説明

窒素酸化物の分解のための光触媒混合物

本発明は、窒素酸化物を分解するための光触媒混合物に関する。本発明の第1の側面は、2種の化合物:TiO(その結晶質相のうちのいずれかで、またはアモルファス状態で)と、1種または2種以上の長石、例えばカーネギアイトまたは霞石などとの相乗的組み合わせによる窒素酸化物を分解するための光触媒混合物から成る。本発明の第2の側面は、前記組み合わせを得、それにより窒素酸化物を分解することができる生成物を生じさせることから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明の第1の側面は、2種の化合物:TiO(その結晶質相のいずれかで、またはアモルファス状態で)と、1種または各種の長石、例えばカーネギアイトまたは霞石などとの相乗的組み合わせにより窒素酸化物を分解するよう設計された光触媒混合物に関する。
本発明の第2の側面は、窒素酸化物を分解する能力を有する生成物を生じる前記組み合わせを得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
長石は、アルミニウム、シリカおよび酸素を含むアルミノケイ酸塩である。それらの構造は、シリカ主成分からなり、その一部がアルミニウムにより同形的に置換されている。それらは釣り合いがとれなくなるために、金属カチオン(K,Na,Ca2+)により電荷が補償される。これらの固体物質はそれらの表面に化合物を吸収することができる。
【0003】
そして、関連する物質に、テクトケイ酸塩の一グループである準長石として知られているものがある。準長石は、長石に類似するが、異なる構造を有し、シリカ含有量がかなり低い。Si/Al比は、準長石では実質的に1:1であるが、長石ではSi/Al比はほぼ1:3である。
【0004】
さらに、準長石は、孔を有し、長石よりもネットワーク密度が低い結晶構造を有する。これらの孔は相互に連絡しておらず、そのために、それらの内部においてイオンまたは分子が拡散できない。
【0005】
窒素酸化物(NO)によって引き起こされる大気汚染の問題を軽減するために長石および準長石物質の両方を適用して汚染大気中の窒素(NO)の濃度を低下させることは、長石および準長石物質がいくらかの吸着能を有するものの、それらが飽和した場合に、NOの百分率を低下させるそれらの能力がなくなるという問題がある。NOは、原子数比N/Oとは関係なく、任意の窒素酸化物、および、任意の割合のそれらの混合物であると見なされている。
【0006】
長石および準長石物質が吸収することができるNOの最大量は、N2 、O2 およびH2Oに加えて、空気中の他の物質の存在に依存し、これらの物質は、固体中での窒素酸化物の吸着と競合することがある。
【0007】
そのため、吸着されたNOxの最大量は、NOxが乾燥空気流中に存在する場合には、NOxが湿気を含んだ空気流中に存在する場合よりも多い。これは、後者の場合には、NOxの吸着は湿気を含んだ空気中の水の吸着と(好ましくないことに)競合するためである。
【0008】
従って、空気からNOxを除去する能力は、NOxの分解現象に帰因するのでなく、長石および準長石物質へのガスの吸収に帰因し、さらに、これは飽和度に達する。実際に、長石または長石類の混合物の表面は、NOxの最大吸収能を達成するようにフリーであるべきであり、NOxに対して吸着剤として使用する場合には、使用前に、例えば、N2流中で350〜450℃で真空に熱処理することによって、長石を活性化することが必要である。
【0009】
さらに、空気中のNOxの量を減少させるために純粋なTiOを使用することも知られているが、ただし、この物質に紫外線を照射することを条件とする。
【0010】
TiOの場合に、空気中のNOx濃度の減少は、好ましくは、吸着現象によるというよりもむしろ光触媒的プロセスの作用による(我々は、光の不在下での気体流中のNOx濃度の減少がごくわずかであると判断した)。
【0011】
この場合における空気からのNOxの除去は、窒素酸化物の化学変換を通して確実に実施できるが、実験室条件下で行った実験から、酸化チタンの活性が最終的に消失するまで酸化チタンの活性の低下が起こることから、TiOの活性が限られていることが判った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、各成分の活性を示して相乗効果を生じ、この相乗効果が活性を消失させるというよりも持続させることを決めるというように、TiOと、例えばカーネギアイトおよび霞石などの準長石物質とを相乗的に組み合わせた光触媒混合物からなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面は、窒素酸化物を分解するための光触媒混合物からなる。この光触媒混合物は、TiOと準長石物質との間で相乗的関係が確立されるようにTiOとカーネギアイトとの組み合わせ、またはTiOと準長石物質の混合物(様々な割合で、カーネギアイトと霞石、またはカーネギアイトおよび霞石の両方とムライト)を含む。準長石物質は、長石に類似するテクトケイ酸塩の1つのグループであると見なされているが、準長石物質は、異なる構造とかなり低いシリカ含有量を有する。準長石では、Si/Al比は実質的に3:1であるが、長石では、Si/Al比はほぼ1:1である。さらに、準長石は孔を有し、長石よりもネットワーク密度が低い結晶構造を有する。これらの孔は相互に連絡しておらず、それらの内部にイオンまたは分子が拡散することができない。
