説明

穿孔装置及び場所打ち杭の孔形成方法

【課題】残土処理を不要としてコストの削減をはかり、且つ孔壁に対するコンクリートの付着を確実にする。
【解決手段】穿孔装置Aは、先端部1aと後端部1bが同一軸心1cにあり中間に第1偏心部1dと第2偏心部1eを設けた駆動軸1と、先端部1aに回転不能に支持されたローターヘッド2と、ローターヘッド2に回転可能に支持された複数のコーンローター3と、第1偏心部1dに回転可能に配置された第1ローター4と、第2偏心部1eに回転可能に配置された第2偏心ローター5とを有し、第1偏心部1dと第2偏心部1eは同じ寸法eで互いに異なる方向に偏心し、複数のコーンローター3は夫々の軸心3dが軸心1cの延長線上の位置Oで交差し該交差位置Oからローターヘッド2側に向かって軸心1cからの距離が大きくなるように傾斜して配置され、第1ローター4及び第2ローター5の外周面にはねじ溝7が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂を圧密して孔を形成するための穿孔装置と、この穿孔装置を利用して場所打ち杭の孔、特に、孔壁にねじ溝を有するねじ孔を形成することができる孔形成方法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭工法は、低振動、低騒音であり、大型建造物から住宅等の小型建造物まで広い範囲で採用されている。この場所打ち杭工法では、現場に円筒管を打ち込んで、その中にコンクリートを打設しながら円筒管を引き抜いてコンクリート杭を造る工法、アースドリルやリバースサーキュレーションドリル等の掘削機を用いて穴あけし、この穴にコンクリートを打設してコンクリート杭を造る工法等の工法がある。
【0003】
上記の如く、場所打ち杭工法ではアースオーガや回転ビット或いは回転バケットによって地盤を掘削するのが一般的である。そして、地盤を掘削しつつ土砂を排除し、掘削深さが所要の寸法まで達した後、鉄筋籠を挿入してコンクリートを打設し、所定の養生を行ってコンクリート杭を造っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各場所打ち杭工法では掘削した土砂を排出することが必須である。例えば1棟の住宅を建築する場合でも杭の数は数本〜数十本となる。このため、大量の残土処理が必要となり、コストがかかるという問題がある。
【0005】
またアースオーガや回転ビット或いは回転バケットによって掘削された孔の孔壁は、表面形状が管理されたものではなく、打設されたコンクリートが孔壁に確実に付着して一体化がはかれるか否かが判然としないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、場所打ち杭工法に於いて、残土処理を不要としてコストの削減をはかることができ、且つ孔壁に対するコンクリートの付着を確実にすることができる穿孔装置と、場所打ち杭の孔形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る穿孔装置は、先端部と後端部が同一軸心にあり中間に第1偏心部と第2偏心部を設けた駆動軸と、前記駆動軸の先端部に回転不能に支持されたローターヘッドと、略円錐形に形成され前記ローターヘッドに回転可能に支持された複数のコーンローターと、前記第1偏心部に回転可能に配置された第1ローターと、前記第2偏心部に回転可能に配置された第2偏心ローターとを有し、前記駆動軸の第1偏心部と第2偏心部とは同じ寸法で互いに異なる方向に偏心して構成されており、前記複数のコーンローターは夫々の軸心が駆動軸の先端部の軸心の延長線上の略同じ位置で交差し且つ該交差位置からローターヘッド側に向かって駆動軸の軸心からの距離が大きくなるように傾斜して配置されると共に頂部が前記軸心の交差位置側に互いに接近して配置されており、前記第1ローター及び第2ローターの外周面にはねじ溝が形成されたものである。
【0008】
