説明

窒素酸化物の捕集装置及びそれを用いる窒素酸化物の測定方法。

【課題】
一酸化窒素及び二酸化窒素を同時に捕集可能な捕集装置及びそれを用いる窒素酸化物の測定方法を提供すること。
【解決手段】
二酸化窒素を吸着可能な吸着剤を充填してなる第一及び第二の捕集管と、前記第一の捕集管及び第二の捕集管との間に配置され、酸化剤が充填された酸化管と、を備えてなる捕集装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物の捕集装置及びそれを用いた窒素酸化物の測定方法に関し、特に、屋外や室内の大気中に含まれる微量化学物質に対し好適に適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化窒素(NO)は、様々な呼吸疾患を起こす有害大気汚染物質であるため、環境基準値が設定され、行政により二酸化窒素の定期的なモニタリングが行われている。なお二酸化窒素を吸着することができる吸着剤としては、トリエタノールアミンを含浸したシリカゲル、アルカリろ紙などが知られている。
【0003】
大気中に存在する微量の化学物質を定量する場合、その捕集方法として測定環境内における拡散のみで窒素酸化物の捕集を行ういわゆるパッシブ型捕集装置がある。これは小型で外部動力を必要としないため簡便であるが短時間での計測には適していない。
【0004】
一方、捕集管を有する捕集装置に吸引ポンプ等を接続し、この吸引ポンプを動作させて大気を吸引し、捕集装置の捕集管内に大量に大気を通過させることにより短時間で微量の化学物質を効率的に捕集するいわゆるアクティブ型捕集装置がある(例えば下記特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−201587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素を含む窒素酸化物は大気中で様々な化学形態をとり循環を繰り返しているため、それらの挙動を把握するためには、一酸化窒素及び二酸化窒素双方の測定が極めて重要であるが、一酸化窒素及び二酸化窒素を同時に捕集可能な捕集装置は開発されていない。
【0007】
そこで、本発明は、一酸化窒素及び二酸化窒素を同時に捕集可能な捕集装置及びそれを用いる窒素酸化物の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は具体的に以下の手段を採用する。
まず、第一の手段として、二酸化窒素を吸着可能な吸着剤を充填してなる第一及び第二の捕集管と、この第一の捕集管及び第二の捕集管との間に配置され、酸化剤が充填された酸化管と、を備えてなる捕集装置とする。これによって、第一の捕集管によって気体中の二酸化窒素を吸着させて定量可能とするとともに、一酸化窒素を酸化管の酸化剤によって二酸化窒素とすることができ、更に一酸化窒素が酸化した二酸化窒素を吸着させることで元の一酸化窒素の量を定量可能とすることが可能となる。
【0009】
また、第二の手段として、第一の手段に加え、酸化剤は不揮発性の酸と混合され、かつ、ガラスビーズ表面にコーティングされてなることとする。ガラスビーズを担体として用いることで、酸化剤によって一酸化窒素を二酸化窒素とした場合であっても、酸化管内の物質による二酸化窒素の吸着を抑えることができ、より正確な定量を行うことができるようになる。また、不揮発性の酸を酸化剤と混合させることで、酸の存在下でより一酸化窒素を二酸化窒素に酸化しやすくするとともに、不揮発性の酸とすることでガラスビーズへのコーティングがより確固としたものとなる。なお、不揮発性の酸は、リン酸又は硫酸のうちの少なくともいずれかであることも望ましく、また、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことも望ましい。
【0010】
また第一又は第二の手段において、第一及び第二の捕集管の少なくともいずれかにおける二酸化窒素を吸着可能な吸着剤は、トリエタノールアミンを保持した担体、アルカリろ紙の少なくともいずれかを有することも望ましい。
【0011】
また第三の手段として、不揮発性の酸と酸化剤との混合物がコーティングされたガラスビーズを充填してなる管とする。これにより、一酸化窒素を含有する気体がこの管に通過した場合、一酸化窒素を二酸化窒素とすることができるだけでなく、酸化管内の物質による二酸化窒素の吸着を抑えることができ、この管外部(例えば捕集管)でより正確な定量を行うことができるようになる。また、不揮発性の酸を酸化剤と混合させることで、酸の存在下でより一酸化窒素を二酸化窒素に酸化しやすくするとともに、不揮発性の酸とすることでガラスビーズへのコーティングがより確固としたものとなる。なお、不揮発性の酸は、リン酸又は硫酸のうちの少なくともいずれかであることも望ましく、また、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことも望ましい。
【0012】
