説明

穿孔部内面への封止部材押さえ付け装置及び穿孔部封止処理工法

【課題】被ライニング既設管路が活管状態のままで穿孔部の確実な封止処理を行うことができること。管径が異なる複数種類の管路を対象として、汎用性のある装置で穿孔部の封止処理を行うことができること。
【解決手段】穿孔部を通して下部が管内に挿入される支持軸10と、支持軸10に沿ってスライド自在のスライド筒体22,23,24を備えたアーム支持機構20と、支持軸10の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bと、アーム部材上に支持される封止部材とを備え、アーム支持機構20は、支持軸10を引き上げることによって、管径方向から管軸方向に向けて各アーム部材の支持位置を順次上方にシフトさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管穿孔部の管内周囲の内面に封止部材を押さえ付ける封止部材押さえ付け装置及び穿孔部封止処理工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設配管のライニング処理としては、管の内面にシール材を内張りする工法や管の内面に樹脂膜を形成する工法などが知られている。特に、内張反転シール工法は、管内面へ接着する接着面を内側から外側に反転しながらホース状のシール材を管の一端側から他端側に向けて順次内張りする工法であり、良好な施工性、高耐久性、管路破損時の気密性維持等の利点が得られることから、老朽化した管路の更生・修理、地震対策の補修等に広く採用されている。
【0003】
このようなライニング処理が施された既設配管に対して、分岐部を接続する等の目的で穿孔部を形成することがある。この場合、管壁と共に管内面に形成されたライニング層を穿孔することになるが、穿孔部に分岐継手等を接続して管内に流体を流すと、ライニング層の穿孔箇所が管内面から剥がれて、ライニング層と管内面との間に流体が漏洩する事態が生じることがある。管内面とライニング層とは完全に密着されていることが望ましいが、管内面とライニング層との間に接着不良箇所があると、この接着不良箇所が漏洩径路となって管路の気密不良箇所に繋がり、管外への漏洩が生じることが問題になる。
【0004】
このようなライニング層の穿孔による漏洩現象は、管外への漏洩箇所を特定することが極めて困難になるので、流体がライニング層の穿孔箇所からライニング層と管内面との間に漏洩する現象を防ぐ以外に有効な解決手段を見いだすことができない。この具体的な解決手段としては、ライニング層の穿孔部周囲を管内面に押圧する押さえ部材を用い、これを管の内側から管の穿孔部に取り付けることが行われている(下記特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平7−248092号公報
【特許文献2】特開平6−235493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によって、被ライニング既設管路における穿孔部の封止処理を行うには、前述した押さえ部材を管路の内部に配備しておく必要があるので、このような封止処理を行うことができる管路は開放された管路でなければならない。
【0006】
しかしながら、既設管路への穿孔は必ずしも管路を開放した状態で行うとは限らない。例えば、ガス管路に分岐継ぎ手を接続する際の穿孔作業は、ガスが管路内を流れている状態(活管状態)で行われ、作業中であっても下流側へのガス供給が遮断されないようにしている。このためには、穿孔部からのガス噴出を防ぐノーブロー作業が行われており、穿孔機支持部材を管路外周に装着し、この穿孔機支持部材に装着されたノーブロー作業バッグで穿孔部を覆う気密空間を形成して、この気密空間内で穿孔機を操作する作業を行っている。
【0007】
前述した従来技術は、管路を一旦開放して管路の内側から穿孔部に押さえ部材を取り付けるものであるから、活管状態で管路に形成された穿孔部に対しては適用することができない。
【0008】
また、活管状態で穿孔部の封止処理を行うためには、穿孔部を通して管内へ封止部材及び封止部材の押さえ治具を挿入することが考えられるが、穿孔部における管内周囲の内面に封止部材を押し当てることを考えた場合、異なる管径の管では当然ながら内面の曲率が異なるので、封止部材を確実に管内面に押さえ付けるには、管径に応じた曲率を有する押さえ治具を管径毎に用意する必要がある問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に対処するために提案されたものであり、被ライニング既設管路に対して、活管状態のままで穿孔部の確実な封止処理を行うことができること、管径が異なる複数種類の管路を対象として、汎用性のある装置で穿孔部の封止処理を行うことができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、一つには、被ライニング既設配管の穿孔部を気密封止するために、前記穿孔部の管内周囲の内面に封止部材を押さえ付ける封止部材押さえ付け装置であって、管外から引き上げ可能に支持され、前記穿孔部を通して下部が管内に挿入される支持軸と、前記支持軸の下部に装備され、該支持軸に沿ってスライド自在のスライド筒体を単数又は複数備えたアーム支持機構と、該アーム支持機構に支持され、前記支持軸の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材と、該アーム部材上に支持されて、前記管内周囲の内面に押さえ付けられる封止部材とを備え、前記アーム支持機構は、前記支持軸を引き上げることによって、管内で展開されて管径方向に最も沿って配置される前記アーム部材が管内面からの反力を受けることで、当該アーム部材より管軸方向に延びる別のアーム部材が支持された前記スライド筒体を上方にスライドさせ、管径方向から管軸方向に向けて各アーム部材の支持位置を順次上方にシフトさせることを特徴とする。
【0011】
