説明

窒素酸化物分解電極及びその利用

【課題】NOx分解率と電力使用効率との双方を兼ね備えたNOx分解装置を提供する。
【解決手段】以下の要素;(a)固体電解質12、(b)ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物を含むNOx分解触媒相16を有し、NOx含有ガスに暴露される第1の電極14、及び(c)前記固体電解質12を介して前記第1の電極と対向され前記NOx含有ガスと遮断されて配置される第2の電極18とを有する電気化学セルを備え、前記第1の電極14は、前記Aは、La、Sr、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される1種又は2以上であり、前記Bは、Al、Ni、Fe、Co、Mn、Cr及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を表す前記ペロブスカイト型酸化物を主体とする窒素酸化物分解触媒相16を含み、前記第1の電極14は、前記固体電解質12と前記NOx含有ガスとの接触を遮断する分解装置2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物を分解する装置及び窒素酸化物の分解方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の排気ガス等に含まれる一酸化窒素や二酸化窒素などの窒素酸化物(以下、単に、NOxともいう。)等を分解するための分解装置が各種検討されている。例えば、固体電解質上にナノサイズの貴金属を高分散させた電極を用いることで、高いNOx浄化率(約80%)が得られることが報告されている(特許文献1)。また、電子伝導体をイオン伝導体である固体分解質上に高分散させることで電極反応面積を増大させることも検討されている(特許文献2)。さらに、イオン伝導性を有する固体電解質上にイオン伝導性と電子伝導性を併せ持つ混合伝導性物質で構成することでNOxを高い選択性で分解できることも報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−90448号公報
【特許文献2】特開2008−307492号公報
【特許文献3】特開2004−156504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の分解装置では電力消費効率が低く、特許文献2及び3の分解装置では、NOxに対する選択的分解性が劣っていた。すなわち、従来においては、過剰の酸素存在下でのNOx分解率と電力使用効率とを両立することができていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、NOx分解率と電力使用効率との双方を兼ね備えたNOx分解装置とその利用を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記した課題を解決するため、種々の材料につき選択的NOx分解能を検討するとともに、電力使用効率触媒材料につき検討した。その結果、特定のペロブスカイト型酸化物を含む相を備える電気化学セルが、高い酸素濃度下でもNOxを高度に選択的に分解し検知できるという知見を得た。さらに、こうした電気化学セルにおいて前記ペロブスカイト型酸化物含有相のみがNOx含有ガスや集電体材料に接触し固体電解質との接触が抑制されるようにすることで、NOx含有ガス中のO2の分解を生じさせずにNOxのみが分解されるようにして高いNOx選択分解能を獲得できるという知見を得た。この結果、優れた電力使用効率を実現できることがわかった。本発明によれば、これらの知見に基づき以下の開示を提供する。
【0007】
(1)NOx分解装置であって、
以下の要素;
(a)固体電解質、
(b)ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物を含むNOx分解触媒相を有し、NOx含有ガスに暴露される第1の電極、及び
(c)前記固体電解質を介して前記第1の電極と対向され前記NOx含有ガスと遮断されて配置される第2の電極と、
を有する電気化学セル、
を備え、
前記第1の電極は、前記Aは、La、Sr、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される1種又は2以上であり、、前記Bは、Al、Ni、Fe、Co、Mn、Cr及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を表す前記ペロブスカイト型酸化物を主体とする窒素酸化物分解触媒相を含み、
前記第1の電極は、前記固体電解質と前記NOx含有ガスとの接触を遮断する、分解装置。
(2)前記NOx分解触媒相が前記固体電解質と前記NOx含有ガスとの接触を遮断し、その厚みが0.5μm以上50μm以下である、(1)に記載の分解装置。
(3)相前記第1の電極は、前記AはLaを少なくとも含んで、Sr、Mg、Ca及びBaから選択される1種又は2種以上を表す前記ペロブスカイト型酸化物を主体とする窒素酸化物分解触媒相を含む、(1)又は(2)記載の分解装置。
(4)前記第1の電極は、NOx分解触媒相からなる、(1)〜(3)のいずれかに記載の分解装置。
(5)前記第1の電極は、酸素濃度が制御されていない前記NOx含有ガスに暴露可能に構成されている、(1)〜(4)のいずれかに記載の分解装置。
