窓ガラス破損センサ、窓ガラス破損センサ用フィルム、及び窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法
【課題】確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる窓ガラス破損センサ、窓ガラス破損センサ用フィルム、及び窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】自動車用窓のガラス板13の破損を検出する窓ガラス破損センサのフィルム30はガラス板13に貼り付けられている。窓ガラス破損センサ用フィルム30は、印刷により線状に延びるようにパターニングされた導電層33と、印刷により形成され、導電層33をガラス板13に貼り付けるための接着層31とを有し、導電層33の断線または抵抗変化によりガラス板13の破損を検出する。
【解決手段】自動車用窓のガラス板13の破損を検出する窓ガラス破損センサのフィルム30はガラス板13に貼り付けられている。窓ガラス破損センサ用フィルム30は、印刷により線状に延びるようにパターニングされた導電層33と、印刷により形成され、導電層33をガラス板13に貼り付けるための接着層31とを有し、導電層33の断線または抵抗変化によりガラス板13の破損を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラス破損センサ、窓ガラス破損センサ用フィルム、及び窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には導体布線フィルムが開示されており、この導体布線フィルムは種々の大きさの被貼着体に対して適用でき、被貼着体の美観を維持することができ、しかも被貼着体の破壊を検知・霜取り・曇り止めを行なうことができる。具体的には、導体布線フィルムは、一方の主面上に接着剤層を有する樹脂製フィルムと、直線部分及び湾曲部分を有し、直線部分が略平行に位置し、かつ、湾曲部分が直線部分を介して連続して位置するように略S字形状に接着剤層上に布線された導体とを具備し、複数の湾曲部分が構成する2つの湾曲部分列のうちいずれか一つの湾曲部分列における導体の湾曲部分に接続端子が接続されている。導体の外径は10〜100μmであることが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−16860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ガラスがバラバラにならないと窓ガラス破損を検出することができない。つまり、窓ガラス破損を検出するための導体は直径10μm以上の均一な密度を持つ金属線であるため、よく伸び、そのため微小なクラックでは断線しないため窓ガラス破損を検知できない(窓ガラス破損センサとしては低感度である)。換言すると、ガラスがバラバラにならないと検知できないため(検知精度が低いため)、検知精度を向上させるためには大面積にする必要があった。また、金属線を布線して製作しているため、生産コストがアップしてしまう。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる窓ガラス破損センサ、窓ガラス破損センサ用フィルム、及び窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、窓のガラス板の破損を検出するセンサであって、前記ガラス板の表面において印刷によりパターニングされた導電層と、前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、を備え、前記導電層の断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、窓のガラス板に貼り付けられる窓ガラス破損センサ用フィルムであって、印刷物を支持するためのベースフィルムと、前記ベースフィルム上において印刷によりパターニングされ、断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出するための導電層と、前記ベースフィルム上において印刷により形成され、前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、を備えたことを要旨としている。
【0008】
請求項1,2に記載の発明によれば、導電層と接着層とを有し、導電層は、印刷によりパターニングされ、接着層は、印刷により形成され、導電層をガラス板に貼り付ける。そして、導電層の断線または抵抗変化により窓のガラス板の破損が検出される。よって、導体は布線によらずに印刷により形成されており、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる。
【0009】
請求項3の発明では、印刷物支持用ベースフィルム上に印刷にて断線または抵抗変化により窓のガラス板の破損を検出するための導電層をパターニングする導電層パターニング工程と、前記印刷物支持用ベースフィルム上での前記導電層上に印刷にて接着層を形成する接着層形成工程と、を有することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムを製造することができる。
請求項4に記載のように、請求項1に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、前記ガラス板の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向に直交する方向に延設されているとよい。
【0011】
請求項5に記載のように、請求項1に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、渦巻き状に延設されていると、全方向のクラックや割れに対して断線または抵抗変化を生じることができる。
【0012】
請求項6に記載のように、請求項1に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングすると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0013】
請求項7に記載のように、請求項1,4〜6のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0014】
請求項8に記載のように、請求項1,4〜7のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記ガラス板に直接、前記接着層及び前記導電層を積層印刷してもよい。
請求項9に記載のように、請求項1,4〜8のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成することができる。
【0015】
請求項10に記載のように、請求項1,4〜9のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記接着層として両面テープまたは熱硬化型接着剤を用いるとよい。
請求項11に記載のように、請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記導電層は、渦巻き状に延設されていると、全方向のクラックや割れに対して断線または抵抗変化を生じることができる。
【0016】
請求項12に記載のように、請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングすると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0017】
請求項13に記載のように、請求項2,11,12のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0018】
請求項14に記載のように、請求項2,11〜13のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成することができる。
【0019】
請求項15に記載のように、請求項2,11〜14のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記ベースフィルムは、ガラス板に貼り付け後において剥離されると、高感度な窓ガラス破損センサとすることができる。
【0020】
請求項16に記載のように、請求項3に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法において、前記導電層を、少なくとも有機金属粒子を含む印刷インクを使用して形成するとよい。
【0021】
請求項17に記載のように、請求項16に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法において、前記有機金属粒子として有機銀粒子を用いるとよい。
請求項18に記載のように、請求項1,4〜10のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記窓は自動車用窓であるとよい。
【0022】
請求項19に記載のように、請求項2,11〜15のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記窓は自動車用窓であるとよい。
請求項20に記載のように、請求項3,16,17のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法において、前記窓は自動車用窓であるとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本実施形態における乗用車の後部を示す概略斜視図、(b)は(a)のA−A線に対応する左側の三角窓付近の部分断面図。
【図2】第1の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面及び断面を示す図。
【図3】窓ガラス破損センサの電気的構成図。
【図4】図2のB−B線での窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図5】(a)〜(e)はフィルムの製造工程を示す断面図。
【図6】(a),(b)はフィルムのガラス板への装着工程を説明するための断面図。
【図7】窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図8】第1の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図9】第2の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図10】第2の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図11】第2の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図12】第3の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図13】第3の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図14】第4の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図15】第4の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図16】第5の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図17】図16のC−C線での窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図18】第5の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図19】窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図20】第5の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図21】第6の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図22】第6の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図23】(a)〜(f)は第7の実施形態を説明するための導電層の概念図。
【図24】(a)〜(c)は第7の実施形態を説明するための導電層の概念図。