また第四の手段として、一酸化窒素と二酸化窒素とを含む気体のうち、二酸化窒素を吸着させる第一の工程、気体中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素にする第二の工程、一酸化窒素が酸化した二酸化窒素を吸着させる第三の工程、を有する窒素酸化物の捕集方法とする。これにより一酸化窒素と二酸化窒素とを含む気体に対し同時に吸着することが可能となり、これを用いて気体中の一酸化窒素、二酸化窒素の定量を行うことができるようになる。
【0013】
また第五の手段として、第四の手段に加え、第二の工程は、不揮発性の酸と酸化剤との混合物がコーティングされたガラスビーズを用いて行うことも望ましく、この場合において不揮発性の酸は、リン酸若しくは硫酸の少なくともいずれかであることも望ましく、また、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことも望ましい。
【0014】
また第六の手段として、一酸化窒素と二酸化窒素とを含む気体のうち、前記二酸化窒素を吸着させる第一の工程、気体中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素にする第二の工程、一酸化窒素が酸化した二酸化窒素を吸着させる第三の工程、第一の工程において吸着した二酸化窒素を定量する第四の工程、第三の工程において吸着した二酸化窒素を定量する第五の工程、を有する窒素酸化物の測定方法とする。
【0015】
またこの手段において、第二の工程は、不揮発性の酸と酸化剤との混合物がコーティングされたガラスビーズを用いて行うことも望ましく、また、不揮発性の酸は、リン酸若しくは硫酸の少なくともいずれかであること、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことも望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上により、一酸化窒素及び二酸化窒素を同時に捕集可能な捕集装置及びそれを用いる窒素酸化物の測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る捕集装置の概略を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る捕集装置1は、第一の捕集管2と、第二の捕集管3と、第一の捕集管2と第二の捕集管3の間に配置され、第一及び第二の捕集管を接続する酸化管4と、を有して構成されている。第一の捕集管2、第二の捕集管3、酸化管4それぞれは開口部を有しており、第一の捕集管2と酸化管4は一方の開口部が組み合わされて接続されており、酸化管4と第二の捕集管3も一方の開口部が組み合わされて接続されている。
【0019】
本実施形態の第二の捕集管3の開口部のうち酸化管4と接続されていない側の開口部31には、流量を一定に調整するマスフローコントローラー(図示省略)を介して吸引ポンプ(図示省略)が接続されており、第一の捕集管1の酸化管4とは接続されていない側の開口部21から捕集装置1に大気を取り入れることができる。いわゆるアクティブ型の捕集装置となっている。この大気には一酸化窒素及び二酸化窒素が含まれている。
【0020】
第一の捕集管2と第二の捕集管3は、ほぼ同じ構成を採用することができ、それぞれは図1に示すとおり、筒状の容器22(32)と、この容器22(32)に充填される吸着剤23(33)とを有しており、吸着剤23は一対の多孔質フィルター24(34)により挟持されている。
【0021】
筒状の容器22(32)は筒状であり、開口部を二つ有して構成されている。容器2の材質としては、吸着剤23(33)を保持し、一方の開口部から取り込まれる大気を漏れなく他の開口部へ輸送することが可能な限りにおいて特段限定されず、例えばプラスチック、ガラス、金属など様々な材質を用いることができる。吸着剤を目視できることや取扱いの容易性などの観点からプラスチックで構成されていることが好適である。
【0022】
容器22(32)に充填される吸着剤23(33)は、二酸化窒素を吸着することができる物質であって、効率的に吸着が可能であれば特段に限定はされない。効率や入手の容易性の観点からは、例えばトリエタノールアミン(以下「TEA」ともいう)を含浸させたシリカゲル(担体)が好適である。なお吸着剤23の充填される量としては予想される二酸化窒素の量や吸引する大気の量等に応じて適宜調整可能ではあるが、概ね100mg〜1gの範囲が好適である。また第一の捕集管2は、大気中の二酸化窒素を漏れなく吸着し、一酸化窒素はそのまま透過させる状態となっていることが望ましい。なお、二酸化窒素を吸収できる物質としては他にアルカリろ紙を採用することもできる。
【0023】
一対の多孔質フィルター24(34)は、上記のとおり吸着剤を充填させて容器22(32)内に流れる気体が十分に吸着剤と接触することができるよう均一に吸着剤を保持、充填させるための物質であって、更に、気体を十分に透過させることができる限りにおいて特段は無いが、例えばポリエチレンなどが好適である。
【0024】
酸化管4は、両端に開口部をもつ筒状の容器41と、この容器41に充填される酸化剤42と、この酸化剤42を挟持する一対の多孔質フィルター43とを有して構成されており、両端の開口部は第一及び第二の捕集管に接続されている。なお容器41、多孔質フィルター43の構成は上記の第一及び第二の捕集管と同様な構成を採用することができる。