(6)さらに、前記電気化学セルの温度を400℃以上800℃以下の所定の温度に制御する温度制御手段を備える、(1)〜(5)のいずれかに記載の分解装置。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載のNOx分解装置を用いるNOx含有ガス中のNOx分解方法であって、
前記電気化学セルの前記第1の電極をNOx含有ガスに暴露させた状態で、前記分解装置の前記第1の電極及び第2の電極に所定の電圧を印加して前記NOx含有ガス中のNOxを分解する分解工程、を備える、方法。
(8)前記分解工程は、前記電気化学セルを400℃以上800℃以下の所定の温度で実施する、(7)記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、従来のNOx分解装置の電気化学セルの一例を示し、図1(b)は、本発明のNOx分解装置の電気化学セルの一例を示し、図1(c)は、図1(a)及び図1(b)に示す形態のNOx分解装置を用いてNOx含有ガスを分解して得られる分解電流と電力使用効率の結果の一例を示す図である。
【図2】本発明のNOx分解装置の一例の概略を示す図である。
【図3】本発明のNOx分解装置を用いたNOxの分解の一態様を示す図である。
【図4】実施例におけるNOx分解結果を示す図である。
【図5】NOx分解装置における分解電流%と電力使用効率%の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、NOx分解装置及びその利用に関する。また、本発明のNOx分解装置は、NOxを酸素等に対して選択的に分解する能力、すなわち、NOx選択的分解能に優れたNOx分解触媒相を装備した電気化学セルを備えている。さらに、本発明のNOx分解装置は、固体電解質とNOx含有ガスとの接触を回避するセル構成を備えている。NOx分解触媒相のNOx選択的分解能をより高めるセル構成を備えることで、NOx含有ガス中のO2の分解が抑制されてNOxがより選択的に分解される。また、この結果、電力がNOx分解により効果的に利用されることとなり、電力使用効率も向上する。
【0010】
図1に、本発明の作用の概念を示す。図1(a)には、NOx含有ガスや集電体が固体電解質と接触している電気化学セルの一部をし、図1(b)には、本発明の電気化学セルであって、NOx分解触媒相が固体電解質とNOx含有ガス及び固体電解質と集電体との接触を遮断している電気化学セルの一部を示す。図1(b)は、本願発明の電気化学セルの一例である。
【0011】
図1(a)に示すように、この電気化学セルにおいては、NOx分解触媒相/固体電解質界面が存在している。この状態では、NOx含有ガス中のNOxがNOx選択分解能を有するNOx分解触媒相において選択的に分解され、結果として生じる酸素イオンが固体電解質を移動する。一方、NOx含有ガス中のO2は、O2に対して選択性の低いNOx分解触媒相(混合伝導性)で分解されるに留まるものの、酸素イオン伝導性の良好な固体電解質とNOx分解触媒相との界面においては、固体電解質の良好な酸素イオン伝導性ゆえに、効率よく分解されることとなり、結果として生じる酸素イオンが固体電解質を移動する。すなわち、電気化学セルに供給された電力は、NOxの選択的分解と共存するO2の分解とに消費される。
【0012】
これに対して、図1(b)に示す電気化学セルには、NOx分解触媒相/固体電解質界面は存在していない。この状態では、NOx含有ガス中のNOxは、NOx分解触媒相で選択的に分解され、酸素イオンが固体電解質を移動する。また、NOxガス中のO2は、酸素に対して選択性の低いNOx分解触媒相で一部分解されるものの、NOx分解触媒相が酸素イオン伝導性に優れる固体電解質に直接接していないため、効率的には分解されない。したがって、電気化学セルに供給された電力は、NOxの選択的分解と共存するO2の一部分解とに消費される。すなわち、図1(a)に示すセルよりも、O2の分解への電力の消費が抑制される。この結果、電力は、NOxの選択的分解のためにより効果的に消費されることとなる。
【0013】
図1(c)に示すように、図1(a)の電気化学セル(図1(c)の左図)と図1(b)の電気化学セル(図1(c)の左図)とを対比すると、図1(b)の電気化学セルは、より選択的にNOxを分解するとともに、電力使用効率に優れたものとなっている。
【0014】
以上の結果、本発明のNOx分解装置は、NOx選択的分解能と電力使用効率とを兼ね備えたNOx分解装置となっている。
【0015】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図2には、本発明のNOx分解装置の一例の概略を示す。
【0016】
(NOx分解装置)
本発明のNOx分解装置2は、電気化学セル10を備えることができる。電気化学セル10は、固体電解質12と固体電解質12を挟んで対向する少なくとも一組の第1の電極14と第2の電極18とを備えている。
【0017】
本NOx分解装置が分解対象とするNOxは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素)(N2O)、三酸化二窒素(N23)、四酸化二窒素 (N24)、五酸化二窒素(N25)など窒素酸化物を包含している。なかでも、本NOx分解装置は、一酸化窒素及び二酸化窒素の少なくとも一方、好ましくは双方を分解対象とすることが好ましい。
