説明

穿孔膜

本発明は、低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層を含む、膜であって、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有する、膜に関する。本発明は更に、その製造方法、及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層(molecular monolayer)を含む、膜であって、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有する、膜、その製造方法、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的に関して、膜は、半透性表面構造であると認識されている。このような膜は、それぞれ膜の一方の主表面から他方の主表面へと延在する細孔及び開口を有する。従来の膜は、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、フッ化ポリビニリデン、ポリプロペン、ポリエテン、ポリテトラフルオロエテン及びポリアミド等のポリマーから構成され、通常、5μm〜500μmの範囲の厚みを有する。
【0003】
一般に、半透膜は、ろ過膜又は吸着膜として使用される。ろ過膜は、孔径によって物質の分離を規定する膜である。ここでは、膜の細孔の直径よりも小さい直径を有する分子のみが、膜を通過することができる。一方、吸着膜では、特定の物質を含有する媒体が膜内を流れる間に、これらの特定の物質が、膜の好適なリガンドに結合することによって分離される。加えて、(細胞膜と類似するように)化学的機能化によって特定の物質のみがそれぞれ細孔内を通過し拡散する半透膜が知られている。
【0004】
これらの膜の実用化には、膜材料が機械的に安定であり、かつ熱的及び化学的に耐性を有することが望ましい。その上、更に薄い膜を製造して、それらを様々な技術分野に使用する試みが行われている。しかしながら、膜の厚みの減少は一般に、機械的安定性の低下を伴う。数ナノメートルの範囲の厚みを有する単分子層が記載されている。しかしながら、これらは、ろ過膜又は吸着膜として好適でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、ナノメートル範囲の厚みを有し、それ故、従来の膜よりも薄く、極めて高い機械的安定性を有し、かつ熱的及び化学的に耐性を有し、また、物質を分離するためのろ過膜及び/又は吸着膜として適する膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、特許請求の範囲において特徴づけられる実施の形態によって解決される。
【0007】
具体的には、低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層を含む、膜であって、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有する、膜が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的に関して、「単分子層」は、1分子の厚みのみを有する層であると理解される。本発明によれば、この単層は低分子芳香族化合物から構成される。使用される芳香族化合物に応じて、単分子層は、任意の好適な厚みを有し得る。好ましくは、このような単分子層は、0.1nm〜10nmの範囲、特に好ましくは0.3nm〜3nmの範囲、更に好ましくは1nm〜2nmの範囲の層厚を有する。
【0009】
本発明による膜は、1nm〜200nmの範囲の厚みを有する。厚みが1nm未満であれば、膜は、取り扱いづらく、十分な耐引裂性を示さない。しかしながら、厚みが200nmを超えると製造プロセスが複雑になりすぎ、十分な透過性がもはや確保されない。好ましい実施の形態では、本発明による膜が、1nm〜50nmの範囲の厚み、より好ましくは1nm〜20nmの範囲の厚みを有する。特に好ましくは、本発明による膜が、1nm〜2nmの範囲の厚みを有する。本発明による膜は、ナノメートル範囲の厚みを有するため、以下、ナノ膜(nanomembrane)と称される。本発明による単層又は膜の厚みは、原子間力顕微鏡法(AFM)のような当業者に既知の方法によって求めることができる。
【0010】
1nm〜200nmの範囲の膜の厚みを得るために、2つ以上の単分子層をスタック形態で重ねて配置することが、必要とされ得る。それ故、好ましい実施の形態では、本発明による膜が、重ねて配置される少なくとも2つの単分子層のスタックから構成される。好ましくは、2〜100の単層が重ねて配置され、特に好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜10の単層が重ねて配置される。
【0011】
