説明

突き上げカム装置

【課題】被加工部材や各構成部材に対する負荷の意図しない急激な増大によって各構成部材が破損することを防止することができる突き上げカム装置を提供すること。
【解決手段】突き上げカム装置1は、Z方向に移動自在なカムドライバ2と、X方向に移動自在であると共にカムドライバ2に摺動自在に接触しており、当該カムドライバ2のZ1方向の移動においてX方向に移動するカムスライド3と、Z方向に移動自在であると共にカムスライド3に摺動自在に接触しており、当該カムスライド3のX方向の移動においてZ2方向に移動するカムスライド4と、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4の夫々を移動自在に支持する支持手段5と、カムスライド3を初期位置に復帰させる復帰機構6と、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4間において伝達される移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断する可圧縮ばね7とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のパネルを加工するカム装置であって、加工用の工具を備えるカムスライドを、下から上に突き上げることにより曲げ加工等を行う突き上げカム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び2においては、移動金型によって上下移動されるドライバユニットと、このドライバユニットの傾斜カム面によって水平方向に移動される水平スライドユニットと、この水平スライドユニットの水平移動により上下方向に移動されると共に加工用の工具取付面を有する上下スライドユニットと、前記水平スライドユニットを元の位置に復帰させる弾性手段(復帰機構)と、これらのカム機構を有底矩形筒状のホルダユニットにおける略矩形状のカム収納空間内に収納してなる突き上げカム装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−302412号公報
【特許文献2】特開2008−307546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、斯かる突き上げカム装置では、ドライバユニット、水平スライドユニット及び上下スライドユニット等の各構成部材の移動量の微少誤差や当該カム装置に取り付けられた加工具のオフセット位置の変更や当該カム装置の構成部材間や金型と被加工部材の間への異物の介在等により被加工部材や当該各構成部材に意図しない負荷の増大を生じて破損や延いては金型自体まで損傷する虞がある。
【0005】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工部材や各構成部材に対する設計値以上の負荷の意図しない急激な増大によって、各構成部材の破損や金型まで破損が及ぶことを防止することができる突き上げカム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の突き上げカム装置は、上下方向に移動自在なカムドライバと、横方向に移動自在であると共にカムドライバに摺動自在に接触しており、当該カムドライバの下方向の移動において横方向に移動する横方向カムスライドと、上下方向に移動自在であると共に横方向カムスライドに摺動自在に接触しており、当該横方向カムスライドの横方向の移動において上方向に移動する上下方向カムスライドと、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライドの夫々を移動自在に支持する支持手段と、横方向カムスライドを初期位置に復帰させる復帰機構と、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライド間において伝達される移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断する可圧縮ばねとを具備している。
【0007】
本発明の突き上げカム装置によれば、特に、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライド間において伝達される移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断する可圧縮ばねを具備しているために、夫々移動されるカムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライドの移動量の微少誤差や上下方向カムスライドに対する加工具のオフセット位置の変更、異物の介在等により、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライド間において伝達される移動力が予め設定された所定の移動力を超える際には、可圧縮ばねが弾性的に縮められることにより所定の移動力を超える分の力の伝達が遮断され、カムドライバと横方向カムスライド間及び横方向カムスライドと上下方向カムスライド間に与えられる移動力が所定の移動力を超えることがないため、被加工部材やカムドライバ、横方向カムスライド、上下方向カムスライド、支持手段、復帰機構等の各構成部材に対する設計値以上の意図しない負荷の急激な増大が生じる虞をなくし得、斯して各構成部材が破損することを防止することができる。
【0008】
本発明の突き上げカム装置では、カムドライバは、プレス金型装置の上型から与えられる下方向の移動力に基づいて下方向に移動するようになっており、可圧縮ばねは、前記上型からカムドライバに下方向の移動力を伝達するように当該上型及びカムドライバ間に介在されると共に、上型からカムドライバに所定の移動力を超える下方向の移動力が発生した際には下方向において弾性的に縮められることにより上型からカムドライバへの所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっていてもよく、斯かる場合には、可圧縮ばねは、カムドライバ又は前記上型に装着可能であってもよい。このような突き上げカム装置によれば、上型から可圧縮ばねを介してカムドライバに伝達される下方向の移動力が予め設定された所定の移動力を超える際には、可圧縮ばねが下方向において弾性的に縮められることにより上型からカムドライバへの所定の移動力を超える分の力の伝達が遮断され、カムドライバから横方向カムスライド及び横方向カムスライドから上下方向カムスライドに順次与えられる移動力が所定の移動力を超えることがないため、被加工部材やカムドライバ、横方向カムスライド、上下方向カムスライド、支持手段、復帰機構等の各構成部材に対する設計値以上の意図しない負荷の急激な増大が生じる虞をなくし得、斯して各構成部材が破損することを防止することができる。