【0018】
本NOx分解装置に適用されるNOx含有ガスは、NOxを含んでいれば足り、各種の燃焼ガス等を対象とすることができる。なかでも、大気汚染物質の主たる原因の一つと考えられている自動車等の各種移動体の排気ガスをNOx含有ガスとすることが好ましい。
【0019】
(電気化学セル)
(固体電解質)
固体電解質12は、酸素イオン伝導性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。固体電解質12としては、例えば、ジルコニア系固体電解質(典型的にはZrO2−M23固溶体又はZrO2−MO固溶体:ここでMはY,Yb,Gd,Ca又はMgであることが好ましい)、セリア系固体電解質(典型的にはCeO2−M23固溶体又はCeO2−M固溶体:ここでMはY又はSmであることが好ましい)、酸化ビスマス系固体電解質(典型的にはBi23−WO3固溶体)、あるいはぺロブスカイト型構造のLaGaO3系化合物が挙げられる。自動車等の内燃機関(エンジン)からの排ガスをNOx含有ガスとした場合の安定性と酸素イオン伝導性の観点からジルコニア系固体電解質が好ましい。なかでも、全体の3〜10mol%となる量のイットリア、マグネシア又はカルシアが固溶した安定化ジルコニアが特に好ましい。
【0020】
(第1の電極)
第1の電極14は、固体電解質12に接して(密着して)備えられている。第1の電極14は、NOxを分解するための分解極として機能する。第1の電極14は、酸素イオン伝導性と電子伝導性との双方を有し、かつ、NOx分解触媒活性を有している1種又は2種以上の材料からなるNOx分解触媒相16(以下、単に触媒相16という。)を有している。第1の電極は、好ましくは触媒相16からなり、NOx含有ガスに暴露される表層に何ら被覆層を有しない。こうした触媒相16は、例えば、2種類以上の材料を用いて構成してもよいが、好ましくは、単一材料でこれらを充足する材料を用いて構成する。このような材料を用いることで、高選択的でかつ高い応答性でNOxを分解できる。すなわち、触媒相16は、例えば、酸素イオン伝導性材料と電子伝導性材料とNOx分解触媒活性材料とから形成されていてもよいが、好ましくはペロブスカイト型酸化物を有し、より好ましくは、ペロブスカイト型酸化物を主体とし、さらに好ましくは実質的にペロブスカイト型酸化物からなる。かかるペロブスカイト型酸化物は、酸素イオン伝導性と電子伝導性との双方を有し、かつ、NOx分解触媒活性を有している。第1の電極14がこうしたペロブスカイト型酸化物を含む触媒相16を有していることで、第1の電極14がNOx含有ガスに暴露され、電気化学セル10に電圧が印加され第1の電極14に電子が流入されるとき、以下の事象が生じる。
【0021】
(1)外部回路から第1の電極14に電子が流入されることで、ペロブスカイト型酸化物の触媒相16に電子が拡散される。
(2)NOx含有ガスに暴露された触媒相16は吸着しているNOxを優先的に電子と反応させ還元(分解)する。この還元によって生じた混合導電性であるO2-は触媒相16を拡散し、さらに、酸素イオン伝導性の固体電解質12に到達し、拡散し、第2の電極18に到達する。
【0022】
上記事象はペロブスカイト型酸化物に共通するものと考えられる。ペロブスカイト型酸化物の触媒活性によるNOなどのNOxの分解にはペロブスカイト構造に存在する酸素空孔が寄与していると考えられている。したがって電気化学的なNOxの分解においても、この酸素空孔がNOxの還元反応に寄与しているものと考えられる。また、ペロブスカイト型酸化物は、酸素イオン伝導性と電子伝導性との双方を有し、しかも、NOx分解触媒活性を有していることから、上記事象が高い酸素濃度下でもNOxに対して高い選択性で生じると考えられる。この結果、高い酸素濃度下でも十分な選択的分解能と応答速度とを確保できると考えられる。
【0023】
ペロブスカイト型酸化物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ペロブスカイト型酸化物は、ABO3で表され、Aは、それぞれ希土類元素、アルカリ土類金属元素及びアルカリ金属元素から選択される2種以上の元素を表す。分解機能に寄与する酸素空孔の形成を考慮すると、前記AはLaのほか、Sr、Mg、Ca及びBaから選択される1種又は2種以上を表していることが好ましい。酸素空孔の安定性を考慮すると、前記Aは、La、Sr及びMgから選択されることが好ましい。また、酸素空孔量を考慮すると、Aとして価数の異なる元素を2種類含むことが好ましい。例えば、価数の大きな元素のモル%が価数の小さい元素のモル%よりも大きいことが好ましい。より具体的には、Aがより価数の大きな元素A1とより価数の小さい元素A2で表されるペロブスカイト型酸化物A1pA2qBO3であるとき、pは0.6以上0.8以下であることが好ましく、qは0.2以上0.4以下であることが好ましい。A1は好ましくは、価数3の金属元素であり、典型的にLaである。また、A2は価数2の金属元素であり、典型的にはSr及びMgである。
【0024】