【図25】(a)〜(f)は第7の実施形態を説明するための窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)に示すように、車両11の後部には、左右両側(左側のみ図示)に、自動車用窓としての三角窓12が設けられている。この三角窓12は開閉不能な窓である。また、三角窓12において、一部が破損した場合に全体にひび割れが生じるガラス板13を窓ガラスに使用している。ガラス板13として、強化ガラスを用いている。
【0026】
図1(b)は図1(a)のA−A線に対応する左側の三角窓12付近の部分断面図である。図1(b)に示すように、三角窓12のガラス板13は周縁部において接着剤(ガラス接着剤)14を介して車体(ボデー)15に固着されている。なお、ガラス板13の厚さは3.1mm〜5.0mm程度である。
【0027】
図1(b)に示すように、車体15にはガラス板13の周縁部と対応する箇所で、ガラス板13の周縁部に対して接着剤14よりも内側の位置に、窓ガラス破損センサ20の窓ガラス破損センサ用フィルム30が設けられている。窓ガラス破損センサ20は、自動車用窓のガラス板13の破損を検出するセンサである。窓ガラス破損センサ20を構成する窓ガラス破損センサ用フィルム30は、車両11の内装16によって覆われている。
【0028】
以下、窓ガラス破損センサ20について、詳しく説明する。
図2には窓ガラス破損センサ用フィルム30の平面及び断面を示す。図3は窓ガラス破損センサの電気的構成図である。図4は図2のB−B線での断面図である。図5(a)〜(e)は窓ガラス破損センサ用フィルム30の製造工程を示す断面図である。
【0029】
図1(b)に示すように、窓ガラス破損センサ20は、窓ガラス破損センサ用フィルム30と判定回路60と警報器70を備えている。
窓ガラス破損センサ用フィルム30は、図2に示すように、平面構造としては長方形状をなしている。また、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、図2,4に示すように、断面構造としては、接着層31と絶縁層32と導電層33と絶縁層34の積層体よりなる。絶縁層32,34は樹脂層である。絶縁層32がベース部材として機能し、絶縁層34が表面保護膜として機能する。
【0030】
導電層33はガラス板13の表面において印刷により細線部33aが線状に延びるようにパターニングされている。つまり、薄いフィルム30の内部(積層した複数のシート材の内部)において、細線部33aを有する導電層33が印刷にてパターニングされている。導電層33の細線部33aは、図2においてガラス板13の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向Xに直交する方向に延設され、かつ複数回折り返したパターンとなっている。導電層33の細線部33aの線幅は200μm程度である。
【0031】
導電層33の細線部33aは微細パターンなので断線しやすい。1本の細線部33aの両端には幅広なる電極33b,33cが形成されている。電極33b,33c上において絶縁層34には開口部34a,34bが形成され、開口部34a,34bを通して電極33b,33cが露出している。この露出部が電極取り出し部となっている。接着層31により導電層33がガラス板13に貼り付けられている。
【0032】
図2に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図1(b)に示すようにガラス板13に貼り付けられて、これにより、自動車用窓のガラス板13に電極33b,33cを有する導電層33が延設されている。図2の電極33b,33cには、図1(b)に示すようにコネクタCを介してワイヤハーネス50の一端が接続され、ワイヤハーネス50の他端には判定回路60が接続されている。ガラス板13が割られると、微小なクラックにより、窓ガラス破損センサ用フィルム30の導電層33が断線または抵抗が変化する。この導電層33の断線または抵抗変化によりガラス板13の破損が検出されるようになっている。
【0033】
このように、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に貼り付けられているので、ガラス板13に導電層33を直接印刷する必要がなくなるためコストダウンを図ることができる。また、導電層33の無いガラス板13に対し後付けで取付けることができる。また、細線よりなる導電層33を形成することにより、窓ガラス破損によりガラス板13が完全に粉砕しなくても検知可能となる。
【0034】
図3において、窓ガラス破損センサ用フィルム30の導電層33における第1の端子30aは接地されている。導電層33における第2の端子30bは判定回路60の接続端子60aと電気的に接続されている。判定回路60はマイコン61とトランジスタ62と抵抗63,64を備えている。マイコン61の入力ポートは抵抗64を介して判定回路60の接続端子60aと接続されている。トランジスタ(npnトランジスタ)62は、コレクタが電源端子+Bと接続されるとともに、エミッタが抵抗63を介して接続端子60aと接続されている。トランジスタ62のベースはマイコン61の出力ポートと接続されている。また、判定回路60のマイコン61には警報器70が接続されている。
【0035】
次に、図5,6を用いて窓ガラス破損センサ用フィルム30の製造方法、及びガラス板13への施工方法について説明する。
まず、図5(a)に示すように、印刷物に対する支持体として機能するプラスチックフィルム40を用意する。印刷物を支持するための印刷物支持用ベースフィルムとしてのプラスチックフィルム40は窓ガラス破損センサ用フィルム30と同形・同寸法である。プラスチックフィルム40として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、及びポリアリレート(PAR)から選ばれるいずれか1種の樹脂を用いる。特に、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、及びポリアリレート(PAR)は、耐熱性フィルムを用いるとよりよい。
【0036】
そして、図5(b)に示すように、プラスチックフィルム40の上にスクリーン印刷にて絶縁層34を形成する。その後、加熱する。
さらに、図5(c)に示すように、絶縁層34の上にスクリーン印刷にて導電層33をパターニングする。その後、加熱する。
【0037】
導電層33のパターニング工程において、導電層33を、熱硬化型のポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、ポリイミド系、エポキシ系、及びフェノール系から選ばれるいずれか1種の系の中に分散された銀粒子からなる印刷インクを使用して形成する。これにより、導電層33は、金属粒子をバインダーとしての樹脂で電気的につないで構成される。
【0038】
なお、銀粒子に代わり、カーボン粒子でもよいし、また、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子、パラジウム(Pd)粒子でも、さらに合金の粒子でもよい。あるいは、銀粒子とカーボン粒子の両方からなる印刷インクを使用して導電層33を形成してもよい。
【0039】
引き続き、図5(d)に示すように、絶縁層34の上にスクリーン印刷にて導電層33を覆うように絶縁層32を形成する。その後、加熱する。
そして、図5(e)に示すように、絶縁層32の上にスクリーン印刷にて接着層31を形成する。その後、加熱する。
【0040】
これにより、窓ガラス破損センサ用フィルム30が製造される。
窓ガラス破損センサ用フィルム30は、導電層33とプラスチックフィルム(ベースフィルム)40との間に絶縁層34を有し、当該絶縁層34を、熱硬化型または紫外線硬化型のポリエステル系印刷インク、アクリル系印刷インク、アクリルウレタン系印刷インク、ウレタン系印刷インク、及びポリイミド系印刷インクから選ばれるいずれか1種の印刷インクを使用して形成する。同様に、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、接着層31と導電層33との間に絶縁層32を有し、当該絶縁層32を、熱硬化型または紫外線硬化型のポリエステル系印刷インク、アクリル系印刷インク、アクリルウレタン系印刷インク、ウレタン系印刷インク、及びポリイミド系印刷インクから選ばれるいずれか1種の印刷インクを使用して形成する。
【0041】
導電層33において金属粒子を電気的につなぐバインダーとして、ポリエステル系、アクリル系、アクリルウレタン系、ウレタン系、ポリイミド系を挙げることができ、他にも、絶縁性を有するという観点から次のものを使用することができる。蒸発乾燥型バインダーとしてアクリル樹脂、共重合ポリエステル、ポリウレタン、塩ビ酢ビ共重合体を使用できる。また、熱硬化型バインダーとしてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、共重合ポリエステル、ポリウレタン、塩ビ酢ビ共重合体を使用できる。さらに、UV硬化型インダーとしてアクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂を使用できる。材質では、塩ビ系、エポキシ系、フェノール系、オレフィン系、シリコーン系を使用する。要は、導電層33におけるバインダーとして、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂等を使用すればよい。
【0042】
図5(e)において、プラスチックフィルム40の厚さは50〜数100μm程度であり、接着層31の厚さは数μm程度(例えば6μm)であり、絶縁層32の厚さは数μm程度(例えば3μm)であり、導電層33の厚さは数μm程度(例えば3μm)であり、絶縁層34の厚さは数μm程度(例えば3μm)である。
【0043】
この窓ガラス破損センサ用フィルム30を車両のガラス板13に装着する際には、図6(a)に示すように、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31を接触させて接着層31によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。
【0044】
ここで、接着層31として熱硬化型接着剤を用いる。他にも、接着層31として両面テープを用いてもよく、この両面テープの粘着剤として、アクリル系ノンキャリア粘着剤やゴム系粘着剤やシリコーン系粘着剤やビニール系粘着剤を用いるとよい。
【0045】
その後、プラスチックフィルム40を剥がすと、図6(b)に示すように、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。
このようにして、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、ガラス板13に貼り付ける際にプラスチックフィルム40が剥離することで印刷膜のみが残留する転写タイプである。
【0046】
次に、このように構成した窓ガラス破損センサ20の作用を説明する。
ガラス板13の一部が破損すると、ガラス板13全体にひび(クラック)が入る。この状態を図7に示す。図7は図2のC−C線に対応する部位での断面図である。
【0047】
図7において導電層33の延設方向においてクラックにより導電層33が断線している状況を示す。そして、たとえ、工具を用いてガラス板13を振動させることなく破損させても、窓ガラス破損センサ用フィルム30の貼着部ではひび割れによって細線よりなる導電層33が断線、もしくは、クラックの大きさにより導電層33の一部領域にクラックが入る状況になる。この場合には、導電層33の抵抗が大きくなる。換言すると、導電層33の断線は抵抗値が無限大になり、一部にクラックが入った場合には抵抗値が所定量だけ増大するといえる。
【0048】
図3の判定回路60のマイコン61は一定周期で出力ポートをHレベルにしてトランジスタ62をオンしている。そして、マイコン61は入力ポートのレベルが予め定めた電位よりも高いか否か判定する。窓ガラス破損センサ用フィルム30の導電層33に断線も抵抗値の増大も発生していなければ、マイコン入力ポートはグランドレベルとなる。マイコン61はトランジスタ62をオンしたときに入力ポートがグランドレベルであると、窓ガラス破損が発生しておらず正常であると判定する。
【0049】
一方、窓ガラス破損が発生すると、導電層33が断線または抵抗が大きくなる。マイコン61はトランジスタ62をオンしたときに入力ポートがグランドレベルでないと、窓ガラス破損が発生したと判定する。そして、判定回路60のマイコン61は警報器70にて警報音や警報ランプにより窓ガラス破損(異常発生)を外部に報知する。
