説明

穿孔用ビット、それを用いた掘削装置及びコンクリート構築物、岩石の穿孔方法及び破砕方法

【課題】溝状の連結孔を連続的にかつ効率的に形成することができる穿孔用ビットを提供する。
【解決手段】ドリルロッド32の先端に装着される穿孔用ビット10は、ビット本体11と、前記ビット本体の排出用のエアーまたは水流が噴出する開口13を穿孔側に有するピット本体頭部12と、前記頭部12の穿孔側の開口13に沿って前記頭12部の外周に向かって放射状となるように間隔をおいて配置される複数のチップ取付座16と、前記チップ取付座に固着される先端に角部を備える超硬チップ17、18とを備えており、超硬チップが、頭部の外周側と開口側とに分割して配置されており、前記頭部の外周側の超硬チップ18は、チップの基部全体が頭部内に収まるように固着されており、前記開口13側の超硬チップ17は、その開口13側の長さ方向端部が該開口13に突出し、その突出部分以外は基部全体がピット本体頭部12内に収まるように固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビルや道路などのコンクリート構築物、或いは岩石を破砕する場合において、騒音や振動、粉塵の発生並びに破砕物の飛散を効果的に抑制することができ、特にはコンクリート構築物内部の鉄筋部分をコンクリート部分と同時に穿孔して溝状の連結孔を連続的にかつ効率的に形成することができ、これにより、効率的、かつ確実なコンクリート構築物、或いは岩石の破砕を実現できる穿孔用ビット、それを用いた掘削装置及びコンクリート構築物、岩石の穿孔方法及び破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばビルや道路などのコンクリート構築物の解体工事においては、該コンクリート構築物の一部又は全部を破砕し除去する工事が行なわれる。この解体工事には、発破工法が経済的にも工期的にも優れている。しかし、発破により生じる騒音や振動は既設の構造物に大きな影響を与える。特にビルの解体現場は市街地が多く、この発破工法を用いないことの方が一般的である。
【0003】
発破工法に代わる方法としては、例えばコンクリート構築物に多数の孔を穿設し、これらの孔で形成されるスリット内にワイヤーソーを巻回して、該コンクリート構築物をブロック状に切り出して破砕する方法、コンクリート構築物に連続して多数の孔を穿設して、1または複数の自由面を形成し、これら自由面で囲まれた部分をコンクリートブレーカーで取り除く方法、或いは同じくコンクリート構築物に1または複数の自由面を形成し、コンクリート構築物を前記1又は複数の自由面側に強制変位させることで、コンクリート構築物、岩石を破砕する方法などが知られている。
【0004】
コンクリート構築物に1または複数の自由面を形成する方法としては、例えば特許文献1に提案されている。この方法では、図8に示すように、まず、掘削機1上に搭載された環状をなす削孔ドリル2の作動により環状孔が岩盤面1に形成されるのと同時に、片持ち円筒形状をなして岩盤内に残存形成される芯部3Aをガイドコアとして削孔ドリル2の削孔方向を規制する。さらに芯部3Aの隣接位置に前記環状孔3Bとに所定の重なり部分をもたせるように削孔ドリル手段4を移動させ、岩盤内に芯部3Aを残存形成しながら環状孔3B…を順次形成し、連続溝状部を形成するというものである。
【0005】
この方法に用いる掘削機のドリルの先端に設けられる環状ビット5は、図9に示すように、円環状をなす硬質合金からなる中空管からなり、その先端面には、間隔をおいてメタルチップ6が埋設された状態に固着されている。このメタルチップ6は、環状ビット5の内外径よりも3〜4mm程度張り出すように形成されており、岩盤を穿孔した際に環状ビット5の内外面と岩盤表面との間に所定厚さの内外の環状クリアランスを形成するようになっている。そして、この環状クリアランス部分を細かい破砕片を含んだフラッシング水が切羽側から後方へ流れ出ることで、孔内先端で発生した破砕片を孔外に排出するようになっている。
【0006】
ところが、上記方法に用いられる環状ビットのメタルチップは、ビット先端面の内外面に張り出すように固着されていることから、例えば該環状ビットを回転させながら打撃することで穿孔するときに、コンクリート構築物内に鉄筋部分が含まれていると、メタルチップの内外面に張り出す部分が短時間で欠損する恐れがあり、コンクリート構築物のコンクリート部分と同時に鉄筋部分の穿孔を連続的に、正確かつ効率的に行うことができないという不具合があった。
