説明

窒化物ベースのHEMTの高温イオン注入

高電子移動度トランジスターを形成する方法が開示される。この方法は、規定された位置においてIII族窒化物層にイオンを注入するステップを含み、イオンは、注入されるとき層と接点の金属との間に改善されたオーム接点を生成し、注入は、室温より高く、III族窒化物層に加えられる損傷の量を低減するのに十分に熱いが、ゲートでの漏出またはエピタキシャル層解離をもたらす表面の問題が生じる温度よりも低い温度で行われる。チタン、アルミニウム、ニッケルおよびそれらの合金で構成される群から選択されるオーム接点が、該III族窒化物層上の注入される規定された位置に付加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的には、DARPA契約番号4400121759の下で開発された。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0002】
(背景)
本発明は、半導体デバイスに関係し、より具体的には、III族窒化物ベースの高電子移動度トランジスター(HEMT)に関係する。
【0003】
HEMTは、多様な用途(マイクロ波通信、ミリメートル波通信、レーダー、電波天文学、セル電話、直接放送衛星受信器および電子戦闘システムを含む)に用いられ得る半導体デバイスである。
【0004】
従来の半導体は、通例、n型不純物でドーピングされて自由電子を生成する伝導層を必要とするが、層内の電子は、これらの不純物と衝突する傾向があり、このことが電子を減速させる。HEMTは、電界効果トランジスターであり、電界効果トランジスターは、異なるバンドギャップを有する二つの材料間のヘテロ接合を利用して、ドーピングされた領域ではなく伝導性チャネルを形成する。HEMTは、典型的には、伝導層を形成するために不純物を必要とせず、したがって、より高い電子移動度を可能にする。
【0005】
HEMTは、半導体材料(例えば、ケイ素(Si)およびガリウムヒ素(GaAs))から規則的に製作される。Siは、低い電子移動度を有し、このことは、高いソース抵抗を生成し、したがって、Si半導体材料は、大電力、高周波数および高温の用途にはあまり適さないことがあり得る。
【0006】
レーダー通信、セルラー通信および衛星通信における信号増幅のデバイスは、しばしばGaAsベースのHEMTを用いる。GaAs半導体材料は、Siよりも高い電子移動度および低いソース抵抗を有し、このことは、GaAs半導体材料がより高い周波数で動作することを可能にする。しかしながら、GaAsは、高周波数用途における大電力GaAs HEMTの使用を妨げる、比較的小さいバンドギャップを有する。
【0007】
窒化ガリウム(GaN)半導体材料ならびに窒化アルミニウムおよび窒化ガリウムで構成される合金(AlGaN)から作られる半導体材料の製造における改善は、高周波数、大電力および高温用途における使用のためのAlGaN/GaN HEMTの使用に関心の焦点を当てている。AlGaNおよびGaNは、大きいバンドギャップを有し、このことによって、AlGaNおよびGaNは、これらのタイプの用途に対してSiおよびGaAsよりも優れている。
【0008】
GaN上に層化されたAlGaNの使用ならびに二つの材料の結晶構造の不適合および二つの材料の異なるバンドギャップエネルギーは、所定の状況下で二次元電子気体(2DEG)の生成をもたらす。2DEG層は、より小さいバンドギャップ材料において蓄積し、非常に高い電子濃度を含む。より大きいバンドギャップ材料に由来する電子は、より高い電子移動度を可能にする2DEGに移動する。
【0009】
高い電子濃度と高い電子移動度との組み合わせは、高周波数用途に対して、AlGaN/GaN HEMTに、金属半導体電界効果トランジスター(MESFET)よりも優れた性能を提供する。
【0010】
AlGaN/GaN HEMTを製作する一つの方法は、基板(典型的には、炭化ケイ素(SiC))上にGaNの層を形成することと、GaN層上にAlGaNの薄い層を形成することと、AlGaN層上にオーム接点およびゲート接点を提供することとを含む。
【0011】
従来、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)および金(Au)の合金が、オーム接点を形成している。電子接点として機能するために、合金は、合金が配置されるAlGaN層ではなく、2DEG層に対してオーム性でなければならない。この合金に対するAuの付加は、接点が2DEG層に対してオーム性であることを可能にするが、Auはまた、合金に形成しにくさを与える。
【0012】