また、管内面にライニング層が形成された被ライニング既設配管を対象として、管及びライニング層の穿孔部に対して分岐配管の接続が可能な状態で封止処理する穿孔部封止処理工法であって、支持軸と、該支持軸の下部に装備されたアーム支持機構と、該アーム支持機構に支持され、前記支持軸の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材とを備えた封止部材押さえ付け装置を用い、前記複数のアーム部材を折りたたみ状態にして前記穿孔部を通し管内に挿入し、その後前記複数のアーム部材を展開状態にする工程と、前記穿孔部を通して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成すると共に、中央孔を形成する筒状部を有する封止部材を、前記中央孔に前記支持軸を通して管内に挿入し、展開された前記アーム部材上に位置させる工程と、前記支持軸を引き上げて、前記アーム支持機構によって任意の管内径に前記アーム部材の相対位置を対応させ、前記封止部材を前記穿孔部の管内周囲に押さえ付ける工程と、前記封止部材が形成する樹脂充填空間に樹脂を充填して、前記穿孔部の端部全周を前記樹脂で封止する工程と、前記アーム部材を折りたたみ状態にして、前記中央孔を通して前記封止部材押さえ付け装置を管外へ撤去する工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
管内にライニング層が形成された被ライニング既設配管を対象にして、管及びライニング層の穿孔部に対して、分岐継手等を取り除いた状態で封止処理する穿孔部封止処理工法であって、支持軸と、該支持軸の下部に装備されたアーム支持機構と、該アーム支持機構に支持され、前記支持軸の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材とを備えた封止部材押さえ付け装置を用い、前記穿孔部を通して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成する封止部材を、前記アーム部材上に配備して、前記複数のアーム部材を折りたたみ状態にして前記穿孔部を通し管内に挿入し、その後前記複数のアーム部材を展開状態にする工程と、前記支持軸を引き上げて、前記アーム支持機構によって任意の管内径に前記アーム部材の相対位置を対応させ、前記封止部材を前記穿孔部の管内周囲に押さえ付ける工程と、前記封止部材が形成する樹脂充填空間に樹脂を充填して、前記穿孔部の端部全周を前記樹脂で封止する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る穿孔部内面への封止部材押さえ付け装置によれば、これを用いて、穿孔部から管内に挿入した封止部材を管内面に押さえ付けることができ、活管状態の被ライニング既設管路に対して、穿孔部を確実に封止処理することができる。これによって、下流側への流体供給を遮断することなく穿孔部の封止処理を行うことができる。
【0014】
また、管径方向から管軸方向に向けて、各アーム部材の支持位置を順次上方にシフトさせ、このアーム部材によって封止部材を穿孔部の管内面に押さえ付けることができるので、異なる管径の管路に対しても、一つの装置で対応することが可能になり、異なる管径に対して汎用性のある作業が可能になる。
【0015】
また、本発明の封止処理工法によれば、汎用性を有しかつ封止処理後にアーム部材を折りたたんで撤去することができる封止部材押さえ付け装置を用い、管内面にライニング層が形成された被ライニング既設配管を対象として、活管状態のままで管及びライニング層の穿孔部に対し分岐配管の接続が可能な状態で封止処理を行うことができる。
【0016】
また、本発明の穿孔部封止処理工法によれば、汎用性を有しかつ封止処理後にそのまま据え付けたままとする封止部材押さえ付け装置を用い、管内面にライニング層が形成された被ライニング既設配管を対象として、管及びライニング層の穿孔部に対して、分岐継ぎ手等を取り除いた後の封止処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態に係る封止部材押さえ付け装置(1A,1B)は、管外から引き上げ可能に支持され、穿孔部を通して下部が管内に挿入される支持軸(10,60)と、支持軸(10,60)の下部に装備され、該支持軸(10,60)に沿ってスライド自在のスライド筒体(22,23,24,70b)を単数又は複数備えたアーム支持機構(20,70)と、該アーム支持機構(20,70)に支持され、支持軸(10,60)の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材(31a,31b、32a〜32d、33a,33b、81〜86)と、該アーム部材上に支持されて、管内周囲の内面に押さえ付けられる封止部材(40,90)とを備え、アーム支持機構(20,70)は、支持軸(10,60)を引き上げることによって、管内で展開されて管径方向に最も沿って配置されるアーム部材が管内面からの反力を受けることで、当該アーム部材より管軸方向に延びる別のアーム部材が支持されたスライド筒体を上方にスライドさせ、管径方向から管軸方向に向けて各アーム部材の支持位置を順次上方にシフトさせる機構を備える。
【0018】
これによって、活管状態の管路の穿孔部に対して、アーム部材(31a,31b、32a〜32d、33a,33b、81〜86)を折りたたんだ状態で封止部材押さえ付け装置(1A,1B)の下部を穿孔部から管内に挿入して、管内でアーム部材を展開状態にし、支持軸(10,60)を引き上げることで、アーム部材上に位置する封止部材(40,90)を穿孔部の管内周囲に押しつけることができる。また、アーム支持機構(20,70)によって、管内で展開されて管径方向に最も沿って配置されるアーム部材が、支持軸を引き上げることによって管内面からの反力を受け、当該アーム部材より管軸方向に延びる別のアーム部材が支持されたスライド筒体を上方にスライドさせ、管径方向から管軸方向に向けて各アーム部材(31a,31b、32a〜32d、33a,33b、81〜86)の支持位置を順次上方にシフトさせるので、任意の内径を有する管であっても、管の曲率に応じてアーム部材の相対位置が保持された状態で封止部材を管内面に押しつけることができる。
【0019】
以下、各図に基づいて、具体的な実施形態を説明する。図1及び図2は、本発明の一つの実施形態に係る封止部材押さえ付け装置を示す説明図である(図1は管軸方向からみた正面図で同図(a)が展開状態、同図(b)が折りたたみ状態を示している。図2(a)は管径方向からみた正面図で展開状態を示しており、同図(b)はそのIIb−IIb断面図を示している。)。封止部材押さえ付け装置1Aは支持軸10を有する。支持軸10の下部はアーム支持機構20が装備されている。
【0020】
アーム支持機構20は、支持軸10の下部自体である中心軸21と、中心軸21にスライド自在に被さる第1スライド筒体22と、第1スライド筒体22にスライド自在に被さる第2スライド筒体23と、第2スライド筒体23にスライド自在に被さる第3スライド筒体24とを備えた四重構造である。中心軸21が上方へ大きく伸びていて支持軸10となり、その上部が操作用柄となっている。支持軸10の上端にはフランジがある。