【0050】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)図4に示すように、窓ガラス破損センサ20は、ガラス板13の表面において印刷により線状に延びるようにパターニングされた導電層33と、導電層33をガラス板13に貼り付けるための接着層31とを備え、導電層33の断線または抵抗変化によりガラス板13の破損を検出する。図5(e)に示すように、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、プラスチックフィルム40上において印刷により線状に延びるようにパターニングされた導電層33と、プラスチックフィルム40上において印刷により形成され、導電層33をガラス板13に貼り付けるための接着層31とを備えている。窓ガラス破損センサ用フィルム30の製造方法として、図5に示すように、ベースフィルムとしてのプラスチックフィルム40上に印刷にて線状に延び断線または抵抗変化により自動車用窓のガラス板13の破損を検出するための導電層33をパターニングする導電層パターニング工程と、プラスチックフィルム40上での導電層33上に印刷にて接着層31を形成する接着層形成工程とを有する。
【0051】
よって、導体は布線によらずに印刷により形成されており、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる。
(2)図2に示すように、導電層33は、ガラス板13の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向に直交する方向Xに延設されているので、窓ガラス破損を検出する上で好ましい。
【0052】
(3)図6(a),(b)に示すように、プラスチックフィルム40は、ガラス板13に貼り付け後において剥離されるので、高感度な窓ガラス破損センサとすることができる。
【0053】
窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31として、ガラス板13に貼り付ける際に加圧して接着する感圧型接着剤を用いても、ガラス板13に貼り付ける際にフィルム30及びガラス板13の少なくとも一方を加熱しかつ加圧することで接着する熱圧着型接着剤を用いても、ガラス板13に貼り付ける際にフィルム30及びガラス板13の少なくとも一方を誘導加熱することで接着する誘導加熱型接着剤を用いても、ガラス板13に貼り付ける際にフィルム30及びガラス板13の少なくとも一方に活性エネルギー線(電子線、X線、紫外線、可視光線、赤外線など)を照射することで硬化し接着する接着剤(UV接着剤等)を用いてもよい。
【0054】
本実施形態の変形例を説明する。図6(b)においては図6(a)のプラスチックフィルム40を剥がして使用したが、図8に示すように、図6(a)のプラスチックフィルム40を剥がすことなくそのまま使用してもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0055】
本実施形態においては、図5(e)に代わり、図9に示す構成としている。また、図4に代わり、図10に示す構成としている。
図9に示すように、ガラス板に装着前の状態において、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30はプラスチックフィルム40の上に絶縁層34が形成され、絶縁層34の上に導電層33がパターニングされるとともに導電層33上を含む絶縁層34上に接着層31が形成されている。
【0056】
この図9に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図10に示すように、車両のガラス板13に装着される。つまり、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31を接触させて接着層31によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。その後、プラスチックフィルム40を剥がすと、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。
【0057】
本実施形態の変形例を説明する。図10においては図9のプラスチックフィルム40を剥がして使用したが、図11に示すように、図9のプラスチックフィルム40を剥がすことなくそのまま使用してもよい。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0058】
本実施形態においては、図5(e)に代わり、図12に示す構成としている。また、図4に代わり、図13に示す構成としている。
図12に示すように、ガラス板に装着前の状態において、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30はプラスチックフィルム40の上に絶縁層34が形成され、絶縁層34の上に導電層33がパターニングされるとともに導電層33上を含む絶縁層34上に絶縁層32が形成されている。一方、プラスチックフィルム40の下面には接着層36が形成されている。
【0059】
この図12に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図13に示すように、車両のガラス板13に装着される。つまり、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層36を接触させて接着層36によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。これにより、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。
【0060】
ここで、図5(e)のフィルム30と、図9のフィルム30と、図12のフィルム30とは、次のような仕様に合わせて使い分ける。
図5(e)に示す絶縁層32,34及びプラスチックフィルム40を具備するフィルム30は、高感度であるとともにガラス板13に装着しやすい。ここで、図4に示すようにプラスチックフィルム40を剥離して取り除くと高感度タイプとして使用でき、図8に示すようにプラスチックフィルム40を剥離せずに残すと低感度タイプとして使用できる。
【0061】
図9に示す絶縁層34及びプラスチックフィルム40を具備するフィルム30は、最高感度であるがガラス板13に装着しにくい。ここで、図10に示すようにプラスチックフィルム40を剥離して取り除くと高感度タイプとして使用でき、図11に示すようにプラスチックフィルム40を剥離せずに残すと低感度タイプとして使用できる。
【0062】
図12に示す絶縁層32,34及びプラスチックフィルム40を具備するフィルム30は、厚いプラスチックフィルム40によりガラス板13で発生したクラックも導電層33に到達しにくくなり、低感度である。一方、図13に示すように、ガラス板13に極めて容易に装着することができる。
【0063】
なお、絶縁層や接着層の膜厚を調整することによってもセンサ感度を調整することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
本実施形態においては、図2に代わり、図14に示す構成としている。
図14において、導電層33はU字状にパターニングされ、その両端に幅広なる電極33b,33cが形成されている。
【0065】
図2、即ち、導電層33として複数回折り返したパターンに対する変形例として、図15に示すように、導電層33として、渦巻き状にパターニングしてもよい。このように、導電層33は、渦巻き状に延設されていると、全方向のクラックや割れに対して断線または抵抗変化を生じることができる。
【0066】
図2のフィルム30と、図14のフィルム30と、図15のフィルム30とは、次のような仕様に合わせて使い分ける。
図14に示す細線部33aが一直線に延びているフィルム30は、窓ガラス破損によるクラックの延びる方向を特定できる場合に向いている。また、ガラス板の一辺と同程度の長さで貼り付けることができる場合に有効である。
【0067】
図2に示す細線部33aが櫛歯状に折り返されているフィルム30は、窓ガラス破損によるクラックの発生場所とクラックの延びる方向を特定できる場合に向いている。また、クラックの度合いを測定する必要がある場合に有効である。
【0068】
図15に示す細線部33aが渦巻き状となっているフィルム30は、窓ガラス破損によるクラックの発生場所を特定できるが、クラックの延びる方向が不明な場合に有効である。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を、第4の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0069】
本実施形態においては、図15に代わり、図16に示す構成としている。図16におけるC−C線での縦断面を図17に示す。図17はガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を装着した後の状態を示し、図18はガラス板13に装着前の窓ガラス破損センサ用フィルム30を示す。
【0070】
図17において接着層31の上には絶縁層(樹脂層)38が形成され、絶縁層38の上面には絶縁層37がパターニングされている。図16で説明するならば、渦巻き状にパターニングされる導電層33の中心に対して所定角度ごとに放射状に延びるようにパターニングされている。図17において絶縁層(樹脂層)37により段差が形成され、絶縁層38上において段差用絶縁層37上を含んで導電層33が渦巻き状にパターニングされている。また、絶縁層38上において導電層33上を含んで絶縁層(樹脂層)39が形成されている。
【0071】
図18に示すガラス板に装着前の状態において、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30はプラスチックフィルム40の上に絶縁層39が形成され、絶縁層39の上に導電層33がパターニングされているとともに導電層33は段差用絶縁層37をまたぐようにパターニングされている。段差用絶縁層37及び導電層33上を含む絶縁層39上に絶縁層38が形成され、その上に接着層31が形成されている。
【0072】
この図18に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図17に示すように、車両のガラス板13に装着される。つまり、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31を接触させて接着層31によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。その後、プラスチックフィルム40を剥がすと、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。このとき、段差用絶縁層37は図16に示すように、渦巻き状にパターニングされた導電層33の中心に対して放射状に所定角度ごとに設けられている。
【0073】
この段差により窓ガラス破損に伴うクラックによる歪みを導電層33まで増幅させて導電層33で検出する上で好ましい。
以上のごとく、図17や図18に示すように、接着層31と導電層33との間に形成される絶縁層37を有し、当該絶縁層37を、導電層33の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングすると、ガラス板13の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0074】
また、図17,18に示すように、導電層33は、その表面に凹凸75が形成されている。詳しくは、厚さ方向に波打たせることにより凹凸75が形成されている。導電層33の表面に凹凸75を形成することにより、ガラス板13の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。図17に代わる導電層33の表面に凹凸75を形成する構成として、図19に示すように、導電層33を二層の積層構造として、1層目の導電層76の上の所定領域に2層目の導電層77を積層することにより導電層76,77よりなる導電層33の表面に凹凸75を形成してもよい。
【0075】
本実施形態の変形例を説明する。図2に示した窓ガラス破損センサ用フィルム30について、図20に示すように、段差用絶縁層37を形成してもよい。このとき、段差用絶縁層37は平行に所定の距離だけ離間して設けられている。
【0076】
