説明

穿刺針載置具

【課題】穿刺針を安定的に把持・固定することができる穿刺針載置具を提供する。
【解決手段】穿刺針載置具10は、穿刺針の先端側を挿通可能に構成された第1ガイド部44と、穿刺針の基端側を挿通可能に構成された第2ガイド部46と、第1ガイド部44と第2ガイド部46とを連結するとともに、第2ガイド部46を第1ガイド部44側に変位可能に支持する連結機構48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメント注入用穿刺針等の穿刺針を載置・固定するための穿刺針載置具に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的椎体形成術は、椎体圧迫骨折による痛みを除去するために、骨セメントを椎体の損傷部位に注入して椎体を補強する治療法である。経皮的椎体形成術は、1987年フランスで初めて行われた比較的新しい治療法であるが、近年わが国においても多くの施設で行われている。
【0003】
経皮的椎体形成術は、椎体の背側左右に位置する椎弓根から中空構造の穿刺針を穿刺して、穿刺針内の注入通路を介して椎体内に骨セメントを注入する椎弓根アプローチ(trans pedicular approach)が基本である。骨セメントを注入するための穿刺針としては、骨生検針が一般的に用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。下記特許文献2には、骨セメント注入用穿刺針が開示されている。
【0004】
骨セメント注入用穿刺針(以下、単に「穿刺針」という場合がある)の使用に際し、術者は自己の手をX線照射領域から確実に退避させておくことが望ましい。このような事情に鑑み、下記特許文献3には、穿刺針に着脱可能に接続するニードルコントロールデバイスが開示されている。このニードルコントロールデバイスは、穿刺針の針本体(外針)に装着されるニードルカラーと、当該ニードルカラーに着脱可能なコントロールバーとを備えている。術者は、ニードルカラーを針本体に装着するとともにコントロールバーをニードルカラーに接続し、コントロールバーを把持することで、穿刺針を所望の位置に保持したまま、自己の手をX線の照射領域の外に退避させておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−24663号公報
【特許文献2】国際公開第2010/044462A1号
【特許文献3】米国特許第6752791号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3にて提案されたニードルコントロールデバイスは、穿刺針の長手方向の一箇所を支持して固定するというものであるため、穿刺初期において穿刺針を安定して把持・固定することができず、穿刺が不安定になるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、穿刺針を安定的に把持・固定することができる穿刺針載置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、穿刺針を載置・固定するための穿刺針載置具であって、前記穿刺針の先端側を挿通可能に構成された第1ガイド部と、前記穿刺針の基端側を挿通可能に構成された第2ガイド部と、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部とを連結するとともに、前記第2ガイド部を前記第1ガイド部側に変位可能に支持する連結機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記の本発明の構成によれば、第1ガイド部と第2ガイド部とにより穿刺針の先端側と基端側を支持するので、穿刺針を安定的に把持・固定することができる。また、穿刺針が患者に穿刺されていくことに伴って、第2ガイド部が第1ガイド部側に移動するので、第1ガイド部と第2ガイド部による把持を確実に維持することができる。したがって、術者のX線被爆を有効に低減することができるとともに、穿刺初期における穿刺を安定的に実施することができ、術者は穿刺に意識を集中することができる。
【0010】
上記の穿刺針載置具において、前記第1ガイド部は、前記穿刺針が挿通可能な第1ガイド孔と、前記第1ガイド孔と前記第1ガイド部の外側部とを連通し、前記穿刺針の通過を許容する第1スリットとを有し、前記第2ガイド部は、前記穿刺針が挿通可能な第2ガイド孔と、前記第2ガイド孔と前記第2ガイド部の外側部とを連通し、前記穿刺針の通過を許容する第2スリットとを有するとよい。
