窒化物半導体素子の製造方法
【課題】窒化珪素層を形成した場合でも、窒化物半導体層の転移密度を低減することができるとともに、窒化物半導体層の表面モフォロジーを優れたものとすることができる窒化物半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】斜めファセットを有する第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程において、有機金属気相成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下である窒化物半導体素子の製造方法である。
【解決手段】斜めファセットを有する第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程において、有機金属気相成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下である窒化物半導体素子の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体発光ダイオード素子、窒化物半導体レーザ素子および窒化物半導体トランジスタ素子などの窒化物半導体素子の製造に用いられる基板としては、窒化ガリウム基板、炭化珪素基板、またはサファイア基板などが挙げられるが、コストおよび量産性などの点で優位性を有するサファイア基板が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、サファイア基板とその上に形成される窒化ガリウムなどの窒化物半導体層との格子不整合率が高いため、窒化物半導体層に多くの貫通転位が生じるといった問題が生じる。貫通転位は、窒化物半導体発光ダイオード素子における発光効率の低下、窒化物半導体レーザ素子における短寿命化、および窒化物半導体トランジスタ素子における低電子移動度化などの様々な特性悪化の原因となる。
【0004】
そこで、たとえば特許文献1(特開2002−43233号公報)には、GaN層の間にSiN層を挿入することによって、最表面に配置されるGaN層の転位密度を低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−43233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GaN層上にSiN層を部分的に形成することによって窒化物半導体素子を製造する場合には、SiN層が存在する箇所にはGaN層が成長しないため、SiN層の形成部分で転位が終端する。
【0007】
しかしながら、SiN層が存在しない箇所においては、転位がそのまま貫通していくため、転位が上方に伝播する場合には、GaN層における転位密度の効果的な低減を期待することができない。
【0008】
また、たとえばGaN層が斜めファセットを有する場合にSiN層の形成面積を大きくしたときには、GaN層の埋め込みが困難となり、GaN層の表面モフォロジーの悪化を招くという問題が生じる。
【0009】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、窒化珪素層を形成した場合でも、窒化物半導体層の転移密度を低減することができるとともに、窒化物半導体層の表面モフォロジーを優れたものとすることができる窒化物半導体素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、第1の窒化物半導体層上に窒化珪素層を形成する工程と、第1の窒化物半導体層および窒化珪素層を覆うように、斜めファセットを有する第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、第2の窒化物半導体層の斜めファセットを埋め込むように、平坦な上面を有する第3の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、を含み、第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程において、有機金属気相成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下である窒化物半導体素子の製造方法である。
【0011】
ここで、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、基板はサファイア基板であって、第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程の前に基板の表面上にバッファ層を形成する工程が含まれ、第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程は、第1の窒化物半導体層をバッファ層上に形成する工程を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、バッファ層は、窒化アルミニウムであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、基板の表面は、凹凸を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、第1の窒化物半導体層は、斜めファセット層と、平坦層とを含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、第2の窒化物半導体層の斜めファセットは、第2の窒化物半導体層の成長面に対して45°以上の傾斜を有していることが好ましい。
【0016】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、第2の窒化物半導体層の厚さは2μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、窒化珪素層を形成した場合でも、窒化物半導体層の転移密度を低減することができるとともに、窒化物半導体層の表面モフォロジーを優れたものとすることができる窒化物半導体素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図2】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図3】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図4】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図5】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図6】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図7】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図8】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図9】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図10】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図11】実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図12】実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図13】実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図14】実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の製造方法の一例の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図15】実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図16】実施例の試験サンプルの模式的な断面図である。
【図17】実施例1の試験サンプルのSTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0020】
<実施の形態1>
まず、図1の模式的断面図に示すように、表面に凹凸を有する基板1を準備する工程を行なう。ここで、表面に凹凸を有する基板1を準備する工程は、たとえば、サファイア基板、炭化珪素基板、窒化ガリウム基板または酸化亜鉛基板などの基板1の表面上にレジストをパターニングし、ICP(Inductively coupled plasma)などのエッチング方法によって、基板1の表面の一部をエッチングすることなどにより行なうことができる。
【0021】
次に、図2の模式的断面図に示すように、基板1の表面上にバッファ層2を形成する工程を行なう。ここで、バッファ層2を形成する工程は、たとえば、基板1の表面上に、Alx1Ga1-x1N(0≦x1≦1)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をスパッタ法により積層することにより行なうことができ、バッファ層2としては窒化アルミニウム層を形成することが好ましい。バッファ層2としては窒化アルミニウム層を形成した場合には、バッファ層2上に形成される窒化物半導体層の転位密度を低減することができる傾向にある。
【0022】
次に、基板1の表面上に第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法(MOCVD法)により形成する工程を行なう。ここで、第1の窒化物半導体層をMOCVD法により形成する工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。まず、図3の模式的断面図に示すように、バッファ層2の表面上に斜めファセット3bを有する斜めファセット層3をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0023】
斜めファセット層3をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、バッファ層2の表面上に、Alx2Gay2Inz2N(0≦x2≦1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、x2+y2+z2≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。
【0024】
ここで、斜めファセット層3は、斜めファセット層3の斜めファセット3bが、斜めファセット層3の成長面3aに対して、45°以上の角度αの傾斜を有していることが好ましい。この場合には、基板1上に成長初期に生じた転位を効果的に横方向に曲げることができるため、斜めファセット層3上に形成される窒化物半導体層の転位密度を低減することができる。
【0025】
次に、図4の模式的断面図に示すように、斜めファセット層3の斜めファセット3bの間から露出しているバッファ層2の表面を埋め込む平坦層としての埋め込み層4をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0026】
