説明

窒素系有機化合物の酸化分解方法

【課題】第1に、OHラジカルの必要総モル数等の計算アルゴリズムが確立し、第2に、特にその自動化,制御化,ツール化が実現される、窒素系有機化合物の酸化分解方法を提案する。
【解決手段】この酸化分解方法では、難分解性の窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分を、OHラジカルにて酸化分解する。そして、水酸基有の場合、OHラジカルが水素原子を奪って酸化すると共に、酸素原子を二重結合化する第1プロセスと、水素原子有の場合、OHラジカルが水素原子を奪って酸化する第2プロセスと、原子の不対電子にOHラジカルが付加して、水酸基が生成される第3プロセスと、を有してなる。そして最終的には、第4プロセスにおいて、まず、OHラジカルが水分子から水素原子を奪って酸化して、発生期の水素が生成され、もって還元により硝酸が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素系有機化合物の酸化分解方法に関する。すなわち窒素系有機化合物について、窒素原子(N)を含んだ構成成分を処理対象とし、これを連鎖的に発生するOHラジカル(・OH)にて、酸化分解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
窒素は、周知の通り窒素サイクルを形成しつつ、種々の化学形で大気,水,堆積物,生体中に存在する。もって窒素は、炭素,水素,酸素に次いで、多くの有機化合物に含まれているが、窒素系有機化合物は難分解性のものも多い。
そして、このような難分解性の窒素系有機化合物は、例えば廃液等に溶存,含有され、もって地下水,河川水,湖水等として環境中に排出されることも多く、環境汚染の原因となり健康への悪影響も懸念されている。
【0003】
《従来技術》
これに対し、廃液等中に含有された難分解性の窒素系有機化合物、そしてその窒素原子を含んだ構成成分について、有効な浄化処理技術,無害化処理技術は、確立していない。その処理ニーズは、今後ますます高まると予測されるが、その難分解性等に起因して、効果的な処理技術は未だ確立されていない。
この種の処理技術として開発,使用された従来技術は、いずれも設備コスト面やランニングコスト面等に、大きな難点が指摘されていた。
唯一、過酸化水素と鉄塩にてOHラジカルを生成して、酸化分解するフェントン法の処理技術が提案され、注目されている状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
このようなフェントン法による処理技術としては、例えば、次の特許文献1,2に示されたものが挙げられる。
【特許文献1】特開2006−334570号公報
【特許文献2】特開2007−50314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《問題点》
ところで、このような従来のフェントン法による処理技術,酸化分解方法については、次の課題が指摘されていた。
OHラジカルは、周知のごとく強力な酸化力,分解力を備えており、難分解性の窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分の処理に効果的である。
しかし、ラジカルで反応性に富んでいるだけに、存在時間が瞬間的で寿命が極めて短い化学種であり、連鎖的に生成される生成効率の向上や反応効率の向上が、重要テーマとなる。
これに対し従来のフェントン法は、例えば過酸化水素が途中で水と酸素に分解され易い等、OHラジカルの生成効率が悪く、又、所期の酸化分解反応以外の2次的反応が起こり易い等、反応効率も悪かった。
すなわちOHラジカルが、処理対象の窒素系有機化合物、そしてその窒素原子を含んだ構成成分にアタックして酸化分解に用いられることなく、消滅してしまうロスや、不安定な中間生成物を生成してしまうロス、等々の問題が従来より指摘されていた。
【0006】
《その原因について》
従来のフェントン法について指摘されていた上述した問題は、根本的には、連鎖的に生成されるOHラジカルによる酸化分解プロセスの把握不足に、起因していた。従来の問題点の根本原因は、次の各点の解明不足にあった。
すなわち、処理対象の窒素原子を含んだ構成成分それぞれについて、a.酸化分解メカニズムの分析、そして酸化分解過程の化学式のプロセス解明、b.これに基づく、酸化分解に要するOHラジカルの必要総モル数の把握、c.フェントン法の過酸化水素や鉄イオンの添加量の把握、等々の点についての解明不足が挙げられる。
又、これらの解明が進展したとしても、これらを手計算で行うことの困難性が、特に指摘されていた。すなわちa.処理対象が酸化分解され尽くすまでの煩雑な酸化分解過程、そしてb.その化学式プロセスを確実にフォローして、c.必要総モル数や添加量を把握するには、膨大な計算そして多大な時間や労力を要し、ミスも多発していた。
そこで、数多い難分解性の窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分について、OHラジカルの必要総モル数等の系統立った計算アルゴリズムの確立、そして最適処理条件の系統立った選定、その自動化,制御化,ツール化等が、切望されていた。
【0007】
《本発明について》
本発明の窒素系有機化合物の酸化分解方法は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、OHラジカルの必要総モル数等の計算アルゴリズムが確立し、第2に、特にその自動化,制御化,ツール化が実現される、窒素系有機化合物の酸化分解方法を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲にも記載したように、次のとおりである。
まず、請求項1については、次のとおり。
請求項1の窒素系有機化合物の酸化分解方法は、難分解性の窒素系有機化合物について、窒素原子(N)を含んだ構成成分を処理対象とし、水溶液中の該処理対象を、OHラジカル(・OH)にて酸化分解する。そして、次の第1,第2,第3,第4の各プロセスを有している。
すなわち該処理対象について、水酸基(−OH)の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが該水酸基の水素原子(H)を奪って酸化し、自身は水に回帰して系外に遊離すると共に、該水酸基の酸素原子(O)を二重結合化する第1プロセスと、水素原子の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが該水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰して系外に遊離する第2プロセスと、原子の不対電子にOHラジカルが付加して、水酸基が生成される第3プロセスと、を有してなる。
そして最終的には、第4プロセスにおいて、まず、OHラジカルが水分子から水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰して系外に遊離すると共に、酸素分子を発生させつつ発生期の水素(H+e)が生成される。そして該発生期の水素が、該処理対象の残基を還元して、硝酸(HNO)が生成されること、を特徴とする。
【0009】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項1において、該窒素系有機化合物は蛋白質型有機化合物よりなる。そして、該処理対象の蛋白質型の窒素原子を含んだ構成部分、つまり、N末端の−NH(アミノ基)型の窒素原子を含んだ構成部分と、酸アミド結合の−NH−型の窒素原子を含んだ構成部分とが、それぞれ前記各プロセスを辿ること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項2において、該蛋白質型有機化合物は、細菌の細胞の主要部やウィルスの細胞の主要部を形成していること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。
請求項4の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項1において、該処理対象は、R−NH型の窒素原子、(R)NH型の窒素原子、RR’NH型の窒素原子、R=NH型の窒素原子、(R)N−型の窒素原子、RR’N−型の窒素原子、R=N−型の窒素原子、R−N=CO型の窒素原子、R−NO型の窒素原子、又はR−N=N−型の窒素原子を含んだ構成成分よりなり、それぞれが前記各プロセスを辿ること、を特徴とする。
【0010】
請求項5については、次のとおり。
請求項5の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項1,2,3,又は4において、該処理対象の酸化分解に要するOHラジカルの必要総モル数が、前記各プロセスでの反応式に基づき算出されること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。
請求項6の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項5において、OHラジカルはフェントン法にて生成され、過酸化水素および鉄イオンの添加量が、OHラジカルの該必要総モル数と該フェントン法に基づき算出されること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。
請求項7の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項6において、まず検出手段により、該窒素系有機化合物の濃度が検出されると共に、入力手段により、該窒素系有機化合物中の該処理対象の構成成分とそのモル数が入力される。もって、検出された濃度、および入力された構成成分とそのモル数に基づき、制御装置により、該処理対象の酸化分解に要するOHラジカルの該必要総モル数、そして過酸化水素および鉄イオンの該添加量が算出される。
そして、該制御装置からの指示に基づき、過酸化水素添加部および鉄イオン添加部により、該処理対象の水溶液に対し、該添加量の過酸化水素および鉄イオンが添加されること、を特徴とする。
【0011】
