC材料層の表面にわたって変動する間、方位角φは、均一であってよく、または、LC材料層のエリアにわたって、連続して、または離散的に変動するようにさせられてもよい。一般に、空間的変動性傾斜角は、基板の表面に沿った横断方向に変動する平均傾斜角を指す。より具体的には、表面上の各地点における傾斜角は、層の厚さにわたるLCダイレクタの平均であることになる(すなわち、傾斜角は、通常、配向層に非常に近いであろう)。
【0017】
一実施形態では、LC層は、O板タイプLCP前駆体から形成され、その傾斜角は、実験条件によって決められる。たとえば、一実施形態では、LCP前駆体は、Rolicから入手可能なROF5106LCP前駆体である。他の実施形態では、LC層は、同様にRolicから入手可能なROF5113LCP前駆体と種々の比で混合されたROF5106から形成される。混合された混合物は、種々の範囲の傾斜角が得られることを容易に可能にするため、有利である。O板タイプLCP前駆体は、LCP前駆体層を堆積する前に、基板上に最初にコーティングされる配向層材料と共に使用される。一般に、配向層材料は、その後コーティングされるLCP前駆体の傾斜角が、それによって制御されうるメカニズムを示すことになる。一実施形態では、配向層は、線状光重合可能な(LPP)ポリマーであり、LPPポリマーは、非ゼロ入射角(AOI)で直線偏光した紫外線(LPUV)放射の制御された投与量が照射されると、その後のコーティングされるLCP前駆体層において、予め決められた方位角配向および予め決められた傾斜角を誘発することになる。上述したLPP/LCPシステムの場合、予め決められた傾斜角は、LPUVエネルギー投与量を制御することによって達成される。たとえば、一実施形態では、Rolicから入手可能なROP119は、LPP層を形成するのに使用され、LCP層は、Rolicから入手可能なROF5106LCP前駆体、または、同様にRolicから入手可能なROF5113LCP前駆体と種々の比で混合されたROF5106から形成される。結果として得られるLPP/LCPシステムは、LCPにおいて、ある範囲内で、制御された傾斜角を提供することを示した。有利には、このプロセスは、使用される厳密なAOIに著しく感度が高いわけではないが、一般に、AOIは、実質的にゼロと異なるであろう。
【0018】
図2を参照すると、空間的変動性傾斜角を有するLC層を有する光学要素を作製するシステムが示される。光学セットアップ60は、作製下のデバイス65を支持するマウント、直線偏光した紫外線(LPUV)光露光システム70、およびフォトマスク75を含む。作製下のデバイス65は、線状光重合可能な(LPP)配向層67が堆積される基板66を含む。LPUV露光システム70は、UV光源71、コリメーティング・レンズ72、およびUV偏光器73を含む。あるいは、コリメーティング・レンズ72は、コリメーティング反射体と置換えられる。フォトマスク75は、予め決められた方式で変動するレベルの光を配向層に提供するように、パターニングされる/設計される。特に、フォトマスク75は、横断方向空間座標の関数として、変動するレベルのエネルギー密度を配向層に提供するようにパターニングされる。一実施形態では、フォトマスク75は、可変透過率マスクである。別の実施形態では、フォトマスク75は、可変サイズ・アパーチャ・マスクである。別の実施形態では、横断方向空間座標の関数として配向層に送出される、変動するレベルのエネルギー密度の作用を生成するために、一連のバイナリ・マスクが、個々に使用される。なお別の実施形態では、横断方向空間座標の関数として配向層に送出される、変動するレベルのエネルギー密度の作用を生成するために、マスク有り露光とマスク無し露光の組合せが使用される。
【0019】
動作時、光源71は、基板66の表面に斜め角度でLPUV光を供給する。この実施形態では、水平基板に対して傾斜している光源が示される。他の実施形態では、基板が、光源に対して傾斜している。非垂直LPUV光入射およびそのエネルギー密度投与量は、配向層67の変化を引起し、配向層67の変化は、その後堆積されるLCP前駆体層内のLCダイレクタに、斜め角度で配向させる(ある方位角において基板の面外に傾斜する)。この実施形態では、UV偏光器73は、図面の平面(たとえば、入射平面である)に平行に偏光したUV光を、高い透過率で透過するように配向する。LPP材料の化学物質に応じて、この構成は、通常、その後堆積されるLCP層のLCダイレクタが、LPUV入射平面に平行かまたは垂直な方位角面内に配向することをもたらすことになる。LCダイレクタの実際の面外傾斜は、LPP配向層67に送出されるLPUVエネルギー密度投与量に依存する。フォトマスク75は、種々のエネルギー密度を、予め決められたパターンで配向層67に供給するため、可変の面内リターダンスを有する、空間的変動性傾斜角を有するその後形成されるLCP膜が生じる。LCダイレクタの面外傾斜は、膜にわたって予め決められた方式で変動するが、この実施形態では、LCダイレクタの方位角は一定である。LPP層が、こうしてLPUVに露光されると、液晶ポリマー前駆体の薄層が、配向層上にコーティングされる。この層は、その後、(たとえば、偏光される必要はない)UV光に露光されて、LCP前駆体を架橋結合し、LCダイレクタを予め決められた斜め角度に固定する。したがって、単一基板によって支持される必要があるだけである、比較的安定なLCP層が提供される。
【0020】
この作製技法は、好ましくは、LCP前駆体をLCPに変換するためにその後のUV照射によって架橋結合するLCP前駆体を参照して述べられたことに留意されたい。一般に、O板LCP層は、当技術分野で知られているLPPおよびO板LC化合物の任意の化合物を使用して形成されてもよく、そのうちの後者は、UV照射によって、かつ/または、熱で、重合化されてもよい、かつ/または、架橋結合してもよい。たとえば、一実施形態では、LPP層は、50nm厚の配向層を得るために、(たとえば、2000RPMで60秒間)ガラス基板上で、シクロペンタノン内でROP119の2重量%溶液をスピンコーティングすることによって形成される。他の実施形態では、LPP層は、ワイヤコーティング、グラビアコーティング、スロットコーティングなどのようなROP119層をコーティングするために、別のコーティング方法を使用して形成される。一般に、LPP層は、しばしば、当技術分野でよく知られているように、桂皮酸誘導体および/またはフェルラ酸誘導体を含むであろう。本発明によれば、LPP層は、その後塗布されるLCまたはLCP層において面外傾斜を生成するタイプであるであろう。一実施形態では、LPPコーティング・ガラスは、フォトマスクを通してLPUV照射される前に、予め決められた温度(たとえば、180℃)で予め決められた時間(たとえば、5分)の間、ホットプレート上でベーキングされる。一実施形態では、LCP層は、LCP前駆体を含む液晶材料から形成される。たとえば、架橋結合可能なジアクリレート・ネマティック液晶化合物を含んでもよい、LCP前駆体材料は、当技術分野でよく知られている。