説明

穿刺装置、血液分析装置及びセンサ装着機構

【課題】簡単な操作で所望の減圧を発生させることができ、操作性を向上させることのできる減圧機構、穿刺装置、血液分析装置及びセンサ装着機構を提供する。
【解決手段】穿刺針方式穿刺器具100は、一端にセンサ装着部130の一部を形成する端部121aを、他端にランセット部111のロッド112を摺動可能に支持する端部121bを有するピストン121と、内部にピストン121の端部121bを摺動自在に収容するシリンダ122と、ピストン121の端部121b内周部に取り付けられ、ロッド112外周の気密を保つパッキン125とを備える。ピストン121は、皮膚当接部131が皮膚に当接した状態で、シリンダ122の方向に移動したとき、パッキン123,124により密閉された内部空間140及び減圧室150の体積が増大し、減圧を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値測定などの血液測定において、採血をするための穿刺器具に用いる穿刺装置、血液分析装置及びセンサ装着機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液の分析のために、人間や動物の皮膚から血液を採取するための穿刺具が種々発明されており、近年では穿刺針を穿刺具に装着すると同時に穿刺のための付勢力が蓄えられる穿刺具も発明されている(例えば特許文献1参照)。このような穿刺具は、穿刺と抜去の動作を、2個の圧縮バネ、すなわち穿刺のための第1圧縮バネと抜去のための第2圧縮バネを用いて行っている。また、血液付着による感染防止のため肌に触れた部分ごと廃棄する穿刺針も開発されている。
【0003】
特許文献2には、穿刺用プランジャを先端方向へ付勢する第1付勢手段と、気密性を有する封止部材を備え、基端方向への移動によりハウジング内を減圧状態にする吸引用プランジャを備える穿刺具が記載されている。
【0004】
特許文献3には、グルコース監視のために患者から無痛方法で血液サンプルを採取する装置が記載されている。
【0005】
図1は、従来の穿刺器具に用いられるバネによる減圧採血機構を示す図である。
【0006】
図1に示すように、減圧採血機構1は、ピストン2と、ピストン2を摺動自在に収容するシリンダ3と、ピストン2を外方に押し出すよう付勢するバネ4と、ピストン2の端部2aの外周部に取り付けられたパッキン5とから構成される。
【0007】
パッキン5は、ピストン2の端部2aの端面2bと、シリンダ3内周面3aと、当接した皮膚6とからなる密閉空間7の気密を保つ。
【0008】
以上の構成において、図1Aは穿刺動作をしない通常状態を示している。以下、減圧採血機構1を用いて穿刺器具を減圧する動作について説明する。
【0009】
まず、図1Bに示すように、予めバネ4を縮めた状態で、シリンダ3内周面3aに皮膚6を当接し密閉空間7をつくる。
【0010】
次いで、図1Cに示すように、ピストン2を押すのをやめる。すると、縮められたバネ4が元に戻り、密閉空間7の容積が増加する。これにより、密閉空間7は減圧され、図示しない穿刺器具によって皮膚6が盛り上がり、盛り上がった皮膚6から血液が採取され易くなる。
【0011】
次いで、図1Dに示すように、再度、ピストン2を押し下げることで、気圧調整し大気圧にしてから、皮膚6を離す。
【0012】
ここで、図1Dに示す動作を行わない場合、血液が採取された状態(減圧状態:図1C参照)から皮膚6を離すと、急激な大気の流入が生じ、血液が穿刺器具内に飛散する。
【0013】
これを防ぐため、図1Dに示すように採血後、もう一度ピストン2をシリンダ3内に押し込む必要がある。
【0014】
図2は、特許文献3記載の血液採取装置の斜視図である。図2では装置のハウジングは開いている。
【0015】
図2に示すように、血液抜き取りデバイス1100は、ハウジング1102を有し、ハウジング1102は受容部1102aと突出部1102bとを有する。ガスケット1104は、ハウジング1102の部分1102a及び1102bをシールし、受容部1102aを突出部1102bから離す。受容部1102aは、摩擦により突出部1102bとしっかりと嵌合する。突出要素1102c及び1102dは、突出部1102bを受容部1102aに案内するために使用される。ハウジング1102には、真空ポンプ(図示せず)、切開アセンブリ1108、バッテリ(図示せず)及び電子機器(図示せず)が設置されている。スイッチ1109は、電子機器を動作状態にするために設けられている。
【0016】
サンプルを採取する間、受容部1102a及び突出部1102bは相互にしっかりと嵌合している。皮膚と接触させるデバイス1100のハウジング1102の受容部1102aの部分はシール1110を備えている。シール1110により、受容部1102aの開口部1112が包囲されている。受容部1102aの開口部1112により、グルコース検出器1114に隣接する血液抜き取りチャンバと皮膚表面との間は連通している。使用時、デバイス1100は、切開アセンブリ1108がサンプルを採取する皮膚の表面上の領域の上に置かれるように配置される。血液サンプルを採取するために、デバイス1100のハウジング1102の受容部1102aが皮膚に対して置かれ、シール1110により真空が生じる。
【0017】
スイッチ1109の押下により、真空ポンプが動き、吸引作用が生ずる。真空ポンプの吸引作用により、シール1110により取り囲まれた皮膚が充血するようになる。皮膚を充血させるには、皮膚を伸張し、開口部1112まで持ち上げる。通常電子機器のプログラマにより予め設定される適当な時間経過後、切開アセンブリ1108を発射して、開口部1112まで持ち上げられ、充血している皮膚にランセット1116を穿通させる。ランセット1116は好ましくは自動的に、真空作動式ピストン(図示せず)によりランセット116を発射させるソレノイド弁(図示せず)を用いて発射される。
【0018】
グルコース検出器1114は、ハウジング1102の突出部1102bのスロット1118に挿入されている。ハウジング1102の受容部1102aにより、グルコース検出器1114はテストのための適所に移動する。グルコース検出器1114から得られた結果は、スクリーン1120に表示される。受容部1102aは、ランセット1116又はグルコース検出器1114を取替えるときには突出部1102bから離される。血液サンプルを採取する過程では受容部1102aは突出部1102bにしっかりと嵌合している。
【0019】
上記のように、デバイス1100は、センサ(グルコース検出器1114)が減圧空間内に配置される。減圧を行うために、センサ全体を所定空間内に設置し、測定することが必須となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2000−245717号公報
【特許文献2】特開平11−206742号公報
【特許文献3】特開2004−000459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、従来の手動減圧採血装置は、ピストン2をシリンダ3内に押し込むなど、数回の手動減圧操作が必要である。これは、穿刺装置が、装置筐体内の減圧空間の中に組み込まれているため、減圧空間の容積が大きく所望の減圧値を得るためには数回の動作が必要であることに起因する。
【0022】
また、かかる数回の減圧動作は、減圧を大気圧に開放する際のタイミングの失敗を誘発し易い。もし、減圧の大気圧開放タイミングに失敗すると、急激な大気流入による血液の飛散が発生し、装置を汚すばかりか、感染等の汚染のおそれがある。
【0023】
また、減圧空間が大きいこと、また操作が煩雑であることから、メンテナンス性が非常に悪い。メンテナンスが十分に実施されないと、上記血液付着の防止が不十分であるばかりか、装置の故障等を招来しやすい。また、メンテナンスを頻繁に実施するための手間やコストがかかる。
【0024】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な操作で所望の減圧を発生させることができ、操作性及びメンテナンス性を向上させることのできる穿刺装置、血液分析装置及びセンサ装着機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の穿刺装置は、筐体と、前記筐体内に設けられ、皮膚を穿刺する穿刺手段と、前記穿刺手段を動作させる穿刺機構と、底部を有するシリンダと、前記底部から突出する第1端部と前記シリンダ内部にあって該シリンダの軸に沿って摺動する第2端部とを有するピストンと、前記底部と前記ピストンの外周とを密閉する第1密閉手段と、前記第2端部と前記シリンダ内周とを密閉する第2密閉手段と、前記第1及び第2密閉手段で密閉され、前記ピストンの外周と前記シリンダの内周とにより囲まれた気室とを備え、前記ピストンは、前記気室と前記中空空間とを繋ぐ連通孔を有する、構成を採る。
【0026】
本発明の血液分析装置は、穿刺により滲出した血液を、センサにより分析する血液分析装置であって、筐体と、前記筐体内に設けられ、皮膚を穿刺する穿刺手段と、前記穿刺手段を動作させる穿刺機構と、底部を有するシリンダと、前記シリンダ内部にあって該シリンダの軸に沿って摺動するピストンと、前記ピストンの端部と前記シリンダ内周とを密閉する第1密閉手段と、前記シリンダの開口部と前記ピストンの外周とを密閉する第2密閉手段と、前記第1及び第2密閉手段で密閉され、前記ピストンの外周と前記シリンダの内周とにより囲まれた気室と、を備える構成を採る。
【0027】
本発明の血液分析装置は、筐体と、開口部を有するセンサと、前記筐体に収容され、穿刺針又はレーザ光により穿刺する穿刺手段と、前記穿刺手段を動作させる穿刺機構と、を備え、前記穿刺針又はレーザ光を前記開口部に貫通させて皮膚を穿刺し、穿刺により皮膚から滲出した血液を前記センサ内に導入して分析する血液分析装置であって、前記筐体の一端である筐体端部から摺動自在に突出する支持部と、前記支持部により摺動自在に支持され、前記センサを保持するセンサ保持部と、前記支持部の突端部に設けられ、皮膚が当接可能な皮膚当接部と、前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記皮膚当接部を所定間隔で保つように第1伸縮強度で付勢する第1バネと、前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記筐体端部を所定間隔で保つように第2伸縮強度で付勢する第2バネと、を備える構成を採る。
【0028】
本発明のセンサ装着機構は、筐体端部から摺動自在に突出する支持部と、前記支持部により摺動自在に支持され、センサを保持するセンサ保持部と、前記支持部の突端部に設けられ、皮膚が当接可能な皮膚当接部と、前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記皮膚当接部を所定間隔で保つように第1伸縮強度で付勢する第1バネと、前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記筐体端部を所定間隔で保つように第2伸縮強度で付勢する第2バネと、を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、減圧採血機構と穿刺動作発生機構との気密を保つことにより、皮膚当接部を装置本体側へ押す動作のみで減圧を発生させることができる。
【0030】
また、大気圧に近づける気圧調整が一連の動作の中で行われることにより、皮膚と装置を適切に離隔させることができ、急激な大気流入による血液の飛散を防止することができる。