請求項8については、次のとおり。
請求項8の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項7において、該制御装置は、コンピュータにて構成されている。そして、そのプログラムにより、該処理対象の構成成分について、前記第1,第2,第3,第4の各プロセス毎に必要なOHラジカルのモル数を、算出するプロセス処理と、該プロセス処理に基づく、該処理対象の構成成分の酸化分解に要するOHラジカルの該必要総モル数の演算処理と、該演算処理に基づく、過酸化水素および鉄イオンの該添加量の演算処理とが、行われることを特徴とする。
請求項9については、次のとおり。
請求項9の窒素系有機化合物の酸化分解方法では、請求項7において、該制御装置は、コンピュータにて構成されている。そして、そのプログラムにより、予め記憶された各構成成分毎のデータを検索して、該処理対象の構成成分の酸化分解に必要なOHラジカルのモル数を抽出するデータ検索処理と、該データ検索処理に基づく、該処理対象の構成成分の酸化分解に要するOHラジカルの該必要総モル数の演算処理と、該演算処理に基づく、過酸化水素および鉄イオンの添加量の演算処理とが、行われることを特徴とする。
【0012】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)難分解性の窒素系有機化合物を含有した被処理水は、フェントン処理槽に供給される。
(2)そして、過酸化水素や鉄イオンが添加される。
(3)そこで、OHラジカルが連鎖的に生成される。
(4)OHラジカルは、処理対象の窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分を、酸化分解する。
(5)そして本発明では、処理対象が次の各プロセスにて、酸化分解される。水酸基有の場合の第1プロセス、水素原子有の場合の第2プロセス、水酸基が生成される第3プロセス、等の各プロセスが、OHラジカル関与のもとで実施される。そして最終的には、OHラジカル関与のもと、発生期の水素にて還元する第4プロセスにて、硝酸が生成される。
(6)このように、パターン化された各プロセスにより、酸化分解過程や化学式が具体的に把握される。もって、OHラジカルの必要総モル数や、過酸化水素や鉄イオンの添加量が、容易かつ確実に算出可能となる。
(7)このような計算アルゴリズムは、コンピュータ等の制御装置を利用することにより、自動化,制御化,ツール化される。
(8)例えば、前記第1,第2,第3,第4の各プロセス処理、記憶データ検索処理,必要総モル数演算処理,添加量演算処理等を、プログラム化してコンピュータにて行うことにより、上述したところが容易かつ確実に自動化,制御化,ツール化される。
(9)なお、OHラジカルの必要総モル数は、必要理論総モル数として算出されたモル数より、多目に算出,設定,準備される。もって、過酸化水素や鉄イオンの添加量についても、これに準じる。
(10)さてそこで、本発明の窒素系有機化合物の酸化分解方法は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
《第1の効果》
第1に、本発明の酸化分解方法により、OHラジカルの必要総モル数等の計算アルゴリズムが、確立する。
すなわち、パターン化された第1,第2,第3,第4の各プロセスを、処理対象の難分解性の各窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分に対して、共通適用することにより、それぞれの酸化分解過程や化学式が具体的に解明,把握される。もって、連鎖的に発生するOHラジカルの必要総モル数、そしてフェントン法の過酸化水素や鉄イオンの添加量を、容易かつ確実に算出可能となる。
このように本発明では、OHラジカルの必要総モル数等の計算アルゴリズムが確立され、最適処理条件が系統だって選定される。例えば、蛋白質型有機化合物が主要部をなす細菌やウィルスの殺菌処理に際しても、処理用のOHラジカルの計算アルゴリズムが確立される。
これらにより、過不足ないOHラジカルの生成と反応が可能となり、前述したこの種従来例に比し、OHラジカルの生成効率や反応効率が向上する。連鎖的に生成され寿命の短いOHラジカルが、酸化に用いられずに消滅してしまうロスは防止され、2次的反応による中間生成物の生成ロスも削減される。
【0014】
《第2の効果》
第2に、特に本発明の酸化分解方法によって、上述した計算アルゴリズムの自動化,制御化,ツール化が、実現される。
本発明では、コンピュータ等の制御装置を利用することにより、処理対象の窒素系有機化合物の窒素原子を含む構成成分の酸化分解に関し、OHラジカルの必要総モル数等の計算アルゴリズムが、自動化,制御化,ツール化される。
すわなち、濃度検出手段や処理対象入力手段を付設すると共に、プログラムソフトに基づき各種演算処理等を行うことにより、容易かつ確実に、OHラジカルの必要総モル数,過酸化水素の添加量,鉄イオンの添加量等が算出される。前述したこの種従来例のように、手計算により多大な時間と労力を要し、ミス多発の虞もあったのに比し、このように自動化,制御化,ツール化される意義は大きい。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る窒素系有機化合物の酸化分解方法について、発明を実施するための形態の説明に供し、全体の構成ブロック図である。
【図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、制御装置のコンピュータ等の構成ブロック図である。
【図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、制御装置のコンピュータの要部の機能ブロック図である。
【図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、処理プロセスの1例を示し、その前半のフローチャートである。
【図5】同発明を実施するための形態の説明に供し、処理プロセスの1例を示し、その後半のフローチャートである。
【図6】基本部分や残基の処理プロセスを示し、(1)図は、第1’プロセスのフローチャート、(2)図は、第2’プロセスのフローチャートである。
【図7】同基本部分や残基の処理プロセスを示し、(1)図は、第3’プロセスのフローチャート、(2)図は、第4’プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
そして以下、「フェントン法」,「OHラジカルの生成」,「処理対象等」,「本発明の概要」,「酸化分解の具体例」,「OHラジカル等の計算アルゴリズム」,「制御装置等」,「制御例(その1)」,「制御例(その2)」,「作用等」,「参考:他の基本部分や残基の酸化分解について」,「実施例1」,「実施例2」,「実施例3」、等の項目順に説明する。
【0017】
《フェントン法について》
本発明の酸化分解方法は、窒素系有機化合物について、窒素原子(N)を含んだ構成成分を、処理対象1とする。そして、水溶液中の処理対象1を、OHラジカル(・OH)にて酸化分解する。
さて、OHラジカルの生成法やOHラジカルによる酸化分解法としては、フェントン法が代表的である。そこでまず、本発明の前提となるフェントン法について、図1を参照して、その概要を説明する。
図示したフェントン法の処理装置2は、原水槽3,フェントン処理槽4,後処理槽5を順に備えており、フェントン処理槽4には、過酸化水素槽6,鉄イオン槽7,pH調整手段(図示せず)等が、付設されている。
もって、窒素原子を含んだ構成成分の窒素系有機化合物が溶存,含有した被処理水8が、処理対象1として、原水槽3からフェントン処理槽4へと供給される。
【0018】
フェントン処理槽4は、pH調整手段にて常時弱酸性に調整されている。そして、フェントン処理槽4に供給された被処理水8に対し、反応当初において、過酸化水素槽6から過酸化水素(H)の水溶液が、電磁弁やポンプを備えた過酸化水素添加部9を介し、フェントン試薬として全量添加される。
それから、上述により過酸化水素が添加されたフェントン処理槽4の被処理水8に対し、間欠的に複数サイクル繰り返して、鉄イオン槽7から2価の鉄イオン(Fe2+)溶液が、電磁弁やポンプを備えた鉄イオン添加部10を介し、フェントン試薬として分割添加される。
すなわち、液中で2価の鉄イオンを生じる物質、例えば硫酸第一鉄7水和物(FeSO・7HO)が、このような鉄塩として代表的に使用されるが、その他の無水塩や含水塩、例えば塩化鉄(FeCl)やその水和物も使用可能である。なお、鉄イオン槽7から鉄イオン添加部10を介して分割添加される鉄イオンとしては、このように2価の鉄イオン(Fe2+)が代表的であるが、これに代え3価の鉄イオン(Fe3+)も使用可能である(後述する化1や化5の反応式も参照)。
【0019】
フェントン処理槽4内では、このように添加された過酸化水素と鉄イオンにてOHラジカルが生成され、もって、被処理水8中の処理対象1、つまり窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分が、酸化分解される。
すなわち、OHラジカルつまりヒドロキシラジカル(・OH)は、周知のごとく強力な電子奪取力,酸化力,分解力を有すると共に、ラジカルで反応性に富んでおり、反応が激しいだけに存在時間が瞬間的であり、寿命の短い化学種でもある。そして、水相分散したOHラジカルは、被処理水8中に溶存,含有された窒素系有機化合物について、処理対象1の窒素原子を含んだ構成成分を、酸化し遂には分解してしまう。もって被処理水8は、後処理槽5を経由し、凝集,沈殿,濾過,pH調整された後、外部排水されて放流される。
フェントン法については、以上のとおり。
【0020】
《OHラジカルの生成》
次に、フェントン法におけるOHラジカルの生成反応について、図1を参照して説明しておく。
第1に、フェントン処理槽4内では、まず、添加された過酸化水素が、添加された鉄イオンにて還元されて、OHラジカルが生成される。すなわち、次の化1,化2の反応式に基づき、OHラジカルが生成される。これがフェントン主反応である。なお、化1と化2の反応式を合成すると、化3の反応式となる。
【0021】
【化1】