【0011】
このような第1スリットと第2スリットを通して穿刺途中でも穿刺針を穿刺針載置具から取り外すことができるので、穿刺針載置具が邪魔にならない。
【0012】
上記の穿刺針載置具において、前記連結機構は、前記穿刺針の穿刺に伴って前記第2ガイド部を前記第1ガイド部側に直線的に摺動案内するガイドレールを有するとよい。これにより、穿刺針の穿刺に伴って第2ガイド部を第1ガイド部側に安定して変位させることができ、穿刺をより安定して実施することが可能となる。
【0013】
上記の穿刺針載置具において、前記ガイドレールには、当該ガイドレールの長手方向に沿って歯部が設けられ、前記第2ガイド部には、前記歯部に係合可能な係合部が設けられるとよい。これにより、第2ガイド部が自重で第1ガイド部側に移動することを防止できるとともに、穿刺針の打ち込みの際には、第2ガイド部の係合部がスライドレールの歯部を乗り越えることで、第2ガイド部を第1ガイド部側に確実に移動させることができる。
【0014】
上記の穿刺針載置具において、前記第2ガイド部は、前記穿刺針のハブを支持するように構成されるとよい。この構成により、穿刺針をより安定して固定することができる。
【0015】
上記の穿刺針載置具において、前記第2ガイド部は、前記穿刺針を支持した状態で前記穿刺針のハブを収容し且つ前記穿刺針の回転を防止するハブ収容部を有するとよい。この構成により、穿刺針の回転を防止し、穿刺を安定して実施することができる。
【0016】
上記の穿刺針載置具において、第1のX線不透過性マーカが設けられ、前記第1ガイド部に着脱可能な第1照準部材と、第2のX線不透過性マーカが設けられ、前記第2ガイド部に着脱可能な第2照準部材と、をさらに備えるとよい。この構成により、第1及び第2のX線不透過性マーカを用いて照準することで、穿刺目標部位に正確に穿刺することができる。また、穿刺針を穿刺針載置具に挿通する前に、第1照準部材と第2照準部材を第1ガイド部と第2ガイド部に対してそれぞれ装着することで、穿刺目標部位を正確に確認することができる。さらに、穿刺針を穿刺針載置具に挿通する際には、第1ガイド部と第2ガイド部から第1照準部材と第2照準部材を取り外すことで、第1照準部材と第2照準部材が穿刺針に干渉することを防止することができる。
【0017】
上記の穿刺針載置具において、前記第1ガイド部には、第1のX線不透過性マーカが設けられ、前記第2ガイド部には、第2のX線不透過性マーカが設けられるとよい。このように、第1ガイド部及び第2ガイド部の一部として、第1及び第2のX線不透過性マーカを設けることで、構成を複雑化することなく、照準機能を持たせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る穿刺針載置具によれば、穿刺針を安定的に把持・固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る穿刺針載置具の斜視図である。
【図2】穿刺針の一構成例としての骨セメント注入用穿刺針の構成を示す斜視図である。
【図3】図1におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】第1ガイド部の構成を示す斜視図である。
【図5】第2ガイド部の構成を示す斜視図である。
【図6】X線透視下で第1マーカと第2マーカにより照準する様子を示す模式的説明図である。
【図7】図7Aは、穿刺針を穿刺針載置具により把持・固定した状態を示す動作説明図であり、図7Bは、穿刺している最中の穿刺針及び穿刺針載置具を示す動作説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る穿刺針載置具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る穿刺針載置具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る穿刺針載置具10の斜視図である。図2は、図1に示した穿刺針載置具10により載置・固定することが可能な穿刺針12の一構成例を示す斜視図であり、まず、載置・固定の対象となる穿刺針12について説明する。一構成例に係る穿刺針12は、骨セメント(プラスチック製剤等)や骨ペースト(リン酸カルシウム製剤等)を骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針として構成されている。
【0022】
