説明

窒化ガリウム結晶およびその製造方法

直径が少なくとも約2.75ミリメートルであり、約10cm−1未満の転位密度を有し、傾斜境界が実質的にないGaN単結晶が提供される。GaN単結晶を形成する方法も開示する。本方法は、チャンバーに、核生成中心、GaN原料物質、およびGaN溶媒を準備することを含む。チャンバーを加圧する。前記チャンバー内に、前記溶媒が前記チャンバーの核生成領域で過飽和状態になるように、第1および第2の温度分布を発生させる。前記第1および第2の温度分布は、チャンバー内で異なる温度勾配を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年3月15日に出願された出願番号第11/376,575号および2006年8月29日に発行された米国特許第7,098,487号の一部継続出願である。本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている上記特許出願の優先権を主張し、かつ上記特許出願からの利益を主張するものである。
連邦政府の委託研究および開発に関する表明
米国政府は、国立標準技術研究所(米国商務省)によって授与された協力契約第70NANB9H3020号に従って本発明に所定の権利を有している。
【0002】
本発明は、一般に、高品質窒化ガリウム単結晶およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
窒化ガリウム(GaN)系光電子および電子デバイスは商業上きわめて重要である。しかし、これらのデバイスの品質および信頼度は、デバイスの半導体層の高い欠陥水準、特に貫通転位によって損なわれている。これらの転位は、サファイアまたは炭化ケイ素などの非GaN基板とGaN系半導体層の格子ミスマッチから発生する可能性がある。その他の欠陥は、GaN系半導体層の成長方法の細部に応じて、熱膨張ミスマッチ、不純物、および傾斜境界から発生する可能性がある。
【0004】
欠陥の存在はエピタキシャル成長した層に有害な影響があり、電子デバイスの性能を損ない、欠陥の濃度および/または影響を低下させるための複雑で時間のかかる製造工程を必要とする。窒化ガリウム結晶の成長方法は数多く提案されているが、今までの方法はなお改良を必要とする。
【0005】
米国特許第5,637,531号および第6,273,948号には、溶媒として液体ガリウムおよびガリウム系合金を使用し、熱力学的安定相としてGaNを維持するために溶融物上に高圧窒素を使用して、高温高圧で窒化ガリウム結晶を成長させる方法が開示されている。このプロセスは、Porowski、「Near defect−free GaN substrates」[MRS Internet J.Nitride Semicond. Research 4S1、G1.3(1999)]に記述されているように、約10〜10cm−2の転位密度を有する導電性GaN結晶、あるいは、約10〜10cm−2の転位密度を有する半絶縁性GaN結晶を成長させることができる。
【0006】
しかし、この導電性結晶は約5×1019cm−3のオーダーの高濃度のn型欠陥を有する。これらの欠陥は酸素不純物および窒素空孔を含むと考えられる。その結果、この結晶は比較的不透明であり、そのスペクトルは可視部の波長の吸収係数が約200cm−1である。その結果、こうした結晶上に作製された発光ダイオード(LED)が放射した光の半分までが基板に吸収されてしまう。これは、サファイアまたは透明なSiC基板上に作製された従来のヘテロエピタキシャルLEDと比較して大きな欠点である。さらに、溶融Gaで成長した名目上はドープされていない結晶の高濃度のn型欠陥は、格子定数を約0.01〜0.02%増加させるが、これにより、その上に蒸着されたドープされていないエピタキシャルGaN層に歪みが生じる。さらに、本方法によって形成されたドープされていないGaN基材は、30〜90cm/V−sというやや限られたキャリア移動度を有しているが、これは高出力デバイスの制約となる可能性がある。
【0007】
液体Ga中で成長したGaN結晶の透明度および転位密度は、成長媒体にMgまたはBeを添加することによって改善することができるが、こうして製造された結晶は半絶縁性であり、約10Ω−cmを超える抵抗率を有している。こうした結晶は、基板自体に1つの電気接点を作る、垂直のデバイスには適切ではない。
【0008】
擬似バルクまたはバルクGaNを成長させるための最も成熟した技術は、水素化物/ハロゲン化物気相エピタキシーであり、HVPEとしても知られている。最も広く使用される手法では、HClが液体Gaと反応して気相GaClを形成し、これが基板に移送され、注入されたNHとここで反応してGaNを形成する。典型的には、蒸着は、サファイア、シリコン、ガリウムヒ素またはLiGaOなどの非GaN基板上で行われる。GaNのヘテロエピタキシャル成長では典型的なようにHVPE成長膜の転位密度は最初は相当高く1010cm−2のオーダーであるが、GaNの厚さが100〜300μmに成長した後は約10cm−2の値に落ちる。
【0009】
HVPEは、より厚い膜では欠陥水準をさらに下げることができるが、ウェハ全体にわたって10cm−2未満の値にはなりそうにない。さらに、基板と膜の間の熱膨張ミスマッチにより、HVPEウェハには歪みが存在する。この歪みのために、成長後に基板と膜を冷却すると反りが生じ、この反りは元の基板を除去した後も残る。
【0010】
理由はまだ理解されていないが、厚いHVPE GaNでは、室温で光の吸収も放射も起らず、帯域端で閾値を有する。透過分光法では、HVPE GaNの吸収は約370nm近くにカットオフがあるが、これは366nm近くの予想されたカットオフから著しくシフトしている。同様に、室温でのフォトルミネセンスピークは、予想されたものより著しく低いエネルギーである3.35eVで生じる。この挙動は、光の一部が放射されるのではなく基板に吸収されてしまうので、紫外線で動作する発光デバイスの性能を損なうことになる。フォトルミネセンスピークのシフトは、デバイスの性能を損なう恐れのある欠陥状態の存在を示す。
【0011】
大面積、低転位密度GaNの成長のための他の広く使用されている方法は、エピタキシャル・ラテラル・オーバーグロース(ELOまたはELOG)、ラテラル・エピタキシャル・オーバーグロース(LEO)、選択領域成長(SAG)、逆ピラミッド形ピットを用いたエピタキシャル成長による転位除去(DEEP)などと様々に呼ばれる。この方法の変形のすべての場合において、ヘテロエピタキシャルGaN成長は、マスク、トレンチなどによって分離された、基板上の一次元または二次元配列の位置で開始される。個々のGaNクリスタライトが成長し、その後それらが結合する。その後、結合したGaN材料の上部でエピタキシャル成長が続き、厚膜または「インゴット」を生成する。典型的には、結合したGaN材料上で形成される厚いGaN層はHVPEで堆積させる。
【0012】
本プロセスは、特にマスク上方の領域において、転位濃度の大きな低下を可能とする。しかし、多くの著者がELO構造を単結晶と呼ぶが、得られたGaN基板は真の単結晶ではない。個々のGaNクリスタライトはそれぞれ1つの粒子を構成し、典型的には、これらの粒子が結合する点に小角度結晶粒界または傾斜境界がある。小角度または傾斜境界は刃状転位の配列として表われ、GaN内に横歪みを発生させる。結晶傾斜の大きさは、マスキングおよび成長条件の細部に左右される。しかし、一般に、粒子結合に関連した少なくとも低レベルの傾斜がある。多くのまたは大部分の結晶学的傾斜は、単に熱膨張ミスマッチの結果であるというより、成長中に直接形成するものである。
