説明

突起の刺さり量の計測装置、及び、計測方法

【課題】地面等の刺さり対象面への突起の刺さり量を計測する装置1の提供。
【解決手段】刺さり量計測装置1は、刺さり対象面を押圧する押圧部2と、押圧部2に荷重を負荷する荷重負荷部3と、押圧部2と荷重負荷部3とを平行に相対変位可能に連結する揺動脚部4と、押圧部2の下面に設けられた突起6と、押圧部2の下方変位量を検出する距離計5とを備えている。上記揺動脚部4が並列状態で一対設けられており、この一対の揺動脚部4と上記荷重負荷部3と押圧部2とで、平行四辺形リンクLが構成されている。上記突起6は、異なる傾斜方向の突起と変更されうるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起の刺さり対象面への刺さり量を計測するための装置、及び、刺さり量を計測する方法に関する。詳細には、例えば、靴底等に形成される突起が、荷重を受けて地面等に突き刺さったときの状態を模擬し、この刺さり量を計測する装置、及び、計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルファーは、テイクバックを開始し、ヘッドを後へ、次いで上方へと振り上げる。最もヘッドが振り上げられた位置がトップ位置である。トップ位置からダウンスイングが開始されてヘッドが振り下ろされ、ヘッドがゴルフボールと衝突する(インパクト)。インパクト後、ゴルファーはゴルフクラブを前方へ、次いで上方へと振り抜き(フォロースルー)、フィニッシュを迎える。
【0003】
トップ位置からフィニッシュにかけて、ゴルファーは左足を軸としてボディターンを行う。同時にゴルファーは、右足で地面を蹴ってその力をゴルフボールに伝える。つまり、右利きのゴルファーは、左足を軸足として使い、右足を蹴足として使う。左利きゴルファーの場合は、逆に右足を軸足として使い、左足を蹴足として使う。トップ位置からフィニッシュにかけて、ゴルファーの両足から地面に対して大きな力が加わる。この力によって、ゴルフシューズが地面とスリップを起こすことがある。
【0004】
一方、スリップ防止のために靴底に多数の突出部が設けられた靴が知られている。ゴルフに限らず、野球、ゴルフ、サッカー、ラグビー、各種陸上競技には、多数の突出部が設けられた靴が用いられることが多い。上記で、ゴルフについて例示したように、競技によって靴には特有の方向に強い荷重が負荷されることがある。
【0005】
従来、例えば、ゴルフスイング中のプレイヤーの足に地面から加わる反力の方向及び大きさが調査されている。上記反力は、公知の三次元床反力計によって計測されうる。計測された上記反力のデータは、スリップ防止のための靴底の突出部の配置設計に活かされている(特開2002−34609公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−34609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記反力データは、靴底の突起の傾斜や向きの設計には十分に活かされていないのが現状である。上記反力データを活用することにより、スリップ防止性(防滑性ともいう)に優れた突起を設計する方法が待たれる。
【0008】
スリップの防止は、靴底の突起が地面に突き刺さることによって実行される。本願発明は、突起の地面等への刺さり量を計測することにより、防滑性に優れた突起の設計に寄与することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る突起の刺さり量計測装置は、
刺さり対象面を押圧する押圧部と、押圧部に荷重を負荷する荷重負荷部と、上記押圧部と荷重負荷部とを、平行に相対変位可能に連結する揺動脚部と、押圧部の下面に設けられた突起と、押圧部の下方変位量を検出する距離計測手段とを備えている。
【0010】
上記揺動脚部が並列状態で一対設けられ、この一対の揺動脚部と上記荷重負荷部と押圧部とで平行四辺形リンクが構成されていてもよい。
【0011】