穿刺針12は、中空構造の外針16と、外針16の基端部に固定された外針基18と、外針16の中空部に摺動可能に挿通される内針20と、内針20の基端部に固定された内針基22とを有する。図2では、内針20を外針16の中空部に挿入した状態を示している。
【0023】
外針16は、両端が開口し、骨セメント通路(中空部)を内部に有する中空構造の部材であり、外針16の先端には鋭利な刃先16aが形成されている。前記骨セメント通路は、内針20と外針16とを組み合わせる際には内針20を挿通するための孔として機能し、骨セメントを注入する際には骨セメントを流す流路として機能する。
【0024】
外針基18は、外針16の基端部に結合された、例えば硬質樹脂からなる部材であり、穿刺針12の使用者が握るためのグリップとしての機能を有する。外針基18は、外針16の軸線に対して垂直な方向の両側に張り出す(延在する)ように形成されている。外針基18の上部には凹部27が設けられ、当該凹部27の底部からは、注入ポート28が上方に突出している。
【0025】
内針20は、先端に鋭利な刃先20aを有する、例えば金属製の棒状の部材であり、外針16の中空部に挿入される。内針20は、内針基22を外針基18に接続した状態で、先端が外針16の先端より僅かに突出する長さを有する。内針基22は、内針20の基端部に結合された、例えば硬質樹脂製の部材である。
【0026】
内針基22には突起体32a、32bが設けられ、外針基18の凹部27には係合溝34a、34bが設けられ、突起体32a、32b及び係合溝34a、34bによりロック機構30が構成されている。内針基22を外針基18に接続するために内針基22を外針基18に係合させるときに、内針基22と外針基18との相対回転により、内針基22に設けられた突起体32a、32bが、それぞれ、外針基18に設けられた係合溝34a、34bに係合する。これにより、内針基22が外針基18に対して固定される。
【0027】
次に、上述した穿刺針12を固定・載置するための穿刺針載置具10の構成を説明する。図1に示すように、穿刺針載置具10は、載置具本体40と、載置具本体40を支持するスタンド42とを備える。載置具本体40は、穿刺針12の先端側を挿通可能に構成された第1ガイド部44と、穿刺針12の基端側を挿通可能に構成された第2ガイド部46と、第1ガイド部44と第2ガイド部46とを連結するとともに、第2ガイド部46を第1ガイド部44側に変位可能に支持する連結機構48とを備える。
【0028】
ここで、図3は、図1におけるIII−III線に沿った断面図であり、図4は、第1ガイド部44の構成を示す斜視図である。図3では、載置具本体40に載置された穿刺針12を仮想線で示す。図1、図3及び図4に示すように、第1ガイド部44は、第1ガイド本体50と、穿刺針12の外針16が挿通可能な第1ガイド孔52と、第1ガイド孔52と第1ガイド部44の外側部とを連通し、穿刺針12の外針16の通過を許容する第1スリット54とを有する。
【0029】
図示した構成例に係る第1ガイド本体50は、全体として平面視で略四角形に形成されているが、その他の任意の形状を採用してもよい。図4に示すように、第1ガイド本体50の左右両側には、連結機構48にスライド可能に係合するスライドガイド56、56が一体的に設けられている。各スライドガイド56は、第1ガイド本体50の左右の側端部から外方に突出したガイド基部58と、ガイド基部58の先端から直角に張り出したガイドリブ60とからなる。スライドガイド56の外面には、係合突起(係合部)62が設けられている。係合部62の機能については、後述する。
【0030】
第1ガイド孔52は、第1ガイド本体50を上下方向(厚さ方向)に貫通する孔であり、穿刺針12の外針16よりも僅かに大きい内径を有する。したがって、第1ガイド孔52には、穿刺針12の外針16を挿通することができ、且つ、第1ガイド孔52に挿通された外針16は、軸線方向に変位可能に第1ガイド孔52にガイドされる。
【0031】
第1スリット54は、第1ガイド孔52から第1ガイド本体50の外側部まで延在するとともに、第1ガイド本体50を上下方向(厚さ方向)に貫通する隙間である。第1スリット54の最も狭い部分の幅は、外針16の外径よりも大きい。
【0032】
第1ガイド本体50には、さらに、第1照準部材64が着脱可能に装着される第1保持部66が設けられている。図示した構成例の第1保持部66は、第1スリット54の延在方向に沿って延在する溝であり、第1ガイド本体50の外側部から第1ガイド孔52に向かって延び、第1ガイド孔52を越えた位置まで延在するとともに、第1ガイド孔52及び第1スリット54の内壁面と、第1ガイド本体50の外側部の外壁面で開放している。
【0033】