【0014】
長石は、一般式XAl(1〜2)Si(3〜2)(この式中のXはNaおよび/またはKおよび/またはCaであることができる)。一般的に、長石におけるSi/Al比は1:1である。SiおよびAl原子は、四面体の中心を占めており、四面体は頂点で連結して、負電荷を帯びた三次元的網目構造を形成している。この式におけるカチオンXは、この固体を電気的に中性にする。
【0015】
上記混合物中のTiOは、NOが存在する気相環境との接触で、NOと反応して他の化合物を生じ、その結果として、当該周囲環境からNOが除去されるというように、紫外線の存在下でその光触媒活性を保持する。
【0016】
純粋な状態にあるTiOでは終わりがくるこの挙動は、TiOと準長石の組み合わせに基づく混合物の場合にかなり長期間に延びる。最初に、周囲環境から、TiOが純粋なものである場合よりもわずかに強い方法でNOが除去され、NOが減少して、定常的および漸近的に定常状態に達し、この定常状態は、準長石が存在しない場合よりもかなり長く保たれる。
【0017】
発明を実施するための形態に記載するように、準長石物質とTiOを組み合わせるやり方は各種実施態様に応じて異なることがある。
【0018】
得られた光触媒混合物の性能から、そのNO分解活性に関して、高い粒子含有量を確保するために、例えばミリングまたはコンパクティングによって、両方の成分の密な結合が存在することが重要である。
準長石は、通常、TiOよりもかなり大きい粒度を有する。
【0019】
本発明の第2の側面は、準長石の粒度が小さくなってそろい、望ましい接触度になるように、両成分を微粉砕することによって、光触媒混合物を得る方法を確立する。
【0020】
光触媒混合物を得るための第3の方法は湿った準長石を用いる。TiO粉末よりも大きい粒度を有する湿った準長石は、その表面上に、前記TiO、好ましくは微粉砕を通じて適用された前記TiOを保持することができる。この方法において、TiOは準長石の大きなサイズの粒子上に付着する。その後の乾燥プロセスによって、これらの2つの成分の確定的な結合が確保される。
【0021】
準長石および二酸化チタンを含む混合物を調製する別の形態は、固体準長石前駆体物質に基づく。これらの前駆体は、任意の物理的または化学的処理を通じて、準長石固体への変換を受ける。準長石への変換を実施するための1つの方法は、前駆体を500℃を超える温度で30分間を超える時間焼成することによるものである。
【0022】
酸化チタンと組み合わせることは、前駆体の準長石への変換前または変換後に実施することができる。
【0023】
上記方法に従うと、ゼオライトAとアナターゼ相の二酸化チタンとを組み合わせ、この混合物を800℃で90分間熱処理し、特定の割合の霞石を含むカーネギアイト準長石においてゼオライトの変換が完了した場合に、本発明の光触媒混合物を得ることが可能である。
【0024】
二酸化チタンはルチルに変換され、その組成にチタンおよびシリカを含む固形物は生じない。
【0025】
TiOで被覆された準長石は、TiOとのその相互作用能を保持し、この相互作用能の保持は、TiOで被覆された準長石が、これら2つの成分の相乗効果を示し続けることが実証されたというものであった。
【0026】
請求項2〜8に記載の混合物についての実施態様は、引用により本明細書に含まれていると見なす。
【0027】
請求項9および10に記載の構造要素は、引用より本明細書に含まれていると見なす。
【0028】
請求項11に記載の光触媒混合物の使用は、引用により本明細書に含まれていると見なす。
【0029】
請求項12〜17に記載の光触媒混合物を得る方法は、引用により本明細書に含まれていると見なす。
本発明の説明を、好ましい実施態様を示す一組の図面により補うが、決して、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、準長石の粒子とTiO粒子を含む本発明の一実施態様に従う光触媒混合物の概略図を示す。これらの粒子は圧密化されており、同様の粒度を有する。
【図2】図2は、TiO粒子で覆われたカーネギアイトの核を含む本発明の一実施態様に従う光触媒混合物から回収された粒子の概略図を示す。
【図3】図3は、NOを除去するためにカーネギアイトをのみを使用した場合の、乾燥空気流中および湿潤空気流中の両方におけるNO濃度の変化を示すグラフである。不連続な曲線は、湿潤空気における変化を表す。連続な曲線は、乾燥空気流における変化を表す。