【0031】
また、穿刺時には、センサ保持部と皮膚当接部及び筐体端部とを第1及び第2密閉手段を介して密閉することにより、簡単な操作で所望の減圧を発生させることができ、操作性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の穿刺器具に用いられるバネによる減圧採血機構を示す図
【図2】従来の血液採取装置の斜視図
【図3A.B.C】本発明の減圧採血機構の原理を説明する図
【図3D.E.F】本発明の減圧採血機構の原理を説明する図
【図4】本発明の減圧採血機構を有するレーザ穿刺方式穿刺器具の構成を示す断面図
【図5】本発明の減圧採血機構を有する穿刺採血装置の構成を示す断面図
【図6】本発明の減圧採血機構を有する穿刺針方式穿刺器具の構成を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態1による穿刺器具を示す断面図
【図8A.B.C.D】上記実施の形態1に係る穿刺針方式穿刺器具の穿刺動作を説明する図
【図8E.F.G.H.I】上記実施の形態1に係る穿刺針方式穿刺器具の穿刺動作を説明する図
【図9A.B.C】上記実施の形態1に係る減圧採血機構の減圧動作を説明する図
【図9D.E.F】上記実施の形態1に係る減圧採血機構の減圧動作を説明する図
【図10】上記実施の形態1に係る穿刺器具のピストンのパッキン形状の他の構成例を示す図
【図11】上記実施の形態1に係る穿刺器具のピストンに取り付けられる穿刺針振れ防止用ガイドを示す図
【図12】上記実施の形態1に係る穿刺器具のピストンに取り付けられる穿刺針振れ防止用ガイドを示す図
【図13】上記実施の形態1に係る穿刺器具の穿刺針ホルダに固定されるパッキンの形状を説明する図
【図14】上記実施の形態1に係る穿刺器具の穿刺針ホルダに固定されるパッキンの形状を説明する図
【図15】本発明の実施の形態1と実施の形態2との構成の差異を説明する概念図
【図16】本発明の実施の形態2による穿刺器具を示す断面図
【図17A】上記実施の形態2に係る穿刺器具の穿刺動作を説明する図
【図17B】上記実施の形態2に係る穿刺器具の穿刺動作を説明する図
【図17C】上記実施の形態2に係る穿刺器具の穿刺動作を説明する図
【図17D】上記実施の形態2に係る穿刺器具の穿刺動作を説明する図
【図17E】上記実施の形態2に係る穿刺器具の穿刺動作を説明する図
【図18A.B】本発明の実施の形態3による穿刺器具を示す図
【図19A.B】上記実施の形態3に係る穿刺器具の脱着動作時を示す図
【図20A】本発明の実施の形態4による穿刺器具を示す図
【図20B】上記実施の形態4による穿刺器具を示す図
【図21】本発明の実施の形態5に係る血液分析装置のセンサ装着機構の構成を示す平面図
【図22】上記実施の形態5に係る血液分析装置のセンサ装着機構のセンサ保持部の断面図
【図23】上記実施の形態5に係る血液分析装置のセンサ装着機構のセンサ保持部にセンサが保持された状態を示す図
【図24A.B.C】上記実施の形態5に係る血液分析装置のセンサ装着機構の動作を説明する図
【図25】上記実施の形態5に係る血液分析装置のセンサ保持部のセンサ挿入部の他の構成例を示す図
【図26】上記実施の形態5に係る血液分析装置のセンサ保持部のセンサ挿入部の他の構成例を示す図
【図27A.B】本発明の実施の形態6に係る血液分析装置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
(原理説明)
まず、本発明の減圧採血機構の原理について説明する。
【0035】
図3A、図3B、図3C、図3D、図3E及び図3F(以下、総称する場合は、図3と記す)は、本発明の減圧採血機構の原理を説明する図である。
【0036】
図3に示すように、減圧採血機構10は、一端に皮膚に当接する皮膚当接部11aを、他端に端部11bを有するピストン11と、ピストン11を連通する開口部12aを有し、開口部12aからピストン11の皮膚当接部11aを突出させると共に、内部にピストン11の端部11bを摺動自在に収容するシリンダ12と、ピストン11の端部11bの外周部に取り付けられたパッキン13と、シリンダ12の開口部12aの内周部に取り付けられたパッキン14とから構成される。
【0037】
ピストン11は、円筒状内部空間16と、開口部12aに臨むシリンダ12内周面12bとピストン11の端部11bの端面11cとピストン11の外周部とからなる密閉空間17とを連通する連通孔11dを有する。連通孔11dは、ピストン11の摺動状態にかかわらず、常にパッキン13とパッキン14とで密閉された密閉空間17に連通する位置に開口される。このため、連通孔11dの開口位置は、ピストン11の端部11bに近接した位置となる。また、連通孔11dは、複数開口することが好ましい。
【0038】
パッキン13及びパッキン14は、密閉空間17の気密を保つ。また、パッキン13及びパッキン14は、皮膚18がピストン11の皮膚当接部11aに当接した場合、当接した皮膚18により塞がれた円筒状内部空間16と、この円筒状内部空間16に連通孔11dを経由して連通する密閉空間17の気密を保つ。
【0039】
また、図3Fに示すように、ピストン11を常に元の状態に復帰させるよう付勢するバネ15を設けることが好ましい。
【0040】
このように、減圧採血機構10は、開口部12aを有するシリンダ12と、開口部12aから突出する皮膚当接部11aとシリンダ12内部にあってシリンダ12の軸に沿って摺動する端部11bとを有するピストン11と、開口部12aとピストン11の外周とを密閉するパッキン14と、端部11bとシリンダ12内周とを密閉するパッキン13と、パッキン13とパッキン14とピストン11の外周とシリンダ12の内周とにより囲まれた密閉空間17とを備え、ピストン11は、密閉空間17と皮膚当接部11aに開口する円筒状内部空間16とを繋ぐ連通孔11dを有する。
【0041】
以上の構成において、図3Aは穿刺動作をしない通常状態(初期状態という。)を示している。以下、減圧採血機構10を用いて穿刺器具を減圧する動作について説明する。
【0042】
図3Bに示すように、穿刺をしようとする場合、減圧採血機構10全体を皮膚18に近づけ、これによりピストン11の皮膚当接部11aを皮膚18に当接させる。ピストン11の円筒状内部空間16は初期状態(図3Aの状態)においては下端が開放されているが、以下の理由で初期の密閉空間16Aとなる。すなわち、皮膚当接部11aが皮膚18に当接することで、円筒状内部空間16は密閉空間16Aとなり、かつピストン11が皮膚18方向に押されることで、パッキン13とパッキン14とで密閉された密閉空間17が拡大されることにより負圧が発生し、この負圧は連通孔11dを連通して密閉空間16Aを減圧する。つまり、ピストン11がシリンダ12内部に押し上げられることにより(図3Bにおいて、上方向を示す矢印参照)、密閉空間17の体積が増加し、密閉空間17に連通する密閉空間16Aも減圧される。
【0043】
図3Cは、ピストン11をより深くシリンダ12内部に押し上げ、密閉空間17及び密閉空間16Aをより減圧した状態を示す。この状態では、ピストン11は元の状態に戻ろうとする力が働いている。
【0044】
図3Dは、図3Cと同様の状態を示しており、ピストン11が元の状態に戻ろうとする力を示す(図3Dにおいて、下方向を示す矢印参照)。
【0045】
図3Eに示すように、ピストン11に対して押し上げる力を緩めると、上記のように負圧の状態から元の大気圧状態に戻ろうとする力が働いているため、ピストン11は元の状態に戻り、大気圧付近でピストン11の皮膚当接部11aは皮膚18から離れる。
【0046】
ここで、皮膚と皮膚当接部の密着力の関係は、以下のようなものである。すなわち、減圧値が大きいほど押し込む力が大きくなり密着力も上がるものの、皮膚が離れるポイントでは密着力は小さい。このことから、ピストン11とシリンダ12間の摺動抵抗と大気のリークの関係により、ピストン11が元の状態に完全に戻るのは難しい。そのため、図3Fに示すように、シリンダ12内に、常に元の状態にオフセットさせるバネ15を設けておくことが好ましい。このバネ15は、減圧発生初期の皮膚18と皮膚当接部11aの密着力を高める効果もある。
【0047】
このように、ピストン11の皮膚当接部11aを装置本体側へ押す動作のみで減圧を発生させる機構を実現することができる。
【0048】
特に、本減圧採血機構10によれば、予め穿刺された部位をピストン11に押し当て装置本体側へ押し込む動作のみで減圧採血し、必要量の血液が得られた際に、押し込む力を弱める動作により大気圧に近づける気圧調整が一連の動作の中で行われ、皮膚18と装置が離れるため、急激な大気流入による血液の飛散は生じない。
【0049】
上記原理説明の減圧採血機構10は、どのような穿刺手段を具備する穿刺器具にも適用することができる。
【0050】
以下、穿刺手段としてレーザ穿刺方式を具備する穿刺器具を図4及び図5に、針穿刺方式を具備する穿刺器具を図6にそれぞれ示す。
【0051】
図4A及び図4B(以下、総称する場合は、図4と記す)は、減圧採血機構10Aを有するレーザ穿刺方式穿刺器具の構成を示す断面図である。図3と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0052】
図4に示すように、レーザ穿刺方式穿刺器具20は、レーザ光により皮膚を非接触で穿刺するレーザ穿刺装置21と、減圧採血機構10Aとを備える。
【0053】
減圧採血機構10Aは、図3の減圧採血機構10とはピストン11の端部11bの構成のみが異なる。
【0054】
減圧採血機構10Aのピストン11は、レーザ穿刺装置21からのレーザ光が通過する端部11b中央部にレーザ光透過性部材11eが設けられる。
【0055】
図4Aに示すように、穿刺をしようとする場合、減圧採血機構10A全体を皮膚18に近づけ、これによりピストン11の皮膚当接部11aを皮膚18に当接させる。
【0056】
図4Bに示すように、皮膚18に当接したピストン11をシリンダ12内部に押し上げ、密閉空間17及び密閉空間16Aを減圧状態にする。密閉空間16Aが減圧されることで、皮膚18は盛り上がり、穿刺がし易い状態となる。レーザ穿刺装置21は、レーザ光を照射し、レーザ光透過性部材11eを通過し、密閉空間16Aを通って皮膚18に達し穿刺が行われる。
【0057】
図5A、図5B及び図5C(以下、総称する場合は、図5と記す)は、減圧採血機構10Bを有する穿刺採血装置の構成を示す断面図である。図3及び図4と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0058】
図5に示すように、レーザ穿刺方式穿刺器具30は、レーザ光により皮膚を非接触で穿刺するレーザ穿刺装置21と、減圧採血機構10Bと、血液センサ(以下、センサという)32を保持するホルダ31とを備える。
【0059】
減圧採血機構10Bは、図4の減圧採血機構10Aとはピストン11の皮膚当接部11aの構成のみが異なる。
【0060】
減圧採血機構10Bのピストン11は、図3のピストン11の皮膚当接部11aに代えて、ホルダ装着部11fを備える。ホルダ装着部11fは、その外周部にパッキン11gを設け、ホルダ31と対向する端面には押え爪11hを設ける。
【0061】
ホルダ31とホルダ装着部11fは、ホルダ31に載置されたセンサ32を挟んで保持する。
【0062】
減圧採血機構10Bの減圧動作は、図3及び図4と同様であるため説明を省略する。
【0063】