第1照準部材64は、第1のX線不透過性マーカ65(以下、「第1マーカ65」という)を有し、図示した構成例では平板状に構成されている。第1マーカ65は、金や白金等からなるX線(放射線)不透過性を有する材料によって構成され、第1照準部材64の一端部側に設けられている。図示した構成例の第1マーカ65は、円形リングの中に十字を配置した形状であるが、照準に適した他の形状であってもよい。第1照準部材64のうち、第1マーカ65以外の部分は、X線を透過する材料、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂等により構成される。
【0034】
上記のように構成された第1照準部材64は、第1ガイド部44の第1ガイド本体50の外側部側から、図4の矢印A方向に、第1保持部66内に挿入可能である。第1照準部材64を第1保持部66の最も奥側まで挿入すると、第1ガイド孔52の中心と、第1マーカ65の中心とが略一致する状態となる。
【0035】
図5は、第2ガイド部46の構成を示す斜視図である。図1、図3及び図5に示すように、第2ガイド部46は、第2ガイド本体68と、第2ガイド本体68に設けられたハブ収容部70と、穿刺針12の外針16が挿通可能な第2ガイド孔76と、第2ガイド孔76と第2ガイド部46(第2ガイド本体68)の外側部とを連通し、穿刺針12の外針16の通過を許容する第2スリット78とを有する。
【0036】
図示した構成例に係る第2ガイド本体68は、全体として平面視で略四角形に形成されているが、その他の任意の形状を採用してもよい。第2ガイド本体68の左右両側には、連結機構48にスライド可能に係合するスライドガイド80、80が一体的に設けられている。各スライドガイド80は、第2ガイド本体68の左右の側端部から外方に突出したガイド基部82と、ガイド基部82の先端から直角に張り出したガイドリブ84とからなる。スライドガイド80の外面には、係合突起(係合部)86が設けられている。係合部86の機能については、後述する。
【0037】
ハブ収容部70は、第2ガイド部46で穿刺針12を支持した際に穿刺針12の外針基18を収容(支持)する部分であり、図示した構成例では、第2ガイド本体68の上面に形成された溝によって構成されている。具体的には、ハブ収容部70は、外針基18の中央部分を収容(支持)する中央収容部71と、外針基18のうち外針16の軸線に対して垂直な方向の両側に張り出した部分を収容(支持)する外側収容部72、73とを有する。
【0038】
中央収容部71は、図示した構成例では平面視で略円形状である。中央収容部71の最も大きい部分の幅(ハブ収容部70の延在方向に直交する方向の幅)W1は、外針基18の厚さT(図2参照)よりも大きい。このため、外針基18が中央収容部71に収容された状態で、外針基18と中央収容部71の内壁面との間に術者の手指を入れることが可能な隙間が形成される。中央収容部71は、平面視で略円形状に限らず、平面視で楕円形状や多角形状であってもよい。
【0039】
外側収容部72、73は、互いに反対方向に、中央収容部71から第2ガイド本体68の外側面まで直線状に延在する。外側収容部72、73の幅(外側収容部72、73の各々における一方の内壁面と他方の内壁面との距離)W2は、外針基18の厚さT(図2参照)よりも僅かに大きい程度である。したがって、外針基18が外側収容部72、73に収容されると、外針基18の回転(すなわち穿刺針12の回転)が防止される。
【0040】
第2ガイド孔76は、第2ガイド本体68を上下方向(厚さ方向)に貫通する孔である。具体的には、第2ガイド孔76は、中央収容部71の底部から第2ガイド本体68の下面に貫通して形成されている。また、第2ガイド孔76は、外針基18の下部突起19の外径よりも大きい。したがって、第2ガイド孔76には、穿刺針12の外針16及び下部突起19を挿通することができる。
【0041】
第2ガイド孔76の内周部には、周方向に間隔をおいて、第2ガイド孔76の内方に突出する複数の突起90が設けられている。複数の突起90の内接円の直径は、外針基18の下部突起19の外径と略同じか、僅かに大きい。したがって、第2ガイド孔76に挿通された外針16は、軸線方向に変位可能に第2ガイド孔76(突起90)でガイドされる。また、突起90の内接円の直径は、外針基18の下部突起19の外径より僅かに大きくすることにより、外針基18の微調整が可能となる。
【0042】