本発明によれば、LCP材料は、傾斜誘発性LPP層に適切に反応することになるタイプであるであろう。LCP層を形成するのに適する種々のLCP前駆体化合物は、Rolic(Allschwil,CH)から入手可能である。一実施形態では、LCP前駆体層は、アニソール内で、ROF5106LCP前駆体またはROF5106LCP前駆体とROF5113LCP前駆体の混合物の15重量%溶液としてLPP層上でスピンコーティングされる。他の実施形態では、LCP層は、ワイヤコーティング、グラビアコーティング、スロットコーティングなどのような別のコーティング方法を使用して形成される。結果として得られるLPP/LCPデバイスは、その後、LPP配向層に対するLCPの良好な配向を促進するために、通常、予め決められた時間の間、ベーキングされる(すなわち、アニーリングされる)。有利には、LCPを形成するための、LCP前駆体のその後の光化学架橋結合は、膜を固化し、LCダイレクタの配向を永久的にする。これは、高い電力照明および短波長レーザ露光下で改善された信頼性を提供すると思われる。
【0021】
先に説明したように、LPP層によって課される傾斜を制御する1つの方法は、LPP層上へのLPUV投与量を変更することである。図3を参照すると、先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムについての、40°の入射角度で適用されたLPUV投与量に対するΔn応答のプロットが示される。約80mJ/cm未満のLPUV投与量の場合、傾斜角およびΔnにおいて高い変化率が存在する。約180mJ/cmより大きいLPUV投与量の場合、傾斜およびΔnにおいて徐々の変化が存在する。約40mJ/cm未満の低投与量では、種々の傾斜ドメイン欠陥が、このシステムで観測される。より具体的には、マトリクスLCP相内で、マトリクスLCPと全く異なる傾斜を有する隔離された相分離ドメインとしてある程度現れる「低傾斜ドメイン(low tilt-domains)」が観測される。本発明の一実施形態によれば、これらの観測結果は、空間的変動性傾斜角またはパターニングされた傾斜角(たとえば、したがって、Δn、Γ、Γ、ΔnA,av)を有する複屈折光学要素を生成するのに使用される。空間変動性は、離散的であるかまたは連続している、スケールが巨視的であるかまたはスケールが微視的であってよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、LPUV投与量パターンは、一連の1つまたは複数の個々のフォトマスクを通してLPP層を露光することによって確立される。より具体的には、空間的に変調されたLPUV投与量は、1つまたは複数のフォトマスクによって、または、マスク有り露光とマスク無し露光の組合せによって、ある範囲の投与量として、または、2つ以上の離散的な投与量として適用される。
【0023】
たとえば、一実施形態では、空間的変動性傾斜は、2ステップ・プロセスを使用してLPP層を照射することによって、先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムにおいて提供される。第1ステップでは、層は、(たとえば、標準的なアパーチャを通して、全てのロケーションに最小の傾斜角を設定するために)フォトマスク無しで、直線偏光した光に露光される。第2ステップでは、層は、(たとえば、フォトマスクの透過エリアに相当する選択ロケーションにより大きい傾斜角を設定するために)フォトマスクを通して直線偏光した光に露光される。この実施形態では、送出される総合エネルギー密度(すなわち、投与量)は、最初の照射ステップで露光された領域だけと比較すると、第1および第2照射ステップで露光される領域においてより高いことになる。一般に、照明の必要とされるエネルギー密度および波長は、LPP材料に依存することになる。先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムの場合、エネルギー密度は、通常、30mJ/cmと300mJ/cmとの間にあることになり、一方、波長範囲は、通常、280nmと365nmとの間になることになる。LPUVの入射角度は、通常、20°と60°との間であることになる。特に、入射角度(AOI)は、プロセスに著しい影響を及ぼすことが見出されなかったが、一般に、AOIは、実質的にゼロと異なるべきである。
【0024】
この実施形態では、フォトマスクは、LPUVを阻止する第1の複数の領域およびLPUVを透過させる第2の複数の領域(すなわち、バイナリ・マスク)を有する。LPP層上の任意の所与の地点で送出される総合投与量は、(たとえば、LPUVの方位角配向が、全ての露光について同じである場合)露光のそれぞれにおいてその地点に送出される投与量の和であるため、LPPは、その後塗布されるLC層内に空間的変動性傾斜角を誘発することになり、空間的変動性傾斜角は、フォトマスクによって左右される離散的パターンで配列する。たとえば、一実施形態では、空間的変動性傾斜角は、(たとえば、図1cに示す傾斜角パターンに相当する)交互の面内リターダンス・パターンを提供する。
【0025】
一般に、フォトマスクは、意図される用途に応じてパターニングされることになる。一実施形態では、フォトマスクは、変動するエネルギー密度をピクセル化方式で配向層に提供するようにパターニングされる。一般に、ピクセルは、周期的(たとえば、一定間隔)であるか、または、非周期的(たとえば、ランダムまたは予め決められたパターン)であることになる。有利には、フォトマスクの使用は、LCP層が、多数の位相プロファイル・レベルで、かつ、高い精度でパターニングされることを可能にする。一実施形態では、フォトマスクは、2つのレベルの位相プロファイルを提供するようにパターニングされる。別の実施形態では、フォトマスクは、3つ以上のレベルの位相プロファイルを提供するようにパターニングされる。一般に、空間的変動性傾斜角を有するLCは、回折格子またはより複雑なホログラムである場合、適度の回折効率を提供するために、少なくとも4つのレベルの位相プロファイルを有することになる。
【0026】
別の実施形態では、空間的変動性傾斜は、単一フォトマスクを通してLPP層を照射することによって、先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムにおいて提供される。この実施形態では、フォトマスクは、離散的に変動するのではなく、連続して変動する空間的変動性LPUV投与量を提供する光学密度プロファイルを有する勾配マスクである。たとえば、一実施形態では、空間的変動性傾斜角は、連続変動性勾配(たとえば、図1dに示すリターダンス・パターン)を形成する。
【0027】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、LCダイレクタの光学軸は、空間的変動性傾斜角および実質的に均一の方位角を有する。他の実施形態では、LPP層は、複数回照射され、その都度、LPUVは異なる方位角配向を有する。たとえば、一実施形態では、LPUVの方位角配向は、LPP層上の異なる地点に送出される種々の露出間で異なるため、空間的変動性傾斜角および方位角配向の重ね合わされたパターンが、LCP層内に提供される。この場合、LCPの結果として得られる傾斜角および面内配向の予測は、より複雑である。