本発明の目的に関して、「低分子芳香族化合物」という用語は、オリゴマー形態又はポリマー形態でないような芳香族化合物を意味する。その上、この用語は、芳香族化合物が高エネルギー放射線処理後に互いに架橋される可能性を含む。本発明の目的に関して、「芳香族化合物」という用語は「複素環式芳香族化合物」という用語を含み、すなわち「芳香族化合物」という用語は、ヘテロ原子を含有しない、又は少なくとも1つの芳香族環中に1つ若しくは複数のヘテロ原子を含有する芳香族化合物を意味する。好ましくは、単層は、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフタリン、アントラセン、ビピリジン、テルピリジン、チオフェン、ビチエニル、テルチエニル、ピロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族化合物から構成される。本発明の特に好ましい実施の形態では、単層がビフェニルから構成される。これは、横方向の架橋性に関して特に有利である。さらに、ビフェニルから構成される単層は、極めて高い機械的安定性を有する。しかしながら、単層が少なくとも2つの異なる芳香族化合物を含有することも可能である。例えば、単層の別の部分がビピリジンから構成され、単層の1部分がビフェニルから構成されていてもよい。
【0012】
本発明による単層は横方向に架橋される。横方向の架橋によって、高い機械的安定性及び化学的安定性が、低分子芳香族化合物から構成される単層にもたらされる。好ましくは、単層は、電子線、プラズマ線、X線、β線、γ線、UV線又はEUV線(約1nm〜約50nmのスペクトル範囲を有する「極UV」)による処理によって架橋される。
【0013】
本発明による膜は穿孔を有する。本発明の目的に関して、穿孔は、膜が、それぞれ膜の一方の主表面から他方の主表面へと延在する開口及び細孔を有するようなものであると理解される。これらの開口は0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する。本発明の好ましい実施の形態では、開口が0.1nm〜100nmの範囲の直径を有する。別の好ましい実施の形態では、開口が100nm〜1μmの範囲の直径を有する。分離される分子のサイズ及び分離の種類に応じて、好適な孔径及び開口のサイズがそれぞれ選択され得る。孔径は、透過型電子顕微鏡法(TEM)又は走査型電子顕微鏡法(SEM)等の好適な画像化技法によって測定することができる。円形細孔の半径は、非円形細孔に関するこのような開口の形状及び表面積と同じように求めることができる。
【0014】
その上、「穿孔」という用語は、方向性を持たない(non-directed:無向)穿孔及び方向性を持った(directed:有向)穿孔の両方を含む。方向性を持たない穿孔は、膜の製造中に生じ、そのために特有の措置を講じる必要がない細孔の形成であると理解される。よって、膜を製造する従来方法では、おそらく、方向性を持たない穿孔を或る程度もたらす幾らかの細孔が形成され得る。本発明によれば、それぞれ、方向性を持った、すなわち標的型の(targeted)穿孔は、膜中に細孔を形成するのに標的志向型の処置を必要とする穿孔であると理解される。これは、例えば、化学的プロセス又は物理的プロセスによって達成することができる。
【0015】
膜は、任意の好適な数の開口を有し得る。開口の数が大きいほど、膜の透過性は大きくなる。好ましい実施の形態では、膜が、穿孔として、膜の表面1mm当たり少なくとも10個の開口を有する。膜の開口が10個未満である場合には、十分な通過流が確保されず、本発明による膜を用いた物質の分離が困難なものとなる。特に好ましい実施の形態では、膜が、穿孔として、膜の表面1mm当たり10個〜1012個の開口を有する。更に好ましくは、膜が、穿孔として、膜の表面1mm当たり少なくとも10個の開口を有する。本発明による膜が2つ以上の単分子層から構成される場合、個々の単層中の開口は、それぞれ、膜全体の開口及び細孔を一体として(together)形成する。
【0016】
本発明の更に好ましい実施の形態では、細孔、すなわち開口が、膜の表面の少なくとも5%を占める。特に好ましくは、膜の表面の少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも20%が開口からなる。好ましくは、膜の表面の多くとも80%が開口からなる。この値を超えた場合、膜の十分な機械的安定性はもはや確保されない。
【0017】
本発明の更に好ましい実施の形態では、少なくとも1つの単分子層の2つの表面のうちの1つが、官能基によって修飾される。ここで、官能基はそれぞれ芳香族化合物と結合する。官能基は、照射によって分離せず、また、例えば更なる分子を単層に可逆的又は不可逆的に結合させる更なる反応に好適である、任意の官能基であり得る。好ましくは、官能基は、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシ基、及びそれらの組合せから選択される。特に好ましい実施の形態では、少なくとも1つの単分子層の2つの表面のうちの1つが、官能基としてのアミノ基によって修飾される。更に特に好ましい実施の形態では、官能基が、特定の標的分子と結合するのに適する特別なリガンドである。これらのリガンドは、上述のアミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、シアノ基、チオール基又はヒドロキシ基の修飾によって単分子層に結合することができる。このようなリガンドの例は、イオン交換体、キレート剤、アミノ酸、補酵素、補因子、及びそれらの類似体、内分泌物及び外分泌物、例えばホルモン、酵素基質、酵素阻害剤、核酸、例えばDNA及びRNA、ウイルス、並びにポリペプチド、例えばタンパク質、とりわけ抗体及び酵素である。
【0018】