第2スリット78は、第2ガイド孔76から第2ガイド本体68の外側部まで延在するとともに、第2ガイド本体68を上下方向(厚さ方向)に貫通する隙間である。第2スリット78の最も狭い部分の幅は、外針16の外径よりも大きい。図1に示すように、第1スリット54と第2スリット78とは、第1ガイド本体50と第2ガイド本体68において、互いに対応する箇所及び方向に設けられている。すなわち、第1スリット54の延在方向と第2スリット78の延在方向は平行であり、且つ、第1ガイド本体50の外側部にて第1スリット54が開放する側と、第2ガイド本体68の外側部にて第2スリット78が開放する側が同じである。
【0043】
第2ガイド本体68には、さらに、第2照準部材92が着脱可能に装着される第2保持部94が設けられている。図示した構成例の第2保持部94は、第2スリット78の延在方向に沿って延在する溝であり、第2ガイド本体68の外側部から第2ガイド孔76に向かって延び、第2ガイド孔76を越えた位置まで延在するとともに、第2ガイド孔76及び第2スリット78の内壁面と、第2ガイド本体68の外側部の外壁面で開放している。
【0044】
第2照準部材92は、第2のX線不透過性マーカ93(以下、「第2マーカ93」という)を有し、図示した構成例では平板状に構成されている。第2マーカ93は、金や白金等からなるX線(放射線)不透過性を有する材料によって構成され、第2照準部材92の一端部側に設けられている。図示した構成例の第2マーカ93は、第1マーカ65よりも大径の円形リング状であるが、照準に適した他の形状であってもよく、第1マーカ65と同様の形状であってもよい。照準部材のうち、マーカ以外の部分は、X線を透過する材料、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂等により構成される。
【0045】
なお、第1マーカ65の構成と、第2マーカ93の構成を、交換してもよい。すなわち、第2マーカ93を、円形リング状の中に十字状を配置した構成とし、第1マーカ65を、第2マーカ93よりも大径の円形リング状としてもよい。
【0046】
上記のように構成された第2照準部材92は、第2ガイド本体68の外側部側から、図5の矢印A方向に、第2保持部94内に挿入可能である。第2照準部材92を第2保持部94の最も奥側まで挿入すると、第2ガイド孔76の中心と、第2マーカ93の中心とが略一致する状態となる。
【0047】
図1及び図3に示すように、図示例に係る連結機構48は、一対のガイドレール96a、96bを備える。2つのガイドレール96a、96bは、互いに平行に対向配置され、それらの間に第1ガイド部44と第2ガイド部46とが、互いに平行に、且つ、ガイドレール96a、96bの延在方向に沿って変位可能に配置されている。2つのガイドレール96a、96bは、互いに同一構成であるため、以下では一方のガイドレール96aの構成について説明する。
【0048】
ガイドレール96aには、その延在方向に沿ってガイド溝98が形成されており、当該ガイド溝98に、第1ガイド部44のスライドガイド56と第2ガイド部46のスライドガイド80とがそれぞれ摺動自在に係合している。図3に示すように、ガイド溝98の底部には、ガイドレール96aの延在方向(ガイド溝98の延在方向)に沿って、凹凸状の歯部100が形成されている。第1ガイド部44のスライドガイド56がガイド溝98に係合した状態で、スライドガイド56に設けられた係合突起62は歯部100に係合している。第2ガイド部46のスライドガイド80がガイド溝98に係合した状態で、スライドガイド80に設けられた係合突起86は歯部100に係合している。
【0049】
ガイドレール96aの下部には、第1ガイド部44が下方に抜け出ることを防止するためのストッパ102が設けられている。
【0050】
次に、図1を参照し、スタンド42の構成について説明する。スタンド42は、医療機関の手術室等の床面上に設置され、上述した載置具本体40を、外科的処置が施される患者に対して所定の位置及び角度となるように支持するためのものである。このため、図示した構成例のスタンド42は、床面上に設置される基部108と、基部108から上方に延出したスタンドバー(支柱)110と、スタンドバー110の上端に回転可能に連結されたアーム112とを有し、アーム112の先端に載置具本体40が取り付けられている。
【0051】
スタンドバー110は、手術台に載せられた患者の上方に載置具本体40を配置するのに十分な長さを有する。スタンドバー110とアーム112とは関節部114を介して連結されている。したがって、スタンドバー110に対して水平方向の軸線を中心にアーム112を回転させることにより、スタンドバー110に対するアーム112の角度を変更することができる。
【0052】