【0007】
ビルなどのコンクリート構築物の解体工事においそ、鉄筋とコンクリートとをそのまま同時に穿孔する穿孔用ビットとしては、例えば特許文献2に示すものも提案されているこの穿孔用ビットは、図10及び図11に示すように、ロッド50への装着手段を有する台金51の頭部52の周方向の等間隔毎に四方に突出したチップ取付座53を形成し、各チップ取付座53におけるロッド50の回転方向に面した部分に互いに十文字形となるようにチップ54を固着し、これらのチップ54における回転方向に面した角部に切刃54aを形成してなる穿孔用ビットにおいて、頭部52の直径方向に一文字状に配設している一方の一対のチップ54を一定の先端角でもって傾斜させた状態で一体に連設して頭部52の先端面中心に位置する部分を尖鋭なエッジ54bに形成している一方、これらのチップ54に直角に交差するように同じ先端角でもって一文字状に配設している他方の一対のチップ54の内端部を切欠いて該チップ54の先端切刃の内端を上記尖鋭なエッジ54bに対して離間させていると共にこの切欠部から上記尖鋭端部を前方に向かって突出させてあり、さらに、各チップ54の先端面を先端切刃から回転方向に対して一定の逃げ角でもって傾斜した逃げ面54dに形成していると共に上記チップ取付座53の先端面を各チップ54の逃げ面54dに連続して傾斜した傾斜面に形成し、チップ54の逃げ面54dとこの傾斜面とでコンクリートに対する打撃面を形成していることを特徴とするものである。
【0008】
この穿孔用ビットによれば、十文字形となるように固着されたチップがコンクリート構築物における鉄筋とコンクリートとをそのまま同時に穿孔し、コンクリート構築物の破砕を効率的に行うことができるというメリットがある。
【0009】
しかし、この穿孔用ビットにあっては、コンクリート部分に穿孔しながら鉄筋に突き当たると、ビットに打撃力を与えることなく、該鉄筋にビット先端面を押し付けながら回転させることによって鉄筋を切断除去するようになっており、この穿孔用ビットにあっても、コンクリート構築物のコンクリート部分と同時に鉄筋部分の穿孔を連続的に、正確かつ効率的に行うことができないという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−217364号公報
【特許文献2】特開2007−23690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、例えばビルや道路などのコンクリート構築物、或いは岩石を破砕する場合において、騒音や振動、粉塵の発生並びに破砕物の飛散を効果的に抑制することができ、特にはコンクリート構築物内部の鉄筋部分をコンクリート部分と同時に穿孔して溝状の連結孔を連続的にかつ効率的に形成することができ、これにより、効率的、かつ確実なコンクリート構築物、或いは岩石の破砕を実現できる穿孔用ビット、それを用いた掘削装置及びコンクリート構築物、岩石の穿孔方法及び破砕方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記日的達成のため、本発明は、掘削装置のドリルロッドの先端に装着される穿孔用ビットであって、
筒形のビット本体と、
前記ビット本体の排出用エアーが噴出する開口を穿孔側に有する頭部と、
前記頭部の穿孔側の開口に沿って前記頭部の外周に向かって放射状となるように間隔をおいて配置される複数のチップ取付座と、
前記複数のチップ取付座に固着される先端に角部を備える超硬体からなる超硬チップとを備えており、前記超硬チップが、頭部の外周側と開口側とに分割して配置されており、前記頭部の外周側の超硬チップは、チップの基部全体がビット本体の頭部内に収まるように固着されており、前記開口側の超硬チップは、その開口側の長さ方向端部が該開口に突出し、その突出部分以外は基部全体がビット本体の頭部内に収まるように固着されていることを特徴とする穿孔用ビットをその要旨とした。
【0013】
本発明は、ビット本体の頭部の厚み方向にはぼ全体に亘る長さを有するチップの基部全体がビット本体の頭部内に収まるように固着されている第2の超硬チップをさらに有することを特徴とする穿孔用ビットをその要旨としてもよい。
【0014】
本発明は、掘削装置であって、
ドリルロッドと、
前記ドリルロッドの先端に装着される本発明の穿孔用ビットと、
