説明

窒化物系半導体素子

【課題】本実施形態は、窒化物半導体層のクラックがほとんどなく、表面の粗度が極めて優秀であるので、全体的な安定性の向上された窒化物系半導体素子を提供する。
【解決手段】本実施形態の窒化物系半導体素子は、基板と、前記基板上に形成されるアルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層と、前記前処理層上に形成されるAlがドーピングされたGaN層と、前記AlがドーピングされたGaN層上に形成されるAlGaN層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
安定性の優れる窒化物系半導体素子が開示される。より詳しくは、窒化物半導体層のクラックがほとんどなく、表面の粗度が極めて優秀であるため全体的な安定性の向上された窒化物系半導体素子が開示される。
【背景技術】
【0002】
最近、全世界的に情報通信技術の急激な発達に伴って超高速、大容量の信号送信のための通信技術が急速に発達している。特に、無線通信技術において個人携帯電話、衛星通信、軍事用レーダー、放送通信、通信用中継機などの需要が次第に拡大することにつれて、マイクロ波とミリメートル波帯域の超高速情報通信システムに必要な高速、高電力電子素子に対する要求が増加している。したがって、高電力電子素子に用いられるパワー素子も省エネのために多くの研究が行われている。
【0003】
特に、GaN系窒化物半導体はエネルギギャップが大きく、高い熱的および化学的な安定度、高い電子飽和の速度(〜3×10cm/sec)などの優れる物性を有し、光素子だけではなく高周波、高出力用の電子素子における応用が容易であるため、世界的に活発に研究されている。
【0004】
GaN系窒化物半導体を用いるを用いるヘテロ接合電界効果トランジスタ(heterostructure field effect transistor;HFET)の場合、接合界面におけるバンド不連続(band−discontinuity)が大きいので、界面に高い濃度の電子が誘起される場合があるので電子移動度がさらに高められて高電力素子へ応用することができる。
【0005】
しかし、窒化物単結晶の格子定数および熱膨張係数に適する窒化物単結晶の成長用基板は普遍的ではない。主に、窒化物単結晶はサファイア基板またはSiC基板のような異種基板上にMOCVD(Meta Organic chemical Vapor Deposition)方法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)方法などの気相成長法、またはMBE(Molecular Beam Epitaxy)方法に基づいて成長する。ただし、単結晶サファイア基板およびSiC基板はその値段が高いだけではなく、そのサイズも制限されているため大量生産には適しない。したがって、熱伝導度の問題それだけではなく、基板サイズの拡大を通した生産性向上のために最も普遍的に用いられる基板がシリコン(Si)基板である。しかし、シリコン基板とGaN単結晶との間の格子定数の差と熱膨張係数の差によってGaN層は実用化され難いほどクラック(crack)が発生しやすい。したがって、シリコン基板上でGaNを安定に成長させ得る方法が求められる実状である。
【0006】
図1には従来における窒化物系ヘテロ接合電界効果トランジスタの基本構造が図示されている。
【0007】
図1を参照すると、従来の窒化物系ヘテロ接合電界効果トランジスタ10は、シリコン基板11上に低温バッファ層12、AlGaN/GaN複合層13、ドーピングされないGaN層14、およびAlGaN層15が順次形成されている。AlGaN層15の上面の両端にはソース電極16およびドレイン電極18が形成され、その間にゲート電極17が配置され、ゲート電極17、ソース電極16、ドレイン電極18の間に保護層19が形成される。AlGaN/GaN複合層13は複数の層が積層されて形成され、格子定数の差を緩和させてAlGaN/GaN複合層13上にGaN層を成長させてもよい。
【0008】
ヘテロ接合電界効果トランジスタ10は、異なるバンドギャップを有するGaN層14およびAlGaN層15のヘテロ接合によって2次元電子ガス(2DEG)層が形成される。ここで、ゲート電極17に信号が入力されると、2次元電子ガス層によってチャネルが形成されてソース電極16とドレイン電極18との間に電流が導通されてもよい。GaN層14はドーピングされないGaN層から形成され、サファイア基板11に対する漏洩電流を防止して素子間の分離のため比較的に高い抵抗を有するように形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
窒化物半導体層のクラックがほとんどなく、表面の粗度が極めて優秀であるので、全体的な安定性の向上された窒化物系半導体素子が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子は、基板と、前記基板上に形成されるアルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層と、前記前処理層上に形成されるAlがドーピングされたGaN層と、前記AlがドーピングされたGaN層上に形成されるAlGaN層とを含む。
【0011】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層は、単一層の構造、規則的なドット構造、不規則的なドット構造、およびパターン構造からなる群より選択される構造で形成されてもよい。
【0012】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記前処理層上に形成されるバッファ層をさらに含み、前記バッファ層は、窒化アルミニウム(AlN)からなってもよい。また、前記前処理層が、規則的なドット構造、不規則的なドット構造、およびパターン構造からなる場合に、前記前処理層が、前記バッファ層中に含まれてもよい。
【0013】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記前処理層と前記AlがドーピングされたGaN層との間に形成され、III族元素対比V族元素の比率であるV/III族の比率が予め定められたGaNシード層をさらに含んでもよい。
【0014】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記GaNシード層は、第1GaNシード層と、第2GaNシード層を含んでもよく、第1GaNシード層の前記V/III族の比率は、第2GaNシード層の前記V/III族の比率よりも高くてもよい。