埋め込み層4をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、斜めファセット層3の斜めファセット3bの間から露出しているバッファ層2の表面上に、Alx3Gay3Inz3N(0≦x3≦1、0≦y3≦1、0≦z3≦1、x3+y3+z3≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。ここで、埋め込み層4は、たとえば図4に示すように、斜めファセット層3の全体を埋め込むのではなく、斜めファセット層3の厚さ方向の途中まで斜めファセット3bの間の空間を埋め込むことが好ましい。
【0027】
以上により、基板1の表面上に、斜めファセット層3と埋め込み層4とからなる第1の窒化物半導体層5をMOCVD法により形成することができる。
【0028】
次に、図5の模式的断面図に示すように、第1の窒化物半導体層5の表面上に窒化珪素層6を形成する工程を行なう。
【0029】
窒化珪素層6を形成する工程は、たとえば、第1の窒化物半導体層5の埋め込み層4の表面上にCVD法により窒化珪素層6を形成することにより行なうことができる。
【0030】
次に、図6の模式的断面図に示すように、第1の窒化物半導体層5および窒化珪素層6を覆うように、斜めファセット7bを有する第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0031】
第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、第1の窒化物半導体層5および窒化珪素層6を覆うように、Alx4Gay4Inz4N(0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1、x4+y4+z4≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。
【0032】
ここで、第2の窒化物半導体層7は、第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bが、第2の窒化物半導体層7の成長面7aに対して、45°以上の角度βの傾斜を有していることが好ましい。この場合には、第1の窒化物半導体層5の厚さ方向に伝播してきた転位を第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bで横方向に曲げることができるため、転位の伝播を有効に防止して、第2の窒化物半導体層7上に形成される窒化物半導体層の上面の転位密度を大きく低減することができる傾向にある。
【0033】
また、第2の窒化物半導体層7の厚さTは、2μm以上であることが好ましい。第2の窒化物半導体層7の厚さTが2μm以上である場合には、第2の窒化物半導体層7上に形成される窒化物半導体層の表面の転位密度を大きく低減することができる傾向にある。
【0034】
次に、図7の模式的断面図に示すように、第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bを埋め込むように、平坦な上面8aを有する第3の窒化物半導体層8をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0035】
第3の窒化物半導体層8をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bの間の空間を埋め込むようにAlx5Gay5Inz5N(0≦x5≦1、0≦y5≦1、0≦z5≦1、x5+y5+z5≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。
【0036】
本実施の形態においては、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程において、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比((MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスのモル流量)/(MOCVD成長装置の成長室に供給されるV族元素ガスのモル流量))が240以下とされる。これは、本発明者が鋭意検討した結果、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比を240以下とすることによって、窒化珪素層6を形成した場合でも、斜めファセット7bを有する第2の窒化物半導体層7上に形成される第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができることを見出したことによるものである。
【0037】
また、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程において、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が120以下とされることが好ましい。この場合には、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度をさらに低減することができる傾向にある。
【0038】
また、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程において、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が90以上とされることが好ましい。この場合には、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度をさらに低減することができる傾向にある。
【0039】
次に、図8の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体層9、窒化物半導体超格子構造層10、窒化物半導体活性層11、第1のp型窒化物半導体層12および第2のp型窒化物半導体層13をこの順序で積層した後に、EB(Electron Beam)蒸着法などによって第2のp型窒化物半導体層13の表面上に透光性電極層14を積層することによって積層体を形成する。
【0040】
ここで、n型窒化物半導体層9としては、たとえば、Alx6Gay6Inz6N(0≦x6≦1、0≦y6≦1、0≦z6≦1、x6+y6+z6≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0041】
また、窒化物半導体超格子構造層10としては、たとえば、互いに組成の異なる、Alx7Gay7Inz7N(0≦x7≦1、0≦y7≦1、0≦z7≦1、x7+y7+z7≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層と、Alx8Gay8Inz8N(0≦x8≦1、0≦y8≦1、0≦z8≦1、x8+y8+z8≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層とを1層ずつ交互に積層した層などを積層することができる。
【0042】
また、窒化物半導体活性層11としては、たとえば、互いに組成の異なる、Alx9Gay9Inz9N(0≦x9≦1、0≦y9≦1、0≦z9≦1、x9+y9+z9≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体井戸層と、窒化物半導体井戸層よりもバンドギャップの大きいAlx10Gay10Inz10N0≦x10≦1、0≦y10≦1、0≦z10≦1、x10+y10+z10≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体障壁層(とを1層ずつ交互に積層した層などを積層することができる。窒化物半導体活性層11における窒化物半導体井戸層の数は、たとえば6層とすることができるがこれに限定されるものではない。
【0043】
また、第1のp型窒化物半導体層12としては、たとえばAlx11Gay11Inz11N(0≦x11≦1、0≦y11≦1、0≦z11≦1、x11+y11+z11≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0044】
また、第2のp型窒化物半導体層13としては、たとえばAlx12Gay12Inz12N(0≦x12≦1、0≦y12≦1、0≦z12≦1、x12+y12+z12≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0045】
また、透光性電極層14としては、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる層などを積層することができる。
【0046】
次に、図9の模式的断面図に示すように、図8に示す積層体の一部をエッチングなどにより除去することによってn型窒化物半導体層9の表面の一部を露出させる。
【0047】
そして、図10の模式的断面図に示すように、n型窒化物半導体層9の露出した表面上にn側電極16を形成するとともに、透光性電極層14の表面上にp側電極15を形成することによって、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子を作製することができる。
【0048】
以上のようにして作製された実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子においては、上述のように、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下とされているため、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができる。
【0049】
そのため、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子においては、そのような転移密度が低く、表面モフォロジーの優れた第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体層9、窒化物半導体超格子構造層10、窒化物半導体活性層11、第1のp型窒化物半導体層12および第2のp型窒化物半導体層13のそれぞれの転位密度を低くして結晶性を向上させることができるため、発光効率などの特性を向上させることができる。
【0050】
<実施の形態2>
本実施の形態においては、窒化物半導体発光ダイオード素子ではなく、窒化物半導体レーザ素子を作製した点に特徴がある。
【0051】
以下、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例について説明する。まず、実施の形態1と同様にして、基板1の表面上に、バッファ層2、斜めファセット層3、第1の埋め込み層4、窒化珪素層6、第2の窒化物半導体層7および第3の窒化物半導体層8をこの順序で積層する。
【0052】
次に、図11の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体クラッド層21、n型窒化物半導体光ガイド層22、窒化物半導体活性層23、窒化物半導体保護層24、p型窒化物半導体光ガイド層25、p型窒化物半導体クラッド層26およびp型窒化物半導体コンタクト層27をこの順序で積層して積層体を形成する。