【0013】
傾斜粒界組織および横歪みは、インゴット全体にわたって残存する。したがって、このインゴットから切り取られた各基板内にも残存する。言いかえれば、こうしたインゴットから切り取られた基板は、傾斜境界および横歪みのない真の単結晶ではない。さらに、GaN基板は、「標準」HVPE GaNと同じように、室温でのUV吸収およびフォトルミネセンスの欠如の問題を抱えている。
【0014】
GaNの結晶を成長させる他の方法としては、溶媒として超臨界アンモニアを使用するものが挙げられる。いくつかのグループが、超臨界アンモニア中における非常に小さなGaN結晶の成長を報告している。特に、Kolis等の「Materials Chemistry and Bulk Crystal Growth of Group III Nitrides in Supercritical Ammonia」、 Mater.Res.Soc.Symp.Proc.495,367(1998)];「Crystal Growth of Gallium Nitride in Supercritical Ammonia」、J.Cryst.Growth 222,431(2001);「Synchrotron white beam topography characterization of physical vapor transport grown AIN and ammonothermal GaN」、J.Cryst.Growth 246,271(2002);ならびに、Dwilinski等の「AMMONO Method of GaN and AIN Production」、Diamond Relat.Mater.7,1348(1998);「AMMONO Method of BN, AIN, and GaN Synthesis and Crystal Growth」、MRS Internet J. Nitride Semiconductor Res.3,article 25(1997);「On GaN Crystallization by Ammonothermal Method」Acta Phys.Pol.A 90,763(1996);および「GaN Synthesis by Ammonothermal Method」 Acta Phys. Polonica A 88,833(1995)]が挙げられる。しかし、現在まで、やや低品質の小さな結晶またはmmサイズの結晶しか報告されていない。さらに、これらの著者は、種晶上の成長を最適化するために温度勾配プロフィールを使用することを開示していない。
【0015】
Demazeau等のフランス特許FR第2,796,657号には、圧力0.05〜20kbar、温度100〜600℃、および温度勾配10〜100℃で、超臨界アンモニアまたはヒドラジン中でGaNを成長させる方法が開示されている。Demazeauによって教示された、これらの条件に到達する唯一の装置は、Tuttle型コールドシール圧力容器である。この装置は、当技術分野において周知であり、最大圧力5〜6kbarに限定されている。E Kaldis(North−Holland,1982)によって編集された、JacobsおよびSchmidtの「High Pressure Ammonolysis in Solid−State Chemistry」、Curr.Topics Mater.Sci.8で議論されているように、NHを使用する場合、標準圧力容器は約5〜6kbarの圧力に限定されている。このため、最高温度、反応速度、および、多分、結晶の品質は限られている。したがって、Demazeauは、より高い圧力範囲に達することができる方法を開示しておらず、寸法が1mmより大きなGaN結晶を実証していない。さらに、Demazeauは、種晶上の成長を最適化するために温度勾配プロフィールを使用することを教示していない。
【0016】
D’Evelyn等の米国特許第6,398,867号には、5kbarを超える圧力、550℃を超える温度、および5〜300℃の温度勾配で、超臨界流体中でGaNを温度勾配再結晶する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願第11/376,575号
【特許文献2】米国特許第7,098,487号
【特許文献3】米国特許第5,637,531号
【特許文献4】米国特許第6,273,948号
【特許文献5】フランス特許FR第2,796,657号
【特許文献6】米国特許第6,398,867号
【特許文献7】米国特許出願第09/683,659号
【特許文献8】米国特許出願第09/683,658号
【特許文献9】米国特許出願「High pressure/high temperature apparatus with improved temperature control for crystal growth」
【特許文献10】米国特許出願第09/694,690号
【特許文献11】米国特許出願第09/839,941号
【特許文献12】米国特許出願第10/314,986号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Porowski、「Near defect−free GaN substrates」[MRS Internet J. Nitride Semicond.Research 4S1、G1.3(1999)]
【非特許文献2】Kolis等の「Materials Chemistry and Bulk Crystal Growth of Group III Nitrides in Supercritical Ammonia」、Mater.Res.Soc.Symp.Proc.495,367(1998)]
【非特許文献3】「Crystal Growth of Gallium Nitride in Supercritical Ammonia」、J.Cryst.Growth 222,431(2001)
【非特許文献4】「Synchrotron white beam topography characterization of physical vapor transport grown AIN and ammonothermal GaN」、J.Cryst.Growth 246,271(2002)
【非特許文献5】Dwilinski等の「AMMONO Method of GaN and AIN Production」、Diamond Relat.Mater.7,1348(1998)
【非特許文献6】「AMMONO Method of BN, AIN, and GaN Synthesis and Crystal Growth」、MRS Internet J.Nitride Semiconductor Res.3,article 25(1997)
【非特許文献7】「On GaN Crystallization by Ammonothermal Method」Acta Phys.Pol.A 90,763(1996)
【非特許文献8】「GaN Synthesis by Ammonothermal Method」Acta Phys.Polonica A 88,833(1995)]