上記平行四辺形リンクが直列に2個形成されており、この2個の平行四辺形リンクが、一の荷重負荷部を共用することによって一体化されていてもよい。
【0012】
上記突起が、異なる傾斜方向の突起と変更されうるように構成されていてもよい。
【0013】
本発明の突起の刺さり量計測方法は、
刺さり対象面に対して、突起を、刺さり対象面に垂直な方向と平行な方向との間の任意の傾斜角をもって押圧する押圧工程と、上記押圧に伴う突起の、刺さり対象面に向かう方向の変位量を計測する計測工程とを含んでいる。
【0014】
上記突起を、刺さり対象面に垂直な方向に向けた状態、及び、この垂直な方向から任意角度傾斜した方向に向けた状態のそれぞれで、上記押圧工程及び計測工程が実行されてもよい。
【0015】
上記押圧工程及び計測工程のそれぞれにおいて刺さり量計測装置を用い、この刺さり量計測装置が、刺さり対象面を押圧する押圧部と、押圧部に荷重を負荷する荷重負荷部と、上記押圧部と荷重負荷部とを、平行に相対変位可能に連結する揺動脚部と、押圧部の下面に設けられた突起と、押圧部の下方変位量を検出する距離計測手段とを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の突起の刺さり量計測装置によれば、靴底の突起が地面に刺さる現象を再現でき、そのときの刺さり量を計測することができる。その結果、性能能よい突起の設計に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る突起の刺さり量計測装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の突起の刺さり量計測装置を示す正面図である。
【図3】図3は、図1の突起の刺さり量計測装置を示す底面図である。
【図4】図4(a)は、図1の突起の刺さり量計測装置であって、異なる傾斜角の突起に変更されたあとの部分を示す正面図であり、図4(b)は、この変更後の突起を示す斜視図である。
【図5】図5は、突起に対する荷重の入力角度と荷重負荷に伴う突起の刺さり量との関係の一例を示すグラフである。
【図6】図6は、突起に対する荷重の入力角度と荷重負荷に伴う突起の刺さり量との関係の他の例を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の他の実施形態に係る突起の刺さり量計測装置を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1及び図2に示された突起の刺さり量計測装置(以下、単に計測装置ともいう)1は、突起が荷重の負荷によって地面E等の刺さり対象面(以下、地面で代表させる)に突き刺さったときの、刺さり量を計測するための装置である。靴底に突起を備えた靴に着用者の足から荷重が負荷されたとき、上記突起は地面に突き刺さる。上記計測装置1は、靴底の突起が地面に突き刺さる現象を模擬する。
【0020】
この計測装置1は、地面Eを押圧する押圧部2、押圧部2に荷重を負荷する荷重負荷部3、上記押圧部2と荷重負荷部3とを、互いに平行に相対変位可能に連結する揺動脚部4、及び、レーザ式距離計5を有している。レーザ式距離計5は、押圧部2の下方変位量を検出する距離計測手段の一例である。押圧部2の下面には突起6が設けられている。この突起6は、靴底に形成される突起を模擬したものである。
【0021】
押圧部2、荷重負荷部3及び揺動脚部4は、いずれも平板状の部材である。これらの部材2、3、4は全て矩形状の平板から形成されている。これらの部材2、3、4の形状は平板状には限定されない。しかし、計測装置1のコンパクト化、突起6の形成の容易性、後述の平行四辺形リンクLの構成の容易性等から、平板状が好ましい。揺動脚部4は、その一端(図2における上端)において、ヒンジ7によって荷重負荷部3に揺動可能に連結され、他端(図2における下端)において、ヒンジ7によって押圧部2に揺動可能に連結されている。
【0022】