【0015】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記前処理層と前記AlがドーピングされたGaN層との間に形成され、前記前処理層から前記AlがドーピングされたGaN層へ次第にアルミニウムの含量が減少されるグレードAlGaN層をさらに含んでもよい。
【0016】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記グレードAlGaN層において、アルミニウム含量は、アルミニウム含量が70%以上の含量から始まり、70%から15%までの範囲に減少することがある。
【0017】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記AlがドーピングされたGaN層は、0.1%〜0.9%のアルミニウムを含有してもよい。
【0018】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記AlGaN層上に形成される保護層をさらに含み、前記保護層は、窒化ケイ素(SiNx)、酸化ケイ素(SiOx)、および酸化アルミニウム(Al)からなる群より選択される物質で形成されてもよい。
【0019】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記基板は、サファイア、シリコン、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択された物質で形成されてもよい。
【0020】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記窒化物系半導体素子は、ノーマリーオン素子、ノーマリーオフ素子、およびショットキーダイオードからなる群より選択される素子であってもよい。
【0021】
本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子において、前記窒化物系半導体素子は、第1導電型半導体層、活性層、および第2導電型半導体層を含む半導体発光素子であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子は、アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)の前処理層を含むことによって、基板と基板上に形成される窒化物半導体層との間の格子定数および熱膨張係数などの物性差による窒化物半導体層のストレス(stress)を弛緩させることができる。これによって、窒化物半導体層のクラックの発生を最小化し、窒化物半導体層の表面の粗度を改善して窒化物系半導体素子の安定性および性能を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子は、基板から遠いほどアルミニウムの含量の減少されたグレードAlGaN層を含むことによって、窒化物半導体層のクラックの発生を最小化し、より安定的な構造の窒化物半導体層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術に係るヘテロ接合電界効果トランジスタの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るヘテロ接合電界効果トランジスタの断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るショットキーダイオードの断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る半導体発光素子の断面図である。
【図5a】基板上にバッファ層を成長させる前にアルミニウムだけで前処理した窒化物半導体の表面の光学写真である。
【図5b】本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の表面の光学写真である。
【図6】基板上にバッファ層を成長させる前にアルミニウムだけで前処理した窒化物半導体の表面、および本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の表面のX線回折分析値を示したグラフである。
【図7】本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体のX線回折分析データ(omega−2theta)を示したグラフである。
【図8】本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体全体の厚さに対するマッピングデータを示したグラフである。
【図9a】本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の光学写真である。
【図9b】本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の原子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態の説明において、各基板、層またはパターンなどが各基板、層、またはパターンなどの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合、「上(on)」と「下(under)」は「直接(directly)」または「他の構成要素を介在して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上または下に対する基準は図面を基準にして説明する。
【0026】
図面における各構成要素の大きさは説明のために誇張される場合があり、実際に適用される大きさを意味することはない。
【0027】
以下では下記の図面を参照して実施形態を説明する。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係るヘテロ接合電界効果トランジスタの断面図である。図3は、本発明の他の実施形態に係るショットキーダイオードの断面図である。図4は、本発明の他の実施形態に係る半導体発光素子の断面図である。
【0029】
本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子は、ヘテロ接合電界効果トランジスタ100、ショットキーダイオード200、および半導体発光素子300に適用されてもよい。すなわち、本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子は、ノーマリーオン(normally on)素子、ノーマリーオフ(normally off)素子、およびショットキーダイオード(schottky diode)からなる群より選択される素子であってもよく、第1導電型半導体層、活性層、および第2導電型半導体層を含む半導体発光素子であってもよい。
【0030】