単層の表面は、官能基によって好ましくは実質的に完全に修飾され、すなわち、単層の実質的に全ての芳香族化合物が官能基を担持する。しかしながら、官能基によって表面の一部のみを修飾することも可能である。この場合、表面は、官能基のパターンを有し得る。本発明の目的に関して、官能基のパターンは表面の化学構造化を指定し、官能基がこの化学構造化を構成することにより、単層の表面上に望ましいパターンが形成される。この構造化及びパターンはそれぞれ、官能基による表面の部分的な官能基化によって得られる。とりわけ、このような方法で、官能基の標的志向型パターンを有する単層を得ることができる。
【0019】
官能基によって修飾される膜の使用は、膜が特定の物質を分離するための吸着膜として使用される場合に特に有益である。これらの物質は、例えば、媒体から、濃縮形態で得られる物質であっても、又は純粋な形態で得られる物質であってもよい。これは、例えば組換えタンパク質であってもよい。しかしながら、吸着される物質が、媒体から除去すべき汚染物質である場合もある。これは、例えば、ウイルス、タンパク質、アミノ酸、核酸又はエンドトキシンであってもよい。ここで、官能基は、吸着される物質と可逆的又は不可逆的に結合するのに適するように選択される。物質を媒体から単離する場合には、官能基へのこれらの物質の結合を可逆的に行うことが有益である。
【0020】
たとえ分離される分子が官能基において吸着されなくても、これらの官能基は、これらの分子の拡散に影響を及ぼし得る。このように、特定の物質に対する膜の選択性を同様に調節することもできる。
【0021】
本発明による膜が2つ以上の単層から構成される場合、1つ又は複数の単分子層が、官能基によって修飾され得る。好ましい実施の形態では、2つ以上の単分子層から構成される本発明による膜中の全ての単分子層が、官能基によって修飾される。これによって、高濃度の官能基がそれぞれ膜上、膜中に存在することが可能となり、このことは、例えば、吸着膜として使用する場合の吸着能に関して有益である。
【0022】
更に好ましい実施の形態では、本発明による膜が、付加的なコーティングを更に含み得る。ここで、このコーティングは、開口を完全に被覆しないため、膜の透過性が依然として確保される。コーティングは、例えば金属コーティングであり得る。好ましくは、コーティングは金コーティングである。コーティングは任意の好適な厚みを有し得る。とはいえ、コーティングは、好ましくは1nm〜10nmの範囲、特に好ましくは2nm〜5nmの範囲の厚みを有する。このような付加的なコーティングは、例えば、電子顕微鏡における、膜の表面のより良好なイメージアビリティを可能なものとする。その上、この付加的なコーティングは、膜の機械的安定性を増大し得る。
【0023】
本発明による膜は、以下に記載の方法のうちの1つによって製造することができる。
【0024】
特に、本発明は、低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層を含む、膜を製造する方法であって、該膜が、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有し、該方法が、
(a)基板を準備する工程と、
(b)基板の少なくとも1つの表面に結合により低分子芳香族化合物の単層を適用する工程と、
(c)低分子芳香族化合物から構成される単層が横方向に架橋されるように、高エネルギー放射線を用いて、工程(b)で得られる基板を処理する工程と、
(d)基板を除去して膜を得る工程と、
を含み、上述の工程(a)〜工程(d)のうちの1つの工程中又は工程後に、
(e)0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口を生成するように実施される、膜を穿孔する工程、
を更に含む、膜を製造する方法に関する。
【0025】
上記方法は、それぞれ方向性を持った、標的型の方式により穿孔を実施する、本発明による膜についての製造方法を記載するものである。したがって、この方法は、標的志向型で細孔を形成する、膜を穿孔する工程(e)を含む。
【0026】
本発明による方法は、上述の工程(a)〜工程(d)のうちの1つの工程中又は工程後に、(e)0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口を生成するように実施される、膜を穿孔する工程を含む。任意の好適な方法によって穿孔を実施することができる。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態では、工程(c)と工程(d)との間、又は工程(d)の後に、電子線及びイオン線からなる群から選択される粒子線による照射によって穿孔を実施する。以下、この方法を穿孔法(1)と称する。
【0028】
穿孔法(1)では、初めに、基板と結合したままであるか、又は工程(d)で基板を除去した後の自由な状態にあり得る、無傷の膜が製造される。その後、粒子線による照射によって、この膜を穿孔する。この目的のためには、放射線が膜中に開口を生成するのに適するエネルギー及び線量を有することが必要とされる。エネルギー及び線量が高すぎると、膜が裂けるおそれがある。エネルギーが低すぎると、曝露時間が長くなり過ぎる。薄膜の穿孔には低放射線量で十分であることから、5V〜50kVの範囲の放射線を用いることが好ましい。これは、例えば微細に集束させた電子線又はイオン線を用いて達成することができる。構造化する領域全体にわたるビームの集束及び走査は、例えば走査型電子顕微鏡による電子ビームリソグラフィ又は集束イオンビーム(FIB)によるリソグラフィにおいて、電子光学素子又はイオン光学素子によって実施することができる。