【0025】
酸化剤42は、一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させる物質であって、酸化剤としては過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウム等の固体を用いることができる。但し、大気中の窒素化合物測定の精度の観点から、大気中の一酸化窒素を漏れなく二酸化窒素に変えるという効率の観点から、酸化剤の周囲には酸の存在が極めて重要である。酸は酸化剤の周囲において安定的に存在する必要から不揮発性の酸を用いることが有用である。不揮発性の酸としては、例えばリン酸や硫酸をあげることができるが、取扱いの容易性の観点からはリン酸がより好適である。
【0026】
ところで、酸化剤の周囲に不揮発性の酸を配置することは一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させる点において有用であるが、不揮発性の酸と酸化剤の混合物のみを充填させると、その酸化剤の大きさ(酸化剤は粉末であることが多い)との関係から、気体の十分な通気性を得ることができなくなってしまう場合がある。従って、本実施形態では更に、この酸化物と不揮発性の酸との混合物を作成し、それをガラスビーズ(担体)の表面にコーティングしていることも特徴の一つとしている。このようにすることで、気体の十分な通気性と効率的な一酸化窒素の酸化を両立させることができる(例えばシリカゲルの場合は吸着してしまう)。また特に不揮発性の酸は粘性が高いため、ガラスビーズにコーティングしても安定的に保持させることができる。更に、非吸着性のガラスビーズを用いることで、一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させることが可能であるとともに、二酸化窒素が担体に吸着されてしまうことを抑えることができる。なお、二酸化窒素は沸点が21℃と低く、非常に水に溶けやすいため、酸化剤を溶液ではなく担体に保持させることで不必要な吸収を防ぐこともできている。以上により、更に正確に窒素酸化物を定量することが可能となる。なおガラスビーズの径としては、透過させる大気の量に応じて適宜調整可能であるが、概ね100μm〜1mmの範囲内にあることが望ましい。
【0027】
本実施形態に係る捕集管における吸着剤23の作成方法としては、上記構成が達成可能である限りにおいて特段限定されるものではないが、例えばTEAを用いる場合、TEAを純水に溶解し、この水溶液にシリカゲルを加えた後、ロータリーエバポレーターにより水分除去(減圧乾燥)して作成することができる。なお、TEAを溶解する溶媒としては種々のものが採用可能ではあるが、有機溶媒等を用いると乾燥の際に有機溶媒が吸着剤に残り、これが測定の際酸化管4及び捕集管に混入することで測定の定量に影響を及ぼす虞があるため、純粋な水であることが極めて好ましい。
【0028】
TEAの量としては、吸着しようとする二酸化窒素の量や大気の流量等に応じて適宜調整可能であるが、概ねシリカゲル100gに対して5ml〜30mlの範囲内において溶解させることが望ましく、より望ましくは5ml〜20mlである。
【0029】
またシリカゲルの径についても吸着させようとする二酸化窒素の量や大気の流量等に応じて適宜調整可能であるが、概ね75〜150μm程度であることが好ましい範囲である。またシリカゲルを加える量としては、上記酸化管内に充填する量に応じて適宜調整可能であり、100mg〜1gの範囲内であることが好適な範囲である。なおここでは担体としてシリカゲルを用いた例を説明しているが、担体としてはシリカゲルのほかモレキュラーシーブ,ガラスビーズ、アルミナ、マグネシア等、又はアルカリろ紙等を用いることができる。
【0030】
本実施形態に係る酸化管4に充填される酸化剤の作成方法としては、上記構成を達成できる限りにおいて特段限定されるものではないが、例えば純水に不揮発性の酸及び酸化剤を混合して混合溶液とし、それにガラスビーズを加えて撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより乾燥させることで作成することが可能である。
【0031】
加える不揮発性の酸の量については、吸着させようとする二酸化窒素の量や大気の流量等に応じて適宜調整可能であるが、酸化剤100gに対して0.5ml〜5mlの範囲内で加えることが望ましい。
【0032】
また加える酸化剤の量についても、酸化させようとする一酸化窒素の量や大気の流量等に応じて適宜調整可能であるが、加えるガラスビーズ100gに対して0.5g〜3gの範囲内にあることが望ましい。0.5mlより少ないと効率よく迅速に酸化させることが困難である一方、3gより多い場合は、保持しきれずロータリーエバポレーターに残ってしまうこととなるためである。
【0033】
また溶媒としては先ほどと同様、特段に制限は無いものであるが、不純物を除去しておく観点から純水が極めて望ましい。
【0034】
