説明

窒化アルミニウム薄膜およびその製造方法

【課題】平坦で薄いAlN薄膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】AlN薄膜2は、III族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を0.001wt%以上10wt%以下含む。該AlN薄膜2は、III族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を0.001wt以上10wt%以下含むAlN焼結体を真空チャンバ内にセットし、基材1を真空チャンバ内にセットした状態で、AlN焼結体にレーザを照射することで発生したプラズマを用いて基材1上に形成可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばトンネル磁気抵抗(TMR:tunneling magnetoresistance)素子の絶縁障壁層として使用可能な窒化アルミニウム(以下、「AlN」とも称する)薄膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AlNは、物理的および化学的に安定した素材であり、また絶縁性、圧電性等の優れた特性をも有しているので、様々な用途に使用されている。AlNの使用例の一例として、トンネル磁気抵抗素子の絶縁障壁層としてAlN薄膜を使用したものが、たとえばAsahi et al.,APPLIED PHISICS LETTERS 89,232511(2006)に記載されている。上記文献では、低温(77K)ではあるものの、GaCrN/AlN/GaCrN強磁性半導体トンネル接合においてTMR効果が確認されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Asahi et al.,APPLIED PHISICS LETTERS 89,232511(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
強磁性体や超電導体によるトンネル磁気抵抗素子においては、トンネル障壁を形成する薄い絶縁障壁層の均一性を確保することが困難である。このことが、トンネル磁気抵抗素子の高性能化(たとえばリーク電流が少なく高ON/OFF比であること)や高再現性を困難なものとしている。
【0005】
一般に、どのような薄膜を作製する際においても、均一で平坦な極薄膜(数nm程度)を作製するのは困難である。これまでは、AlやMgを薄く蒸着したものを後から酸化するなどして得られたAlOx,MgO等でのみ、高い再現性の実現に成功している。これは、AlやMgがともに酸化され易いことによるものであるが、窒化物に関しては、金属薄膜を形成した後に窒化するような手法は困難であり、高い再現性で窒化膜を形成可能な手法は確立されていない。
【0006】
現行のHDD(Hard Disk Drive)の読取へッドや不揮発性磁気メモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)においては、両側強磁性電極層として金属や合金が用いられてきた。
【0007】
ところが、両側強磁性電極層としてGaTMAs(TM:遷移金属磁性イオン)やGaTMN等の強磁性半導体やハーフメタル材料を用いることで、より高いON/OFF比を得ることができ、また化合物半導体をベースとすることで、磁気的特性と光学的特性とを絡み合わせた全く新しい機能デバイスの実現をも期待できる。
【0008】
両側強磁性電極層としてGaTMAsやGaTMN等の強磁性半導体を用いるトンネル磁気抵抗素子において、絶縁障壁層に用いる材料としては、格子整合性が良好で、絶縁性も高いAlNが有望である。
【0009】
しかし、上述のように均一かつ平坦で薄い窒化膜を高い再現性で形成可能な手法は確立されておらず、当然ながらAlNについても、均一かつ平坦で薄いAlNを高い再現性で形成可能な手法は確立されていない。
【0010】
上記文献では、3nmの厚みの薄いAlN絶縁障壁層を形成できたことが報告されているが、該AlN絶縁障壁層の平坦性については言及されていない。またTEM(透過型電子顕微鏡)写真を見る限りにおいては、特に下面の平坦性が良好ではなく、やはり平坦で薄いAlN薄膜の形成は困難であるといえる。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、平坦で薄いAlN薄膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、不可避不純物ではない元素を積極的に窒化アルミニウムに添加することで窒化アルミニウム薄膜の平坦性を向上させようとするものである。より具体的には、本発明に係る窒化アルミニウム薄膜は、III族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を0.001wt%以上10wt%以下含むことを特徴とする。