【非特許文献9】E Kaldis(North−Holland, 1982)によって編集された、JacobsおよびSchmidtの「High Pressure Ammonolysis in Solid−State Chemistry」、Curr.Topics Mater.Sci.8
【非特許文献10】T.Hino等によるAppl.Phys.Lett.76,3421(2000)
【非特許文献11】G Yu等、Applied Physics Letters 70、3209(1997)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様によれば、直径が少なくとも約2.75ミリメートルであり、約10cm−1未満の転位密度を有し、傾斜境界が実質的にないGaN単結晶が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、直径が少なくとも約2ミリメートルで、傾斜境界を有していないGaN単結晶が提供される。この単結晶は、結晶温度300℃で、約3.38〜約3.41eVの光子エネルギーにピークがあるフォトルミネセンススペクトルを有する。
【0021】
本発明の別の態様によれば、GaN単結晶を形成する方法が提供される。この方法は、(a)チャンバーの第1領域に核生成中心を準備すること、(b)前記チャンバーの第2領域にGaN原料物質を準備すること、(c)前記チャンバーにGaN溶媒を準備すること、(d)前記チャンバーを加圧すること、(e)前記溶媒が前記チャンバーの前記第1領域で過飽和であるように、かつ、GaN結晶が前記核生成中心上で成長するように前記核生成中心と前記GaN原料物質の間に第1の温度勾配があるように、第1の温度分布を生成しこれを保持すること、(f)前記溶媒が前記チャンバーの前記第1領域で過飽和であるように、かつ、GaN結晶が前記核生成中心上で成長するように前記核生成中心と前記GaN原料物質の間に第2の温度勾配があるように、前記チャンバーに第2の温度分布を生成することを含み、前記第2の温度勾配が前記第1の温度勾配より大きさが大きく、前記第2の温度分布での結晶成長速度が前記第1の温度分布での結晶成長速度より大きい、方法である。
【0022】
本発明の別の態様によれば、GaN単結晶を形成する方法が提供される。この方法は、(a)第1端部を有するチャンバーの第1領域に核生成中心を準備すること、(b)第2端部を有する前記チャンバーの第2領域にGaN原料物質を準備すること、(c)前記チャンバーにGaN溶媒を準備すること、(d)5〜80kbarの圧力に前記チャンバーを加圧すること、(e)前記溶媒が前記チャンバーの前記第1領域で過飽和であるように、かつ、GaN結晶が前記核生成中心上で成長するように前記第1端部と前記第2端部の間に第1の温度勾配があるように、約550℃〜約1200℃の平均温度を有する第1の温度分布を生成しこれを保持すること、(f)前記溶媒が前記チャンバーの前記第1領域で過飽和であるように、かつ、GaN結晶が前記核生成中心上で成長するように前記第1端部と前記第2端部の間に第2の温度勾配があるように、前記チャンバーに約550℃〜約1200℃の平均温度を有する第2の温度分布を生成することを含み、前記第2の温度勾配が前記第1の温度勾配より大きさが大きく、前記第2の温度分布での結晶成長速度が前記第1の温度分布での結晶成長速度より大きい、方法である。
【0023】
本発明の別の態様によれば、GaN単結晶を形成する方法が提供される。この方法は、(a)第1端部を有するチャンバーの第1領域に核生成中心を準備すること、(b)第2端部を有する前記チャンバーの第2領域にGaN原料物質を準備すること、(c)前記チャンバーにGaN溶媒を準備すること、(d)前記チャンバーを加圧すること、(e)前記第1端部と前記第2端部の間に第1の温度勾配があるように、第1の温度分布を生成しこれを保持すること、(f)前記溶媒が前記チャンバーの前記第1領域で過飽和であるように、かつ、GaN結晶が前記核生成中心上で成長するように前記第1端部と前記第2端部の間に第2の温度勾配があるように、前記チャンバーに第2の温度分布を生成することを含み、第1の温度勾配がゼロであるか、または第2の温度勾配とは符号が逆である方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるGaN単結晶を作るために使用したカプセルの概略の横断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態によるGaN単結晶を作るために使用した圧力容器の概略の横断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態によるGaN結晶の一連のフォトルミネセンススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の現在の好ましい実施形態を詳細に説明する。可能な場合は、同一の符号を図面全体に用いて同一または類似の部分を示す。
【0026】
結晶組成物の欠陥とは、空孔、格子間欠陥、および不純物などの点欠陥;転位(刃状、らせん、混合)などの一次元の線欠陥;傾斜境界および結晶粒界などの二次元の面欠陥;ならびにボイド、孔、ピット、および亀裂などの三次元の拡張欠陥の1つまたは複数を指す。欠陥とは、その対象が欠陥の特定のサブセットであることを文脈または用語が示していなければ、上述の1つまたは複数を指すことになる。傾斜境界がない、または傾斜境界が実質的にないとは、その結晶組成物が、わずかなレベルの傾斜境界を有するか、傾斜境界がTEMまたはX線回折によって容易に検出できないような傾斜角を有する可能性があることを意味する。あるいは、その結晶組成物が、例えば少なくとも2.75ミリメートル、またはより大きな、かつ指定された距離で互いに大きく離れた複数の傾斜境界を含む可能性があることを意味する。ここで、「ない」または「実質的にない」は、所定の用語と共に使用することができ、この修飾された用語は、ないとみなされながらも、そのわずかな数または微量を含むことができる。さらに、「ない」または「実質的にない」は、さらに、その修飾された用語が完全に存在していないことを含むこともできる。
【0027】
GaN結晶には、x、y、wの文字で表わされる三次元がある。wは厚さであり、xおよびyはwに垂直な結晶面の寸法である。丸いまたは円形の結晶では、x=y=結晶の直径である。
【0028】
本明細書で使用するブールは、インゴットと交換可能に使用することができ、0.2cmを超える体積を有する最小厚さ(z寸法)0.2cmの結晶を指す。
【0029】
本発明者らは、GaNが超臨界アンモニアおよび他の超臨界GaN溶媒中で非常に容易に核を形成し、その結果、再結晶すると1つの大きな結晶ではなく多くの小さな結晶を作ることを見出した。先行技術で公知の方法で高品質の小さなGaN結晶を成長させることができるが、これらの方法では、高品質の(xまたはy寸法で)2.75mmより大きな結晶を成長させていない。本発明者らは、種晶を取り付ける改善された方法と共に、適切な温度勾配を含む改善された温度プロフィールを使用する方法が、これらの限界を克服することができることを見出した。
【0030】