図2〜図4に示す基板110,210,310、アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120,220,320、バッファ層130,230,330、GaNシード層141、142、241、242、341、342、グレードAlGaN層150,250,350、AlがドーピングされたGaN層160,260,360、AlGaN層170,270,370はそれぞれの素子に応じて図面符号を別にしているが、互いに対応することから、以下は重複説明を避けるために図2を中心に説明した後、それぞれの素子に対しては重複しない部分のみを説明する。
【0031】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子は、基板110、基板110上に形成されるアルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120、前処理層120上に形成されるAlがドーピングされたGaN層160、およびAlがドーピングされたGaN層160上に形成されるAlGaN層170を含む。
【0032】
また、本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子は、バッファ層130、GaNシード層140、グレードAlGaN層150をさらに含んでもよい。
【0033】
基板110は、サファイア(sapphire)、シリコン(silicone)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択された物質で形成されてもよい。すなわち、基板110は、ガラス基板またはサファイア基板のような絶縁性基板であってもよく、Si、SiC、ZnOのような導電性基板であってもよい。また、基板110は窒化物成長用基板であってもよく、例えば、AlNまたはGaN系の基板であってもよい。
【0034】
アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120は、基板110と該基板110上に形成される窒化物半導体層との間の格子定数および熱膨張係数などの物性差による窒化物半導体層のストレスを弛緩させることができる。これによって、窒化物半導体層のクラックの発生を最小化し、窒化物半導体層の表面の粗度を改善して窒化物系半導体素子の安定性および性能を向上させることができる。
【0035】
アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120は、単一層の構造、規則的なドット(dot)構造、不規則的なドット構造、およびパターン構造からなる群より選択される構造で形成されるものの、これに制限されることはない。アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120は窒化物半導体層のクラックの発生を最小化し、窒化物半導体層の表面の粗度を改善するために様々な構造および形状に形成されてもよい。
【0036】
バッファ層130は、アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120上に形成されてもよい。また、前処理層が、規則的なドット構造、不規則的なドット構造、およびパターン構造からなる場合に、前処理層が、バッファ層中に含まれてもよい。バッファ層130は、窒化アルミニウム(AlN)からなり得る。バッファ層130は、20nm〜1000nm厚さの単結晶で形成されてもよい。バッファ層130は、アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120と共に窒化物半導体層と基板の格子定数および熱膨張係数の差を最小化して本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子の安定性を向上させ、性能を改善させることができる。
【0037】
GaNシード層141,142はバッファ層130上に形成されてもよい。GaNシード層141,142は、窒化物半導体層の安定した形成のためにV族元素およびIII族元素を含んでもよい。ここで、窒化物半導体層は、下記のグレードAlGaN層150、AlがドーピングされたGaN層160、およびAlGaN層170を含んでもよい。GaNシード層141,142は、窒化物半導体層の水平方向の成長を促進させて窒化物系半導体素子の製造効率性および品質を向上させることができる。GaNシード層141,142において、III族元素対比V族元素の比率のV/III族の比率が調整されてもよい。
【0038】
GaNシード層141,142は、V/III族の比率の高い第1GaNシード層141およびV/III族の比率の低い第2GaNシード層142を含む2層構造であってもよい。第1GaNシード層141はバッファ層130上に形成されてもよく、高圧およびV/III族の比率が高い条件で形成されてもよい。例えば、第1GaNシード層141は、300Torr以上の圧力およびV/III族の比率が10、000以上の条件で形成されてもよい。
【0039】
第2GaNシード層142は第1シード層141上に形成されてもよく、低圧およびV/III族の比率が低い条件で形成されてもよい。例えば、第2GaNシード層142は、50Torr以下の圧力およびV/III族の比率が3、000以下の条件で形成されてもよい。
【0040】
グレードAlGaN層150は、アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120およびAlがドーピングされたGaN層160の間に形成されてもよい。グレードAlGaN層150は、アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層120からAlがドーピングされたGaN層160へ次第にアルミニウムの含量が減少してもよい。グレードAlGaN層150においてアルミニウム含量はアルミニウム含量が70%以上の含量から始まり、70%から15%までの範囲で減少してもよい。
【0041】
グレードAlGaN層150は多層構造であってもよく、個別の層においてアルミニウムの含量は互いに異なってもよい。例えば、グレードAlGaN層150は、アルミニウム含量が70%以上の含量から始まり、70%から50%に減少する第1グレードAlGaN層(図示せず)、アルミニウム含量が50%から30%に減少する第2グレードAlGaN層(図示せず)、およびアルミニウム含量が30%から15%に減少する第3グレードAlGaN層(図示せず)が順次積層されてもよい。すなわち、窒化物半導体層におけるクラックの発生を防止し、より安定した構造の窒化物半導体層が形成されるようにアルミニウムの含量がAlがドーピングされたGaN層160にいくほど次第に減少するグレードAlGaN層150を形成してもよい。