【0053】
ここで、n型窒化物半導体クラッド層21としては、たとえばAlx13Gay13Inz13Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x13≦1、0≦y13≦1、0≦z13≦1、x13+y13+z13≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0054】
また、n型窒化物半導体光ガイド層22としては、たとえばAlx14Gay14Inz14Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x14≦1、0≦y14≦1、0≦z14≦1、x14+y14+z14≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0055】
また、窒化物半導体活性層23としては、たとえば、互いに組成の異なる、Alx15Gay15Inz15Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x15≦1、0≦y15≦1、0≦z15≦1、x15+y15+z15≠0)と、Alx16Gay16Inz16Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x16≦1、0≦y16≦1、0≦z16≦1、x16+y16+z16≠0)とを1層ずつ交互に積層した層などを積層することができる。
【0056】
また、窒化物半導体保護層24としては、たとえばAlx17Gay17Inz17Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x17≦1、0≦y17≦1、0≦z17≦1、x17+y17+z17≠0)などを積層することができる。
【0057】
また、p型窒化物半導体光ガイド層25としては、たとえばAlx18Gay18Inz18Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x18≦1、0≦y18≦1、0≦z18≦1、x18+y18+z18≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0058】
また、p型窒化物半導体クラッド層26としては、たとえばAlx19Gay19Inz19Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x19≦1、0≦y19≦1、0≦z19≦1、x19+y19+z19≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0059】
また、p型窒化物半導体コンタクト層27としては、たとえばAlx20Gay20Inz20Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x20≦1、0≦y20≦1、0≦z20≦1、x20+y20+z20≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0060】
次に、図12の模式的断面図に示すように、図11に示す積層体のp型窒化物半導体クラッド層26およびp型窒化物半導体コンタクト層27のそれぞれの一部をエッチングなどにより除去することによってp型窒化物半導体クラッド層26の表面の一部を露出させるとともに、図11に示す積層体の一部をエッチングなどにより除去することによってn型窒化物半導体クラッド層21の表面の一部を露出させる。
【0061】
その後、図13の模式的断面図に示すように、p型窒化物半導体コンタクト層27の表面を露出させる一方でp型窒化物半導体クラッド層26の露出表面を覆うようにたとえば酸化ケイ素などからなる絶縁膜28を形成する。そして、n型窒化物半導体クラッド層21の露出した表面上にn側電極16を形成するとともに、p型窒化物半導体コンタクト層27と接するp側電極15を絶縁膜28上に形成することによって、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子を作製することができる。
【0062】
以上のようにして作製された実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子においても、上述のように、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下とされるため、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができる。
【0063】
そのため、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子においても、そのような転移密度が低く、表面モフォロジーの優れた第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体クラッド層21、n型窒化物半導体光ガイド層22、窒化物半導体活性層23、窒化物半導体保護層24、p型窒化物半導体光ガイド層25、p型窒化物半導体クラッド層26およびp型窒化物半導体コンタクト層27のそれぞれの転位密度を低くして結晶性を向上させることができるため、レーザ光の発振特性などの特性を向上させることができる。
【0064】
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【0065】
<実施の形態3>
本実施の形態においては、窒化物半導体発光ダイオード素子や窒化物半導体レーザ素子などの発光デバイスではなく、電子デバイスの一例である窒化物半導体トランジスタ素子を作製した点に特徴がある。
【0066】
以下、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の製造方法の一例について説明する。まず、実施の形態1および2と同様にして、基板1の表面上に、バッファ層2、斜めファセット層3、第1の埋め込み層4、窒化珪素層6、第2の窒化物半導体層7および第3の窒化物半導体層8をこの順序で積層する。
【0067】
次に、図14の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、第3の窒化物半導体層8の上面8a上にアンドープGaNなどからなる窒化物半導体電子走行層31を積層し、窒化物半導体電子走行層31の表面上にn型AlGaNなどからなるn型窒化物半導体電子供給層32を積層する。
【0068】
その後、図15の模式的断面図に示すように、n型窒化物半導体電子供給層32の表面上に、ソース電極33、ドレイン電極34およびゲート電極35をそれぞれ形成することによって、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子を作製することができる。
【0069】
以上のようにして作製された実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子においても、上述のように、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下とされるため、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができる。
【0070】
そのため、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子においても、そのような転移密度が低く、表面モフォロジーの優れた第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、窒化物半導体電子走行層31およびn型窒化物半導体電子供給層32のそれぞれの転位密度を低くして結晶性を向上させることができるため、電子移動度などの特性を向上させることができる。
【0071】
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1および2と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【実施例】
【0072】
<実施例1>
以下のようにして図16の模式的断面図に示す試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。
【0073】
具体的には、まず、サファイア基板41をステッパーによりレジストをパターニングし、ICP(Inductively coupled plasma)によって、サファイア基板41の表面をエッチングすることによって、サファイア基板41の表面に凹凸を形成した。
【0074】
次に、上記の凹凸の形成後のサファイア基板41をスパッタ製膜装置の製膜室内に設置し、スパッタ製膜装置の製膜室内に窒素ガスを流すことによって、サファイア基板41の表面を窒化した。その後、サファイア基板41の温度を500℃とし、スパッタ製膜装置の製膜室内の圧力を0.5Paに保持し、スパッタ製膜装置の製膜室内に5sccmの流量の窒素ガスを流し、高周波バイアスを金属Alターゲット側に印加することによって、厚さ25nmのAlNバッファ層42を形成した。
【0075】
次に、上記のAlNバッファ層42の形成後のサファイア基板41を冷却し、MOCVD装置の成長室内に設置した。その後、サファイア基板41の温度を990℃として、MOCVD装置の成長室内に、V族源としてNH3(アンモニア)ガスを供給し、III族源としてTMG(トリメチルガリウム)ガスを供給することによって、高さ1.7μmの斜めファセット43bを有するGaNからなる斜めファセット層43を成長させた。このとき、斜めファセット層43の斜めファセット43bの斜めファセット層43の成長面43aに対する角度αは約60°であった。また、斜めファセット層43は、サファイア基板41の凹凸の表面の凹部の上面にのみ成長した。
【0076】
次に、サファイア基板41の温度を1200℃としたこと以外は、斜めファセット層43と同様の条件で、斜めファセット層43の斜めファセット43bの間の窪みをGaNからなる第1の埋め込み層44で埋め込んだ。このとき、第1の埋め込み層44の厚さは、0.5μmであって、斜めファセット層43の斜めファセット43bの途中の高さまで埋め込んだ。
【0077】
次に、サファイア基板41の温度を1255℃とし、IV族源としてSiH4(シラン)ガスを供給し、V族源としてNH3ガスをそれぞれ19.5分間供給し、第1の埋め込み層44の表面上に窒化珪素層46を成長させた。窒化珪素層46の成長時においては、TMGを供給しなかった。
【0078】
次に、サファイア基板41の温度を1255℃に維持した状態で、SiH4ガスの供給を停止し、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比が120となるように、TMGガスとNH3ガスとを供給することによって、厚さ3μmのGaNからなり、斜めファセット47bを有するファセットコントロール層47を形成した。ここで、斜めファセット47bのファセットコントロール層47の成長面47aに対する角度βは45°以上であった。