【図4】図4は、飽和湿潤空気流中に存在するNOが、TiO床を含み、ガラス繊維を通じて紫外線が照射された管状反応器内を通過したときの、飽和湿潤空気流中に存在するNOの濃度の一時的なプロファイルと、飽和湿潤空気流中に存在するNOが、TiOとカーネギアイトとの以下の割合75/25、50/50、25/75および10/90の混合物を含み、ガラス繊維を通じて紫外線が照射された管状反応器内を通過したときの、飽和湿潤空気流中に存在するNOの濃度の一時的なプロファイル示す。
【図5】図5は、異なる質量の光触媒混合物の場合のISO 22197−1:2007(E)標準に従う実験で、時間を基準にしたNOの濃度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、電磁線、好ましくは紫外線スペクトル内の電磁線に曝された場合に窒素酸化物を分解するように設計された光触媒混合物からなる。
【0032】
この光触媒混合物は、TiOと準長石を含み、これら2つの成分の間で相乗的関係が確立されたことが確認された。この相乗的関係は、TiO活性が永久的であるようにしたことからなる。
【0033】
光触媒混合物に、NOを含む空気流と接触させ、紫外線を照射すると、TiOがその純粋な状態で使用された場合よりも実質的に高い光触媒活性が観測された。
【0034】
一定時間の間で光触媒混合物の活性の増加に関連するこの第1の相乗効果に続いて、第2の相乗効果が観測される。純粋な状態のTiOが活性である時間と同程度であるこの最初の時間が経過したら、光触媒混合物がその活性を失わないが漸近的に一定値に安定化し、この一定値が、純粋なTiOを含む光触媒の場合よりもかなり長い期間保たれる。
【0035】
両方の相乗効果が関連する。なぜなら、最初の相乗効果がNOの分解能を高め、第2の相乗効果が、光触媒混合物が連続的に、かつ、純粋な二酸化チタンを使用した場合よりもかなり長い期間にわたって定常的に作用することを可能にするからである。
【0036】
光触媒混合物の成分を別々に使用した場合と比較して光触媒混合物の相乗効果を明らかにするために、図3に、一定量の霞石とのカーネギアイトの使用により窒素酸化物を除去する能力を評価することからなる実験からのデータに基づいて得られたグラフを示す。
【0037】
準長石のみの場合に、表面吸着の効果に基づいて空気流から窒素酸化物を除去する能力がどれだけあるかは、既に記載した。
【0038】
このグラフは、注入した流れの中のNOの濃度の値である500をかなり下回る第1の連続する曲線を示している。横座標の変数は時間である。時間の経過につれて、準長石物質が飽和して、その吸着能が減少するために、関数が増加する。
【0039】
この実験において、300分間の経過後、準長石物質がほとんど飽和し、空気流からさらにNOを除去しないことが観測された。
【0040】
同じグラフに、不連続な別のグラフが示されている。この曲線は、空気が湿っている場合のNOの濃度を示している。この場合に、湿潤空気中の水分子は、準長石物質の表面を占めるために、NO分子と競合する。準長石物質の飽和はかなり早期に生じ、それ故、NOの濃度が供給流の値にかなり早く達する。
【0041】
両方の場合において、NOの分解はなく、空気からのNOの永久的な除去能もない。
【0042】
図4は、TiOの挙動と、本発明を実施する様々な形態に従う光触媒混合物の挙動の両方を観察することができるグラフを示す。
【0043】
このグラフは、光触媒条件下で異なる物質を含む表面上を通過する空気の流れの中の、時間を基準にしたNOの濃度の値を示す。
【0044】
このグラフは、次の文字:a,b,c,dおよびeで識別した曲線を示す。これらの曲線の各々は、以下の表中の物質に対応する:
【0045】
【表1】

【0046】
明らかに、曲線「a」は、TiOのみを含む場合の光触媒混合物に対応する。
この曲線「a」は、本発明における複数の成分の組み合わせの相乗効果を比較するための対照としての役割を果たすものである。
曲線「a」は、約45分間の間、NOに対する分解効果を有する。この時間後、TiOは飽和し、もはや作用することができない。TiOが光触媒活性を再び持つには、TiOを再生する必要がある。
【0047】
TiOを準長石物質と組み合わせた場合に、当該物質をさらした流れからNOを除去する能力の増加が観測された。
【0048】
この増加は、分解によるTiOの除去能と比べた同じ実験で無視できる程度であったことから、この増加は準長石物質の吸着能によるものでない。
【0049】
相乗効果は、広い範囲の値、例えば準長石物質に関してTiOの質量の10〜90%の間で確立されることが観測された。にもかかわらず、40%〜60%の間の値で最良の結果が得られることが確認された。
【0050】