前記Bは、Al、Ni、Fe、Co、Mn、Cr及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を表すことが好ましい。Bとして2種類以上の元素を有するペロブスカイト型酸化物においては、これらの元素の組み合わせは、耐久性や酸素イオン伝導性や電子伝導性、触媒活性を考慮して決定されるが、好ましくは、Ni、Fe、Co及びMnから選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、Bは、Alを含んでいなくてもよいが、AlをB元素として含むことで、例えば、750℃近傍の高温でかつ還元雰囲気下での構造安定性を維持でき、NOx分解触媒能を維持できる。
【0025】
ペロブスカイト型酸化物としては、La−Sr−Ni−Oペロブスカイト酸化物、La−Sr−Fe−Oペロブスカイト酸化物の他、La−Sr−Co−Oペロブスカイト酸化物、La−Sr−Mn−Oペロブスカイト酸化物、La−Sr−Co−Mn−Oペロブスカイト酸化物を含むペロブスカイト型酸化物LaxSr1-xCoyMn1-y3(0<x<1、0≦y≦1)が挙げられる。このペロブスカイト型酸化物LaxSr1-xCoyMn1-y3において、0.6≦x≦0.8であり、0.6≦y≦1であることがより好ましい。このペロブスカイト型酸化物LaxSr1-xCoyMn1-y3によれば、酸素濃度が5%以上20%程度において、50ppmレベルのNOxを分解することができる。さらに、10ppmであっても、NOxを分解することができる。
【0026】
Bとして2種類以上の元素を有するペロブスカイト型酸化物においては、これらの元素の組み合わせは、耐久性や酸素イオン伝導性や電子伝導性、触媒活性を考慮して決定されるが、Alを含む場合、Alは、50モル%以上100モル%以下であることが好ましい。Al以外の1種又は2種以上の元素は、触媒活性の観点からCo及びMnとすることが好ましい。その場合、Alは、含まれる元素のモル%(y)は60モル%以上100モル%未満であることが好ましく、また、残余の元素の総モル%(1−y)は、好ましくは、0モル%超40モル%以下である。
【0027】
こうしたペロブスカイト型酸化物は、典型的には、La−Sr−Al−Oペロブスカイト型酸化物を含む、La−Sr−Al−C−Oペロブスカイト酸化物を含むペロブスカイト型酸化物LaxSr1-xAly1-y3(Cは、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Cu,Rh及びVからなる群から選択される1種又は2種以上を表し、0<x<1、0<y≦1)が挙げられる。このペロブスカイト型酸化物LaxSr1-xAly1-y3において、0.6≦x≦0.8であり、0.6≦y≦1であることがより好ましく、さらに好ましくは0.6≦y≦0.8である。
【0028】
このようなペロブスカイト型酸化物は、常法に従って合成することができる。例えば、La及びSrのそれぞれの塩(酢酸塩又は硝酸塩等)の水溶液とともに、Bサイトの元素の塩の水溶液を混合して均一混合した上で乾燥し、焼成する方法が挙げられる。合成法は特に限定しないが、例えば、噴霧熱分解法が挙げられる。
【0029】
なお、第1の電極14は、触媒相16のみから構成されていてもよいし、少なくとも触媒相16が連続相として含まれる限り、該触媒相16をマトリックス(母相)又は分散相として有していてもよい。ただし、本発明の分解装置2の第1の電極14は、固体電解質などの酸素イオン伝導性材料を含んでいない。
【0030】
なお、第1の電極14は、触媒相16による、選択的NOx分解能を損なわない範囲で、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びロジウム(Rh)等の貴金属を含んでいてもよい。
【0031】
(第2の電極)
第2の電極18は、固体電解質12を介して第1の電極14と対向するように固体電解質12に接して(密着して)備えられている。第2の電極18は、分解極としての第1の電極14の対極であり、基準電極又は参照電極として機能する。第2の電極18は、電子伝導性であれば足り、その構成材料は特に限定されない。電子伝導性材料としては、白金族元素に属する貴金属(典型的にはPt、Pd、Rh)、それ以外の貴金属(典型的にはAu、Ag)、高導電性の卑金属(例えばNi)が挙げられる。また、それらのいずれかの金属をベースとする合金(例えばPt−Rh、Pt−Irなど)が挙げられる。さらに、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、ランタンマンガンナイト、ランタンコバルタイト、ランタンクロマイト等の金属酸化物も挙げられる。第2の電極18は、こうした電子伝導性材料の1種又は2種以上を含むことができる。また、第2の電極18は、酸素イオン伝導性材料を含んでいてもよい。酸素イオン伝導材料としては、固体電解質12に使用するのと同様の材料を使用することができる。例えば、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアや酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が挙げられる。第2の電極18の電子伝導性や固体電解質12との密着性とのバランス等を考慮すると、第2の電極18の酸素イオン伝導性材料は、当該極18の全体の質量の0質量%超10質量%以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0032】
(電気化学セルの作製)