【0079】
次に、サファイア基板41の温度を1255℃に維持した状態で、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比が440となるように、TMGガスとNH3ガスとを供給することによって、厚さ2μmのGaNからなる第2の埋め込み層48を成長させた。
【0080】
次に、CL(カソードルミネッセンス)による転位密度の測定のため、TMGガスおよびNH3ガスの供給量をそれぞれ第2の埋め込み層48の成長時と同様にして、さらに、SiH4ガスを5×1018/cm3の濃度で供給することによって、厚さ0.5μmのn型GaNからなる導電層49を成長させた。
【0081】
なお、上述したサファイア基板41の温度は、カーボンサセプタに接触している熱電対の温度を示している。
【0082】
上記のようにして作製した実施例1の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度をCLによって測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は5.4×107個/cm2であった。
【0083】
また、実施例1の試験サンプルの導電層49の表面を確認した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の試験サンプルの導電層49の表面においては、表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0084】
また、図17に、実施例1の試験サンプルのSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)像を示す。図17の右に示したFAC層の部分がファセットコントロール層に該当し、実線で取り囲んだ部分においては転位が横方向に伸びていることが観測される。これにより、ファセットコントロール層47の斜めファセット47bによって、ファセットコントロール層47の下方から伝播してきた転位を効果的に横方向に曲げることができることが確認された。
【0085】
<実施例2>
ファセットコントロール層47の形成時のTMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を240としたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0086】
表1に示すように、実施例2の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は1×108個/cm2であった。また、実施例2の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0087】
<実施例3>
ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度を1205℃にするとともに、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を90としたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0088】
表1に示すように、実施例3の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は3.5×107個/cm2であった。また、実施例3の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0089】
<実施例4>
ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度を1205℃にするとともに、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を120としたこと以外は実施例1と同様にして実施例4の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0090】
表1に示すように、実施例4の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は4.8×107個/cm2であった。また、実施例4の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0091】
<実施例5>
ファセットコントロール層47の形成時の厚さを2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例5の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0092】
表1に示すように、実施例5の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は6.8×107個/cm2であった。また、実施例5の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示すように、ファセットコントロール層47の形成時のTMGガスに対するNH3ガスのモル流量比が120である実施例1においては、当該モル流量比が240である実施例2と比較して、導電層49の表面の転位密度が低減していた。
【0095】
また、表1の実施例3に示すように、ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度を1205℃まで低減し、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を90とした場合には、導電層49の表面の転位密度をさらに低減できることが確認された。
【0096】
また、表1の実施例4に示すように、ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度が1205℃である場合に、当該モル流量比を120とした実施例4においては、実施例3よりも導電層49の表面の転位密度が上昇していた。実施例3と実施例4との比較からも、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比の低減による導電層49の表面の転位密度の低下の効果が確認された。
【0097】
このように、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を低下させることにより、導電層49の表面の転位密度が低下する理由としては、核密度が大きくなり、転位と転位との間の会合の頻度が少なくなり、より効果的に転位密度を低減できるためと考えられる。
【0098】
また、ファセットコントロール層47の成長面47aに対する斜めファセット47bの角度は45°以上であったため、ファセットコントロール層47に伝播してきた転位の曲がり角度が大きくなり、転位をより効果的に横方向に曲げることができた。
【0099】
さらに、表1に示すように、ファセットコントロール層47の厚さが2μmである実施例5の導電層49の表面の転位密度は、ファセットコントロール層47の厚さが3μmである実施例1の導電層49の表面の転位密度よりも大きくなっていることから、ファセットコントロール層47の厚さは2μm以上であることが好ましいことが確認された。
【0100】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、窒化物半導体素子の製造方法に利用することができ、特に、窒化物半導体発光ダイオード素子(LED)、窒化物半導体レーザ素子(LD)および窒化物半導体トランジスタ素子等の窒化物半導体素子の製造に好適に利用することができる可能性がある。
【符号の説明】
【0102】
1 基板、2 バッファ層、3 斜めファセット層、3a 成長面、3b 斜めファセット、4 埋め込み層、5 第1の窒化物半導体層、6 窒化珪素層、7 第2の窒化物半導体層、7a 成長面、7b 斜めファセット、8 第3の窒化物半導体層、8a 上面、9 n型窒化物半導体層、10 窒化物半導体超格子構造層、11 窒化物半導体活性層、12 第1のp型窒化物半導体層、13 第2のp型窒化物半導体層、14 透光性電極層、15 p側電極、16 n側電極、21 n型窒化物半導体クラッド層、22 n型窒化物半導体光ガイド層、23 窒化物半導体活性層、24 窒化物半導体保護層、25 p型窒化物半導体光ガイド層、26 p型窒化物半導体クラッド層、27 p型窒化物半導体コンタクト層、31 窒化物半導体電子走行層、32 n型窒化物半導体電子供給層、33 ソース電極、34 ドレイン電極、35 ゲート電極、41 サファイア基板、42 AlNバッファ層、43 斜めファセット層、43a 成長面、43b 斜めファセット、44 第1の埋め込み層、46 窒化珪素層、47 ファセットコントロール層、47a 成長面、47b 斜めファセット、48 第2の埋め込み層、49 導電層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体発光ダイオード素子、窒化物半導体レーザ素子および窒化物半導体トランジスタ素子などの窒化物半導体素子の製造に用いられる基板としては、窒化ガリウム基板、炭化珪素基板、またはサファイア基板などが挙げられるが、コストおよび量産性などの点で優位性を有するサファイア基板が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、サファイア基板とその上に形成される窒化ガリウムなどの窒化物半導体層との格子不整合率が高いため、窒化物半導体層に多くの貫通転位が生じるといった問題が生じる。貫通転位は、窒化物半導体発光ダイオード素子における発光効率の低下、窒化物半導体レーザ素子における短寿命化、および窒化物半導体トランジスタ素子における低電子移動度化などの様々な特性悪化の原因となる。
【0004】
そこで、たとえば特許文献1(特開2002−43233号公報)には、GaN層の間にSiN層を挿入することによって、最表面に配置されるGaN層の転位密度を低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−43233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GaN層上にSiN層を部分的に形成することによって窒化物半導体素子を製造する場合には、SiN層が存在する箇所にはGaN層が成長しないため、SiN層の形成部分で転位が終端する。
【0007】
しかしながら、SiN層が存在しない箇所においては、転位がそのまま貫通していくため、転位が上方に伝播する場合には、GaN層における転位密度の効果的な低減を期待することができない。
【0008】
また、たとえばGaN層が斜めファセットを有する場合にSiN層の形成面積を大きくしたときには、GaN層の埋め込みが困難となり、GaN層の表面モフォロジーの悪化を招くという問題が生じる。