本発明の実施形態によれば、単一の核から真の単結晶を合成し、x、y寸法の少なくとも1つが少なくとも2.75mmの大きさになるまで、これを成長させることができる。結晶の形が円形またはほぼ円形の場合、単結晶は直径が少なくとも2.75mmである。単結晶は、n型であり、導電性であり、光学的に透明であり、横歪みと傾斜境界がなく、約10cm−2未満の転位密度を有するものとすることができる。好ましくは、転位密度は約10cm−2未満である。さらにより好ましくは、転位密度は約100cm−2未満である。
【0031】
この高品質の大きな窒化ガリウム単結晶は、超臨界流体溶媒中、高温高圧で温度勾配再結晶によって成長させることができる。結晶は、真の単結晶である、つまり、傾斜境界が実質的にない。
【0032】
これらの窒化ガリウム結晶は、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチレンジアミン、メラミン、または他の窒素含有流体を含むがこれらに限定されない超臨界流体中で、温度勾配再結晶によって成長させることができる。原料物質としては、単結晶または多結晶GaNを挙げることができる。原料物質用の単結晶または多結晶GaNは、当技術分野で公知の任意の多くの方法によって成長させることができる。原料物質の他の形態、例えば、無定形GaNあるいはGa金属またはGa化合物などのGaN前駆体も使用することができる。より詳細に以下に議論するように、原料GaNは、チャンバーまたはカプセルの、原料物質を配置する原料領域を、核生成中心を配置する結晶成長領域から分離する下記のバッフル開口部を通り抜けないように、大きさが十分大きい1個または複数個の粒子を含むことが好ましい。
【0033】
GaN成長のための核生成は、カプセルの結晶成長部上の、容器壁の一部など種晶のない核生成中心、または例えばサファイアなどの非GaN種晶を有する核生成中心で誘発することができる。しかし、プロセスの制御がより簡単であり、成長した結晶の品質がより高いので、GaN種晶を準備することが好ましい。
【0034】
種晶は、少なくともxまたはy寸法が1mmより大きいこと、および高品質である(実質的に傾斜境界がなく、転位密度が約10cm−2未満、好ましくは約10cm−2未満である)ことが好ましい。様々な型のGaN種晶を準備することができるが、これらには、サファイアまたはSICなどの非GaN基板上のエピタキシャルGaN層、HVPE、昇華または有機金属化学気相成長法(MOCVD)で成長させた自立型GaN膜、あるいは前の試験において超臨界流体中で成長させた結晶が含まれる。
【0035】
原料物質および1つまたは複数の種晶を使用する場合は、多孔性バッフルで少なくとも2つの領域に分割された圧力容器またはカプセルに配置する。典型的なカプセルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれた、2002年1月31日に出願された、「High Temperature Pressure Capsule For Processing Material in Supercritical Fluids」と題する、D’Evelyn等の米国特許出願第09/683,659号に記述されている。
【0036】
図1は典型的なカプセル100を示す。カプセル100は壁102を含む。この壁は、カプセル100のチャンバー104を囲繞するために密閉することができる。このチャンバーは、多孔性バッフル110によって分離された第1領域108と第2領域106に分割されている。結晶成長中、カプセル100は、種晶120または他の核生成中心、および原料物質124を含んでおり、これらはバッフル110で互いに分離されている。原料物質124および種晶120は、例えば、それぞれ第2領域106および第1領域108に配置することもできる。カプセル100はさらに溶媒材料130も含んでいる。下記の成長プロセス中、成長した結晶132は種晶120上で成長する。また、溶媒は超臨界状態である。
【0037】
バッフル110としては、例えば、その中に複数個の穴を有するプレート、または金属織物を挙げることができる。バッフル110の開口面積率は、1%〜50%、好ましくは約5%〜約40%とすることができる。原料物質124から種晶120または成長した結晶132への栄養物質の輸送は、自己対流が流体を撹拌するようにカプセル100の冷たい部分が暖かい部分の上にある場合、超臨界流体としての溶媒中で最適化される。多くの溶媒中で、GaNの溶解度は温度と共に上昇する。この場合、原料物質124をカプセルの底の暖かい部分に配置すべきであり、種晶120をカプセル上部の冷たい部分に配置すべきである。
【0038】
種晶120は、壁102または他の材料からの干渉が最小限の状態で全方向に結晶成長できるように、種晶にあけた穴を通して、例えばワイヤー(150)でつるすことが好ましい。この穴は、例えば、レーザー、ダイヤモンドまたは研磨ドリル、あるいは超音波ドリルであけることができる。あるいは、種晶120は、種晶の一端部のまわりにワイヤーを結び付けることによりつるすこともできる。
【0039】
しかし、いくつかの溶媒の場合には、GaNの溶解度は温度と共に低下する。この場合、種晶120をカプセル下部の暖かい部分に配置すべきであり、原料物質124をカプセル上部の冷たい部分に配置すべきである。原料物質124は、バッフル110に直接接触させるのではなくバッフル110から離れた多孔性バスケット140に配置することが好ましい。何故ならば、直接接触させる配置は、バッフル110を介した流体および栄養物質の輸送を妨げる恐れがあるからである。
【0040】
溶媒へのGaNの溶解度を上げるために、鉱化剤を、原料物質124と一緒にまたは別々にカプセル100に添加することもできる。鉱化剤としては、(i)LiN、MgおよびCaなどのアルカリおよびアルカリ土類窒化物;(ii)LiNH、NaNHおよびKNHなどのアミド;(iii)尿素および関連化合物;(iv)NHFおよびNHClなどのアンモニウム塩;(v)NaCl、LiSまたはKNOなどのハロゲン化物、スルフィドまたは硝酸塩;(vi)NaNなどのアジ化物塩;(vii)その他のLi塩;(viii)上記の組合せ;ならびに(ix)上記の少なくとも1つとGaおよび/またはGaNとの化学反応で形成された化合物の少なくとも1つを挙げることができる。
【0041】
n型またはp型のGaN結晶を得るために、必要に応じて、ドーパント源もカプセル100に添加する。酸素または炭素などの偶発的な不純物は、他の点が通常ならば結晶をn型にする。Si(n型)およびMgまたはZn(p型)などのドーパントは、原料GaN中の不純物として添加することができる。あるいは、ドーパントは、Si、Si、SiCl、Mg、MgF、Zn、ZnF、またはZnなどの金属、塩、または無機化合物として添加することができる。
【0042】
カプセル100を、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチレンジアミン、メラミンまたは他の窒素含有流体などの、加工条件下で超臨界流体を構成する溶媒130で充填する。好ましい実施形態では、溶媒130としてアンモニアを使用する。カプセルの自由容積、すなわち原料物質、1つまたは複数の種晶およびバッフルで占められていない体積の25%〜100%、または好ましくは70%〜95%を溶媒130で充填して、カプセル100を密閉する。
【0043】