また、スタンドバー110の上端部(関節部114)には、角度を示す目盛り116が設けられ、アーム112の基端部(スタンドバー110側の端部)には、目盛り116を指し示すインジケータ117が設けられている。アーム112の角度を変えると、アーム112に設けられたインジケータ117も変位する。インジケータ117が指し示す目盛り116を見ることにより、アーム112の角度を把握することができる。すなわち、目盛り116とインジケータ117によって、アーム112の角度を示す角度計118が構成されている。
【0053】
アーム112は、その先端側にて2つのサブアーム部112a、112bに分岐し、サブアーム部112a、112bの先端に、連結機構48を構成するガイドレール96a、96bがそれぞれ回転可能に連結されている。したがって、アーム112に対して水平方向の軸線を中心に連結機構48を回転させることにより、アーム112に対する連結機構48の角度を変更することができる。
【0054】
本実施形態に係る穿刺針載置具10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0055】
穿刺針載置具10の使用に際して、まず、穿刺針12を用いて経皮的椎体形成術を施す患者の上方に、載置具本体40を配置し、上述した第1照準部材64(図4参照)と第2照準部材92(図5参照)を用いて穿刺目標位置を照準する。具体的には、第1照準部材64を第1ガイド部44の第1保持部66の奥まで挿入するとともに、第2照準部材92を第2ガイド部46の第2保持部94の奥まで挿入する。これにより、第1ガイド孔52の中心と第1照準部材64のマーカの中心とが一致するとともに、第2ガイド孔76の中心と第2照準部材92のマーカの中心とが一致する。
【0056】
次に、X線透視下(CT透視下)で載置具本体40を上方から見て、第1照準部材64の第1マーカ65と、第2照準部材92の第2マーカ93の位置を確認する。そして、図6の模式説明図に示すように、第1マーカ65の中心と第2マーカ93の中心が穿刺目標位置に一致するように載置具本体40の位置及び姿勢(向き)を調整する。このように、第1照準部材64と第2照準部材92を用いることにより、穿刺目標位置を正確に照準することができる。また、この場合、連結機構48がアーム112に対して角度変更可能であるとともに、アーム112がスタンドバー110に対して角度変更可能であるため、載置具本体40の位置及び姿勢の調整を容易に行うことができる。
【0057】
穿刺目標位置を照準したら、次に、第1ガイド部44から第1照準部材64を取り外すとともに、第2ガイド部46から第2照準部材92を取り外す。これにより、第1ガイド孔52と第2ガイド孔76が開放され、載置具本体40に穿刺針12を載置することが可能な状態となる。そこで、穿刺針12を第1ガイド部44と第2ガイド部46に挿入し、載置具本体40により支持・固定する。
【0058】
具体的には、第2ガイド部46の上方から、穿刺針12の外針16を、第2ガイド孔76及び第1ガイド孔52へと順に挿入する。これにより、図7Aに示すように、第1ガイド部44により穿刺針12の先端側が支持され、第2ガイド部46により穿刺針12の基端側が支持される。この場合、穿刺針12は、外針基18の部分で第2ガイド部46により支持される。すなわち、外針基18が第2ガイド部46のハブ収容部70に収容され、下部突起19が第2ガイド孔76に挿入される。なお、載置具本体40に穿刺針12をセットする際、第1スリット54及び第2スリット78を通して、穿刺針12の外針16を第1ガイド孔52及び第2ガイド孔76に挿入してもよい。
【0059】
このように、第1ガイド部44と第2ガイド部46とにより穿刺針12の先端側と基端側を支持するので、穿刺針12を患者に穿刺する前の状態でも、穿刺針12を安定的に把持・固定することができる。
【0060】
次に、X線透視下で、穿刺針載置具10により支持された穿刺針12の外針基18をハンマー等で打撃して、図7Bに示すように、患者Mの穿刺目標位置に打ち込む。このとき、穿刺針12が患者Mに穿刺されていくことに伴って、穿刺針12の外針基18により第2ガイド部46が下方に押されることで、第2ガイド部46が第1ガイド部44側に移動するので、第1ガイド部44と第2ガイド部46による把持を確実に維持することができる。したがって、術者のX線被爆を有効に低減することができるとともに、穿刺初期における穿刺を安定的に実施することができ、術者は穿刺に意識を集中することができる。
【0061】