なお、図14のフィルム30においても同様に図中、X方向に延びる段差用絶縁層37を形成してもよい。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0077】
本実施形態においては、図4に代わり、図21に示す構成としている。図21は窓ガラス破損センサ用フィルム30の断面図であり、図22は窓ガラス破損センサ用フィルム30の平面図である。図21,22はガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を装着した後の状態を示す。
【0078】
図21に示すように、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30は接着層31の上に印刷による意匠層80が形成されている(印刷により形成された意匠層80を有している)。意匠層80の上に絶縁層32が形成され、絶縁層32の上に導電層33がパターニングされるとともに導電層33上を含む絶縁層32上に絶縁層34が形成されている。
【0079】
図21の意匠層80において図22に示すように意匠印刷物が描かれている。図22では、四角の枠と、その枠内に「センサ動作中」と印刷されている。
よって、車外から図1における車両11の後部の三角窓12を見ると、図22に示すように導電層33を遮蔽できるとともにガラス板13において四角枠内の「センサ動作中」が見えるので、犯罪の予防を図ることができる。
【0080】
意匠層80には文字や絵や図柄や模様等をパターニングすればよく、これにより意匠性の向上や目視による防犯効果向上の機能を付加することができる。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態を、前記各実施形態との相違点を中心に説明する。
【0081】
上記各実施形態ではフィルム30の製造工程において樹脂の中に分散された銀粒子またはカーボン粒子もしくはその両方からなる印刷インクを使用して導電層33を形成したが、これに代わり、本実施形態では次のようにしている。導電層33を、少なくとも有機金属粒子を含む印刷インクを使用して形成する。有機金属粒子として有機銀粒子を用いるのが好ましい。具体的には、例えば、Ag、Au、Pt、Ni、Cu、Pd及びAlから選ばれるいずれか1種の金属についての酸化金属粒子と、Ag、Au、Pt、Ni、Cu、Pd及びAlから選ばれるいずれか1種の金属についての有機金属粒子からなる印刷インクを使用して形成する。より具体的には、熱反応型の酸化銀粒子と有機銀粒子からなる印刷インクを使用して導電層33を形成する。これにより、導電層33は、金属粒子(粒径が数nm〜数十μm程度)を直接溶着にて電気的につないで構成されている。
【0082】
以下、通常の導電インクと、熱反応型の導電インクを用いた場合を比較して説明する。
通常の導電インクは、熱硬化型の導電インクであり、樹脂中に銀粒子が分散している。このインクではインク塗布後の加熱後においては、図23(a)に示すようにバインダーとしての樹脂中に金属粒子が分散しており、金属粒子同士が接触により導通している。
【0083】
これに対し、熱反応型の導電インクは、塗布時には金属ではないが焼付して金属となり、脆い性質を有する。つまり、インク塗布後の加熱後においては、図24(a)に示すように金属粒子同士が熱によって溶着することによって成膜されており、金属粒子が樹脂のない状態でつながっている(金属粒子同士が熱によって溶着することで接続されている)。
【0084】
よって、図25(a)に示す状態から、図25(b)に示すようにガラス板13が粉砕されたとき、及び、図25(c),(d),(e),(e),(f)に示すようにクラックが発生した場合には、次のようになる。
【0085】
(A);図25(b)に示すようにガラス板13が破損により各片に脱離した場合においては導電層33の細線部33aが破断するため電気経路としてはオープン状態となる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(b)に示すように金属粒子・バインダー共に破断し、オープン状態となる。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0086】
(B);図25(c)に示すように大きなクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が大きく導電層33の細線部33aが破断し、電気経路としてはオープン状態となる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(c)に示すように金属粒子・バインダー共に破断し、オープン状態となる。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0087】
(C);図25(d)に示すように中程度のクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が中程度に大きく導電層33の細線部33aが破断し、電気経路としてはオープン状態となる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(d)に示すようにバインダーは破断しないで金属粒子の接続が離れ、高抵抗化する。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0088】
(D);図25(e)に示すように小さなクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が小さく導電層33の一部までクラックが到達して導電層33の細線部33aが高抵抗化する。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(e)に示すようにバインダーは破断しないで金属粒子の接触面積が減少し、高抵抗化する。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0089】
(E);図25(f)に示すように微小なクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が微小であり導電層33までクラックが到達していない。これにより導電層33の細線部33aにおける抵抗が大きくなる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(f)に示すようにバインダーは破断しないで金属粒子の接続もほとんど影響を受けずに僅かな抵抗値変化が生じる。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(c)に示すように金属成分の延伸率内のため金属(粒子間)は破断せずに抵抗値の変化が生じる。
【0090】
このようにして、導電層33のパターンでの抵抗値について、図25(a)に示すようにガラス板13に装着した当初においては所定値(例えば抵抗値「10」)を有しているが、上述の(A),(B)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合でも、熱反応型の導電インクを使用した場合でも、導電層33のパターンでの抵抗値は無限大となる。また、上述の(C)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「1000」を示し、熱反応型の導電インクを使用した場合には無限大となる。さらに、上述の(D)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「100」を示し、熱反応型の導電インクを使用した場合には無限大となる。さらには、上述の(E)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「20」を示し、熱反応型の導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「15」となる。
【0091】
このようにして、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合に窓ガラス破損により延伸しやすく窓ガラス破損によって抵抗値が連続的に変化する。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には窓ガラス破損により断線しやすく窓ガラス破損によって抵抗値が二値的に変化する。
【0092】
よって、熱硬化型導電インクを用いた場合、抵抗値の変化を測定する回路が必要であり、回路構成の複雑化を招く。これに対し熱反応型導電インクを用いた場合、二値化する抵抗値をモニタするだけでよく回路構成の簡素化を図ることができる。
【0093】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・窓ガラス破損センサ20(窓ガラス破損センサ用フィルム30)は、ガラス板13に直接、接着層31及び導電層33を積層印刷してガラス板13に貼り付けるタイプであってもよい。
【0094】
・ガラス板13は合わせガラスでも強化ガラスでもよい。合わせガラスの場合には、窓ガラス破損による歪みで導電層33の抵抗値が変化しやすい。強化ガラスの場合には、窓ガラス破損によるクラックで導電層33が断線して抵抗値が理論上無限大になる性質を利用する。
【0095】
・自動車用窓に代わり住宅用窓に適用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
12…三角窓、13…ガラス板、20…窓ガラス破損センサ、30…窓ガラス破損センサ用フィルム、31…接着層、32…絶縁層、33…導電層、33a…細線部、32b…電極、33c…電極、34…絶縁層、37…絶縁層、40…プラスチックフィルム、60…判定回路、75…凹凸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラス破損センサ、窓ガラス破損センサ用フィルム、及び窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には導体布線フィルムが開示されており、この導体布線フィルムは種々の大きさの被貼着体に対して適用でき、被貼着体の美観を維持することができ、しかも被貼着体の破壊を検知・霜取り・曇り止めを行なうことができる。具体的には、導体布線フィルムは、一方の主面上に接着剤層を有する樹脂製フィルムと、直線部分及び湾曲部分を有し、直線部分が略平行に位置し、かつ、湾曲部分が直線部分を介して連続して位置するように略S字形状に接着剤層上に布線された導体とを具備し、複数の湾曲部分が構成する2つの湾曲部分列のうちいずれか一つの湾曲部分列における導体の湾曲部分に接続端子が接続されている。導体の外径は10〜100μmであることが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−16860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ガラスがバラバラにならないと窓ガラス破損を検出することができない。つまり、窓ガラス破損を検出するための導体は直径10μm以上の均一な密度を持つ金属線であるため、よく伸び、そのため微小なクラックでは断線しないため窓ガラス破損を検知できない(窓ガラス破損センサとしては低感度である)。換言すると、ガラスがバラバラにならないと検知できないため(検知精度が低いため)、検知精度を向上させるためには大面積にする必要があった。また、金属線を布線して製作しているため、生産コストがアップしてしまう。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる窓ガラス破損センサ、窓ガラス破損センサ用フィルム、及び窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、窓のガラス板の破損を検出するセンサであって、前記ガラス板の表面において印刷によりパターニングされた導電層と、前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、を備え、前記導電層の断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、窓のガラス板に貼り付けられる窓ガラス破損センサ用フィルムであって、印刷物を支持するためのベースフィルムと、前記ベースフィルム上において印刷によりパターニングされ、断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出するための導電層と、前記ベースフィルム上において印刷により形成され、前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、を備えたことを要旨としている。