【0021】
第3スライド筒体24と第2スライド筒体23とは、第3スライド筒体24の下端が第2スライド筒体23の下端に抜け止めされている。第2スライド筒体23と第1スライド筒体22とは、第2スライド筒体23の下端が第1スライド筒体22の下端に抜け止めされている。第1スライド筒体22と中心軸21とは、第1スライド筒体22の下端が中心軸21の下端に抜け止めされている。また、最も外側の第3スライド筒体24の上部には、展開又は折りたたみ操作を行うための操作部24Aが形成されている。
【0022】
アーム支持機構20としては、前述した中心軸21,第1スライド筒体22,第2スライド筒体23,第3スライド筒体24に対して、折りたたみ及び展開自在に8本のアーム部材と8組のブラケットアームとがリンクされた状態に装着されている。計8本のアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bは、支持軸10の周りの異なる方向にそれぞれ延びており、各基端が第3スライド筒体24の外面の同一高さ位置に枢支され、また各中間部がブラケットアーム34a,34b、35a〜35d、36a,36bの上端に枢支されている。第1のアーム部材31a,31bを支持するブラケットアーム34a,34bの下端部は第2スライド筒体23の下端部の枢支部23Aに枢支され、第2のアーム部材32a〜32dを支持するブラケットアーム35a〜35dの下端部は第1スライド筒体22の下端部の枢支部22Aに枢支され、第3のアーム部材33a,33bを支持するブラケットアーム36a,36bの下端部は中心軸21の下端部の枢支部21Aに枢支されている。
【0023】
第2のアーム部材32a〜32dを支持するブラケットアーム35a〜35dと第3のアーム部材33a,33bを支持するブラケットアーム36a,36bは、それぞれが上部リンクアームaと下部リンクアームbを屈折自在に備えており、下部リンクアームbが各枢支部22A,21Aとの枢支点から延長した突起部b1を備えている。そして、ブラケットアーム35a〜35d、36a,36bは、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの折りたたみ時には、支持軸10に沿って直線状になり、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの展開時には、下凸状に屈折して下部リンクアームbの突起部b1が斜め上に向くようになる。これによって、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの展開時には、ブラケットアーム35a〜35dの突起部b1が第2スライド筒体23の下端部を上に押し上げ、ブラケットアーム36a,36bの突起部b1が第1スライド筒体22の下端部を上に押し上げるようになっている。
【0024】
また、図2(b)に示すように、一対の第1のアーム部材31a,31bは、管内に挿入後に管軸方向両側へ延びて展開される。二対の(4つの)第2のアーム部材32a〜32dは、管内に挿入後に管軸方向と管径方向との間の放射方向に延びて展開される。一対の第3のアーム部材33a,33bは、管内に挿入後に管径方向両側へ延びて展開される。第1のアーム部材31a,31bは直線状に形成され、第2のアーム部材32a〜32dは所望の湾曲形状に形成され、第3のアーム部材33a,33bは更に湾曲した形状に形成されている。
【0025】
このような、アーム支持機構20の機能を説明する。先ず、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bを折りたたみ状態にする折りたたみ機構を備えている。この折りたたみ機構によると、第3スライド筒体24を支持軸10に沿って上方にスライドさせることによって、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの上端枢支部が上に引き上げられ、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bとブラケットアーム34a,34b、35a〜35d、36a,36bによるリンク機構が全て引き延ばされて支持軸10に沿って直線状になり、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bが支持軸10に沿って折りたたまれた状態になる(図1(b)参照)。折りたたみ操作を行うには、作業者は、支持軸10の上端部と第3スライド筒体24の操作部24Aとをそれぞれ持って第3スライド筒体24を支持軸10に対して上方に引き上げる。アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bが管内にある時に折りたたみ操作を行うために、第3スライド筒体24の操作部24Aは支持軸10に沿った管外部位に備えられている。
【0026】
一方、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bを展開状態にするには、第3スライド筒体24を支持軸10に沿って下方にスライドさせる。作業者は、支持軸10の上端部と第3スライド筒体24の操作部24Aをそれぞれ持って第3スライド筒体24を支持軸10に対して下方に引き下げる。これによって、ブラケットアーム34a,34b、35a〜35d、36a,36bの上端が支持軸10から離れるように展開し、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bを傘状に四方に展開させる。この際、ブラケットアーム35a〜35d,36a,36bは、下凸状に屈折して下部リンクアームbの突起部b1が斜め上に向くようになるので、ブラケットアーム35a〜35dの突起部b1が第2スライド筒体23の下端部を上に押し上げ、ブラケットアーム36a,36bの突起部b1が第1スライド筒体22の下端部を上に押し上げることになる。
【0027】
穿孔部から管内にアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bを折りたたんだ状態で挿入し、その後、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bを展開状態にして、支持軸10を引き上げた場合を説明する。この際、直線状の第1のアーム部材31a,31bを管軸方向に向けて配置し、最も湾曲した第3のアーム部材33a,33bを管径方向に向けて配置する。