また、ナノ膜中の開口の生成は、近接場プローブ(near probe)法を用いて実施することができる。このような方法では、電子又はイオンの集束が、小さいサイズの電子源又はイオン源(近接場プローブ)によって確保される。よって、0.1nm〜1000nmの間隔で、構造化する領域全体にわたって近接場プローブを誘導する。例えばMuller et al., Ultramicroscopy 1993, 50, 57に記載されている方法に従って製造される、走査型トンネル顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)のチップ、及び原子的に規定された電界エミッタのチップが、電子の近接場プローブとして特に適する。プローブと試料との間のより大きな間隔(>10nm)での穿孔のための近接場プローブとしては、最後に述べたものが、特に適しており、電界イオン源としても使用することができる。
【0029】
膜上の空間的に規定された領域のみを照射することにより、照射された点に開口が生成するように、シャドウマスクと関連付けた粒子線による照射によって開口を生成することも可能である。この目的のためには、例えば、シャドウマスクと併せて、広範囲を照らす電子源を使用することができ、その結果、開いている領域のみが電子に曝される。
【0030】
本発明の別の好ましい実施の形態では、架橋領域及び非架橋領域を有する単層を形成するように不完全に、工程(c)における架橋を実施し、単層の非架橋領域を除去することによって、穿孔を形成することで、穿孔を行う。これは、例えば、以下に示す穿孔法(2)〜穿孔法(5)のうちの1つによって達成することができる。
【0031】
穿孔法(2)では、本発明による方法の工程(c)における架橋プロセス中に既にナノ膜の穿孔を実施する。ここでは、膜全体ではなく、特定領域のみを、放射線によって架橋する。このようにして、架橋(すなわち、事前に照射された)及び非架橋(すなわち、事前に照射されていない)領域のパターンを有する膜が製造される。非架橋領域の低分子芳香族化合物は、実質的に、単層の架橋領域と何ら結合を有しないため、基板の除去後に容易に除去することができる。当業者は、対応する方法を知っている。例えば、これは、非架橋の低分子芳香族化合物を単に洗い落とすことによって達成することができる。その後、非架橋領域に単層中の開口が形成される。
【0032】
例えば、湿式化学エッチングによって基板を溶解すると、非架橋領域中の分子が固定用支持体を失う。分子は相互に架橋されていないため、それらは基板のエッチング中に溶解し、こうして開口が形成される。金基板の溶解は、KCN溶液中にそれを浸漬することによって達成され得る。SiN基板の溶解は例えばHFによって達成され、Si基板の溶解は例えばKOHによって達成され得る。
【0033】
選択的エッチングは、例えば、微細に集束させた電子線、イオン線又は光子線による構造化を形成することによって実施することができる。この方法の好ましい実施の形態では、基板表面に適用される単層の空間的に規定された領域のみを照射することにより、構造化表面を基板上に形成するように、リソグラフィ法を用いて高エネルギー放射線による処理を実施する。電磁放射線(例えばX線、UV線、EUV線)を用いた横方向の構造化を伴う架橋のために、従来技術では、それぞれの波長範囲に適するマスクと併せて、利用可能な光源、又は好適な導波管を用いた走査が提示されている。本発明による方法の更に好ましい実施の形態では、シャドウマスクと併せて、広範囲を照らす電子源によって構造化が実施され、その結果、開いている領域のみが電子に曝される。
【0034】
本発明による方法の特に好ましい実施の形態では、コヒーレントEUV線を用いて一定区域を照射し、ここで、2つ以上のコヒーレントEUVビームが、単層の表面上に定在波の干渉パターンを作り出し、該干渉パターンが選択的な照射をもたらすことにより、構造化することによって架橋を実施する。このEUV干渉リソグラフィ(EUV−IL)は、600nm〜6nmの範囲、好ましくは約13nmの範囲の波長で実施することができる。このようにして、約1nm〜約100nmの範囲、好ましくは約5nmの範囲のホールサイズを有するパターンを生成することができる。
【0035】
穿孔法(3)では、例えば単分子層及び/又はその下に存在する基板における欠陥近傍の、不完全な架橋に起因して、ナノ膜の穿孔が形成される。
【0036】
ここでは、基板の表面が原子的に平坦かつ均質であり、すなわち、いかなる刃状転位又は欠陥も有しない場合にのみ、均質で欠陥のない膜が得られることを利用している。しかしながら穿孔法(3)では、不均質な表面構造を有する基板を使用する。この目的のために、例えば、粗面を有する基板を使用することができる。故に、本発明による方法の工程(b)において、低分子芳香族化合物の均質な単層は、基板の表面上に形成されない。工程(c)でのその後の照射では、工程(b)で得られる単層の不均質性のために局所的に不完全な架橋がもたらされる。上記の穿孔法(2)の場合と同様に、膜から非架橋の低分子芳香族化合物を除去することによって、穿孔膜(perforated membranes)を得ることができる。
【0037】