当該分野で一般的によく理解されているAlGaN/GaN HEMT上の低抵抗オーム接点を形成する別の方法は、オーム接点領域においてイオン注入を利用する。この態様での注入は、Ti/Ni/Al接点の使用を可能にし、Auの使用によって生じる合金の形成しにくさを排除する。
【0013】
それにもかかわらず、この注入プロセスは、多用量の注入イオン(注入される領域内で十分な活性化率を得るために用いられなければならない)に起因する別の問題をもたらす。多用量の注入イオンは、大量の結晶破壊をもたらす。この破壊は、デバイスをアニールすることによって修正され得るが、SiCおよびAlGaNは、アニーリングによって再結晶化することが困難である。SiCおよびAlGaNを適切に再結晶化させるために、アニーリング時間(temperature)をより長くすることが用いられ得る。しかしながら、より長く時間をかけることは、デバイスの他の特徴を損傷する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、多用量のイオンを用い、注入された結晶に与える損傷がより少なく、そのためアニーリングの必要がより少ない注入プロセスに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(概要)
一局面において、本発明は、高電子移動度トランジスターを形成する方法である。方法は、規定された位置においてIII族窒化物層にイオンを注入することを含み、イオンは、注入されるとき、層と接点の金属との間に改善されたオーム接点を生成する。
【0016】
注入は、室温より高く、III族窒化物層に加えられる損傷の量を低減するのに十分に熱いが、ゲートでの漏出またはエピタキシャル層解離をもたらす表面の問題が生じる温度よりも低い温度で行われる。オーム接点が、III族窒化物層上の注入される規定された位置に付加される。
【0017】
別の局面において、方法は、III族窒化物層内に首尾よくイオンを注入するのに十分に高いが、III族窒化物層を融解または破壊する電流よりも低いイオンビーム電流を、室温より高く、III族窒化物層に加えられる損傷の量を低減するのに十分に熱いが、ゲートでの漏出またはエピタキシャル層解離をもたらす表面の問題が生じる温度よりも低い温度で、注入を行うことを含む。
【0018】
さらに別の局面において、本発明は、トランジスター前駆体であって、トランジスター前駆体は、炭化ケイ素およびサファイアで構成される群から選択される成長基板と、成長基板上の窒化ガリウムの層と、電流がHEMTの配向において印加されるとき、窒化ガリウム層と窒化アルミニウムガリウムの層との間の界面で二次元電子気体を生成する窒化ガリウム層上の窒化アルミニウムガリウムの層と、オーム性金属が規定された注入される領域に付加されるとき、窒化アルミニウムガリウム層と窒化ガリウム層とのオーム特性を改善する窒化アルミニウムガリウム層と窒化ガリウム層とにおける規定された注入される領域を含み、トランジスター前駆体の規定された注入される領域は、約250℃と約900℃との間の温度を有する。
【0019】
本発明の前記および他の目的と利点と、ならびにそれらが遂行される態様は、添付の図面と結びつけて理解される以下の詳細な説明に基づいて、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従ったAlGaN/GaN HEMTの図式的な断面図である。
【図2】図2〜4は、異なる条件下でケイ素イオンを注入された三つの窒化ガリウムウェーハの写真である。
【図3】図2〜4は、異なる条件下でケイ素イオンを注入された三つの窒化ガリウムウェーハの写真である。
【図4】図2〜4は、異なる条件下でケイ素イオンを注入された三つの窒化ガリウムウェーハの写真である。
【図5】図5は、さまざまな条件下でケイ素イオンを注入されたウェーハの可視範囲における透過スペクトルを描く。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
図1は、本発明の実施形態に従って構成されているHEMT10に基づくAlGaN/GaNの概略的な断面図を図示する。HEMTは、当該分野内で一般的によく理解されている材料(例えば、炭化ケイ素(SiC)またはサファイア(Al))から形成された基板11を含む。GaN層12は、基板11上に提供される。HEMT10は、GaN層12の上に提供されたAlGaN層13を含む。
【0022】
好適には、SiCは、基板11を形成する。SiCの結晶格子構造は、サファイアよりも密にIII族窒化物に適合し、高品質のIII族窒化物薄膜をもたらす。さらには、SiCは、非常に高い熱伝導性を有し、非常に高い熱伝導性は、デバイスのより大きな総出力電力を可能にする。