前記ドリルロッドに取り付けた連結部材を介して前記穿孔用ビットに沿って隣接配置されるガイド部材と、を備えたことを特徴とする掘削装置をその要旨としてもよい。
【0015】
本発明は、コンクリート構築物、岩石の破砕方法であって、
本発明の掘削装置を用いて破砕するコンクリート構築物、岩石の所望の位置に所望の深さで第1の孔を穿ち、
次いで、連結部材を介して前記穿孔用ビットに沿って隣接配置されたガイド部材を前記コンクリート構築物、岩石に穿孔した第1の孔に挿入することで、前記第1の孔との間の間隔を近接状態となるように保持し、かつその穿孔方向を規制しながら、前記掘削装置を用いて第2の孔を穿ち、これを繰り返すことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由面を形成し、
次いで、前記コンクリート構築物、岩石を前記1又は複数の自由両側に強制変位させることで、コンクリート構築物、岩石を破砕することを特徴とするコンクリート構築物、岩石の破砕方法をその要旨としてもよい。
【0016】
本発明は、本発明のコンクリート構築物、岩石の破砕方法を用いたビルの解体方法をその要旨とした。
【0017】
本発明の掘削装置は、ドリルロッドと、前記ドリルロッドの先端に装着される本発明の穿孔用ビットを備えるようにしてもよい。
【0018】
本発明のコンクリート構築物、岩石の穿孔方法は、
本発明の掘削装置を用いて破砕するコンクリート構築物、岩石の所望の位置に所望の深さで第1の孔を穿ち、次いで、連結部材を介して前記穿孔用ビットに沿って隣接配置されたガイド部材を前記コンクリート構築物、岩石に穿孔した第1の孔に挿入することで、前記第1の孔との間の間隔を近接状態となるように保持し、かつその穿孔方向を規制しながら、前記掘削装置を用いて第2の孔を穿ち、これを繰り返すことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由な形状の連即孔を形成するか、
破砕するコンクリート構築物、岩石に所望の形状を描画し、本発明の他の掘削装置を用いて前記描画された形状を構成する複数の孔を近接させて所望の深さで穿つことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由な形状の連結孔を形成するか、の少なくともいすれかの方法で穿孔するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の穿孔用ビット10は、図1及び図4に示すように、超硬チップ17、18が、ビット本体11の頭部12の穿孔側の開口13に沿って、前記頭部12の外周側と開口13側とに分割して配置されており、前記頭部12の外周側の超硬チップ18は、チップ全体がビット本体11の頭部12内に収まるように固着されており、開口13側の長さ方向の一方端部が該開口13に突出している開口13側の超硬チップ17は、その突出部分を除いてビット本体11の頭部12内に収まるように固着されていることから、穿孔時に加わる打撃力によっても容易に欠損しないようになっている。このため、例えばビルや道路などの鉄筋部分を含むコンクリート構築物をコンクリート部分と鉄筋部分の穿孔を同時に連続的に、かつ効率的に行うことができ、しかも超硬チップが短時間で欠損することがないので、長期間に亘って交換することなく穿孔作業を行うことができる。
【0020】
本発明の掘削装置31にあっては、図2に示すように、本発明の穿孔用ビット10がドリルロッド32の先端に装着されると共に、前記ドリルロッド32に取り付けた連結部材33を介して前記穿孔用ビット10に沿ってガイド部材33が隣接配置されていることから、図3(a)(b)に示すように、ドリルロッド32の先端に装着される穿孔用ビット10でコンクリート構築物、或いは岩石Xに孔Hを穿孔した後、前記孔Hにガイド部材34を挿入することで、前記穿孔用ビット10でコンクリート構築物、或いは岩石Xを穿孔するときに、前記ガイド部材34によってその穿孔方向が規制されるようになっている。また、前記連結部材33によって前記穿孔用ビット10に沿ってガイド部材34が隣接配置されることから、ガイド部材34が挿入される孔Hと穿孔用ビット10で穿孔される孔Hとの間の間隔が近接状態に保持されるので、穿孔用ビット10で穿孔される孔Hと前記ガイド部材34が挿入される孔Hとを隔てる隔壁が、前記穿孔用ビット10の穿孔時の振動で破砕されるようになっている。この結果、本発明の掘削装置31にあっては、ガイド部材34でガイドされながら穿孔用ビット10によるコンクリート構築物、或いは岩石Xの穿孔を繰り返すことで、コンクリート構築物、或いは岩石Xに溝状の連結孔(自由面)Fを連続的にかつ効率的に形成することができる。