【0028】
さらに、上述した実施形態のそれぞれでは、基板は、任意選択で、LPP材料がそれについて反応するUV波長について非反射性である非反射性背面を備える。たとえば、一実施形態では、基板の背面は、UV反射防止膜またはUV吸収膜でコーティングされる。有利には、非反射性膜は、投与量パターンを低下させる傾向がありうる、UV透明基板の背面からのLPUVの強い後方反射を防止する。特に、使用されるフォトマスクが、微視的なまたは比較的小さな特徴を持ったパターンを含み、期待される傾斜角パターンを実現することがより難しくなる場合、これは、より多くの問題を生じる。基板材料の内因性反射率が十分に低いか、または、基板がUVに対して非透過性である他の実施形態では、UV非反射背面は、通常LPUVプロセスに必要とされない。
【0029】
図4を参照すると、微視的にパターニングされた傾斜角構造の実施例が示される。より具体的には、構造が、空間的変動性傾斜角を有する第1エリア(すなわち、回折格子領域と表示される)および均一の傾斜角を有する第2エリア(すなわち、非回折格子領域と表示される)を含む画像を写真が示す。上の写真は、交差した偏光器間の透過でサンプルが観察される、明状態(BS)画像であり、一方、下の写真は、交差した偏光器間の透過でサンプルが観察される、暗状態(DS)画像である。
【0030】
空間的変動性傾斜角LCP構造は、50nm厚の配向層を得るために、(たとえば、2000RPMで60秒間)200mm溶融シリカ基板ウェハ上で、シクロペンタノン内でROP119の2重量%溶液を含むLPP層をスピンコーティングすることによって形成された。この実施形態では、反射防止膜は、基板上に設けられなかった。LPPコーティングされた基板は、その後、2ステップ照射プロセスを受けた。第1ステップでは、層は、全てのロケーションに最小の傾斜角を設定するために、1回目の露光で、フォトマスク無しで、LPUVに露光された。より具体的には、この1回目のLPUV露光は、より低い傾斜角に相当する均一の低投与量(すなわち、40mJ/cm)を提供する。第2ステップでは、フォトマスクの透過エリア(5μmスペース)に相当する選択ロケーションにおいてより高い傾斜角を設定するために、回折格子領域が、2回目の露光で、5μm線幅/5μmスペースを有する回折格子フォトマスクを通してLPUV光に露光される。より具体的には、2回目のLPUV露光は、パターニング用の高い投与量(すなわち、100mJ/cm)を提供するため、1回目の低投与量露光と2回目の高投与量露光の和は、フォトマスクの透過エリアに相当するロケーションにおいて生成される高傾斜角に相当する。両方の露光の場合、LPUV光の方位角は、ある任意の基準に対して測定されると、同じであった(この場合、方位角は、回折格子方向に名目上平行であった)。両方の露光の場合、LPUVの入射角は、40°であった。その後、LCP層は、LPP層上でROF5106LCP前駆体の37重量%溶液を(すなわち、1000rpmで)スピンコーティングすることによって形成された。LCP層内のLCダイレクタは、パターニング用のLPUV露光投与量によって画定される傾斜角パターンを採用した。LCP前駆体層は、その後、アニーリングされ、LCPを形成するためにUV硬化され、ポストベーキングされた。
【0031】
結果として得られるLCP層は、傾斜角が交互になる、5ミクロン幅の線を有する回折格子を含んだ。より具体的には、回折格子は、LCP傾斜角が約50°と約65°との間で交互になる(すなわち、それぞれ75〜80nmと25nmとの間で交互になるリターダンスに相当する)ため、高いリターダンスと低いリターダンスの交互の線のパターンを含んだ。回折格子方向は、両方の傾斜角の傾斜平面に平行である。
【0032】
図5を参照すると、微視的にパターニングされた傾斜角構造の別の実施例が示される。より具体的には、構造が、空間的変動性傾斜角を有する第1エリア(すなわち、回折格子領域と表示される)および均一の傾斜角を有する第2エリア(すなわち、非回折格子領域と表示される)を含む画像を写真が示す。上の写真は、交差した偏光器間の透過でサンプルが観察されるBS画像であり、一方、下の写真は、交差した偏光器間の透過でサンプルが観察されるDS画像である。
【0033】
空間的変動性傾斜角LCP構造は、50nm厚の配向層を得るために、(たとえば、2000RPMで60秒間)200mm溶融シリカ基板ウェハ上で、シクロペンタノン内でROP119の2重量%溶液を含むLPP層をスピンコーティングすることによって形成された。この実施形態では、反射防止膜は、基板上に設けられなかった。LPPコーティングされた基板は、その後、2ステップ照射プロセスを受けた。第1ステップでは、LPP層は、(たとえば、標準的なアパーチャを通して、全てのロケーションに最小の傾斜角を設定するために)1回目の露光で、フォトマスク無しで、LPUVに露光される。より具体的には、この1回目のLPUV露光は、より低い傾斜角に相当する均一の低投与量(すなわち、40mJ/cm)を提供する。第2ステップでは、フォトマスクの透過エリア(5μmスペース)に相当する選択ロケーションにおいてより高い傾斜角を設定するために、回折格子領域が、2回目の露光で、5μm線幅/5μmスペースを有する回折格子フォトマスクを通してLPUV光に露光される。より具体的には、2回目のLPUV露光は、パターニング用の高い投与量(すなわち、100mJ/cm)を提供するため、1回目の低投与量露光と2回目の高投与量露光の和は、フォトマスクの透過エリアに相当するロケーションにおいて生成される高傾斜角に相当する。1回目の露光の場合、LPUV光の方位角は56.7°であった。2回目の露光の場合、LPUV光の方位角は0°であった。両方の露光の場合、LPUVの入射角は、40°であった。その後、LCP層は、LPP層上でROF5106LCP前駆体の37重量%溶液を(すなわち、1000rpmで)スピンコーティングすることによって形成された。LCP層内のLCダイレクタは、LPUVのパターニング用の露光投与量および方位角によって画定される傾斜角パターンおよび方位角パターンを採用した。LCP前駆体層は、その後、アニーリングされ、LCPを形成するためにUV硬化され、ポストベーキングされた。
【0034】