穿孔法(4)では、事前に構造化された基板上における自己凝集プロセスによって穿孔が得られる。この基板は、低分子芳香族化合物が種々の様式で吸着する様々な領域を有する。金等の特定材料でコーティングされる基板の領域では、低分子芳香族化合物、例えばチオールが指定の(ordered)様式で吸着し、コーティングされていない別の領域では、低分子芳香族化合物の吸着が起こらない。同様に、種々の指定の表面形態の領域を有する基板を使用することができる。原子的に平坦な領域では、指定のフィルムが形成されるのに対し、粗い領域では、指定の吸着が起こらない。本発明による方法の工程(c)におけるその後の照射では、指定の領域のみが架橋されるのに対し、他の領域は架橋されない。上記の穿孔法(2)の場合と同様に、膜から非架橋の低分子芳香族化合物を除去することによって、穿孔膜を得ることができる。
【0038】
穿孔法(5)では、本発明による方法の工程(b)において基板に、架橋性低分子芳香族化合物及び非架橋性分子の単層を適用することによって、穿孔を実施する。また、この方法は「化学的穿孔」と称することができる。ここでは、少なくとも2つの群の分子が使用される。第1の群は架橋性分子であり、後に膜を形成する。もう一方の群は非架橋性分子であり、後にホールを形成する。本発明による方法の工程(c)におけるその後の照射では、架橋性分子のみが架橋される。上記の穿孔法(2)の場合と同様に、膜から非架橋分子を除去することによって、穿孔膜を得ることができる。例えば、ヘキサデカンチオールを非架橋性分子として使用することができる。とりわけ、例えば、架橋性芳香族化合物であるビフェニルチオール(90%)と、ヘキサデカンチオール(10%)との混合物を、本発明による方法の工程(b)で使用することができる。特に好ましいのは、集合によって所定サイズのクラスターを形成し得る非架橋性分子の使用である。このようにして、非架橋分子の好適な選択により制御的に所定の孔径を設定することができる。
【0039】
当業者は、0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口を得るように、上記の穿孔法(1)〜穿孔法(5)を実施することができる。本発明の好ましい実施の形態では、0.1nm〜100nmの範囲の直径を有する開口が得られる。別の好ましい実施の形態では、100nm〜1μmの範囲の直径を有する開口が得られる。ここでは、分離される分子のサイズ及び分離の種類に応じて、好適な孔径及び開口のサイズをそれぞれ選択することができる。
【0040】
当業者はまた、所望の数の開口を有する膜を得るように、上記の穿孔法(1)〜穿孔法(5)を実施することができる。好ましい実施の形態では、膜が、穿孔として、膜の表面1mm当たり少なくとも10個の開口を有するように、穿孔が実施される。膜の開口が10個未満である場合には、十分な通過流が確保されず、本発明による膜を用いた物質の分離が困難なものとなる。特に好ましい実施の形態では、膜が、穿孔として、膜の表面1mm当たり10個〜1000個の開口を有する。更に好ましくは、膜が、穿孔として、膜の表面1mm当たり少なくとも100個の開口を有する。本発明による膜が2つ以上の単分子層から構成される場合、個々の単層中の開口は、それぞれ、膜全体の開口及び細孔を一体として形成する。
【0041】
その上、本発明は、方向性を持たない形で穿孔を行う、膜を製造する方法に関する。これは、膜の製造の一部として細孔の形成が起こり、かつそのために特有の措置を行う必要がないことを意味する。例えば、膜を製造する従来方法では、おそらく、方向性を持たない穿孔を或る程度もたらす幾らかの細孔が形成され得る。
【0042】
したがって、本発明は特に、低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層を含む、膜を製造する方法であって、該膜が、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有し、該方法が、
(a)基板を準備する工程と、
(b)基板の少なくとも1つの表面に結合により低分子芳香族化合物の単層を適用する工程と、
(c)低分子芳香族化合物から構成される単層が横方向に架橋されるように、高エネルギー放射線を用いて、工程(b)で得られる基板を処理する工程と、
(d)基板を除去して膜を得る工程と、
を含み、
工程(c)及び/又は工程(d)中に穿孔が形成される、膜を製造する方法に関する。
【0043】
この場合方向付けられていない穿孔が、この方法の工程(c)及び/又は工程(d)中に形成される。それ故、例えば単層の架橋中に穿孔がランダムに起こり得る。例えば、工程(d)における基板の除去中に膜に開口が形成されることも考え得る。
【0044】
工程(a)〜工程(d)に関する以下の説明は独立して、上記の2つの方法に関するものである。
【0045】
本発明による方法の工程(a)で準備される基板は、少なくとも1つの表面を有し、任意の好適な材料から構成され得る。好ましくは、基板は、金、銀、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、タングステン、モリブデン、白金、アルミニウム、鉄、鋼、ケイ素、ゲルマニウム、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、窒化ケイ素、及びそれらの酸化物又は合金又は混合物、並びに酸化インジウムスズ(ITO)及びケイ酸ガラス又はホウ酸ガラスからなる群から選択される。特に好ましくは、基板は金でコーティングされたケイ素であり、ケイ素層と金層との間にチタンベースコーティングを更に有する。
【0046】