グラフに示されている実験結果は、紫外線源で照射したカーネギアイトとアナターゼ相のTiOとの混合物を使用して得た。この光源は、天然または人工のものであることができる。混合物に照射している間に、NOを含む空気流を混合物に通した。
結果は、光分解現象のために出口流れのNOの量が減少していたというものであった。
【0051】
流れの中のNOの量の減少は、照射なしに実験を繰り返すことで、光分解だけによるものであると決定された。
吸着の効果は、紫外線がある場合の減少効果と比べて無視できる程度であると決定された。
【0052】
グラフから判るように、分解したNOの量は、混合物中に含まれる2種の固体(TiOおよびカーネギアイト)の割合に依存する。しかしながら、検討した全ての割合(TiOの質量で100%よりも低く、10%よりも高い値)において、純粋なTiOを使用した場合よりも良好な結果が、TiO/カーネギアイト混合物を使用して常に得られた。従って、カーネギアイトとTiOの間に相乗効果が存在すると言える。
【0053】
75WのXeランプを使用し、望ましい割合でTiOとカーネギアイトの混合物を含む光触媒1gを含む15cmの表面を照射することにより紫外線を適用した。
試験で得られた条件は5W・cm−2であり、この値は、およそ、地球の表面上での太陽の最大出力よりも高い強さである。
【0054】
代わりに、ISO 22197−1:2007(E)標準に従って、一連の3つの8W「ブラックライトブルーランプ」を使用した。これらのランプは、照射されるべき粉末が付着した表面に対して平行に配置し、太陽の紫外線強度の約64倍に等しかった。
【0055】
上記標準ISO 22197−1:2007(E)に規定されている条件で、光触媒混合物の紫外線照射を行い、光触媒混合物の質量を基準にして、図5に示されているNOの濃度の減少を観測した。
【0056】
2つの相乗効果はすでに記載したとおりであり、第1の相乗効果は、NOの光分解活性が最初の45分間の間高いというものであり(一実施態様のこの例)、第2の相乗効果は、活性が経時的に保たれるというものである。
【0057】
この最後の段階の間、混合物に紫外線を照射し続けるという条件で、混合物は連続的にNOを分解可能であり続ける。
実施した安定性試験から、この定常運転の段階が少なくとも6時間保たれることが判った。
【0058】
その存在を知ったため、この予想外の相乗効果の起源を調査した。この調査は、光触媒を20mlの水のアリコートで洗浄し、イオンクロマトグラフィーを使用して洗浄水を分析することからなっていた。
【0059】
この分析法は、98%〜2%の割合で硝酸アニオンおよび亜硝酸アニオンの存在をはっきり定める。
当該技術分野において、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンは、酸化チタンの表面に付着した場合に、光触媒活性の低下を引き起こすことが知られている。
【0060】
従って、TiOと準長石物質の間の相乗効果から、窒素酸化物の光分解から生じたアニオンが、通過して準長石物質の表面に付着し、TiOがその光触媒活性を変えずに保持し、一方、準長石物質は硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを捕捉することで作用する。
【0061】
その結果、特許請求の範囲に記載の光触媒混合物で観測された効果は、反応性化学種が二酸化チタンの表面上で光の作用により生成するが、反応性化学種が気相中で窒素酸化物と反応する場合に、他の場合ではTiO毒として作用する反応生成物(硝酸塩および亜硝酸塩)が好ましくは準長石物質に付着するという予想外の機構から生じる。準長石物質におけるこの好ましい吸収の起源は、TiO粒子と準長石物質の近接度と、準長石物質の大きな比表面積に由来するであろう。この機構は、入手可能な科学文献で知られておらず、光触媒混合物の両方の成分間の相乗効果の予想外の起源を説明するための基礎としての役割を果たすであろう。
【0062】
この組み合わせの再生が水で単に洗浄することにより起こることが実験的に証明された。この洗浄では、光触媒的酸化により生じたイオンは水中に溶解し、形成されたイオンが洗浄により感染に除去された場合に、その系の最初の光触媒活性を回復することが可能となる。
【0063】
図1は、請求項2に記載の発明の一実施態様の概略図を示し、この図において、TiO(1)と準長石物質(2)の圧密化混合物が表されている。
一実施態様のこの例における混合物は、TiO(1)粉末と準長石物質粉末(2)から誘導される。
一実施態様のこの例で使用される準長石物質粉末(2)はもともとかなり高い粒度を有するため、2種の成分について同じ粒度を得るために、微粉砕段階を実施する。微粉砕工程の一形態は微小球ミルを使用することである。
【0064】
混合物の2種の成分(1,2)間でのこの圧密化の程度を用いると、粒子間で非常に高い程度の接触があり、両成分(1,2)間での相乗効果を促進する。