【0009】
本発明の突き上げカム装置では、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライドのうちの少なくとも一つは、当該カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライド間において伝達される移動力に基づいて移動される第一移動部材と、前記移動力に基づいて第一移動部材に対して相対的に移動されるように隙間をもって配されている第二移動部材と、前記第一移動部材と前記第二移動部材との当該隙間を介して配されている前記可圧縮ばねとを具備しており、可圧縮ばねは、第一移動部材及び第二移動部材間において伝達される前記移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっていてもよい。このような突き上げカム装置によれば、夫々移動されるカムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライドの移動量の微少誤差や上下方向カムスライドに対する加工具のオフセット位置の変更や異物の介在等により第一移動部材及び第二移動部材間において伝達する移動力が予め設定された所定の移動力を超える際には、移動力が与えられる第一移動部材及び第二移動部材のうちの一方は、可圧縮ばねが弾性的に縮められることにより第一移動部材及び第二移動部材のうちの他方に対して隙間分移動を生じ、これにより第一移動部材及び第二移動部材間の移動力の所定の移動力を超える分の力の伝達が遮断されるため、被加工部材やカムドライバ、横方向カムスライド、上下方向カムスライド、支持手段、復帰機構等の各構成部材に対する設計値以上の意図しない負荷の急激な増大が生じる虞をなくし得、斯くして各構成部材が破損することを防止することができる。
【0010】
本発明の突き上げカム装置では、カムドライバが、前記第一移動部材、前記第二移動部材及び前記可圧縮ばねを具備しており、カムドライバの第一移動部材は、上下方向に移動自在であると共に横方向カムスライドに摺動自在に接触しており、カムドライバの第二移動部材は、上下方向に移動自在であり、カムドライバの第一移動部材に対して上下方向における隙間をもって配されていると共に当該第一移動部材に対して上方向に突出している突出部を有しており、可圧縮ばねは、前記第一移動部材と第二移動部材との隙間を介して配されており、カムドライバの第一移動部材及び第二移動部材間において伝達する上下方向の移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて第一移動部材及び第二移動部材間の上下方向の所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっていてもよい。
【0011】
本発明の突き上げカム装置では、上下方向カムスライドが、前記第一移動部材、前記第二移動部材及び前記可圧縮ばねを具備しており、上下方向カムスライドの第一移動部材は、上下方向に移動自在であると共に横方向カムスライドに摺動自在に接触しており、上下方向カムスライドの第二移動部材は、上下方向に移動自在であり、上下方向カムスライドの第一移動部材に対して上下方向における隙間をもって配されていると共に当該第一移動部材に対して上方向に突出している突出部を有しており、可圧縮ばねは、前記第一移動部材と第二移動部材との隙間を介して配されており、上下方向カムスライドの第一移動部材及び第二移動部材間において伝達する上下方向の移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて第一移動部材及び第二移動部材間の上下方向の所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっていてもよい。
【0012】
本発明の突き上げカム装置では、横方向カムスライドが、前記第一移動部材、前記第二移動部材及び前記可圧縮ばねを具備しており、横方向カムスライドの第一移動部材は、横方向に移動自在であると共にカムドライバに摺動自在に接触しており、横方向カムスライドの第二移動部材は、横方向に移動自在であり、横方向カムスライドの第一移動部材に対して横方向における隙間をもって配されていると共に上下方向カムスライドに摺動自在に接触しており、可圧縮ばねは、前記第一移動部材と第二移動部材との隙間を介して配されており、横方向カムスライドの第一移動部材及び第二移動部材間において伝達する横方向の移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて第一移動部材及び第二移動部材間の横方向の所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっていてもよい。
【0013】
本発明の突き上げカム装置では、可圧縮ばねは、ガススプリングからなっていてもよく、また、ガススプリングの他にゴム等の弾性体や巻きばねからなっていてもよい。前記ガススプリングは、シリンダと、このシリンダに対して移動自在なピストンロッドと、ピストンロッドの移動に基づいて圧縮されるようにシリンダ内に充填された不活性ガスとを具備していてもよく、斯かる場合には、不活性ガスが周囲の温度等の環境変化にほとんど影響されないので、前記所定の移動力をより正確に設定し得、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライド間において伝達される移動力が所定の移動力を超える際にも当該ガススプリングを繰り返し安定して動作させ得る。シリンダ内の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス又はこれらのガスの混合ガスであってもよく、斯かる場合には、不活性ガスに加えられる初期圧力をより高圧に設定し得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被加工部材や各構成部材に対する設計値以上の意図しない負荷の急激な増大によって当該各構成部材の破損や金型まで破損が及ぶことを防止することができる突き上げカム装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の例の一部展開斜視説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の断面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の平面説明図である。
