説明

突入電流防止回路及び突入電流の防止方法

【課題】電源投入時の入力電圧が検出閾値に達すると起動し、かつ検出閾値が可変である、突入電流防止回路及び突入電流の防止方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、起動回路2及び電流制限回路3を有する。電流制限回路3は、直流電源の投入時に、突入電流の発生を防止する。起動回路2は、入力電圧を検出し、入力電圧が検出閾値に達すると、電流制限回路3を起動する。起動回路2は、検出閾値調整部21を有する。起動回路2は、検出閾値調整部21により、検出閾値を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突入電流防止回路及び突入電流の防止方法に関し、特に入力電圧を検出して起動する突入電流防止回路及び突入電流の防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源で動作する装置の電源入力には、突入電流の抑制を目的として突入電流防止回路が用いられる。このような突入電流防止回路の例として、例えば特許文献1に開示された突入電流防止回路が挙げられる。
【0003】
図4は、通常の突入電流防止回路の一例である突入電流防止回路400を示す回路図である。突入電流防止回路400は、図4に示すように、直流入力電源41と、入力コンデンサ50及び負荷51との間に挿入されており、抵抗42、抵抗43、コンデンサ44、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistors)45、コンデンサ46、抵抗47、出力端子48及び出力端子49により構成されている。
【0004】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistors)45のゲートは、抵抗42からコンデンサ44への充電動作により、徐々にゲート電圧が上昇する。そして、MOSFET45のゲート電圧が閾値に達すると、MOSFET45がONとなり電流が流れ始めるとともに、ドレイン−ソース間電圧が低下し始める。MOSFET45のゲートには、コンデンサ46と抵抗47を介してドレイン−ソース間電圧の低下変動が伝達される。これにより、MOSFET45のゲート電圧はほぼ一定値に保たれる。従って、MOSFET45の電流はほぼ一定値に制限され、入力コンデンサ50の充電電圧波形もランプ波形で徐々に充電される。
【0005】
しかしながら、突入電流防止回路400は直流入力電源41の電圧検出機能を有していない。このため、直流入力電源41が負荷51の入力電圧許容範囲内に達していない状態でも、突入電流防止回路400が入力コンデンサ50へ充電動作を開始する。そのため、負荷51がDC−DCコンバータ等の場合には、コンデンサ電圧が負荷51の入力電圧許容範囲内に達していない状態で負荷51が動作を開始することがある。この時、負荷51のDC−DCコンバータは自身の入力許容電圧範囲内に達していないため、正常動作しない、または起動に失敗するというという欠点がある。
【0006】
突入電流防止回路400の欠点の対策として、特許文献2に開示されているDC−DCコンバータがある。このDC−DCコンバータは、入力電圧が負荷の動作範囲電圧を下回る場合には、遮断回路により負荷への出力を遮断する。一方、入力電圧が負荷の動作範囲電圧に達すると、負荷へ出力電圧を印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−45957号公報
【特許文献2】特許第2813735号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されているDC−DCコンバータが負荷へ出力電圧を印加する際の入力電圧の値(以下、検出閾値)は、ツェナーダイオードの降伏電圧などにより決定される。ところが、組み合わせる負荷によって、その動作範囲電圧は様々である。従って、特許文献2に記載されているDC−DCコンバータでは、組み合わせる負荷に応じて適宜素子を置き換えなければならず、広範に適用することが難しい欠点が有った。
【0009】
本発明は、上記に鑑みて為されたものであり、本発明の目的は、電源投入時の入力電圧が検出閾値に達すると起動し、かつ検出閾値が可変である、突入電流防止回路及び突入電流の防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様である突入電流防止回路は、直流電源の投入時の電流を制限する電流制限回路と、入力電圧が検出閾値に達すると前記電流制限回路を起動する起動回路と、を備え、前記起動回路は、前記検出閾値を調整する検出閾値調整部を少なくとも備えるものである。
【0011】
本発明の一態様である突入電流の防止方法は、直流電源の投入時の入力電圧を検出するステップと、前記入力電圧が検出閾値に達したら、直流電源の投入時の電流を制限する電流制限回路を起動するステップと、を少なくとも備え、前記検出閾値を調整することにより、前記電流制限回路の起動を制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電源投入時の入力電圧が検出閾値に達すると起動し、かつ検出閾値が可変である、突入電流防止回路及び突入電流の防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる突入電流防止回路100の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる突入電流防止回路100の構成を示す回路図である。