カプセルを充填し密閉する方法は、例えば、上述の1/31/02に出願された米国特許出願第09/683659号に記述されている。例えば、カプセル100を、溶媒130が液体または固形物のいずれかとなる温度まで冷却することができる。カプセル100を十分に冷却した後、カプセル100の開いたチャンバーと流体導通状態にあるように溶媒源を配置し、凝縮または注入のいずれかで、この時点では開いているチャンバー中へ溶媒を導入する。開いたチャンバーへ所望量の溶媒130を導入した後、チャンバーを密閉する。チャンバーは、例えば、壁102の一部を挟むか折りたたんで溶接部を形成することにより密閉することができる。
【0044】
密閉したカプセル100は、約550℃〜約3000℃、または好ましくは約550℃〜約1200℃の温度、および約5kbar〜約80kbar、または好ましくは約5kbar〜約20kbarの圧力を発生させることができる容器内に配置する。典型的な圧力容器は、その全体が参照により本明細書に組み込まれた、2002年1月31日に出願された、「Improved Pressure Vessel」と題する、D‘Evelyn等の米国特許出願第09/683,658号に記述されている。
【0045】
図2は、圧力容器210と、囲まれたカプセル100とを示す。図2に示した圧力容器210は、ダイを有する液圧プレスである。あるいは、この圧力容器は、マルチアンビルプレスを含んでもよく、または上述の米国特許出願第09/683,658号に記述されているようなダイと強化されたエンドフランジを含んでもよい。
【0046】
圧力容器210は、圧縮ダイ204ならびにトップシールとボトムシール220、222で囲まれた圧力媒体214を含む。圧力媒体は、例えば、NaCl、NaBrまたはNaFであってもよい。
【0047】
圧力容器210は、カプセル100の加熱制御のためのワット数制御系216を備えている。ワット数制御系216は、カプセル100を加熱する発熱体218、およびこの発熱体218を制御するコントローラ222を備えている。ワット数制御系216は、さらに好ましくは、カプセル100に関連した温度信号を発生させるための少なくとも1つの温度センサー224をカプセル100に隣接して備えている。
【0048】
圧力容器210は、好ましくは、カプセル100内の温度勾配を含めて、カプセルチャンバー内に温度分布(すなわちカプセルチャンバー内の位置の関数としての温度)が得られるように構成されている。一実施形態では、温度勾配は、カプセル100を、他端部より、セル(圧力容器210内の領域)の一端部の近くに配置することにより達成することができる。あるいは、温度勾配は、その長さに沿って不均一な抵抗率を有する少なくとも1つの発熱体218を設けることにより発生させることができる。少なくとも1つの発熱体218の不均一な抵抗率は、例えば、不均一な厚さを有する少なくとも1つの発熱体218を設けることにより、この少なくとも1つの発熱体218の選択された点を穿孔することにより、またはこの少なくとも1つの発熱体218の長さに沿った選択された点に、抵抗率が異なる少なくとも2つの材料のラミネートを備えた少なくとも1つの発熱体218を設けることにより得ることができる。一実施形態では、少なくとも1つの温度センサー224は、カプセル100の対向する端部230、232間の温度勾配を測定し制御するために設けられた、少なくとも2つの独立した温度センサーを含む。一実施形態では、閉ループ温度制御が、セル内の少なくとも2つの位置に設けられている。この少なくとも1つの発熱体218は、カプセル100の2つの端部間に所望の温度勾配を達成するために、個々に電力を供給することができる複数の区域をさらに含むこともできる。高圧セル内の少なくとも2つの位置の独立した温度制御を提供する典型的な装置および方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれた、2002年12月18日に出願された、D’Evelyn等の米国特許出願「High pressure/high temperature apparatus with improved temperature control for crystal growth」に記述されている。
【0049】
カプセル100を、約1℃/hr〜1000℃/hrの平均速度で、好ましくは約550℃〜1200℃の成長温度まで加熱する。圧力セル210に関して上述されているように、セル内にカプセルを非対称に配置すること、あるいは非対称に加熱することなどにより温度勾配をカプセル内に存在させることができる。この温度勾配は、加熱シーケンス全体にわたって過飽和を発生させる効果がある。本発明者等は、このことが自然な核生成を促進することを見出した。
【0050】
本発明の一実施形態では、系が平衡段階で平衡状態であるように、成長温度での温度勾配は、最初は小さくする。すなわち、約1分〜2時間の間は、25℃未満、好ましくは約10℃未満とする。本出願で使用される温度勾配とは、例えば、制御用熱電対を配置したカプセル両端部での温度差である。原料物質124の位置での温度に対する種晶120または核生成中心の位置での温度勾配は、やや小さい可能性がある。
【0051】
必要に応じて、核生成中心が設けられたカプセルの領域の、加熱中に形成された可能性がある、自然に核形成された結晶をすべてエッチングして除去するために、温度勾配を、核生成中心で結晶成長が生じる段階に対して、平衡段階では符号が逆になる(すなわち、核生成中心でエッチングが生じ、原料物質で成長が生じる)ように設定する。言いかえれば、正の温度勾配で結晶成長が生じる場合は、温度勾配を負に設定する。その逆もある。
【0052】
この平衡期間の後に成長期間を設けることができる。成長期間では、温度勾配の大きさは高められており、温度勾配は、成長がより大きな速度で、種晶で生じるような符号を有する。例えば、温度勾配は、約0.01℃/hr〜25℃/hrの速度で、成長がより速いより大きな値に高めることができる。結晶成長中、温度勾配を、5℃〜300℃の大きさに保持することができ、成長中に上方または下方に調節することができる。必要に応じて、温度勾配を、種晶で成長が生じる符号とは逆の符号を有するように変更することができる。温度勾配の符号を、さらに1回または複数回逆にすることにより、自然に形成された核をすべて交互にエッチングして除去し、1つまたは複数の核生成中心または種晶120上の成長を促進することができる。
【0053】
成長期間が終了した後、カプセルの温度を、約1℃/hr〜1000℃/hr、好ましくは約1℃/hr〜300℃/hrの速度で徐々に下げて、成長した結晶132への熱衝撃を最小化することができる。カプセルおよび圧力媒体を含むセルを圧力容器210から取り出し、カプセル100をセルから取り出す。
【0054】
溶媒130は、カプセルを冷やして溶媒の蒸気圧を1バール未満に下げ、カプセルに孔をあけ、次いで溶媒が蒸発するようにこれを暖めることにより、取り出すことが便利であり得る。カプセルを切断して開き、成長した結晶を取り出す。結晶は、例えば水、アルコールまたは他の有機溶媒の少なくとも1つなどの適切な洗浄剤、および鉱酸で洗って鉱化剤を除去することができる。
【0055】
単結晶の品質は、室温でGaNの帯域端に生じるフォトルミネセンスなどの特性評価技術によって表わすことができる。結晶は、さらに加工しスライスして1枚または複数のウェハとし、ラップ仕上げを行い、研摩し、かつ化学研磨することができる。この単結晶窒化ガリウム結晶、およびこれから形成されたウェハは、電子および光電子デバイス用の基板として有用である。