【0009】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、窒化珪素層を形成した場合でも、窒化物半導体層の転移密度を低減することができるとともに、窒化物半導体層の表面モフォロジーを優れたものとすることができる窒化物半導体素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、第1の窒化物半導体層上に窒化珪素層を形成する工程と、第1の窒化物半導体層および窒化珪素層を覆うように、斜めファセットを有する第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、第2の窒化物半導体層の斜めファセットを埋め込むように、平坦な上面を有する第3の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、を含み、第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程において、有機金属気相成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下である窒化物半導体素子の製造方法である。
【0011】
ここで、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、基板はサファイア基板であって、第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程の前に基板の表面上にバッファ層を形成する工程が含まれ、第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程は、第1の窒化物半導体層をバッファ層上に形成する工程を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、バッファ層は、窒化アルミニウムであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、基板の表面は、凹凸を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、第1の窒化物半導体層は、斜めファセット層と、平坦層とを含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、第2の窒化物半導体層の斜めファセットは、第2の窒化物半導体層の成長面に対して45°以上の傾斜を有していることが好ましい。
【0016】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法において、第2の窒化物半導体層の厚さは2μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、窒化珪素層を形成した場合でも、窒化物半導体層の転移密度を低減することができるとともに、窒化物半導体層の表面モフォロジーを優れたものとすることができる窒化物半導体素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図2】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図3】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図4】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図5】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図6】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図7】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図8】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図9】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図10】実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子の製造方法の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図11】実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図12】実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図13】実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図14】実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の製造方法の一例の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図15】実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図16】実施例の試験サンプルの模式的な断面図である。
【図17】実施例1の試験サンプルのSTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0020】
<実施の形態1>
まず、図1の模式的断面図に示すように、表面に凹凸を有する基板1を準備する工程を行なう。ここで、表面に凹凸を有する基板1を準備する工程は、たとえば、サファイア基板、炭化珪素基板、窒化ガリウム基板または酸化亜鉛基板などの基板1の表面上にレジストをパターニングし、ICP(Inductively coupled plasma)などのエッチング方法によって、基板1の表面の一部をエッチングすることなどにより行なうことができる。
【0021】
次に、図2の模式的断面図に示すように、基板1の表面上にバッファ層2を形成する工程を行なう。ここで、バッファ層2を形成する工程は、たとえば、基板1の表面上に、Alx1Ga1-x1N(0≦x1≦1)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をスパッタ法により積層することにより行なうことができ、バッファ層2としては窒化アルミニウム層を形成することが好ましい。バッファ層2としては窒化アルミニウム層を形成した場合には、バッファ層2上に形成される窒化物半導体層の転位密度を低減することができる傾向にある。
【0022】
次に、基板1の表面上に第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法(MOCVD法)により形成する工程を行なう。ここで、第1の窒化物半導体層をMOCVD法により形成する工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。まず、図3の模式的断面図に示すように、バッファ層2の表面上に斜めファセット3bを有する斜めファセット層3をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0023】
斜めファセット層3をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、バッファ層2の表面上に、Alx2Gay2Inz2N(0≦x2≦1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、x2+y2+z2≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。
【0024】
ここで、斜めファセット層3は、斜めファセット層3の斜めファセット3bが、斜めファセット層3の成長面3aに対して、45°以上の角度αの傾斜を有していることが好ましい。この場合には、基板1上に成長初期に生じた転位を効果的に横方向に曲げることができるため、斜めファセット層3上に形成される窒化物半導体層の転位密度を低減することができる。
【0025】
次に、図4の模式的断面図に示すように、斜めファセット層3の斜めファセット3bの間から露出しているバッファ層2の表面を埋め込む平坦層としての埋め込み層4をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0026】
埋め込み層4をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、斜めファセット層3の斜めファセット3bの間から露出しているバッファ層2の表面上に、Alx3Gay3Inz3N(0≦x3≦1、0≦y3≦1、0≦z3≦1、x3+y3+z3≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。ここで、埋め込み層4は、たとえば図4に示すように、斜めファセット層3の全体を埋め込むのではなく、斜めファセット層3の厚さ方向の途中まで斜めファセット3bの間の空間を埋め込むことが好ましい。
【0027】
以上により、基板1の表面上に、斜めファセット層3と埋め込み層4とからなる第1の窒化物半導体層5をMOCVD法により形成することができる。
【0028】
次に、図5の模式的断面図に示すように、第1の窒化物半導体層5の表面上に窒化珪素層6を形成する工程を行なう。
【0029】
窒化珪素層6を形成する工程は、たとえば、第1の窒化物半導体層5の埋め込み層4の表面上にCVD法により窒化珪素層6を形成することにより行なうことができる。
【0030】
次に、図6の模式的断面図に示すように、第1の窒化物半導体層5および窒化珪素層6を覆うように、斜めファセット7bを有する第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0031】
第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、第1の窒化物半導体層5および窒化珪素層6を覆うように、Alx4Gay4Inz4N(0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1、x4+y4+z4≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。
【0032】
ここで、第2の窒化物半導体層7は、第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bが、第2の窒化物半導体層7の成長面7aに対して、45°以上の角度βの傾斜を有していることが好ましい。この場合には、第1の窒化物半導体層5の厚さ方向に伝播してきた転位を第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bで横方向に曲げることができるため、転位の伝播を有効に防止して、第2の窒化物半導体層7上に形成される窒化物半導体層の上面の転位密度を大きく低減することができる傾向にある。
【0033】
また、第2の窒化物半導体層7の厚さTは、2μm以上であることが好ましい。第2の窒化物半導体層7の厚さTが2μm以上である場合には、第2の窒化物半導体層7上に形成される窒化物半導体層の表面の転位密度を大きく低減することができる傾向にある。
【0034】
次に、図7の模式的断面図に示すように、第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bを埋め込むように、平坦な上面8aを有する第3の窒化物半導体層8をMOCVD法により形成する工程を行なう。