好ましくは、基板の表面は、原子的に平坦かつ均質であり、すなわち、いかなる刃状転位又は欠陥も有しない。このように、同様に均質で欠陥のない膜を製造することが可能である。
【0047】
その後、低分子芳香族化合物の単層を、固定基(anchor groups)を介して基板と一時的に共有結合させるために、基板表面を任意で事前に修飾してもよい。修飾は、例えば、化学修飾及び/又はクリーニングを含み得る。クリーニングは、表面を水、若しくは有機溶媒、例えばエタノール、アセトン若しくはジメチルホルムアミドで単に濯ぐことによって、又はUV線により生成される酸素プラズマで処理することによって実施することができる。特に好ましくは、第一に、UV線による処理を実施した後に、エタノールで濯ぎ、その後、窒素流中で乾燥させる。ホスホン酸基、カルボン酸基又はヒドロキサム酸基等の固定基を有する単層が、酸化金属表面に適用される場合、金属表面の初期制御酸化が有益である。これは、金属表面を、過酸化水素、カロ酸又は硝酸等の酸化剤で処理することによって達成することができる。基板表面を修飾する更なる可能性は、アミノ基、ヒドロキシ基、塩素基、臭素基、カルボキシ基又はイソシアネート基等の反応性末端基を有する第1の有機単層を適用し、実際に架橋される単層を第2の工程で好適な官能基を用いてこれに化学結合させることである。
【0048】
その後、本発明による方法の工程(b)において、低分子芳香族化合物の単層を、結合によって基板の少なくとも1つの表面に適用する。この結合は、吸着によって、又は固定基を介して結合することによって達成することができる。単層は、固定基を介する共有結合によって基板の表面に適用されることが好ましい。単層は、例えば、浸漬法、鋳込法、スピニング法、又は溶液からの吸着によって適用され得る。このような方法は従来技術で既知である。フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフタリン、アントラセン、ビピリジン、テルピリジン、チオフェン、ビチエニル、テルチエニル、ピロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族化合物の単層を適用することが好ましい。本発明の特に好ましい実施の形態では、芳香族化合物が、チオール基を介して基板と共有結合するビフェニルである。
【0049】
本発明による方法の工程(c)では、低分子芳香族化合物から構成される単層が横方向に架橋されるように、工程(b)で得られる基板を高エネルギー放射線により処理する。単層は、横方向に共有結合的に架橋されることが好ましい。好ましくは、この処理を、電子線、プラズマ線、X線、β線、γ線、UV線又はEUV線により実施する。
【0050】
本発明による方法の好ましい実施の形態では、広範囲を照射する電子源、例えばフラッドガン、又はHild et al., Langmuir 1998, 14, 342-346の図2に記載の構成を、電子による照射に使用することができる。ここで、使用される電子エネルギーは、それぞれの有機フィルム及びそれらの基板に、広範囲、好ましくは1eV〜1000eVで適合させることができる。例えば、ビフェニル−4−チオールを金に架橋させるために、50eVを有する電子線を使用することができる。
【0051】
電磁放射線(例えばX線、UV線、EUV線)を用いた広範囲の架橋のために、従来技術で利用可能な光源を使用することができる。
【0052】
例えば、工程(b)において、飽和分子及び飽和単位、例えばシクロへキシル、ビシクロヘキシル、テルシクロヘキシル、部分的若しくは完全に水素化されたナフタリン若しくはアントラセン、又は部分的若しくは完全に水素化された複素環式芳香族化合物をそれぞれ、低分子芳香族化合物の単層の代わりに、固定基を用いて基板表面に適用して、共有結合させる場合、工程(c)における高エネルギー放射線処理による横方向の架橋に加えて、それぞれ、芳香族化合物及び複素環式芳香族化合物それぞれに対する脱水素化が起こることがある。
【0053】
本発明による方法の工程(d)では、基板を除去した後、膜を得る。例えば、これは、エッチングにより基板を溶解することによって、又は固定基を介した単層と基板との間の結合の化学的な切断によって、達成することができる。単層から基板を除去する対応する方法は、従来技術で既知である。チオール基を固定基として使用する場合、これは、例えば、ヨウ素による処理によって達成することができる(例えば、W. Eck et al., Adv. Mater. 2005, 17, 2583-2587を参照)。基板を除去した後、単分子層は膜形態となる。
【0054】
本発明による方法の好ましい実施の形態では、少なくとも部分的に少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物を使用し、それにより、単分子層の2つの表面のうちの1つが官能基によって修飾される膜を得る。
【0055】
本発明の目的に関して、「少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物」という用語は、少なくとも1つの官能基を有するような芳香族化合物を意味する。官能基は、その後の照射によって分離せず、かつ例えば、更なる分子を単層に結合させる更なる反応に適する任意の官能基であり得る。好ましくは、官能基は、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシ基、及びそれらの組合せから選択される。ニトロ基が特に好ましい官能基である。ニトロ基の場合、工程(c)における高エネルギー放射線による基板の照射によって、架橋に加えて、ニトロ基のアミノ基への変換が起こる。この還元は、芳香族化合物中のC−H結合の開裂から開始し、またその後、遊離した水素原子がニトロ基をアミノ基へと還元すると考えられる。