【0056】
結晶は、当技術分野で公知の標準方法によって特性を評価することができる。転位密度の測定には、カソードルミネセンス(CL)およびエッチピット密度が便利である。CLイメージングにより転位密度の非破壊手段が得られ、試料の調製を必要としない。転位は、GaNにおける発光しない再結合中心である。したがって、CLではダークスポットとして見える。CLイメージのダークスポットの濃度を測定して、簡単に転位密度を求めることができる。
【0057】
ある場合にはより決定的かもしれない第2の便利な方法はエッチピット密度である。こうしたエッチング方法の1つは、例えば気相HClエッチングであり、参照により本明細書に組み込まれた、T.Hino等によるAppl.Phys.Lett.76,3421(2000)に記述されている。
【0058】
これらの2つの方法を商用銘柄のHVPE GaNの試料のGa面に適用し、1〜2×10cm−2の転位密度(ダークスポット密度またはエッチピット密度)を得た。これは、同様の材料について、メーカーおよび他の研究者によって報告されている値とよく一致している。
【0059】
成長したGaNの光吸収および発光特性は、当技術分野で周知のように、光吸収およびフォトルミネセンス分光法によって求めることができる。電気的性質は、ファンデルポー法によるホール効果の測定、水銀プローブCV、およびホットプローブ技術によって求めることができる。
【0060】
結晶は、当技術分野で周知の方法によって、1枚または複数のウェハにスライスすることができる。GaN結晶またはウェハは、エピタキシャルAllnGa1−x−yN膜(0<x<1、0<y<1、および0<x+y<1)、発光ダイオード、レーザーダイオード、光検出器、アバランシェフォトダイオード、トランジスター、ダイオード、ならびにその他の光電子および電子デバイスの基板として有用である。GaN基板上にホモエピタキシャル発光ダイオードおよびレーザーダイオードを形成する典型的な方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれた、10/23/2000にD’Evelyn等によって出願された米国特許出願第09/694,690号「Homoepitaxial GaN−based light emitting device and method for producing」に記述されている。GaN基板上にホモエピタキシャル光検出器を形成する典型的な方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれた、4/20/2001にD’Evelyn等によって出願された米国特許出願第09/839,941号「Homoepitaxial GaN−based photodetector and method for producing」に記述されている。GaN基板上にアバランシェフォトダイオードを形成する典型的な方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれた、米国特許出願「Avalanche photodiode for use in harsh environments」、2002年12月10日に出願されたSandvik等の米国特許出願第10/314,986号に記述されている。
【0061】
上記の実施形態では、結晶成長中の温度勾配と比較して温度勾配をかなり小さくした、またはゼロもしくは負に設定した平衡期間を温度プログラムに含めることにより、および種晶を成長チャンバー内につるすことにより、核生成の制御を改善している。この改善された結晶成長方法により、高品質で大面積のGaN結晶が得られる。
【0062】
上記の方法によって形成されたGaN単結晶は、エッチピット密度測定、フォトルミネセンス、および光吸収技術を使用して特性を評価した。形成された単結晶は、100cm−1未満の転位密度、300°Kの結晶温度で約3.38〜約3.41eVの光子エネルギーにピークがあるフォトルミネセンススペクトル、および700nm(赤)〜465nm(青)の波長で5cm−1未満の光吸収係数を有しているという特徴がある。
【0063】
実施例
以下の比較例(比較例1〜3)を、実施例(実施例1〜4)との比較のために提供する。これらの比較例は、本発明の先行技術を構成するものではなく、比較の目的で提供するものである。
【0064】
比較例1
0.1gのNHF鉱化剤を、直径0.5インチの銀のカプセルの底に配置した。5.0%の開口面積を有するバッフルを、カプセルの中央部分に配置した。また、0.31gの多結晶GaN原料物質を、カプセルの上半分に配置した。次いで、カプセルを、直径0.583インチの鋼リングと一緒に充填/密閉組立体内に閉じ込めた。カプセルおよび充填/密閉組立体を、ガスマニホールドに移動し、0.99gのアンモニアを充填した。次に、銀カプセルと銀プラグの間にコールドウェルドが形成され、鋼リングがプラグを囲繞して補強するように、カプセルの開いた上端部にプラグを挿入した。次いで、カプセルを充填/密閉組立体から取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。セルをおよそ700℃に加熱し、およそ85℃の温度勾配で55時間この温度に保持した。次いで、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを抜いた後カプセルを開くと、多数の自然に核形成した結晶がカプセルの底に観察された。直径およそ0.36mmの1つの結晶を任意に選択し、625℃で30分間、Ar中で、10%HCl中でエッチングした。エッチピットは観察されなかった。露出したc面の面積はおよそ5.3×10−4cmであった。これは、エッチピット密度が(1/(5.3×10−4cm))すなわち1900cm−2未満であることを示している。それに反して、水素化物/ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)で成長させた厚さ200μmのGaN片に、同一のエッチング処理を適用したところ、Ga面上に2×10cm−2のエッチピット密度が観察された。
【0065】
比較例2
それぞれ重さ3〜4mgの3つの種晶を、0.10gのNHF鉱化剤と共に直径0.5インチの銀カプセルの底に配置した。5.0%の開口面積を有するバッフルを、カプセルの中央部分に配置した。また、0.34gの多結晶GaN原料物質を、カプセルの上半分に配置した。次いで、カプセルを、直径0.675インチの鋼リングと一緒に充填/密閉組立体内に閉じ込めた。カプセルおよび充填/密閉組立体を、ガスマニホールドに移動し、1.03gのアンモニアを充填した。次に、銀カプセルと銀プラグの間にコールドウェルドが形成され、鋼リングがプラグを囲繞して補強するように、カプセルの開いた上端部にプラグを挿入した。次いで、カプセルを充填/密閉組立体から取り出し、ゼロストロークHPHT装置に挿入した。セルを、約15℃/minでおよそ500℃まで、次いで0.046℃/minでおよそ700℃に加熱し、およそ28℃の温度勾配で6時間後者の温度で保持した。次いで、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを抜いた後カプセルを開くと、多数の自然に核形成した結晶がカプセルの底に観察された。加熱速度が非常に遅いにもかかわらず、自然に核形成した結晶上での成長に対して、種晶上での成長は非常にわずかであった。