【化2】

【化3】

【0022】
第2に、上記第1のようにOHラジカルが生成されると共に、上記化2の過酸化水素の還元反応にて生成された水酸化イオンが、上記化1の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンにて酸化されて、OHラジカルが生成される。
すなわち、次の化4,化5の反応式によっても、付随的,副次的,連鎖的に、OHラジカルの生成が可能である。
【0023】
【化4】

【化5】

【0024】
第3に、更に前記化3(化1,化2)や上記化4,化5の反応式にて生成されたOHラジカルが、被処理水8等の水と反応して、新たなOHラジカルと水とを生成する反応が、次の化6,化7の反応式により、付随的,副次的,連鎖的に繰り返して可能である。
【0025】
【化6】

【化7】

【0026】
第4に、前記化3(化1)の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成される3価の鉄イオンと、過酸化水素とが反応して、新たにOHラジカル等を生成する反応が、次の化8,化9の反応式により、付随的,副次的,連鎖的に繰り返して可能である。なお、化8と化9の反応式を合成すると、化10の反応式となる。
即ち、被処理水8を、pH調整手段にてアルカリ化し、もって化8の反応式にて、過酸化水素がプロトン(H)を遊離し、3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに還元されると共に、酸素分子に電子が付加されているスーパーオキシドアニオン(・O)が生成される。そして、化9の反応式により、このスーパーオキシドアニオンが、過酸化水素と反応して、OHラジカルを生成する。
【0027】
【化8】

【化9】

【化10】

【0028】
フェントン法では、このように、主反応や各付随的,副次的,連鎖的反応によって、OHラジカルが生成される。
OHラジカルの生成については、以上のとおり。
【0029】
《処理対象1等について》
次に、処理対象1等について、説明する。
本発明は、難分解性の窒素系有機化合物について、処理対象1の窒素原子を含んだ構成成分を、酸化分解する。
まず、難分解性の窒素系有機化合物としては、各種の物質が存在するが、例えば、ニトロベンゼン(CNO),アニリン(CNH),蛋白質(アミノ酸NH−CH(−R)−COOHがペプチド結合したポリマー)等が挙げられる。勿論、蛋白質型の窒素系有機高分子化合物には、生物の細胞の主要部を形成するものの他、細菌の細胞の主要部やウィルスの細胞の主要部を形成するものも含まれる。
そして本発明は、このような難分解性の窒素系有機化合物について、その窒素原子を含んだ構成成分を、処理対象1とする。
そこで、処理対象1としては、R−NH型の窒素原子を含んだ構成成分、(R)NH型の窒素原子を含んだ構成成分、RR’NH型の窒素原子を含んだ構成成分、R=NH型の窒素原子を含んだ構成成分、(R)N−型の窒素原子を含んだ構成成分、RR’N−型の窒素原子を含んだ構成成分、R=N−型の窒素原子を含んだ構成成分、R−N=CO型の窒素原子を含んだ構成成分、R−NO型の窒素原子を含んだ構成成分、又はR−N=N−型の窒素原子を含んだ構成成分等、各パターンが考えられる。
なお本明細書において、RやR’は、窒素系有機化合物において、上記した窒素原子を含んだ構成成分以外の、基本部分や残基を示す。勿論、アルキル基を示す場合も含まれ、多くの場合、炭素原子(C),水素原子(H),更には酸素原子(O)等からなる。又、RとR’とは、異なる基本部分や残基を示す。
処理対象1等については、以上のとおり。
【0030】
《本発明の概要について》
以下、本発明について説明する。まず、本発明の概要について、図4,図5のフローチャートも参照して、説明する。
フェントン処理槽4(図1を参照)内では、前述により生成されたOHラジカルにより、難分解性の窒素系有機化合物について、処理対象1の窒素原子を含んだ構成成分が、酸化分解され、もって最終的には硝酸が生成される。
そして、このような酸化分解は、次の第1プロセス,第2プロセス,第3プロセスを、順不同に繰返すことにより行われると共に、最終的には第4プロセスにて完了する。
【0031】
第1プロセスについては、次のとおり。
第1プロセスでは、処理対象1について、窒素原子(N)に付く水酸基(−OH)の有無が判定される。そして、水酸基有の場合は、OHラジカル(・OH)が水酸基の水素原子(H)を奪って酸化し、自身は水(HO)に回帰して系外に遊離すると共に、水酸基の酸素原子(O)を二重結合化(=O)させる。
図4,図5(後で実施例1として詳述する)のフローチャートでは、ステップS2,S3,S4,S5、およびステップS15,S16,S17,S18、更にはステップS21,S22,S23,S24等のルーチンにおいて、この第1プロセスの処理が実施される(ステップS23では、酸素原子は二重結合化することなく不対電子有(−O)となる)。
なお、図4,図5のフローチャートのステップ1では、窒素原子を含んだ構成成分の化学式(構造式)が、処理対象1として入力される(後述する処理対象入力手段13を参照)。
【0032】
第2プロセスについては、次のとおり。
第2プロセスでは、処理対象1について、窒素原子に付く水素原子(H)の有無が判定される。そして、水素原子有の場合は、OHラジカルが水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰して系外に遊離する。
図4,図5のフローチャートでは、ステップS9,S10,S11,S12のルーチンで、この第2プロセスの処理が実施される。
【0033】
第3プロセスについては、次のとおり。
第3プロセスでは、処理対象1について、窒素原子,その他の原子の不対電子(−)に、OHラジカルが取り付いて付加し、もって水酸基が生成,再生される。
図4,図5のフローチャートでは、ステップS13,S14、およびステップS19,S20のルーチンで、この第3プロセスの処理が実施される。
【0034】
第4プロセスについては、次のとおり。
最終プロセスである第4プロセスでは、まず、OHラジカルが水分子から水素原子を奪って酸化する。もって、自身は水に回帰して系外に遊離すると共に、酸素分子を発生させつつ、発生期の水素(H+e)を生成する。そして、生成された発生期の水素が、処理対象1の残基を還元し、もって硝酸(HNO)が生成される。
図4,図5のフローチャートでは、ステップS25,S26,S27のルーチンで、この第4プロセスの処理が実施される。
【0035】
ここで、窒素原子の原子価について述べておく。
窒素原子は、通常は共有結合の原子価が3価である。しかし共有結合の過程で、その外殻電子構造の2s軌道の対電子が、例えばOHラジカルにより外部エネルギーを得ると昇位して、2s軌道と2p軌道とがsp混成軌道を形成する可能性がある。この場合、原子価は4価そして5価となる。
そして、本発明の酸化分解過程では、前半の第1,第2,第3プロセスでは、窒素原子は3価であるが、後半の第1,第3,第4プロセスでは、窒素原子は4価そして5価となっている。図4,図5のフローチャートでは、ステップS1〜S16までは3価を前提とし、ステップ17,18は4価、ステップS20〜S27は5価を前提としている。
本発明の概要については、以上のとおり。
【0036】
《酸化分解の具体例》
次に、このような酸化分解の具体例について、説明する。
難分解性の窒素系有機化合物について、処理対象1である窒素原子を含む構成成分は、本発明では、第1プロセス,第2プロセス,第3プロセスを辿り、最終的に第4プロセスで硝酸が生成されるに至る。なお付随して、水や酸素が副次的に派生し、炭酸ガスが派生することもあり、これらは系外へと遊離する。
ここで、処理対象1となる窒素原子を含む構成成分の各パターン毎に、本発明の酸化分解の具体例について説明する。代表的な構成成分毎に、第1〜第4プロセスを辿った結果について、酸化分解の反応式にて説明する。
表1は、このような酸化分解データである。RやR’等の意味内容については、前述した所を参照。
【0037】
【表1】