【図4】図4は、図2に示す例のIV−IV線矢視断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の動作説明図である。
【図6】図6は、図1に示す例の主に可圧縮ばねの動作説明図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の他の例の断面説明図である。
【図8】図8は、突き上げカム装置の工具取付部に取り付けられた加工具の動作説明図である。
【図9】図9は、図2に示すカムドライバに代えて用いられる他のカムドライバの説明図である。
【図10】図10は、図2に示す上下方向カムスライドに代えて用いられる他の上下方向カムスライドの説明図である。
【図11】図11は、図2に示す横方向カムスライドに代えて用いられる他の横方向カムスライドの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【実施例】
【0017】
図1から図6において、プレス金型装置の下型や基台に配設されて用いられる本例の突き上げカム装置1は、上下方向としてのZ方向に移動自在なカムドライバ2と、Z方向に対して直交する横方向としてのX方向に移動自在であると共にカムドライバ2に摺動自在に接触しており、当該カムドライバ2の下方向としてのZ1方向の移動においてX1方向に移動する横方向カムスライド3(以下、カムスライド3と称する)と、Z方向に移動自在であると共にカムスライド3に摺動自在に接触しており、当該カムスライド3のX1方向の移動において上方向としてのZ2方向に移動する上下方向カムスライド4(以下、カムスライド4と称する)と、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4の夫々を移動自在に支持する支持手段5と、カムスライド3を図2に示す初期位置に復帰させる復帰機構6と、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4間において伝達される移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断する可圧縮ばね7とを具備している。
【0018】
可圧縮ばね7は、ゴム等の弾性体、巻きばね等からなってもよいが、本例ではガススプリング20からなる。
【0019】
カムドライバ2は、プレス金型装置の上型122から与えられる下方向としてのZ1方向の移動力に基づいてZ1方向に移動するようになっており、ガススプリング20は、前記上型122からカムドライバ2にZ1方向の移動力を伝達するように当該上型122の下面124とカムドライバ2の上面44との間に介在されると共に、上型122からカムドライバ2に所定の移動力を超えるZ1方向の移動力が発生した際にはZ1方向において弾性的に縮められることにより上型122からカムドライバ2への所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっている。
【0020】
支持手段5は、底壁11と、底壁11に取り付けられている前壁12及び後壁13と、X方向において前壁12及び後壁13間に配されていると共にX方向及びZ方向に直交するY方向において底壁11を間にして配されており、底壁11、前壁12及び後壁13に取り付けられている一対の側壁14及び15とを具備している。底壁11、前壁12、後壁13並びに側壁14及び15はボルト16を介して夫々互いに取り付けられている。底壁11、前壁12、後壁13並びに側壁14及び15は、カムドライバ2、並びにカムスライド3及び4を収容する空間を有する一つのカムホルダを形成している。底壁11の内面31は、カムスライド3にX方向に摺動自在に接しており、前壁12の内面32は、カムスライド4にZ方向に摺動自在に接しており、後壁13の内面33は、カムドライバ2にZ方向に摺動自在に接しており、側壁14及び15の内面34及び35は、カムドライバ2及びカムスライド4にZ方向に接していると共にカムスライド3にX方向に摺動自在に接している。底壁11には復帰機構6が装着されている。斯かる支持手段5は、カムドライバ2及びカムスライド4をZ方向に、カムスライド3をX方向に夫々案内するように形成されている。
【0021】
カムドライバ2は、後壁13の内面33並びに側壁14及び15の内面34及び35にZ方向に案内されるようにZ方向に摺動自在に接しているドライバ本体41と、Z方向に伸びる線に対して傾斜してドライバ本体41の底面46に形成されていると共にカムドライバ3に摺動自在に接している傾斜面42と、ガススプリング20が装着可能となるようにドライバ本体41の上部45に設けられた装着部43とを具備している。装着部43は、ドライバ本体41の上面44で開口し、当該ドライバ本体41内部で底部47に向かってZ1方向に伸びる途中で閉塞された凹所からなる。斯かる装着部43には後述のシリンダ21が嵌装される。傾斜面42は、後壁13側に向かうX2方向において底壁11に漸次接近するように傾斜している。尚、ドライバ本体41の後面48には、後壁13の内面33に対して凹状であってZ方向に伸びたスリット56が形成されており、後壁13の上端面51には、スリット56に配される突出部を有する係止部材57がボルト等により着脱自在に装着されている。スリット56はドライバ本体41の上面44において開口しており、ドライバ本体41の底面46に向かう途中において閉塞されている。係止部材57は、カムドライバ2が過度にZ2方向に移動した際にドライバ本体41のスリット56の閉塞面58に係合してそのZ2方向の移動を阻止するようになっており、これにより、カムドライバ2の支持手段5からの意図しない脱落を防止し得る。ドライバ本体41は、支持手段5に対してZ2方向に向かって部分的に突出している。
【0022】
斯かるカムドライバ2は、油圧ラム等の作動で上型122を介してZ1方向の移動力がガススプリング20を介してドライバ本体41に対して与えられると、後壁13、側壁14及び15の夫々の内面33、34及び35に案内されながらZ1方向に移動される。カムドライバ2のZ1方向の移動において傾斜面42はカムスライド3に対して一方向の後斜め下方向に摺動し、これによりカムスライド3はX方向において前壁12側に向かうX1方向の移動力を生じて図5に示すように当該X1方向に移動される。