【0066】
比較例3
重さ10.4mgのGaN種晶を、0.04gのNHF鉱化剤と共に直径0.5インチの銀カプセルの底に配置した。5.0%の開口面積を有するバッフルを、カプセルの中央部分に配置した。また、0.74gの多結晶GaN原料物質を、カプセルの上半分に配置した。次いで、カプセルを、直径0.675インチの鋼リングと一緒に充填/密閉組立体内に閉じ込めた。カプセルおよび充填/密閉組立体を、ガスマニホールドに移動し、1.14gのアンモニアを充填した。次に、銀カプセルと銀プラグの間にコールドウェルドが形成され、鋼リングがプラグを囲繞して補強するように、カプセルの開いた上端部にプラグを挿入した。次いで、カプセルを充填/密閉組立体から取り出し、ゼロストロークHPHT装置に挿入した。セルを、約15℃/minでおよそ500℃まで、次いで0.05℃/minで680℃に加熱し、およそ70℃の温度勾配で53時間後者の温度で保持した。次いで、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを抜いた後カプセルを開くと、加熱速度が非常に遅いにもかかわらず、多数の自然に核形成した結晶がカプセルの底に観察された。種晶は著しく成長し、重さ41.7mgおよび直径約2.5mmになった。しかし、自然に核形成した結晶の重さは種晶の重さの増加の10倍以上であった。
【0067】
実施例1
重さ19.7mgのGaN種晶に、高パワーレーザーで小さな穴をあけた。この種晶を、35%の開口面積を有する銀バッフルから0.13mmの銀ワイヤーでつるし、0.10gのNHF鉱化剤と共に直径0.5インチの銀カプセルの下半分に配置した。0.74gの多結晶GaN原料物質を、カプセルの上半分に配置した。次いで、カプセルを、直径0.583インチの鋼リングと一緒に充填/密閉組立体内に閉じ込めた。カプセルおよび充填/密閉組立体を、ガスマニホールドに移動し、0.99gのアンモニアを充填した。次に、銀カプセルと銀プラグの間にコールドウェルドが形成され、鋼リングがプラグを囲繞して補強するように、カプセルの開いた上端部にプラグを挿入した。次いで、カプセルを充填/密閉組立体から取り出し、ゼロストロークHPHT装置に挿入した。K型熱電対で測定して、カプセルの底の温度がおよそ700℃、かつカプセルの上半分の温度がおよそ660℃になるまで、セルを約11℃/minの速度で加熱した。次いで、温度勾配ΔTがゼロに低下するまで、ヒーターの上半分を通って流れる電流を増加した。ΔT=0に1時間保持した後、ΔTがおよそ35℃に上昇するまで、カプセルの上半分の温度を5℃/hrで下げ、温度をこの値に78時間保持した。次いで、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを抜いた後カプセルを開くと、種晶の重さは33.4mgまで増加しているのが観察された。結晶は、266nmの励起(周波数4倍YAG)を用いたフォトルミネセンスで特性を評価した。いくつかの温度でのスペクトルを図3に示す。具体的には、結晶試料は、5K、20K、77Kおよび300Kの温度でフォトルミネセンスで特性を評価した。5K〜300Kの範囲のすべての温度で、ルミネセンスピークは3.38〜3.45eVに現われる。
【0068】
実施例2
前の試験で得た重さ12.6mgのGaN種晶を、35%の開口面積を有する銀バッフルから0.13mmの銀ワイヤーで、レーザーであけたドリル穴を通してつるし、直径0.5インチの銀カプセルの下半分に配置した。0.10gのNHF鉱化剤と1.09gの多結晶GaN原料物質を、カプセルの上半分に配置した。次いで、カプセルを、直径0.583インチの鋼リングと一緒に充填/密閉組立体内に閉じ込めた。カプセルおよび充填/密閉組立体をガスマニホールドに移動し、これに0.95gのアンモニアを充填した。次に、銀カプセルと銀プラグの間にコールドウェルドが形成され、鋼リングがプラグを囲繞して補強するように、カプセルの開いた上端部にプラグを挿入した。次いで、カプセルを充填/密閉組立体から取り出し、ゼロストロークHPHT装置に挿入した。K型熱電対で測定して、カプセルの底の温度がおよそ700℃、かつカプセルの上半分の温度がおよそ640℃になるまで、セルを約11℃/minの速度で加熱した。次いで、温度勾配ΔTがゼロに低下するまで、ヒーターの上半分を通って流れる電流を増加した。ΔT=0に1時間保持した後、ΔTがおよそ50℃に上昇するまで、カプセルの上半分の温度を5℃/hrで下げ、温度をこの値に98時間保持した。次いで、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを抜いた後カプセルを開くと、種晶は重さ24.3mgまで成長していた。次いで、結晶を、625℃で30分間、Ar中で10%HCl中でエッチングした。いくつかのエッチピットが、種晶領域の上方のc面に観察された。エッチピット密度は約10cm−2であった。しかし、種晶に対して横方向に成長した領域にはエッチピットがなかった。新しく横方向に成長したGaNの面積はおよそ3.2×10−2cmであった。これは、エッチピット密度が(1/3.2×10−2cm)すなわち32cm−2未満であることを示している。
【0069】
実施例3
前の試験で得た重さ48.4mgと36.6mgの2つのGaN種晶を、35%の開口面積を有する銀バッフルから0.13mmの銀ワイヤーで、レーザーであけたドリル穴を通してつるし、直径0.5インチの銀カプセルの下半分に配置した。0.10gのNHF鉱化剤と1.03gの多結晶GaN原料物質を、カプセルの上半分に配置した。次いで、カプセルを、直径0.583インチの鋼リングと一緒に充填/密閉組立体内に閉じ込めた。カプセルおよび充填/密閉組立体を、ガスマニホールドに移動し、これに1.08gのアンモニアを充填した。次に、銀カプセルと銀プラグの間にコールドウェルドが形成され、鋼リングがプラグを囲繞して補強するように、カプセルの開いた上端部にプラグを挿入した。次いで、カプセルを充填/密閉組立体から取り出し、ゼロストロークHPHT装置に挿入した。K型熱電対で測定して、カプセルの底の温度がおよそ700℃、かつカプセルの上半分の温度がおよそ642℃になるまで、セルを約11℃/minで加熱した。次いで、温度勾配ΔTがゼロに低下するまで、ヒーターの上半分を通って流れる電流を増加した。ΔT=0に1時間保持した後、ΔTがおよそ30℃に上昇するまで、カプセルの上半分の温度を5℃/hrで下げ、温度をこの値に100時間保持した。次いで、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを抜いた後カプセルを開くと、種晶は重さ219.8mgまで成長していた。2つの結晶の内小さなものから切れ端を折って、分析用に選んだ。Cary500iスペクトロメーターを使用して結晶の光透過スペクトルを測定した。透過率は、赤(700cm−1)から青(465cm−1)までの波長範囲で60%を超えていた。GaNの屈折率[G Yu等、Applied Physics Letters 70、3209(1997)]および結晶の厚さ(0.206mm)に基づく光吸収係数は同じ波長範囲で5cm−1未満であった。この結晶は、ホットポイントプローブ測定によりn型導電性を有することが分かった。次いで、結晶を、625℃で30分間、Ar中で10%HCl中でエッチングした。結晶全体にエッチピットはなかった。結晶のc面の面積はおよそ4.4×10−2cmであった。これは、エッチピット密度が(1/4.4×10−2cm)すなわち23cm−2未満であることを示している。