また本発明に係る場所打ち杭の孔形成方法は、場所打ち杭を施工するに際し請求項1に記載した穿孔装置を用いて孔を形成する場所打ち杭の孔形成工法であって、前記穿孔装置のコーンローターの頂部が下になるように吊り下げ、駆動軸に該駆動軸を回転駆動させる駆動手段を接続すると共に該駆動軸に推力を付与する推力付与手段を接続し、その後、駆動軸を回転させてローターヘッドを回転させながらコーンローターを地中に推進することで土砂を圧密させて孔を形成し、更にローターヘッドを回転させながら推進することで第1ローター及び第2ローターによって孔壁にねじ溝を形成し、予め設定された深さの孔を形成した後、駆動軸を逆回転させつつ穿孔装置を引き上げることで、孔壁にねじ溝が形成された孔を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穿孔装置では、駆動軸の先端に回転不能に支持されたローターヘッドに、複数のコーンローターを回転可能に且つ頂部を駆動軸の軸心の延長線上の同じ位置で交差するように配置したので、駆動軸を回転駆動することによってローターヘッドを回転させることができる。ローターヘッドに配置されたコーンローターは夫々自由回転し得るように構成されているため、ローターヘッドを地盤の上方から降下させてコーンローターを地盤に進入させると、夫々のコーンローターは地盤と接触して摩擦により回転する。このため、ローターヘッドの回転とコーンローターの回転、及びローターヘッドの推進に伴って、土砂が圧密され、地盤に円形の孔を形成することができる。
【0010】
また駆動軸の第1偏心部と第2偏心部は互いに同じ寸法で異なる方向に偏心しており、これらの第1偏心部、第2偏心部に外周面にねじ溝を形成した第1ローター、第2ローターを夫々回転可能に支持したので、コーンローターによって圧密した孔壁に対し、第1ローター、第2ローターがねじ溝を圧接させて該孔壁に対しねじ溝を形成することができる。このとき、第1ローターと第2ローターとが同じ偏心寸法で異なる方向に偏心していることから、孔壁に圧接させたときに生じる反力のバランスをとることが可能となり、駆動軸に無理な曲げ力を作用させることがない。
【0011】
また、第1ローター、第2ローターが孔壁に圧接してねじ溝を形成するため、孔壁に形成されたねじ溝によって推進方向への反力を支持することが可能となり、穿孔装置の円滑な推進と離脱を実現することができる。
【0012】
また本発明に係る場所打ち杭の孔形成方法では、コーンローターの回転とローターヘッドの推進に伴って土砂が圧密されて孔が形成されるため、地盤を掘削して孔を形成するのと異なり、排除すべき土砂を生成することがない。従って、無排土工法を実現して残土処理に要するコストを削減することができる。
【0013】
コーンローターによって土砂を圧接させて形成した孔壁に対し、更に、第1ローター、第2ローターを圧接させてねじ溝を形成することができる。孔壁に形成されたねじ溝は第1ローター、第2ローターの外周面に形成されたねじ溝と係合していることとなり、且つ孔壁に形成されたねじ溝は土砂が圧密されたものであるため、掘削して形成された孔の孔壁と比較して充分に高い強度を有する。このため、孔壁のねじ溝が穿孔装置に作用する推力に対する反力を支持することも可能となり、円滑な推進を実現することができる。
【0014】
そして予め設定された深さの孔を形成した後、駆動軸を逆回転させると共に引き上げる方向の力を付与すると、孔壁に形成されたねじ溝のリードに応じて穿孔装置が上昇して脱出し、孔壁にねじ溝を有する孔が形成される。
【0015】
従って、上記孔に鉄筋籠を挿入し、コンクリートを打設することで、場所打ち杭を構築することができる。特に、孔壁にねじ溝が形成されていることから、打設されたコンクリートがねじ溝に入り込んで固化することで、地盤とコンクリートとの確実な一体化をはかることができる。
【0016】