【0008】
請求項1,2に記載の発明によれば、導電層と接着層とを有し、導電層は、印刷によりパターニングされ、接着層は、印刷により形成され、導電層をガラス板に貼り付ける。そして、導電層の断線または抵抗変化により窓のガラス板の破損が検出される。よって、導体は布線によらずに印刷により形成されており、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる。
【0009】
請求項3の発明では、印刷物支持用ベースフィルム上に印刷にて断線または抵抗変化により窓のガラス板の破損を検出するための導電層をパターニングする導電層パターニング工程と、前記印刷物支持用ベースフィルム上での前記導電層上に印刷にて接着層を形成する接着層形成工程と、を有することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムを製造することができる。
請求項4に記載のように、請求項1に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、前記ガラス板の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向に直交する方向に延設されているとよい。
【0011】
請求項5に記載のように、請求項1に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、渦巻き状に延設されていると、全方向のクラックや割れに対して断線または抵抗変化を生じることができる。
【0012】
請求項6に記載のように、請求項1に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングすると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0013】
請求項7に記載のように、請求項1,4〜6のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0014】
請求項8に記載のように、請求項1,4〜7のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記ガラス板に直接、前記接着層及び前記導電層を積層印刷してもよい。
請求項9に記載のように、請求項1,4〜8のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成することができる。
【0015】
請求項10に記載のように、請求項1,4〜9のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記接着層として両面テープまたは熱硬化型接着剤を用いるとよい。
請求項11に記載のように、請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記導電層は、渦巻き状に延設されていると、全方向のクラックや割れに対して断線または抵抗変化を生じることができる。
【0016】
請求項12に記載のように、請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングすると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0017】
請求項13に記載のように、請求項2,11,12のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていると、ガラス板の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0018】
請求項14に記載のように、請求項2,11〜13のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成することができる。
【0019】
請求項15に記載のように、請求項2,11〜14のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記ベースフィルムは、ガラス板に貼り付け後において剥離されると、高感度な窓ガラス破損センサとすることができる。
【0020】
請求項16に記載のように、請求項3に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法において、前記導電層を、少なくとも有機金属粒子を含む印刷インクを使用して形成するとよい。
【0021】
請求項17に記載のように、請求項16に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法において、前記有機金属粒子として有機銀粒子を用いるとよい。
請求項18に記載のように、請求項1,4〜10のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサにおいて、前記窓は自動車用窓であるとよい。
【0022】
請求項19に記載のように、請求項2,11〜15のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムにおいて、前記窓は自動車用窓であるとよい。
請求項20に記載のように、請求項3,16,17のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法において、前記窓は自動車用窓であるとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本実施形態における乗用車の後部を示す概略斜視図、(b)は(a)のA−A線に対応する左側の三角窓付近の部分断面図。
【図2】第1の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面及び断面を示す図。
【図3】窓ガラス破損センサの電気的構成図。
【図4】図2のB−B線での窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図5】(a)〜(e)はフィルムの製造工程を示す断面図。
【図6】(a),(b)はフィルムのガラス板への装着工程を説明するための断面図。
【図7】窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図8】第1の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図9】第2の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図10】第2の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図11】第2の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図12】第3の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図13】第3の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図14】第4の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図15】第4の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図16】第5の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図17】図16のC−C線での窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図18】第5の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図19】窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図20】第5の実施形態の変形例の窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図21】第6の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【図22】第6の実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルムの平面図。
【図23】(a)〜(f)は第7の実施形態を説明するための導電層の概念図。
【図24】(a)〜(c)は第7の実施形態を説明するための導電層の概念図。
【図25】(a)〜(f)は第7の実施形態を説明するための窓ガラス破損センサ用フィルムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)に示すように、車両11の後部には、左右両側(左側のみ図示)に、自動車用窓としての三角窓12が設けられている。この三角窓12は開閉不能な窓である。また、三角窓12において、一部が破損した場合に全体にひび割れが生じるガラス板13を窓ガラスに使用している。ガラス板13として、強化ガラスを用いている。
【0026】
図1(b)は図1(a)のA−A線に対応する左側の三角窓12付近の部分断面図である。図1(b)に示すように、三角窓12のガラス板13は周縁部において接着剤(ガラス接着剤)14を介して車体(ボデー)15に固着されている。なお、ガラス板13の厚さは3.1mm〜5.0mm程度である。
【0027】
図1(b)に示すように、車体15にはガラス板13の周縁部と対応する箇所で、ガラス板13の周縁部に対して接着剤14よりも内側の位置に、窓ガラス破損センサ20の窓ガラス破損センサ用フィルム30が設けられている。窓ガラス破損センサ20は、自動車用窓のガラス板13の破損を検出するセンサである。窓ガラス破損センサ20を構成する窓ガラス破損センサ用フィルム30は、車両11の内装16によって覆われている。
【0028】
以下、窓ガラス破損センサ20について、詳しく説明する。
図2には窓ガラス破損センサ用フィルム30の平面及び断面を示す。図3は窓ガラス破損センサの電気的構成図である。図4は図2のB−B線での断面図である。図5(a)〜(e)は窓ガラス破損センサ用フィルム30の製造工程を示す断面図である。
【0029】
図1(b)に示すように、窓ガラス破損センサ20は、窓ガラス破損センサ用フィルム30と判定回路60と警報器70を備えている。
窓ガラス破損センサ用フィルム30は、図2に示すように、平面構造としては長方形状をなしている。また、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、図2,4に示すように、断面構造としては、接着層31と絶縁層32と導電層33と絶縁層34の積層体よりなる。絶縁層32,34は樹脂層である。絶縁層32がベース部材として機能し、絶縁層34が表面保護膜として機能する。
【0030】
導電層33はガラス板13の表面において印刷により細線部33aが線状に延びるようにパターニングされている。つまり、薄いフィルム30の内部(積層した複数のシート材の内部)において、細線部33aを有する導電層33が印刷にてパターニングされている。導電層33の細線部33aは、図2においてガラス板13の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向Xに直交する方向に延設され、かつ複数回折り返したパターンとなっている。導電層33の細線部33aの線幅は200μm程度である。
【0031】
導電層33の細線部33aは微細パターンなので断線しやすい。1本の細線部33aの両端には幅広なる電極33b,33cが形成されている。電極33b,33c上において絶縁層34には開口部34a,34bが形成され、開口部34a,34bを通して電極33b,33cが露出している。この露出部が電極取り出し部となっている。接着層31により導電層33がガラス板13に貼り付けられている。
【0032】
図2に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図1(b)に示すようにガラス板13に貼り付けられて、これにより、自動車用窓のガラス板13に電極33b,33cを有する導電層33が延設されている。図2の電極33b,33cには、図1(b)に示すようにコネクタCを介してワイヤハーネス50の一端が接続され、ワイヤハーネス50の他端には判定回路60が接続されている。ガラス板13が割られると、微小なクラックにより、窓ガラス破損センサ用フィルム30の導電層33が断線または抵抗が変化する。この導電層33の断線または抵抗変化によりガラス板13の破損が検出されるようになっている。