図2は、請求項3に記載の発明の実施態様の一形態に関係する粒子の概略図を示す。この粒子は、準長石物質(2)の粒子により形成された核と、その上に存在するTiO(1)のコーティングを示している。
【0065】
この構造を得る一形態は、湿った準長石物質(2)およびTiO粉末(1)から、準長石物質(2)の粒度がTiO(1)の粒度よりも大きい粉末を得、準長石(2)上にTiO粉末(1)を、準長石物質(2)が覆われるまで付与することからなる。
【0066】
本発明の実施対の幾つかの形態のうちのいずれかに従って得られた混合物を使用し、窒素酸化物を含む気相環境に曝される表面上にそれを適用する。光触媒混合物が活性であるようにするため、光触媒混合物が適用される表面を、人工光または太陽光のいずれかの紫外線に暴露する。
【0067】
さらに、この光触媒混合物は、自然太陽光または人工光に曝されるペイント、セラミックスその他の構造材料の形態をとることができる。
【0068】
光触媒混合物の表面への適用を促進するために、本発明の範囲内で、さらに定着基剤を含む光触媒混合物が考えられる。この定着基剤は、ペイント、ワニス、すなわち、光触媒混合物が組み込まれるマトリックスであることができる。
【0069】
このマトリックスは、輻射線が表面に作用したときにその表面上での光触媒混合物の活性を妨げないようなものであるべきである。
【0070】
かなりの実際的関心のある実施態様の一形態は、ブロックまたはプレート型の基材支持体を含む構造要素であって、その組成物中に、または、その表面のうちの少なくとも1つの表面上に、実施態様の形態のうちのいずれかに従う光触媒混合物の層を含むか光触媒混合物が組み込まれているというものである。
【0071】
壁、床または天井の部分を形成するためにこの構造要素を使用すると、周囲環境中、好ましくは空気中のNOガスを分解することができる表面(光触媒混合物が配合物の構成要素でない場合には、光触媒混合物の層を有する表面を露出する)が生じる。
【0072】
このタイプの構造要素の製造には重大な欠点があり、本発明はこの欠点についても対処した。セラミックの製造は、光触媒混合物が熱処理にかけられることを伴う。セラミックが本発明の主題である混合物を含む場合に、セラミックは、その性能に影響を及ぼす熱処理による変化を受けることもある。
【0073】
従って、構造要素の製造プロセスが焼成段階を含む場合に、構造要素は、酸化チタンと準長石固体の前駆体との混合物に基づくことがある。
【0074】
例えば、構造要素は、二酸化チタンと4Aゼオライトの混合物に基づいたものであることができる。焼成プロセスにおいて、この混合物は、本発明の好ましい実施態様のうちの1つを構成する光触媒的組み合わせを生じさせるための焼成の時間および温度に依存して自発的に変化する。
【0075】
従って、アナターゼおよび4Aゼオライトから開始し、セラミック添加剤として使用する場合、800℃に90分間加熱することによって、初期混合物は、ルチルと、霞石を含有するカーネギアイトとに変換される。これは窒素酸化物を分解させるための光触媒的に活性な組成物である。
【0076】
より高い温度に加熱することで、霞石の百分率が増加してカーネギアイトの百分率が減少し、準長石のこの混合物も、二酸化チタンと併存する場合に光触媒的に活性である。
【0077】
温度が十分に高く、焼成時間が十分である場合に最終的に得られる準長石はムライトである。
焼成温度および時間の漸増につれて、光触媒混合物の光触媒活性が漸減することが観測された。
【0078】
本発明で提案した機構に従うと、光触媒活性のこの漸減は、準長石物質の表面積および多孔度の減少と、より低い光触媒活性を有する相への二酸化チタンの変換との組み合わせに由来すると考えられる。これは、上記混合物がセラミックに組み込まれ、これが熱処理された場合に、セラミックと接触する窒素酸化物を分解するための光触媒活性を示すという結果がもたらされ、光触媒活性が焼成の温度および時間の関数であることを意味する。
【0079】
実験によって、カーネギアイトおよび霞石が、TiOと相乗的特性を有する準長石物質であることが見出された。これらの準長石相は、1100℃未満の温度で安定であり、カーネギアイトは霞石に漸進的に変換され、霞石は次にムライトになる。準長石物質を含む組み合わせの光触媒活性に対する温度の影響を考慮すると、ムライトは最低の有効性を示す相である。
【0080】
800℃未満の温度では、カーネギアイトと霞石の両方が、安定のまま存在し、そのため、焼成が終了したときに相の逆戻りがないことが判った。
【0081】