【0021】
本発明のコンクリート構築物、岩石の破砕方法にあっては、図2、図3及び図5に示すように、本発明の掘削装置31によってコンクリート構築物、或いは岩石Xに形成された1又は複数の自由面F側に強制変位させることで、コンクリート構築物、或いは岩石Xを破砕するようにしたので、騒音や振動、粉塵を発生、並びに破砕物の飛散を抑制しつつ、効率的、かつ確実にコンクリート構築物、或いは岩石を破砕することができる。
【0022】
本発明の掘削装置によれば、穿孔用ビットが単独で直進穿孔性が良好なので、前記ドリルロッドの先端に装着される本発明の穿孔用ビットだけを備えるようにしても、十分に所望の位置に正確に孔を穿孔することができる。
【0023】
本発明のコンクリート構築物、岩石の穿孔方法によれば、
本発明の掘削装置を用いて破砕するコンクリート構築物、岩石の所望の位置に所望の深さで第1の孔を穿ち、次いで、連結部材を介して前記穿孔用ビットに沿って隣接配置されたガイド部材を前記コンクリート構築物、岩石に穿孔した第1の孔に挿入することで、前記第1の孔との間の間隔を近接状態となるように保持し、かつその穿孔方向を規制しながら、前記掘削装置を用いて第2の孔を穿ち、これを繰り返すことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由な形状の連結孔を形成するか、
破砕するコンクリート構築物、岩石に所望の形状を描画し、本発明の他の掘削装置を用いて前記描画された形状を構成する複数の孔を近接させて所望の深さで穿つことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由な形状の連結孔を形成するか、の少なくともいすれかの方法で穿孔するようにしてもよく、
いずれにしても、例示するように、H型鋼を立てるための孔を、その形状に沿った孔とすることができ、穿孔のために排出する破砕物の量も少なく、また、残余部分が立設すべきH型鋼の周囲をその形状に沿う形で取り囲むので、透き間に入れるコンクリートの量も少なく済む上、強度的にも元の残余部分が強度分担するので、良い大きい強度で、H型鋼の立設状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の穿孔用ビットを示す一部断面正面図である。
【図2】本発明の穿孔用ビットをドリルロッドの先端に装着した掘削装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の掘削装置を用いて溝状の連結孔を形成する過程を示す模式図であって、(a)及び(b)はコンクリート構築物、岩石に最初の孔を穿孔している状態を示し、(C)及び(d)は、最初に穿孔された孔にガイド部材を挿入して、ガイド部材によってガイドされつつ第2の孔を穿孔用ビットにより穿孔している状態を示すものである。
【図4】図3の(b)及び(d)に示す穿孔用ピットのビット本体頭部側から見た拡大図である。
【図5】本発明の掘削装置を用いてコンクリート構築物、岩石に形成された1又は複数の溝状の連結孔(自由面側)に強制変位させることで、コンクリート構築物、岩石を破砕する状態を示した模式図である。
【図6】(a)は、本発明の穿孔用ビットをドリルロッドの先端に装着した掘削装置の別例を示す斜視図、(b)は、この掘削装置を用いる場合に、あらかじめ穿孔対象の面に穿孔すべき連結孔の形状を描画するための描画ガイドプレートを示す斜視図
【図7】(a)から(d)は、図2の掘削装置及び図6の掘削装置で掘削可能な種々の形状の連結孔を例示する図である。
【図8】従来の掘削装置を用いてコンクリート構築物に溝状の連結孔を形成する過程を示した模式図である。
【図9】図8に示す掘削装置のドリルロッドの先端に装着される穿孔用ビットを示した斜視図である。
【図10】従来の穿孔用ビットを示した拡大斜視図である。
【図11】図10に示す穿孔用ビットを用いてコンクリート構築物に孔を穿孔している状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10・・・穿孔用ビット
11・・・ビット本体
12・・・頭部
13・・・開口
16・・・チップ取付座
17、18、19・・・超硬チップ
21・・・クリアランス