ここでは、説明を明確にするために、図1に示されるように、ヒンジ7の回転軸RLの長手方向をY軸方向、水平面内でY軸に垂直な方向(荷重負荷部3の長手方向)をX軸方向、XYの両軸に垂直な方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0023】
図2に示されるように、この計測装置1においては、押圧部2と荷重負荷部3と揺動脚部4とによって1対の平行四辺形リンクLが構成されている。一の押圧部2と、一の荷重負荷部3と、互いに平行な一対の同一長さの揺動脚部4とによって平行四辺形リンクLが構成されている。この平行四辺形リンクLは2個構成されている。2個の平行四辺形リンクLは互いに同一形状、同一寸法、同一構造を有している。2個の平行四辺形リンクLは、一の荷重負荷部3を共用している。一の荷重負荷部3の下面に、4個の揺動脚部4がX軸方向に直列に配列されている。4個の揺動脚部4は同一のX軸方向に揺動しうる。その結果、2個の平行四辺形リンクLはX軸方向に直列に配列されている。図2に示されるように、この計測装置1は、正面視においてZ軸方向の中心線CLについて左右対称の構造を有している。
【0024】
図1及び図2に示されるように、平面視で長方形の荷重負荷部3の中心位置には、錘8が載置されている。この錘8は、揺動脚部4を通して押圧部2に下向きの荷重を負荷するためのものである。この錘8の重力は、揺動脚部4の面に沿う方向で下向きに、押圧部2に負荷される。本実施形態では、上記重力による荷重は、平面視で長方形の押圧部2の左端辺と右端辺とに負荷される。図2に示された状態では、揺動脚部4が鉛直方向VLに対してα≒15°傾斜している。この計測装置1の場合、錘8の重力は、鉛直方向VLに対してα≒15°傾斜した方向で下向きに、押圧部2に負荷される。錘8は、同一の小質量のものを多数個用意しておくのが好ましい。所望の荷重を選択するのが容易だからである。荷重の負荷は、上記錘8による方法には限定されない。たとえば、油圧ジャッキ、電動モータを採用したジャッキ等の、荷重負荷手段が採用されてもよい。
【0025】
図3に示されるように、押圧部2の下面の四隅の近傍それぞれに、4個の突起6が設けられている。4個の突起6は正方形の四隅に設けられている。一の押圧部2の下面には、合計で16個の突起6が設けられている。各突起6は、平面視で長方形の押圧部2の下面において、その中心点CPについて点対称の位置に設けられている。全ての突起6は、押圧部2の下面に垂直な方向(Z軸方向)に突出している。一の押圧部2に設けられる突起6は、4×4の16個には限定されない。靴底に突起を有する靴を模擬する観点からは、突起6は複数個設けられるのが好ましい。突起の位置は、図3に示された位置には限定されない。全突起6に対する均一な荷重という観点からは、突起6は、たとえば、上記中心点CPについて点対称の位置、及び、中心点CPの周囲の多数箇所に設けられるのが好ましい。
【0026】
図4に例示されるように、種々の傾斜角θを持った突起6が用意される。一の押圧部2に対して、異なる傾斜角の突起6が着脱可能に構成される場合がある。または、揺動脚部4に対して、突起6が異なる傾斜角をもって固定された複数の押圧部2が着脱可能に構成される場合もある。この傾斜角θとは、押圧部2の下面に垂直な方向(Z軸方向)からの、X軸方向に傾斜した角度である。図2及び図3に示された突起6の傾斜角θは0°である。
【0027】
突起6が傾斜している場合(θ≠0°)であっても、突起6の端面は水平である。本実施形態では突起6の端面は押圧部2の下面と平行である。上記突起6は、靴底の突起を模擬しているからである。すなわち、靴の通常の使用状態では、突起の端部は地面から鉛直方向上向きに反力を受ける率が高いからである。もちろん、突起6の端面は水平に限定されないし、平面にも限定されない。突起6の端部は、突起6の長手方向に垂直な平面であってもよく、球面等であってもよい。この計測装置1の使用目的の対象となる靴に応じて、突起6の端部の形状が選択されるのがよい。
【0028】