【0042】
また、グレードAlGaN層150に含まれる複数の層は窒化物半導体層のクラックの発生を最小化し、より安定した構造の窒化物半導体層を形成させる厚さを有し得る。例えば、当該第1グレードAlGaN層において約70%のアルミニウム含量を有するAlGaN層は20nm〜1000nmの厚さに形成してもよく、第2グレードAlGaN層全体は20nm〜50nmの厚さに形成してもよい。
【0043】
AlがドーピングされたGaN層160はグレードAlGaN層150上に形成されてもよい。AlがドーピングされたGaN層160は、0.1%〜0.9%のアルミニウムを含有してもよい。好ましくは、AlがドーピングされたGaN層160は0.3%〜0.6%のアルミニウムを含有してもよい。AlがドーピングされたGaN層160は、アルミニウムによってGaN層の欠陥により存在し得るガリウム空格子(Ga vacancy)を不動態化(passivation)させることができる。これによって、2次元または3次元電位における成長を抑制してGaN層の結晶性を向上させることができる。
【0044】
AlGaN層170は、AlがドーピングされたGaN層160上に形成されてもよい。また、AlGaN層170上に保護層190がさらに形成されてもよい。保護層190は、窒化ケイ素(SiNx)、酸化ケイ素(SiOx)、および酸化アルミニウム(Al)からなる群より選択される物質で形成されてもよい。保護層190は不動態化薄膜層としてAlGaN層の不安定な表面状態を減少させ、高周波の動作時に電流崩壊(current collapse)の現象による電力特性の減少を減らすことができる。
【0045】
上記で簡略に説明したように、本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子は様々な種類の電子素子に適用されてもよい。
【0046】
例えば、図2に示すようにソース電極181、ゲート電極182、およびドレイン電極183を含むヘテロ接合電界効果トランジスタのノーマリーオン素子およびノーマリーオフ素子に適用されてもよい。図2でソース電極181およびドレイン電極183は、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、および金(Au)からなる群より選択される物質で形成されてもよい。
【0047】
また、図3に示すように、オーミック電極281およびショットキー電極282の形成されたショットキーダイオードに適用されてもよい。図3に示すオーミック電極281は、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、および金(Au)からなる群より選択される物質で形成されてもよい。ショットキー電極282は、Ni、Au、CuInO、ITO、Pt、およびこの合金からなる群より選択される物質で形成されてもよい。また、上記の合金の例として、NiとAu合金、CuInOとAu合金、ITOとAu合金、Ni、PtおよびAu合金、そしてPtとAuの合金が挙げられるが、これに制限されることはない。
【0048】
さらに、図4に示すように第1導電型半導体層383、活性層384、および第2導電型半導体層385を含む半導体発光素子に適用されてもよい。半導体発光素子において活性層384は量子井戸(quantum well)型であってもよく、半導体発光素子は透明電極386、p型電極387およびn型電極388を含んでもよい。
【0049】
図5a及び図5bは、基板上にバッファ層を成長させる前にアルミニウムだけで前処理した窒化物半導体の表面、および本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の表面の光学写真である。図6は、基板上にバッファ層を成長させる前にアルミニウムだけで前処理した窒化物半導体の表面、および本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の表面のX線回折分析値を示したグラフである。
【0050】
図5a及び図5bを参照すると、バッファ層を成長させる前にアルミニウムだけで前処理した窒化物半導体の表面図5aには微細なクラックが発生したが、本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の表面にはこのようなクラックが全く発生しないことが確認される。
【0051】
また、図6を参照すると、バッファ層を成長させる前にアルミニウムだけで前処理した窒化物半導体の002X線の回折分析値(Al pre−treatment)は716arcsecである一方、本発明の一実施形態によりアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の002X線の回折分析値(AlSi1−xCx pre−treatment)は313arcsecに減少したことが分かる。これによって、アルミニウムシリコンカーバイドで前処理することによって窒化物半導体のストレスが弛緩し、クラック発生の減少だけではなく結晶性が改善されたことが分かる。
【0052】
図7は、本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体のX線回折分析データ(omega−2theta)を示したグラフである。図8は、本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体全体の厚さに対するマッピングデータを示したグラフである。図9a及び図9bは、本発明の一実施形態によってアルミニウムシリコンカーバイドで前処理した窒化物半導体の光学写真および原子顕微鏡の写真である。
【0053】
図7を参照すると、本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子でアルミニウムの含量に応じるピーク(peak)を確認する。図8、図9a及び図9bを参照すると、本発明の一側面に係る窒化物系半導体素子は、アルミニウムシリコンカーバイド前処理層およびV/III族の比率が予め定められたGaNシード層が形成され、クラックがほぼ存在せず、原子顕微鏡上の粗度が0.53nmとして極めて優れた表面を有することが分かる。
【0054】
すなわち、従来にはクラックが発生されずに窒化物半導体層を特定の厚さ以上に成長することが困難であったが、本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子は、基板上にアルミニウムシリコンカーバイド前処理層を備えることによって、クラックがほぼ発生しないながらも窒化物半導体層を特定の厚さ以上に成長させることができる。図8に示すように、本発明の一実施形態に係る窒化物系半導体素子はクラックの発生がほとんどなく、全体の厚さが約2.2μmであり、厚さの偏差が約1.6%である均一な厚さ分布を取得することができた。