【0035】
第3の窒化物半導体層8をMOCVD法により形成する工程は、たとえば、第2の窒化物半導体層7の斜めファセット7bの間の空間を埋め込むようにAlx5Gay5Inz5N(0≦x5≦1、0≦y5≦1、0≦z5≦1、x5+y5+z5≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層をMOCVD法により積層することにより行なうことができる。
【0036】
本実施の形態においては、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程において、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比((MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスのモル流量)/(MOCVD成長装置の成長室に供給されるV族元素ガスのモル流量))が240以下とされる。これは、本発明者が鋭意検討した結果、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比を240以下とすることによって、窒化珪素層6を形成した場合でも、斜めファセット7bを有する第2の窒化物半導体層7上に形成される第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができることを見出したことによるものである。
【0037】
また、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程において、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が120以下とされることが好ましい。この場合には、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度をさらに低減することができる傾向にある。
【0038】
また、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する工程において、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が90以上とされることが好ましい。この場合には、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度をさらに低減することができる傾向にある。
【0039】
次に、図8の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体層9、窒化物半導体超格子構造層10、窒化物半導体活性層11、第1のp型窒化物半導体層12および第2のp型窒化物半導体層13をこの順序で積層した後に、EB(Electron Beam)蒸着法などによって第2のp型窒化物半導体層13の表面上に透光性電極層14を積層することによって積層体を形成する。
【0040】
ここで、n型窒化物半導体層9としては、たとえば、Alx6Gay6Inz6N(0≦x6≦1、0≦y6≦1、0≦z6≦1、x6+y6+z6≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0041】
また、窒化物半導体超格子構造層10としては、たとえば、互いに組成の異なる、Alx7Gay7Inz7N(0≦x7≦1、0≦y7≦1、0≦z7≦1、x7+y7+z7≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層と、Alx8Gay8Inz8N(0≦x8≦1、0≦y8≦1、0≦z8≦1、x8+y8+z8≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層とを1層ずつ交互に積層した層などを積層することができる。
【0042】
また、窒化物半導体活性層11としては、たとえば、互いに組成の異なる、Alx9Gay9Inz9N(0≦x9≦1、0≦y9≦1、0≦z9≦1、x9+y9+z9≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体井戸層と、窒化物半導体井戸層よりもバンドギャップの大きいAlx10Gay10Inz10N0≦x10≦1、0≦y10≦1、0≦z10≦1、x10+y10+z10≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体障壁層(とを1層ずつ交互に積層した層などを積層することができる。窒化物半導体活性層11における窒化物半導体井戸層の数は、たとえば6層とすることができるがこれに限定されるものではない。
【0043】
また、第1のp型窒化物半導体層12としては、たとえばAlx11Gay11Inz11N(0≦x11≦1、0≦y11≦1、0≦z11≦1、x11+y11+z11≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0044】
また、第2のp型窒化物半導体層13としては、たとえばAlx12Gay12Inz12N(0≦x12≦1、0≦y12≦1、0≦z12≦1、x12+y12+z12≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0045】
また、透光性電極層14としては、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる層などを積層することができる。
【0046】
次に、図9の模式的断面図に示すように、図8に示す積層体の一部をエッチングなどにより除去することによってn型窒化物半導体層9の表面の一部を露出させる。
【0047】
そして、図10の模式的断面図に示すように、n型窒化物半導体層9の露出した表面上にn側電極16を形成するとともに、透光性電極層14の表面上にp側電極15を形成することによって、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子を作製することができる。
【0048】
以上のようにして作製された実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子においては、上述のように、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下とされているため、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができる。
【0049】
そのため、実施の形態1の窒化物半導体発光ダイオード素子においては、そのような転移密度が低く、表面モフォロジーの優れた第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体層9、窒化物半導体超格子構造層10、窒化物半導体活性層11、第1のp型窒化物半導体層12および第2のp型窒化物半導体層13のそれぞれの転位密度を低くして結晶性を向上させることができるため、発光効率などの特性を向上させることができる。
【0050】
<実施の形態2>
本実施の形態においては、窒化物半導体発光ダイオード素子ではなく、窒化物半導体レーザ素子を作製した点に特徴がある。
【0051】
以下、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例について説明する。まず、実施の形態1と同様にして、基板1の表面上に、バッファ層2、斜めファセット層3、第1の埋め込み層4、窒化珪素層6、第2の窒化物半導体層7および第3の窒化物半導体層8をこの順序で積層する。
【0052】
次に、図11の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体クラッド層21、n型窒化物半導体光ガイド層22、窒化物半導体活性層23、窒化物半導体保護層24、p型窒化物半導体光ガイド層25、p型窒化物半導体クラッド層26およびp型窒化物半導体コンタクト層27をこの順序で積層して積層体を形成する。
【0053】
ここで、n型窒化物半導体クラッド層21としては、たとえばAlx13Gay13Inz13Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x13≦1、0≦y13≦1、0≦z13≦1、x13+y13+z13≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0054】
また、n型窒化物半導体光ガイド層22としては、たとえばAlx14Gay14Inz14Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x14≦1、0≦y14≦1、0≦z14≦1、x14+y14+z14≠0)にn型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0055】
また、窒化物半導体活性層23としては、たとえば、互いに組成の異なる、Alx15Gay15Inz15Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x15≦1、0≦y15≦1、0≦z15≦1、x15+y15+z15≠0)と、Alx16Gay16Inz16Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x16≦1、0≦y16≦1、0≦z16≦1、x16+y16+z16≠0)とを1層ずつ交互に積層した層などを積層することができる。
【0056】
また、窒化物半導体保護層24としては、たとえばAlx17Gay17Inz17Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x17≦1、0≦y17≦1、0≦z17≦1、x17+y17+z17≠0)などを積層することができる。
【0057】
また、p型窒化物半導体光ガイド層25としては、たとえばAlx18Gay18Inz18Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x18≦1、0≦y18≦1、0≦z18≦1、x18+y18+z18≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0058】
また、p型窒化物半導体クラッド層26としては、たとえばAlx19Gay19Inz19Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x19≦1、0≦y19≦1、0≦z19≦1、x19+y19+z19≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0059】
また、p型窒化物半導体コンタクト層27としては、たとえばAlx20Gay20Inz20Nの式で表わされる窒化物半導体からなる窒化物半導体層(0≦x20≦1、0≦y20≦1、0≦z20≦1、x20+y20+z20≠0)にp型ドーパントをドーピングした層などを積層することができる。
【0060】