電気化学セル10は、固体電解質12、第1の電極14及び第2の電極18から常法に従い作製される。例えば、電気化学セル10は、電解質支持型あるいは電極支持型等とすることができる。電解質支持型の場合、典型的には、焼成後あるいは焼成前の固体電解質12上の一方の面に、それぞれ第1の電極14用の組成物をスクリーン印刷等により付与した上で、焼成することで、固体電解質12と第1の電極14との積層体を形成することができる。同様にして、第2の電極18等を固体電解質12に対して形成できる。電気化学セル10は、NOx分解装置の態様に応じて、種々の態様で使用されるが、いずれの態様においても、第1の電極14は、NOx含有ガスに暴露されるように構成される。
【0033】
また、第1の電極14及び第2の電極18には、それぞれ必要に応じて金属等の導電性材料からなる集電体が付与され、外部から電圧が印加可能に構成される。本発明のNOx分解装置は、第1の電極14と第2の電極18との間に電圧を印加した状態で使用されることが好ましい。電圧印加状態で、電極間に流れる電流値を検出することで、NOxの分解量を高感度に検出することもできる。したがって、本発明のNOx分解装置の好ましい使用態様は、直接型NOx分解装置や限界電流型NOx分解装置のようなNOx分解装置である。電界を印加可能な構成は、特に限定されないが、例えば、図2に示すように、第1の電極14の表面の一部にPt等からなる集電体が付与されて、リード線により外部電源に接続される。同様に、第2の電極18にもリード線が接続される。なお、第2の電極18が金属等のみで形成される場合には、必ずしも集電体を形成する必要はない。
【0034】
第1の電極14は、特に限定しないで、白金(Pt)、Au(金)、Ag(銀)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)などの貴金属のほか、卑金属から選択される1種又は2種以上を主体とする集電体を備えることができる。
【0035】
第1の電極14は、固体電解質12とNOx含有ガスとの接触を遮断するように備えられていることが好ましい。こうすることで、固体電解質12、分解相16及びNOx含有ガスの三相界面で生じうるO2の還元反応を抑制又は回避して、NOxの選択的分解反応を維持することができる。Ptなどの集電体及びNOx含有ガスの三相界面で生じうるO2の還元反応を抑制又は回避して、NOxの選択的分解反応を維持することができる。好ましくは、固体電解質12のNOx含有ガスに暴露される側の領域の全てとNOx含有ガスとの接触を第1の電極14が遮断する。
【0036】
第1の電極14を固体電解質12とNOx含有ガスとの接触を遮断するように設けるには、固体電解質12に密着して形成する第1の電極14の厚みとして0.5μm以上50μm以下とすることが好ましい。この膜厚範囲であると、緻密質でかつ酸素イオン伝導性を維持することができる。ガスの遮断性を考慮すると、より好ましくは、1μm以上10μm以下である。また、さらに好ましくは、2μm以上8μm以下である。こうした膜厚の第1の電極14は、例えば、第1の電極14を得るためのセラミックス原料液をコーティング後に、乾燥、焼成するなどのセラミックス薄膜製造技術を適用することができる。
【0037】
第1の電極14は、固体電解質12と集電体との接触も遮断するように備えられていることにことが好ましい。こうすることで、固体電解質12、集電体及びNOx含有ガスの三相界面で生じうるO2の還元反応を抑制又は回避して、NOxの選択的分解反応を維持することができる。好ましくは、集電体が付与されるべき領域において第1の電極14が連続して固体電解質12をNOx含有ガスから遮断するように設けられる。具体的には、集電体付与時に集電体が固体電解質12に到達して接触することが回避される程度の厚み及び/又は連続性で、第1の電極14が固体電解質12のNOx含有ガス暴露側を被覆するように構成される。こうした第1の電極14を含むセル2は、固体電解質12とNOx含有ガスとの接触を遮断するように第1の電極14を形成し、当該第1の電極14表面に集電体を形成することで得ることができる。
【0038】
(NOx分解装置の態様)
本発明のNOx分解装置2は、種々のNOx分解態様を採り得る。典型的には、固体電解質電界質12の酸素イオン伝導性を発揮させる程度の温度の雰囲気下で、第1の電極14と第2の電極18に電圧を印加して、第1の電極14をNOx含有ガスに暴露して、直接NOx含有ガス中のNOxを分解する態様が挙げられる。
【0039】
本発明のNOx分解装置2は、高酸素濃度下でもNOxを分解できることから、予め酸素濃度が所定範囲に制御されていないNOx含有ガスに暴露される構成を備えている。NOx分解装置2における第1の電極14が暴露されるNOx含有ガスの酸素濃度は特に限定しないが、本発明のNOx分解装置2によれば、高い酸素濃度下でも良好にNOxを検知できることから、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。さらに、5%以上とすることができる。より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは15%以上である。また、上限も特に限定しないが、大気中の酸素濃度である21%以下であることが好ましい。
【0040】
