説明

穿刺具

【課題】 安価に製造し、毛細管の血液を痛みが少なく採取することができる穿刺具および穿刺具の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る穿刺具は、穿刺深さを制限する基部と、該基部の表面から突出する鋭角な穿刺部とを一体的に備えた穿刺具であって、前記穿刺部を、金属板材や樹脂等のプレス成形により、前記基部を構成する前記板材の表面から一体的に突出させて形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血に使用する穿刺具に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査を行うために血液を採取する場合、通常、採血針を用いて静脈又は動脈から血液が採取される。
そして、静脈や動脈からの血液の採取が難しい場合や、乳児などのように採血針を用いた採血の難しい場合には、毛細管から血液が採取される。また、この他に、近年、慢性疾患患者の自己モニタリングや健康人の自己の健康管理を目的とした臨床検査ために毛細管血液を使用した臨床検査が普及しつつある。
毛細管の血液は、通常、穿刺具とキャピラリ管等のような採血具とを使用して採血される。
穿刺具は血液を採取する際に皮膚に傷を付けて血液を取り出すために使用される針である。
このような穿刺具として用いられる針は、通常、始めに金属製の線を製造すべき穿刺具の太さまで引き伸ばし、次に適当な長さに切断し、最後に、研磨加工装置にセットして先端を目的の角度まで鋭角に研磨することによって製造されている。
また、最近では、特許文献1に示すように、薄板をプレス加工により管状体に成形した後、研磨加工装置にセットして先端を目的の角度まで鋭角に研磨するという製造方法も提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−136142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の製造方法は、金属製の線の引き伸ばし工程、又は管状体製造のためのプレス加工工程及び針先成形のための研磨加工工程等の複雑な製造工程が必要であるという問題がある。
また、慢性疾患患者の自己モニタリングや健康人の自己の健康管理等のために、患者自身が穿刺具を用いて採血を行う場合には、痛みと恐怖を感じる穿刺具では、精神的負担が大きい上に、採血を失敗する可能性が高くなる。このため、穿刺部の胴体の直径が100μm以下の無痛または微痛で採血を行うことの出来る穿刺具が望ましいと思われるが、従来の研磨加工では、このような寸法の採血具を製造するのは困難である。
発明者等は、上記した従来の問題点に鑑みて、穿刺具を用いた毛細管の血液の採取について鋭意研究を重ね、安価に製造できる無痛または微痛の穿刺具を発明するに至った。
本発明は、安価に製造し、毛細管の血液を痛みが少なく採取することができる穿刺具および穿刺具の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために本発明に係る穿刺具は、穿刺深さを制限する基部と、該基部の表面から突出する鋭角な穿刺部とを一体的に備えた穿刺具であって、前記穿刺部を、金属板材や樹脂等のプレス成形により、前記基部を構成する前記板材の表面から一体的に突出させて形成することを特徴とする。
穿刺具を成形するための材料は任意の材料が選択され得る。金属製板材の場合には、例えばステンレス鋼を含む鉄鋼材料、アルミニウム、銅、チタンのような非鉄金属の構造材料、ニッケル、コバルト、モリブデンのような耐熱材料、鉛、錫のような低融点金属材料、金、銀、白金のような貴金属材料およびこれらの合金であり得る。樹脂材料の場合には、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などがあり得る。
また、穿刺具の形状についても、基部の表面から突出する鋭角な穿刺部を基部と一体的に備えている形状であれば、任意の形状が選択され得る。
前記前記穿刺部の基部表面からの長さは、好ましくは2mm以下である。
また、前記基部の裏面側にキャピラリ管等の採血具を接合できるように構成してもよい。この場合、好ましくは、基部に、その表面から裏面にかけて貫通する血液採取可能な寸法(好ましくは、直径2mm以下)の微細貫通孔が少なくとも一つ形成され得る。
さらに、必要に応じて、穿刺部に、穿刺部の先端から基部の表面にかけて連続的に深くなる案内溝をさらに形成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る穿刺具は、穿刺深さを制限する基部と、該基部の表面から突出する鋭角な穿刺部とを一体的に備えた穿刺具であって、前記穿刺部を、金属板材や樹脂等のプレス成形により、前記基部を構成する前記板材の表面から一体的に突出させて形成するので、簡単な製造工程で製造することができ、さらにリール状に連続的に製造することや板材に一体的に製造することも可能であり、その結果、安価に製造することができる。
また、プレス成形により穿刺部を形成するので、微細加工を行うことができ、直径が100μm以下の無痛または微痛で採血を行う金属製穿刺具を製造することも可能になる。
前記穿刺部の基部表面からの長さを2mm以下にすることにより、穿刺部が深く刺さり過ぎることがなく、また、キャピラリ管等と組み合わせた場合には、穿刺部を抜くと同時に血液の採取をすることも可能になるという効果を奏する。
前記基部を、その裏面に採血具を接合できるように構成することにより、従来別体であった穿刺部と採血具を一体に構成することが可能になる。また、この構成において、基部に、その表面から裏面にかけて貫通する血液採取可能な寸法の微細貫通孔を少なくとも一つ形成することにより、穿刺部を抜くと同時に微細貫通孔から血液を採血具に吸上げることが可能になるので、穿刺及び採血作業が簡単になり、不慣れな者でも簡単に採血を行うことができるようになるという効果を奏する。さらに、この構成において、穿刺部に、穿刺部の先端から基部の表面にかけて連続的に深くなる案内溝を設けることにより、穿刺した状態のままでも、案内溝を介して血液を採血具に吸上げることが可能になるため穿刺及び採血作業がさらに簡単になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面に示した一実施例を参照して本発明に係る穿刺具の実施の形態について説明していく。