22・・・凹部
31、31A・・・掘削装置
32・・・ドリルロッド
33,33A・・・連結部材
34・・・ガイド部材
H ・・・孔
F ・・・自由面
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態1>
以下、本発明の穿孔用ビット、それを用いた掘削装置及びコンクリート構築物、岩石の破砕方法を図面に従ってさらに詳しく説明する。まず、図1〜図4に示す穿孔用ビットについて説明する。この穿孔用ビット10は、掘削蔵置31のドリルロッド32の先端に装着され、そのビット本体11の頭部12をコンクリート構築物、或いは岩石Xの破砕面に当接させた状態で、前記ドリルロッド32を介して回転させながら打撃することによってコンクリート構築物、或いは岩石Xに所望の孔Hを穿孔することができるものである。
【0027】
この穿孔用ピット10のビット本体11は筒形をなしており、このビット本体11内には掘削蔵置31側から破砕片(ズリ)を排出するための排出用のエアーまたは水流が通過し、ビット本体11の頭部12に設けた開口13から噴出するようになっている。このビット本体11の基端部にはドリルロッド32のネジ溝(図示しない)を設けた先端が螺合するネジ14がその外周面に形成されている。また、ビット本体11の頭部12の穿孔側面には開口13に沿って頭部12の外周に向かって放射状となるように間隔をおいて配置される8つのチップ取付座16が配置されている。
【0028】
各チップ取付座16には、超硬体からなる超硬チップ17、18、19が例えば銀ろうや銅ろうなどでろう付けすることにより固着されている。各超硬チップ17、18、19は先端に角部17a、18a、19aを備えており、この角部17a、18a、19aが図3(a)及び(c)に示すように穿孔時にコンクリート構築物、或いは岩石Xの穿孔面に当接するようになっている。
【0029】
上記超硬チップ17及び18と超硬チップ19とは交互に配されており、これら超硬チップ17、18、19のうち、超硬チップ19は、図4に示すように、ビット本体11の頭部12の厚み方向にはぼ全体に亘る長さを有しており、そのチップの基部全体が頭部12内に収まるように固着され、穿孔時に加わる打撃力によっても容易に欠損しないようになっている。一方、超硬チップ17及び18は、頭部12の外周側と開口13側とに分して配置されており、外周側の超硬チップ18は、その基部が頭部12内に全体が収まるように固着され、穿孔時に加わる打撃力によっても容易に欠損しないようになっている。開口13側の超硬チップ17は、開口13側に突出する部分を除き、その基部は頭部12内に収まるように固着され、穿孔時に加わる打撃力によっても容易に欠損しないようになっている。また、開口13側の超硬チップ17の開口13側に突出する部分は、図3及び図4中の矢印で示すように、コンクリート構築物、或いは岩石Xに孔Hを穿孔する際に、ビット本体11の開口13を通してビット本体11の開口13側近傍に形成される破砕片からなる層20とビット本体11の内周面との間にクリアランス21を形成するようになっており、このクリアランス21を通って排出用のエアーまたは水流が噴出する過程で破砕片の層20の破砕片も吸い上げられて開口13側へと排出されるようになっている。
【0030】
開口13側に排出された破砕片は、排出用のエアーまたは水流と共に、図3(b)(d)及び図4の矢印に示すように、ビット本体11の頭部12の超硬チップ17、18、19の間に設けた凹部22、並びにビット本体11の頭部12の外側面には形成した溝15を通り、さらに図3中の矢印に示すビット本体11の外周面とコンクリート構築物、或いは岩石Xの穿孔された孔表面との間に形成される隙間23を通って後方のドリルロッド22側へと排出されるようになっている。
【0031】
尚、図1〜図4に示す例では、ビット本体頭部の厚み方向にはぼ全体に亘る長さを有しており、そのチップ全体が頭部12内に収まるように固着された超硬チップ19と、頭12の外周側と開口13側とに分割して配置された超硬チップ17及び18とを交互に設けたが、頭部12の外周側と開口13側とに分割して配置された超硬チップ17及び18のみから構成することもできる。
【0032】
次に、本発明の穿孔用ビットを装着した掘削装置について説明する。図2に示すように、本発明の穿孔用ビットを掘削装置31は、環状のドリルロッド32と、前記ドリルロッド32の先端に装着される穿孔用ビット10と、前記ドリルロッド32に取り付けた連結部材33を介して前記穿孔用ビット10に沿って隣接配置されるガイド部材34とを備えている。