【0023】
AlGaN層13は、GaN層12よりも広いバンドギャップを有し、そのことは、AlGaN層13からGaN層12への自由電荷移動をもたらす。電荷は、AlGaN層13とGaN層12との界面で蓄積し、二次元電子気体(2DEG)(図示されていない)を形成する。2DEGは、非常に高い電子移動度を有し、高周波数で非常に高い相互コンダクタンスを有するHEMT10をもたらす。ゲート14に印加される電圧は、ゲート14の下で2DEG内の電子の流れを制御し、電子の流れ全体に対する制御を可能にする。好適には、ゲート14は、ショットキーゲートである。
【0024】
AlGaN層13に提供されたソース接点15およびドレイン接点16は、好適にはチタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニッケル(Ni)で形成される。オーム接点15およびオーム接点16のために用いられる従来の合金は、Ti、Al、Niおよび金(Au)で形成される。Auの付加は、合金に形成しにくさを与え、そのため本発明の接点15および接点16は、好適にはAuを含まない。オーム接点に対する他の候補組成物は、窒化チタンタングステン(Ti−W−N)、窒化チタン(Ti−N)、モリブデン(Mo)およびケイ化モリブデンを含む。
【0025】
n型ドーパントの高イオンビーム電流を用いる高温イオン注入は、注入される領域20および注入される領域21を作る。好適には、ドーパントイオンは、Siである。
これらの注入される領域20および注入される領域21は、接点15および接点16が2DEGに対してオーム性であることを可能にする。
【0026】
本明細書で用いられる場合、高温とは、ゲート14での漏出またはエピタキシャル層解離をもたらす表面の問題が生じる温度よりも低いが、室温よりも高い温度を含むように理解されるべきである。好適には、注入が生じる温度は、約250℃と約900℃との間である。
【0027】
本明細書で用いられる場合、高イオンビーム電流とは、結晶を融解するか、または破壊する電流よりも低いが、AlGaN層13およびGaN層12の中へ首尾よくイオンを注入するのに十分に高いビーム電流を含むように理解されるべきである。好適には、ビーム電流は、30μAと130μAとの間にある。
【0028】
一実施形態において、本発明は、AlGaN/GaN HEMTであり、注入される領域20および注入される領域21は、40μAのイオンビーム電流を650℃の温度で注入されている。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、AlGaN/GaN HEMTであり、注入される領域20および注入される領域21は、120μAのイオンビーム電流を650℃の温度で注入されている。
【0030】
第三の実施形態において、本発明は、AlGaN/GaN HEMTであり、注入される領域20および注入される領域21は、40μAのイオンビーム電流を350℃の温度で注入されている。
【0031】
第四の実施形態において、本発明は、AlGaN/GaN HEMTであり、注入される領域20および注入される領域21は、120μAのイオンビーム電流を350℃の温度で注入されている。
【0032】
本発明はまた、高温イオン注入を用いてHEMTを製作する方法を含む。米国特許第7,230,284号は、基板11上にGaN層12を形成し、GaN層12上にAlGaN層13を形成する方法を開示している。
【0033】
マスク層は、AlGaN層13の一部分のみを保護し、AlGaN層13の一部分は、注入されず、注入されるべき領域内に結晶を露出されたままにしておく。マスク層は、高温、高イオンビーム電流注入の条件に耐える能力があり、別に注入ステップまたはデバイスに悪影響を及ぼすことのない材料である。例えば、マスク層は、酸化物で形成され得る。
【0034】
次いで、デバイスは、高温において維持され、高電流ビームは、n型ドーパントイオン(例えば、Siイオン)をAlGaN層13を通じてGaN層12の中に注入し、注入される領域20および注入される領域21を形成する。イオンは、オーム接点15およびオーム接点16がDEGに対してオーム性に作用することを可能にする深さに注入される。
【0035】
この方法の特定の実施形態において、保護層は、注入されるべき領域の上に配置され得る。より特定の実施形態において、窒化ケイ素(Si)が保護層である。保護層は、イオンビームによって作られるAlGaN層に対する損傷の量を低減する。AlGaNがアニーリング法を用いて再結晶化するのが特に困難であり得るので、保護層の使用は、好適である。