【0023】
また、カムドライバ2は、X方向において後壁13側に向かうカムスライド3のX2方向の移動に基づいて、傾斜面42がカムスライド3に対して一方向と逆である他方向の前斜め上方向に摺動する際には、Z2方向の移動力が生じて当該Z2方向に移動し、図2に示す初期位置に復帰する。
【0024】
カムスライド3は、底壁11の内面31並びに側壁14及び15の内面34及び35にX方向に案内されるようにこれらにX方向に摺動自在に接しているスライド本体71と、X方向に伸びる線に対して傾斜してスライド本体71に形成されていると共にカムドライバ2の傾斜面42に摺動自在に接している傾斜面72と、傾斜面72に対して前壁12側に配されており、X方向に伸びる線に対して傾斜面72とは逆方向に傾斜していると共にカムスライド4に摺動自在に接している傾斜面73と、当該傾斜面73が形成されていると共にカムスライド4に傾斜面73に沿って摺動自在に係合するようにスライド本体71に配設された係合体74とを具備している。
【0025】
傾斜面72は、X2方向において底壁11に漸次接近するように傾斜しており、傾斜面73は、X1方向において底壁11に漸次接近するように傾斜している。
【0026】
係合体74は、例えば図4に示すように、断面略T字状であり、Y方向に突出した一対の係合突出部75及び76を有している。斯かる係合体74には、前記傾斜面73が形成されており、この傾斜面73においてカムスライド4に摺動自在に接している。
【0027】
斯かるカムスライド3は、カムドライバ2のZ1方向の移動に基づいて傾斜面72が傾斜面42に対して摺動されると、X1方向の移動力を生じて底壁11の内面31並びに側壁14及び15の内面34及び35に案内されながらX1方向に移動し、このX1方向の移動により傾斜面73をカムスライド4に対して摺動させて当該カムスライド4にZ2方向の移動力を与え、而して、カムスライド4をZ2方向に移動させるようになっている。
【0028】
カムスライド4は、前壁12の内面32並びに側壁14及び15の内面34及び35にZ方向に案内されるようにこれらにZ方向に摺動自在に接しているスライド本体81と、Z方向に伸びる線に対して傾斜していると共にカムスライド3の傾斜面73に摺動自在に接している傾斜面82と、当該傾斜面82が形成されていると共にカムスライド3の傾斜面73に摺動自在に係合されるようにスライド本体81に配設された被係合体83と、支持手段5からZ2方向に突出しているスライド本体81の上面92に工具取付部84とを具備している。傾斜面82はX1方向において底壁11に漸次接近するように傾斜している。尚、スライド本体81には、側壁14及び15の夫々の内面34及び35に対して凹状であってZ方向に伸びている一対の凹所86及び87が形成されており、側壁14の上端面52には、凹所86に配される突出部を有する係止部材88がボルト等により着脱自在に装着されており、側壁15の上端面53には、凹所87に配される突出部を有する係止部材89がボルト等により着脱自在に装着されている。係止部材88及び89は、カムスライド4が過度にZ方向に移動した際にスライド本体81の一対の凹所86及び87の夫々の下面92及び93に係合してそのZ2方向の移動を規制するようになっており、これにより、意図しないカムスライド4の支持手段5からの脱落を防止し得る。
【0029】
スライド本体81は、カムドライバ2のドライバ本体41に隣接しており、スライド本体81の後面95とドライバ本体41の前面49とのX方向における隙間には摺動プレート85が配されており、これにより、カムスライド4は、カムドライバ2に対してZ方向に移動自在となっている。摺動プレート85はスライド本体81の後面95にボルト等によって取り付けられており、カムドライバ2に対してZ方向に摺動自在となっている。
【0030】
被係合体83は、例えば図4に示すように、断面略L字状の一対のL字状部材90及び91からなり、L字状部材90及び91は、係合体74の係合突出部75及び76を夫々囲っている。斯かる被係合体83には、前記傾斜面82が形成されており、この傾斜面82においてカムスライド3の傾斜面73に摺動自在に接している。被係合体83が係合体74に係合されていると、カムスライド4はカムスライド3の傾斜面73に対して相対的に移動自在であるが、カムスライド4とカムスライド3との接触状態は維持される。
【0031】
斯かるカムスライド4は、カムスライド3のX1方向の移動に基づいて傾斜面82がカムスライド3の傾斜面73に対して摺動されると、Z2方向の移動力を生じて前壁12の内面32並びに側壁14及び15の内面34及び35に案内されながらZ2方向に移動し、而して、工具取付部84をZ2方向に移動させるようになっている。工具取付部84に取り付けられた曲げ刃等の加工具は、前記カムスライド4のZ2方向の移動に基づいて被加工部材121に曲げ加工等の加工を行い得る。
【0032】
復帰機構6は、一端部64が底壁11に固定されているX方向に伸びたロッド65と、ロッド65を取り巻いてロッド65と同心に配されたコイルばね66と、ロッド65の一端部64に固着されていると共にコイルばね66の一端部67側からの弾性伸長力を受容するばね受け68と、ばね受け68と協働してコイルばね66に初期圧縮力を与えると共にコイルばね66の他端部69側から受容する弾性伸長力をカムスライド3に伝達する伝達部材70とを具備している。伝達部材70は、ロッド65に対してX方向に移動自在であると共にカムスライド3のスライド本体71にボルト等により固着されている。
【0033】
斯かる復帰機構6は、カムドライバ2のZ1方向の移動に基づいてカムスライド3がX1方向に移動された際には、伝達部材70もまた図5に示すようにX1方向に移動されてコイルばね66が圧縮されて、その弾性伸長力が漸増する。上型122等からカムドライバ2に対するZ1方向の移動力の付与が終了し、上型122がZ2方向に移動する際には、コイルばね66が伸長してカムスライド3をX2方向に移動させて図2に示す初期位置に復帰させる。尚、カムスライド3がX2方向に移動する場合、カムドライバ2はZ2方向に移動される一方、カムスライド4は、係合体74及び被係合体83を介してカムスライド3に係合されているため、Z1方向に引っ張られてZ1方向に移動され、これにより、工具取付部84に取り付けられた加工具を被加工部材121から確実に離反させ得る。
【0034】