また構築された場所打ち杭に鉛直方向の力が作用したとき、該杭が地盤に対しねじ溝を介して一体化しているため、前記力はねじ溝部分に対する剪断力として作用することとなり、高い支持力を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る穿孔装置の最も好ましい実施形態について説明する。本発明の穿孔装置は地盤に対し無排土で場所打ち杭の孔を形成する際に好ましく用いられるものであり、特に、先端に配置したローターヘッドを回転させることで、該ローターヘッドに配置した複数のコーンローターによって土砂を圧密して孔を形成し、ローターヘッドに後続させて配置した第1ローター、第2ローターの外周面を孔壁に圧接させて、これらのローターの外周面に形成したねじ溝に対応したねじ溝を孔壁に形成し得るようにしたものである。
【実施例1】
【0018】
先ず、穿孔装置の構成について図を用いて説明する。図1は穿孔装置の全体構成を説明する図であり、孔壁にねじ溝を形成した穴の一部も記載したものである。図2はコーンローターの頂部側から見た図1の正面図である。図3は図1のA−A断面図である。図4は第1ローター、第2ローターの外周面に形成したねじ溝の例を説明する図である。
【0019】
図に示す穿孔装置Aは場所打ち杭工法を実現するための装置であり、特に、土砂を圧密して地盤にねじ溝Cを持った孔Bを形成するためのものである。このため、穿孔装置Aは、先端部1aと後端部1bが同一軸心1cにあり中央に第1偏心部1dと第2偏心部1eを有する駆動軸1と、駆動軸1の先端部1aに回転不能に支持されたローターヘッド2と、ローターヘッド2に回転可能に支持された複数のコーンローター3と、第1偏心部1dに回転可能に支持された第1ローター4と、第2偏心部1eに回転可能に支持された第2ローター5と、を有して構成されている。
【0020】
駆動軸1は、図示しない場所打ち杭工法に利用されるアースドリルの駆動装置や回転ビット或いは回転バケットの駆動装置(例えば後述する図5に示すロータリー駆動装置)等の駆動装置に接続され、この駆動装置によって回転力と推力を付与されてコーンローター3を回転させると共に、該コーンローター3及び各ローター4,5を推進するものである。
【0021】
駆動軸1は、先端部1aと、該先端部1aに連続した第1偏心部1dと、第1偏心部1dに連続した第2偏心部1eと、第2偏心部1eに連続した後端部1bと、を有して構成されている。先端部1aと後端部1bとは同一の軸心1c上に配置されており、第1偏心部1d、第2偏心部1eは軸心1cから夫々同一寸法eだけ、且つ互いに反対方向に偏心している。従って、第1偏心部1cの軸心と第2偏心部1eの軸心との距離は2eとなる。
【0022】
上記偏心量eの値は特に限定するものではないが、少なくとも後述するねじ溝の深さと同じ程度の寸法であることが好ましい。
【0023】
駆動軸1の先端部1aにはキー10を介してローターヘッド2が取り付けられており、この構成によってローターヘッド2は駆動軸1に対し回転不能に支持されている。このローターヘッド2は略円盤状に形成されており、外径が予め設定されているねじ溝Cの下穴の直径(孔壁Fの直径D)と略等しいか或いは僅かに小さい寸法を有している。
【0024】
ローターヘッド2には複数のコーンローター3、3が回転可能に支持されている。ローターヘッド2に配置するコーンローター3の数は特に限定するものではなく、2個以上配置されていれば良い。本実施例では、ローターヘッド2に3個のコーンローター3を回転可能に支持している。
【0025】
コーンローター3は頂部3aと基部3bを有する円錐形に形成されており、基部3b側の内部には軸受室3cが形成されている。コーンローター3の円錐の角度や基部3bの直径等は一義的に設定されるものではなく、構築すべき場所打ち杭の径や地盤の性状等の条件及びコーンローター3の外周面の駆動軸1の軸心1cに対する傾斜角度等に対応させて設定される。しかし、基部3bの直径はローターヘッド2の直径の1/2よりも小さい寸法を有している。
【0026】
尚、コーンローター3は正確な意味で円錐形である必要はなく、頂部3aから基部3bにかけての外周面が緩やかな曲線であっても良い。
【0027】