結果として得られるLCP層は、線間の遅軸(SA)方位角オフセットを有する高/低傾斜線の回折格子を含んだ。特に、高/低傾斜線は、ほぼ45°のSAオフセットを示した。より具体的には、45°のSAオフセットは、結果として得られる低傾斜SAが回折格子方向からほぼ57°であり、結果として得られる高傾斜SAが回折格子方向からほぼ14°であることに基づいて観測された。特に、高/低傾斜回折格子線間のSAオフセットは、1回目と2回目のLPUV露光の方位角のオフセットより小さいように見える。これは、2回目の露光によって画定される高傾斜領域が、実際には、異なる方位角を有する2つの異なるLPUV露光を受けることによる。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、LPUV投与量パターンは、LPP層が1方向に併進されながら、LPP層をLPUVに露光することによって確立される。より具体的には、移動するLPP層は、LPP層とLPUV源との間に介在する固定のアパーチャおよび/またはマスクまたは一連のアパーチャおよび/またはマスクを通して露光される。結果として、LPUV投与量パターンは、別の方向に沿って実質的に一定でありながら、基板表面の一方向に沿って確立される。
【0036】
たとえば、一実施形態では、空間的変動性傾斜は、2ステップ・プロセスを使用してLPP層を照射することによって、先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムにおいて提供される。第1ステップでは、固定のLPP層は、一定アパーチャを通した低投与量の直線偏光した光に均一に露光される。第2ステップでは、LPP層が第1の方向に併進されながら、鋸歯状フォトマスクを通して高投与量の直線偏光した光に露光される。この実施形態では、エネルギー密度(すなわち、投与量)は、予め決められた連続方式で変動することになる。より具体的には、LPP層上の各地点に送出されるLPUV投与量は、露光時間とLPUVパワーの積で決定される。露光時間は、基板の併進速度とアパーチャの幅の関数である。LPUVパワーは、アパーチャ開口の透過率の関数である。一般に、照明についての必要とされるエネルギー密度および波長は、LPP材料に依存することになる。先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムの場合、エネルギー密度は、通常、30mJ/cmと300mJ/cmとの間であることになり、一方、波長範囲は、通常、280nmと365nmとの間であることになる。LPUVの入射角は、通常、20°と60°との間であることになる。所望の投与量を達成するのに必要とされる併進速度および鋸歯状アパーチャの幅は、偏光UV光源のパワー出力に依存する。
【0037】
図6を参照すると、200mmガラス基板上で生成される巨視的な連続して変動する傾斜角の実施例が示される。より具体的には、図6の左側は、交差した偏光器間で観察される構造のBS画像を示し、中央のプロットは、空間的変動性リターダンスを示し、右側は、実質的に均一であるFA軸の方位角方向を示す。図の下の右には、鋸歯状フォトマスクも示される。
【0038】
空間的変動性傾斜角LCP構造は、50nm厚の配向層を得るために、(たとえば、2000RPMで60秒間)200mm溶融シリカ基板ウェハ上で、シクロペンタノン内でROP119の2重量%溶液を含むLPP層をスピンコーティングすることによって形成された。この実施形態では、反射防止膜は、基板上に設けられなかった。LPPコーティングされた基板は、その後、LPPコーティングされた基板が、併進走査方式でいくつかのアパーチャを通して露光される2ステップ照射プロセスを受けた。第1ステップでは、層は、全てのロケーションに40mJ/cmの均一の投与量を提供するために、一定速度で1方向に走査しながら、1回目の露光で、平行アパーチャを通してLPUVに露光された。第2ステップでは、走査方向に垂直な方向に0mJ/cm〜60mJ/cmまでの周期的に変動する投与量を生成するために、一定速度で1回目の露光と同じ方向に走査しながら、2回目の露光で、鋸歯状投与量アパーチャ(たとえば、図6に示す)を通してLPUVに露光された。より具体的には、この2つのステップ露光プロセスから得られるのは、LPP層が、走査方向に垂直な方向にLPP層の表面にわたって40mJ/cm〜100mJ/cmまでの振動性LPUV投与量を受けることである。両方の露光の場合、LPUV光の方位角は、0°であった。両方の露光の場合、LPUVの入射角は、40°であった。その後、LCP層は、LPP層上でROF5106LCP前駆体の37重量%溶液を(すなわち、1000rpmで)スピンコーティングすることによって形成された。LCP層内のLCダイレクタは、パターニング用のLPUV露光投与量によって画定される傾斜角パターンを採用した。LCP前駆体層は、その後、アニーリングされ、LCPを形成するためにUV硬化され、ポストベーキングされた。
【0039】
結果として得られるLCP層は、基板上で一方向に鋸歯状パターンで変動する面内リターダンス値を有する。より具体的には、ほぼ直線的に変動するリターダンスは、傾斜角が65°と50°との間で変動する(すなわち、0.012と0.04のΔnの範囲に相当する)ため、約25nmと85nmとの間で変動する。
【0040】
上述した実施形態では、基板は、LPUVの方位角に垂直な方向に併進し、併進方向に平行でかつ一定であるLCP層内のFAを生成した。他の実施形態では、LCP層のFA方位角配向を空間的に変動させるため、LPUV方位角配向が、2回目の露光中に回転する。なお他の実施形態では、LPP層は、併進するのではなく回転する。
【0041】
たとえば、一実施形態では、空間的変動性傾斜は、2ステップ・プロセスを使用してLPP層を照射することによって、先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムにおいて提供される。第1ステップでは、固定のLPP層は、基板が、その表面に垂直な軸の回りでかつアパーチャの頂点に一致する開始位置から360°回転している間に、1回目の露光で、第1の固定の狭い弧形状の(すなわち、わずか数度の頂角を有する)アパーチャを通して低投与量の直線偏光された光に露光される。第2ステップでは、LPP層は、基板が、その表面に垂直な軸の回りでかつアパーチャの頂点に一致しかつ1回目の露光の回転軸にも一致する同じ開始位置から360°回転している間に、2回目の露光で、第2の固定の狭い弧形状の(すなわち、わずか数度の頂角を有する)アパーチャを通して、その透過率が頂点から半径方向に変動する高投与量の直線偏光された光に露光される。
両方の露光では、アパーチャは、基板の開始位置に対して同じロケーションに設置され、LPUV照明の方位角は、基板の同じ相対的開始位置である。LPP層上の各地点に送出される投与量は、依然として露光時間とLPUVパワーの積であるが、露光時間は、基板の角速度とアパーチャの角度幅の関数である。LPUVパワーは、アパーチャ開口の透過率の関数のままである。一般に、照明についての必要とされるエネルギー密度および波長は、LPP材料に依存することになる。先に説明したROP119/ROF5106LPP/LCPシステムの場合、エネルギー密度は、通常、30mJ/cmと300mJ/cmとの間であることになり、一方、波長範囲は、通常、280nmと365nmとの間であることになる。LPUVの入射角は、通常、20°と60°との間であることになる。必要とされる回転速度は、所望の投与量、LPUVパワー、およびアパーチャ開口の角度幅に依存する。2つの露光の結合作用は、基板に関して、アパーチャの頂点ロケーションに相当する地点から半径方向に変動し、その地点の回りの方位角方向に一定である投与量を提供する。同様に、基板に対する方位角方向において、その地点の回りで、LPUVの配向は、方位角ロケーションの1°の変化について、1°だけ変動する。その後、LCP層は、LPP層上でROF5106LCP前駆体の37重量%溶液を(すなわち、1000rpmで)スピンコーティングすることによって形成された。LCP層内のLCダイレクタは、パターニング用のLPUV露光投与量によって画定される傾斜角パターンを採用した。LCP前駆体層は、その後、アニーリングされ、LCPを形成するためにUV硬化され、ポストベーキングされた。この実施形態では、LCP層のLCダイレクタは、基板上のある地点の回りの渦巻き方位角配向(次数m=2)を採用するが、その地点から半径方向に変動する傾斜角も採用する。