【0013】
上記添加元素としては、たとえば炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(P)、砒素(As)、ホウ素(B)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)から選ばれた少なくとも1種の元素を挙げることができる。好ましくは、上記添加元素は、炭素やシリコンのようなIV族元素の1種以上である。
【0014】
本発明に係る窒化アルミニウム薄膜の製造方法は、次の各工程を備える。III族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を0.001wt%以上10wt%以下(特に、Ge、Snについては0.001wt%以上5wt%以下が好ましい。)含む窒化アルミニウム焼結体を真空チャンバ内にセットする。基材を真空チャンバ内にセットする。窒化アルミニウム焼結体にレーザを照射してプラズマを発生させ、該プラズマを利用して基材上に上記添加元素を含む窒化アルミニウム薄膜を形成する。
【0015】
上記添加元素を含む窒化アルミニウム焼結体は、たとえば0.001wt%以上10wt%以下の上記添加元素の粉末と、窒化アルミニウムの粉末とを混合して成形した成形体を、窒素雰囲気の真空容器内で焼成することで作製可能である。添加元素としては、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(P)、砒素(As)、ホウ素(B)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)から選ばれた少なくとも1種の元素を挙げることができる。
【0016】
上記基材としては、GaN等の化合物半導体で構成される化合物半導体基板や、Al等の絶縁体で構成される絶縁体基板を使用することができる。そして、該基材を加熱しながら上記添加元素を含む窒化アルミニウム薄膜を形成することが好ましい。
【0017】
上記真空チャンバ内を窒素雰囲気とすることが好ましい。また、上記プラズマは、たとえば固体からの爆発的な粒子放出を伴うプラズマ現象であるアブレーションプラズマである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不可避不純物ではない元素を積極的に窒化アルミニウムに添加するこにより、窒化アルミニウム薄膜の平坦性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1におけるAlN薄膜の断面図である。
【図2】PLD製膜装置の概略構成図を示す図である。
【図3】トンネル磁気抵抗素子の動作原理を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2におけるトンネル磁気抵抗素子の構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図4を用いて説明する。
(実施の形態1)
まず、図1と図2を用いて本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態1におけるAlN薄膜2を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、AlN薄膜2は、基材1上に形成される。基材1の材質としては、導電体、絶縁体、半導体あるいはこれらを組合せた素材等の様々な材質が考えられる。AlN薄膜2の厚みは、典型的には10nm以下程度(たとえば5nm程度)であるので、通常はAlN薄膜2を保持可能な基材が必要となる。
【0022】
上記AlN薄膜2には、不可避不純物ではない元素を積極的に添加する。それにより、AlN薄膜2の平坦性を向上することができる。AlN薄膜2への添加元素としては、たとえばIII族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を挙げることができる。具体的には、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(P)、砒素(As)、ホウ素(B)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)から選ばれた少なくとも1種の元素を添加元素として使用することができる。好ましくは、添加元素として炭素やシリコンのようなIV族元素を少なくとも1種以上使用する。
【0023】
AlN薄膜2への添加元素の添加量は、不可避不純物とはいえない程度の量であればよく、具体的には0.001wt%以上10wt%以下とすればよい。
【0024】
次に、本実施の形態1のAlN薄膜2の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、窒化アルミニウム薄膜の形成に使用可能なPLD(Pulsed Laser Deposition)製膜装置の概略構成図である。