次に、図12の模式的断面図に示すように、図11に示す積層体のp型窒化物半導体クラッド層26およびp型窒化物半導体コンタクト層27のそれぞれの一部をエッチングなどにより除去することによってp型窒化物半導体クラッド層26の表面の一部を露出させるとともに、図11に示す積層体の一部をエッチングなどにより除去することによってn型窒化物半導体クラッド層21の表面の一部を露出させる。
【0061】
その後、図13の模式的断面図に示すように、p型窒化物半導体コンタクト層27の表面を露出させる一方でp型窒化物半導体クラッド層26の露出表面を覆うようにたとえば酸化ケイ素などからなる絶縁膜28を形成する。そして、n型窒化物半導体クラッド層21の露出した表面上にn側電極16を形成するとともに、p型窒化物半導体コンタクト層27と接するp側電極15を絶縁膜28上に形成することによって、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子を作製することができる。
【0062】
以上のようにして作製された実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子においても、上述のように、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下とされるため、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができる。
【0063】
そのため、実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子においても、そのような転移密度が低く、表面モフォロジーの優れた第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、n型窒化物半導体クラッド層21、n型窒化物半導体光ガイド層22、窒化物半導体活性層23、窒化物半導体保護層24、p型窒化物半導体光ガイド層25、p型窒化物半導体クラッド層26およびp型窒化物半導体コンタクト層27のそれぞれの転位密度を低くして結晶性を向上させることができるため、レーザ光の発振特性などの特性を向上させることができる。
【0064】
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【0065】
<実施の形態3>
本実施の形態においては、窒化物半導体発光ダイオード素子や窒化物半導体レーザ素子などの発光デバイスではなく、電子デバイスの一例である窒化物半導体トランジスタ素子を作製した点に特徴がある。
【0066】
以下、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子の製造方法の一例について説明する。まず、実施の形態1および2と同様にして、基板1の表面上に、バッファ層2、斜めファセット層3、第1の埋め込み層4、窒化珪素層6、第2の窒化物半導体層7および第3の窒化物半導体層8をこの順序で積層する。
【0067】
次に、図14の模式的断面図に示すように、MOCVD法によって、第3の窒化物半導体層8の上面8a上にアンドープGaNなどからなる窒化物半導体電子走行層31を積層し、窒化物半導体電子走行層31の表面上にn型AlGaNなどからなるn型窒化物半導体電子供給層32を積層する。
【0068】
その後、図15の模式的断面図に示すように、n型窒化物半導体電子供給層32の表面上に、ソース電極33、ドレイン電極34およびゲート電極35をそれぞれ形成することによって、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子を作製することができる。
【0069】
以上のようにして作製された実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子においても、上述のように、第2の窒化物半導体層7をMOCVD法により形成する際に、MOCVD成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比が240以下とされるため、第3の窒化物半導体層8の上面8aの転移密度を低減することができるとともに、第3の窒化物半導体層8の上面8aの表面モフォロジーを優れたものとすることができる。
【0070】
そのため、実施の形態3の窒化物半導体トランジスタ素子においても、そのような転移密度が低く、表面モフォロジーの優れた第3の窒化物半導体層8の上面8a上に、窒化物半導体電子走行層31およびn型窒化物半導体電子供給層32のそれぞれの転位密度を低くして結晶性を向上させることができるため、電子移動度などの特性を向上させることができる。
【0071】
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1および2と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【実施例】
【0072】
<実施例1>
以下のようにして図16の模式的断面図に示す試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。
【0073】
具体的には、まず、サファイア基板41をステッパーによりレジストをパターニングし、ICP(Inductively coupled plasma)によって、サファイア基板41の表面をエッチングすることによって、サファイア基板41の表面に凹凸を形成した。
【0074】
次に、上記の凹凸の形成後のサファイア基板41をスパッタ製膜装置の製膜室内に設置し、スパッタ製膜装置の製膜室内に窒素ガスを流すことによって、サファイア基板41の表面を窒化した。その後、サファイア基板41の温度を500℃とし、スパッタ製膜装置の製膜室内の圧力を0.5Paに保持し、スパッタ製膜装置の製膜室内に5sccmの流量の窒素ガスを流し、高周波バイアスを金属Alターゲット側に印加することによって、厚さ25nmのAlNバッファ層42を形成した。
【0075】
次に、上記のAlNバッファ層42の形成後のサファイア基板41を冷却し、MOCVD装置の成長室内に設置した。その後、サファイア基板41の温度を990℃として、MOCVD装置の成長室内に、V族源としてNH3(アンモニア)ガスを供給し、III族源としてTMG(トリメチルガリウム)ガスを供給することによって、高さ1.7μmの斜めファセット43bを有するGaNからなる斜めファセット層43を成長させた。このとき、斜めファセット層43の斜めファセット43bの斜めファセット層43の成長面43aに対する角度αは約60°であった。また、斜めファセット層43は、サファイア基板41の凹凸の表面の凹部の上面にのみ成長した。
【0076】
次に、サファイア基板41の温度を1200℃としたこと以外は、斜めファセット層43と同様の条件で、斜めファセット層43の斜めファセット43bの間の窪みをGaNからなる第1の埋め込み層44で埋め込んだ。このとき、第1の埋め込み層44の厚さは、0.5μmであって、斜めファセット層43の斜めファセット43bの途中の高さまで埋め込んだ。
【0077】
次に、サファイア基板41の温度を1255℃とし、IV族源としてSiH4(シラン)ガスを供給し、V族源としてNH3ガスをそれぞれ19.5分間供給し、第1の埋め込み層44の表面上に窒化珪素層46を成長させた。窒化珪素層46の成長時においては、TMGを供給しなかった。
【0078】
次に、サファイア基板41の温度を1255℃に維持した状態で、SiH4ガスの供給を停止し、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比が120となるように、TMGガスとNH3ガスとを供給することによって、厚さ3μmのGaNからなり、斜めファセット47bを有するファセットコントロール層47を形成した。ここで、斜めファセット47bのファセットコントロール層47の成長面47aに対する角度βは45°以上であった。
【0079】
次に、サファイア基板41の温度を1255℃に維持した状態で、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比が440となるように、TMGガスとNH3ガスとを供給することによって、厚さ2μmのGaNからなる第2の埋め込み層48を成長させた。
【0080】
次に、CL(カソードルミネッセンス)による転位密度の測定のため、TMGガスおよびNH3ガスの供給量をそれぞれ第2の埋め込み層48の成長時と同様にして、さらに、SiH4ガスを5×1018/cm3の濃度で供給することによって、厚さ0.5μmのn型GaNからなる導電層49を成長させた。
【0081】
なお、上述したサファイア基板41の温度は、カーボンサセプタに接触している熱電対の温度を示している。
【0082】
上記のようにして作製した実施例1の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度をCLによって測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は5.4×107個/cm2であった。
【0083】
また、実施例1の試験サンプルの導電層49の表面を確認した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の試験サンプルの導電層49の表面においては、表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0084】
また、図17に、実施例1の試験サンプルのSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)像を示す。図17の右に示したFAC層の部分がファセットコントロール層に該当し、実線で取り囲んだ部分においては転位が横方向に伸びていることが観測される。これにより、ファセットコントロール層47の斜めファセット47bによって、ファセットコントロール層47の下方から伝播してきた転位を効果的に横方向に曲げることができることが確認された。
【0085】
<実施例2>
ファセットコントロール層47の形成時のTMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を240としたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0086】
表1に示すように、実施例2の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は1×108個/cm2であった。また、実施例2の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0087】
<実施例3>
ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度を1205℃にするとともに、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を90としたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0088】