【0055】
また、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体は、AlがドーピングされたGaN層上に形成されたAlGaN層においてアルミニウム含量が40%であるとき、2次元電子ガス層の移動度(mobility)が約1000cm/Vs、シートキャリア濃度(sheet carrier density)が約1.5×1013/cmであると確認された。
【0056】
上述したように本実施形態を限定された実施形態と図面によって説明したが、本実施形態は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような実施形態から多様な修正及び変形することができる。したがって、本実施形態の範囲は、開示された実施形態に限定されて定められるものではなく、特許請求の範囲だけではなく特許請求の範囲と均等なものなどによって定められる。
【符号の説明】
【0057】
10、100 ヘテロ接合電界効果トランジスタ
11 基板
12 低温バッファ層
13 AlGaN/GaN複合層
14 GaN層
15、170 AlGaN層
16、181 ソース電極
17、182 ゲート電極
18、183 ドレイン電極
19、190 保護層
110、210、310 基板
120、220、320 アルミニウムシリコンカーバイド前処理層
130、230、330 バッファ層
141、241、341 第1GaNシード層
142、242、342 第2GaNシード層
150、250、350 グレードAlGaN層
160、260、360 AlがドーピングされたGaN層
170、270、370 AlGaN層
281 オーミック電極
384 活性層
386 透明電極
387 p型電極
388 n型電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されるアルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層と、
前記前処理層上に形成されるAlがドーピングされたGaN層と、
前記AlがドーピングされたGaN層上に形成されるAlGaN層と、
を含むことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項2】
前記アルミニウムシリコンカーバイド(AlSi1−x)前処理層は、単一層の構造、規則的なドット構造、不規則的なドット構造、およびパターン構造からなる群より選択される構造で形成されることを特徴とする請求項1に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項3】
前記前処理層上に形成されるバッファ層をさらに含み、
前記バッファ層は、窒化アルミニウム(AlN)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項4】
前記前処理層と前記AlがドーピングされたGaN層との間に形成され、III族元素対比V族元素の比率であるV/III族の比率が予め定められたGaNシード層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項5】
前記GaNシード層は、
第1GaNシード層と、
第2GaNシード層を含み、
前記第1GaNシード層の前記V/III族の比率は、前記第2GaNシード層の前記V/III族の比率よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項6】
前記前処理層と前記AlがドーピングされたGaN層との間に形成され、前記前処理層から前記AlがドーピングされたGaN層へ次第にアルミニウムの含量が減少されるグレードAlGaN層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項7】
前記グレードAlGaN層において、アルミニウム含量は、アルミニウム含量が70%以上の含量から始まり、70%から15%までの範囲に減少することを特徴とする請求項6に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項8】
前記AlがドーピングされたGaN層は、0.1%〜0.9%のアルミニウムを含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項9】
前記AlGaN層上に形成される保護層をさらに含み、
前記保護層は、窒化ケイ素(SiNx)、酸化ケイ素(SiOx)、および酸化アルミニウム(Al)からなる群より選択される物質で形成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項10】
前記基板は、サファイア、シリコン、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択された物質で形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項11】
前記窒化物系半導体素子は、ノーマリーオン素子、ノーマリーオフ素子、およびショットキーダイオードからなる群より選択される素子であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項12】
前記ショットキーダイオードにおいてオーミック電極は、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、および金(Au)からなる群より選択される物質で形成されることを特徴とする請求項11に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項13】
前記ショットキーダイオードにおいてショットキー電極は、Ni、Au、CuInO、ITO、Pt、およびこの合金からなる群より選択される物質で形成されることを特徴とする請求項11に記載の窒化物系半導体素子。
【請求項14】
前記窒化物系半導体素子は、第1導電型半導体層、活性層、および第2導電型半導体層を含む半導体発光素子であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の窒化物系半導体素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate


【公開番号】特開2013−21330(P2013−21330A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153801(P2012−153801)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】