【0008】
図1は、本発明に係る穿刺具の製造方法の一例を示す図である。
始めに、図1(a)に示すように、材料となる板材1から捨て穴2を抜く。
次に、図1(b)に示すように、適当な型及びプレスを用いた潰し成形により、穿刺部3を成形する。
次いで、図1(c)に示すように、絞り成形により、基部4とキャピラリ管取付部5を成形する。
最後に、成形された穿刺具10を板材1から切り離して穿刺具10が完成する。
尚、この成形方法は、単なる一例である。
上記したように構成された、穿刺具10の穿刺部3の基部4からの長さは2mmである。また、好ましくは、穿刺部3の最大径は100μmであり、穿刺部3の先端部3の先端角度は20°である。
【0009】
図2(a)は、穿刺具の別の実施例を示す図である。
尚、基本的な構成は、図1に示した穿刺具10の構成と同じなので、同じ構成部材には図1に示した穿刺具と同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
この穿刺具20は、基部4の穿刺部3の近くに血液採取可能な寸法(好ましくは、直径2mm)の微細貫通孔6が穿設されている。
図2(b)は、上記したように構成された穿刺具20のキャピラリ管取付部5にキャピラリ管11に取り付けた状態を示す図である。
このように、キャピラリ管11を穿刺具20を取り付けることにより、穿刺と採血作業を容易に行うことが可能になる。
【0010】
図3は、図2(b)に示した穿刺具20にキャピラリ管11を取り付けた穿刺採血具30の使用状態を示す図である。
使用者は、一方の手で穿刺採血具30を持ち、他方の手の指先31に穿刺採血具30の穿刺部3を突き刺す(図3(a)参照)。
次いで、穿刺部3を抜き始めると、それに伴って、穿刺部3を突き刺した部分から血液が出血する。そして、穿刺部3を完全に抜いた状態にすると、出血した血液が基部4の微細貫通孔6に接触し、そのまま毛細管現象でキャピラリ管11に吸い上げられる。
上記した実施例では、穿刺部3の長さを2mmにしているため、穿刺部3を完全に抜いた状態において、指先31と基部4との間の距離は2mmになる。このように、穿刺部3を完全に抜いた状態において、指先31と基部4との間の距離を短くすることができるため、穿刺部3を完全に抜いた直後に、血液をキャピラリ管11に吸い上げることができる。
【0011】
図4は、穿刺具のさらに別の実施例を示す図である。
図4に示す穿刺具40は、基本構成は図1に示した穿刺具10と同じなので、同じ構成要素には同じ符号を付して説明は省略する。
この穿刺具40は、その穿刺部3に、穿刺部3の先端から基部4の表面にかけて連続的に深くなる案内溝3aが形成されている。
このように案内溝3aを形成することにより、指先に穿刺部3を刺したままの状態で案内溝3aを介して血液を吸い上げることが可能になる。
【0012】
上記した実施例において説明した穿刺部の寸法は、単なる一例であり、穿刺部の寸法は任意に選択することができる。
また、図2及び図4に示した穿刺具は、キャピラリ管に着脱可能に構成してもよく、固定してもよい。
さらに、上記した実施例では、キャピラリ取付部を有する穿刺具を例に挙げて説明しているが、このキャピラリ取付部は、必須の構成要件ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】穿刺具の製造方法を示す図である。
【図2】(a)は、穿刺具の別の実施例を示す図であり、(b)は穿刺具にキャピラリ管を取り付けた状態を示す図である。
【図3】穿刺具20にキャピラリ管11を取り付けた穿刺採血具30の使用状態を示す図である。
【図4】穿刺具のさらに別の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1 板材
2 捨て穴
3 穿刺部
3a 案内溝
4 基部
5 キャピラリ管取付部
6 微細貫通孔
10 穿刺具
11 キャピラリ管
20 穿刺具
30 穿刺採血具
31 指先
40 穿刺具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺深さを制限する基部と、該基部の表面から突出する鋭角な穿刺部とを一体的に備えた穿刺具であって、前記穿刺部を、金属板材や樹脂等のプレス成形により、前記基部を構成する前記板材の表面から一体的に突出させて形成することを特徴とする穿刺具。
【請求項2】
前記穿刺部の基部表面からの長さが2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の穿刺具。
【請求項3】
前記穿刺部の先端角度が20°以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の穿刺具。
【請求項4】
前記基部が、その裏面に採血具を接合できるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の穿刺具。
【請求項5】
基部に、その表面から裏面にかけて貫通する血液採取可能な寸法の微細貫通孔を少なくとも一つ形成したことを特徴とする請求項4に記載の穿刺具。
【請求項6】
前記穿刺部に、穿刺部の先端から基部の表面にかけて連続的に深くなる案内溝を設けた
ことを特徴とする請求項4に記載の穿刺具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−122303(P2006−122303A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313704(P2004−313704)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(591086854)株式会社テクノメデイカ (50)
【Fターム(参考)】