【0038】
まず、R−NH型の窒素原子を含んだ構成成分は、表1中の項目No.1に示したように、酸化分解される。
すなわち、難分解性の窒素系有機化合物において、処理対象1とされた1モルのR−NH型の窒素原子を含んだ構成成分は、計9モルのOHラジカルが関与し消費されることにより、1モルの硝酸が生成され、5モルの水と1/2モルの酸素分子が派生される。
次に、(R)NH型,(RR’)NH型,又はR=NH型の窒素原子を含んだ構成成分は、表1中の項目No.2,3,4に示したように、酸化分解される。
すなわち、難分解性の窒素系有機化合物において、処理対象1とされた1モルの(R)NH型,(RR’)NH型,又はR=NH型の窒素原子を含んだ構成成分は、計10モルのOHラジカルが関与し消費されることにより、1モルの硝酸が生成され、5モルの水と1モルの酸素分子が派生される。
次に、(R)N−型、RR’N−型,又はR=N−型の窒素原子を含んだ構成成分は、表1中の項目No.5,6,7に示したように、酸化分解される。
すなわち、難分解性の窒素系有機化合物において、処理対象1とされた1モルの(R)N−型,RR’N−型,又はR=N−型の窒素原子を含んだ構成成分は、計9モルのOHラジカルが関与し消費されることにより、1モルの硝酸が生成され、4モルの水と1モルの酸素分子が派生される。
【0039】
次に、R−N=CO型の窒素原子を含んだ構成成分は、表1中の項目No.8に示したように、酸化分解される。
すなわち、難分解性の窒素系有機化合物において、処理対象1とされた1モルのR−N=CO型の窒素原子を含んだ構成成分は、計19モルのOHラジカルが関与し消費されることにより、1モルの硝酸が生成され、9モルの水と3モルの酸素分子と1モルの炭酸ガスとが派生される。
次に、R−NO型の窒素原子を含んだ構成成分は、表1中の項目No.9に示したように、酸化分解される。
すなわち、難分解性の窒素系有機化合物において、処理対象1とされた1モルのR−NO型の窒素原子を含んだ構成成分は、計3モルのOHラジカルが関与し消費されることにより、1モルの硝酸が生成され、1モルの水と1/2モルの酸素分子が派生される。
次に、R−N=N−型の窒素原子を含んだ構成成分は、表1中の項目No.10に示したように、酸化分解される。
すなわち、難分解性の窒素系有機化合物において、処理対象1とされた1モルのR−N=N−型の窒素原子を含んだ構成成分は、計14モルのOHラジカルが関与し消費されることにより、2モルの硝酸が生成され、6モルの水と1モルの酸素分子が派生される。
酸化分解の具体例については、以上のとおり。
【0040】
《OHラジカル等の計算アルゴリズム》
次に、OHラジカル等の計算アルゴリズムについて、説明する。
本発明の酸化分解方法では、処理対象1となる窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分について、その酸化分解に要するOHラジカルの必要総モル数が、前記第1,第2,第3,第4の各プロセスでの反応式に基づき、算出される。
そしてOHラジカルは、代表的にはフェントン法にて生成されるので、過酸化水素および鉄イオンの添加量が、OHラジカルの算出された必要総モル数と、フェントン法の反応式とに基づき、算出される。
【0041】
その計算アルゴリズムについて、更に詳述する。まず、処理対象1となる難分解性の窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分について、水酸基有の場合の前記第1プロセスと、水素原子有の場合の第2プロセスと、水酸基が生成される第3プロセスとが、OHラジカル関与のもとで、順不同に繰り返される。そして最終的には、OHラジカルが関与して生成される発生期の水素(H+e)による、還元パターンの第4プロセスに至る。
これらの各プロセスを辿ることにより、処理対象1の窒素原子を含んだ構成成分は酸化分解され、もって硝酸が生成されると共に、水,酸素,更には炭酸が派生する。酸化分解の具体例については、前記表1等を参照。
そして、これらの各プロセスの化学反応式を辿ることにより、その処理対象1を酸化分解するのに必要なOHラジカルの理論総モル数が、算出される。すなわち、酸化分解の各反応式において、原料側(左側)において関与,使用されるOHラジカルのモル数を合算することにより、必要理論総モル数が算出される。
そして実際上は、このように算出されたOHラジカルの必要理論総モル数を基に、より多目の必要総モル数が定量的に算出される。
【0042】
OHラジカルの必要総モル数が算出されると、これに基づき、フェントン法による過酸化水素と鉄イオンの必要添加量も算出される。すなわち、必要総モル数のOHラジカルを生成するのに必要な過酸化水素の添加量と、2価の鉄イオン等の鉄イオンの添加量も、フェントン法の反応式に基づき、算出される。
フェントン法によるOHラジカル生成の反応式については、前記化1,化2,(化3)の主反応や、前記化4,化5や、前記化6,化7や、前記化8,化9,(化10)等の副次的反応を参照。
具体的には、主反応に対する副次的反応のウェート付け次第であるが、実際上、過酸化水素の添加量は、1モルの過酸化水素から例えば1.5モルや2モルのOHラジカルが生成される旨、定量的に算出される。鉄イオンの添加量に関しては、処理対象1次第であるが、実際上は過酸化水素の添加量から係数計算することにより、算出される。
OHラジカルの計算アルゴリズムについては、以上のとおり。
【0043】
《制御装置11等について》
次に、制御装置11等について、図1を参照して説明する。
上述した計算アルゴリズムに基づく酸化分解方法の自動化,制御化,ツール化には、濃度検出手段12,処理対象入力手段13,制御装置11,過酸化水素添加部9,鉄イオン添加部10、等が使用される。
そして、まず濃度検出手段12により、窒素系有機化合物の濃度が検出されると共に、処理対象入力手段13により、窒素系有機化合物中の処理対象1、つまり窒素原子を含んだ構成成分とそのモル数(構成成分当量)が、入力される。このように検出された濃度、および入力された構成成分とそのモル数とに基づき、制御装置11により、処理対象1の酸化分解,無機化に要するOHラジカルの必要総モル数、そして過酸化水素および2価の鉄イオンの添加量が、算出される。
そして、制御装置11からの指示信号に基づき、過酸化水素添加部9および鉄イオン添加部10により、処理対象1の水溶液つまり被処理水8に対し、その添加量の過酸化水素および2価の鉄イオンが、添加される。
【0044】
これらについて、更に詳述する。濃度検出手段12は、原水槽3に付設されており、例えばTOC(全有機体炭素)自動測定装置が使用され、被処理水8中の窒素系有機化合物の濃度(例えばmg/L)を、分析,測定し、その測定データが制御装置11に入力される。
処理対象入力手段13は、窒素系有機化合物について、処理対象1となる窒素原子を含んだ構成成分の化学式(構造式)と、そのモル数(構成成分当量)とを、キーボードを使用して手入力により、又は分析装置を使用して自動入力により、制御装置11に対して入力する。
そして制御装置11は、このように入力された濃度データ、および処理対象1の構成成分とそのモル数とに基づき、処理対象1の酸化分解に必要なOHラジカルの総モル数を、算出する(この計算アルゴリズムについては、前述した所を参照)。OHラジカルの必要総モル数が算出されると、これに基づき、過酸化水素および鉄イオンの添加量が、通常、定量的正数,定量的係数を基準として算出される。