【0036】
注入の後で、アニーリングプロセスは、損傷した注入される領域20および注入される領域21を改善する。アニーリングがデバイスの他の部分を損傷する可能性を有するので、より短いアニーリング時間が所望される。高温での注入は、注入される領域へのより少ない損傷をもたらし、したがってより短いアニーリング時間を可能にし、そのことは、アニーリングに基づく二次的な損傷の可能性を低減する。
【0037】
オーム接点15およびオーム接点16は、次いで、注入される領域20および注入される領域21の上のAlGaN層13上に形成される。オーム接点15およびオーム接点16は、注入される領域20および注入される領域21を通じて2DEGと電子的に接続する。好適には、Ti、NiおよびAlの合金が、オーム接点15およびオーム接点16を形成する。
【0038】
ゲート14は、2DEGの上のAlGaN層13上に形成され得る。ゲート14に印加される電圧は、2DEG内の電子の流れを制御し、電子の流れ全体に対する制御を可能にする。好適には、ゲート14は、ショットキーゲートである。
【0039】
図2〜4における各ウェーハは、Siイオンを注入されたGaNである。図2〜4は、高温でこの方法の注入ステップを行うことが、室温での注入と同じくらいに注入された結晶を損傷することを回避することを図示する。図2〜4において、より淡い影は、より少ない結晶の損傷に基づいて、より多くの光の通過を示し、一方で、より暗い影は、より多くの結晶の損傷に基づいて、より少ない光の通過を示す。
【0040】
図2において、ウェーハの左上4分の1 30は、350℃の温度で120μAのイオンビーム電流を注入されている。ウェーハの右下4分の1 31は、室温で120μAのイオンビーム電流を注入されている。左上4分の1 30は、右下4分の1 31よりもかなり明るく、注入中のより高い温度に起因した損傷がかなり少ないことを示している。
【0041】
同様に、図3において、ウェーハの左上4分の1 32は、650℃の温度で120μAのイオンビーム電流を注入されている。ウェーハの右下4分の1 33は、室温で120μAのイオンビーム電流を注入されている。左上4分の1 32は、右下4分の1 33よりもかなり明るく、注入中のより高い温度に起因した損傷がかなり少ないことを有意に示している。
【0042】
図2におけるウェーハの左上4分の1 30と図3におけるウェーハの左上4分の1 32との比較はまた、より高い温度での注入が注入プロセスによって作られる結晶の損傷の量を低減することを示している。
【0043】
高電流イオンビームの使用は、低電流イオンビームに対する二つの別個の利点を提供する。高電流イオンビームを用いることは、所与の用量のドーパントイオンを注入する時間を低減し、したがってコストを低減する。加えて、高電流イオンビームの使用は、注入中のウェーハの温度をさらに高め、注入された結晶へのより少ない損傷をもたらす。
【0044】
図4におけるウェーハは、より高い電流のイオンビームを用いる第二の利点を図示する。図4において、ウェーハの左上4分の1 34は、350℃の温度で120μAのイオンビーム電流を注入されている。ウェーハの右下4分の1 35は、350℃の温度で40μAのイオンビーム電流を注入されている。左上4分の1 34は、右下4分の1 35よりもかなり明るく、注入中のより高い温度に起因した損傷がかなり少ないことを示している。左上4分の1 34において損傷が低減されたことの一部は、ウェーハの右下4分の1 35が注入されている間、左上4分の1 34が350℃で効果的にアニールされた事実に原因を帰し得る。アニールによって作られた透明度の差は、より高いイオンビーム電流によって作られた透明度の差よりも程度が小さいと考えられている。
【0045】
図5は、より具体的な態様における前述の明るさと暗さとの比較を図示する。グラフは、可視範囲にわたる光の波長に対して、Siを注入されたGaNウェーハを通じて透過された光のパーセンテージを座標で示している。
【0046】
二つの最も高いプロット(一方は四角、他方はひし形で形成されている)は、注入されていない二つのGaNウェーハの透過率を示す。図5に示されるように、これらの注入されていないウェーハは、最も高いパーセンテージの可視光を透過する。
【0047】
最も低いプロット(下向きの三角で形成されている)は、可視範囲にわたって120μAのイオンビーム電流を用いて室温においてSiを注入されたGaNウェーハの透過率を示す。図5に示されるように、このウェーハは、最も低いパーセンテージの可視光を透過する。