一の計測装置1における一の押圧部2に設けられた突起6は、全て同一向きの同一傾斜角θを有している。また、左右の平行四辺形リンクLの押圧部2に設けられた突起6は、X軸方向で互いに逆向きの、同一傾斜角θを有している。換言すれば、左右の平行四辺形リンクLの突起6の傾斜角θは、絶対値が同一で正負が逆である。
【0029】
突起6の材質に限定はない。鉄、ステンレス鋼、アルミ合金等の金属製、ポリプロピレン、アクリルニトリルブタジエンスチレン等の合成樹脂製であってもよい。この計測装置1の使用目的の対象となる靴に応じて、突起6の材質が選択されるのがよい。突起6の横断面形状、横断面積及びZ軸方向の突出長さも、この計測装置1の使用目的の対象となる靴に応じて選択されるのがよい。
【0030】
押圧部2の下方変位量を検出するための距離計測手段としては、入手容易な市販の製品を採用するのが好ましい。たとえば、渦電流式変位計、ダイアルゲージ等の接触式変位計、光学的三角測距式変位計、レーザフォーカス式変位計等が選択されうる。本実施形態では、計測対象距離の妥当性、測定精度等の観点から、光学的三角測距式変位計(前述のレーザ式距離計5。以下、単に距離計5という)が採用されている。この距離計5は、検出光を発光する発光素子と、検出対象からの反射光を検出する光位置検出素子とを有している。
【0031】
図1及び図2に示されるように、距離計5はスタンド9に取り付けられている。このスタンド9は、2個の平行四辺形リンクLそれぞれに近接して設置されている。距離計5は、平行四辺形リンクLからは分離して設置される。距離計5は、通常は、地面E等の刺さり対象面に設置される。上記押圧部2の上面には、距離計5からの検出光を反射するための反射部材10が設けられている。反射部材10の上面11が反射面を構成している。距離計5の発光素子は、反射部材10の反射面11に向けて検出光を発光しうるように配置される。
【0032】
この計測装置1の使用に際しては、突起6の刺さり対象面が選択される。砂地、芝生、人工芝等である。これら砂地、芝生、人工芝等は、実際に競技等で使用されているものでもよい。または、実際のものを模擬して試験用に製造されたものでもよい。以下、これらを地面Eで代表させる。計測装置1が、上記選択された地面Eに載置される(図1参照)。両押圧部2の下面がともに地面Eに対して平行な姿勢で対向する。実際に地面Eに接しているのは全突起6である。荷重負荷部3も地面Eに対して平行にされる。計測装置1には、選択された傾斜角θを有する突起6が配設された押圧部2が取り付けられている。例えば、図2に示されるように、θ=0°である。
【0033】
左側の平行四辺形リンクLの揺動脚部4は、鉛直方向VLに対して左側へαだけ傾斜させられ、右側の平行四辺形リンクLの揺動脚部4は、鉛直方向VLに対して右側へαだけ傾斜させられる。換言すれば、左右の平行四辺形リンクLの揺動脚部4の傾斜角αは、絶対値が同一で正負が逆である。この傾斜角αは、試験計画において予め決定される。
【0034】
次に、荷重負荷部3の中心位置に、錘8の載置等によって、鉛直方向下向きに荷重が負荷される。上記荷重は時系列に段階的に増加させられる。負荷荷重の増加に伴い、突起6の地面Eへの刺さり量が増加する。従って、負荷荷重の増加に伴い、平行四辺形リンクLが下降する。上記距離計5が、増加させられた荷重ごとに、上記反射部材10の鉛直方向下向きの変位量を計測する。
【0035】
荷重の負荷によって平行四辺形リンクLが下降したとき、突起6の刺さり方向は明確ではない。荷重の負荷に伴い、揺動脚部4の傾斜角αが大きく拡大して、突起6が水平に近い斜め方向に刺さる場合がある。一方、荷重の負荷に伴い、揺動脚部4の傾斜角αが小さく、突起6が鉛直に近い斜め方向に刺さる場合がある。いずれにしろ、刺さり量の鉛直方向成分が大きい場合には、スリップ防止効果が大きいことは明らかである。
【0036】
異なる傾斜角θの突起6が固定された複数の押圧部2が用意されている。各傾斜角θの突起6に対し、揺動脚部4の複数の傾斜角αについて上記刺さり量の計測が行われる。複数の傾斜角α、θの数値は、試験計画において予め決定される。