穿刺針12がある程度の深さまで患者Mに穿刺されると、穿刺針載置具10による固定がなくても、穿刺針12は安定するため、第1スリット54と第2スリット78を通して穿刺針12を穿刺針載置具10から取り外してもよい。このように、第1スリット54と第2スリット78を通して穿刺途中でも穿刺針12を穿刺針載置具10から取り外すことができるので、穿刺針載置具10が邪魔にならない。
【0062】
本実施形態の場合、連結機構48がガイドレール96a、96bを有するので、穿刺針12の穿刺に伴って、第1ガイド部44と第2ガイド部46との平行を維持したまま、第2ガイド部46を第1ガイド部44側に安定して変位させることができ、穿刺をより安定して実施することができる。また、ガイドレール96a、96bには歯部100が設けられ、第2ガイド部46には係合部86が設けられるので、第2ガイド部46が自重で第1ガイド部44側に移動することを防止できるとともに、穿刺針12の打ち込みの際には、第2ガイド部46の係合部86がガイドレール96a、96bの歯部100を乗り越えることで、第2ガイド部46を第1ガイド部44側に確実に移動させることができる。
【0063】
本実施形態の場合、第2ガイド部46は、穿刺針12のハブを支持するように構成されるので、穿刺針12をより安定して固定することができる。また、第2ガイド部46は、穿刺針12を支持した状態で穿刺針12のハブを収容し且つ穿刺針12の回転を防止するハブ収容部70を有するので、穿刺時における穿刺針12の回転を防止し、穿刺を安定して実施することができる。
【0064】
本実施形態の場合、外針基18が中央収容部71に収容(載置)された状態で、外針基18と中央収容部71の内壁面との間に手指を入れることが可能な隙間が形成されるため、穿刺針12を載置具本体40から取り外す際に、当該隙間に手指を入れて外針基18を把持しやすい。また、内針基22を手指でつまんでロック機構30の施錠又は開錠をするために回転操作する際に、第2ガイド部46が邪魔にならず、回転操作がしやすい。
【0065】
本実施形態に係る穿刺針載置具10は、第1マーカ65と第2マーカ93の両方を用いて照準するので、穿刺目標部位に正確に穿刺することができる。
【0066】
本実施形態の場合、穿刺針12を穿刺針載置具10に挿通する前に、第1照準部材64と第2照準部材92を第1ガイド部44と第2ガイド部46に対してそれぞれ装着することで、穿刺目標部位を正確に確認することができる。また、穿刺針12を穿刺針載置具10に挿通する際には、第1ガイド部44と第2ガイド部46から第1照準部材64と第2照準部材92を取り外すことで、第1照準部材64と第2照準部材92が穿刺針12に干渉することを防止することができる。
【0067】
上述した本実施形態に係る穿刺針載置具10では、第1ガイド部44と第2ガイド部46にそれぞれ着脱可能な第1照準部材64と第2照準部材92を備えたが、このような構成に代えて、第1ガイド部44と第2ガイド部46の一部を、X線不透過性の材料で構成し、X線不透過性マーカの機能を持たせてもよい。この場合、第1ガイド孔52と同心状の円形リング状のX線不透過性マーカを第1ガイド部44の第1ガイド孔52の周囲に設けるとともに、第2ガイド孔76と同心状の円形リング状のX線不透過性マーカを第2ガイド部46の第2ガイド孔76の周囲に設けた構成を採用し得る。
【0068】
上述した穿刺針載置具10は、載置具本体40が1つだけ設けられた構成であるが、図8に示す他の実施形態に係る穿刺針載置具120のように、載置具本体40が複数設けられてもよい。この穿刺針載置具120は、2つの載置具本体40と、載置具本体40を並列状に支持するスタンド122とを備える。載置具本体40は、図1等に示した載置具本体40と同様の構成を有する。
【0069】
スタンド122は、基部108と、基部108に立設されたY字状のスタンドバー124と、スタンドバー124の上部に水平に架け渡されたスライドレール126と、スライドレール126にガイドされ当該スライドレール126の延在方向(矢印B方向)に沿って変位可能な複数(図示例では2つ)のスライドブロック128と、各スライドブロック128から上方に延出する第1アーム130と、各第1アーム130に関節部132を介して水平な軸線を中心として回転可能(角度変更可能)に連結された第2アーム134とを有する。
【0070】
載置具本体40は、各第2アーム134の先端に、水平な軸線を中心として回転可能(角度変更可能)に連結されている。第2アーム134は、図1に示したアーム112と同様に構成されている。スライドブロック128は、スライドレール126上の任意の位置に移動でき、且つ、任意の位置に固定できるように構成されている。
【0071】