【0033】
環状のドリルロッド32内には、コンプレッサーまたはポンプ(図示しない)から排出用のエアーまたは水流が送り込まれるようになっており、この排出用のエアーまたは水流がドリルロッド32の先端に装着される穿孔用ビット10に送られて、該穿孔用ビット10によって破砕されたコンクリート構築物、或いは岩石Xからの破砕片がエアーまたは水流と共に排出されるようになっている。
【0034】
また掘削装置31には、集塵機(図示しない)が付設されており、破砕片と共に排出されたエアーまたは水流の中から破砕片を取り除き、再びコンプレッサーまたはポンプ(図示しない)を介して排出用のエアーまたは水流がドリルロッド32に送り込まれるようになっている。
【0035】
また掘削装置31には、ドリルロッド32の先端に装着された穿孔用ビット10を回転させる回転駆動部と穿孔用ビット10に打撃力を与える打撃駆動部とを有している。
【0036】
以下、この掘削装置を用いて鉄筋部分を含むコンクリート構築物(例えばビルや道路)に溝状の連結孔を形成してこれを破砕し、解体する工程について説明する。まず、図2に示すように、掘削装置31のドリルロッド32先端に穿孔用ビット10を装着し、次いで、図1、図2、図3(a)(b)及び図4に示すように、該ビット本体11の頭部12をコンクリート構築物Xの穿孔面に押しつける。
【0037】
次に、ドリルロッド32を介して穿孔用ピット10を回転させながら打撃することによってコンクリート構築物Xに孔Hを穿孔する。穿孔用ビット10を回転させながら打撃することで、ビット本体11の頭部12の超硬チップ10がコンクリート構築物Xの穿孔面に打撃を繰り返し、コンクリート構築物Xのコンクリート部分及び鉄筋部分が穿孔される。穿孔により生じた破砕片は、図3(b)に示すように、ビット本体1内の頭部開口近傍に保留される。このとき、破砕片からなる層20は、前記穿孔用ビット10のピット本体11の開口13に突出する超硬チップ17の長さ方向端部の分だけ、ビット本体11内周面との間にクリアランス21が形成されるようになっており、このクリアランス21を通って排出用のエアーまたは水流が開口13側に噴出する過程で破砕片の層20の破砕片も吸い上げられて開口13側に排出されるようになっている。
【0038】
次いで、図3(C)(d)に示すように、ドリルロッド32の先端に装着される穿孔用ビット10でコンクリート構築物Xに孔Hを穿孔した後、この孔Hにドリルロッド32に連結部材33を介して取り付けられたガイド部材34を挿入する。これにより、穿孔用ビット10でコンクリート構築物Xに次の孔Hを穿孔するときに、前記ガイド部材34によってその穿孔方向が規制されるようになる。また、連結部材33によってガイド部材34が前記穿孔用ビット10に沿って隣接配置されることから、ガイド部材34が挿入される孔Hと新たに穿孔される孔Hとの間隔が近接状態に保持されることになるので、穿孔用ビット10によって穿孔される孔Hと前記ガイド部材34が挿入される孔Hとを隔てる隔壁が、前記穿孔用ビット10の穿孔時の振動で破砕されるようになっている。この結果、本発明の掘削装置31にあっては、ガイド部材33でガイドされながら穿孔用ビット10によるコンクリート構築物Xの穿孔を繰り返すことで、コンクリート構築物Xに図5に示すような1または複数の溝状の連結孔(自由面)Fが連続的にかつ効率的に形成されるのである。尚、図3では、ガイド部材34の先端が穿孔された孔Hの孔尻まで挿入されている例が示されているが、ドリルロッド32に連結部材33を介して取り付けられたガイド部材34は、上記のとおり、穿孔された孔Hとの間隔を近接状態に保持し、かつその穿孔方向を規制するものであるため、その先端を穿孔された孔Hの孔尻まで挿入する必要はない。このため、ガイド部材34は穿孔された孔Hの孔尻まで届く長さは必ずしも必要とせず、長さの短いガイド部材34を用いた場合、穿孔された孔Hへの挿入作業もより簡便なものとなる。
【0039】