【0033】
このように、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に貼り付けられているので、ガラス板13に導電層33を直接印刷する必要がなくなるためコストダウンを図ることができる。また、導電層33の無いガラス板13に対し後付けで取付けることができる。また、細線よりなる導電層33を形成することにより、窓ガラス破損によりガラス板13が完全に粉砕しなくても検知可能となる。
【0034】
図3において、窓ガラス破損センサ用フィルム30の導電層33における第1の端子30aは接地されている。導電層33における第2の端子30bは判定回路60の接続端子60aと電気的に接続されている。判定回路60はマイコン61とトランジスタ62と抵抗63,64を備えている。マイコン61の入力ポートは抵抗64を介して判定回路60の接続端子60aと接続されている。トランジスタ(npnトランジスタ)62は、コレクタが電源端子+Bと接続されるとともに、エミッタが抵抗63を介して接続端子60aと接続されている。トランジスタ62のベースはマイコン61の出力ポートと接続されている。また、判定回路60のマイコン61には警報器70が接続されている。
【0035】
次に、図5,6を用いて窓ガラス破損センサ用フィルム30の製造方法、及びガラス板13への施工方法について説明する。
まず、図5(a)に示すように、印刷物に対する支持体として機能するプラスチックフィルム40を用意する。印刷物を支持するための印刷物支持用ベースフィルムとしてのプラスチックフィルム40は窓ガラス破損センサ用フィルム30と同形・同寸法である。プラスチックフィルム40として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、及びポリアリレート(PAR)から選ばれるいずれか1種の樹脂を用いる。特に、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、及びポリアリレート(PAR)は、耐熱性フィルムを用いるとよりよい。
【0036】
そして、図5(b)に示すように、プラスチックフィルム40の上にスクリーン印刷にて絶縁層34を形成する。その後、加熱する。
さらに、図5(c)に示すように、絶縁層34の上にスクリーン印刷にて導電層33をパターニングする。その後、加熱する。
【0037】
導電層33のパターニング工程において、導電層33を、熱硬化型のポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、ポリイミド系、エポキシ系、及びフェノール系から選ばれるいずれか1種の系の中に分散された銀粒子からなる印刷インクを使用して形成する。これにより、導電層33は、金属粒子をバインダーとしての樹脂で電気的につないで構成される。
【0038】
なお、銀粒子に代わり、カーボン粒子でもよいし、また、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子、パラジウム(Pd)粒子でも、さらに合金の粒子でもよい。あるいは、銀粒子とカーボン粒子の両方からなる印刷インクを使用して導電層33を形成してもよい。
【0039】
引き続き、図5(d)に示すように、絶縁層34の上にスクリーン印刷にて導電層33を覆うように絶縁層32を形成する。その後、加熱する。
そして、図5(e)に示すように、絶縁層32の上にスクリーン印刷にて接着層31を形成する。その後、加熱する。
【0040】
これにより、窓ガラス破損センサ用フィルム30が製造される。
窓ガラス破損センサ用フィルム30は、導電層33とプラスチックフィルム(ベースフィルム)40との間に絶縁層34を有し、当該絶縁層34を、熱硬化型または紫外線硬化型のポリエステル系印刷インク、アクリル系印刷インク、アクリルウレタン系印刷インク、ウレタン系印刷インク、及びポリイミド系印刷インクから選ばれるいずれか1種の印刷インクを使用して形成する。同様に、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、接着層31と導電層33との間に絶縁層32を有し、当該絶縁層32を、熱硬化型または紫外線硬化型のポリエステル系印刷インク、アクリル系印刷インク、アクリルウレタン系印刷インク、ウレタン系印刷インク、及びポリイミド系印刷インクから選ばれるいずれか1種の印刷インクを使用して形成する。
【0041】
導電層33において金属粒子を電気的につなぐバインダーとして、ポリエステル系、アクリル系、アクリルウレタン系、ウレタン系、ポリイミド系を挙げることができ、他にも、絶縁性を有するという観点から次のものを使用することができる。蒸発乾燥型バインダーとしてアクリル樹脂、共重合ポリエステル、ポリウレタン、塩ビ酢ビ共重合体を使用できる。また、熱硬化型バインダーとしてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、共重合ポリエステル、ポリウレタン、塩ビ酢ビ共重合体を使用できる。さらに、UV硬化型インダーとしてアクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂を使用できる。材質では、塩ビ系、エポキシ系、フェノール系、オレフィン系、シリコーン系を使用する。要は、導電層33におけるバインダーとして、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂等を使用すればよい。
【0042】
図5(e)において、プラスチックフィルム40の厚さは50〜数100μm程度であり、接着層31の厚さは数μm程度(例えば6μm)であり、絶縁層32の厚さは数μm程度(例えば3μm)であり、導電層33の厚さは数μm程度(例えば3μm)であり、絶縁層34の厚さは数μm程度(例えば3μm)である。
【0043】
この窓ガラス破損センサ用フィルム30を車両のガラス板13に装着する際には、図6(a)に示すように、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31を接触させて接着層31によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。
【0044】
ここで、接着層31として熱硬化型接着剤を用いる。他にも、接着層31として両面テープを用いてもよく、この両面テープの粘着剤として、アクリル系ノンキャリア粘着剤やゴム系粘着剤やシリコーン系粘着剤やビニール系粘着剤を用いるとよい。
【0045】
その後、プラスチックフィルム40を剥がすと、図6(b)に示すように、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。
このようにして、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、ガラス板13に貼り付ける際にプラスチックフィルム40が剥離することで印刷膜のみが残留する転写タイプである。
【0046】
次に、このように構成した窓ガラス破損センサ20の作用を説明する。
ガラス板13の一部が破損すると、ガラス板13全体にひび(クラック)が入る。この状態を図7に示す。図7は図2のC−C線に対応する部位での断面図である。
【0047】
図7において導電層33の延設方向においてクラックにより導電層33が断線している状況を示す。そして、たとえ、工具を用いてガラス板13を振動させることなく破損させても、窓ガラス破損センサ用フィルム30の貼着部ではひび割れによって細線よりなる導電層33が断線、もしくは、クラックの大きさにより導電層33の一部領域にクラックが入る状況になる。この場合には、導電層33の抵抗が大きくなる。換言すると、導電層33の断線は抵抗値が無限大になり、一部にクラックが入った場合には抵抗値が所定量だけ増大するといえる。
【0048】
図3の判定回路60のマイコン61は一定周期で出力ポートをHレベルにしてトランジスタ62をオンしている。そして、マイコン61は入力ポートのレベルが予め定めた電位よりも高いか否か判定する。窓ガラス破損センサ用フィルム30の導電層33に断線も抵抗値の増大も発生していなければ、マイコン入力ポートはグランドレベルとなる。マイコン61はトランジスタ62をオンしたときに入力ポートがグランドレベルであると、窓ガラス破損が発生しておらず正常であると判定する。
【0049】
一方、窓ガラス破損が発生すると、導電層33が断線または抵抗が大きくなる。マイコン61はトランジスタ62をオンしたときに入力ポートがグランドレベルでないと、窓ガラス破損が発生したと判定する。そして、判定回路60のマイコン61は警報器70にて警報音や警報ランプにより窓ガラス破損(異常発生)を外部に報知する。
【0050】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)図4に示すように、窓ガラス破損センサ20は、ガラス板13の表面において印刷により線状に延びるようにパターニングされた導電層33と、導電層33をガラス板13に貼り付けるための接着層31とを備え、導電層33の断線または抵抗変化によりガラス板13の破損を検出する。図5(e)に示すように、窓ガラス破損センサ用フィルム30は、プラスチックフィルム40上において印刷により線状に延びるようにパターニングされた導電層33と、プラスチックフィルム40上において印刷により形成され、導電層33をガラス板13に貼り付けるための接着層31とを備えている。窓ガラス破損センサ用フィルム30の製造方法として、図5に示すように、ベースフィルムとしてのプラスチックフィルム40上に印刷にて線状に延び断線または抵抗変化により自動車用窓のガラス板13の破損を検出するための導電層33をパターニングする導電層パターニング工程と、プラスチックフィルム40上での導電層33上に印刷にて接着層31を形成する接着層形成工程とを有する。
【0051】
よって、導体は布線によらずに印刷により形成されており、確実に窓ガラス破損を検出することが可能となる。
(2)図2に示すように、導電層33は、ガラス板13の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向に直交する方向Xに延設されているので、窓ガラス破損を検出する上で好ましい。
【0052】
(3)図6(a),(b)に示すように、プラスチックフィルム40は、ガラス板13に貼り付け後において剥離されるので、高感度な窓ガラス破損センサとすることができる。
【0053】
窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31として、ガラス板13に貼り付ける際に加圧して接着する感圧型接着剤を用いても、ガラス板13に貼り付ける際にフィルム30及びガラス板13の少なくとも一方を加熱しかつ加圧することで接着する熱圧着型接着剤を用いても、ガラス板13に貼り付ける際にフィルム30及びガラス板13の少なくとも一方を誘導加熱することで接着する誘導加熱型接着剤を用いても、ガラス板13に貼り付ける際にフィルム30及びガラス板13の少なくとも一方に活性エネルギー線(電子線、X線、紫外線、可視光線、赤外線など)を照射することで硬化し接着する接着剤(UV接着剤等)を用いてもよい。
【0054】
本実施形態の変形例を説明する。図6(b)においては図6(a)のプラスチックフィルム40を剥がして使用したが、図8に示すように、図6(a)のプラスチックフィルム40を剥がすことなくそのまま使用してもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0055】
本実施形態においては、図5(e)に代わり、図9に示す構成としている。また、図4に代わり、図10に示す構成としている。
図9に示すように、ガラス板に装着前の状態において、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30はプラスチックフィルム40の上に絶縁層34が形成され、絶縁層34の上に導電層33がパターニングされるとともに導電層33上を含む絶縁層34上に接着層31が形成されている。
【0056】
この図9に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図10に示すように、車両のガラス板13に装着される。つまり、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31を接触させて接着層31によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。その後、プラスチックフィルム40を剥がすと、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。