【0028】
支持軸10を引き上げると、管内面の湾曲の最も大きい管径方向に向いた第3のアーム部材33a,33bが先ず管内面からの反力を受けることになり、当初の展開状態から先端が下方に移動して第3のアーム部材33a,33bは管内面の曲面に対応する。これに伴って、第3のアーム部材33a,33bを支持するブラケットアーム36a,36bは更に屈折した状態になり、ブラケットアーム36a,36bの突起部b1が第1スライド筒体22の下端部を上に押し上げる。これによって、第1スライド筒体22に枢支されたブラケットアーム35a〜35dが第2のアーム部材32a〜32dを上方にスライドさせることになり、第2のアーム部材32a〜32dが管内面からの反力を受けることになって、第2のアーム部材32a〜32dも管内面の曲面に対応することになる。そして、第2のアーム部材32a〜32dを支持するブラケットアーム35a〜35dは管内面からの反力で更に屈折した状態になり、ブラケットアーム35a〜35dの突起部b1が第2スライド筒体23の下端部を上に押し上げることになる。これによって、第2スライド筒体23に枢支されたブラケットアーム34a,34bが第1のアーム部材31a,31bを上方にスライドさせることになり、第1のアーム部材31a,31bが管内面からの反力を受けることになって、第1のアーム部材31a,31bも管内面に対応することになる。
【0029】
このように、アーム支持機構20によると、支持軸10を引き上げることによって、管内で展開されて管径方向に最も沿って配置される第3のアーム部材33a,33bが管内面からの反力を受けることで、当該アーム部材33a,33bより管軸方向に延びる別のアーム部材(第2のアーム部材32a〜32d)が支持された第1スライド筒体22を上方にスライドさせ、第2のアーム部材32a〜32dが管内面からの反力を受けることで、当該アーム部材32a〜32dより管軸方向に延びる別のアーム部材(第1のアーム部材31a,31b)が支持された第2スライド筒体23を上方にスライドさせるので、管径方向から管軸方向に向けて各アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの支持位置を順次上方にシフトさせることになる。これによって、任意の曲率の管内面に対して、全てのアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの相対位置を曲率に応じて対応させることができる。
【0030】
次に、図3〜図5を参照して、上記構成の封止部材押さえ付け装置1Aを用いて、穿孔部の管内周囲に封止部材を押さえ付け、封止部材の管内面への固着を完了した後、封止部材押さえ付け装置1Aを撤去して、穿孔部に分岐配管が接続可能な状態にする穿孔部封止処理工法を説明する。
【0031】
対象となる被ライニング既設配管Pは、管路内面をライニング層としてシールホースP1が内張りされてなる既設配管である。まず、この既設配管Pの周囲に分岐接続用割スリーブ(支持部材)Sを装着する。分岐接続用割スリーブSは、下側分割体S1と、作業バッグ接続部S2aを有する上側分割体S2とからなり、分岐接続用割スリーブSを、既設配管Pを挟んで重ね合わせ締結具(ボルト・ナット)S3で結合する。さらに、作業バッグ接続部S2aにノーブロー作業バッグSNBを取り付ける。作業バッグ接続部S2aを通し穿孔機(不図示)を用いて穿孔部P2が穿設される。分岐接続用割スリーブSはそのまま残される。ノーブロー作業バッグSNBは、封止部材の押さえ付け工程を終えるまで取り付けられている。
【0032】
分岐接続用割スリーブSの取り付けに際し、上側分割体S2の穿孔部P2を取り囲む凹部にシールリングS4が取り付けられる。上側分割体S2と既設配管Pの外周面との間には、作業バッグ接続部S2aからの流体漏れが起きないように、穿孔部P2を囲んでシールリングS4が圧着されている。さらに、穿孔部P2におけるシールホースP1と既設配管Pとの間から流体漏れが起きないようにするために、以下に述べる穿孔部封止処理が行われる。以下の処理は、ノーブロー作業バッグSNB内の作業になる。これによって、穿孔部P2がノーブロー作業バッグで覆われることになるので、活管状態の管路に対して穿孔部P2から管内流体が噴出することなく作業を行うことができる。
【0033】
(封止部材押さえ付け装置1Aの挿入、アーム部材の展開)
封止部材押さえ付け装置1Aについて、第1〜第3のアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bを折りたたみ状態にして穿孔部P2を通し、管内に挿入後は展開する(図3(a),(b)参照)。この際のアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの折りたたみ及び展開は、前述したように、支持軸10に対して第3スライド筒体24を上下にスライド操作することで行われる。
【0034】
(封止部材の挿入)
次いで、例えば図5に示す封止部材40を穿孔部P2に通して管内に配置する。この封止部材40は、弾性変形可能なゴム製部材で一体成形されてなる封止部材本体41と、封止部材40本体のフランジ部の上面外周部に設けられたシール部42とからなる。シール部42は2層のゴムリング42aとスポンジリング42bとからなる。封止部材本体41は、中央孔を形成する筒状部41aと、筒状部41aの下端から直径方向外方へ張り出す薄肉なフランジ部41bと、フランジ部41bの上面外周部に立ち上がる周壁部41cとを備えてなり、周壁部41cの内側に2つのゴムリング42aが2層に積み重ねた状態に接着配置され、さらに内側にスポンジリング42bが接着配置される。フランジ部41b上に樹脂充填空間が形成されることになる。
【0035】
この封止部材40は、中央孔に支持軸10を通して、弾性変形されて縮径することで穿孔部P2に通して管内に位置される。この際、2層のゴムリング42aとスポンジリング42bを穿孔部P2の管内周囲面に対応位置させる。また筒状部41aを作業バッグ接続部S2aに位置させる。この状態で、封止部材40は第1〜第3のアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33b上で支持される。
【0036】
(封止部材の押さえ付け)