NOx分解装置2は、典型的には、第1の電極14が、NOx含有ガスに直接暴露されるように構成され、第2の電極18は、第1の電極14が暴露されるNOx含有ガスとは遮断された状態又は遮断可能な状態に構成される。電気化学セル10の第1の電極14等とNOx含有ガスとの適切な接触形態は、こうした接触形態を確保するためのNOx含有ガスの流路を形成可能なように必要な隔壁を形成することにより得ることができる。隔壁は、NOx分解装置2の使用温度域において十分な絶縁性及び耐熱性を有する材料が使用されることが好ましい。例えば、アルミナ、マグネシア、ムライト、コーディエライト等のセラミックス材料が挙げられる。
【0041】
直接分解型のNOx分解装置2の一例を図2に示している。図2に示す態様では、固体電解質12の第2の電極18の側に第2の電極18を要する空間と第1の電極14を要する空間とを区画するための隔壁が形成されている。なお、第1の電極14と第2の電極18との遮断状態は、これに限定するものではなく、隔壁が第1の電極14側に形成されていてもよい。
【0042】
本発明のNOx分解装置2は、NOxに対して高い選択性を有しているため、NOx含有ガスの酸素濃度に関わらず、酸素濃度が高いNOx含有ガスであっても酸素濃度が低いNOx含有ガスであっても良好な感度でNOxを分解できる。
【0043】
本発明のNOx分解装置2は、電気化学セル10の温度を制御する温度制御手段を備えることができる。温度制御手段を備えることにより、固体電解質12のイオン伝導性及び第1の電極14ないし電気化学セル10におけるNOx(例えば、NO2)のO2に対する選択率を適切に調節することができる。温度制御手段は、例えば、電気化学セル10又はその近傍を加熱又は冷却するための加熱(又は冷却)手段あるいはこれらの双方と、電気化学セル10又はその近傍の温度を検出するための温度センサと、温度センサからの信号に基づき電気化学セル10等の温度を制御するための制御信号を出力する制御回路とを備えている。加熱手段(ヒーター)は、例えば、図3に示すように、電気化学セル10及び電気化学セル10に到達するNOx含有ガスを含んだ領域を加熱するように構成することができる。
【0044】
温度制御手段は、特に限定されないで、各種公知の手段を用いることができる。温度制御手段による温度制御は、NOxを分解できる限り、特に限定されない。本発明のNOx分解装置2の電気化学セル10は、400℃以上800℃以下で安定に作動できる。NOx選択率を考慮すると、電気化学セル10又はその近傍の温度を750℃以下に制御するものであることが好ましい。より好ましくは700℃以下であり、さらに好ましくは600℃以下である。600℃以下であると、NOx選択率を70%以上とすることができる。さらに、NOx選択率を考慮するとより好ましくは550℃以下であり、さらに好ましくは500℃以下であり、一層好ましくは450℃以下である。一方、固体電解質12のイオン伝導性を考慮すると、450℃以上とすることが好ましく、より好ましくは500℃以上である。また、好ましい温度範囲は、450℃以上700℃以下であり、さらに好ましくは、450℃以上600℃以下である。
【0045】
電気化学セル10は、還元雰囲気下でも、触媒相16のペロブスカイト型酸化物の構造を安定に維持でき、NOx選択的分解能を発揮できる。還元雰囲気とは、還元性ガスを主体とする雰囲気をいう。還元性ガスは、SO2、H2S、CO、NO、CO等が挙げられる。典型的には、一酸化炭素(CO)、炭化水素類(HCs)を主体として含む雰囲気が挙げられる。また、電気化学セル10は、800℃近傍の高温の還元雰囲気においても、その構造を安定的に維持できる。こうした還元雰囲気は、例えば、自動車など移動体のエンジンなどにおいて発生しうる環境である。また、こうした還元雰囲気は、空燃比が燃料リッチな状態において発生しやすい。したがって、本NOx分解装置2は、各種移動体のエンジンの排ガスのNOx分解装置等に好ましく適用できる。
【0046】
本発明のNOx分解装置2は、第1の電極14及び第2の電極18の間に電圧を印加する電圧印加手段を備えることができる。具体的には、第1の電極14に電子が流入するような外部回路を備えることができる。電圧印加手段は、既に説明したように電極14、18に付設されるリード線等を介して電気化学セル10に備えられる。なお、電圧印加手段には、電圧を一定値に保つためのポテンショスタットなどを備えることもできる。本発明のNOx分解装置2は、第1の電極14及び第2の電極18の間に流れる電流を計測するための電流計などの電流検出手段を備えることもできる。
【0047】
(NOxの分解方法)
本発明のNOxの分解方法は、本発明のNOx分解装置を用いる以下のNOx分解工程を備えることができる。すなわち、電気化学セル10の第1の電極14をNOx含有ガスに暴露させた状態で、第1の電極14及び第2の電極18に所定の電圧を印加してNOx含有ガス中のNOxを分解する検知工程、を備えることができる。
【0048】
NOx分解工程において、第1の電極14は、NOx含有ガスに暴露される。既に説明したように、NOx分解装置2の態様によって、NOx含有ガスにおける酸素濃度は相違することがある。本発明のNOx分解装置2を直接分解型NOx分解装置の態様で用いる場合には、5%以上であってもよいし、15%以上であってもよい。また、酸素濃度が制限されたNOx含有ガスについてのNOx分解装置の態様で用いる場合には、0.01%以下であってもよい。
【0049】
なお、第1の電極14が暴露されるNOx含有ガスは、酸素濃度が所定濃度範囲に制御されたものであってもよい。第1の電極14が暴露されるNOx含有ガスのNOx濃度、すなわち、1種又は2種類以上の各種の窒素酸化物ガスの総濃度は、1000ppm以下であってもよく、少なくとも10ppm以上であることが好ましい。