ガススプリング20は、シリンダ21と、シリンダ21に対してZ方向に移動自在なピストンロッド22と、ピストンロッド22の一端22aに設けられ、オリフィス28を有し、シリンダ21の内周面に摺動自在なピストン24と、ピストンロッド22及びピストン24のZ方向の移動に基づいて圧縮されるようにシリンダ21内に充填された不活性ガス23とオイル27を具備している。本例では不活性ガス23に窒素ガスを使用しているが、これに代えて、アルゴンガス又は窒素ガス及びアルゴンガスの混合ガスであってもかまわない。
【0035】
ピストンロッド22のピストン24が配されている一端22aはシリンダ21内に配されており、ピストンロッド22の他端22bはシリンダ21外であってプレス金型装置の上型122の下面124とカムドライバ2の上面44との間に介在されている。尚、ピストンロッド22のZ方向の移動量は、突き上げカム装置1による被加工物の加工に必要となるカムドライバ2のZ方向の移動量よりも多く確保されるように構成されている。
【0036】
シリンダ21の内部には、不活性ガス23として窒素ガスが充填されたガス室25と、減衰用のオイル27が充填されたオイル室26とが形成されており、オイル室26にはピストンロッド22の一端22aに配されたピストン24がZ方向に移動自在に配されている。斯かるシリンダ21は、本例ではカムドライバ2の装着部43に嵌装されるが、例えば、突き上げカム装置1がプレス金型装置に取り付けられた際にカムドライバ2の上面44の上方に対面して位置する上型122に装着可能となっていてもよい。尚、本例では、シリンダ21の内部にオイル室26が形成されており、オイル室26内のピストン24のZ方向の移動時のオリフィス28を通過するオイル27の抵抗力に基づいて減衰力を生じるように構成されているが、例えば、斯かるオイル室26の構成を省略してもよく、この場合は、オリフィス28の構成が省略されたピストン24がガス室25内に配され、ピストンロッド22のZ方向の移動により当該ピストン24からガス室25内の窒素ガスに対して圧縮力を加えるように構成される。
【0037】
シリンダ21内の不活性ガス23には、ピストンロッド22が図2に示すようにZ方向に移動して圧縮力を作用させていない状態であっても予め所定の移動力と同等の初期圧力が加えられている。上述及び後述の所定の移動力は、突き上げカム装置1の各構成部材に破損が生じない範囲の移動力となるように設定されており、斯かる所定の移動力の設定は、不活性ガス23に加えられる初期圧力を調整することによって行なわれる。
【0038】
斯かるガススプリング20では、Z1方向に移動するプレス金型装置の上型122の下面124がピストンロッド22の他端22bに当接し、当該上型122が更にZ1方向に移動する場合には、ピストンロッド22にZ1方向の移動力(ガススプリング20を縮めさせる方向の移動力)が加えられ、この移動力は、ピストン24、オイル室26のオイル27、ガス室25内の不活性ガス23及びシリンダ21を介してカムドライバ2に伝達される。ここで、不活性ガス23にはピストンロッド22に加えられるZ1方向の移動力に基づく圧縮力が加えられるが、斯かる圧縮力が初期圧力を下回っている際には体積の縮小を生じないので、ピストンロッド22は移動を生じず、上型122からの移動力がガススプリング20を介してカムドライバ2に伝達されるため、カムドライバ2は前記上型122のZ1方向の移動に基づいてZ1方向に移動する。また、不活性ガス23に加えられる前記圧縮力が初期圧力を超える際には体積の縮小を生じるので、ガススプリング20は図6に示すように弾性的に縮められ、ガススプリング20を介しての上型122からカムドライバ2への所定の移動力を超える分の力の伝達が遮断されるため、カムドライバ2は前記上型122から伝達される移動力が所定の移動力以下になるまでZ1方向の移動を生じない。このようにシリンダ21内の不活性ガス23の体積を縮小させてピストンロッド22を弾性的に移動させることによりカムドライバ2のZ1方向の所定の移動力を超える力による移動を停止させることができ、これにより、夫々移動されるカムドライバ2並びにカムスライド3及び4の移動量の微少誤差やカムスライド4に対する加工具のオフセット位置の変更、異物の介在等により、上型122からガススプリング20を介してカムドライバ2に伝達されるZ1方向の移動力が予め設定された所定の移動力を超える際には、ガススプリング20がZ方向において弾性的に縮められるので、ガススプリング20を介しての上型122からカムドライバ2への所定の移動力を超える分の力の伝達が遮断され、カムドライバ2からカムスライド3及びカムスライド3からカムスライド4に順次与えられる移動力が所定の移動力を超えることがないため、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4に与えられる移動力の急激な増大が生じる虞をなくし得、而して、被加工部材やカムドライバ2、カムスライド3及び4、支持手段5、復帰機構6等の各構成部材に対する負荷の意図しない急激な増大によって当該各構成部材が破損することや更には金型まで破損が及ぶことを防止することができる。
【0039】
斯かる突き上げカム装置1では、上述のように上型122からガススプリング20にZ1方向の移動力が与えられると、カムドライバ2がZ1方向に、カムスライド3がX1方向に、カムスライド4がZ2方向に夫々移動し、而して、カムスライド4に取り付けられた曲げ刃等の加工具を上昇させて被加工部材を加工する。また、上述のようにカムドライバ2に対するZ1方向の移動力の付与が終了すると、復帰機構6の弾性的な復帰力によりカムスライド3をX2方向に移動させ、この移動により、カムドライバ2をZ2方向に、カムスライド4をZ1方向に夫々移動させ、而して、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4を夫々初期位置に復帰させると共に、カムスライド4に取り付けられた加工具を下降させて被加工部材から離反させる。ところで、夫々移動されるカムドライバ2並びにカムスライド3及び4の移動量の微少誤差や工具取付部84に対する加工具のオフセット位置の変更、異物の介在等により上型122からカムドライバ2に伝達されるZ方向の移動力が予め設定された所定のZ方向の移動力を超える際には、可圧縮ばね7が上述のように作動するので、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4に与えられる移動力の急激な増大及び当該移動力の増大に基づいて支持手段5及び復帰機構6に負荷の急激な増大が生じる虞をなくし得て、カムドライバ2、カムスライド3及び4、支持手段5並びに復帰機構6の破損を防止することができる。