レーザ穿刺装置21で発生したレーザ光は、センサ32の開口32aを通過して皮膚18に到達する。
【0064】
レーザ光によって、皮膚18表面の皮膚の一部が蒸散し、これにより皮膚18表面から滲出した血液がセンサ32の開口32a端面からセンサ32内部へと流出する。センサ32内部には、図示しない試薬(例えば血糖値や乳酸値やコレステロール値を測定する試薬)が配置される。血液が試薬に到達すると、血液が血液分析用試薬に反応し、分析結果を知ることができる。
【0065】
センサ32は、ホルダ一体型でもよいし、またセンサ単体のみを用いてもよい。なお、センサ単体における構成については、実施の形態により後述する。
【0066】
図6は、減圧採血機構10Cを有する穿刺針方式穿刺器具の構成を示す断面図である。図3と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0067】
図6に示すように、穿刺針方式穿刺器具40は、穿刺針41と、穿刺針41の穿刺及び収容動作を行う機構部42と、減圧採血機構10Cとを備える。
【0068】
減圧採血機構10Cは、図3の減圧採血機構10と同様の動作原理で動作する。減圧採血機構10Cは、穿刺針41を減圧空間(図3の減圧空間16Aに相当)内に保持する。
【0069】
機構部42は、上記減圧空間外にあって、穿刺針41の穿刺動作を発生させる。
【0070】
なお、穿刺針方式穿刺器具40の詳細な構成については、以下の実施の形態により説明する。
【0071】
(実施の形態1)
実施の形態1乃至4は、[減圧採血機構]について説明する。
【0072】
図7は、上記基本原理に基づく本発明の実施の形態1による穿刺器具を示す断面図である。本実施の形態は、上記基本原理に基づく減圧採血機構を穿刺針方式穿刺器具に適用した例である。
【0073】
図7に示すように、穿刺針方式穿刺器具100は、ハウジング101と、ハウジング101の内部に設けられ、自身は減圧採血機構外にあって穿刺針160(図6における穿刺針41に相当)を穿刺動作させる穿刺動作発生機構110(図6における機構部42に相当)と、センサ170を保持するとともに、当接した皮膚により形成される空間内を減圧する減圧採血機構120(図6における減圧採血機構10Cに相当)と、センサ装着機構130とから主に構成される。
【0074】
まず、穿刺動作発生機構110について説明する。
【0075】
穿刺動作発生機構110は、減圧採血機構120外にあって、穿刺針160による穿刺動作を発生させるランセット部111と、ランセット部111の穿刺動作を穿刺針160に伝達するロッド112とを備える。ランセット部111は、ベース板111aを有し、ベース板111aにはプランジャ111b、レバー111c、及び引きバネ111dが取付けられる。ロッド112は、プランジャ111bに接続され、プランジャ111bの動作に連動して、後述する減圧採血機構120のピストン121内を所定範囲で摺動することができる。プランジャ111bは、引きバネ111dの付勢を受けたレバー111cの回動により自然状態に復帰する。
【0076】
また、穿刺動作発生機構110は、減圧採血機構120内にあって、ロッド112の端部112aに設けたパッキン113と、前記パッキン113に取り付けられ、穿刺針160を装着する穿刺針ホルダ114とを備える。
【0077】
また、穿刺動作発生機構110は、穿刺深さ調整部を兼ねるイジェクトノブ115を備える。穿刺動作の終了後は、イジェクトノブ115を押す。これにより、イジェクトロッドバネ(図示略)により付勢されるイジェクトロッド(図示略)により、穿刺針ホルダ114を、ハウジング101前方に押し、穿刺針に手を触れることなく、本穿刺具から取り外すことができる。また、穿刺深さ調整の場合は、イジェクトノブ115を回す。イジェクトノブ115は、らせん状の溝(図示略)とこの溝に係合する突起116を有し、突起116はロック板117と繋がっている。イジェクトノブ115を回すことによって、上記穿刺深さ調整の突起116の軸方向上の位置を変えて、ロック板117の位置を、ハウジング101の前後方向に移動させることができる。
【0078】
なお、ランセット部111と後述する減圧採血機構120のシリンダ122とは、ロッド118により繋がれている。
【0079】
次に、減圧採血機構120について説明する。
【0080】
減圧採血機構120は、前記図3乃至図6で述べた減圧採血機構10,10A〜10Cと基本的には同様の原理に基づく減圧機構である。但し基本原理は同様であっても実装上の観点から細部の構成は少し異なる。差異の主な点は、図7に示す本実施の形態の場合、減圧採血機構120のピストン121内において、穿刺動作発生機構110が穿刺針を動作させる点である。以下、具体的に説明する。
【0081】
減圧採血機構120は、一端にセンサ装着機構130の一部を形成する端部121aを、他端にランセット部111のロッド112を摺動可能に支持する端部121bを有するピストン121と、ピストン121を連通する開口部122aを有し、開口部122aからピストン121の端部121aを突出させると共に、内部にピストン121の端部121bを摺動自在に収容するシリンダ122と、ピストン121の端部121b外周部に取り付けられたパッキン123と、シリンダ122の開口部122aの内周部に取り付けられたパッキン124と、ピストン121の端部121b内周部に取り付けられ、ロッド112外周の気密を保つパッキン125と、ピストン121を常に元の状態に復帰させるよう付勢するバネ126とから構成される。
【0082】
ピストン121は、円筒形状であり、円筒形状内部に内部空間140を有する。穿刺針160を装着した穿刺針ホルダ114及びパッキン113は、この円筒状内部空間140を、ロッド112の穿刺動作に従って摺動する。
【0083】
ピストン121は、上記円筒状内部空間140と、ピストン121の外周部に取り付けられたパッキン123とシリンダ122の開口部122aに取り付けたパッキン124とからなる密閉空間(以下、この密閉空間を減圧室という)150とを連通する連通孔121cを有する。連通孔121cは、ピストン121の摺動状態にかかわらず、常にパッキン123とパッキン124とで密閉された減圧室150に連通する位置に開口される。このため、連通孔121cの開口位置は、自然状態でパッキン123とパッキン124との間の位置となる。また、連通孔121cは、複数開口することが好ましい。なお、ピストン121の端部121aの外周部は、ハウジング101に戻るよう折り戻され、差込部121dを形成する。差込部121dは、ハウジング101に開口した規制部101a(図示せず)に、摺動自在に挿入される。ピストン121の端部121aの外周部が全周にわたって、差込部121dとしてハウジング101の規制部101aに挿入されガイドとなるので、穿刺動作時などのピストン121のがたつきが防止される。
【0084】
パッキン123及びパッキン124は、減圧室150の気密を保つ。また、パッキン123及びパッキン124は、皮膚がセンサ装着機構130の皮膚当接部131に当接した場合、当接した皮膚により塞がれた円筒状内部空間140と、この円筒状内部空間140に連通孔121cを経由して連通する減圧室150の気密を保つ。
【0085】
パッキン125は、減圧時にパッキン113と密着して減圧状態をより確実に保つ。
【0086】
次に、センサ装着機構130について説明する。
【0087】
センサ装着機構130は、皮膚当接部131と、センサ170を所定位置に保持するためのセンサ保持部132と、センサ装着機構130の本体部であるピストン121の端部121aと、皮膚当接部131とセンサ保持部132間を第1伸縮強度で付勢する第1バネ133と、センサ保持部132と端部121a間を第2伸縮強度で付勢する第2バネ134と、穿刺時に皮膚当接部131とセンサ170との間を密閉する第1パッキン135と、穿刺時に端部121aとセンサ170との間を密閉する第2パッキン136と、皮膚当接部131とセンサ保持部132と端部121aとを可動して保持する可動部保持支柱137(後述する図21A)とから構成される。
【0088】
センサ装着機構130は、ホルダ132に載置されたセンサ170を、挟んで皮膚当接部131の内側とピストン121の端部121aとで挟んで保持する。また、この状態では、第1パッキン135及び第2パッキン136がセンサ170に密着してセンサ170と皮膚当接部131及び端部121aの隙間を塞ぐ。
【0089】
なお、実施の形態1は、[減圧採血機構]について説明する。センサ装着機構130については、後述する実施の形態5により再び図7を参照して説明する。
【0090】
以上のように構成された穿刺針方式穿刺器具100の穿刺動作を説明する。
【0091】
まず、穿刺基本動作について説明する。
【0092】
図8A、図8B、図8C、図8D、図8E、図8F、図8G、図8H及び図8I(以下、総称する場合は、図8と記す)は、穿刺針方式穿刺器具100の穿刺動作を説明する図である。
【0093】
図8Aは、穿刺針160のみ装着された状態(この状態を初期状態という)を示す。
【0094】
図8Bに示すように、センサ装着機構130にセンサ170を装着する。
【0095】
次に、図8Cに示すように、穿刺動作発生機構110のランセット部111をハウジング101内部に引き込み(図8Cにおいて、穿刺針160を上方向に移動させ)穿刺可能状態にチャージする。具体的には、ランセット部111の引きバネ111dをチャージし、パッキン113とパッキン125を密着させる。
【0096】
図8Dに示すように、指(掌、上腕部)の皮膚180をセンサ装着機構130の皮膚当接部131に押し当て、ピストン121内部の円筒状内部空間140気密性を確保する。これにより、連通孔121cにより連通される減圧室150内の気密性も確保される。
【0097】
その後、皮膚180を皮膚当接部131に押し当てたまま、押し続ける(図8Dにおいて、上方向に移動させる)ことで、図8Eの網掛けに示すように、減圧室150内が減圧された状態となる。パッキン125は減圧室150内に沈み込もうとするが、パッキン113により固定されているため、減圧時には両パッキン125,113の密着性は非常に大きい。
【0098】
図8Fは、穿刺した状態を示す。穿刺時には、パッキン125は減圧室150内に沈み込み、その際の力で、穿刺針160を可動させる。また慣性力によってそれ以上に突き出る。なお、穿刺針160の突き出し長さは、前述したようにイジェクトノブ115回転による深さ調整機構で調整することができる。
【0099】
穿刺針160により皮膚180を穿刺した後、図8Gに示すように、皮膚180の表面から滲出した血液がセンサ170内に導入され、測定開始となる。また、ランセット部111のカム機構(図示略)により、穿刺針160はチャージ前の位置に戻る。
【0100】
図8Hに示すように、測定終了後、皮膚当接部131に押し付けていた皮膚180を戻していく(図8Hにおいて、下方向に移動していく)ことにより、減圧室150内が大気圧まで戻る。
【0101】
図8Iに示すように、指(掌、上腕部)を皮膚当接部131から離して穿刺・採血完了となる。また、センサ170は排出される。
【0102】
次に、減圧採血機構120の減圧動作について詳細に説明する。
【0103】
図9A,図9B、図9C、図9D、図9E及び図9F(以下、総称する場合は、図9と記す)は、減圧採血機構120の減圧動作を説明する図である。
【0104】
図9Aは、通常(初期状態)を示している。
【0105】