【図3】実施の形態1にかかる突入電流防止回路100の動作タイミング図である。
【図4】通常の突入電流防止回路400の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1にかかる突入電流防止回路100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、突入電流防止回路100は、直流入力電源1、入力コンデンサ6及び負荷7との間に挿入される。突入電流防止回路100は、起動回路2と電流制限回路3とにより構成される。突入電流防止回路100の出力端子4は入力コンデンサ6及び負荷7の一端と接続される。出力端子5は、入力コンデンサ6及び負荷7の他端と接続される。
【0015】
突入電流防止回路100は、電源投入時の直流入力電源1からの突入電流を防止するものである。電源投入時に突入電流防止回路100に印加される入力電圧は、電源投入直後から上昇し始め、一定の時間を経て直流入力電源1の出力電圧に到達する。
【0016】
起動回路2は、入力電圧が検出閾値に達すると、直流入力電源1と電流制限回路3とを導通させる。これにより、電流制限回路3が起動する。電流制限回路3は、突入電流の発生を防止しつつ、負荷7に出力電圧を出力する。すなわち、電流制限回路3が起動したことを以って、突入電流防止回路100全体が起動したこととなる。
【0017】
ここで、起動回路2の検出閾値を負荷7の動作範囲電圧の下限値に設定することにより、入力電圧が負荷7の動作範囲電圧の下限に達してから、電流制限回路3を起動することができる。また、突入電流防止回路100では、起動回路2の検出閾値調整部21により、検出閾値を変化させることができる。従って、それぞれ異なる動作範囲電圧を有する負荷に対し、突入電流防止回路100を適用することが可能である。
【0018】
以下では、突入電流防止回路100の構成及び動作について、詳細に説明する。図2は、突入電流防止回路100の構成を示す回路図である。図2に示すように、起動回路2は、検出閾値調整部21、抵抗22、スイッチング回路23により構成される。抵抗22の一端は直流入力電源1と、他端はスイッチング回路23と接続される。
【0019】
検出閾値調整部21は、可変抵抗24及び抵抗25により構成される。可変抵抗24と抵抗25とは、直流入力電源1に対して直列に接続される。スイッチング回路23は、トランジスタ26及びツェナーダイオード27により構成される。トランジスタ26のベースには、可変抵抗24抵抗25との間の電圧が入力される。トランジスタ26は、抵抗22と接続される。トランジスタ26のエミッタは、ツェナーダイオード27の一端及び電流制限回路3と接続される。ツェナーダイオード27の他端は、直流入力電源1の負側端子と接続される。
【0020】
電流制限回路3は、抵抗31、コンデンサ32、MOSFET33、コンデンサ34及び抵抗35により構成される。トランジスタ26のエミッタと直流入力電源1の負側端子との間には、抵抗31とコンデンサ32とが接続される。MOSFET33のゲートは、トランジスタ26のエミッタと接続される。トランジスタ26のエミッタとMOSFET33のドレインとの間には、コンデンサ34及び抵抗35が直列に接続される。MOSFET33のソースは、直流入力電源1の負側端子と接続される。MOSFET33のドレインは、更に出力端子5と接続される。
【0021】
次に、突入電流防止回路100に設けられた各素子の機能について説明する。MOSFET33は、ゲート電圧Vgにより制御され、入力コンデンサ6への突入電流を抑制する。抵抗22及び抵抗31はMOSFET33のゲート電圧Vgを生成する。コンデンサ32は、MOSFET33のゲート電圧Vgに時定数を設ける。コンデンサ34及び抵抗35は、MOSFET33のドレイン−ソース間電圧Vdsをゲート電圧Vgに帰還させる。
【0022】
次に、突入電流防止回路100の動作について説明する。図3は、突入電流防止回路100の動作を示すタイムチャートである。図3に示すように、突入電流防止回路100に電源が投入されると、突入電流防止回路100には入力電圧Vinが印加される。入力電圧Vinは、検出閾値調整部21の可変抵抗24と抵抗25とにより分圧され、制御電圧Vcが生成される。
【0023】
突入電流防止回路100では、入力電圧Vinが検出閾値Vdetに達すると、トランジスタ26のベースに入力される制御電圧Vcは、トランジスタ26の動作閾値電圧Vbeにツェナーダイオード27のツェナー電圧Vzを加算した電圧に達し、トランジスタ26がONとなる。これより、検出閾値Vdetは、以下の式(1)で表される。

【数1】

ここで、R24は可変抵抗24の抵抗値である。R25は抵抗25の抵抗値である。
【0024】
すなわち、トランジスタ26とツェナーダイオード27の直列接続からなるスイッチング回路23では、制御電圧Vcがスイッチング回路の動作閾値電圧(Vbe+Vz)に達すると、トランジスタ26がONとなる。また、式(1)に示すように、検出閾値Vdetは、可変抵抗24の抵抗値R24を変化させることにより、調整することが可能である。
【0025】
入力電圧Vinが検出閾値Vdetに達するまでは、トランジスタ26はOFFである。そのため、MOSFET33のゲートにはゲート電圧Vgは印加されない(図3の期間T1)。
【0026】
入力電圧が検出閾値Vdetに達すると、トランジスタ26はONとなり、MOSFET33のゲートにゲート電圧Vgが印加される。このときのゲート電圧Vgは、抵抗22からコンデンサ32への充電動作により、ランプ波形となる(図3の期間T2)。
【0027】