もって制御装置11から、過酸化水素添加部9および鉄イオン添加部10に対し、それぞれの添加量指示信号が、駆動回路15を経由して出力される。そこで、過酸化水素添加部9により、過酸化水素槽6の過酸化水素が、所定添加量だけフェントン処理槽4に添加される。又、鉄イオン添加部10により、鉄イオン槽7の代表的には2価の鉄イオンが、所定添加量だけフェントン処理槽4に分割添加される。
制御装置11としては、マイクロコンピュータ14が代表的に使用される。マイクロコンピュータ14は、周知のごとく、図2に示したようにCPU16,RAM17,ROM18,記憶装置19,インプット・ポート20,アウトプット・ポート21等を備えている。
制御装置11等は、このようになっている。
【0045】
《制御例(その1)について》
次に、このような制御の具体例(その1)について、図1〜図5を参照しつつ、説明する。
この制御例の酸化分解方法において、制御装置11は、マイクロコンピュータ14にて構成されており、順次経時的に、次のプロセス処理,総モル数演算処理,添加量演算処理等を行う。
すなわち、各処理対象1について例えば図4,図5に示したプログラムに基づき、前記第1,第2,第3,第4の各プロセス処理を行うことにより、各プロセス毎に必要なOHラジカルのモル数を算出するプロセス処理と、このプロセス処理に基づく、処理対象1の酸化分解に要するOHラジカルの必要総モル数の演算処理と、過酸化水素および鉄イオンの添加量の演算処理とが、順次経時的に行われる。
【0046】
このような制御例(その1)について、更に詳述する。制御装置11として使用されるマイクロコンピュータ14は、そのCPU16が、まず、次のように機能することによってプロセス処理を行う。
すなわち、窒素原子を含んだ各構成成分毎に予め準備されるフローチャート、例えば図4,図5のフローチャートに示されたプログラムに基づき、図3中に示したように、第1プロセス処理手段22,第2プロセス処理手段23,第3プロセス処理手段24,第4プロセス処理手段25等として、順不同に必要回数だけ機能する。プログラムは、ROM18に書き込まれている。
もって、処理対象入力手段13で入力された処理対象1の1モルやnモルの構成成分を対象に、次のプロセス処理が行われる。
第1プロセス処理手段22では、図4,図5の例のフローチャートの場合は、ステップS2,S3,S4,S5、およびS15,S16,S17,S18、更にはS21,S22,S23,S24において、前述した第1プロセスの判断や処理等が行われる。
第2プロセス処理手段23では、図4,図5の例のフローチャートの場合はステップS9,S10,S11,S12において、前述した第2プロセスの判断や処理が行われる。
第3プロセス処理手段24では、図4,図5の例のフローチャートの場合はステップS13,S14およびS19,S20において、前述した第3プロセスの処理が行われる。
第4プロセス処理手段25では、図4,図5の例のフローチャートの場合はステップS25,S26,S27において、前述した第4プロセスの処理が行われる。
【0047】
次に、マイクロコンピュータ14のCPU16は、図3中に示したように、OHラジカルの総モル数演算手段(その1)26として機能し、もって、総モル数演算処理が行われる。
この総モル数演算手段(その1)26では、まず、処理対象1の酸化分解に際し、上記第1,第2,第3,第4プロセスに関与して消費されるOHラジカルのモル数が、合算される(その計算アルゴリズムについては、前述したところを参照)。
これと共に、この総モル数演算手段(その1)26は、検出手段12で検出された窒素系有機化合物の濃度(例えばmg/L)から、処理対象1となる窒素原子を含んだ構成成分のモル数を換算する。
これらに基づき、処理対象1の酸化分解に必要なOHラジカルの総モル数が、算出される。
【0048】
それから、マイクロコンピュータ14のCPU16は、図3中に示したように、過酸化水素や鉄イオンの添加量演算手段(その1)27として機能し、もって添加量演算処理が行われる。
すなわち、この添加量演算手段(その1)27は、上述により得られたOHラジカルの必要総モル数に基づき、まず、過酸化水素の必要モル数を算出する(その計算アルゴリズムについては、前述したところを参照)。
過酸化水素について、必要モル数が算出されると、その密度,分子量,質量を基に、その必要添加量が算出される。なお、2価の鉄イオン等の鉄イオンの必要添加量は、この過酸化水素の必要添加量から係数計算することにより、算出される。もって、算出された添加量の過酸化水素や鉄イオンが、添加される。
制御例(その1)では、このような制御が実施される。
【0049】
《制御例(その2)について》
次に、制御の具体例(その2)について、図1,図2,図3,および表1を参照して、説明する。
この制御例の酸化分解方法において、該制御装置11は、マイクロコンピュータ14にて構成されており、次のデータ検索処理,総モル数演算処理,添加量演算処理等を行う。
すなわち、そのプログラムに基づき、予め記憶されたデータを検索することにより、処理対象1の酸化分解に必要なOHラジカルのモル数を抽出するデータ検索処理と、このデータ検索処理に基づく、処理対象1の酸化分解に要するOHラジカルの必要総モル数の演算処理と、これに基づく、過酸化水素および鉄イオンの該添加量の演算処理とが、行われる。
【0050】
このような制御例(その2)について、更に詳述する。制御装置11として使用されるマイクロコンピュータ14のCPU16は、ROM18に書き込まれたプログラムに基づき、図3中に示したように、データ検索処理手段28,総モル数演算手段(その2)29,添加量演算手段(その2)30、等として順次経時的に機能する。
これと共に、マイクロコンピュータ14の記憶装置19には、前述した表1のデータが、酸化分解データテーブル31として格納されている。つまり、窒素原子を含む各構成成分毎に、その酸化分解に必要なOHラジカルのモル数が、対応づけて記憶されている。
【0051】
そしてまず、データ検索処理手段28は、処理対象入力手段13で入力された処理対象1の窒素系有機化合物の窒素を含んだ構成成分を、検索キーとして、酸化分解データテーブル31から読み出されたデータを検索する。もって、検索キーとされた構成成分の酸化分解に必要なOHラジカルのモル数を、抽出する。
次に、総モル数演算手段(その2)29では、まず、濃度検出手段12で検出された窒素系有機化合物の濃度(例えばmg/L)から、処理対象1となる窒素原子を含んだ構成成分のモル数を換算する。そして、この構成成分の換算モル数と、上記OHラジカルの抽出モル数とに基づき、処理対象1を酸化分解するのに必要なOHラジカルのモル数が、算出される。
後は、添加量演算手段(その2)30が、過酸化水素および鉄イオンの添加量を演算することになるが、添加量演算手段(その1)27等において述べた所に準じるので、その説明は省略する。もって、算出された添加量の過酸化水素および鉄イオンが、添加されることになる。
制御例(その2)では、このような制御が実施される。
【0052】
《作用等》