管内でアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bを展開した状態で、第1のアーム部材31a,31bを管軸方向に合わせ、支持軸10を引き上げて、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33b上に位置された封止部材40を穿孔部P2の管内周囲内面に押さえ付ける。この際、前述したアーム支持機構20の機能によって、アーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bは、任意の曲率の管内面に対して、管径方向から管軸方向に向けて支持位置が順次上方にシフトされることになり、曲率に対応してアーム部材31a,31b、32a〜32d、33a,33bの相対位置が保持される。これによって、任意の曲率の管内面に対して封止部材40を確実に押さえ付けることができる。
【0037】
(接着・封止処理)
作業バッグ接続部S2aからノーブロー作業バッグSNBを取り外し、作業バッグ接続部S2aの開口S2a’を、支持軸10を貫通させる支持軸固定蓋55で封止する。開口S2a’に樹脂注入ノズル54の先端を挿入し、作業バッグ接続部S2aの内周面と封止部材40の筒状部41aの外周面とで囲む空間及び管内面とフランジ部41bとシール部42とで穿孔部P2を囲む空間からなる樹脂充填空間に樹脂を充填する(図5(a)参照)。これにより、シールホースP1の剥がれ部分は、充填される樹脂によって完全に覆われることになる。また、穿孔部P2の管内及び管外の周辺が、充填される樹脂によって覆われることになるので、穿孔部P2における漏洩現象を確実に防止することができる。
【0038】
その後は、樹脂の硬化養生後、再び作業バッグ接続部S2aにノーブロー作業バッグSNBを取り付け、支持軸固定蓋55を取り外し、アーム部材を折りたたんで封止部材押さえ付け装置1Aを管外に取り除く(図5(b)参照)。更には、必要に応じて、仮プラグ56を作業バッグ接続部S2aに取り付けて、一連の作業を終了する(図5(c)参照)。
【0039】
このような分岐配管取り出し部の穿孔部封止処理工法によれば、封止部材押さえ付け装置1Aを用いることにより、被ライニング既設管路Pが活管状態において穿孔部P2の確実な封止処理を行うことができ、ライニング層の穿孔部P2を介した漏洩を回避できる。また、管径が異なる複数種類の既設配管Pに対して、1つの封止部材押さえ付け装置1Aの適用ができる汎用性を有する。
【0040】
なお、上述した分岐配管取り出し部の穿孔部封止処理工法は、図1(a),(b)に示す封止部材押さえ付け装置1Aを用いる場合に限定されるものではなく、支持軸と、該支持軸の下部に設けられたアーム支持機構と、該アーム支持機構に設けられた折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材とを有する封止部材押さえ付け装置を用いて、同様の穿孔部封止処理を行うことができる。ここでは、前述したアーム部材が6つであっても良く、この場合はアーム支持機構が三重軸構造になる。
【0041】
図6(a),(b)は、本発明の他の実施形態に係る封止部材押さえ付け装置1Bを示している。封止部材押さえ付け装置1Bは、例えば、分岐配管が撤去された後の穿孔部P2に対応させ、封止部材90の周縁部を管内面へ押さえ付けるために使用される。
【0042】
封止部材押さえ付け装置1Bは、支持軸60と、支持軸60の下部に装備された、中心軸70aとスライド筒体70bとからなる2軸スライド構造のアーム支持機構70と、アーム支持機構70に支持され、支持軸60の周りの異なる方向にそれぞれ延びる6つのアーム部材81〜86とを有してなる。このアーム部材81〜86上には、管内周囲の内面に押さえ付けられる後述の封止部材90(図10参照)が支持されることになる。
【0043】
封止部材押さえ付け装置1Bは、図7(a),(b)に示す第1組立体1B’と、図8(a),(b)に示す第2組立体1B”とが組み合わされた構造である。第1の組立体1B’は、支持軸60と一体の中心軸70aと4つのアーム部材81〜84とで構成され、第2組立体1B”は、スライド筒体70bと2つのアーム部材85,86とで構成されている。
【0044】
図7(a),(b)に示す第1組立体1B’について説明する。支持軸60は、全長にねじが形成されかつ方向明示用のキー溝60aが形成されている。支持軸60は、施工時に封止部材押さえ付け装置1Bを吊り下げる際にナットが螺合されて、後述する支持部材に管外から引き上げ可能に支持される。
【0045】
アーム支持機構70を構成する中心軸70aは、支持軸60の下端に径を一段大きくして一体に延在している。中心軸70aの下端面にねじ孔70a’が設けられている。
【0046】
アーム部材81〜84は、中心軸70aの外面上部より水平に延びる基端側アーム半部81a〜84aと、枢着手段(図では小ねじとナット)81b〜84bにより基端側アーム半部81a〜84aの先端に枢着され水直面内に揺動可能な張出側アーム半部81c〜84cと、張出側アーム半部81c〜84cに付設された当て金81d〜84dとからなる。張出側アーム半部81c〜84cの先端には係止突起81c”〜84c”を備えている。張出側アーム半部81c〜84cの、枢着手段81b〜84bよりも中心軸寄り張出部分81c’〜84c ’は、張出端に向かって所要の楔形状になっていて、後述する扇状鍔部70cの下側に対応し該扇状鍔部70cを持ち上げる役目を果たす。
【0047】
図8(a),(b)に示す第2組立体1B”について説明する。アーム支持機構70を構成するスライド筒体70bは、中心軸70aを上方から収容して該中心軸70aに対しスライド自在に被嵌される。スライド筒体70bの外周面上端には、一対の扇状鍔部70cが固設されている。また、スライド筒体70bには、4つの基端側アーム半部81a〜84aを通すためのスリット70dが設けられている。
【0048】
アーム部材85,86は、スライド筒体70bの外面上部より水平に延びる基端側アーム半部85a,86aと、枢着手段(図では小ねじとナット)85b,86bにより基端側アーム半部85a,86aの先端に枢着され水直面内に揺動可能な張出側アーム半部85c,86cと、張出側アーム半部85c,86cに付設された当て金85d,86dとからなる。張出側アーム半部85c,86cの先端には係止突起85c”,86c”を備えている。基端側アーム半部85a,86aは、扇状鍔部70cの中央下面に接して水平に張出して固設されている。張出側アーム半部85c,86cの、枢着手段85b,86bよりも中心軸寄り張出部分85c’,86c’は、張出端に向かって所要の楔形状になっていて、扇状鍔部70cの下側に当接して張出側アーム半部85c,86cを水平状態に保持する役目を果たす。