【0050】
分解工程は、電気化学セル10を固体電解質12のイオン伝導性を確保可能な温度以上で実施する。NOx選択率の観点からは、温度制御手段に関して既に説明したような温度にて実施することが好ましい。すなわち、好ましくは750℃以下であり、より好ましくは700℃以下である。700℃以下であると、NOx選択率が50%以上を確保できるからである。NOx選択率を考慮すると、より好ましくは600℃以下である。さらに好ましくは550℃以下であり、一層好ましくは500℃以下である。最も好ましくは450℃以下である。
【0051】
分解工程では、第1の電極14及び第2の電極18に電圧を印加する。具体的には第1の電極14に電子を供給するように外部回路から電圧を印加する。印加電圧の大きさ(絶対値)は特に限定しないが、例えば、1V以下程度の電圧とすることができる。より好ましくは、100mV以下とすることができる。
【0052】
分解工程を実施することで、NOx含有ガスのNOxを分解する。また、同時に、電流値を検出することで、NOxを検知しそのNOx濃度を測定することができる。電気化学セル10の構成によれば、大過剰の酸素に対して高い選択性でNOxを検知することができるので、酸素濃度の影響を抑制又は回避してNOxを分解することができる。また、NOx濃度を、正確に、精度よく、しかも再現性よく測定することもできる。また、電気化学セル10の構成によれば、従来よりも低い作動温度(例えば、600℃以下)でも高いNOx選択率でNOxを分解できるため、従来に比べて低温で良好なNOx検知が可能となる。さらに、直接分解型NOx分解装置の態様で分解工程を実施するときには、簡易な構成を採用することができ、複雑な酸素濃度制御を回避することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定するものではない。
【実施例1】
【0054】
以下の実施例では、電気化学セルを作製し直接分解型NOx分解装置を作製した。作製したNOx分解装置を用いて以下の条件でNOxを分解した。すなわち、実施例1で合成したペロブスカイト型酸化物を分解極に用いた電気化学セルを作製して、このセルを電気炉付きのガラス管の中に導入し、以下の表に示すガスを流通し、ポテンシオスタットを用いて分解極と対極との間に電位差を印加し電流値を読み取った。なお、電気化学セルは以下のようにして作製した。
【0055】
(1)YSZペレットの作製
YSZ粉末(8mol%のYを固溶させたジルコニア、東ソー株式会社製)を直径10mmの錠剤成型器を用いて一軸加圧成形後、冷間等方圧加圧(CIP)し、大気雰囲気下1530℃で2時間焼成することで直径約9mm、厚さ1mmのペレットを作製した。
【0056】
(2)分解極と対極の作製
次いで、作製したペレットの片面にα−テルピネオールにペロブスカイト型酸化物(La0.8Sr0.2MnO)混ぜ込んだペーストを直径7mmのスクリーンを用いて印刷した。また、ペレット反対面には白金ペースト(TR7095、田中貴金属株式会社製)を直径3mmのスクリーンを用いて印刷した。この後、これを大気中1000℃で2時間焼成し、分解極(第1の電極)及び対極(第2の電極)を形成し、電気化学セルとした。分解極の厚みは、5μmとするとともに、固体電解質とNOx含有ガスとの接触を遮断できるようにした。
【0057】
(3)集電体取り付け
得られた電気化学セルの分解極表面に、図2に示す態様でPt線をPtペースト(TR7905、田中貴金属株式会社製)で接合し、大気中、1000℃で2時間焼き付けて、集電体及びリード線を付設した。
【0058】
(4)マグネシア管の取り付け
分解極と対極とをNOx含有ガスに対して区画するための隔壁としてマグネシア管(MgO、外径×内径×長さ=6mm×4mm×350mm)を用いた。マグネシア管を、図2に例示するような形態で、検知極と対極とが異なるガス雰囲気にさらされるように無機系接着剤を用いて電気化学セルに接合し、直接分解型NOx分解装置とした。
【0059】
(5)NOx含有ガスの準備
ベースガス及びNOx含有ガスを準備した。ベースガスは、空気組成を模倣した合成空気とし、NOx含有ガスは、500ppmのNO2をベースガスで希釈して調製した。これらのガスは、純酸素(O)、純窒素(N)、1000ppm二酸化窒素(NO、純窒素と1000ppm(0.1%)のNOの混合ガス)のガスボンベを用いてマスフローメーターを用い、それぞれのボンベ流量を調整することで濃度を調節して準備した。
【0060】
(6)測定方法
作製したNOx分解装置を、図3に例示する態様で、フランジ付きのガラス管の中に入れ、ベースガスをを流し、その後、NOx含有ガスに切り替えて流通させ、ガスの流通にあたり、ポテンシオスタットを用いて分解極と対極との間に電位差を印加し、電流値を読み取った。なお、ガスの流通は、ヒーターを用いて500℃に昇温した状態で行い、流速はマスフローメーターを用いて100cm/分、印加電位差は0〜50mVとした。
【0061】
(7)結果