本発明の窒素系有機化合物の酸化分解方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)難分解性の窒素系有機化合物を溶存,含有した被処理水8が、原水槽3からフェントン処理槽4へと、供給される(図1を参照)。
【0053】
(2)フェントン処理槽4に供給された被処理水8は、まず反応当初に、過酸化水素添加部9から過酸化水素槽6の過酸化水素溶液が、全量添加される。しかる後、鉄イオン添加部10から鉄イオン槽7の鉄イオン溶液が、複数回に分けて分割添加される。この間、被処理水8は、pH調整手段(図示せず)により弱酸性に維持されている。
【0054】
(3)さてそこで、フェントン処理槽4内の被処理水8について、OHラジカルが生成される。すなわち過酸化水素が、添加された例えば2価の鉄イオンにて還元されて、OHラジカルを生成するフェントン主反応(前記化1〜3の反応式を参照)を始め、付随的,副次的,連鎖的反応により、OHラジカルが連鎖的に生成される(前記化4〜10の反応式を参照)。
【0055】
(4)このように生成されたOHラジカルは、極めて強力な酸化力,分解力を備えている。もって、被処理水8中に溶存,含有されていた窒素系有機化合物中の処理対象1、つまり窒素原子を含んだ構成成分は、このOHラジカルにて酸化分解される。
被処理水8は、このように溶存,含有していた窒素系有機化合物の窒素原子を含んだ構成成分が、酸化分解されて、外部排出される。
【0056】
(5)そして、本発明の酸化分解方法では、窒素系有機化合物中の処理対象1の窒素原子を含んだ構成成分が、次の各プロセスを辿ることにより、酸化分解される(図4,図5を参照)。
すなわち、水酸基有の場合の第1プロセス、水素原子有の場合の第2プロセス、水酸基が生成される第3プロセスの酸化分解パターンが、OHラジカル関与のもとで、順不同に必要回数だけ実施される。そしてOHラジカル関与のもと、発生期の水素による第4プロセスの還元パターンが最終的に実施され、もって硝酸が生成されるに至る。
勿論、窒素系有機化合物中に、窒素原子を含んだ構成成分が複数存在する場合は、そのそれぞれについて、上述した酸化分解が行われる。
【0057】
(6)本発明では、このようにパターン化された第1,第2,第3,第4の各プロセスを、処理対象1の窒素原子を含んだ構成成分に対して適用することにより、各構成成分毎の酸化分解過程,化学式プロセスが、それぞれ個別かつ具体的に解明,把握される。
もって、処理対象1の酸化分解に要するOHラジカルの必要総モル数、そして、そのOHラジカルの生成に必要なフェントン法の過酸化水素や鉄イオンの添加量が、容易かつ確実に算出可能となり、その計算アルゴリズムが確立される。
【0058】
(7)そして本発明は、マイクロコンピュータ14等の制御装置11を利用することにより、このような計算アルゴリズムが、自動化,制御化,ツール化される。
すなわち、濃度検出手段12にて、窒素系有機化合物の被処理水8中での濃度を検出すると共に、処理対象入力手段13にて、その窒素原子を含んだ構成成分とそのモル数(構成成分当量)とを入力するだけで、OHラジカルの必要総モル数と、過酸化水素や鉄イオンの添加量が、容易かつ確実に算出される(図1,図2を参照)。
【0059】
(8)例えば、前述した制御例(その1)のように、前記第1,第2,第3,第4の各プロセス処理や、所定の総モル数演算処理,添加量演算処理を、プログラムに基づきマイクロコンピュータ14にて行うことにより、上述したモル数や添加量が算出される(図3等を参照)。
又、前述した制御例(その2)のように、例えば、予め記憶されたデータの検索処理や、所定の総モル数演算処理,添加量演算処理を、プログラムに基づきマイクロコンピュータ14にて行うことによっても、上述したモル数や添加量が算出される(表1,図3等を参照)。
【0060】
(9)なお、OHラジカルの、実際使用量(必要総モル数)は、反応理論値(必要理論総モル数)より多目とされる。すなわち実際上、OHラジカルは、反応理論値として算出されたモル数を下限値としつつ、より多目に算出,設定,準備される。
従って、OHラジカルフェントン法による生成物質である過酸化水素や鉄イオンの添加量についても、これに準じることになる。
本発明の作用等については、以上のとおり。
【0061】
《参考:他の基本部分や残基の酸化分解,無機化について》
ここで、窒素系有機化合物において、以上説明した処理対象1つまり窒素原子を含んだ構成成分、以外の基本部分や残基の酸化分解,無機化について、説明しておく。
すなわち、前述したところにおいて、RやR’の符号を付して示した基本部分の構成成分や残基の構成成分は、多くの場合、炭素原子(C),水素原子(H)からなり、更には酸素原子(O)がこれに加わることもある。そして、このような基本部分や残基も、以上説明した窒素原子を含んだ構成成分に準じて酸化分解され、もって無機化される。
【0062】
これらについて更に詳述する。このような基本部分や残基も、以上説明した第1〜第4プロセスに準じた第1’〜第3’プロセス、更には第4’プロセスを辿って、酸化分解されて,無機化される。
その際、処理装置2,原水槽3,フェントン処理槽4,後処理槽5,過酸化水素槽6,鉄イオン槽7,被処理水8等も、共通に使用される。更に、過酸化水素添加部9,鉄イオン添加部10,制御装置11,濃度検出手段12,処理対象入力手段13,マイクロコンピュータ14等も、共通に使用される。
マイクロコンピュータ14は、第1〜第4プロセス処理手段22〜25に準じたプロセス処理手段として機能する。総モル数演算手段26,29や、添加量演算手段27,30や、酸化分解データテーブル等についても、準じた機能となっている。
結局、難分解性の窒素系有機化合物に関し、処理対象1となる窒素原子を含んだ構成成分の酸化分解と共に、その他の基本部分や残基の構成成分の酸化分解,無機化が、同時併行的に実施可能である。もって窒素系有機化合物は、全体的に酸化分解,無機化され尽くしてしまう。
【0063】
このような基本部分や残基を対象とした酸化分解,無機化について、そのポイントを、図6,図7を参照して説明しておく。
フェントン処理槽4(図1を参照)内では、前述により生成されたOHラジカルにより、窒素系有機化合物について、炭素,水素,酸素等の元素よりなる基本部分や残基が、酸化分解されて無機化される。そして、この酸化分解,無機化は、次の第1’プロセス,第2’プロセス,第3’プロセス,更には第4’プロセスを、順次繰返すことにより行われる。
【0064】
まず、図6の(1)図は、第1’プロセスに関する。
まず前提として、ステップS101で対象となる窒素系有機化合物の基本部分や残基の化学式、具体的には構成成分を示した構造式が、入力される(処理対象入力手段13を参照)。
そして、この第1プロセスのルーチンでは、そのステップS102で、対象について、まず水酸基(−OH)の有無が判定される。そして、水酸基有の場合は、ステップS103,S104へと進み、OHラジカル(・OH)が水酸基の水素原子(H)を奪って酸化し、水酸基の酸素原子(O)を二重結合化(=O)すると共に、ステップS105で自身は水(HO)に回帰して系外に遊離する。なおステップS106により、水酸基が無となるまで、上述した所が繰返される。
【0065】
次に、図6の(2)図は、第2’プロセスに関する。