【0042】
基板および/またはLPUV光が変更される(たとえば、併進される、回転されるなどを行われる)上述した実施形態では、LPP層は、任意選択で、先に説明した変動のうちの2つ以上を受ける。たとえば、一実施形態では、回転中心が露光ごとに異なるLPPの2回以上の高投与量回転露光が行われる。別の実施形態では、基板に対するLPP層とLPUVの両方の配向は、回転露光プロセス中に変動する。他の実施形態では、LPP層は、複数回照射され、その都度、異なるフォトマスクおよび/またはアパーチャを用いる。後者の事例では、1つまたは複数の併進方向が、任意選択で使用され、各併進の前に、基板の面内での基板の回転配向が行われ、また、各併進の前に、LPUV配向が、任意選択で、回転される。実際は、複雑な2次元の投与量および方位角配向パターンが容易に実現される。
【0043】
基板および/またはLPUV光源が変更される上述した実施形態のそれぞれでは、併進速度、角速度、およびLPUV源は一定である。他の実施形態では、基板が併進されるかまたは回転される間に、併進速度または角速度が変調される。なお他の実施形態では、LPUV源のパワーは、併進または回転プロセス中に変調される。
【0044】
基板および/またはLPUV光源が変更される上述した実施形態のそれぞれでは、フォトマスクは、LPUVがLPP層まで通過することを可能にする、LPUVを完全に阻止する、かつ/または、LPUVの一部がLPP層まで通過することを可能にする1つまたは複数のセクションを有する。たとえば、一実施形態では、フォトマスクは、あるアパーチャを有するUV阻止材料(すなわち、金属板)から作製される板である。一実施形態では、アパーチャは、基板の併進方向に平行な方向に測定された幅が変動する(変調する)開口プロファイルを有する。別の実施形態では、アパーチャは、完全に阻止されるセクションを有する。なお別の実施形態では、アパーチャ開口は、(たとえば、勾配光学密度フォトマスクがフォトマスクとして使用される場合)変動する光透過率を有する。
【0045】
有利には、固定のフォトマスクおよび固定の基板に基づく上述した実施形態は、複雑でかつ微細パターニングされた傾斜角構造を生産するのに特に有用であり、一方、機械的作動式(actuated)基板および/またはLPUV光源に基づく上述した実施形態は、複雑さが少なくかつ巨視的な傾斜角構造を生産するのに特に有用である。
【0046】
本発明の別の実施形態によれば、空間的変動性傾斜角は、比較的低いLPUV投与量(すなわち、約40mJ/cm)でLPP層を露光することによって確立される。任意選択で、低いLPUV投与量は、ある範囲の投与量として、または、2つ以上の離散的な投与量として、一連の1つまたは複数の個々のフォトマスクを通して提供される。
【0047】
図3に示すように、上述したLPP/LCPシステムの場合、低いLPUV投与量(すなわち、約40mJ/cm、特に、30mJ/cm未満)でLPP層を照射することは、その後塗布されるLCP層において微視的な低傾斜ドメイン(LTD)の形成をもたらすことになる。用語LTDは、周囲LCP材料と比較して、比較的低い傾斜角を有する領域を指す。より具体的には、LTDは、周囲の「通常の振舞いをする(normal behaving)」高傾斜LCP相内で、幾分、隔離された相分離ドメインとして見える。LTDは、著しく低い傾斜を有するため、周囲材料より高い面内リターダンス(または複屈折率)を示す。LTDの空間分布は、通常、LCP層内でランダムであるため、結果として、ランダム分布を有するバイナリ(またはほぼバイナリ)の空間的変動性傾斜角が得られる。一般に、LTDのサイズおよび面積密度は、LPUV投与量が減少するにつれて増加することになる。ある地点で、投与量が十分に低い場合、LTDの連続ネットワークが予想される。
【0048】
図7を参照すると、20mJ/cmの単一露光を用いて、上述したLPP/LCPシステムを使用して形成された微視的LTDの実施例が示される。より具体的には、構造が、空間的変動性傾斜角を有する第1エリア(すなわち、LTDを示す上領域)および均一の傾斜角を有する第2エリア(すなわち、下領域)を含む画像を写真が示す。上の写真は、交差した偏光器間でサンプルが観察されるBS画像であり、一方、下の写真は、交差した偏光器間でサンプルが観察されるDS画像である。下右の写真は、交差した偏光器間でサンプルが観察される、BS画像におけるLTDの拡大を示す。
【0049】
空間的変動性傾斜角LCP構造は、50nm厚の配向層を得るために、(たとえば、2000RPMで60秒間)200mm溶融シリカ基板ウェハ上で、シクロペンタノン内でROP119の2重量%溶液を含むLPP層をスピンコーティングすることによって形成された。この実施形態では、反射防止膜は、基板上に設けられなかった。LPPコーティングされた基板は、最初に、1回目の露光で、20mJ/cmの比較的低い均一の投与量でLPUVに露光された。LPPコーティングされた基板の下部分だけが、その後、2回目の露光で、100mJ/cmのLPUV投与量に露光された(すなわち、120mJ/cmの総投与量の場合)。LPUV光の方位角は、いずれの場合も、0であった。その後、LCP層は、LPP層上でROF5106LCP前駆体の37重量%溶液を(すなわち、1000rpmで)スピンコーティングすることによって形成された。LCP前駆体層は、その後、アニーリングされ、LCPを形成するためにUV硬化され、ポストベーキングされた。
【0050】
結果として得られるLCP層は、空間的変動性面内リターダンスを有する。特に、下領域は、比較的高い傾斜角に相当する均一なリターダンスを有することになり、一方、上領域は、バイナリの空間的変動性リターダンスを有する。より具体的には、面内リターダンス値は、ランダムなバイナリ様式で基板の表面にわたって空間的に変動する。図7を参照すると、バイナリの空間的変動性傾斜角は、LTD(すなわち、BS画像の明相)の形成から生じる。特に、LTDは、回位線(すなわち、低い傾斜相を境界付ける暗線)によって主要なLCマトリクスから分離される。一般に、2つの相は、同じ遅軸(SA)配向を示すことになるが、正確な傾斜角および面内複屈折率は測定されなかった。
【0051】