【0040】
尚、図8は、本例の突き上げカム装置1によって上昇、下降される加工具としての曲げ刃120による被加工部材121の曲げ加工に関する説明図である。カムスライド4の工具取付部84に取り付けられた曲げ刃120は、カムスライド4の上昇において被加工部材121に接触し、プレス金型装置の上型122と協働して被加工部材121に曲げ加工を行う。曲げ加工完了後、曲げ刃120は、カムスライド4の下降により被加工部材121から離反する。符号123はプレス金型装置の下型であり、上型とともに被加工部材121を挟持している。
【0041】
本例の突き上げカム装置1によれば、Z方向に移動自在なカムドライバ2と、X方向に移動自在であると共にカムドライバ2に摺動自在に接触しており、当該カムドライバ2のZ1方向の移動においてX1方向に移動するカムスライド3と、Z方向に移動自在であると共にカムスライド3に摺動自在に接触しており、当該カムスライド3のX1方向の移動においてZ2方向に移動するカムスライド4と、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4の夫々を移動自在に支持する支持手段5と、カムスライド3を図2に示す初期位置に復帰させる復帰機構6と、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4間において伝達される移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断する可圧縮ばね7とを具備しているために、夫々移動されるカムドライバ2並びにカムスライド3及び4の移動量の微少誤差やカムスライド4に対する加工具のオフセット位置の変更、異物の介在等により、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4間において伝達される移動力が予め設定された所定の移動力を超える際には、ガススプリング20が弾性的に縮められることにより所定の移動力を超える分の力の伝達が遮断され、カムドライバ2からカムスライド3及びカムスライド3からカムスライド4に順次伝達される移動力が所定の移動力を超えることがないため、被加工部材やカムドライバ2、カムスライド3、カムスライド4、支持手段5、復帰機構6等の各構成部材に対する設計値以上の意図しない負荷の急激な増大が生じる虞をなくし得、斯くして各構成部材が破損することを防止することができる。詳細には、突き上げカム装置1によれば、Z方向に移動自在であると共にプレス金型装置の上型122から与えられるZ1方向の移動力に基づいてZ1方向に移動するカムドライバ2と、X方向に移動自在であると共にカムドライバ2に摺動自在に接触しており、当該カムドライバ2のZ1方向の移動においてX1方向に移動するカムスライド3と、Z方向に移動自在であると共にカムスライド3に摺動自在に接触しており、当該カムスライド3のX1方向の移動においてZ2方向に移動するカムスライド4と、カムドライバ2並びにカムスライド3及びカムスライド4の夫々を移動自在に支持する支持手段5と、カムスライド3を初期位置に復帰させる復帰機構6と、前記上型122からカムドライバ2にZ1方向の移動力を伝達するように当該上型122及びカムドライバ2間に介在されると共に、前記上型122からカムドライバ2に所定の移動力を超える下方向の移動力が発生した際にはZ1方向において弾性的に縮められて上型122からカムドライバ2への所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するガススプリング20とを具備しているために、夫々の移動されるカムドライバ2並びにカムスライド3及び4の移動量の微少誤差やカムスライド4に対する加工具のオフセット位置の変更、異物の介在等により、上型122からガススプリング20を介してカムドライバ2に伝達されるZ1方向の移動力が予め設定された所定の移動力を超える際には、ガススプリング20がZ1方向において弾性的に縮められることにより上型122からカムドライバ2への所定の移動力を超える分の力の伝達が遮断され、カムスライド2からカムスライド3及びカムスライド3からカムスライド4に順次伝達される移動力が所定の移動力を超えることがないため、カムドライバ2並びにカムスライド3及び4に与えられる移動力の急激な増大が生じる虞をなくし得、而して、被加工部材やカムドライバ2、カムスライド3及び4、支持手段5並びに復帰機構6等の各構成部材に対する負荷の意図しない急激な増大によって各構成部材が破損することや更には金型まで破損が及ぶことを防止することができる。
【0042】
突き上げカム装置1によれば、可圧縮ばね7は、ガススプリング20からなっており、ガススプリング20は、シリンダ21と、シリンダ21に対してZ方向に移動自在なピストンロッド22と、ピストンロッド22のZ方向の移動に基づいて圧縮されるようにシリンダ21内に充填された不活性ガス23とを具備していているために、不活性ガス23が周囲の温度等の環境変化にほとんど影響されないので、前記所定の移動力をより正確に設定し得、上型122からガススプリング20を介してカムドライバ2に伝達されるZ1方向の移動力が所定の移動力を超える際に当該ガススプリング20を繰り返し安定して動作させ得る。
【0043】
突き上げカム装置1によれば、ガススプリング20のシリンダ21内には、不活性ガス23として窒素ガスが充填されているため、所定の移動力に相当する初期圧力をより高圧に設定し得る。
【0044】
本例の突き上げカム装置1では、ガススプリング20がカムドライバ2に着脱自在に嵌装されてなるが、これに代えて、例えば図7に示すように、シリンダ21が上型122に着脱自在に嵌装されていてもよい。斯かる場合には、カムドライバ2の装着部43の構成は省略される。斯かる形態の突き上げカム装置1によれば、ピストンロッド22がシリンダ21に対して相対的にZ方向に上記同様に移動し得るので、上記同様の効果を奏し得る。
【0045】