ローターヘッド2に配置された夫々のコーンローター3は、駆動軸1の軸心1cを中心とする円周上に等角度間隔(本実施例では120度間隔)に配置されている。特に、各コーンローター3の軸心3dは、駆動軸1の軸心1cの延長線上の略同じ位置Oで交差し、且つ該交差位置Oからローターヘッド2側に向かって駆動軸1の軸心1cからの距離が大きくなるように傾斜して配置されている。
【0028】
このため、ローターヘッド2の前面であって各コーンローター3の配置位置には、傾斜したコーンローター3の軸心3dに対して直交する面を持った取付座2aが設けられている。
【0029】
尚、コーンローター3の軸心3dの駆動軸1の軸心1cになす角度は特に限定するものではなく、ローターヘッド2に配置された3個のコーンローター3の外周面の駆動軸1の軸心1cに対して構成する傾斜角度(構築すべき場所打ち杭の径、地盤の性状等の条件に対応して予め設定される)に対応して設定される。
【0030】
各コーンローター3の頂部3aは、駆動軸1の軸心1cと軸心3dとの交差位置O側に互いに接近して配置されている。即ち、各コーンローター3は、頂部3aが駆動軸1の軸心1cの延長線上に互いに接近した姿勢を有している。そして、各コーンローター3は支持軸11を介してローターヘッド2に回転可能に支持されている。
【0031】
コーンローター3の内部に形成された軸受室3cは、支持軸11の支持部11aに取り付けた2個の軸受12a、12bを嵌合し得るような嵌め合い公差を持って形成されている。そして、支持軸11の支持部11aに取り付けられた軸受12a、12bは、該支持軸11の先端に締結したナット13によって所定位置に固着されている。
【0032】
また支持軸11の支持部11aに連続してシール部11bが形成されており、該シール部11bまでがコーンローター3の軸受室3cに嵌め込まれるように構成されている。特に、コーンローター3に形成された軸受室3cの基部3b側には、内周面にシール材14aを装着した閉塞部材14が取り付けられ、該閉塞部材14によって支持軸11のシール部11bをシールすることで、土砂や地下水が軸受室3cに浸入することを防止し得るように構成されている。
【0033】
支持軸11にはシール部11bに連続して取付部11cが形成されている。この取付部11cはローターヘッド2に設けた取付座2aに形成された取付孔2bに対し図示しないキーを介して或いはテーパ状に嵌合して装着されることで、ローターヘッド2に固定されている。
【0034】
従って、予め支持軸11の支持部11aをコーンローター3の軸受室3cに軸受12a、12bを介して嵌合すると共にシール部11bに閉塞部材14を装着することで、コーンローター3は支持軸11に自由回転可能に取り付けられる。そして、支持軸11の取付部11cをローターヘッド2の取付座2aに形成された取付孔2bに嵌合して固定することで、コーンローター3をローターヘッド2の前面に自由回転可能に取り付けることが可能である。
【0035】
駆動軸1の第1偏心部1dには2個の軸受21が取り付けられており、この軸受21を介して第1ローター4が自由回転可能に支持されている。即ち、第1ローター4は、駆動軸1に駆動されて回転することはなく、外周面が孔Bの孔壁Fに接触したときの摩擦によって回転する。このため、第1ローター4の回転方向は駆動軸1の回転方向とは反対方向になる。例えば、第1ローター4の外周面に接触摩擦が作用した状態で、図3に示すように駆動軸1が時計方向に回転したとき、第1ローター4は反時計方向に回転する。
【0036】
第1ローター4の外周面にはねじ溝7が形成されており、ローターヘッド2に後続し、該ローターヘッド2に配置された複数のコーンローター3によって圧密された孔壁Fに対して圧接し、このときの摩擦によって偏心回転しながら孔壁Fにねじ溝Cを形成し得るように構成されている。
【0037】
従って、孔壁Fに形成されたねじ溝Cの径D1は、第1ローター4の外周面に形成されたねじ溝7の外径d1よりも大きいことになる。
【0038】