有利には、この実施形態は、単一露光を使用して、2つの離散的なLCP傾斜角(すなわち、LTDからの1つの傾斜角および「通常の」振舞いをするLCPからの1つの傾斜角)のランダムな空間分布を提供する。一般に、LCP層内のLTDの相対的なサイズおよび面積密度は、露光投与量に依存し、また、他の処理条件に依存する可能性がある。
【0052】
図7を参照して説明される実施形態では、空間的変動性傾斜角は、単一露光で達成された。他の実施形態では、十分に低い低投与量LPUV光によるLTDの形成は、上述した実施形態の任意の実施形態と組合わされる。たとえば、図8を参照すると、図4に示す構造を形成するのに使用される方法と同様な方法を使用して形成された微視的LTDの実施例が示される。
【0053】
より具体的には、空間的変動性傾斜角LCP構造は、50nm厚の配向層を得るために、(たとえば、2000RPMで60秒間)200mm溶融シリカ基板ウェハ上で、シクロペンタノン内でROP119の2重量%溶液を含むLPP層をスピンコーティングすることによって形成された。この実施形態では、反射防止膜は、基板上に設けられなかった。LPPコーティングされた基板は、その後、2ステップ照射プロセスを受けた。第1ステップでは、層は、全てのロケーションに最小の傾斜角を設定するために、1回目の露光で、フォトマスク無しで、LPUVに露光された。より具体的には、この1回目のLPUV露光は、低い傾斜角に相当する均一の低投与量(すなわち、20mJ/cm)を提供する。第2ステップでは、フォトマスクの透過エリア(5μmスペース)に相当する選択ロケーションにおいてより高い傾斜角を設定するために、上部分が、2回目の露光で、5μm線幅/5μmスペースを有する回折格子フォトマスクを通してLPUV光に露光される。より具体的には、2回目のLPUV露光は、パターニング用の高い投与量(すなわち、100mJ/cm)を提供するため、1回目の低投与量露光と2回目の高投与量露光の和は、フォトマスクの透過エリアに相当するロケーションにおいて生成される高傾斜角に相当する。両方の露光の場合、LPUV光の方位角は、ある任意の基準に対して測定されると、同じであった(この場合、方位角は、回折格子方向に名目上平行であった)。その後、LCP層は、LPP層上でROF5106LCP前駆体の37重量%溶液を(すなわち、1000rpmで)スピンコーティングすることによって形成された。LCP層内のLCダイレクタは、パターニング用のLPUV露光投与量によって画定される傾斜角パターンを採用した。LCP前駆体層は、その後、アニーリングされ、LCPを形成するためにUV硬化され、ポストベーキングされた。
【0054】
結果として得られるLCP層は、傾斜角が交互になる(たとえば、20mJ/cmおよび120mJ/cmの交互の投与量に相当する)、5ミクロン幅の線を有する回折格子を有する上エリア、および、ランダムに分布するLTD(たとえば、20mJ/cmの単一投与量に相当する)を有する下エリアを含んだ。図8を参照すると、暗回折格子線は、120mJ/cm投与量に相当し、したがって、最も高い傾斜を有し、一方、明回折格子線は、20mJ/cm投与量に相当し、したがって、120mJ/cm投与量線より低い傾斜を有する。特に、LTDは、低投与量回折格子線上に優先的に形成されるように見える。特に、より小さなサイズのLTDは、より明るい20mJ/cm投与量線上でだけ核形成したことが明らかである。しかし、一部のより大きなサイズのLTDは、2つ以上の20mJ/cm投与量線の間で、120mJ/cm線にわたって橋渡しすることがわかった。
【0055】
有利には、LTDブリッジング効果を示すLCP層は、3つ以上のLCP傾斜角の擬似ランダム分布が必要とされる用途および/またはLTD内の利用可能な傾斜角の範囲が不十分である用途における可能性を有する。たとえば、一実施形態では、LPP層は、交互の小さな特徴のパターンで、たとえば、微視的チェッカーボード・パターンで露光され、交互の特徴は、高いLPUV投与量と低いLPUV投与量に交互に露光される。この場合、プロセスは、LTDが、低投与量特徴の一部上にランダムに核形成するようにさせ、また、こうしたLTDの一部が他の近傍の低投与量特徴に橋渡しするように、最適化される。
【0056】
他の実施形態では、LTDのサイズおよび面積密度を減少させるために、LTDブリッジングは、高投与量特徴の幅を増加させるか、低投与量特徴の幅を増加させるか、または、低投与量線に適用される投与量を増加させることによって、低減される、かつ/または、なくされる。
【0057】
空間的変動性傾斜角を有する、特に、LTDを有するLCP層についての多くの用途が想定される。たとえば、一実施形態では、空間的変動性傾斜角を有するLCP層は、レーザ照明システムのスペックルを低減するのに使用される。
【0058】
レーザ照明システムは、ハイ・パワー照明および飽和色を提供する投影ディスプレイで一般に使用される。しかし、レーザは、良好な色を有する明るい画像を提供するが、画像品質は、スペックルのために低下する可能性がある。スペックルは、コヒーレント光が、粗いかまたは汚れた表面から反射されるか、あるいは、ランダムな屈折率変動を有する媒体を通って伝播するときに起こる。より具体的には、スペックルは、光の波長より大きな差の遅延を有する複数のビームを含む反射光が、検出器(たとえば、人の目または2乗法則光検出器)で干渉するときに起こる。この干渉は、スペックル・パターンと一般に呼ばれる、不均一で、ランダムな、光強度の変動を提供する。
【0059】
投影ディスプレイでは、スペックルは、一般に、レーザ光の波長の1/4より大きい表面粗さを通常有するディスプレイ・スクリーンから光が反射するときに生じる。反射したレーザ光の結果として得られるランダムな空間的干渉は、画像の品質を著しく低下させる(たとえば、画像を、粒子が粗く、かつ/または、不鮮明に見せる)スペックル・パターンを生成する。さらに、視点に応じて、スペックル・パターンは、所与の方向において相対的な位相遅延の特性が異なるために、変化する可能性がある。結果として、観測される画像は、視点と共に変化し、光学システムは、忠実度が高い画像を確実に再生することができなくなる。
【0060】
屈折率変動、光学コンポーネント上のゴミ、およびスクリーン粗さは全てスペックルをもたらすが、その作用は、通常、レーザなどのコヒーレント光源が使用されるときに大きな問題になるだけである。ディスプレイが、画像品質低下を受けないように、レーザ出力のコヒーレンスを減少させる、かつ/または、破壊するいくつかの方法が存在する。1つの手法は、複数の波長からのスペックル・パターンが、平均化されて平滑なプロファイルになるように、縦モードの数を増加させることである。別の手法は、空間的にインコヒーレントな照明を提供する、コヒーレント・レーザ・ダイオード(LD)のアレイをタイル化することである。残念ながら、こうして波長多様性を設けることは、費用がかかる手法である(すなわち、多くの小型投影器は、通常、数十ルーメンの照明を出力するために、単一LDチップに依存する)。なお別の手法は、レーザ照明において偏光多様性を作ることである。たとえば、1つのレーザ・ビームは、2つの偏光に分割されうり、第1の偏光は、PBSを透過することを許容され、第2の偏光は、レーザのコヒーレンス長より大きい値で遅延される。残念ながら、この手法は、かさばり、また、スペックル・コントラスト低減が制限される。