【0048】
円で形成された中間レベルのプロットは、可視範囲にわたって120μAのイオンビーム電流を用いて650℃の温度でSiを注入されたGaNウェーハの透過率を示す。ひし形で形成された中間レベルのプロットは、可視範囲にわたって120μAのイオンビーム電流を用いて350℃の温度でSiを注入されたGaNウェーハの透過率を示す。下向きの三角で形成された中間レベルのプロットは、可視範囲にわたって40μAのイオンビーム電流を用いて350℃の温度でSiを注入されたGaNウェーハの透過率を示す。これらの三つの中間レベルのプロットは、本発明の実施形態である三つの異なるウェーハの透過スペクトルを示す。図5に示されるように、これらの三つのウェーハは、室温で注入されたウェーハよりも多くの可視範囲にわたる光を透過する。図5はまた、これらの三つのウェーハが、注入されていないウェーハよりも少ない可視範囲にわたる光を透過することを示す。
【0049】
ひし形で形成された中間レベルのプロット(すなわち、120μAの電流を用いて350℃の温度で注入されたウェーハ)が、下向きの三角で形成された中間レベルのプロット(すなわち、40μAの電流を用いて350℃の温度で注入されたウェーハ)よりも可視範囲にわたってより高い値を有することもまた、留意されるべきである。この比較は、典型的には、より高いビーム電流で注入されたウェーハが、より低いビーム電流で注入されたウェーハよりも高いパーセンテージの光を透過することを示す。
【0050】
プロットは、高温での注入(例えば、三つの中間レベルのプロット)が、室温での注入(例えば、最も低いプロット)よりもはるかに高いパーセンテージの可視光を透過するウェーハを生成することを示す。透過のパーセンテージは、ウェーハの結晶構造へのより少ない損傷と相関関係がある。したがって、高温での注入は、室温での注入よりもウェーハの結晶構造に与える損傷が少ない。
【0051】
プロットはまた、より高いイオンビーム電流を注入されたウェーハ(例えば、ひし形で形成された中間レベルのプロット)が、より低いイオンビーム電流を注入されたウェーハ(例えば、下向きの三角で形成された中間レベルのプロット)よりも高いパーセンテージの可視光を透過することを示す。ここでもまた、透過のパーセンテージは、ウェーハの結晶構造へのより少ない損傷と相関関係がある。したがって、より高いイオンビーム電流の注入は、より低いイオンビーム電流の注入よりもウェーハの結晶構造に与える損傷が少ない。
【0052】
本発明の方法は、上記で開示された方法よりも結晶への損傷がかなり少ないHEMTを生成する。その結果、本発明の方法を用いて生成されたHEMTは、従来のHEMTよりも性能が優れている。
【0053】
以下の表は、室温で注入されたHEMTデバイスと、本発明に従って高温で注入されたHEMTデバイスとの性能に関するデータを含む。
【0054】
【表1】

表の複数のウェーハは、1.00×1016原子/cmのSiの同じ注入用量および同じ温度のアニール(1080℃)を受けた。データは、両方のウェーハが同じRF電力、ゲートソース電圧、ドレインソース電圧および電流を供給されたことを示す。高温注入されたHEMTは、より高い利得、出力電力、電力付加効率、ドレインソース電流およびより低い平均オン抵抗を有していた。このデータは、本発明に従って形成されたデバイスが、室温でのイオン注入を用いて形成されたデバイスよりも良好なデバイス性能を有することを示す。
【0055】
図面および明細書において本発明の好適な実施形態が述べられ、特定の用語が利用されているが、特定の用語は、包括的かつ説明的な意味においてのみ用いられ、制限のためには用いられておらず、本発明の範囲は、特許請求の範囲において規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスターを形成する方法であって、該方法は、
規定された位置においてIII族窒化物層にイオンを注入することであって、該イオンは、注入されるとき、該層と接点の金属との間に改善されたオーム接点を生成し、該注入は、室温より高く、III族窒化物層に加えられる損傷の量を低減するのに十分に熱いが、ゲートでの漏出またはエピタキシャル層解離をもたらす表面の問題が生じる温度よりも低い温度で行われる、ことと、
オーム接点を、該III族窒化物層上の注入される規定された位置に付加することと
を包含する、方法。
【請求項2】