突き上げカム装置1は、カムドライバ2に代えて、例えば図9に示すように、後述のカムドライバ2a並びにカムスライド3及び4間において伝達される移動力に基づいてZ方向に移動される第一移動部材131(以下、移動部材131と称する)と、前記移動力に基づいて移動部材131に対して相対的にZ方向に移動されるようにZ方向における隙間132をもって配されている第二移動部材133(以下、移動部材133と称する)と前記第一移動部材131と第二移動部材133の間に配されている可圧縮ばね7とを具備しているカムドライバ2aを具備していてもよく、斯かる場合には、可圧縮ばね7は、移動部材131と移動部材133の隙間を介して配されており、移動部材131及び133間において伝達される前記移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められてZ方向の所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するように配設される。
【0046】
移動部材131は、Z方向に移動自在であると共に、カムスライド3に摺動自在に接触しており、移動部材133は、Z方向に移動自在であり、移動部材131に対して下面134にZ方向における隙間132をもって対面して配されていると共に移動部材131の上面135に対してZ2方向に突出している突出部136を有している。
【0047】
移動部材131は、後壁13の内面33並びに側壁14及び15の内面34及び35にZ方向に案内されるようにZ方向に摺動自在に接している本体141と、Z方向に伸びる線に対して傾斜して本体141の底部に形成されていると共にカムスライド3に摺動自在に接している傾斜面142と、移動部材133に接触して本体141に形成されている接触面143と、移動部材133の下面134に対してZ1方向側に所定の隙間132をもって対面して位置するように本体141に形成されている受け部144とを具備している。傾斜面142は、後壁13側に向かうX2方向において底壁11に漸次接近するように傾斜している。また、本体141には、後壁13の内面33にZ方向に摺動自在に接している後面145に、凹状であってZ方向に伸びているスリット146が形成されている。スリット146に配された突出部57aを有する係止部材57は、本体141の過度のZ2方向の移動を阻止してカムドライバ2aの脱落を防止するようになっている。
【0048】
移動部材133は、側壁14及び15の内面34及び35並びに摺動プレート85の摺動面にZ方向に案内されるように摺動自在に接していると共に、下面134が移動部材131の受け部144に対してZ1方向側に所定の隙間132をもって配されている本体151と、当該本体151に所定の移動力を超える移動力が付与された場合に移動部材131の接触面143に摺動自在となるように接した状態で本体151に形成されている接触面152と、上面153が移動部材131の本体141の上面135に対してZ2方向に突出して本体151に一体的に設けられている突出部136とを具備している。
【0049】
斯かるカムドライバ2aは、油圧ラム等の作動で上型を介してZ1方向の移動力が移動部材133の突出部136の上面153に対して与えられると、移動部材133の本体151にZ1方向の移動力が生じると共に当該Z1方向の移動力が可圧縮ばね7を介して移動部材131の本体141に伝達され、而して、移動部材131、移動部材133及び可圧縮ばね7がZ1方向に移動される。このカムドライバ2aのZ1方向の移動において移動部材131の傾斜面142はカムスライド3の傾斜面72上を斜め下方向に摺動し、これによりカムスライド3はX方向において前壁12側に向かうX1方向の移動力を生じてX1方向に移動される。また、カムドライバ2aは、X方向において後壁13側に向かうカムスライド3のX2方向の移動に基づいて移動部材131の傾斜面142がカムスライド3の傾斜面72上を斜め下方向とは逆方向である斜め上方向に摺動する際には、移動部材131、移動部材133及び可圧縮ばね7にZ2方向の移動力が生じて当該Z2方向に移動して初期位置に復帰する。
【0050】
例えば、カムドライバ2aのZ1方向の移動において、可圧縮ばね7への移動部材133から移動部材131に伝達されるZ1方向の移動力が所定の移動力を超える際には、可圧縮ばね7が弾性的に縮められて、移動部材133が移動部材131に対してZ1方向に移動し、上型122から移動部材133への所定の移動力を超える分のZ1方向の移動力の伝達が遮断され、これにより、可圧縮ばね7による移動部材133及び移動部材131間のZ1方向の所定の移動力を超える移動力の伝達は遮断されて、カムドライバ2aからカムスライド3へのX1方向の所定の移動力を超える移動力の伝達並びにカムスライド3からカムスライド4へのZ2方向の所定の移動力を超える移動力の伝達も遮断される。
【0051】
突き上げカム装置1は、カムスライド4に代えて、例えば図10に示すように、カムドライバ2、カムスライド3及び後述のカムスライド4a間において伝達される移動力に基づいてZ方向に移動される第一移動部材161(以下、移動部材161と称する)と、前記移動力に基づいて移動部材161に対して相対的にZ方向に移動されるようにZ方向における隙間162をもって配されている第二移動部材163(以下、移動部材163と称する)とを具備しているZ方向に移動自在なカムスライド4aを具備していてもよく、斯かる場合には、可圧縮ばね7は、移動部材161及び163の隙間に介在して配されており、移動部材161及び163間において伝達される前記移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超えるZ方向の移動力の伝達を遮断するように配設される。
【0052】
突き上げカム装置1は、カムスライド3に代えて、例えば図11に示すように、カムドライバ2、後述のカムスライド3a及びカムスライド4間において伝達される移動力に基づいてX方向に移動される第一移動部材155(以下、移動部材155と称する)と、前記移動力に基づいて移動部材155に対して相対的にX方向に移動されるようにX方向における隙間156をもって配されている第二移動部材157(以下、移動部材157と称する)とを具備しているX方向に移動自在なカムスライド3aを具備していてもよく、斯かる場合には、可圧縮ばね7は、移動部材155及び157の隙間に介在して配されており、移動部材155及び157間において伝達される前記移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超えるX方向の移動力の伝達を遮断するように配設される。
【0053】
尚、突き上げ装置1が、カムドライバ2a並びにカムスライド3a及び4aのうちの二個以上を具備している場合には、可圧縮ばね7は前記個数に応じた個数が夫々配設される。
【符号の説明】
【0054】
1 突き上げカム装置
2、2a カムドライバ