こうして、コンクリート構築物Xに1または複数の溝状の連結孔(自由面)Fが形成された後、これら1又は複数の自由面F側を強制変位させることでコンクリート構築物Xを破砕するのである。自由面F側を強制変位させる方法は任意であるが、例えば図5中の拡大図に示す押圧装置40を用いることができる。この押圧装置40は、装置本体41の長さ方向に亘って両面に所定間隔に押圧部41が設けられており、この押圧部42は装置本体41に内蔵された油圧式の2つのジャッキによって装置本体41の側面から出没するようになっている。そして、この押圧装置40を孔Hに挿入し、前記押圧部42を側方に出没させることで、図5中の拡大図に矢印で示すように、該押圧部42が1または複数の溝状の連結孔(自由面)Fを構成する孔Hの内周面を押圧し、1または複数の溝状の連結孔(自由面)Fを強制変位させるものである。これにより、コンクリート構築物Xは騒音や振動を発生させることなく、確実に破砕されるのである。
【0040】
<実施形態2>
図6(a)は、本発明の穿孔用ビットをドリルロッドの先端に装着した掘削装置の別例を示す斜視図、(b)は、この掘削装置を用いる場合に、あらかじめ穿孔対象の面に穿孔すべき連結孔の形状を描画するための描画ガイドプレートを示す斜視図である。これより、すでに説明した部分については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0041】
図6(a)の掘削装置31Aは、図2の掘削装置31に比べ、ガイド部材34とそのためのドリルロッド32がなく、穿孔用ビット10をドリルロッド32の先端に装着しただけの構成であり、その分、連結部材33Aもより小さなものとなっている。
【0042】
本発明の穿孔用ビット10は、円筒形状であるため、穿孔時に残余部分によって、内外周からガイドされるので、穿孔直進性がよく、そのため、本発明のように、ガイド部材34のない形の掘削装置31Aであっても、十分、まっすぐ下方に伸び、横へのずれのない穿孔をすることができるのである。
【0043】
図6(b)の描画ガイドプレート23は、そのような掘削装置31Aで必要な形状の連結孔を穿孔するために、あらかじめ穿孔対象の表面に、穿孔すべき形状を描画するためのものであり、このプレート23は、H型鋼用の連結孔を形成するように複数のガイド孔23aが設けられている。なお、本発明の穿孔用ビット10は、それにより穿孔した孔同士間の最小残余肉部分の厚さを10ミリ程度とするのが、穿孔の直進性を維持するためと、その穿孔により既穿孔された孔との残余部分を自然に破砕するために好適であるが、それに限定されるものではない。
【0044】
図7(a)から(d)は、図2の掘削装置及び図6の掘削装置で掘削可能な種々の形状の連結孔を例示する図である。図7(a)は、図2の掘削装置31を用いて形成されたH型鋼用の連結孔で、その最終穿孔部分に、穿孔用ビット10とガイド部材34が残されているのが見える。図7(b)は、図6の掘削装置31Aを用いて形成されたH型鋼用の連結孔で、その最終穿孔部分に、穿孔用ビット10だけが残されているのが見える。
【0045】
図7(c)は、図2の掘削装置31を用いて形成された円環状の連結孔でその最終穿孔部分に、穿孔用ビット10とガイド部材34が残されているのが見える。図7(d)は、図6の掘削装置31Aを用いて形成されたA字状の連結孔でその最終穿孔部分に、穿孔用ビット10だけが残されているのが見える。
【0046】
こうして本発明の穿孔用ビット10を設けた掘削装置31、31Aによれば、任意の形状の連結孔を穿孔することができる。例えば、H型鋼を立てるための連結孔を穿孔する場合、その形状に沿った部分だけを穿孔できるので、穿孔のために排出する破砕物の量も少なく、また、残余部分が立設すべきH型鋼の周囲をその形状に沿う形で取り囲むので、透き間に入れるコンクリートの量も少なく済む上、強度的にも元の残余部分が強度分担するので、良い大きい強度で、H型鋼の立設状態を保持することができる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明で実施形態にない組み合わせや、上述の二つの実施形態の組み合わせなど、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に変更して実施することができ、それらも本願発明の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の穿孔用ビット、それを用いた掘削装置及びコンクリート構築物、岩石の穿孔方法及び破砕方法は、鉄筋の入ったコンクリート建築物や岩石の穿孔や破砕が必要であり、その際、騒音や振動、粉塵の発生並びに破砕物の飛散を効果的に抑制することができ、特にはコンクリート構築物内部の鉄筋部分をコンクリート部分と同時に穿孔して溝状の連結孔を連続的にかつ効率的に形成することができ、これにより、効率的、かつ確実なコンクリート構築物、或いは岩石の破砕を実現することが求められる産業分野に活用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削装置のドリルロッドの先端に装着される穿孔用ピットであって、