第1ローター4が孔壁Fに圧接する際に、この孔壁Fはコーンローター3によって圧密された略平坦な面を有することとなり、孔壁Fからの反力が大きくなる。このため、第1ローター4は充分な長さを有することで接触面圧の低下をはかることが可能なように構成されている。即ち、第1ローター4の長さL1は構築すべき場所打ち杭の径やねじ溝の深さ、地盤の性状等の条件に応じて予め設定される。
【0039】
また第1ローター4の外周面に形成されたねじ溝7の頂部7aは、駆動軸1の軸心1cからの突出側では確実に孔壁に食い込むように、また嵌入側では孔壁から離脱するように構成されている。従って、例えば偏心寸法eとねじ溝7の高さ(頂部7aと谷部7bとの差)とが等しい場合、第1ローター4の外径(ねじ溝7の頂部7aの径)は、複数のコーンローター3の基部3bを結ぶ円の直径(孔壁Fの直径D)と略等しい。
【0040】
ねじ溝7は充分な深さを持った螺旋状に形成されていれば良く、形状を限定するものではない。例えば、図4(a)に示す台形ねじや同図(b)に示す三角ねじ、或いは同図(c)に示す丸ねじであって良い。そして場所打ち杭を構築する地盤の地層に対応させて前記各ねじ、或いは他の形状のねじを選択的に採用することが好ましい。例えば、砂礫層に場所打ち杭を施工する場合、ねじ溝7は三角ねじであることが好ましい。何れにしても、土砂を孔壁に圧密してねじ溝Cを形成したとき、このねじ溝Cから土砂を付着することなく離脱し得るような形状であることが好ましい。
【0041】
またねじ溝7のピッチP及び条数も限定するものではなく、構築すべき場所打ち杭の径や地盤の性状等の条件に対応して予め設定することが好ましい。例えば、ローターヘッド2の1回転あたりの推進深さが大きくとれるような地盤ではねじ溝7を多条ねじ(2〜3)として、ピッチを大きくすることなくねじ山の数を確保することが好ましい。
【0042】
例えば、孔壁Fに形成されたねじ溝Cの径をD(D1)とし、第1ローター4の外周面に形成されたねじ溝7の径をd(d1)とし、ねじ溝7の頂部7aのピッチをPとし、ねじ溝7の条数をnとし、駆動軸1の回転数をNとし、穿孔装置Aの推進速度をVとしたとき、
V=D/d−1×P×n×N
が成立する。この式は、場所打ち杭の径や地盤の性状に応じた、駆動軸1の回転数、トルクの設計計算に適用されるものである。
【0043】
駆動軸1の第2偏心部1eには2個の軸受22が取り付けられており、この軸受22を介して第2ローター5が自由回転可能に支持されている。従って、第2ローター5も第1ローター4と同様に、駆動軸1に駆動されて回転することはなく、外周面が既に第1ローター4によって形成されているねじ溝Cに接触したときの摩擦によって、駆動軸1の回転方向とは反対方向に回転する。
【0044】
第2ローター5の外周面には第1ローター4の外周面に形成されたねじ溝7と同一ピッチPと同一条数からなるねじ溝7が形成されている。しかし、第2ローター5の外径d2が第1ローター4の外径d1と等しい必要はなく、d2がd1よりも多少大きい寸法であっても良い。
【0045】
第2ローター5は第1ローター4に後続し、該第1ローター4によって孔壁Fに形成されたねじ溝Cに対し更に圧接し得るように構成されている。従って、第2ローター5の外径d2と第1ローター4の外径d1が等しい場合、第2ローター5に形成されたねじ溝7は、既に第1ローター4のねじ溝7によって形成されたねじ溝Cを修正するように接触することとなる。また第2ローター5の外径d2が第1ローター4の外径d1よりも大きい場合、既に第1ローター4のねじ溝7によって形成されたねじ溝Cを更に圧密してより強固なねじ溝Cを形成することが可能となる。
【0046】
第2ローター5の外径d2を第1ローター4の外径d1に対して等しい寸法とするか、或いは大きい寸法とするかは、場所打ち杭を構築する地盤の性状等の条件に応じて適宜設定することが好ましい。
【0047】