【0025】
ここで、図2を用いて、PLD製膜装置10の概略構成について説明する。図2に示すように、PLD製膜装置10は、レーザ光を照射可能なレーザ光源11と、真空チャンバ12と、ターゲットとなる焼結体原料14を載置可能なステージ15と、該ステージ15を駆動可能なパルスモータ13と、基材1を保持可能な保持部16と、パルスモータ13やレーザ光源11の動作制御を行なうことが可能な制御部17と、反射高速電子線回折装置(RHEED)18と、真空チャンバ12内にガスを供給するガス供給部19と、保持部16に設置され基材1を加熱可能なヒータとを備える。なお、PLD製膜装置10は、上記以外の様々な要素を含むが、説明の便宜上、これらの要素の図示および説明は省略する。
【0026】
まず、III族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を0.001wt%以上10wt%以下含むAlN焼結体を作製する。
【0027】
たとえば、IV族元素である炭素粉末を10wt%と、90wt%のAlN粉末とを混合してプレス成形にて成形体を作製し、該成形体を窒素雰囲気の真空容器内(10−6Torrの圧力下)において2000℃で2時間焼成することでAlN焼結体を作製する。なお、炭素粉末の代わりに、10wt%のシリコン粉末(IV族元素)や、合計で10wt%のシリコン粉末と炭素粉末との混合粉末を使用することもできる。
【0028】
上記のようにして得られたAlN焼結体を、図2に示す真空チャンバ12内にセットする。具体的には、図2に示すステージ15上にセットする。
【0029】
次に、製膜対象物である基材1を、真空チャンバ12内に設置された保持部16の表面上であって上記AlN焼結体と対向する位置にセットする。
【0030】
基材1としては、直径1インチ(約2.5cm)程度のGaN等の化合物半導体で構成される化合物半導体基板や、Al等の絶縁体で構成される絶縁体基板を使用する。
【0031】
このとき、基材1の表面は平坦な状態にしておくことが好ましい。たとえば、単位面積当たりの平均表面粗さをRMS(Root Mean Square)で表した値が0.1nm以下程度の平坦な状態であることが好ましい。基材1の表面を平坦な状態とすることも、AlN薄膜2の表面の平坦性向上に寄与し得る。
【0032】
次に、レーザ光源11から放射されるレーザ光を、焼結体原料14である上記のAlN焼結体に照射する。なお、レーザとしては、たとえば発振波長が248nm、パルス繰り返し周波数が10Hz、パルス当たりのエネルギーが1〜3J/shotのKrFエキシマレーザを使用することができる。また、発振波長が193nmのArFエキシマレーザを使用することもできる。
【0033】
このとき、真空チャンバ12内は、窒素雰囲気とし、1×10−3Torr〜1×10−6Torr以下程度の真空状態としておく。真空チャンバ12内を窒素雰囲気とすることにより、AlN薄膜2の形成の際に窒素を補給することができる。なお、真空チャンバ12内には、ガス供給部19により窒素を供給することができる。
【0034】
レーザ光をAlN焼結体に照射するに際し、上記のような短波長のレーザを用いることが好ましい。短波長のレーザを用いた場合には吸収係数が大きくなるので、AlN焼結体の表面近傍でレーザ光のほとんどが吸収されることとなる。その結果、AlN焼結体の表面温度が急激に上昇し、真空チャンバ12内で、アブレーションプラズマ(固体からの爆発的な粒子放出を伴うプラズマ)を生成することができる。プラズマ中に含まれるアブレーション粒子は、再結合や雰囲気ガスとの衝突・反応などにより状態を変化させながら基材1へと移動する。そして、基材1に到達した各粒子は、基材1上を拡散し、安定なサイトに落ち着いて薄膜となる。それにより、基材1上に、上記のような添加元素を含むAlN薄膜2を成長させることができる。
【0035】
上記AlN薄膜2の成長の際には、基材1を加熱しながら上記添加元素を含むAlN薄膜2を形成することが好ましい。たとえば、800℃程度の温度に基材1を加熱することが好ましい。基材1を加熱するには、真空チャンバ12に設置した上述のヒータを用いればよいが、基材1に電流を流す等の他の手法で基材1を加熱することもできる。
【0036】
なお、AlN薄膜2の膜厚は、真空チャンバ12に取付けた反射高速電子線回折装置(RHEED)18の振動によりモニタすることができる。
【0037】
本願発明者等は、上述の手法で実際に、直径1インチ(約2.5cm)のGaN基板上とAl基板上とに、炭素やシリコンを10wt%含む約5nmの厚みのAlN薄膜2を作製し、表面粗さを測定したので、その結果について下記の表1を用いて説明する。
【0038】