[刺さり量計測試験]
【0037】
次に、実際に本計測装置1によってなされた突起6の刺さり量計測試験を説明する。刺さり対象面として、ゴルフ場ティーグラウンドを想定した試験用人工芝を作製した。この人工芝では、実際の上記ティーグラウンドの硬度が再現された。人工芝の芝材質はポリエチレン、芝丈は30mm、植え付け密度は8200本/m 、芝太さは16000dtex、充填材はオムニサンドA2、砂厚は14mmである。
【0038】
計測装置1は図1から図4に示され且つ前述されたものである。突起6の鉛直方向突出長さは10mm、横断面形状は略正方形、横断面積は25mm である。押圧部2は、突起6の傾斜角θが0°にされているもの、及び±30°にされているものの二種類である。各傾斜角θの突起6に対する、揺動脚部4の傾斜角αは、0°、±30°及び±40°である。+30°及び+40°は左側の平行四辺形リンクlの傾斜角であり、−30°及び−40°は右側の平行四辺形リンクlの傾斜角である。以下、この傾斜角α、θの+−を省略する。この傾斜角αは、揺動脚部4を通して刺さり対象面に入力される荷重の傾斜角(入力角度)と一致する。
【0039】
突起6の各傾斜角θ、及び、揺動脚部4の各傾斜角αに対し、最大52.5kgfの鉛直方向下向きの荷重が荷重負荷部3に負荷された。負荷される荷重は、時系列に、2.5kgf、7.5kgf、12.5kgf、22.5kgf、32.5kgf、37.5kgf、47.5kgf、52.5kgfと、段階的に増加された。以上の各荷重が負荷されている時点で、突起6の刺さり量が計測された。
【0040】
一方、靴から水平な地面へ伝わる荷重の値(入力値)が同一であれば、入力の傾斜角(鉛直方向に対する傾斜角)が大きいほど靴がスリップしやすいことは自明である。ゴルフスイング中、プレイヤーの足から地面への入力の傾斜角が最大となるのは、バックスイングからダウンスイングへの切り返し直後であることはよく知られている。これは、上記入力の鉛直方向成分に対する水平方向成分の比が最大となるからである。過去の試験結果から、上記切り返し直後の入力の傾斜角は30°であり、入力の鉛直方向成分は、ほぼ300N(30.6kgf)から400N(40.8kgf)の範囲にあることが知られている。
【0041】
そこで、37.5kgfの荷重が負荷されたときの突起6の刺さり量が評価された(図5及び図6参照)。図5は、突起6の傾斜角θが0°、揺動脚部4の傾斜角αが、0°、30°及び40°における刺さり量を示している。図6は、突起6の傾斜角θが30°、揺動脚部4の傾斜角αが、0°、30°及び40°における刺さり量を示している。
【0042】
図5に示されるように、突起6の傾斜角θが0°においては、揺動脚部4の傾斜角αが0°のときは、刺さり量が最大(1.9mm)となった。図6に示されるように、突起6の傾斜角θが30°のときは、揺動脚部4の傾斜角αが30°であるときに、刺さり量が最大(2.1mm)となった。
【0043】
以上の試験結果から、靴から地面への入力方向(入力角度)と靴底の突起の傾斜方向(傾斜角)とが一致したときに、突起の刺さり量が最大となることが分かる。従って、靴底の突起は、防滑性の観点から、当該靴の使用時における最大の入力角度に一致した傾斜角とするのが望ましいことが分かる。このように、本計測装置1は、優れた性能を発揮する靴底の突起の設計に寄与するところが大である。
【0044】
上記実施形態では、一対の平行四辺形リンクLを備えているが、かかる構成には限定されない。平行四辺形リンクLは一個のみであってもよい。
【0045】
図7に示される計測装置21は単一の平行四辺形リンクLを備えている。この計測装置21は、その荷重負荷部23の水平方向の移動を制止し、上下方向の移動を案内する柱状の案内部材24を備えている。この案内部材24は、荷重負荷部23の四隅に立設されている。荷重負荷部23の四隅の円筒状の被案内部分27は、案内部材24の四本の案内部25により、上下方向の移動が案内される。この計測装置21の押圧部及び揺動脚部は、前述した押圧部2及び揺動脚部4(図1及び図2)と同一の形状及び構造を有している。図1及び図2に示された計測装置1の部品と同様の部品には、同一符号付して、その説明を省略する。図7においては、距離計7の図示は省略されている。