図9Bは、穿刺スタンバイの状態を示しており、穿刺針方式穿刺器具100において穿刺針160をチャージして穿刺可能な状態にし、穿刺針ホルダ114に固定されたパッキン113とパッキン125とを密着させる。より好ましくは、パッキン113がパッキン125に押し込まれ、パッキン125が若干歪む程度がよい。この効果を減圧初期でみると、以下の通りである。
【0106】
パッキン125が歪まない場合には、ロッド112とパッキン125のみにて減圧室150の気密保持となる。
【0107】
図9Bの矢印(図9Bにおいて、右方向)に示すように、パッキン125が歪む場合には、上記に加えて、パッキン125の減圧室150内の内壁とパッキン113によって、ロッド112とパッキン113の密接力を小さくすることが可能となり摺動しやすい。
【0108】
図9Cは、シリンダ121,122内が減圧された状態を示している。図9Cの矢印(図9Cにおいて、左方向)に示すように、減圧室150内に押し込もうとする力が発生する。この力により、パッキン125は、穿刺針ホルダ114に固定されたパッキン113とより強固に密着し、減圧室150内に空気をリークすることを防止する。この場合の気密は、パッキン125とロッド112で保たれるのではなく、パッキン125の減圧室内の内壁とパッキン113が密着して保たれる。パッキン125とパッキン113との密着であるため気密性は強固である。減圧すればするほど気密性は向上することになる。
【0109】
図9Dは、穿刺途中の状態を示している。図9D矢印に示すように、パッキン125の減圧室150内に押し込もうとする力と穿刺針方式穿刺器具100のバネ(図示略)の力とが働き、この2つの力で穿刺針160を可動させる。
【0110】
図9Eは、穿刺針160が一番突出した状態を示している。図9Eに示すように、穿刺針160の突出距離のみ穿刺針ホルダ114が摺動する。これは、穿刺針160と穿刺針ホルダ114が可動する際の慣性力を利用するものである。
【0111】
図9Fは、穿刺針160が所定の位置まで戻った状態を示している。図9F矢印に示すように、穿刺針160は、穿刺針方式穿刺器具100の針戻し機構(引きバネ111dを用いたカム機構:上記の図7参照)により、初期の位置まで戻る。
【0112】
以上、穿刺針方式穿刺器具100の穿刺動作及び減圧採血機構120の減圧動作について説明した。
【0113】
以下、減圧採血機構120の各部の変形例について説明する。
【0114】
図10A,図10B及び図10C(以下、総称する場合は、図10と記す)は、ピストン121のパッキン形状の他の構成例を示す図である。
【0115】
図10Aは、図7のピストン121のパッキンと同一構成であり、ピストン121は、外周部にパッキン123を有し、内周部にパッキン125を有する。
【0116】
また、図10Bに示すように、前記パッキン123と前記パッキン125とを組合わせて同一部材で構成し、パッキン125Aとしてもよい。
【0117】
さらに、図10Cに示すように、前記パッキン123と前記パッキン125とを組合わせて同一部材で構成し、パッキン125Bとしてもよい。パッキン125Bは、ピストン121Bの端部に取り付けられる。ピストン121Bは、前記ピストン121に比べ、外径方向に突出する段差部がないため、導入が容易である利点がある。但し、パッキン125Bは、摺動方向に加わる力に対して脱落しないようピストン121Bの外周面に対して十分な接着面積を持たせる必要がある。
【0118】
図11A、図11B(以下、総称する場合は、図11と記す)及び図12A、図12B(以下、総称する場合は、図12と記す)は、ピストン121に取り付けられる穿刺針振れ防止用ガイドを示す断面図である。
【0119】
図11Aは、ロッド112の軸方向と平行の断面図を示し、図11Bは、穿刺針振れ防止用ガイド127及びその周辺の位置における、ロッド112の軸方向に対して垂直の断面図を示している。
【0120】
図11Bに示すように、ピストン121は、穿刺針160の摺動方向に沿った溝121eを備える。溝121eは、ピストン121の内周面の上下左右に均等に設ける。穿刺針ホルダ114は、この溝121eに摺動自在に嵌合する凸部114aを前後に備える。ピストン121の溝121e及び穿刺針ホルダ114の凸部114aは、穿刺針振れ防止用ガイド127を構成する。穿刺針振れ防止用ガイド127を設けることにより、穿刺時の穿刺針160の振れを防止することができる。
【0121】
また、図12に示すように、ピストン121Cは、穿刺針160の摺動方向に沿った上溝121eと下溝121fとを備える。上溝121eは、ピストン121Cの内周面の所定位置(便宜上、上と呼ぶ)に設ける。下溝121fは、切欠形状であり、ピストン121Cの内周面の所定位置(便宜上、下と呼ぶ)に2つ設ける。上溝121eと下溝121fとは、互いにピストン121Cの内周面を3分割する位置に設ける。
【0122】
穿刺針ホルダ114は、上溝121eに摺動自在に嵌合するバネ形状の凸部114bと、下溝121fに摺動自在に嵌合する突起部114cとを備える。
【0123】
ピストン121Cの上溝121e及び穿刺針ホルダ114のバネ形状の凸部114bは、穿刺針振れ防止用上ガイド127aを構成し、ピストン121Cの下溝121f及び穿刺針ホルダ114の突起部114cは、穿刺針振れ防止用下ガイド127bを構成する。
【0124】
穿刺針振れ防止用上ガイド127aは、穿刺時の穿刺針160の振れを防止すると共に、図12B矢印に示すように、バネ形状の凸部114bによって常に(図12Bにおいて)下向きの力を発生させる。この下向きの力は、均等配置された複数の穿刺針振れ防止用下ガイド127bに均一に加わる。
【0125】
穿刺針振れ防止用上ガイド127a及び穿刺針振れ防止用下ガイド127bを設けることにより、穿刺時の穿刺針160の振れを防止することができる。
【0126】
なお、図12Bでは、溝が3箇所に設けられている例を示したが、もちろん、これに限られない。4箇所以上の場合でも、振れを防止することができる。
【0127】
図13及び図14(図14A、図14B、図14C及び図14Dの総称)は、穿刺針ホルダ114に固定されるパッキン113の形状を説明する図である。
【0128】
図13は、図14のパッキン113の形状の変形例を説明するために比較例として示す図であり、上述の図7と同一構成である。
【0129】
図13に示すように、基本的には、パッキン113側面部とパッキン125側面部とが密着して、減圧時の気密性を保持する。パッキン113の側面部又はパッキン125の側面部の形状を工夫することで、より効率的に減圧時の密着力(気密性向上)を向上させることができる。
【0130】
図14Aに示すように、穿刺針ホルダ114に固定されるパッキン113aは、ロッド112を周回するようにリング状の半円突起を有する。また、図示は省略するが、パッキン125の側面部が同様のリング状の半円突起を有する構成でもよい。この構成により、パッキン113aとパッキン125の密着力をより高めることができる。
【0131】
次に、図14Bに示すように、さらに、パッキン125aは、パッキン113aと対向する側面部に、ロッド112を周回するリング状の半円突起を有する。この構成により、パッキン113aとパッキン125aの密着力をより一層高めることができる。
【0132】
なお、パッキン113aは、弾性体でなく穿刺針ホルダ114と同一材料でもよい。
【0133】
図14Cに示すように、穿刺針ホルダ114に固定されるパッキン113bは、パッキン125の側面部に対して、この側面部を吸着する吸盤形状の外周突起を有する。パッキン113bが吸盤構造で、パッキン125の側面部が平面であることで、パッキン113bとパッキン125が密着した場合、減圧力が大きくない状態においても密着力をより高めることができる。
【0134】
なお、パッキン125の、パッキン113bとの接合面は、弾性体でなくてもよい。
【0135】
図14Dに示すように、穿刺針ホルダ114に固定されるパッキン113cは、ロッド112を周回するようにリング状の凹部を有する。パッキン125bは、パッキン113cの凹部に嵌合するように、リング状の凸部を有する。このパッキン125bの凸部は、ロッド112上を摺動する端面を形成しており、他の部分より肉厚構成とする。本例では、パッキン125bは、パッキン113cの凹部に嵌合するリング状の凸部と同様の凸部を裏側面部に設ける。パッキン113cとロッド112との接点は、摺動するため、他の部分よりも若干肉厚にする。
【0136】
ところで、減圧状態の際には、大気が流入しようとする力が加わり、減圧室150側が浮き上がろうとする力が発生する。図14Dに示すように、パッキン125bとパッキン113cとが接する側面部の形状を凸凹関係の形状とすることにより、上記浮き上がりを防止することができる。また、穿刺針方式穿刺器具100の針戻し機構(図7に示す引きバネ111dを用いたカム機構)により再度接する際にも、大気の流入が最小限にとどめられる利点がある。
【0137】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、穿刺針方式穿刺器具100は、一端にセンサ装着機構130の一部を形成する端部121aを、他端にランセット部111のロッド112を摺動可能に支持する端部121bを有するピストン121と、内部にピストン121の端部121bを摺動自在に収容するシリンダ122と、ピストン121の端部121b内周部に取り付けられ、ロッド112外周の気密を保つパッキン125とを備える。ピストン121は、皮膚当接部131が皮膚に当接した状態で、シリンダ122の方向に移動したとき、パッキン123,124により密閉された内部空間140及び減圧室150の体積が増大し、減圧となり、パッキン125は、減圧時に減圧室150内部方向に働く力を、ロッド112を動作させる力に利用する。これにより、簡単な操作で所望の減圧を発生させることができ、操作性を向上させることができる。以下、より詳しく効果を説明する。
【0138】
従来、針穿刺方式を用いた減圧採血方式では、ランセットシステムを減圧室内に配置するのが一般的である。すなわち、穿刺針が可動し穿刺を行うシステムにおいては、穿刺針をスムーズに可動させる必要があり、減圧室外に穿刺機構配置するためには、減圧室と可動部が一定の密閉状態を保持した状態で針を稼動させる必要がある。密閉力と可動部抵抗の関係は、密閉力が大きいと可動部抵抗も大きくなる関係がある。穿刺可能な距離を可動させるためには、非常に大きな力がランセットシステムに必要となる。
【0139】
本実施の形態では、穿刺針方式穿刺器具100(上述の図7参照)は、上記減圧採血機構120(上述の図7参照)を備え、減圧採血機構120と穿刺動作発生機構110(上述の図7及び図8参照)とは、パッキン125により気密が保たれる。すなわち、穿刺動作発生機構110は、減圧採血機構120により発生した減圧の外(外部)にあり、従って減圧体積は減圧採血機構120の内部空間140及び減圧室150だけであって、減圧部分は狭小である。このため、皮膚当接部131を装置本体側へ押す動作のみで減圧を発生させることができるという特有の効果がある。
【0140】
また、減圧室150と外部(ランセット部111)を連結する部分に、減圧時には減圧室150の内部方向に力が働くように設計されたパッキン125を設け、その内側に沈み込もうとする力を、ランセット部111(上述の図7参照)を可動させる力と気密性を保持する力に利用する。この方法を用いることにより、ランセット部111に搭載された穿刺バネ111d(上述の図7参照)を強固なものにすることなく、穿刺が可能となる。
【0141】