好ましい一実施態様の一例として、焼成後に耐熱性の光触媒混合物を適用するというような方法で従来の手段によりセラミック要素を製造することが提案される(これは1100℃を超える非常に高い温度で実施することができる)。光触媒混合物は、エナメルによって適用してもよく、エナメルは、より低い温度、例えば600℃〜800℃の間の温度で、一回以上焼成される。その結果、周囲気体の窒素酸化物の分解のための活性表面を有する焼成セラミック要素がもたらされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiOと準長石物質との光触媒的に活性な組み合わせを含むことを特徴とする、窒素酸化物を分解するための光触媒混合物。
【請求項2】
前記組み合わせが、TiO粉末と、カーネギアイト、霞石または両者の任意の割合の組み合わせから構成される準長石物質との混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記組み合わせが、TiOにより被覆された準長石物質の粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
TiOがアナターゼ、ルチル、アモルファス相、またはこれらの任意の割合の混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
準長石物質がカーネギアイト、霞石、ムライト、またはこれらの任意の割合の組み合わせであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
TiO/準長石物質の質量割合が、準長石物質の質量に対してTiOの質量が10%〜90質量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
TiO/準長石物質の質量割合が、準長石物質の質量に対してTiOの質量が40%〜60質量%であることを特徴とする、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
前記混合物が、表面への前記混合物の適用を可能にするための定着基剤を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
ブロックまたはプレート型の基材を含み、その組成の一部を請求項1〜7のいずれか一項に記載の光触媒混合物が成していることを特徴とする構造要素。
【請求項10】
ブロックまたはプレート型の基材を含み、当該基材において、その表面のうちの少なくとも1つに請求項1〜7のいずれか一項に記載の光触媒混合物の層を含むか請求項1〜7のいずれか一項に記載の光触媒混合物が組み込まれていることを特徴とする構造要素。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の混合物が、窒素酸化物を含む気相環境に曝される表面に適用されること、および、前記混合物が適用された表面が太陽光または人工光に由来する紫外線に曝されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の混合物の使用。
【請求項12】
請求項1および2のいずれか一項に記載の混合物を得るための方法であって、TiO粉末および準長石物質の粉末を混合し、これら2つの成分について同じ粒度が得られるまでこれら2つの成分を微粉砕することを特徴とする方法。
【請求項13】
微粉砕プロセスが微小球ミルを使用して実施されることを特徴とする、請求項12に記載の混合物を得るための方法。
【請求項14】
TiOの粉末を得るとともに、TiOの粒度よりも大きい粒度を有する準長石物質の粉末を得、準長石物質上にTiO粉末を、準長石物質が覆われるまで付与し、最後に、得られた光触媒混合物を乾燥させることを特徴とする、請求項1および3のいずれか一項に記載の混合物を得るための方法。
【請求項15】
準長石物質の寄与が、準長石物質前駆体および/または酸化チタンに基づいて生じ、物理的、化学的または物理化学的処理で相変換を生じる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ゼオライト4Aと二酸化チタンの均質混合物が、適切な質量割合でベーキングにかけられ、600〜1200℃の温度で熱処理される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
4Aゼオライトと二酸化チタンの混合物の変換の温度が好ましくは600℃〜800℃の範囲内である、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515644(P2012−515644A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546881(P2011−546881)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070014
【国際公開番号】WO2010/084226
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511170205)エフェエメセ フォレト,ソシエダ アノニマ (1)
【Fターム(参考)】