【0057】
本実施形態の変形例を説明する。図10においては図9のプラスチックフィルム40を剥がして使用したが、図11に示すように、図9のプラスチックフィルム40を剥がすことなくそのまま使用してもよい。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0058】
本実施形態においては、図5(e)に代わり、図12に示す構成としている。また、図4に代わり、図13に示す構成としている。
図12に示すように、ガラス板に装着前の状態において、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30はプラスチックフィルム40の上に絶縁層34が形成され、絶縁層34の上に導電層33がパターニングされるとともに導電層33上を含む絶縁層34上に絶縁層32が形成されている。一方、プラスチックフィルム40の下面には接着層36が形成されている。
【0059】
この図12に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図13に示すように、車両のガラス板13に装着される。つまり、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層36を接触させて接着層36によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。これにより、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。
【0060】
ここで、図5(e)のフィルム30と、図9のフィルム30と、図12のフィルム30とは、次のような仕様に合わせて使い分ける。
図5(e)に示す絶縁層32,34及びプラスチックフィルム40を具備するフィルム30は、高感度であるとともにガラス板13に装着しやすい。ここで、図4に示すようにプラスチックフィルム40を剥離して取り除くと高感度タイプとして使用でき、図8に示すようにプラスチックフィルム40を剥離せずに残すと低感度タイプとして使用できる。
【0061】
図9に示す絶縁層34及びプラスチックフィルム40を具備するフィルム30は、最高感度であるがガラス板13に装着しにくい。ここで、図10に示すようにプラスチックフィルム40を剥離して取り除くと高感度タイプとして使用でき、図11に示すようにプラスチックフィルム40を剥離せずに残すと低感度タイプとして使用できる。
【0062】
図12に示す絶縁層32,34及びプラスチックフィルム40を具備するフィルム30は、厚いプラスチックフィルム40によりガラス板13で発生したクラックも導電層33に到達しにくくなり、低感度である。一方、図13に示すように、ガラス板13に極めて容易に装着することができる。
【0063】
なお、絶縁層や接着層の膜厚を調整することによってもセンサ感度を調整することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
本実施形態においては、図2に代わり、図14に示す構成としている。
図14において、導電層33はU字状にパターニングされ、その両端に幅広なる電極33b,33cが形成されている。
【0065】
図2、即ち、導電層33として複数回折り返したパターンに対する変形例として、図15に示すように、導電層33として、渦巻き状にパターニングしてもよい。このように、導電層33は、渦巻き状に延設されていると、全方向のクラックや割れに対して断線または抵抗変化を生じることができる。
【0066】
図2のフィルム30と、図14のフィルム30と、図15のフィルム30とは、次のような仕様に合わせて使い分ける。
図14に示す細線部33aが一直線に延びているフィルム30は、窓ガラス破損によるクラックの延びる方向を特定できる場合に向いている。また、ガラス板の一辺と同程度の長さで貼り付けることができる場合に有効である。
【0067】
図2に示す細線部33aが櫛歯状に折り返されているフィルム30は、窓ガラス破損によるクラックの発生場所とクラックの延びる方向を特定できる場合に向いている。また、クラックの度合いを測定する必要がある場合に有効である。
【0068】
図15に示す細線部33aが渦巻き状となっているフィルム30は、窓ガラス破損によるクラックの発生場所を特定できるが、クラックの延びる方向が不明な場合に有効である。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を、第4の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0069】
本実施形態においては、図15に代わり、図16に示す構成としている。図16におけるC−C線での縦断面を図17に示す。図17はガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を装着した後の状態を示し、図18はガラス板13に装着前の窓ガラス破損センサ用フィルム30を示す。
【0070】
図17において接着層31の上には絶縁層(樹脂層)38が形成され、絶縁層38の上面には絶縁層37がパターニングされている。図16で説明するならば、渦巻き状にパターニングされる導電層33の中心に対して所定角度ごとに放射状に延びるようにパターニングされている。図17において絶縁層(樹脂層)37により段差が形成され、絶縁層38上において段差用絶縁層37上を含んで導電層33が渦巻き状にパターニングされている。また、絶縁層38上において導電層33上を含んで絶縁層(樹脂層)39が形成されている。
【0071】
図18に示すガラス板に装着前の状態において、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30はプラスチックフィルム40の上に絶縁層39が形成され、絶縁層39の上に導電層33がパターニングされているとともに導電層33は段差用絶縁層37をまたぐようにパターニングされている。段差用絶縁層37及び導電層33上を含む絶縁層39上に絶縁層38が形成され、その上に接着層31が形成されている。
【0072】
この図18に示す窓ガラス破損センサ用フィルム30が、図17に示すように、車両のガラス板13に装着される。つまり、ガラス板13の一方の面(ガラス面)に対して、窓ガラス破損センサ用フィルム30の接着層31を接触させて接着層31によりガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を貼り付ける。その後、プラスチックフィルム40を剥がすと、窓ガラス破損センサ用フィルム30がガラス板13に装着される。このとき、段差用絶縁層37は図16に示すように、渦巻き状にパターニングされた導電層33の中心に対して放射状に所定角度ごとに設けられている。
【0073】
この段差により窓ガラス破損に伴うクラックによる歪みを導電層33まで増幅させて導電層33で検出する上で好ましい。
以上のごとく、図17や図18に示すように、接着層31と導電層33との間に形成される絶縁層37を有し、当該絶縁層37を、導電層33の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングすると、ガラス板13の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。
【0074】
また、図17,18に示すように、導電層33は、その表面に凹凸75が形成されている。詳しくは、厚さ方向に波打たせることにより凹凸75が形成されている。導電層33の表面に凹凸75を形成することにより、ガラス板13の破損に伴う歪みが増幅されて高感度に窓ガラス破損を検出することができる。図17に代わる導電層33の表面に凹凸75を形成する構成として、図19に示すように、導電層33を二層の積層構造として、1層目の導電層76の上の所定領域に2層目の導電層77を積層することにより導電層76,77よりなる導電層33の表面に凹凸75を形成してもよい。
【0075】
本実施形態の変形例を説明する。図2に示した窓ガラス破損センサ用フィルム30について、図20に示すように、段差用絶縁層37を形成してもよい。このとき、段差用絶縁層37は平行に所定の距離だけ離間して設けられている。
【0076】
なお、図14のフィルム30においても同様に図中、X方向に延びる段差用絶縁層37を形成してもよい。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0077】
本実施形態においては、図4に代わり、図21に示す構成としている。図21は窓ガラス破損センサ用フィルム30の断面図であり、図22は窓ガラス破損センサ用フィルム30の平面図である。図21,22はガラス板13に窓ガラス破損センサ用フィルム30を装着した後の状態を示す。
【0078】
図21に示すように、本実施形態における窓ガラス破損センサ用フィルム30は接着層31の上に印刷による意匠層80が形成されている(印刷により形成された意匠層80を有している)。意匠層80の上に絶縁層32が形成され、絶縁層32の上に導電層33がパターニングされるとともに導電層33上を含む絶縁層32上に絶縁層34が形成されている。
【0079】
図21の意匠層80において図22に示すように意匠印刷物が描かれている。図22では、四角の枠と、その枠内に「センサ動作中」と印刷されている。
よって、車外から図1における車両11の後部の三角窓12を見ると、図22に示すように導電層33を遮蔽できるとともにガラス板13において四角枠内の「センサ動作中」が見えるので、犯罪の予防を図ることができる。
【0080】
意匠層80には文字や絵や図柄や模様等をパターニングすればよく、これにより意匠性の向上や目視による防犯効果向上の機能を付加することができる。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態を、前記各実施形態との相違点を中心に説明する。
【0081】
上記各実施形態ではフィルム30の製造工程において樹脂の中に分散された銀粒子またはカーボン粒子もしくはその両方からなる印刷インクを使用して導電層33を形成したが、これに代わり、本実施形態では次のようにしている。導電層33を、少なくとも有機金属粒子を含む印刷インクを使用して形成する。有機金属粒子として有機銀粒子を用いるのが好ましい。具体的には、例えば、Ag、Au、Pt、Ni、Cu、Pd及びAlから選ばれるいずれか1種の金属についての酸化金属粒子と、Ag、Au、Pt、Ni、Cu、Pd及びAlから選ばれるいずれか1種の金属についての有機金属粒子からなる印刷インクを使用して形成する。より具体的には、熱反応型の酸化銀粒子と有機銀粒子からなる印刷インクを使用して導電層33を形成する。これにより、導電層33は、金属粒子(粒径が数nm〜数十μm程度)を直接溶着にて電気的につないで構成されている。
【0082】
以下、通常の導電インクと、熱反応型の導電インクを用いた場合を比較して説明する。
通常の導電インクは、熱硬化型の導電インクであり、樹脂中に銀粒子が分散している。このインクではインク塗布後の加熱後においては、図23(a)に示すようにバインダーとしての樹脂中に金属粒子が分散しており、金属粒子同士が接触により導通している。
【0083】
これに対し、熱反応型の導電インクは、塗布時には金属ではないが焼付して金属となり、脆い性質を有する。つまり、インク塗布後の加熱後においては、図24(a)に示すように金属粒子同士が熱によって溶着することによって成膜されており、金属粒子が樹脂のない状態でつながっている(金属粒子同士が熱によって溶着することで接続されている)。
【0084】
よって、図25(a)に示す状態から、図25(b)に示すようにガラス板13が粉砕されたとき、及び、図25(c),(d),(e),(e),(f)に示すようにクラックが発生した場合には、次のようになる。
【0085】
(A);図25(b)に示すようにガラス板13が破損により各片に脱離した場合においては導電層33の細線部33aが破断するため電気経路としてはオープン状態となる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(b)に示すように金属粒子・バインダー共に破断し、オープン状態となる。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0086】
(B);図25(c)に示すように大きなクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が大きく導電層33の細線部33aが破断し、電気経路としてはオープン状態となる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(c)に示すように金属粒子・バインダー共に破断し、オープン状態となる。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0087】