3、3a、4、4a カムスライド
5 支持手段
6 復帰機構
7 可圧縮ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動自在なカムドライバと、横方向に移動自在であると共にカムドライバに摺動自在に接触しており、当該カムドライバの下方向の移動において横方向に移動する横方向カムスライドと、上下方向に移動自在であると共に横方向カムスライドに摺動自在に接触しており、当該横方向カムスライドの横方向の移動において上方向に移動する上下方向カムスライドと、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライドの夫々を移動自在に支持する支持手段と、横方向カムスライドを初期位置に復帰させる復帰機構と、カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライド間において伝達される移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断する可圧縮ばねとを具備している突き上げカム装置。
【請求項2】
カムドライバは、プレス金型装置の上型から与えられる下方向の移動力に基づいて下方向に移動するようになっており、可圧縮ばねは、前記上型からカムドライバに下方向の移動力を伝達するように当該上型及びカムドライバ間に介在されると共に、上型からカムドライバに所定の移動力を超える下方向の移動力が発生した際には下方向において弾性的に縮められることにより上型からカムドライバへの所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっている請求項1に記載の突き上げカム装置。
【請求項3】
可圧縮ばねは、カムドライバ又は前記上型に装着可能である請求項2に記載の突き上げカム装置。
【請求項4】
カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライドのうちの少なくとも一つは、当該カムドライバ、横方向カムスライド及び上下方向カムスライド間において伝達される移動力に基づいて移動される第一移動部材と、前記移動力に基づいて第一移動部材に対して相対的に移動されるように隙間をもって配されている第二移動部材と、前記第一移動部材と前記第二移動部材との当該隙間を介して配されている前記可圧縮ばねとを具備しており、可圧縮ばねは、第一移動部材及び第二移動部材間において伝達される前記移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっている請求項1に記載の突き上げカム装置。
【請求項5】
カムドライバが、前記第一移動部材、前記第二移動部材及び前記可圧縮ばねを具備しており、カムドライバの第一移動部材は、上下方向に移動自在であると共に横方向カムスライドに摺動自在に接触しており、カムドライバの第二移動部材は、上下方向に移動自在であり、カムドライバの第一移動部材に対して上下方向における隙間をもって配されていると共に当該第一移動部材に対して上方向に突出している突出部を有しており、可圧縮ばねは、前記第一移動部材と第二移動部材との隙間を介して配されており、カムドライバの第一移動部材及び第二移動部材間において伝達する上下方向の移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて第一移動部材及び第二移動部材間の上下方向の所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっている請求項4に記載の突き上げカム装置。
【請求項6】
上下方向カムスライドが、前記第一移動部材、前記第二移動部材及び前記可圧縮ばねを具備しており、上下方向カムスライドの第一移動部材は、上下方向に移動自在であると共に横方向カムスライドに摺動自在に接触しており、上下方向カムスライドの第二移動部材は、上下方向に移動自在であり、上下方向カムスライドの第一移動部材に対して上下方向における隙間をもって配されていると共に当該第一移動部材に対して上方向に突出している突出部を有しており、可圧縮ばねは、前記第一移動部材及び第二移動部材との隙間を介して配されており、上下方向カムスライドの第一移動部材及び第二移動部材間において伝達する上下方向の移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて第一移動部材及び第二移動部材間の上下方向の所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっている請求項4に記載の突き上げカム装置。
【請求項7】
横方向カムスライドが、前記第一移動部材、前記第二移動部材及び前記可圧縮ばねを具備しており、横方向カムスライドの第一移動部材は、横方向に移動自在であると共にカムドライバに摺動自在に接触しており、横方向カムスライドの第二移動部材は、横方向に移動自在であり、横方向カムスライドの第一移動部材に対して横方向における隙間をもって配されていると共に上下方向カムスライドに摺動自在に接触しており、可圧縮ばねは、前記第一移動部材と第二移動部材との隙間を介して配されており、横方向カムスライドの第一移動部材及び第二移動部材間において伝達する横方向の移動力が所定の移動力を超える際に弾性的に縮められて第一移動部材及び第二移動部材間の横方向の所定の移動力を超える分の力の伝達を遮断するようになっている請求項4に記載の突き上げカム装置。
【請求項8】
可圧縮ばねは、ガススプリングからなっている請求項1から7のいずれか一項に記載の突き上げカム装置。
【請求項9】
ガススプリングは、シリンダと、このシリンダに対して移動自在なピストンロッドと、ピストンロッドの移動に基づいて圧縮されるようにシリンダ内に充填された不活性ガスとを具備している請求項8に記載の突き上げカム装置。
【請求項10】
シリンダ内の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス又はこれらのガスの混合ガスである請求項9に記載の突き上げカム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−139715(P2012−139715A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294277(P2010−294277)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】