【0056】
更に特に好ましい実施の形態では、官能基が、特定の標的分子と結合するのに適する特別なリガンドである。これらのリガンドは、上述のアミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、シアノ基、チオール基又はヒドロキシ基の修飾によって単分子層と結合することができる。この修飾は好ましくは単層の架橋後に実施されて、穿孔が起こる。このようなリガンドの例は、イオン交換体、キレート剤、アミノ酸、補酵素、補因子、及びそれらの類似体、内分泌物及び外分泌物、例えばホルモン、酵素基質、酵素阻害剤、核酸、例えばDNA及びRNA、ウイルス、並びにポリペプチド、例えばタンパク質、とりわけ抗体及び酵素である。当業者は、このようなリガンドを結合するのに適する方法を知っている。
【0057】
本発明の更に好ましい実施の形態では、その形成後に単層の表面上に官能基が位置するように、低分子芳香族化合物が末端位置に官能基を有する。
【0058】
このように、単分子層の2つの表面のうちの1つが官能基によって修飾される膜を製造することが可能である。上述のように、特定の物質を分離するための吸着膜として膜を使用する場合に、これは特に有益である。
【0059】
本発明の更に好ましい実施の形態では、少なくとも2つの穿孔単分子層を、スタックを形成するように重ねて配置する。好ましくは2〜100、特に好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜10の単層を重ねて配置する。このようにして、1nm〜200nmの範囲の厚みを有する膜を得ることができる。
【0060】
更に好ましい実施の形態では、本発明による方法が、付加コーティングを膜に適用する最終工程を更に含む。コーティングは例えば金属コーティングであり得る。好ましくは、コーティングは金コーティングである。コーティングは任意の好適な厚みを有し得る。とはいえ、コーティングは、好ましくは1nm〜10nmの範囲、特に好ましくは2nm〜5nmの範囲の厚みを有する。コーティングは、当該技術分野で既知の方法、例えば蒸着によって適用することができる。
【0061】
本発明による膜は、従来の膜よりも機械的に安定である。加えて、本発明によるナノ膜の機械強度、導電性及び透過性は、広い範囲において調節することができる。これは、官能基による修飾、開口の数及びサイズの選択、並びに個々の単層のスタッキングによる膜の厚みの変更、又は単分子層を形成する芳香族化合物の分子長の変更によって達成することができる。
【0062】
本発明は更に、物質の混合物を分離するためのろ過膜又は吸着膜としての本発明による膜の使用に関する。気体及び液体のろ過又は分離のための使用が特に好ましい。食品、飲料水若しくは廃水の分析における、飲料水若しくは廃水の精製のための、医療分野、例えば診断分野における、電池における、又は燃料電池における使用。
【0063】
本発明の別の好ましい実施の形態では、本発明による膜をセンサ技術において使用する。本発明の更に好ましい実施の形態では、本発明による方法により得ることができる膜をセンサ技術において使用する。
【0064】
以下の非限定的な実施例によって本発明を更に説明する。
【実施例】
【0065】
実施例1:
初めに、ニトロビフェニルチオール単層を、EUV−ILを用いて架橋した。ここで、300nm〜30nmの範囲の直径を有する円形開口が形成され、個々の開口の間の距離は300nm〜100nmであった。開口のサイズ及び位置は、透過型電子顕微鏡を用いて求めた。その後、得られたナノ膜を、2nm〜5nmの範囲の厚みを有する金フィルムでコーティングした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層を含む、膜であって、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有する、膜。
【請求項2】
重ねて配置される少なくとも2つの単分子層のスタックから構成される、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
穿孔として、前記膜の表面1mm当たり少なくとも10個の開口を有する、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
少なくとも1つの単分子層の2つの表面のうちの1つが、官能基によって修飾されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
少なくとも1つの単分子層の2つの表面のうちの1つが、官能基としてのアミノ基によって修飾されている、請求項4に記載の膜。
【請求項6】
前記単分子層が、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフタリン、アントラセン、ビピリジン、テルピリジン、チオフェン、ビチエニル、テルチエニル、ピロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族化合物から構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層を含む、膜を製造する方法であって、前記膜が、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有し、前記方法が、