【0046】
上記案内部25の下端には、模擬地面部材26が固定されている。模擬地面部材26の上面には砂地や人工芝等からなる模擬地面FEが設けられている。案内部材24は、この模擬地面部材26が一体化されることにより、安定して平行四辺形リンクLの上下動を案内することができる。この案内部材24は模擬地面部材26と一体化されているが、かかる構成には限定されない。たとえば、地面E等に鉛直方向に打ち込まれうる杭状の案内部材が用いられてもよい。
【0047】
案内部材が用いられる場合には、必ずしも平行四辺形リンクLが用いられる必要はない。例えば、図示しないが、図7の荷重負荷部23の下面に、単一の揺動脚部4が揺動可能に設けられたものであってもよい。この単一の揺動脚部4の下端には、単一の押圧部2が設けられる。押圧部2は、揺動脚部4の下端に対して、任意の傾斜角度に調節されるように構成される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明された計測装置1は、ゴルフシューズに限らず、種々の靴の靴底の突起の設計に適用されうる。
【符号の説明】
【0049】
1、21・・・計測装置
2・・・押圧部
3、23・・・荷重負荷部
4・・・揺動脚部
5・・・距離計
6・・・突起
8・・・錘
10・・・反射部材
E・・・地面
L・・・平行四辺形リンク
α・・・揺動脚部の傾斜角
θ・・・突起の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺さり対象面を押圧する押圧部と、
押圧部に荷重を負荷する荷重負荷部と、
上記押圧部と荷重負荷部とを、平行に相対変位可能に連結する揺動脚部と、
押圧部の下面に設けられた突起と、
押圧部の下方変位量を検出する距離計測手段とを備える突起の刺さり量計測装置。
【請求項2】
上記揺動脚部が、並列状態で一対設けられており、
この一対の揺動脚部と上記荷重負荷部と押圧部とで、平行四辺形リンクが構成されている請求項1に記載の突起の刺さり量計測装置。
【請求項3】
上記平行四辺形リンクが直列に2個形成されており、
2個の平行四辺形リンクが、一の荷重負荷部を共用することによって一体化されている請求項2に記載の突起の刺さり量計測装置。
【請求項4】
上記突起が、異なる傾斜方向の突起と変更されうるように構成されている請求項1から3のいずれかに記載の突起の刺さり量計測装置。
【請求項5】
刺さり対象面に対して、突起を、刺さり対象面に垂直な方向と平行な方向との間の任意の傾斜角をもって押圧する押圧工程と、
上記押圧に伴う突起の、刺さり対象面に向かう方向の変位量を計測する計測工程とを含む突起の刺さり量計測方法。
【請求項6】
上記突起を、刺さり対象面に垂直な方向に向けた状態、及び、この垂直な方向から任意角度傾斜した方向に向けた状態のそれぞれで、上記押圧工程及び計測工程が実行される請求項5に記載の突起の刺さり量計測方法。
【請求項7】
上記押圧工程及び計測工程のそれぞれにおいて刺さり量計測装置を用い、
この刺さり量計測装置が、
刺さり対象面を押圧する押圧部と、
押圧部に荷重を負荷する荷重負荷部と、
上記押圧部と荷重負荷部とを、平行に相対変位可能に連結する揺動脚部と、
押圧部の下面に設けられた突起と、
押圧部の下方変位量を検出する距離計測手段とを備えている請求項5又は6に記載の突起の刺さり量計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−95821(P2012−95821A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245750(P2010−245750)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】