さらに、本実施の形態では、予め穿刺された部位をピストン121の皮膚当接部131に押し当て装置本体側へ押し込む動作のみで減圧採血し、必要量の血液が得られた際に、押し込む力を弱める動作により大気圧に近づける気圧調整が一連の動作の中で行われ、皮膚180と装置が離れるため、急激な大気流入による血液の飛散は生じない。
【0142】
(実施の形態2)
図15は、実施の形態1と実施の形態2との構成の差異を説明する概念図であり、図15Aは、実施の形態1の穿刺針方式穿刺器具100の断面を模式的に示し、図15Bは、実施の形態2の穿刺針方式穿刺器具200の断面を模式的に示す。
【0143】
図15Aに示すように、実施の形態1の減圧採血機構120は、[穿刺機構]と[減圧機構]とが同芯円状に設置された直動方式である。実施の形態2では、穿刺機構220と減圧機構230とを並列に設置する。実施の形態2の穿刺針方式穿刺器具200は、実施の形態1の穿刺針方式穿刺器具100と比較して、装置の外形寸法(特に厚み寸法)を小さくすることができる。
【0144】
図16は、本発明の実施の形態2による穿刺器具を示す断面図である。図7と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0145】
図16に示すように、穿刺針方式穿刺器具200は、ハウジング201と、ハウジング201の内部に設けられ、自身は減圧採血機構外にあって穿刺針160を穿刺動作させる穿刺動作発生機構210と、保持されたセンサ170を介して皮膚を穿刺する穿刺機構220と、穿刺機構220に並列に設置され、当接した皮膚により形成される空間内を減圧する減圧機構230と、センサ装着機構130とから主に構成される。
【0146】
まず、穿刺動作発生機構210について説明する。
【0147】
穿刺動作発生機構210は、穿刺機構220及び減圧機構230外にあって、穿刺針160による穿刺動作を発生させるランセット部111と、ランセット部111の穿刺動作を穿刺針160に伝達するロッド112と、ランセット部111のチャージ動作をロッド112に伝達するとともに、減圧機構230による減圧発生動作をロッド211に伝達するノブ215とを備える。
【0148】
ランセット部111は、ベース板111aを有し、ベース板111aにはプランジャ111b、レバー111c、及び引きバネ111dが取付けられる。ロッド112は、プランジャ111bに接続され、プランジャ111bの動作に連動して、穿刺機構220の穿刺機構シリンダ241(後述)内を所定範囲で摺動することができる。プランジャ111bは、引きバネ111dの付勢を受けたレバー111cの回動により自然状態に復帰する。
【0149】
ノブ215は、ランセット部111全体を覆うように中空に形成される。ノブ215の一方の端部215aは、引きバネ111dのチャージ時にプランジャ111bの突起111eに係止して、ランセット部111をハウジング201外方に引っ張り出して(図16において、穿刺針160を右方向に移動させ)穿刺可能状態にチャージする。また、ノブ215の他方の端部215bは、ロッド211に連結され、減圧時にロッド211をハウジング201内部に押し込んで(図16において、ロッド211を左方向に移動させ)減圧機構230による減圧を発生させる。ノブ215の端部215bは、減圧時の操作では、端部215aが、プランジャ111bの突起111eから離隔する方向に移動する。またノブ215の端部215bは、ノブ215の内部が、ランセット部111に当接しない。このためチャージ動作に影響は与えることはない。
【0150】
また、穿刺動作発生機構210は、穿刺機構220内にあって、ロッド112の端部112aに設けたパッキン113と、前記パッキン113に取り付けられ、穿刺針160を装着する穿刺針ホルダ114とを備える。
【0151】
次に、穿刺機構220及び減圧機構230について説明する。
【0152】
穿刺機構220及び減圧機構230は、前記図7で述べた減圧採血機構120と基本的には同様の原理に基づく減圧機構である。実施の形態2では、減圧採血機構120(図7)を、[穿刺機構]と[減圧機構]とに分け、穿刺機構220と減圧機構230とを並列に設置する。
【0153】
穿刺機構220は、ハウジング201内部のセンサ装着機構130側に、穿刺機構側シリンダ241を有する。また、減圧機構230は、穿刺機構シリンダ241に並設された減圧機構シリンダ242を有する。本実施の形態では、穿刺機構シリンダ241と減圧機構シリンダ242は、シリンダブロック240として一体形成される。なお、穿刺機構シリンダ241と減圧機構シリンダ242は、ハウジング201内部で並設されていればよく、別体であってもよい。
【0154】
[穿刺機構220]
穿刺機構220は、穿刺機構シリンダ241内において、穿刺動作発生機構210が穿刺針を動作させる。
【0155】
穿刺機構シリンダ241は、一端にセンサ装着機構130の一部を形成する端部241aと、他端にランセット部111のロッド112を摺動可能に支持する端部241bと、減圧機構230により発生した減圧を穿刺機構シリンダ241内に伝える連通孔241cとを有する。
【0156】
端部241aには、穿刺時にセンサ170との間を密閉する第2パッキン136が取り付けられる。第2パッキン136は、皮膚がセンサ装着機構130の皮膚当接部131に当接した場合、当接した皮膚により塞がれた円筒状内部空間140の気密を保つ。
【0157】
端部241bの開口部及び内周部には、ロッド112外周の気密を保つパッキン125が取り付けられる。
【0158】
連通孔241cは、端部241bの筒状内周面とロッド112外周の気密を保つパッキン125とロッド112の端部112aに設けたパッキン113とからなる密閉空間と、減圧機構230の減圧室250(図17C,図17D参照)とを連通する。連通孔241cは、穿刺機構220側から見た場合、ロッド112の摺動状態にかかわらず、常にパッキン125とパッキン113とで密閉され減圧室250に連通する位置に開口される。このため、連通孔241cの開口位置は、自然状態でパッキン125とパッキン113との間の位置となる。なお、パッキン125は、減圧時にパッキン113と密着して減圧状態をより確実に保つ。
【0159】
穿刺機構220は、シリンダブロック240を常に元の状態に復帰させるよう付勢するバネ126を備える。
【0160】
[減圧機構230]
減圧機構230は、減圧機構シリンダ242内において、ノブ215の押し込みによる減圧発生動作に連動するロッド211の動きにより減圧を発生させる。
【0161】
減圧機構シリンダ242は、一端にセンサ装着機構130の一部を形成する端部242aと、他端にノブ215の押し込みに連動するロッド211を摺動可能に支持する端部242bとを有する。また、端部242aには、減圧時に減圧機構シリンダ242内の空気を抜くための逃がし穴(図示略)が開口している。
【0162】
ロッド211の端部211aは、円板形状であり、この円板形状の端部211aが、減圧機構シリンダ242内にあって、ロッド211の動作に従って摺動する。端部211a外周部には、パッキン212が取付けられている。
【0163】
端部242bの開口部及び内周部には、減圧室250とロッド211外周との気密を保つパッキン213が取り付けられる。
【0164】
減圧機構シリンダ242の筒状内周面と端部242bの内周部に取り付けられたパッキン213とロッド211の端部211a外周部に取り付けられたパッキン212とからなる密閉空間は、減圧が発生する減圧室250を形成する。
【0165】
連通孔241cは、減圧機構230側から見た場合、ロッド211の端部211aの摺動状態にかかわらず、常にパッキン212とパッキン213とで密閉された減圧室250に連通する位置に開口される。このため、連通孔241cの開口位置は、自然状態でパッキン212とパッキン213との間の位置となる。
【0166】
以上のように構成された穿刺針方式穿刺器具200の穿刺動作を説明する。
【0167】
まず、穿刺基本動作について説明する。
【0168】
図17A、図17B、図17C、図17D及び図17E(以下、総称する場合は、図17と記す)は、穿刺針方式穿刺器具200の穿刺動作を説明する図である。
【0169】
図17Aに示すように、センサ装着機構130にセンサ170を装着する。
【0170】
次に、図17Bに示すように、穿刺動作発生機構210のランセット部111をハウジング201外方に引っ張り出して(図17Bにおいて、穿刺針160を右方向に移動させ)穿刺可能状態にチャージする。具体的には、ノブ215の端部215aが、プランジャ111bの突起111eに係止し、ランセット部111をハウジング201外方に引っ張り出すことでランセット部111の引きバネ111dをチャージする。パッキン113とパッキン125を密着させる。
【0171】
図17Cに示すように、指(掌、上腕部)の皮膚180をセンサ装着機構130の皮膚当接部131に押し当て、穿刺機構シリンダ241内部の円筒状内部空間140気密性を確保する。これにより、端部241bの筒状内周面とロッド112外周の気密を保つパッキン125とロッド112の端部112aに設けたパッキン113とからなる密閉空間内の気密性も確保される。
【0172】
この状態で、ユーザは、例えば親指の押下動作によりノブ215をハウジング201内部に押し込む(図17Cにおいて、ロッド211を左方向に移動させる)。ロッド211の端部211aが、減圧機構シリンダ242内を摺動し、減圧機構シリンダ242内の減圧室250を減圧する。減圧室250は、連通孔241cを介して穿刺機構シリンダ241に連通している。このため、穿刺機構シリンダ241の端部241bの筒状内周面とパッキン125とパッキン113とからなる密閉空間も減圧された状態となる。この減圧によって、パッキン125とパッキン113は、より強固に密着する。穿刺機構シリンダ241内の上記密閉空間が減圧されることにより、円筒状内部空間140も減圧される。
【0173】
上記穿刺機構シリンダ241の端部241bの筒状内周面とパッキン125とパッキン113とからなる密閉空間及び、該密閉空間に連通する円筒状内部空間140は、穿刺機構220の減圧対象空間を形成する。すなわち、減圧機構230は、減圧室250の連通孔241cを介して上記密閉空間が減圧されるとともに、同時に円筒状内部空間140を減圧する。上記密閉空間を狭義の減圧対象空間と呼称してもよい。
【0174】
図17Dは、穿刺動作を示す。穿刺時には、パッキン125は、穿刺機構シリンダ241内の上記密閉空間内に沈み込み、その際の力で、穿刺針160を可動させる。また慣性力によってそれ以上に突き出る。
【0175】
穿刺針160により皮膚180を穿刺した後、図17Eに示すように、皮膚180の表面から滲出した血液がセンサ170内に導入され、測定開始となる。また、ランセット部111のカム機構(図示略)により、穿刺針160はチャージ前の位置に戻る。
【0176】
本実施の形態の穿刺針方式穿刺器具200は、小型・軽量でかつ握り易い形状となっている。ユーザは、本穿刺針方式穿刺器具200を手に持った場合、親指の上下動作により減圧を発生することができる。親指の上下動作による減圧発生操作は、直感的で非常に操作がしやすい効果がある。
【0177】
また、穿刺針方式穿刺器具200は、穿刺機構220と減圧機構230とが並列に設置されているので、装置の外形寸法(特に厚み寸法)を小さくすることができる。
【0178】
(実施の形態3)
実施の形態3は、穿刺針の脱着機構を備える例である。
【0179】