第1’プロセスの次のルーチンである第2’プロセスでは、まず、そのステップS107で、第1’プロセス後の対象について、炭素原子(C)や酸素原子(O)に付く水素原子(H)の有無が、判定される。そして、水素原子有の場合は、ステップS108,S109へと進み、OHラジカルが水素原子を奪って酸化し、ステップS110で、自身は水に回帰して系外に遊離する。なおステップS111により、炭素原子や酸素原子に付く水素原子が無となるまで、上述した所が繰返される。
図7の(1)図は、第3’プロセスに関する。
上述した第2’プロセスの次のルーチンである第3’プロセスでは、まず、そのステップS112で、第2’プロセス後の対象について、第2’プロセスにて生成された炭素原子(C)の不対電子(−)の有無や、酸素原子(O)の不対電子の有無が、判定される。そして不対電子有の場合は、ステップS113へと進んで、不対電子に対し引続くOHラジカルが付加して、水酸基が再生される。そこでフローは、ステップS114を経て、前述した図6の(1)図の第1’プロセスにリターンして、第1’プロセスを繰返すことになる。
【0066】
図7の(2)図は、第4’プロセスに関する。
上述した第1’,第2’,第3’プロセスで、対象について、水酸基,炭素原子,酸素原子等の水素原子が、奪い尽くされ酸化し尽くされた場合、通常は、対象が所期の通り水,炭酸ガス,酸素等に分解され、無機化されてしまったことになる。
これに対し、第1’,第2’,第3’プロセスを経ても、対象が、未だすべて無機化され尽くされていない場合は、次のルーチンである第4’プロセスへと進む。第4’プロセスでは、まずステップS116で、引続くOHラジカルが、水分子から水素原子を奪って酸化する。もって、自身は水に回帰して系外に遊離すると共に、酸素分子を発生させつつ、発生期の水素(H+e)を生成する。
そして、生成されたステップS117の発生期の水素が、ステップS115の水素原子が奪い尽くされた対象を、ステップS118で還元,水素化する。そこでフローは、ステップS119を経て、前述した図6の(2)図の第2’プロセスへとリターンして、第2’プロセスを繰返すことになる。
基本部分や残基の酸化分解,無機化については、以上のとおり。
【実施例1】
【0067】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1では、窒素系有機化合物の1例である蛋白質(アミノ酸NH−CH(−R)−COOHがペプチド結合したポリマー)について、その酸化分解について検証する。
まず、この蛋白質型有機化合物の場合、処理対象1となる蛋白質型の窒素原子を含んだ構成成分は、酸アミド結合していないN末端の−NH(アミノ基)型の窒素原子を含んだ構成成分と、酸アミド結合(アミノ酸残基)−CO−NH−中の−NH−型の窒素原子を含んだ構成成分との、2通りとなる。
【0068】
まず、N末端近傍は、NH−CH(−R)−CO−となっている。そして、−NHの水素原子を別扱いとしつつ、CH(−R)−CO−に、前記第2’,第3’プロセスが適用される。もって、−CH(−R)−の水素原子がOHラジカルに奪われて酸化し、その不対電子にOHラジカルが付加される。その結果、−CH(−R)−は、−C(OH)(−R)−となる。
それから、この−C(OH)(−R)−に、前記第1’プロセスが適用され、水酸基の水素原子がOHラジカルに奪われて酸化し、酸素原子が炭素原子と二重結合化する。その結果、−C(OH)(−R)−は、C(=O)(−R)−となるが、炭素原子の原子価が4価のため、頭書した−NHが、−C(=O)(−R)−と分離する(なお、この−C(=O)(−R)−は、前記1’〜4’プロセスを辿って酸化分解,無機化される)。
そして−NHは、前記第3プロセスが適用され、OHラジカルが付加して水酸基が生成され、もってOH−NHとなる。
【0069】
以下、図4,図5のフローチャートに基づき説明するが、これについては、「発明の概要について」と題して詳述したので、そのポイントのみを述べるに止める。なお、図4,図5のフロー中、※を付した箇所については、スタートへのリターンを意味する。
ステップS1で、処理対象1としてOH−NHが入力される。そして、ステップS2,S3,S4,S5で前記第1プロセスが適用され、もってOH−NHは、O=N−HとH・となると共に、水が遊離する。遊離したH・は、ステップS6,S7,S8で水に帰す。
それからフローは、ステップS9,S10,S11,S12,S13,S14へと進み、前記第2,第3プロセスが適用され、O=N−HはO=N−OHとなると共に、水が遊離する。
それから、ステップS15,S16,S17,S18へと進み、前記第1プロセスが適用され、O=N−OHはO=N=Oとなると共に、水が遊離する。そして、次のステップS19,S20で前記第3プロセスが適用され、O=N=OのNに水酸基が結合される。なお窒素原子の原子価は、それまでの3価から4価、そして以下5価となる。
次のステップS21,S22,S23,S24では、前記第1プロセスが適用され、O=N=OのNに不対電子有のOが結合されて残基となると共に、水が遊離する。
それからフローは、S25,S26,S27へと進んで、前記第4プロセスが適用される。もって残基が、発生期の水素(H+e)にて還元されて、硝酸(硝酸イオン)が生成されるに至る。
このように、N末端の−NH型の窒素原子を含んだ構成成分よりなる処理対象1は、硝酸化される。
【0070】
これに対し、酸アミド結合中のNH−近傍は、−CO−NH−CH(−R)−となっている。そして、−NH−の水素原子を別扱いとしつつ、前記第2’,第3’プロセスが適用される。もって、−CH(−R)−の水素原子がOHラジカルに奪われて酸化し、その不対電子にOHラジカルが付加される。その結果、−CH(−R)−は、−C(OH)(−R)−となる。
それから、この−C(OH)(−R)−に、前記プロセス1’が適用され、水酸基の水素原子がOHラジカルに奪われて酸化し、酸素原子が炭素原子と二重結合化する。その結果、−C(OH)(−R)−は、C(=O)(−R)−となるが、炭素原子の原子価が4価のため、頭書した−NH−は、C(=O)(−R)−と分離する(なお、このC(=O)(−R)−は、前記1’〜4’プロセスを辿って酸化分解,無機化される)。
これらに対し、−CO−NH−の右端は、前記第3プロセスが適用され、OHラジカルが付加して水酸基が生成され、もって−CO−NH−OHとなる。これに対しては、前記第1プロセス(前記第1’プロセス)が適用され、水酸基の水素原子がOHラジカルに奪われて酸化し、酸素原子が窒素原子と二重結合化する。
その結果、窒素原子の共有結合の原子価は3価であるから、−CO−と、NH(=O)つまりO=N−Hとが、分離する。
そして、このO=N−Hは、前述した図4,図5のフローチャートのステップS9以下のステップを辿って、ステップS27に至り、硝酸(硝酸イオン)が生成されることになる。
【0071】
実施例1では、このようにして、−NH型の窒素原子を含んだ構成成分と、−NH−型の窒素原子を含んだ構成成分とが、それぞれ酸化分解される。
なお、−NH型の窒素原子を含んだ構成成分への、前記第1,第2,第3,第4プロセスの適用については、次の化13の(1)〜(6)の反応式として順次把握される。そして、化13の(1)〜(6)の6式を合成して総括すると、前記表1中の項目No.1の反応式となる。
【0072】
【化11】