以上により、本実施形態に係る捕集管は、第一の捕集管2で二酸化窒素を吸着して捕集するとともに、酸化管4において第一の捕集管2を透過した一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させ、更に、第二の捕集管3により一酸化窒素に起因する二酸化窒素を更に吸着して捕集することができる。即ち、これにより、第一の捕集管をポンプで所定量吸引した後、この吸着剤を種々の方法で分析することで二酸化窒素の量を定量することができ、更に、第二の捕集管における吸着剤を種々の方法で分析することで一酸化窒素の量を(二酸化窒素の量に基づいて)定量することが同時にできるようになる。ここで「同時」とは一の測定操作で、という意味である。
【0035】
なお吸引ポンプにより捕集管及び酸化管に吸引させる大気の量は適宜調整可能ではあるが概ね10ml/分〜200ml/分が好適であり、より望ましくは10ml/分〜100ml/分である。
【0036】
また、各捕集管における吸着剤から吸着された二酸化窒素を定量する方法としては、各捕集管を酸化管と切り離した後、他の一方にザルツマン試薬を入れたシリンジを接続して注入し、亜硝酸イオンをジアゾ化,カップリングさせつつ溶出させ、溶出液の発色が完了した後、分光光度計により545nmの波長の光で吸光度を測定し、二酸化窒素濃度を定量する方法が挙げられる。
【0037】
さらに、本実施形態では、第二の捕集管3の右側に更に酸化管5を配置し、更にその他方に第三の捕集管6を接続するなどより多段に構成することも有用である。これによって、酸化管4によって酸化しきれなかった一酸化窒素を次の酸化管5により二酸化窒素に酸化させることができるようになる(例えば図2参照)。
【実施例】
【0038】
以上の実施形態に基づき、実際に装置を作成し、測定を行った。以下説明する。
【0039】
本実施形態では図2で示す多段の捕集装置を使用し、吸着剤として第一、第二及び第三の捕集管において同じものを使用した。吸着剤としてはTEAを含浸したシリカゲルを用いた。具体的には、純水100mlに20gのTEAを溶解し、更にこの溶液に粒径が75〜150μmの範囲内にあるシリカゲルを100g加えて攪拌し、ロータリーエバポレーターにより水分除去を行って得た。そのうちmgを捕集管に充填した。
【0040】
酸化管の酸化剤としては、過マンガン酸カリウム(固体)、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの各種の酸化剤2.5gとリン酸2.5mlを純水100mlに溶解し、100μm〜1mmの範囲内にあるガラスビーズ100gを更に加えて撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより水分除去し、そのうちガラスビーズ6mlをポリエチレンの容器に充填した。
【0041】
ここで、酸化管における酸化剤の酸化効率について確認を行った。この結果を図3に示す。ここでは、標準ガス(一酸化窒素1ppm)を50ml/分で60分間酸化管に通過させ、酸化管が酸化した結果の二酸化窒素の量を捕集してザルツマン試薬を用いることで定量した。なお、ここでは比較例として過マンガン酸カリウムの溶液を用いた。この結果、過マンガン酸カリウムの溶液では0.2ppm程度の一酸化窒素しか酸化することができなかったが、過マンガン酸カリウム(固体)、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの各種酸化剤によると0.65〜0.8ppm程度の十分な酸化効率を示しており、迅速に効率よく、しかも吸着、吸収を抑えて二酸化窒素に酸化できていることが分かった。特に二酸化マンガンが最も効率よく一酸化窒素を酸化できていた。
【0042】
また、実際にこの捕集装置を作成し、実験を行った。この実験では、第一及び第二の捕集管はTEAを含浸したシリカゲルを充填し、酸化管にはガラスビーズにリン酸及び二酸化マンガンを用いて作成した。
【0043】
第一及び第二の捕集管においては、TEAを20mlを純水100mlに加え、更にその溶液に75〜105μmのシリカゲルを100g加え、撹拌した後ロータリーエバポレーターで減圧乾燥させて、更にそれらのうち0.6gずつ第一及び第二の捕集管に充填した。
【0044】
酸化管においては、二酸化マンガン2.5gに対してリン酸を2.5ml加え、それを撹拌した後直径200〜500μmのガラスビーズを混合し、さらにそれをロータリーエバポレーターで減圧乾燥させてそのうち9gを酸化管に充填した。
【0045】
測定は、室内における空気中の一酸化窒素及び二酸化窒素を対象とし、室内条件としては暖房も喫煙もない条件、喫煙のみを1時間行った条件、暖房点火直後1時間経過で喫煙が無い条件、暖房消火直後から1時間経過で喫煙が無い条件の4つの場合において行った。なお二酸化窒素の定量及び一酸化窒素の定量の結果を図4に示す。
【0046】