成長後のAlN薄膜2の表面の観察には原子間力顕微鏡(AFM)を用いた。AlN薄膜2の表面における50μm×50μmの大きさの領域を単位面積の領域とし、複数の単位面積の領域を選定する。そして、これらの領域における表面粗さを測定し、平均粗さを算出した。この値を単位面積当たりの表面粗さとし、RMS(Root Mean Square)で表した。その結果を下記の表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1において、比較例は、炭素やシリコンのような元素を添加することなくGaN基板上とAl基板上とに約5nmの厚みのAlN薄膜2を成長させた例であり、実施例1は、GaN基板上とAl基板上とに、炭素を10wt%含み残部がAlNおよび不可避不純物である約5nmの厚みのAlN薄膜2を成長させた例であり、実施例2は、GaN基板上とAl基板上とに、シリコンを10wt%含み残部がAlNおよび不可避不純物である約5nmの厚みのAlN薄膜2を成長させた例であり、実施例3は、GaN基板上とAl基板上とに、炭素とシリコンとを合計で10wt%含み残部がAlNおよび不可避不純物である約5nmの厚みのAlN薄膜2を成長させた例である。
【0041】
表1に示すように、実施例1〜3のいずれも、比較例よりも格段に平坦度が良好であることがわかる。したがって、不可避不純物ではない元素を積極的に添加することにより、AlN薄膜2の平坦性を向上できることがわかる。
【0042】
なお、炭素やシリコンはIV族元素であるので、炭素やシリコン以外のIV族元素を添加した場合も、同様にAlN薄膜2の平坦性を向上できるものと考えられる。また、炭素とシリコンの双方をAlN薄膜2に添加した場合も、良好な平坦性が得られているので、複数種の元素を添加した場合も、AlN薄膜2の平坦性を向上できるものと考えられる。さらに、V族元素やIII族元素は、IV族元素と近い性質を有していることから、炭素やシリコンの場合と同様の効果を期待できる。また、各元素の添加量としては、不可避不純物と区別ができる程度の量、つまり0.001wt%以上であれば、上記のような効果を期待できる。
(実施の形態2)
次に、図3(a),(b)と図4を用いて本発明の実施の形態2について説明する。図3(a),(b)は、トンネル磁気抵抗素子の動作原理を説明するための模式図であり、図4は、本実施の形態1におけるAlN薄膜2を適用したトンネル磁気抵抗素子の構造例を示す断面図である。
【0043】
上述のAlN薄膜2は、トンネル磁気抵抗素子や巨大磁気抵抗素子のような磁気抵抗を利用した機能デバイス、発光ダイオードやレーザダイオードのような発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、スピンFET、HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)等の各種トランジスタのような様々な電子デバイスに適用可能であると考えられる。
【0044】
ここで、本発明のAlN薄膜2の適用例の一例として、本発明のAlN薄膜2をトンネル磁気抵抗素子に適用した場合について説明する。
【0045】
まず、図3(a),(b)を用いて、トンネル磁気抵抗素子の動作原理について説明する。
【0046】
図3(a),(b)に示すように、トンネル障壁層20を間に挟むように第1と第2強磁性電極層30,40を形成する。この第1と第2強磁性電極層30,40の一方が固定層、他方が記録層となる。
【0047】
図3(a)に示すように、第1と第2強磁性電極層30,40の磁化の向きが平行な平行磁化の場合には、トンネル構造の界面における法線方向に関する素子の電気抵抗が小さくなる。その結果、電子がトンネル障壁層20を通過することができ、電極間に電流が流れる。
【0048】
他方、図3(b)に示すように、第1と第2強磁性電極層30,40の磁化の向きが平行な反平行磁化の場合には、トンネル構造の界面における法線方向に関する素子の電気抵抗が大きくなる。そのため、トンネル構造の界面で電子が散乱され、電極間に電流は流れない。
【0049】
次に、図4を用いて、上述のAlN薄膜2を適用したトンネル磁気抵抗素子の構造例について説明する。
【0050】
図4の例では、トンネル磁気抵抗素子は、基板8上に形成される。基板8としては、たとえばGaN基板のような半導体基板を使用することができる。
【0051】
基板8上に、第1強磁性電極層3と、トンネル障壁層としてのAlN薄膜2と、第2強磁性電極層4とを順次形成する。第1と第2強磁性電極層3,4としては、たとえばGaTMAs(TM:遷移金属磁性イオン)やGaTMNを使用することができる。AlN薄膜2は前述の手法で形成することができ、第1と第2強磁性電極層3,4は、たとえばPLD法や分子線エピタキシ(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、スパッタリング法で形成することができる。
【0052】