図18Aは、本発明の実施の形態3による穿刺器具を示す断面図、図18Bは、図18Aの矢視方向から見た側面図である。図19Aは、脱着動作時の上記穿刺器具を示す断面図、図19Bは、図19Aの矢視方向から見た側面図である。図16と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0180】
図18A及び図18Bに示すように、穿刺針方式穿刺器具300は、ハウジング201の内部に設けられ、自身は減圧採血機構外にあって穿刺針160を穿刺動作させる穿刺動作発生機構210と、穿刺針160を脱着させる穿刺針の脱着機構350とを備える。
【0181】
穿刺動作発生機構210は、ランセット部111のチャージ動作をロッド112に伝達するとともに、減圧機構230による減圧発生動作をロッド211に伝達するノブ315を有する。ノブ315は、ランセット部111全体を覆うように中空に形成され、ランセット部111を空間部に収容する。
【0182】
穿刺針の脱着機構350は、ノブ315が下記の構成要素を備えることにより実現される。
【0183】
図18B,図19Bに示すように、ノブ315は、有底円筒形状であり、円筒形の中心軸を軸心として回動可能に構成される。ノブ315は、円筒形状の底部315aに、半円形状の開口部315bと、円弧状の開口部315cとが開口される。底部315aには、開口部315bの任意位置から前記中心軸に向かう方向にロッド316の端部316aが固定されている。図18A,図19Aに示すように、ロッド316は、底部315aに端部316aが固定され、他方の端部316bは、穿刺針の脱着時にはランセット部111の端部に当接する。すなわち、ノブ315は、前記中心軸から所定距離離隔して前記中心軸と平行なロッド316を有する。ロッド316の端部316bは、図18Bに示すように、非脱着時にはランセット部111の端部から回動して離れ、図19Bに示すように、脱着時には回動してランセット部111の端部に当接する。
【0184】
また、図18B,図19Bに示すように、円弧状の開口部315bには、ロッド211の端面211aが臨むようにロッド211が収容される。円弧状の開口部315bにロッド211が収容されることで、ノブ315の回動範囲が規制される。また、開口部315bに露出したロッド211の端面211aの位置により穿刺針の非脱着/脱着のステータスを確認することができる。
【0185】
なお、図示は省略するが底部315aに穿刺針の非脱着/脱着のメッセージを刻印等することが好ましい。また、ロッド211の端面211aをより目立つ色に着色等してもよい。
【0186】
図18A,図18Bに示すように、穿刺針の非脱着時は、ユーザがノブ315を回動しない。ロッド211の端面211aは、ランセット部111の端部から離れた位置にあり、従ってランセット部111は、ロッド211による影響を受けない。実施の形態2の穿刺針方式穿刺器具200の穿刺動作と同様である(図17参照)。
【0187】
図19A,図19Bに示すように、穿刺針の脱着時は、ユーザがノブ315を回動する。具体的には、ユーザはロッド211の端面211aが円弧状の開口部315bの一端から他端に到達するまで、ノブ315を回動する。図19Bに示すように、ロッド316の端部316bは、ランセット部111の端部に当接する。
【0188】
この状態で、図19Aに示すように、ユーザはノブ315をハウジング201内部に深く押し込む。ロッド316に当接したランセット部111は、穿刺針160を左方向に大きく移動し、穿刺針160はハウジング201外に押し出される。これにより、穿刺針160の脱着が可能となる。
【0189】
このように、本実施の形態によれば、穿刺針方式穿刺器具300は、ノブ315及びロッド316の各部から構成された穿刺針の脱着機構350を備えているので、穿刺針160の脱着が非常に容易となる効果がある。穿刺針の脱着機構350は、ユーザがノブ315を回動させるだけで、穿刺針の非脱着/脱着を簡単に設定することができる。
【0190】
なお、本実施の形態では、ノブ315の回動により、ロッド316の端部316bをランセット部111の端部に当接させる構成について説明したが、ロッド316をランセット部111の端部にスライドさせる構成でもよい。
【0191】
(実施の形態4)
実施の形態4は、センサ保持部が本体から脱着可能な構成例である。
【0192】
図20Aは、本発明の実施の形態4による穿刺器具を示す断面図、図20Bは、脱着動作時の上記穿刺器具を示す断面図である。図16と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0193】
図20A,図20Bに示すように、穿刺針方式穿刺器具400は、ハウジング401と、ハウジング401の内部に設けられ、自身は減圧採血機構外にあって穿刺針160を穿刺動作させる穿刺動作発生機構210と、保持されたセンサ170を介して皮膚を穿刺する穿刺機構420と、穿刺機構220に並列に設置され、当接した皮膚により形成される空間内を減圧する減圧機構230と、ハウジング401から脱着可能なセンサ装着機構430とから主に構成される。
【0194】
なお、穿刺針方式穿刺器具400は、図16の穿刺針方式穿刺器具200よりもさらにコンパクト化を図るため、ハウジング401の全長、ロッド112及びロッド211の長さが穿刺針方式穿刺器具200(図16)よりも短い。説明の便宜上、同一番号を付している。
【0195】
センサ装着機構430は、図16のセンサ装着機構130の構成に加え、さらに穿刺機構420に脱着可能に取り付ける取付部431を有する。取付部431は、図16の穿刺機構220の穿刺機構シリンダ241の半分(図20A,図20Bにおいて、左半分)を構成する円筒形状である。取付部431は、円筒形状の開口部431aの厚さが薄い段差構造となっている。
【0196】
穿刺機構420は、センサ装着機構430の取付部431と係合する取付部421を有する。取付部421は、センサ装着機構430の取付部431の開口部431aに対向する円筒外周面上にパッキン422が取り付けられている。パッキン422は、センサ装着機構430と穿刺機構420との気密を保つ。
【0197】
センサ装着機構430は、図20Aに示すように、ハウジング401から脱着することができる。
【0198】
また、センサ装着機構430は、図20Bに示すように、取付部431を穿刺機構420の取付部421に係合させることで、センサ装着機構430とハウジング401とを一体化させることができる。
【0199】
図20Bに示すように、センサ装着機構430がハウジング401に装着された場合、穿刺機構420は、図16の穿刺針方式穿刺器具200の穿刺機構220と同一の機能を有する。
【0200】
このように、本実施の形態によれば、穿刺針方式穿刺器具400は、センサ装着機構430がハウジング401に脱着可能に構成したので、下記の効果を得ることができる。(1)穿刺針の脱着機構の簡素化を図ることができる。(2)センサ装着機構430に血液が付着した際のメンテナンス性を向上させることができる。(3)装置のコンパクト化を図ることができる。
【0201】
なお、本実施の形態では、センサ装着機構430の取付部431の開口部431aに対向する円筒外周面上にパッキン422を取り付けているが、この構成に代えて、あるいは加えて、センサ装着機構430の開口部431aの内周面にパッキンを取り付けてもよい。
【0202】
また、センサ装着機構430の取付部431を装着する穿刺機構420の取付部421の装着面とこの装着面に密着可能なセンサ装着機構430の取付部431の着脱面の、少なくともいずれかの面に、凸部を設ける構成を採ってもよい。装着面と着脱面とを緊密に接触させることができ、センサ装着機構430と穿刺機構420との気密を保つことができる。この場合、上記パッキンを併用してもよい。
【0203】
(実施の形態5)
実施の形態5及び6は、センサ装着機構について説明する。
【0204】
実施の形態5は、実施の形態1の穿刺針方式穿刺器具100(図7)のセンサ装着機構130を例に採り説明する。実施の形態4のセンサ装着機構430でも同様である。
【0205】
図21A,図21B、図21C(以下、総称して図21と示す)は、前記図7のセンサ装着機構130の構成を示す上視図である。図21は、皮膚当接部131(図21A)、センサ保持部132(図21B)、及び端部121a(図21C)を平面に展開した状態を示している。
【0206】
前記図7に示すように、センサ装着機構130は、皮膚当接部131と、センサ170を所定位置に保持するためのセンサ保持部132と、センサ装着機構130の本体部であるピストン121の端部121aと、皮膚当接部131とセンサ保持部132間を第1伸縮強度で付勢する第1バネ133と、センサ保持部132と端部121a間を第2伸縮強度で付勢する第2バネ134と、穿刺時に皮膚当接部131とセンサ170との間を密閉する第1パッキン135と、穿刺時に端部121aとセンサ170との間を密閉する第2パッキン136と、皮膚当接部131とセンサ保持部132と端部121aとを可動して保持する可動部保持支柱137(図21A)とから構成される。
【0207】
可動部保持支柱137(図21A)は、筐体端部121aから摺動自在に突出する支持部であり、ロッド118(図7)と一体物である。端部121a及びセンサ保持部132には、可動部保持支柱137(すなわちロッド118)を摺動自在に貫通する貫通孔138(図21B、図21C)が開孔している。この貫通孔138の中を、可動部保持支柱137(ロッド118)が摺動する。また、この可動部保持支柱137(ロッド118)の先端に、図21Aに示す皮膚当接部131が取り付けられている。
【0208】
上記ピストン121の端部121aは、センサ装着機構130の一部を構成する。
【0209】
また、本体側から突出する前記ロッド118の突端には、皮膚当接部131の端部が接続される。ロッド118は、皮膚当接部131とセンサ保持部132間端部を第1バネ133により、またセンサ保持部132と端部121a間端部を第2バネ134により挟んで、本体側に摺動可能に保持する。
【0210】
皮膚当接部131は、皮膚との密着性を向上させるために、柔らかい樹脂(例えばゴム系)から構成される。
【0211】
ピストン121を付勢するバネ126は、第3伸縮強度でピストン121を元の状態に復帰させるよう付勢する。
【0212】
第1バネ133と第2バネ134とバネ126の伸縮強度は、次のように設定される。
【0213】
バネ126(第3伸縮強度)>第2バネ134(第2伸縮強度)≧第1バネ133(第1伸縮強度)
図21Aに示すように、皮膚当接部131は、穿刺のための開口部131aを有し、開口部131aを取り囲むようにリング状の第1パッキン135が取り付けられる。
【0214】
図21Bに示すセンサ保持部132は、センサ170を装着するコネクタ132aと、センサ170を挿入してコネクタ132aまでガイドするセンサ挿入ガイド132bと、センサ保持部132の一部をセンサ挿入方向に切欠く切欠部132cとを有する。
【0215】
該センサ挿入ガイド132bは、センサ170をスムーズに装着及び脱着するとともに、測定後の血液を測定器に付着させないようにする機能を有する。
【0216】
また、該センサ挿入ガイド132bの略中央部には、穿刺のための開口部132dが設けられている。
【0217】
切欠部132cは、測定終了後、センサ170に付着した血液が測定器内部に付かないようにする欠損部である。
【0218】
図21Cに示す端部121aは、穿刺のための開口部121bを有し、開口部121bを取り囲むようにリング状の第2パッキン136が取り付けられる。