【0049】
図6(a),(b)によって、更に説明する。スライド筒体70bが中心軸70aに対して下方から嵌合され、平座金70eが中心軸70aの端面に重ねられ、中心軸70aの端面に螺孔されたねじ孔に小ねじ70fがねじ込み固定され、スライド筒体70bが離脱不可に組み立てられている。
【0050】
アーム部材81〜86は、平面視して60°毎に異なる方向に延びている。4つのアーム部材81〜84は、管内に挿入後に管軸方向と管径方向との間の放射方向に延びて拡径される。2つのアーム部材85,86は、管内に挿入後に管軸方向両側へ延びて水平に拡径される。アーム部材81〜86の管内における方向は、支持軸60に形成されたキー溝60aの方向を正しくセットすることで決められる。キー溝60aを管軸方向に向けると、2つのアーム部材85,86の放射方向が管軸方向に一致する。
【0051】
一対の扇状鍔部70cは、基端側アーム半部82aと83aとの間に対応し、並びに基端側アーム半部81aと84aとの間に対応している。基端側アーム半部81a〜84aは、一対の扇状鍔部70cに干渉しない近傍の挟む位置に対応していて、中心軸70aとスライド筒体70bとの相対スライドが保障されている。スライド筒体70bは、中心軸70aに設けられた張出側アーム半部81c〜84cがスライド筒体70bに形成されたスリット70dの下端に当接するまで、中心軸70aに対して相対的に上昇スライド可能である。
【0052】
張出側アーム半部81c〜86cは、スライド筒体70bが持ち上がらない状態、すなわち、中心軸70aの下端とスライド筒体70bの下端とが一致している状態では、略同じ高さにかつ水平状態になる。張出側アーム半部81c〜86cは、上方向には垂直状態に持ち上がり可能である。これにより、全体としてのアーム部材81〜86は、折りたたみ及び展開自在であり、折りたたみ状態で穿孔部P2に通せる構成である。
【0053】
張出側アーム半部85c,86cは、下方向には下がらない。すなわち、水平状態のとき、張出側アーム半部81c〜84cの中心軸寄り張出端が扇状鍔部70cの下面に当接するので、該張出端が下がらないようになっている。
【0054】
当て金81d〜86dは、封止部材90の周縁部のシール部分92を押さえ付けることができるように該シール部分92に対応した円弧状である。係止突起81c”〜86c”は、封止部材90の周縁部に開けられた小孔に下面から突入され該周縁部を保持する役目を果たす。
【0055】
張出側アーム半部81c〜84cは、下方向には、放射方向の張出端が水平張出状態より所要寸法下がったときに、反対側の中心軸寄り張出端が扇状鍔部70cの下面に当接し、さらに放射方向の張出端が下がると、反対側の中心軸寄り張出端が扇状鍔部70cを持ち上げることになる。張出側アーム半部81c〜84cの放射方向の張出端の揺動ストロークは、管径が大小異なる被ライニング既設配管Pに当該封止部材押さえ付け装置1Bを使用する場合における使用時揺動ストロークよりも大きく確保されている。
【0056】
扇状鍔部70cはスライド筒体70bより設けられているから、扇状鍔部70cが張出側アーム半部81c〜84cの中心軸寄り張出端により持ち上げられると、スライド筒体70bが一体に上方にシフトする。スライド筒体70bが上方にシフトすると、スライド筒体70bに設けられたアーム部材85,86が一体に上方にシフトする。従って、張出側アーム半部85c,86cは、水平状態を保ったまま上方にシフトする。
【0057】
これにより、管内で各アーム部材81〜86を展開状態にして支持軸60を引き上げると、管径方向に最も沿って配置されているアーム部材81〜84の4つの張出側アーム半部81c〜84cが先ず管内面からの反力を受けることになり、これによって、張出側アーム半部81c〜84cの先端が押し下げられ、張出側アーム半部81c〜84cの中心軸寄り張出端が上に向けられるので、この中心軸寄り張出端により扇状鍔部70cが持ち上げられて、スライド筒体70bが上方にシフトする。支持軸60が更に引き上げられるに連れて、スライド筒体70bの持ち上がりシフト量が大きくなり、張出側アーム半部85c,86cの放射方向の張出端も管内面から反力を受けるようになる。
【0058】
このように、アーム支持機構70によると、支持軸60を引き上げることによって、管内で展開されて管径方向に最も沿って配置されるアーム部材81〜84が管内面からの反力を受けることで、当該アーム部材81〜84より管軸方向に延びる別のアーム部材85,86が支持されたスライド筒体70aを上方にスライドさせ、アーム部材85,86が管内面からの反力を受けることになる。すなわち、管径方向に最も沿って配置されているアーム部材81〜84が管内面からの反力を受けると、管径方向から管軸方向に向けて各アーム部材81〜86の支持位置を順次上方にシフトさせて、任意の曲率の管径に対しても全てのアーム部材が管内面から反力を受けることになる。これによって、任意の曲率の管内面に対して、全てのアーム部材81〜84の相対位置を曲率に応じて対応させることが可能になる。
【0059】
次に、上記構成の封止部材押さえ付け装置1Bを用いて、穿孔部P2の管内周囲に封止部材90を押さえ付ける穿孔部封止処理工法を図9〜図13を参照して説明する。
【0060】
図9に示すように、シールホースP1が内張りされた既設配管Pの外周に、穿孔箇所を気密に囲むように台座装置Kが装着され、さらに台座装置Kの開口部外周にノーブロー作業バッグSNBが取り付けられ、ノーブロー作業バッグSNB内での作業で、穿孔部P2から分岐継ぎ手等を取り除く作業が行われる。
【0061】
(固定ブッシュ95と封止部材90と封止部材押さえ付け装置1Bとの組み付け)
図10(a)に示すように、先に封止部材90と封止部材押さえ付け装置1Bとを組み付けてから固定ブッシュ95に組み付ける(図10(a)、図11参照)。封止部材90は、アーム部材81〜86上に支持されることになる。次に、封止部材90と封止部材押さえ付け装置1Bを折りたたみ状態にする(図10(b)参照)。
【0062】