上記第1強磁性電極層3、AlN薄膜2、第2強磁性電極層4は、各層を形成した後に、それぞれ所定形状にパターニングする。また、第1強磁性電極層3の形成後に、第1強磁性電極層3上に導電層(電極)5を形成する。導電層5は、AlN薄膜2と重ならない位置に形成する。該導電層5は、Cu等の金属材料で構成することができ、たとえばCVD法やスパッタリング法等により金属材料層を形成した後、該金属材料層を所定形状にパターニングすることにより形成可能である。その後、当該積層構造を覆うようにCVD法等によりシリコン酸化物等の絶縁層7を形成する。この絶縁層7に、たとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を施し、第2強磁性電極層4の表面を露出させる。
【0053】
次に、第2強磁性電極層4上に、導電層(電極)を形成する。この導電層も、AlN薄膜2と重ならない位置に形成する。該導電層も、Cu等の金属材料で構成することができ、たとえばCVD法やスパッタリング法等により金属材料層を形成した後、該金属材料層を所定形状にパターニングすることにより形成可能である。
【0054】
以上の工程を経て、図4に示すトンネル磁気抵抗素子を形成することができる。本実施の形態2のトンネル磁気抵抗素子は、トンネル障壁層として、上述のように平坦で、格子整合性も良好で、絶縁性にも優れたAlN薄膜2を備えているので、リーク電流を低減しながら高ON/OFF比を実現することができる。
【0055】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示した実施の形態はすべての点での例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 基材、2 AlN薄膜、3 第1強磁性電極層、4 第2強磁性電極層、5 導電層、7 絶縁層、8 基板、10 PLD製膜装置、11 レーザ光源、12 真空チャンバ、13 パルスモータ、14 焼結体原料、15 ステージ、16 保持部、17 制御部、18 反射高速電子線回折装置、19 ガス供給部、20 トンネル障壁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を0.001wt%以上10wt%以下含むことを特徴とする窒化アルミニウム薄膜。
【請求項2】
前記添加元素は、炭素、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、リン、砒素、ホウ素、スズ、アンチモンから選ばれた少なくとも1種の元素である、請求項1に記載の窒化アルミニウム薄膜。
【請求項3】
前記添加元素は、炭素とシリコンの少なくとも一方である、請求項1または請求項2に記載の窒化アルミニウム薄膜。
【請求項4】
III族元素、IV族元素およびV族元素から選ばれた1種以上の添加元素を0.001wt%以上10wt%以下含む窒化アルミニウム焼結体を真空チャンバ内にセットする工程と、
基材を前記真空チャンバ内にセットする工程と、
前記窒化アルミニウム焼結体にレーザを照射してプラズマを発生させ、該プラズマを用いて前記基材上に前記添加元素を含む窒化アルミニウム薄膜を形成する工程と、
を備えた、窒化アルミニウム薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記添加元素を含む窒化アルミニウム焼結体は、0.001wt%以上10wt%以下の前記添加元素の粉末と、前記窒化アルミニウムの粉末とを混合して成形した成形体を、窒素雰囲気の真空容器内で焼成することにより作製される、請求項4に記載の窒化アルミニウム薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記添加元素は、炭素、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、リン、砒素、ホウ素、スズ、アンチモンから選ばれた少なくとも1種の元素である、請求項4または請求項5に記載の窒化アルミニウム薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記基材は、化合物半導体基板あるいは絶縁体基板であり、前記基材を加熱しながら前記添加元素を含む窒化アルミニウム薄膜を形成する、請求項4から請求項6のいずれかに記載の窒化アルミニウム薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記真空チャンバ内を窒素雰囲気とし、
前記プラズマは、アブレーションプラズマである、請求項4から請求項7のいずれかに記載の窒化アルミニウム薄膜の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−228131(P2009−228131A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12038(P2009−12038)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】