【0219】
次に、図22は、上記センサ保持部132の側面から見た断面図であり、センサ保持部132がセンサ170を保持した状態を示している。
【0220】
図22に示すように、センサ保持部132は、センサ170を挟持する上面部132eと下面部132fとを有する。下面部132fは、可能な限り薄く形成する。上面部132eは、下面部132fを肉薄で形成したことによる剛性の低下を補強できる適度の肉厚で形成する。センサ保持部132の下面部132fを、可能な限り薄く形成することで、皮膚当接部131の凹凸を極力小さくすることが可能になる。これにより、より皮膚に密着させることができ採血の確実性が向上し、腕、手の甲にも対応可能になる。
【0221】
図23は、上記センサ保持部132にセンサ170が保持された状態を上方から見た平面図である。図23は、センサ170の下の端部121aが透過して見えた状態を示す。
【0222】
図23に示すように、センサ170は、切欠部132c(図21B参照)からセンサ挿入ガイド132bに沿ってコネクタ132aまで挿入され、コネクタ132aに装着される。このとき、センサ170は、センサ保持部132の上面部132eと下面部132fとにより挟まれつつ移動する。この操作は、ユーザがセンサ170の一端を手に持って行う。
【0223】
次に、センサ装着機構130の動作について説明する。
【0224】
図24A乃至図24Cは、穿刺時のセンサ装着機構130の動作を説明する断面図である。図24A乃至図24Cは、前記図7の穿刺動作発生機構110及びセンサ装着機構130は簡略化して示している。
【0225】
図24Aに示すように、センサ装着機構130にセンサ170を装着する。具体的には、ユーザは、センサ装着機構130が初期状態であることを確認した上で、センサ170の一端を手に持ち、センサ170の他端を切欠部132c(図21B参照)に当てる。そして、ユーザは、センサ170の他端を切欠部132cからセンサ挿入ガイド132bに沿って挿入する。センサ170の一端は測定器外に存在し、センサ170の反応部のみが挿入される。
【0226】
センサ170の他端をコネクタ132a(図22参照)に当接するまで挿入することで、センサ170のセンサ装着機構130への装着が完了する。挿入完了は、センサ170の他端とコネクタ132aの接触により確認される。
【0227】
次に、図24Bの矢印に示すように、指など(掌、上腕部)の皮膚180をセンサ装着機構130の皮膚当接部131に当接して、矢印方向(図24Bにおいて、上方向)に押し上げる。
【0228】
ここで、第1バネ133と第2バネ134とバネ126の伸縮強度は、バネ126(第3伸縮強度)>第2バネ134(第2伸縮強度)≧第1バネ133(第1伸縮強度)である。このため、第1バネ133(第1伸縮強度)、第2バネ134(第2伸縮強度)、及びバネ126(第3伸縮強度)は、この順で縮む。特に、第1バネ133(第1伸縮強度)及び第2バネ134(第2伸縮強度)がほぼ縮み終わってからバネ126(第3伸縮強度)が縮み出すように各バネの伸縮強度を設定する。この場合、第1バネ133の第1伸縮強度を最も弱く設定しておくようにすれば、センサ保持部132の下面部132fが薄いことと相まって、皮膚180をより早くセンサ170に当接させることになる。センサ170と皮膚180とがより早く当接することで、気密性がより早く確実に確保され、穿刺開始時間短縮及び操作性を向上させることができる。
【0229】
皮膚当接部131及び端部121aは、センサ保持部132に保持されたセンサ170を上下に挟み込む。皮膚当接部131及び端部121aには、第1パッキン135及び第2パッキン136が設けられており、上記挟み込み動作に従って、第1パッキン135及び第2パッキン136とセンサ170とを密着させる。第1パッキン135及び第2パッキン136とセンサ170とが密着することで、この部分は緊密に密閉される。また、皮膚当接部131に当接した皮膚180が、皮膚当接部131の開口部131aを塞ぐことにより、ピストン121内部の円筒状内部空間140気密性を確保する。また、連通孔121cにより連通される減圧室150内の気密性も確保される。
【0230】
次に、図24Cの矢印に示すように、皮膚当接部131をさらに矢印方向(図24Cにおいて、上方向)に押し込む。これにより、減圧室150の体積を拡大させることになり、内部空間140に負圧を発生させ、皮膚180を盛り上げることができる。
【0231】
次に、センサ装着機構130の各部の変形例について説明する。
【0232】
図25及び図26は、センサ保持部132のセンサ挿入部の他の構成例を示す図である。図21と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0233】
図25に示すように、センサ保持部132Aは、さらに、センサ170が挿入しやすいようにガイドするガイド入口部132gを有する。本実施の形態では、ガイド入口部132gは直線端部であるが、曲線端部であってもよい。
【0234】
ガイド入口部132gは、センサ170が挿入しやすいように広く形成する。例えば、図25の破線で示す仮想円175の外周に対応する角度及び端面切取り長とする。ここで、仮想円175はセンサ170の幅(図25において、上下方向の幅)より、大きいことから、ガイド入口部132gは、外部に向かって一定の角度に広がり、その最大幅は、センサ170の幅より大きくなるようにして、センサ170の挿入をし易くしている。前記一定の角度は、仮想円175の外周の接線に対応する角度である。
【0235】
また、このガイド入口部132gの大きさは、センサ170をセンサ保持部132Aから抜いた際に血液付着部が測定器外に出るまではぶれない大きさとすることが好ましい。なお、センサ170は、穿刺孔171と、血液が浸透する分析窓172を有する。穿刺の際、血液はこれら箇所を中心に飛散することがある。
【0236】
また、図26に示すように、センサ保持部132Bは、ガイド入口部132gを含むセンサ挿入ガイド132bが、センサ保持部132B本体より外方に突き出す凸部132hを有する。これにより、目の悪い人でもセンサ保持部の外形形状をなぞることにより、センサ170の挿入位置が識別でき、センサを正しく装着することができる。つまり操作性が向上する。
【0237】
このように、本実施の形態によれば、センサ装着機構130は、皮膚当接部131と、センサ170を保持するセンサ保持部132と、センサ装着機構130の本体部である端部121aとからなる3層構造を有し、皮膚当接部131とセンサ保持部132間を第1伸縮強度で付勢する第1バネ133と、センサ保持部132と端部121a間を第2伸縮強度で付勢する第2バネ134と、穿刺時に皮膚当接部131とセンサ170との間を密閉する第1パッキン135と、穿刺時に端部121aとセンサ170との間を密閉する第2パッキン136とを備える。穿刺時には、皮膚180を皮膚当接部131に当接させ、さらにこの皮膚当接部131を第1バネ133及び第2バネ134の付勢力に抗して押し上げる。これにより、皮膚当接部131とセンサ保持部132と端部121aは第1パッキン135及び第2パッキン136を介して互に密着し、内部空間140は密閉される。その後、皮膚当接部131をバネ126の付勢力に抗して更に押し上げることで、ピストン121はハウジング内部に移動し、前記内部空間140は減圧空間となる。
【0238】
本実施の形態では、図24A乃至図24Cに示すように、減圧空間は、センサ装着機構130の第1パッキン135及び第2パッキン136で囲まれた空間に連通する内部空間140だけであり、減圧空間の容積自体が従来例に比して極めて小さい。このため、従来例の欠点を全て解消することができる。
【0239】
具体的には、減圧空間が小さいため、皮膚当接部131を押し込むという一回の操作で所望の減圧を得ることができる。減圧のための操作が一回で済むので、操作性及びメンテナンス性の向上を図ることができる。また、減圧の大気圧開放タイミング失敗がなくなるため、これに起因する血液の飛散を未然に防ぐことができる。装置の汚染、これによる感染のおそれをなくすことができる。
【0240】
また、本実施の形態では、センサ装着機構130は、センサ170を簡単に装着、また脱着することができ、穿刺のための操作性を向上させることができる。
【0241】
(実施の形態6)
図27A及び図27Bは、本発明の実施の形態6における血液分析装置を示す断面図である。本実施の形態は、電動負圧ポンプ方式の血液分析装置に適用した例である。また、前記図7の穿刺動作発生機構110に代えて、レーザ穿刺装置510を適用する。図7と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0242】
図27A及び図27Bに示すように、血液分析装置500は、レーザ光により皮膚を非接触で穿刺するレーザ穿刺装置510と、負圧ポンプ520と、センサ装着機構130とから主に構成される。
【0243】
レーザ穿刺装置510は、レーザ光を発射するレーザロッド、レーザ光を穿刺用に集光するレンズ512、及びセンサ170に対向する端部513を有する。端部513には、レーザ光軸を取り囲むようにリング状の第2パッキン136が取り付けられる。
【0244】
負圧ポンプ520は、連通路521を経由して内部空間140の空気を吸引し、内部空間140を減圧する。
【0245】
図27A矢印に示すように、センサ装着機構130にセンサ170を装着する。センサ170の他端をコネクタ132a(図22参照)に当接するまで挿入することで、センサ170のセンサ装着機構130への装着が完了する。挿入完了は、センサ170の他端とコネクタ132aの接触により確認される。
【0246】
図27B矢印に示すように、指(掌、上腕部)の皮膚180をセンサ装着機構130の皮膚当接部131に当接して押し上げる。
【0247】
皮膚当接部131及び端部513は、センサ保持部132に保持されたセンサ170を上下に挟み込む。皮膚当接部131及び端部513には、第1パッキン135及び第2パッキン136が設けられており、上記挟み込み動作に従って、第1パッキン135及び第2パッキン136とセンサ170とを密着させる。また、皮膚当接部131に当接した皮膚180が、皮膚当接部131の開口部131aを塞ぐ。さらに、負圧ポンプ520が内部空間140に負圧を発生させ、皮膚180を盛り上げる。
【0248】
このように、センサ装着機構130は、電動負圧ポンプ方式の血液分析装置500に適用することができ、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0249】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0250】
例えば、上記実施の形態では、穿刺手段として穿刺針により穿刺を行う針穿刺装置を用いたが、本発明はこれに限らず、穿刺手段としてレーザ発射装置を用いることもできる。
【0251】
上記実施の形態では穿刺器具という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、穿刺具、穿刺装置等であってもよいことは勿論である。
【0252】
また、上記穿刺器具を構成する各部、例えばパッキンの種類、その数及び接続方法などはどのようなものでもよい。
【0253】