駆動軸1の第2偏心部1eは軸心1cを中心として第1偏心部1dの反対側に偏心している。このため、第1ローター4のねじ溝7が孔壁Fに圧接して圧密する際に駆動軸1に作用する反力と、第2ローター5のねじ溝7が既に形成されているねじ溝Cに圧接して圧密する際に駆動軸1に作用する反力と、を相殺させることが可能となる。
【0048】
第2ローター5が既に第1ローター4によって形成されたねじ溝Cに圧接したとき、該ねじ溝Cは充分に圧密されているため高い支持力を有する。このため、第2ローター5の長さL2を第1ローター4の長さL1より小さくしても、第1ローター4を介して駆動軸1に作用する反力と第2ローター5を介して駆動軸1に作用する反力とをバランスさせることが可能である。
【0049】
第1ローター4の中心には軸受21を嵌合する軸受室4aが形成されており、該軸受室4aの長さ方向の両端に夫々メカニカルシール23a、23bが取り付けられている。メカニカルシール23aはローターヘッド2に固定した摺動部材24aと接触し、メカニカルシール23bは第2ローター5に設けた摺動部材24bと接触して軸受室4aに地下水や土砂が浸入することを防いでいる。
【0050】
第2ローター5の中心にも軸受22を嵌合する軸受室5aが形成されており、第1ローター4側には摺動部材24bが固定されている。また、駆動軸1の後端部1b側には内周面にシール材25を嵌合したキャップ状の閉塞部材26が固定され、該シール材25によって軸受室5aに地下水や土砂が浸入することを防いでいる。
【0051】
駆動軸1の後端部1bは、前述した場所打ち杭工法に利用されるアースドリルの駆動装置や回転ビット或いは回転バケットの駆動装置等の駆動装置に接続される。このため、後端部1bは接続すべき駆動装置の出力軸の構成に対応した形状を有している。本実施例では、ステムロッド31を有する駆動装置を有しており、該ステムロッド31にピン32を介して接続し得るように構成されている。
【0052】
尚、駆動軸1の後端部1bの形状は本実施例に限定するものではなく、接続すべき駆動装置の出力部分の形状に対応した形状に構成される。
【実施例2】
【0053】
次に、上記の如く構成された穿孔装置Aを利用して場所打ち杭の孔Bを形成する方法について説明し、合わせて孔Bを利用して場所打ち杭を構築する手順について説明する。図5は駆動装置を搭載したクローラショベルに穿孔装置Aを接続して孔Bを形成する状態を説明する図である。図6は孔Bを利用して場所打ち杭を構築する手順を説明する図である。
【0054】
図5に示すように、クローラショベルに設けた回転力及び推進力を発生させる駆動装置30のステムロッド31に駆動軸1の後端部1bを接続して穿孔装置Aを吊り下げる。駆動軸1を回転(時計方向、或いは反時計方向)させながら穿孔装置Aを降下させて、ローターヘッド2に設けたコーンローター3の頂部3aを接地させる。
【0055】
図2に示すように、ローターヘッド2の回転に伴って複数のコーンローター3が全体として軸心1cを中心として回転し、同時に個々のコーンローター3は地盤との接触摩擦によってローターヘッド2の回転方向とは反対方向に回転しながら土砂を圧密する。駆動軸1を介して付与された推力によって穿孔装置Aは地盤に対して垂直に進行し、この進行に伴って地盤に無排土状態で孔が形成される。
【0056】
そして穿孔装置Aがローターヘッド2が地盤に嵌入されたとき、該地盤には各コーンローター3の基部3bを結ぶ円の直径と略等しい直径Dを持った孔壁Fが形成される。この孔壁Fは後続する第1ローター4の外周面に形成されたねじ溝7によって形成されるねじ溝Cの下穴となるものである。
【0057】
引き続く穿孔装置Aの推進によって、ローターヘッド2に後続する第1ローター4が孔壁Fに到着する。そして図1、図3に示すように、駆動軸1の回転に伴って第1ローター4は軸心1cを中心とし、寸法eの偏心回転を行う。この偏心回転に伴って、第1ローター4は先ずねじ溝7の頂部7aが点Hで孔壁Fに接触し、摩擦によって駆動軸1の回転方向とは反対方向に回転する。
【0058】