【0061】
レーザ・ダイオード(LD)配置構成を変更する(すなわち、空間的コヒーレンスを減少させる)こと、または、レーザ・ビームの空間的および時間的コヒーレンスを低減するために、レーザ・デバイス特性を操作する(すなわち、偏光および波長多様性を提供する)こと以外に、代替の手法は、XY平面を通して時間的に偏倚し、かつ、強度不均一性を低減するために、検出器(すなわち、目)について時間平均を可能にする、変動するボイリング・スペックル・パターンの多くの小さな粒子を作ることである。この手法は、通常、振動するかまたは回転して、所定期間にわたって各XYサイトについて複数の位相遅延をもたらす、拡散器[J.W.Goodman等著「Speckle reduction by a moving diffuser in laser projection displays」Annual Meeting of the Optical Society of America,Rhode Island,2000]、位相板[米国特許第6,323,984号および第6,747,781号]、またはランダムな回折光学要素[L.Wang等著「Speckle reduction in laser projection systems by diffractive optical element」Appl.Opt.37,pp.177−1775,1998]などの外部光学要素を必要とする。
【0062】
参照により組込まれる、レーザ照明システム用のリターダ・ベース・スペックル除去デバイスのための米国特許出願第12/424,168号において、Tan他は、アクチュエート可能な波長板要素を使用して、多くの変動するボイリング・スペックル・パターンを作る別の手法を提案している。特に、アクチュエート可能な波長板要素は、複数の頂点を含む空間的変動性遅軸を有する、ほぼ1/2波長の光学リターダの機械的揺動および/または電子的切換えによって生成される可変位相変調を提供することによって、変動するスペックル・パターンを生成する(すなわち、傾斜角は一定であるが、方位角は、リターダの表面にわたって変動する)。
【0063】
本発明による一実施形態では、空間的変動性傾斜角を有するLCP層は、レーザ投影システムのスペックルを低減するのに使用されるランダム位相拡散器を作るのに使用される。
【0064】
図9を参照すると、ランダム位相拡散器を形成するランダムに傾斜した液晶デバイスの実施例が示される。デバイス200は、基板209上に配設された可変傾斜LC層201を含む。LC層201は、複数の異なるように傾斜したダイレクタを含み、そのうちの2つが、202および203として示される。例証のために、LC層201は、XY平面に平行に示され、一方、入射光は、Z軸215に平行に伝播する。LC分子についての傾斜平面は、XZ平面に平行である。入力される直線偏光210は、傾斜平面に配向する。
【0065】
一般性を失うことなく、単一符合化要素は、Z軸に関してある角度で傾斜し、かつ、XZ面内に含まれるLCダイレクタによって表される。図10を参照すると、(a)に示すように1軸O板複屈折率を有する、このLCダイレクタの複屈折率は、(b)に示すように、面内および面外複屈折率成分内に投影されうる。より具体的には、LCダイレクタ202は、Z軸と極角オフセット222θを形成し、一方、面外傾斜223θは、π/2−θで与えられる。極端な場合、LC配向は、A板対称性(θ=0°)またはC板対称性(θ=90°)を有する。屈折率楕円体を記述する2次方程式から、面内有効屈折率nおよび面外有効屈折率nは、XY平面230上への投影およびZ軸240上への投影によって表される。これらの有効屈折率は、
【0066】
【数1】

および
【0067】
【数2】

で与えられる。式中、n(λ)およびn(λ)は、1軸材料の異常屈折率および正常屈折率の分散である。A板配向ピクセル(θ=0°)に対して位相を進める観点から、式(1)は、面外傾斜の増加に伴う、位相ランプの非線形増加を与える。A板構成ピクセル(すなわち、n(θ;λ)−n(λ))に対する位相差は、図11にプロットされる。プロットから、約56.7°のLC傾斜で配向した符合化ピクセルは、−0.1の単位長当たり位相差を生じる。換言すれば、2mmのピクセル高さは、A板ピクセルに対して200nmの位相進みを提供する。これは、λ=400nmにおいて、必要とされるπ位相ステップを与える。
【0068】
こうして、各微視的LCドメインを通る相対的位相遅延は、LC分子の面外傾斜に依存するようにさせられる。これは、純粋な位相変調である。各XYサイトにおける一定振幅項は、無視されうる。検出器分解能に達する、各位相セル分割の複素振幅は、
【0069】
【数3】

で与えられる。
【0070】
空間的変動性傾斜LC層が、スペックルを低減するために、ランダム変調デバイスとして機能するために、傾斜角は、通常、能動的拡散器を作るために、時間的に変動する。図12を参照すると、ランダム変調をサブ分解能ビームに適用する作動式能動的拡散器を含む投影システムのサブシステム400が示される。特に、サブシステム400は、直線出力偏光320を有するコヒーレント・レーザ源301を含む。拡散器403は、ランダムに傾斜したマイクロドメインを有するLCリターダを含む。例証のために、LCダイレクタの投影は、異なるXYサイトにおけるデバイス断面に沿って示される。拡散器403は、アクチュエータ410(たとえば、電子部品/光学部品)によって時間的に併進される。各光学ストリームは、この構成では、e波として伝播する。したがって、出力される偏光は、直線偏光321で示すように、不変である。拡散器は、検出器の各間隔内に時間的な変調差を生成する。この実施例では、能動的拡散器は、411の矢印で示すように、LCダイレクタ傾斜平面に沿って直線的に併進される。レーザ・ビームは、Z方向に沿って伝播する。1つの検出器積分時間にわたって、各サブ分解能エリアに対して可変位相の光ビームをランダムに提示することによって、一連の相関が無いかまたは部分的に相関が有るスペックル・パターンが、検出器において生成される。サブ分解能エリアにわたり、かつ、所定期間にわたる平均化は、強度不均一性が減少することを可能にする。
【0071】
図12に示すレーザベース照明サブシステムは、強度変調パネル(たとえば、DLP)と偏光ベース変調パネル(たとえば、透過型LCDまたは反射型LCオン・シリコン)の両方を利用するディスプレイ・システムに組込まれうる。ランダム拡散器は、速軸が一定でありながら、傾斜角が空間的に変動するように作製されうるため、有利には、照明の偏光状態を保持し、したがって、偏光ベース・システムに理想的である。強度ベース・ディスプレイ・システムでは、レーザ照明および能動的拡散器の偏光出力は、保持される必要がない。いずれの場合も、LTDを有するスペックル除去デバイスを作製することは、有利には、レーザ照明システムにおける知覚されるスペックル・パターンを低減するのに理想的なスケールで傾斜角の変動を提供する。たとえば、一般に、LTDの平均幅は、通常、100ミクロン未満、しばしば、5ミクロンと10ミクロンとの間である。もちろん、より小さな幅またはより大きな幅を有するLTDが、可能であると共に想定される。