表1に示すように、実施例3の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は3.5×107個/cm2であった。また、実施例3の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0089】
<実施例4>
ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度を1205℃にするとともに、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を120としたこと以外は実施例1と同様にして実施例4の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0090】
表1に示すように、実施例4の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は4.8×107個/cm2であった。また、実施例4の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0091】
<実施例5>
ファセットコントロール層47の形成時の厚さを2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例5の試験サンプルを作製し、n型GaNからなる導電層49の表面の転位密度および表面モフォロジーの評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0092】
表1に示すように、実施例5の試験サンプルの導電層49の表面の転位密度は6.8×107個/cm2であった。また、実施例5の試験サンプルの導電層49の表面においても表面の荒れを示す白濁は見られず、表面モフォロジーが良好であることが確認された。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示すように、ファセットコントロール層47の形成時のTMGガスに対するNH3ガスのモル流量比が120である実施例1においては、当該モル流量比が240である実施例2と比較して、導電層49の表面の転位密度が低減していた。
【0095】
また、表1の実施例3に示すように、ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度を1205℃まで低減し、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を90とした場合には、導電層49の表面の転位密度をさらに低減できることが確認された。
【0096】
また、表1の実施例4に示すように、ファセットコントロール層47の形成時のサファイア基板41の温度が1205℃である場合に、当該モル流量比を120とした実施例4においては、実施例3よりも導電層49の表面の転位密度が上昇していた。実施例3と実施例4との比較からも、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比の低減による導電層49の表面の転位密度の低下の効果が確認された。
【0097】
このように、TMGガスに対するNH3ガスのモル流量比を低下させることにより、導電層49の表面の転位密度が低下する理由としては、核密度が大きくなり、転位と転位との間の会合の頻度が少なくなり、より効果的に転位密度を低減できるためと考えられる。
【0098】
また、ファセットコントロール層47の成長面47aに対する斜めファセット47bの角度は45°以上であったため、ファセットコントロール層47に伝播してきた転位の曲がり角度が大きくなり、転位をより効果的に横方向に曲げることができた。
【0099】
さらに、表1に示すように、ファセットコントロール層47の厚さが2μmである実施例5の導電層49の表面の転位密度は、ファセットコントロール層47の厚さが3μmである実施例1の導電層49の表面の転位密度よりも大きくなっていることから、ファセットコントロール層47の厚さは2μm以上であることが好ましいことが確認された。
【0100】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、窒化物半導体素子の製造方法に利用することができ、特に、窒化物半導体発光ダイオード素子(LED)、窒化物半導体レーザ素子(LD)および窒化物半導体トランジスタ素子等の窒化物半導体素子の製造に好適に利用することができる可能性がある。
【符号の説明】
【0102】
1 基板、2 バッファ層、3 斜めファセット層、3a 成長面、3b 斜めファセット、4 埋め込み層、5 第1の窒化物半導体層、6 窒化珪素層、7 第2の窒化物半導体層、7a 成長面、7b 斜めファセット、8 第3の窒化物半導体層、8a 上面、9 n型窒化物半導体層、10 窒化物半導体超格子構造層、11 窒化物半導体活性層、12 第1のp型窒化物半導体層、13 第2のp型窒化物半導体層、14 透光性電極層、15 p側電極、16 n側電極、21 n型窒化物半導体クラッド層、22 n型窒化物半導体光ガイド層、23 窒化物半導体活性層、24 窒化物半導体保護層、25 p型窒化物半導体光ガイド層、26 p型窒化物半導体クラッド層、27 p型窒化物半導体コンタクト層、31 窒化物半導体電子走行層、32 n型窒化物半導体電子供給層、33 ソース電極、34 ドレイン電極、35 ゲート電極、41 サファイア基板、42 AlNバッファ層、43 斜めファセット層、43a 成長面、43b 斜めファセット、44 第1の埋め込み層、46 窒化珪素層、47 ファセットコントロール層、47a 成長面、47b 斜めファセット、48 第2の埋め込み層、49 導電層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、
前記第1の窒化物半導体層上に窒化珪素層を形成する工程と、
前記第1の窒化物半導体層および前記窒化珪素層を覆うように、斜めファセットを有する第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、
前記第2の窒化物半導体層の前記斜めファセットを埋め込むように、平坦な上面を有する第3の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、を含み、
前記第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程において、有機金属気相成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比は240以下である、窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項2】
基板は、サファイアであって、
前記第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程の前に、前記基板の前記表面上にバッファ層を形成する工程を含み、
前記第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程は、前記第1の窒化物半導体層を前記バッファ層上に形成する工程を含む、請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記バッファ層は、窒化アルミニウムである、請求項2に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記基板の前記表面は、凹凸を有する、請求項2または3に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1の窒化物半導体層は、斜めファセット層と、平坦層とを含む、請求項1から4のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2の窒化物半導体層の前記斜めファセットは、前記第2の窒化物半導体層の成長面に対して45°以上の傾斜を有している、請求項1から5のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2の窒化物半導体層の厚さは、2μm以上である、請求項1から6のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項1】
第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、
前記第1の窒化物半導体層上に窒化珪素層を形成する工程と、
前記第1の窒化物半導体層および前記窒化珪素層を覆うように、斜めファセットを有する第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、
前記第2の窒化物半導体層の前記斜めファセットを埋め込むように、平坦な上面を有する第3の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、を含み、
前記第2の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程において、有機金属気相成長装置の成長室に供給されるIII族元素ガスに対するV族元素ガスのモル流量比は240以下である、窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項2】
基板は、サファイアであって、
前記第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程の前に、前記基板の前記表面上にバッファ層を形成する工程を含み、
前記第1の窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程は、前記第1の窒化物半導体層を前記バッファ層上に形成する工程を含む、請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記バッファ層は、窒化アルミニウムである、請求項2に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記基板の前記表面は、凹凸を有する、請求項2または3に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1の窒化物半導体層は、斜めファセット層と、平坦層とを含む、請求項1から4のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2の窒化物半導体層の前記斜めファセットは、前記第2の窒化物半導体層の成長面に対して45°以上の傾斜を有している、請求項1から5のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2の窒化物半導体層の厚さは、2μm以上である、請求項1から6のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−84719(P2013−84719A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222880(P2011−222880)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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