詳述すると、まず、封止部材押さえ付け装置1Bについて、アーム部材81〜86を水平に放射方向に延ばし、支持軸60を封止部材90の中央孔に通し、支持軸60にパッキン・座金(不図示)を被嵌しナット97を螺合して、ナット97を封止部材90の中央孔の周囲を中心軸70aの段部端面に強く締め付けて中央孔の封止を行うとともに、張出側アーム半部81c〜86cの先端の係止突起81c”〜86c”を封止部材90の周縁部に開けられた小孔に下面から突入し係止する。次に、張出側アーム半部81c〜86cを上側に略直角に折り曲げることにより、アーム部材81〜86を折りたたみ状態にする(図10(b)参照)。これにより、封止部材90も折り曲げられ縮径状態になる。封止部材90は、ここでは、一旦設置した後の取り外しを考慮していないので、開方向に常時付勢されて折りたたみ状態で穿孔部P2を通過後に付勢力で開放状態に保持されるものが用いられる。アーム部材81〜86を折りたたみ状態に保ち、固定ブッシュ95の段差上面部に渡し板96を置いて、この渡し板96の孔に下方から支持軸60を通し、張出側アーム半部81c〜86cを固定ブッシュ95の下端開口内に入れて、支持軸60に螺合するナット98を渡し板96の所まで螺動する。
【0063】
(固定ブッシュ95の取付け)
固定ブッシュ95に組み付けた封止部材90と封止部材押さえ付け装置1Bをノーブロー作業バッグSNB内に収容し、固定ブッシュ95を穿孔部P2にねじ込む(図9(a)参照)。これにより、封止部材90と封止部材押さえ付け装置1Bを管内に位置させ、固定ブッシュ95を穿孔部P2に捩じ込む。これには、固定ブッシュ95に気密キャップ93を被せて、台座装置K及びノーブロー作業バッグSNBを取り外し、工具100を用いて固定ブッシュ95を完全に穿孔部P2に取り付ける(図9(b)参照)。
【0064】
(アーム部材81〜86を拡径状態にする)
固定ブッシュ95の取り付けが完了すると、再び、台座装置Kとノーブロー作業バッグSNBを装着する。ノーブロー作業バッグ内作業で、ナット97を緩めて支持軸60を下げていき、張出側アーム半部81c〜86cを固定ブッシュ95の下端開口から脱出させる。すると、封止部材90の弾性復元力により張出側アーム半部81c〜86cが略水平に放射方向に展開し、アーム部材81〜86は展開状態になる(図9(c)参照)。
【0065】
(アーム部材81〜86で封止部材90を押さえ付ける)
外方から固定ブッシュ95の開口内に規制筒103を通し、規制筒103の下端のスリットに固定ブッシュ95の段部に載置した渡し板96を嵌合させ、キー溝60aの方向を管軸方向に合わせ、規制筒103を固定ブッシュ95の外側の台座装置Kに締結固定し(不図示)、これにより、アーム部材85,86を管軸方向に合わせる。次いで、規制筒103の内側にレンチを通して(不図示)ナット98を締めていき支持軸60を引き上げていく。すると、アーム部材81〜84の張出側アーム半部81c〜84cが封止部材90のシール92を管内面へ押さえ付け始め、その反力で、張出側アーム半部81c〜84cの放射方向の張出端が上昇停止され傾斜を開始し、中心軸寄り張出端が扇状鍔部70cの下面に接近していき。さらに支持軸60の引き上げていくと、張出側アーム半部81c〜84cの中心軸寄り張出端が扇状鍔部70cの下面に当接し扇状鍔部70cを持ち上げていくことになる。扇状鍔部70cが持ち上がり始めると、アーム部材85,86が持ち上がっていく。支持軸60の引き上げを続行すると、終には、アーム部材85,86の張出側アーム半部85c,86cが封止部材90のシール92を管内面へ押さえ付けることになる。支持軸60の引き上げがきつくなった時点で、6つのアーム部材81〜86が封止部材90を管内面に押さえ付ける状態が完了する(図11(a)参照)。当て金81d〜86dは、封止部材90の周縁部のシール部分92を均等に押さえ付けることができる(図11(b)参照)。
【0066】
(接着・封止処理)
次に、作業バッグ接続部S2aからノーブロー作業バッグSNBを取り外し、樹脂注入ノズル99を固定ブッシュ95内に挿し込んで樹脂101を充填させる(図12(a)参照)。これにより、シールホースP1の剥がれ部分は、充填される樹脂によって完全に覆われることになる。その後は、樹脂の硬化養生後、必要に応じて、プラグ102を固定ブッシュ95に取り付けて、一連の作業を終了する(図12(b)参照)。
【0067】
上述した分岐配管埋め殺し部の穿孔部封止処理工法によれば、封止部材押さえ付け装置1Bを用いることにより、被ライニング既設管路Pが活管状態において穿孔部P2の確実な封止処理を行うことができ、ライニング層の穿孔部P2を介した漏洩を回避できる。また、管径が異なる複数種類の既設配管について、1つの封止部材押さえ付け装置1Bの適用ができる汎用性を有する。
【0068】
なお、上述した分岐配管取り出し部の穿孔部封止処理工法は、図6(a),(b)に示す封止部材押さえ付け装置1Bを用いる場合に限定されるものではなく、支持軸と、該支持軸の下部に設けられたアーム支持機構と、該アーム支持機構に設けられた折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材とを有する封止部材押さえ付け装置を用いて、穿孔部封止処理を行うことができる。
【0069】
前述した封止部材押え付け装置1A、1Bは、いずれも、穿孔部P2を介して管外から管内にセットでき、ノーブロー作業バッグSNBを用いることで、被ライニング既設配管Pの穿孔部P2に対して活管状態を維持したままで穿孔部P2の確実な封止処理を行うことができ、ライニング層の穿孔部P2を介した漏洩を回避することができる。
【0070】
また、封止部材押え付け装置1A、1Bは、いずれも、ライニング処理が施された既設配管Pを対象としており、以上の説明では、管内面にシールホースP1が内張りされた既設配管Pを例に挙げて説明しているが、ライニング処理としては、内張反転シール工法、樹脂ライニング工法等によって管内面にライニング層が形成される処理であればどのような処理であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る封止部材押さえ付け装置を示す説明図である(同図(a)はアーム部材が展開状態である管軸方向からみた正面図、同図(b)はアーム部材が折りたたみ状態である正面図である。)。
【図2】本発明の一つの実施形態に係る封止部材押さえ付け装置を示す説明図である(同図(a)はアーム部材が展開状態である管径方向からみた正面図、同図(b)は同図(a)におけるIIb−IIb断面図である。)。
【図3】図1に示す実施形態に係る封止部材押さえ付け装置を用いて行われる、本発明の実施形態に係る穿孔部封止処理工法を示す説明図である。
【図4】同図(a)は図3に示す穿孔部封止処理工法に用いる封止部材を示す平面図、同図(b)は(a)におけるIVb−IVb断面図である。