【実施例2】
【0073】
難分解性の窒素系有機化合物の1例であるニトロベンゼン(CNO)について、前記各プロセスを適宜適用して、酸化分解,無機化した所、次の化14の反応式が得られた。
【0074】
【化12】

【実施例3】
【0075】
難分解性の窒素系有機化合物の1例であるアニリン(CNH)について、前記各プロセスを適宜適用して、酸化分解,無機化した所、次の化15の反応式が得られた。
【0076】
【化13】

【符号の説明】
【0077】
1 処理対象(窒素原子を含んだ構成成分)
2 処理装置
3 原水槽
4 フェントン処理槽
5 後処理槽
6 過酸化水素槽
7 鉄イオン槽
8 被処理水
9 過酸化水素添加部
10 鉄イオン添加部
11 制御装置
12 濃度検出手段
13 処理対象入力手段
14 マイクロコンピュータ
15 駆動回路
16 CPU
17 RAM
18 ROM
19 記憶装置
20 インプット・ボード
21 アウトプット・ボード
22 第1プロセス処理手段
23 第2プロセス処理手段
24 第3ロセス処理手段
25 第4プロセス処理手段
26 総モル数演算手段(A)
27 添加量演算手段(A)
28 データ検索処理手段
29 総モル数演算手段(B)
30 添加量演算手段(B)
31 酸化分解データテーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
難分解性の窒素系有機化合物について、窒素原子(N)を含んだ構成成分を処理対象とし、水溶液中の該処理対象を、OHラジカル(・OH)にて酸化分解する方法であって、
該処理対象について、水酸基(-OH)の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが該水酸基の水素原子(H)を奪って酸化し、自身は水に回帰して系外に遊離すると共に、該水酸基の酸素原子(O)を二重結合化する第1プロセスと、
該処理対象について、水素原子の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが該水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰して系外に遊離する第2プロセスと、
該処理対象について、原子の不対電子にOHラジカルが付加して、水酸基が生成される第3プロセスと、を有してなると共に、
最終的には第4プロセスにおいて、まず、OHラジカルが水分子から水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰して系外に遊離すると共に、酸素分子を発生させつつ発生期の水素(H+e-)を生成し、
該発生期の水素が、該処理対象の残基を還元して、硝酸(HNO)が生成されること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項2】
請求項1において、該窒素系有機化合物は蛋白質型有機化合物よりなり、
該処理対象の蛋白質型の窒素原子を含んだ構成成分、つまり、N末端の-NH(アミノ基)型の窒素原子を含んだ構成成分と、酸アミド結合の-NH-型の窒素原子を含んだ構成成分とが、それぞれ前記各プロセスを辿ること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項3】
請求項2において、該蛋白質型有機化合物は、細菌の細胞の主要部やウィルスの細胞の主要部を形成していること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項4】
請求項1において、該処理対象は、R-NH型の窒素原子、(R)NH型の窒素原子、RR’NH型の窒素原子、R=NH型の窒素原子、(R)N-型の窒素原子、RR’N-型の窒素原子、R=N-型の窒素原子、R-N=CO型の窒素原子、R-NO型の窒素原子、又はR-N=N-型の窒素原子を含んだ構成成分よりなり、それぞれが前記各プロセスを辿ること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項5】
請求項1,2,3,又は4において、該処理対象の酸化分解に要するOHラジカルの必要総モル数が、前記各プロセスでの反応式に基づき算出されること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項6】
請求項5において、OHラジカルはフェントン法にて生成され、過酸化水素および鉄イオンの添加量が、OHラジカルの該必要総モル数と該フェントン法に基づき算出されること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項7】
請求項6において、まず検出手段により、該窒素系有機化合物の濃度が検出されると共に、入力手段により、該窒素系有機化合物中の該処理対象の構成成分とそのモル数が入力され、
もって、検出された濃度、および入力された構成成分とそのモル数に基づき、制御装置により、該処理対象の酸化分解に要するOHラジカルの該必要総モル数、そして過酸化水素および鉄イオンの該添加量が算出され、
そして、該制御装置からの指示に基づき、過酸化水素添加部および鉄イオン添加部により、該処理対象の水溶液に対し、該添加量の過酸化水素および鉄イオンが添加されること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項8】
請求項7において、該制御装置はコンピュ-タにて構成されており、そのプログラムにより、
該処理対象の構成成分について、前記第1,第2,第3,第4の各プロセス毎に必要なOHラジカルのモル数を、算出するプロセス処理と、
該プロセス処理に基づく、該処理対象の構成成分の酸化分解に要するOHラジカルの該必要総モル数の演算処理と、該演算処理に基づく、過酸化水素および鉄イオンの該添加量の演算処理とが、行われること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。
【請求項9】
請求項7において、該制御装置はコンピュ-タにて構成されており、そのプログラムにより、
予め記憶された各構成成分毎のデ-タを検索して、該処理対象の構成成分の酸化分解に必要なOHラジカルのモル数を抽出するデ-タ検索処理と、
該デ-タ検索処理に基づく、該処理対象の構成成分の酸化分解に要するOHラジカルの該必要総モル数の演算処理と、該演算処理に基づく、過酸化水素および鉄イオンの該添加量の演算処理とが、行われること、を特徴とする窒素系有機化合物の酸化分解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206626(P2011−206626A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74184(P2010−74184)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(500561931)三井造船プラントエンジニアリング株式会社 (41)
【出願人】(507141066)株式会社ニクス (10)
【Fターム(参考)】