筒形のビット本体と、
前記ピット本体の排出用のエアーまたは水流が噴出する開口を穿孔側に有するビット本体頭部と、
前記頭部の穿孔側の開口に沿って前記頭部の外周に向かって放射状となるように間隔をおいて配置される複数のチップ取付座と、
前記複数のチップ取付座に固着される先端に角部を備える超硬体からなる超硬チップとを備えており、
前記前記超硬チップが、頭部の外周側と開口側とに分割して配置されており、前記頭部の外周側の超硬チップは、チップの基部全体がビット本体の頭部内に収まるように固着されており、前記開口側の超硬チップは、その開口側の長さ方向端部が該開口に突出し、その突出部分以外は基部全体がビット本体の頭部内に収まるように固着されていることを特徴とする穿孔用ビット。
【請求項2】
ビット本体頭部の厚み方向にはぼ全体に亘る長さを有するチップの基部全体がビット本体頭部内に収まるように固着されている第2の超硬チップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の穿孔用ビット。
【請求項3】
掘削装置であって、
ドリルロッドと、
前記ドリルロッドの先端に装着される請求項1又は2に記載の穿孔用ビットと、
前記ドリルロッドに取り付けた連結部材を介して前記穿孔用ビットに沿って隣接配置されるガイド部材と、を備えたことを特徴とする掘削装置。
【請求項4】
コンクリート構築物、岩石の破砕方法であって、
請求項3に記載の掘削装置を用いて破砕するコンクリート構築物、岩石の所望の位置に所望の深さで第1の孔を穿ち、 次いで、連結部材を介して前記穿孔用ビットに沿って隣接配置されたガイド部材を前記コンクリート構築物、岩石に穿孔した第1の孔に挿入することで、前記第1の孔との間の間隔を近接状態となるように保持し、かつその穿孔方向を規制しながら、前記掘削装置を用いて第2の孔を穿ち、これを繰り返すことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由面を形成し、
次いで、前記コンクリート構築物、岩石を前記1又は複数の自由両側に強制変位させることで、コンクリート構築物、岩石を破砕することを特徴とするコンクリート構築物、岩石の破砕方法
【請求項5】
請求項4に記載のコンクリート構築物、岩石の破砕方法を用いたビルの解体方法。
【請求項6】
掘削装置であって、
ドリルロッドと、前記ドリルロッドの先端に装着される請求項1又は2に記載の穿孔用ビットを備えたことを特徴とする掘削装置。
【請求項7】
コンクリート構築物、岩石の穿孔方法であって、
請求項3に記載の掘削装置を用いて破砕するコンクリート構築物、岩石の所望の位置に所望の深さで第1の孔を穿ち、次いで、連結部材を介して前記穿孔用ビットに沿って隣接配置されたガイド部材を前記コンクリート構築物、岩石に穿孔した第1の孔に挿入することで、前記第1の孔との間の間隔を近接状態となるように保持し、かつその穿孔方向を規制しながら、前記掘削装置を用いて第2の孔を穿ち、これを繰り返すことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由な形状の穿孔溝を形成するか、
破砕するコンクリート構築物、岩石に所望の形状を描画し、請求項6に記載の掘削装置を用いて前記描画された形状を構成する複数の孔を近接させて所望の深さで穿つことで、多数の連続した孔を穿孔して前記コンクリート構築物、岩石に1又は複数の自由な形状の穿孔溝を形成するか、
の少なくともいすれかの方法で穿孔することを特徴とするコンクリート構築物、岩石の穿孔方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−32669(P2013−32669A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172881(P2011−172881)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(306013832)株式会社 中部ロックドリルサービス (2)
【Fターム(参考)】