【図5】図3の穿孔部封止処理工法の続きの工程を示す説明図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る封止部材押さえ付け装置を示す説明図である(同図(a)はアーム部材が展開状態である平面図、同図(b)は正面図である。)。
【図7】同図(a)は図6の封止部材押さえ付け装置を構成する第1組立体の平面図、(b)は正面図である。
【図8】同図(a)は図6の封止部材押さえ付け装置を構成する第2の組立体の平面図、同図(b)は正面図である。
【図9】図6に示す実施形態に係る封止部材押さえ付け装置を用いて行われる、本発明の実施形態に係る穿孔部封止処理工法を示す説明図である。
【図10】図9の穿孔部封止処理工法で準備する、図6の封止部材押さえ付け装置と封止部材と固定ブッシュとの組み立て状態の説明図である。
【図11】封止部材押さえ付け装置と封止部材とを組み付けた状態の説明図である(同図(a)が封止処理部の部分断面図、同図(b)が下面図である。)。
【図12】図9の穿孔部封止処理工法の続きの工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
P 被ライニング既設配管
P2 穿孔部
1A、1B 封止部材押さえ付け装置
10,60 支持軸
20,70 アーム支持機構
22,23,24,70b スライド筒体
31a,31b、32a〜32d、33a,33b、81〜86 アーム部材
34a,34b、35a〜35d、36a,36b ブラケットアーム
40,90 封止部材
81a〜86a 基端側アーム半部
81c〜86c 張出側アーム半部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ライニング既設配管の穿孔部を気密封止するために、前記穿孔部の内面に封止部材を押さえ付ける封止部材押さえ付け装置であって、
管外から引き上げ可能に支持され、前記穿孔部を通して下部が管内に挿入される支持軸と、
前記支持軸の下部に装備され、該支持軸に沿ってスライド自在のスライド筒体を単数又は複数備えたアーム支持機構と、
該アーム支持機構に支持され、前記支持軸の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材と、
該アーム部材上に支持されて、前記管内周囲の内面に押さえ付けられる封止部材とを備え、
前記アーム支持機構は、
前記支持軸を引き上げることによって、管内で展開されて管径方向に最も沿って配置される前記アーム部材が管内面からの反力を受けることで、当該アーム部材より管軸方向に延びる別のアーム部材が支持された前記スライド筒体を上方にスライドさせ、管径方向から管軸方向に向けて各アーム部材の支持位置を順次上方にシフトさせることを特徴とする穿孔部内面への封止部材押さえ付け装置。
【請求項2】
前記アーム部材は、折りたたみ時に前記穿孔部を通して管外から管内に挿入可能であることを特徴とする請求項1記載の穿孔部内面への封止部材押さえ付け装置。
【請求項3】
前記アーム支持機構は、
前記アーム部材を管内で折りたたみ状態にする折りたたみ機構を備え、当該折りたたみ機構の操作部が前記支持軸に沿った管外部位に備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の穿孔部内面への封止部材押さえ付け装置。
【請求項4】
管内面にライニング層が形成された被ライニング既設配管を対象として、管及びライニング層の穿孔部に対して分岐配管の接続が可能な状態で封止処理する穿孔部封止処理工法であって、
支持軸と、該支持軸の下部に装備されたアーム支持機構と、該アーム支持機構に支持され、前記支持軸の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材とを備えた封止部材押さえ付け装置を用い、
前記複数のアーム部材を折りたたみ状態にして前記穿孔部を通し管内に挿入し、その後前記複数のアーム部材を展開状態にする工程と、
前記穿孔部を通して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成すると共に、中央孔を形成する筒状部を有する封止部材を、前記中央孔に前記支持軸を通して管内に挿入し、展開された前記アーム部材上に位置させる工程と、
前記支持軸を引き上げて、前記アーム支持機構によって任意の管内径に前記アーム部材の相対位置を対応させ、前記封止部材を前記穿孔部の管内周囲に押さえ付ける工程と、
前記封止部材が形成する樹脂充填空間に樹脂を充填して、前記穿孔部の端部全周を前記樹脂で封止する工程と、
前記アーム部材を折りたたみ状態にして、前記中央孔を通して前記封止部材押さえ付け装置を管外へ撤去する工程と、
を有することを特徴とする穿孔部封止処理工法。
【請求項5】
管内にライニング層が形成された被ライニング既設配管を対象にして、管及びライニング層の穿孔部に対して、分岐継手等を取り除いた状態で封止処理する穿孔部封止処理工法であって、
支持軸と、該支持軸の下部に装備されたアーム支持機構と、該アーム支持機構に支持され、前記支持軸の周りの異なる方向にそれぞれ延びる、折りたたみ及び展開自在な複数のアーム部材とを備えた封止部材押さえ付け装置を用い、
前記穿孔部を通して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成する封止部材を、前記アーム部材上に配備して、前記複数のアーム部材を折りたたみ状態にして前記穿孔部を通し管内に挿入し、その後前記複数のアーム部材を展開状態にする工程と、
前記支持軸を引き上げて、前記アーム支持機構によって任意の管内径に前記アーム部材の相対位置を対応させ、前記封止部材を前記穿孔部の管内周囲に押さえ付ける工程と、
前記封止部材が形成する樹脂充填空間に樹脂を充填して、前記穿孔部の端部全周を前記樹脂で封止する工程と、
を有することを特徴とする穿孔部封止処理工法。
【請求項6】
前記封止部材を前記穿孔部の管内周囲に押さえ付ける工程迄を、前記穿孔部を覆うノーブロー作業バッグ内で行うことを特徴とする請求項4又は5に記載された穿孔部封止処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−264414(P2009−264414A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111438(P2008−111438)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(593080294)株式会社カンドー (20)
【Fターム(参考)】