【0070】
実施例4
前の試験で得た重さ25.3mgのGaN種晶を、35%の開口面積を有する銀バッフルから0.13mmの銀ワイヤーで、レーザーであけたドリル穴を通してつるし、直径0.5インチの銀カプセルの下半分に配置した。0.10gのNHF鉱化剤と0.98gの多結晶GaN原料物質を、カプセルの上半分に配置した。次いで、カプセルを、直径0.583インチの鋼リングと一緒に充填/密閉組立体内に閉じ込めた。カプセルおよび充填/密閉組立体を、ガスマニホールドに移動し、これに1.07gのアンモニアを充填した。次に、銀カプセルと銀プラグの間にコールドウェルドが形成され、鋼リングがプラグを囲繞して補強するように、カプセルの開いた上端部にプラグを挿入した。次いで、カプセルを充填/密閉組立体から取り出し、ゼロストロークHPHT装置に挿入した。K型熱電対で測定して、カプセルの底の温度がおよそ700℃、かつカプセルの上半分の温度がおよそ648℃になるまで、セルを約11℃/minで加熱した。次いで、温度勾配ΔTが3℃に低下するまで、ヒーターの上半分を通って流れる電流を増加した。ΔT=3℃に1時間保持した後、ΔTがおよそ30℃に上昇するまで、カプセルの上半分の温度を5℃/hrで下げ、次いでΔTがおよそ60℃に上昇するまで2.5℃/hrでさらに下げ、温度をこの値に20時間保持した。次いで、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを抜いた後カプセルを開くと、種晶は重さ40.2mgまで成長していた。次いで、結晶を、50%HNO中で30分間エッチングした。1列のエッチピットが、種晶と新しく横方向に成長した材料の間の界面上のc面に観察された。しかし、新しく成長したGaNのその他の領域にはエッチピットはなかった。ピットのない新しく成長したGaNの面積はおよそ6.9×10−2cmであった。これは、エッチピット密度が(1/6.9×10−2cm)すなわち14cm−2未満であることを示す。
【0071】
GaN結晶材料を形成する上記の改善された方法により、より大きな高品質GaN結晶の成長が可能になる。これらの改善されたGaN結晶により、効率、信頼度、収率が改善され、出力特性、破壊電圧が高く、暗電流および雑音が低下した、性能の改善された電子および光電子デバイスの製作が可能になる。
【0072】
本発明を、詳細にかつその特定の実施形態に関して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な変更および修正をそこに加えることができることは、当分野の技術者には明らかであろう。したがって、本発明の広がりおよび範囲は、上記の典型的な実施形態のどれによっても限定されるべきでなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0073】
100 典型的なカプセル
102 壁
104 チャンバー
106 第2領域
108 第1領域
110 多孔性バッフル
120 種晶
124 原料物質
130 溶媒材料
132 成長した結晶
140 ワイヤー
150 多孔性バスケット
204 圧縮ダイ
210 圧力容器
214 圧力媒体
216 ワット数制御系
218 発熱体
220 トップシール
222 ボトムシール
222 コントローラ
224 温度センサー
230 対向する端部
232 対向する端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さwと、前記厚さwに垂直な結晶面を画定する寸法xおよびyとを有するGaN単結晶であって、少なくとも1つの寸法xまたはyが少なくとも約2.75ミリメートルであり、約10cm−2未満の転位密度を有し、傾斜境界が実質的になく、単結晶がブールである、GaN単結晶。
【請求項2】
前記GaN単結晶が、単一の種晶または核から成長する、請求項1に記載のGaN単結晶。
【請求項3】
前記単結晶が光学的に透明であり、波長465〜700nmで光吸収係数が100cm−1未満である、請求項1に記載のGaN単結晶。
【請求項4】
波長465〜700nmで前記光吸収係数が5cm−1未満である、請求項3に記載のGaN単結晶。
【請求項5】
前記単結晶が、n型およびp型半導体材料の1つを含む、請求項1に記載のGaN単結晶。
【請求項6】
前記単結晶が、n型半導体材料を含み、光学的に透明であり、波長465〜700nmで光吸収係数が100cm−1未満である、請求項5に記載のGaN単結晶。
【請求項7】
前記単結晶が、結晶温度300Kで、約3.38〜約3.41eVの光子エネルギーにピークがあるフォトルミネセンススペクトルを有する、請求項1に記載のGaN単結晶。
【請求項8】
前記転位密度が約1000cm−2未満である、請求項1に記載のGaN単結晶。
【請求項9】
前記転位密度が約100cm−2未満である、請求項8に記載のGaN単結晶。
【請求項10】
厚さwと、前記厚さwに垂直な結晶面を画定する寸法xおよびyとを有するGaN単結晶を含む半導体構造であって、前記GaN単結晶が、少なくとも寸法xまたはyが少なくとも約2.75ミリメートルであり、約10cm−2未満の転位密度を有し、傾斜境界が実質的になく、前記単結晶がブールである、半導体構造。
【請求項11】
前記GaN単結晶が、単一の種晶または核から成長する、請求項10に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記単結晶が光学的に透明であり、波長465〜700nmで光吸収係数が100cm−1未満である、請求項10に記載の半導体構造。
【請求項13】
波長465〜700nmで前記光吸収係数が5cm−1未満である、請求項12に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記単結晶が、n型およびp型半導体材料の1つを含む、請求項10に記載の半導体構造。
【請求項15】
前記単結晶が、n型半導体材料を含み、光学的に透明であり、波長465〜700nmで光吸収係数が100cm−1未満である、請求項14に記載の半導体構造。
【請求項16】
前記単結晶が、結晶温度300Kで、約3.38〜約3.41eVの光子エネルギーにピークがあるフォトルミネセンススペクトルを有する、請求項10に記載の半導体構造。
【請求項17】
前記転位密度が約1000cm−2未満である、請求項10に記載の半導体構造。
【請求項18】
前記転位密度が約100cm−2未満である、請求項17に記載の半導体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−507561(P2010−507561A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534644(P2009−534644)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/022592
【国際公開番号】WO2008/051585
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】