チタンと、アルミニウムと、ニッケルと、チタン、アルミニウムおよびニッケルの合金と、窒化チタンタングステンと、窒化チタンと、モリブデンと、ケイ化モリブデンとで構成される群から選択されたオーム接点を付加することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記III族窒化物層に、約250℃と約900℃との間の温度でイオンを注入することを包含する、請求項1に記載の高電子移動度トランジスターを形成する方法。
【請求項4】
前記III族窒化物層に、約30μAと約130μAとの間のイオンビーム電流を注入することを包含する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高電子移動度トランジスターを形成する方法。
【請求項5】
AlGaN層への損傷の量を低減するために、前記III族窒化物層に、該III族窒化物層の上部に配置された保護層を通じてイオンを注入することを包含する、請求項1に記載の高電子移動度トランジスターを形成する方法。
【請求項6】
前記規定された位置でない位置での注入を防ぐために、前記注入するステップより前に前記III族窒化物層上にマスク層を配置することを包含する、請求項1に記載の高電子移動度トランジスターを形成する方法。
【請求項7】
高電子移動度トランジスターを形成する方法であって、該方法は、
III族窒化物層上に保護層を配置することであって、該保護層は、該III族窒化物層への損傷の量を低減する、ことと、
規定された位置において該III族窒化物層に、該保護層を通じてイオンを注入することであって、該イオンは、注入されるとき、該層と接点の金属との間に改善されたオーム接点を生成し、該注入は、該III族窒化物層内に首尾よくイオンを注入するのに十分に高いが、該III族窒化物層を融解または破壊する電流よりも低いイオンビーム電流を行われ、該注入は、室温より高く、該III族窒化物層に加えられる損傷の量を低減するのに十分に熱いが、ゲートでの漏出またはエピタキシャル層解離をもたらす表面の問題が生じる温度よりも低い温度で行われる、ことと、
チタン、アルミニウム、ニッケルおよびそれらの合金で構成される群から選択されたオーム接点を、該III族窒化物層上の該注入される規定された位置に付加することと
を包含する、方法。
【請求項8】
前記III族窒化物層に、約250℃と約900℃との間の温度でイオンを注入することを包含する、請求項7に記載の高電子移動度トランジスターを形成する方法。
【請求項9】
前記III族窒化物層に、30μAと130μAとの間のイオンビーム電流を注入することを包含する、請求項7に記載の高電子移動度トランジスターを形成する方法。
【請求項10】
トランジスター前駆体であって、該トランジスター前駆体は、
成長基板と、
該成長基板上の窒化ガリウムの層と、
電流がHEMTの配向において印加されるとき、窒化ガリウム層と窒化アルミニウムガリウムの層との間の界面で二次元電子気体を生成する該窒化ガリウム層上の窒化アルミニウムガリウムの層と、
オーム性金属が規定された注入される領域に加えられるとき、該窒化アルミニウムガリウム層と該窒化ガリウム層とのオーム特性を改善する該窒化アルミニウムガリウム層と該窒化ガリウム層とにおいて規定された注入される領域とを備え、該トランジスター前駆体の該規定された領域は、約250℃と約900℃との間の温度を有する、トランジスター前駆体。
【請求項11】
前記成長基板は、炭化ケイ素およびサファイアで構成される群から選択される、請求項10に記載のトランジスター前駆体。
【請求項12】
前記窒化アルミニウムガリウム層上のマスクをさらに備え、該マスクは、規定された開口部を有し、該開口部は、次いで前記注入される領域を規定する、請求項10に記載のトランジスター前駆体。
【請求項13】
前記マスクは、二酸化ケイ素、窒化ケイ素および二酸化ケイ素と窒化ケイ素との組み合わせで構成される群から選択される、請求項12に記載のトランジスター前駆体。
【請求項14】
前記規定された注入される領域は、約350℃と約800℃との間の温度を有する、請求項10に記載のトランジスター前駆体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−537447(P2010−537447A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522985(P2010−522985)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067608
【国際公開番号】WO2009/029329
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(506078378)クリー, インコーポレイティッド (26)
【Fターム(参考)】