(a)基板を準備する工程と、
(b)前記基板の少なくとも1つの表面に結合により低分子芳香族化合物の単層を適用する工程と、
(c)低分子芳香族化合物から構成される前記単層が横方向に架橋されるように、高エネルギー放射線を用いて、工程(b)で得られる前記基板を処理する工程と、
(d)前記基板を除去して前記膜を得る工程と、
を含み、上述の工程(a)〜工程(d)のうちの1つの工程中又は工程後に、
(e)0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口を生成するように実施される、前記膜を穿孔する工程、
を更に含む、膜を製造する方法。
【請求項8】
工程(c)と工程(d)との間、又は工程(d)の後に、電子線及びイオン線からなる群から選択される粒子線による照射によって穿孔を実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
架橋領域及び非架橋領域を有する単層を形成するように不完全に、工程(c)における前記架橋を実施し、前記単層の前記非架橋領域を除去することによって、前記穿孔を形成することで、穿孔を行う、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
コヒーレントEUV線を用いて一定区域を照射し、ここで、2つ以上のコヒーレントEUVビームが、前記単層の表面上に定在波の干渉パターンを作り出し、該干渉パターンが選択的な照射をもたらすことにより、構造化することによって架橋を実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
低分子芳香族化合物から構成され、かつ横方向に架橋される少なくとも1つの単分子層を含む、膜を製造する方法であって、前記膜が、1nm〜200nmの範囲の厚み、及び0.1nm〜1μmの範囲の直径を有する開口の形態の穿孔を有し、前記方法が、
(a)基板を準備する工程と、
(b)前記基板の少なくとも1つの表面に結合により低分子芳香族化合物の単層を適用する工程と、
(c)低分子芳香族化合物から構成される前記単層が横方向に架橋されるように、高エネルギー放射線を用いて、工程(b)で得られる前記基板を処理する工程と、
(d)前記基板を除去する工程であって、前記膜を得る、除去する工程と、
を含み、
工程(c)及び/又は工程(d)中に前記穿孔が形成される、膜を製造する方法。
【請求項12】
電子線、プラズマ線、X線、β線、γ線、UV線又はEUV線により、工程(c)における前記照射を実施する、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
浸漬法、鋳込法、スピニング法、又は溶液からの吸着により、工程(b)における前記適用を実施する、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記芳香族化合物が、固定基としてチオール基を介して前記基板に共有結合するビフェニルである、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも部分的に少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物を使用し、それにより、前記単分子層の2つの表面のうちの1つが官能基によって修飾される膜を得る、請求項7〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも2つの穿孔単分子層を、スタックを形成するように重ねて配置する、請求項7〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
物質の混合物を分離するためのろ過膜又は吸着膜としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜の使用。
【請求項18】
物質の混合物を分離するためのろ過膜又は吸着膜としての、請求項7〜16のいずれか一項に記載の方法により得ることができる膜の使用。
【請求項19】
食品、飲料水若しくは廃水の分析における、飲料水若しくは廃水の精製のための、医療分野、例えば診断分野における、電池における、又は燃料電池における、請求項17又は18に記載の使用。
【請求項20】
センサ技術における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜の使用。
【請求項21】
センサ技術における、請求項7〜16のいずれか一項に記載の方法により得ることができる膜の使用。

【公表番号】特表2013−500146(P2013−500146A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520956(P2012−520956)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004504
【国際公開番号】WO2011/009621
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(510056146)ユニヴェルシテート ビーレフェルト (3)
【Fターム(参考)】