2008年12月9日出願の特願2008−313644の日本出願及び2008年12月12日出願の特願2008−317341の日本出願に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明に係る穿刺装置、血液分析装置及びセンサ装着機構は、採血などに用いる穿刺器具の交換用の穿刺針と、その内部に前記穿刺針を移動可能なように収納し、かつ、前記穿刺針と同時に交換可能な穿刺針ホルダとを有する、使い捨て穿刺具として有用である。
【符号の説明】
【0255】
100,200,300,400 穿刺針方式穿刺器具
101,201,401 ハウジング
110,110A,110B,110C 穿刺動作発生機構
111 ランセット部
112,118,211,316 ロッド
113,123,124,125,125A,125B,134,212,213,
422 パッキン
114 穿刺針ホルダ
120 減圧採血機構
121,121A,121B ピストン
122 シリンダ
130,430 センサ装着機構
131 皮膚当接部
150,250 減圧室
160 穿刺針
170 センサ
210 穿刺動作発生機構
215,315 ノブ
220,420 穿刺機構
230 減圧機構
240 シリンダブロック
241 穿刺機構シリンダ
242 減圧機構シリンダ
241a,241b,242a,242b,316a,316b 端部
241c 連通孔
315a 底部
315b,315c,431a 開口部
350 穿刺針の脱着機構
421,431 取付部
500 血液分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、皮膚を穿刺する穿刺手段と、
前記穿刺手段を動作させる穿刺機構と、
底部を有するシリンダと、
前記底部から突出する第1端部と前記シリンダ内部にあって該シリンダの軸に沿って摺動する第2端部とを有するピストンと、
前記底部と前記ピストンの外周とを密閉する第1密閉手段と、
前記第2端部と前記シリンダ内周とを密閉する第2密閉手段と、
前記第1及び第2密閉手段で密閉され、前記ピストンの外周と前記シリンダの内周とにより囲まれた気室とを備え、
前記ピストンは、前記気室と前記中空空間とを繋ぐ連通孔を有する、
穿刺装置。
【請求項2】
前記第1密閉手段、第2密閉手段は、パッキンである請求項1記載の穿刺装置。
【請求項3】
前記第1密閉手段は、前記底部が前記ピストンの外周に緊密に接触する凸部である請求項1記載の穿刺装置。
【請求項4】
前記第2密閉手段は、前記第2端部が前記シリンダの内周に緊密に接触する凸部である請求項1記載の穿刺装置。
【請求項5】
前記第1端部は、皮膚に当接可能な当接部である請求項1記載の穿刺装置。
【請求項6】
前記穿刺手段は、レーザ光により皮膚を穿刺するレーザ発射装置である請求項1記載の穿刺装置。
【請求項7】
前記穿刺手段は、穿刺針により皮膚を穿刺する針穿刺装置である請求項1記載の穿刺装置。
【請求項8】
穿刺により滲出した血液を、センサにより分析する血液分析装置であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられ、皮膚を穿刺する穿刺手段と、
前記穿刺手段を動作させる穿刺機構と、
底部を有するシリンダと、前記シリンダ内部にあって該シリンダの軸に沿って摺動するピストンと、前記ピストンの端部と前記シリンダ内周とを密閉する第1密閉手段と、
前記シリンダの開口部と前記ピストンの外周とを密閉する第2密閉手段と、
前記第1及び第2密閉手段で密閉され、前記ピストンの外周と前記シリンダの内周とにより囲まれた気室と、
を備える血液分析装置。
【請求項9】
筐体端部から摺動自在に突出する支持部と、
前記支持部により摺動自在に支持され、センサを保持するセンサ保持部と、
前記支持部の突端部に設けられ、皮膚が当接可能な皮膚当接部と、
前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記皮膚当接部を所定間隔で保つように第1伸縮強度で付勢する第1バネと、
前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記筐体端部を所定間隔で保つように第2伸縮強度で付勢する第2バネと、
前記皮膚当接部が前記筐体端部方向に押された場合、前記センサ保持部が保持する前記センサと前記皮膚当接部間を密閉する第1密閉手段と、
前記皮膚当接部が前記筐体端部方向に押された場合、前記センサ保持部が保持する前記センサと前記筐体端部間を密閉する第2密閉手段とからなるセンサ装着機構と、
を備える請求項8記載の血液分析装置。
【請求項10】
前記穿刺手段は、穿刺針により皮膚を穿刺する針穿刺装置である請求項8に記載の血液分析装置。
【請求項11】
前記穿刺手段は、レーザ光により皮膚を穿刺するレーザ発射装置である請求項8に記載の血液分析装置。
【請求項12】
筐体と、開口部を有するセンサと、前記筐体に収容され、穿刺針又はレーザ光により穿刺する穿刺手段と、前記穿刺手段を動作させる穿刺機構と、を備え、前記穿刺針又はレーザ光を前記開口部に貫通させて皮膚を穿刺し、穿刺により皮膚から滲出した血液を前記センサ内に導入して分析する血液分析装置であって、
前記筐体の一端である筐体端部から摺動自在に突出する支持部と、
前記支持部により摺動自在に支持され、前記センサを保持するセンサ保持部と、
前記支持部の突端部に設けられ、皮膚が当接可能な皮膚当接部と、
前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記皮膚当接部を所定間隔で保つように第1伸縮強度で付勢する第1バネと、
前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記筐体端部を所定間隔で保つように第2伸縮強度で付勢する第2バネと、
を備える血液分析装置。
【請求項13】
前記第1バネの第1伸縮強度は、前記第2バネの前記第2伸縮強度以下である請求項12記載の血液分析装置。
【請求項14】
前記センサ保持部は、前記センサを挿入する挿入口を切欠く切欠部を有する請求項12記載の血液分析装置。
【請求項15】
前記センサ保持部は、前記センサを挿脱自在にガイドするガイド部を有する請求項12記載の血液分析装置。
【請求項16】
前記センサ保持部は、前記センサを挟持する、前記皮膚当接部に対向する下面板と前記筐体端部に対向する上面板とを有し、前記下面板の厚さは前記上面板の厚さより薄い請求項12記載の血液分析装置。
【請求項17】
筐体と、開口部を有するセンサと、前記筐体に収容され、穿刺針又はレーザ光により穿刺する穿刺手段と、前記穿刺手段を動作させる穿刺機構と、を備え、前記穿刺針又はレーザ光を前記開口部に貫通させて皮膚を穿刺し、穿刺により皮膚から滲出した血液を前記センサ内に導入して分析する血液分析装置であって、
前記筐体の一端である筐体端部から摺動自在に突出する支持部と、
前記支持部により摺動自在に支持され、前記センサを保持するセンサ保持部と、
前記支持部の突端部に設けられ、皮膚が当接可能な皮膚当接部と、
前記皮膚当接部が前記筐体端部方向に押された場合、前記センサ保持部が保持する前記センサの前記開口部と前記皮膚当接部間を密閉する第1密閉手段と、
前記皮膚当接部が前記筐体端部方向に押された場合、前記センサ保持部が保持する前記センサの前記開口部と前記筐体端部間を密閉する第2密閉手段と、
前記第1密閉手段及び前記第2密閉手段で囲まれた空間に連通する内部空間を減圧する減圧機構と、
を備える血液分析装置。
【請求項18】
前記第1密閉手段は、前記皮膚当接部に設置されたリング状パッキンである請求項17記載の血液分析装置。
【請求項19】
前記第2密閉手段は、前記筐体端部に設置されたリング状パッキンである請求項17記載の血液分析装置。
【請求項20】
前記センサ保持部は、前記センサを挿入する挿入口を切欠く切欠部を有する請求項17記載の血液分析装置。
【請求項21】
前記センサ保持部は、前記センサを挿脱自在にガイドするガイド部を有する請求項17記載の血液分析装置。
【請求項22】
前記センサ保持部は、前記センサを挟持する、前記皮膚当接部に対向する下面板と前記筐体端部に対向する上面板とを有し、前記下面板の厚さは前記上面板の厚さより薄い請求項17記載の血液分析装置。
【請求項23】
前記減圧機構は、負圧ポンプを有する請求項17記載の血液分析装置。
【請求項24】
筐体端部から摺動自在に突出する支持部と、
前記支持部により摺動自在に支持され、センサを保持するセンサ保持部と、
前記支持部の突端部に設けられ、皮膚が当接可能な皮膚当接部と、
前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記皮膚当接部を所定間隔で保つように第1伸縮強度で付勢する第1バネと、
前記支持部により摺動自在に支持された前記センサ保持部と前記筐体端部を所定間隔で保つように第2伸縮強度で付勢する第2バネと、
を備えるセンサ装着機構。
【請求項25】
穿刺時に、前記皮膚当接部が前記第1バネの付勢力に抗して前記センサ保持部を前記筐体端部方向に押し、さらに前記センサ保持部が前記第2バネの付勢力に抗して前記筐体端部方向に押すことにより、前記センサ保持部と前記皮膚当接部及び前記筐体端部とが、密閉される請求項24記載のセンサ装着機構。


【図1】
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【図2】
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【図3A.B.C】
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【図3D.E.F】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A.B.C.D】
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【図8E.F.G.H.I】
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【図9A.B.C】
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【図9D.E.F】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図18A.B】
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【図19A.B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A.B.C】
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【図25】
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【図26】
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【図27A.B】
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【公開番号】特開2013−56167(P2013−56167A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233128(P2012−233128)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2010−541967(P2010−541967)の分割
【原出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】