【0072】
本発明のなお別の実施形態では、空間的変動性傾斜リターダは、たとえば、参照により組込まれる米国特許出願第20090009668号に開示されるように、偏光ホログラムを形成するのに使用される。なお他の実施形態では、空間的変動性傾斜リターダは、光学トラッピング、光学ツイーザ、または光学コヒーレンス・トモグラフィ用途で使用される。
【0073】
もちろん、上記実施形態は、例としてだけ提供されてきた。種々の変更、代替構成、および/または、等価物が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、使用されるであろうことが当業者によって理解されるであろう。特に、十分低い投与量のLPUV光を使用してLTDを形成する方法は、空間的変動性傾斜層を形成する他の方法のうちの任意の方法と組合されうる。さらに、上述したLPP/LCPシステムは、LTD(たとえば、複数の離散的領域)を提供するように示されたが、他のO板LPP/LCPシステムは、同様なLPUV投与量で同様な結果を提供することが予想される。相応して、本発明の範囲は、したがって、添付特許請求項の範囲によってだけ制限されることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
10、201 LC層
11、66、209 基板
60 光学セットアップ
65 作製下のデバイス
67 線状光重合可能な配向層
70 LPUV光露光システム
71 UV光源
72 コリメーティング・レンズ
73 UV偏光器
75 フォトマスク
200 ランダムに傾斜した液晶デバイス
202、203 LCダイレクタ
210 入力される直線偏光
215 Z軸
222 極角オフセット
223 面外傾斜
230 XY平面
240 Z軸
301 コヒーレント・レーザ源
320 直線出力偏光
321 直線偏光
400 投影システムのサブシステム
403 拡散器
410 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的変動性傾斜角を有する液晶層を含む光学要素を作製する方法であって、
a)線状光重合可能なポリマー層で基板をコーティングするステップと、
b)前記線状光重合可能なポリマー層を、直線偏光した紫外線光で、斜め角度で照射するステップと、
c)前記照射された線状光重合可能なポリマー層の表面上に液晶材料の層をコーティングするステップとを含み、
前記液晶材料は、その傾斜角と前記直線偏光した紫外線光の総投与量との間に予め決められた関係を有し、
前記線状光重合可能なポリマー層は、隣接領域より大きな面内複屈折率を有する前記液晶層内に複数の離散領域の形成を誘発するのに十分である直線偏光した紫外線光の少なくとも1つの投与量で照射される方法。
【請求項2】
前記液晶材料は、液晶ポリマー前駆体を含み、
d)液晶ポリマー層を形成するために、前記複数の離散領域を有する前記液晶層を紫外線光で照射するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)は、
前記線状光重合可能なポリマー層を、前記複数の離散領域の形成を誘発するのに十分である直線偏光した紫外線光の少なくとも1つの投与量で照射すること、および、
前記線状光重合可能なポリマー層を、直線偏光した紫外線光の第2の投与量でフォトマスクを通して照射することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フォトマスクは、前記直線偏光した紫外線光について、異なるレベルの透過率の少なくとも2つの離散領域を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フォトマスクは、前記直線偏光した紫外線光について、連続して変動する透過率を有する可変透過率マスクである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記フォトマスクは、回折格子フォトマスクである請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの投与量および前記第2の投与量は、前記基板に対して異なる方位角配向を有する直線偏光した光によって提供される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)は、
前記線状光重合可能なポリマー層を、前記複数の離散領域の形成を誘発するのに十分である直線偏光した紫外線光の前記少なくとも1つの投与量で照射すること、および、
前記線状光重合可能なポリマー層を、直線偏光した紫外線光の第2の投与量でフォトマスクを通して照射することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)は、
前記線状光重合可能なポリマー層を、直線偏光した紫外線の前記第2の投与量でフォトマスクを通して照射している間に、前記フォトマスクおよび前記基板の少なくとも一方を移動させることを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記液晶層および前記周囲領域内の前記複数の離散領域は、同じ遅軸方位角配向を有する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板は、前記基板の背面上に配設された紫外線反射防止膜および紫外線吸収膜の1つを含む請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの投与量は、40mJ/cm未満である請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの投与量は、30mJ/cm未満である請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記複数の離散領域は、ランダムにまたは擬似ランダムに分布する請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記光学要素は、レーザ照明システムにおけるスペックルを低減するためのものである請求項1から10のいずれかに記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−39510(P2011−39510A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−176700(P2010−176700)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】