結果を図4に示す。図4に示すように、NOx含有ガスを供給すると、NOx分解電流値は、ベースガス供給時に比べて約10倍となり、電力消費効率は93.4%を示した。また、上記条件及び得られた電流値によれば、5μAの分解電流が得られたことがわかった。このNOx分解条件及び結果を、典型的な排ガス(2000ccエンジン、2m3/分、500ppmNO)を500cm2の電極面積を有する電気化学セルで分解した場合に適用する、NOの分解率を算出した。その結果、本発明の電気化学セルによると、上記典型的な排ガス中の98.8%のNOを分解浄化可能であることがわかった。
【0062】
以上の実施例から、本発明のNOx分解装置によれば、大過剰の酸素存在下でも、その影響を抑制して高い電力使用効率でNOxを選択的に分解できることがわかった。
【実施例2】
【0063】
本実施例では、YSZペレットに対してα−テルピネオールにペロブスカイト型酸化物(La0.8Sr0.2CoO)混ぜ込んだペーストを塗布し、大気中1000℃で2時間焼成して得られる分解極(第1の電極)の表面を遮断するとともにその膜厚を、3μm及び9μmとする以外は、実施例1と同様にして、2種のNOx分解装置を作成した。これらのNOx分解装置について、実施例1と同様にして、フランジ付きのガラス管の中に入れ、ベースガスをを流し、その後、NOx含有ガス(500ppmNOx in空気)に切り替えて流通させ、ガスの流通にあたり、ポテンシオスタットを用いて分解極と対極との間に電位差を印加し、電流値を読み取った。なお、ガスの流通は、ヒーターを用いて600℃に昇温した状態で行い、流速はマスフローメーターを用いて100cm/分、印加電位差は0〜50mVとした。これらのNOx分解装置における分解電流%と電力使用効率%の測定結果を図5に示す。
【0064】
図5に示すように、分解極の膜厚3μmであるNOx分解装置は、同膜厚が9μmのNOx分解装置に比較して、高いNOx選択率を示すとともに、良好な電力使用効率を呈した。このことは、固体電解質をNOxから遮断できる限り、分解極の膜厚9μmよりも3μmであることのほうが有利であることがわかった。
【符号の説明】
【0065】
2 NOx分解装置、10 電気化学セル、12 固体電解質、14 第1の電極、16 触媒相、18 第2の電極、20 温度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOx分解装置であって、
以下の要素;
(a)固体電解質、
(b)ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物を含むNOx分解触媒相を有し、NOx含有ガスに暴露される第1の電極、及び
(c)前記固体電解質を介して前記第1の電極と対向され前記NOx含有ガスと遮断されて配置される第2の電極と、
を有する電気化学セル、
を備え、
前記第1の電極は、前記Aは、La、Sr、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される1種又は2以上であり、、前記Bは、Al、Ni、Fe、Co、Mn、Cr及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を表す前記ペロブスカイト型酸化物を主体とする窒素酸化物分解触媒相を含み、
前記第1の電極は、前記固体電解質と前記NOx含有ガスとの接触を遮断する、分解装置。
【請求項2】
前記NOx分解触媒相が前記固体電解質と前記NOx含有ガスとの接触を遮断し、その厚みが0.5μm以上50μm以下である、請求項1に記載の分解装置。
【請求項3】
前記第1の電極は、前記AはLaを少なくとも含んで、Sr、Mg、Ca及びBaから選択される1種又は2種以上を表す前記ペロブスカイト型酸化物を主体とする窒素酸化物分解触媒相を含む、請求項1又は2に記載の分解装置。
【請求項4】
前記第1の電極は、NOx分解触媒相からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の分解装置。
【請求項5】
前記第1の電極は、酸素濃度が制御されていない前記NOx含有ガスに暴露可能に構成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の分解装置。
【請求項6】
さらに、前記電気化学セルの温度を400℃以上800℃以下の所定の温度に制御する温度制御手段を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の分解装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のNOx分解装置を用いるNOx含有ガス中のNOx分解方法であって、
前記電気化学セルの前記第1の電極をNOx含有ガスに暴露させた状態で、前記分解装置の前記第1の電極及び第2の電極に所定の電圧を印加して前記NOx含有ガス中のNOxを分解する分解工程、を備える、方法。
【請求項8】
前記分解工程は、前記電気化学セルを400℃以上800℃以下の所定の温度で実施する、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78721(P2013−78721A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219569(P2011−219569)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000173522)一般財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】