次に、MOSFET33のゲート電圧Vgが閾値に達すると、MOSFET33がONとなり電流が流れ始める。それと共に、MOSFET33のドレイン−ソース間電圧Vdsが低下し始める。MOSFET33のゲートには、コンデンサ34及び抵抗35を介して、ドレイン−ソース間電圧Vdsの低下変動が伝達される。よって、ゲート電圧Vgはほぼ一定値に保たれる。この結果、MOSFET33に流れる電流はほぼ一定値に制限される。従って、入力コンデンサ6の充電電圧Vqもランプ波形となる(図3の期間T3)。
【0028】
入力コンデンサ6への充電が完了すると、MOSFET33のゲート電圧Vgは再び上昇を開始する。ゲート電圧Vgがツェナーダイオード27の動作電圧値に達すると、ゲート電圧Vgは一定値にクランプされる(図3の期間T4)。
【0029】
式(1)に示すように、検出閾値Vdetは、可変抵抗24及び抵抗25の抵抗値とツェナーダイオード27の動作電圧とにより決定される。よって、本構成における検出閾値Vdetを、負荷7の入力電圧許容範囲の最低値以上に設定することにより、入力電圧Vinが負荷7の動作保証範囲に達してから突入電流防止回路100を起動させることができる。従って、負荷7を正常に起動することが可能となる。
【0030】
更に本構成では、可変抵抗24の抵抗値R24は可変である。よって、式(1)に示すように、抵抗値R24を調整することにより、検出閾値Vdetを適宜調整することが可能である。これにより、負荷の動作保証範囲に応じて、その都度抵抗やツェナーダイオードを置き換えること無く、突入電流防止回路100を適用することが可能である。従って、本構成によれば、任意の負荷に対して適用することができる突入電流防止回路を提供することができる。
【0031】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、可変抵抗24の抵抗値は、予め調整してもよいし、外部から入力される制御信号に応じて制御してもよい。また、この際、突入電流防止回路100に接続される負荷の動作補償範囲に応じて生成される制御信号を用いることができる。
【0032】
図2では、可変抵抗24及び抵抗25の2つの抵抗を直列接続したが、直列接続される抵抗は3つ以上でもよい。さらに直列接続される抵抗の少なくとも1つが可変抵抗であれば、検出閾値Vdetを調整することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 直流入力電源
2 起動回路
3 電流制限回路
4、5 出力端子
6 入力コンデンサ
7 負荷
21 検出閾値調整部
22、25、31、35 抵抗
23 スイッチング回路
24 可変抵抗
25 抵抗
26 トランジスタ
27 ツェナーダイオード
32、34 コンデンサ
33 MOSFET
41 直流入力電源
42、43、47 抵抗
44、46 コンデンサ
48、49 出力端子
50 入力コンデンサ
51 負荷
100、400 突入電流防止回路
Vg ゲート電圧
Vin 入力電圧
Vds ドレイン−ソース間電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の投入時の電流を制限する電流制限回路と、
入力電圧が検出閾値に達すると前記電流制限回路を起動する起動回路と、を備え、
前記起動回路は、
前記検出閾値を調整する検出閾値調整部を少なくとも備える、
突入電流防止回路。
【請求項2】
前記検出閾値調整部は、
直列に接続され、入力電圧を分圧した制御電圧を生成する複数の抵抗を少なくとも備え、
前記直列に接続された複数の抵抗の少なくとも1つは可変抵抗であり、
前記可変抵抗の抵抗値に応じて前記制御電圧が変化することにより、前記検出閾値が変化することを特徴とする、
請求項1に記載の突入電流防止回路。
【請求項3】
前記起動回路は、
前記制御電圧に応じて前記直流電源と前記電流制限回路とを接続するスイッチング回路を更に備え、
前記スイッチング回路は、
前記制御電圧が当該前記スイッチング回路の動作閾値電圧に達すると、前記直流電源と前記電流制限回路とを接続することを特徴とする、
請求項2に記載の突入電流防止回路。
【請求項4】
前記スイッチング回路は、
前記制御電圧により制御されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子と直列に接続されるツェナーダイオードと、を備え、
前記スイッチング回路の前記動作閾値電圧は、前記スイッチング素子の動作閾値電圧に前記ツェナーダイオードのツェナー電圧を加算したものであることを特徴とする、
請求項3に記載の突入電流防止回路。
【請求項5】
前記電流制限回路には負荷が接続され、
前記検出閾値は、前記負荷が正常に動作する電圧範囲の下限と等しいことを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の突入電流防止回路。
【請求項6】
直流電源の投入時の入力電圧を検出するステップと、
前記入力電圧が検出閾値に達したら、直流電源の投入時の電流を制限する電流制限回路を起動するステップと、を少なくとも備え、
前記検出閾値を調整することにより、前記電流制限回路の起動を制御する、
突入電流の防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167012(P2011−167012A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29127(P2010−29127)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】