このように構成された穿刺針載置具120は、複数の載置具本体40を備えるので、これらの載置具本体40の各々に穿刺針12(図2参照)を載置・固定することで、複数の穿刺針12を並列して穿刺することが可能である。また、載置具本体40毎にスライドブロック128が設けられているので、各載置具本体40の位置、間隔を任意に調整することができる。
【0072】
なお、図8に示した穿刺針載置具120は、載置具本体40を2つ設けた構成であるが、必要に応じて、載置具本体40を3つ以上設け、載置具本体40毎にスライドブロック128を設けた構成としてもよい。
【0073】
上述した各実施形態では、載置具本体40を支持する支持手段として、スタンド42、122を例示したが、このような構成に代えて、X線装置(CT装置)のCアーム(例えば、特開平11−221206号公報参照)、吊り下げ軸、ベッド(手術台)等を載置具本体40の支持手段として採用してもよい。
【0074】
その他、上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
10、120…穿刺針載置具 12…穿刺針
40…載置具本体 42、122…スタンド
44…第1ガイド部 46…第2ガイド部
48…連結機構 52…第1ガイド孔
54…第1スリット 64…第1照準部材
65…第1のX線不透過性マーカ 70…ハブ収容部
76…第2ガイド孔 78…第2スリット
92…第2照準部材 93…第2のX線不透過性マーカ
96a、96b…ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺針を載置・固定するための穿刺針載置具であって、
前記穿刺針の先端側を挿通可能に構成された第1ガイド部と、
前記穿刺針の基端側を挿通可能に構成された第2ガイド部と、
前記第1ガイド部と前記第2ガイド部とを連結するとともに、前記第2ガイド部を前記第1ガイド部側に変位可能に支持する連結機構とを備える、
ことを特徴とする穿刺針載置具。
【請求項2】
請求項1記載の穿刺針載置具において、
前記第1ガイド部は、前記穿刺針が挿通可能な第1ガイド孔と、前記第1ガイド孔と前記第1ガイド部の外側部とを連通し、前記穿刺針の通過を許容する第1スリットとを有し、
前記第2ガイド部は、前記穿刺針が挿通可能な第2ガイド孔と、前記第2ガイド孔と前記第2ガイド部の外側部とを連通し、前記穿刺針の通過を許容する第2スリットとを有する、
ことを特徴とする穿刺針載置具。
【請求項3】
請求項2記載の穿刺針載置具において、
前記連結機構は、前記穿刺針の穿刺に伴って前記第2ガイド部を前記第1ガイド部側に直線的に摺動案内するガイドレールを有する、
ことを特徴とする穿刺針載置具。
【請求項4】
請求項3記載の穿刺針載置具において、
前記ガイドレールには、当該ガイドレールの長手方向に沿って歯部が設けられ、
前記第2ガイド部には、前記歯部に係合可能な係合部が設けられる、
ことを特徴とする穿刺針載置具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の穿刺針載置具において、
前記第2ガイド部は、前記穿刺針のハブを支持するように構成される、
ことを特徴とする穿刺針載置具。
【請求項6】
請求項5記載の穿刺針載置具において、
前記第2ガイド部は、前記穿刺針を支持した状態で前記穿刺針のハブを収容し且つ前記穿刺針の回転を防止するハブ収容部を有する、
ことを特徴とする穿刺針載置具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の穿刺針載置具において、
第1のX線不透過性マーカが設けられ、前記第1ガイド部に着脱可能な第1照準部材と、
第2のX線不透過性マーカが設けられ、前記第2ガイド部に着脱可能な第2照準部材と、をさらに備える、
ことを特徴とする穿刺針載置具。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の穿刺針載置具において、
前記第1ガイド部には、第1のX線不透過性マーカが設けられ、
前記第2ガイド部には、第2のX線不透過性マーカが設けられる、
ことを特徴とする穿刺針載置具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9711(P2013−9711A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142667(P2011−142667)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】