これによると暖房も喫煙も無い条件では一酸化窒素濃度は低く、二酸化窒素も極めて少量しか観測されなかったが、喫煙のみを1時間行った条件では一酸化窒素及び二酸化窒素合計で300ppb程度測定され、一酸化窒素と二酸化窒素との比が13:1程度まで大きくなっていた。また,暖房点火直後から1時間喫煙が無い状態では二酸化窒素及び一酸化窒素の量が2300ppb程度と非常に大きくなっており、その一酸化窒素と二酸化窒素との比が2:1度になっていた。また暖房消火直後から1時間経過で喫煙が無い状態では前の状態に比べ1500ppb程度に減少しており、一酸化窒素と二酸化窒素との量の比が3:1となっていた。これにより、一酸化窒素と二酸化窒素とを同時に測定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態1に係る捕集装置の概略図。
【図2】実施形態1に係る捕集装置の変形例の概略図。
【図3】様々な酸化剤に対し一酸化窒素の酸化効率を調べた図。
【図4】捕集装置を実際に測定に用いた場合の測定結果を示す図。
【符号の説明】
【0048】
1・・・捕集装置、2・・・第一の捕集管、3・・・第二の捕集管、4・・・酸化管、21、31・・・開口部、22、32・・・容器、23、33・・・吸着剤、42・・・酸化剤、43・・・多孔質フィルター




【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化窒素を吸着可能な吸着剤を充填してなる第一及び第二の捕集管と、
前記第一の捕集管及び第二の捕集管との間に配置され、酸化剤が充填された酸化管と、を備えてなる捕集装置。
【請求項2】
前記酸化剤は不揮発性の酸と混合され、かつ、ガラスビーズ表面にコーティングされてなることを特徴とする請求項1記載の捕集装置。
【請求項3】
前記不揮発性の酸は、リン酸又は硫酸のうちの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2記載の捕集装置。
【請求項4】
前記酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載の捕集装置。
【請求項5】
前記第一及び第二の捕集管の少なくともいずれかにおける前記二酸化窒素を吸着可能な吸着剤は、トリエタノールアミンを含浸した担体、アルカリろ紙の少なくともいずれかを有することを特徴とする請求項1記載の捕集装置。
【請求項6】
不揮発性の酸と酸化剤との混合物がコーティングされたガラスビーズを充填してなる酸化管。
【請求項7】
前記不揮発性の酸は、リン酸若しくは硫酸の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項6記載の酸化管。
【請求項8】
前記酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項6記載の酸化管。
【請求項9】
一酸化窒素と二酸化窒素とを含む気体のうち、前記二酸化窒素を吸着させる第一の工程、
前記気体中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素にする第二の工程、
前記一酸化窒素が酸化した二酸化窒素を吸着させる第三の工程、を有する窒素酸化物の捕集方法。
【請求項10】
前記第二の工程は、不揮発性の酸と酸化剤との混合物がコーティングされたガラスビーズを用いて行うことを特徴とする請求項9記載の窒素酸化物の捕集方法。
【請求項11】
前記不揮発性の酸は、リン酸若しくは硫酸の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項10記載の窒素酸化物の捕集方法。
【請求項12】
前記酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項10記載の窒素酸化物の捕集方法。
【請求項13】
一酸化窒素と二酸化窒素とを含む気体のうち、前記二酸化窒素を吸着させる第一の工程、
前記気体中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素にする第二の工程、
前記一酸化窒素が酸化された二酸化窒素を吸着させる第三の工程、
前記第一の工程において吸着した二酸化窒素を定量する第四の工程、
前記第三の工程において吸着した二酸化窒素を定量する第五の工程、を有する窒素酸化物の測定方法。
【請求項14】
前記第二の工程は、不揮発性の酸と酸化剤との混合物がコーティングされたガラスビーズを用いて行うことを特徴とする請求項13記載の窒素酸化物の測定方法。
【請求項15】
前記不揮発性の酸は、リン酸若しくは硫酸の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項14記載の窒素酸化物の測定方法。
【請求項16】
前記酸化剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、重クロム酸カリウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項14記載の窒素酸化物の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−214889(P2006−214889A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28306(P2005−28306)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】