従って、第1ローター4に形成されているねじ溝7が右ねじであり駆動軸1が右回転する場合、孔壁Fに形成されるねじ溝Cは左ねじとなる。しかし、ねじ溝Cが右ねじであるか左ねじであるかは問題ではなく、孔壁Fに充分な深さを持ったねじ溝Cが形成されていれば、このねじ溝Cを介してコンクリートとの一体化をはかることが可能となる。
【0059】
引き続く駆動軸1の回転に伴って、第1ローター4が回転しつつ偏心寸法e分、孔壁Fを圧密してねじ溝7の頂部7aが該孔壁Fに嵌入し、点G(偏心方向の延長線上又はこの延長線よりも第1ローター4の回転方向下流側)に至ってねじ溝Cが形成される。更なる駆動軸1の回転と推進に伴って、孔壁Fには第1ローター4の外周面に形成されたねじ溝7により、連続したねじ溝Cが形成される。
【0060】
穿孔装置Aの推進に伴って第1ローター4が全長にわたって孔壁Fに嵌入すると、第2ローター5が孔壁Fに到達する。この第2ローター5は外周面に形成されたねじ溝7が孔壁Fに既に形成されているねじ溝Cと一致したとき、該ねじ溝Cに嵌合して頂部7a又は側面を含む他の面が接触して摩擦により回転する。第ローター5が孔壁Fと接触する部位は第1ローター4が孔壁Fと接触する部位とは対称位置となり、互いに孔壁Fの反力を相殺することが可能となる。
【0061】
上記の如くして穿孔装置Aの推進に伴って、地盤には圧密された孔壁Fが形成され、引き続き該孔壁Fにねじ溝Cが形成された孔Bが構成される。そして孔Bの深さが予め設定された寸法に到達したとき、穿孔装置Aを孔Bから引き戻すことが行われる。
【0062】
即ち、クローラショベルに設けた駆動装置30によって、駆動軸1を孔Bを形成する際の回転方向とは反対方向に回転させつつ引き戻し方向の力を付与することで、第1ローター4、第2ローター5のねじ溝7を孔壁Fに形成されたねじ溝Cに沿って回転させて地上に引き戻すことが可能である。そして、穿孔装置Aを地上に引き戻したとき、地盤には孔壁Fにねじ溝Cが形成された孔Bが構成される。
【0063】
次に、上記の如くして構成された孔Bを利用して場所打ち杭を構築する手順について図6により説明する。
【0064】
先ず、同図(a)に示すように、孔Bの地上部分にケーシング41を設置し、その後、孔Bに鉄筋籠42を挿入する。次いで、同図(b)に示すように、トレミー管43を先端部分が孔Bの底部に接近する長さに設置する。その後、同図(c)に示すように、トレミー管43を通してコンクリート44を打設し、打設量の増加に伴って順次トレミー管43を引き戻す。更に、同図(d)に示すようにケーシング41を引き抜き、更に、所要量のコンクリート44を打設する。そして同図(e)に示すように、孔Bに所要量のコンクリート44が打設されることで、打設されて硬化したコンクリート44によって場所打ち杭が構築される。
【0065】
上記の如くして構築された場所打ち杭では、孔Bに打設されたコンクリート44が孔壁Fに形成されたねじ溝Cに入り込んで固化することとなり、確実に一体化することが可能となる。またねじ溝CはピッチP及び条数に応じたリード角を有するため、コンクリート44の打設時に巻き込んだ空気は一部に滞留することなく、ねじ溝Cに沿って上昇することが可能であり、気泡の少ない強固な杭を構築することが可能である。
【0066】
尚、本実施例では穿孔装置Aの駆動軸1をクローラショベルに設けた駆動装置30によって駆動し得るように構成したが、この構成に限定するものではなく、前述したように、アースドリルの駆動装置や回転ドリル或いは回転ビットの駆動装置を利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る穿孔装置は、住宅のような比較的小型の建築物、或いは大型建築物の場所打ち杭を構築する際に利用することが可能である。特に、本発明に係る穿孔装置を利用した場所打ち杭の孔形成方法は、杭の径の如何に関わらず、地盤にねじ溝Cを形成した孔Bを構成するアースねじ工法として利用して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】穿孔装置の全体構成を説明する図であり、孔壁にねじ溝を形成した穴の一部も記載したものである。
【図2】コーンローターの頂部側から見た図1の正面図である。
【図3】図1のA−C断面図である。
【図4】第1ローター、第2ローターの外周面に形成したねじ溝の例を説明する図である。
【図5】駆動装置を搭載したクローラショベルに穿孔装置Aを接続して孔Bを形成する状態を説明する図である。
【図6】孔Bを利用して場所打ち杭を構築する手順を説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
A 穿孔装置
B 孔
C ねじ溝
D コーンローターによって圧密された孔壁の径
D1 ねじ溝Cの径
d1 第1ローターの径
d2 第2ローターの径
e 偏心寸法
F 孔壁
G、H 第1ローターのねじ溝の頂部と孔壁との接触点
L1 第1ローターの長さ
L2 第2ローターの長さ
P ねじ溝のピッチ
O 複数のコーンローターの頂部と軸心との交点
1 駆動軸
1a 先端部
1b 後端部
1c 軸心
1d 第1偏心部
1e 第2偏心部
2 ローターヘッド
2a 取付座
2b 取付孔
3 コーンローター
3a 頂部
3b 基部
3c 軸受室
3d 軸心
4 第1ローター
4a 軸受室
5 第2ローター
5a 軸受室
7 ねじ溝
7a 頂部
7b 谷部
10 キー
11 支持軸
11a 支持部
11b シール部
11c 取付部
12a、12b 軸受
13 ナット
14 閉塞部材
14a シール材
21、22 軸受
23a、23b メカニカルシール
24a、24b 摺動部材
25 シール材
26 閉塞部材
30 駆動装置
31 ステムロッド
32 ピン
41 ケーシング
42 鉄筋籠
43 トレミー管
44 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と後端部が同一軸心にあり中間に第1偏心部と第2偏心部を設けた駆動軸と、前記駆動軸の先端部に回転不能に支持されたローターヘッドと、略円錐形に形成され前記ローターヘッドに回転可能に支持された複数のコーンローターと、前記第1偏心部に回転可能に配置された第1ローターと、前記第2偏心部に回転可能に配置された第2偏心ローターとを有し、前記駆動軸の第1偏心部と第2偏心部とは同じ寸法で互いに異なる方向に偏心して構成されており、前記複数のコーンローターは夫々の軸心が駆動軸の先端部の軸心の延長線上の略同じ位置で交差し且つ該交差位置からローターヘッド側に向かって駆動軸の軸心からの距離が大きくなるように傾斜して配置されると共に頂部が前記軸心の交差位置側に互いに接近して配置されており、前記第1ローター及び第2ローターの外周面にはねじ溝が形成されていることを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
場所打ち杭を施工するに際し請求項1に記載した穿孔装置を用いて孔を形成する場所打ち杭の孔形成方法であって、前記穿孔装置のコーンローターの頂部が下になるように吊り下げ、駆動軸に該駆動軸を回転駆動させる駆動手段を接続すると共に該駆動軸に推力を付与する推力付与手段を接続し、その後、駆動軸を回転させてローターヘッドを回転させながらコーンローターを地中に推進することで土砂を圧密させて孔を形成し、更にローターヘッドを回転させながら推進することで第1ローター及び第2ローターによって孔壁にねじ溝を形成し、予め設定された深さの孔を形成した後、駆動軸を逆回転させつつ穿孔装置を引き上げることで、孔壁にねじ溝が形成された孔を形成することを特徴とする場所打ち杭の孔形成方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−57784(P2009−57784A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227458(P2007−227458)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(307021988)
【Fターム(参考)】