(C);図25(d)に示すように中程度のクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が中程度に大きく導電層33の細線部33aが破断し、電気経路としてはオープン状態となる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(d)に示すようにバインダーは破断しないで金属粒子の接続が離れ、高抵抗化する。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0088】
(D);図25(e)に示すように小さなクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が小さく導電層33の一部までクラックが到達して導電層33の細線部33aが高抵抗化する。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(e)に示すようにバインダーは破断しないで金属粒子の接触面積が減少し、高抵抗化する。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(b)に示すように金属粒子間が破断し、オープン状態となる。
【0089】
(E);図25(f)に示すように微小なクラックがガラス板13に発生した場合においてはガラス板表面のクラック幅が微小であり導電層33までクラックが到達していない。これにより導電層33の細線部33aにおける抵抗が大きくなる。このとき、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には図23(f)に示すようにバインダーは破断しないで金属粒子の接続もほとんど影響を受けずに僅かな抵抗値変化が生じる。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には図24(c)に示すように金属成分の延伸率内のため金属(粒子間)は破断せずに抵抗値の変化が生じる。
【0090】
このようにして、導電層33のパターンでの抵抗値について、図25(a)に示すようにガラス板13に装着した当初においては所定値(例えば抵抗値「10」)を有しているが、上述の(A),(B)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合でも、熱反応型の導電インクを使用した場合でも、導電層33のパターンでの抵抗値は無限大となる。また、上述の(C)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「1000」を示し、熱反応型の導電インクを使用した場合には無限大となる。さらに、上述の(D)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「100」を示し、熱反応型の導電インクを使用した場合には無限大となる。さらには、上述の(E)においては、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「20」を示し、熱反応型の導電インクを使用した場合には所定の値、例えば抵抗値「15」となる。
【0091】
このようにして、普通の熱硬化型導電インクを使用した場合に窓ガラス破損により延伸しやすく窓ガラス破損によって抵抗値が連続的に変化する。一方、熱反応型の導電インクを使用した場合には窓ガラス破損により断線しやすく窓ガラス破損によって抵抗値が二値的に変化する。
【0092】
よって、熱硬化型導電インクを用いた場合、抵抗値の変化を測定する回路が必要であり、回路構成の複雑化を招く。これに対し熱反応型導電インクを用いた場合、二値化する抵抗値をモニタするだけでよく回路構成の簡素化を図ることができる。
【0093】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・窓ガラス破損センサ20(窓ガラス破損センサ用フィルム30)は、ガラス板13に直接、接着層31及び導電層33を積層印刷してガラス板13に貼り付けるタイプであってもよい。
【0094】
・ガラス板13は合わせガラスでも強化ガラスでもよい。合わせガラスの場合には、窓ガラス破損による歪みで導電層33の抵抗値が変化しやすい。強化ガラスの場合には、窓ガラス破損によるクラックで導電層33が断線して抵抗値が理論上無限大になる性質を利用する。
【0095】
・自動車用窓に代わり住宅用窓に適用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
12…三角窓、13…ガラス板、20…窓ガラス破損センサ、30…窓ガラス破損センサ用フィルム、31…接着層、32…絶縁層、33…導電層、33a…細線部、32b…電極、33c…電極、34…絶縁層、37…絶縁層、40…プラスチックフィルム、60…判定回路、75…凹凸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓のガラス板の破損を検出するセンサであって、
前記ガラス板の表面において印刷によりパターニングされた導電層と、
前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、
を備え、
前記導電層の断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出することを特徴とする窓ガラス破損センサ。
【請求項2】
窓のガラス板に貼り付けられる窓ガラス破損センサ用フィルムであって、
印刷物を支持するためのベースフィルムと、
前記ベースフィルム上において印刷によりパターニングされ、断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出するための導電層と、
前記ベースフィルム上において印刷により形成され、前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、
を備えたことを特徴とする窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項3】
印刷物支持用ベースフィルム上に印刷にて断線または抵抗変化により窓のガラス板の破損を検出するための導電層をパターニングする導電層パターニング工程と、
前記印刷物支持用ベースフィルム上での前記導電層上に印刷にて接着層を形成する接着層形成工程と、
を有することを特徴とする窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記導電層は、前記ガラス板の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向に直交する方向に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項5】
前記導電層は、渦巻き状に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項6】
前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングしたことを特徴とする請求項1に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項7】
前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1,4〜6のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項8】
前記ガラス板に直接、前記接着層及び前記導電層を積層印刷したことを特徴とする請求項1,4〜7のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項9】
前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成したことを特徴とする請求項1,4〜8のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項10】
前記接着層として両面テープまたは熱硬化型接着剤を用いたことを特徴とする請求項1,4〜9のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項11】
前記導電層は、渦巻き状に延設されていることを特徴とする請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項12】
前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングしたことを特徴とする請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項13】
前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2,11,12のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項14】
前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成したことを特徴とする請求項2,11〜13のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項15】
前記ベースフィルムは、ガラス板に貼り付け後において剥離されることを特徴とする請求項2,11〜14のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項16】
前記導電層を、少なくとも有機金属粒子を含む印刷インクを使用して形成することを特徴とする請求項3に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記有機金属粒子として有機銀粒子を用いたことを特徴とする請求項16に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記窓は自動車用窓であることを特徴とする請求項1,4〜10のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項19】
前記窓は自動車用窓であることを特徴とする請求項2,11〜15のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項20】
前記窓は自動車用窓であることを特徴とする請求項3,16,17のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【請求項1】
窓のガラス板の破損を検出するセンサであって、
前記ガラス板の表面において印刷によりパターニングされた導電層と、
前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、
を備え、
前記導電層の断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出することを特徴とする窓ガラス破損センサ。
【請求項2】
窓のガラス板に貼り付けられる窓ガラス破損センサ用フィルムであって、
印刷物を支持するためのベースフィルムと、
前記ベースフィルム上において印刷によりパターニングされ、断線または抵抗変化により前記ガラス板の破損を検出するための導電層と、
前記ベースフィルム上において印刷により形成され、前記導電層を前記ガラス板に貼り付けるための接着層と、
を備えたことを特徴とする窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項3】
印刷物支持用ベースフィルム上に印刷にて断線または抵抗変化により窓のガラス板の破損を検出するための導電層をパターニングする導電層パターニング工程と、
前記印刷物支持用ベースフィルム上での前記導電層上に印刷にて接着層を形成する接着層形成工程と、
を有することを特徴とする窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記導電層は、前記ガラス板の破損時に発生する割れの方向またはクラックの延びる方向に直交する方向に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項5】
前記導電層は、渦巻き状に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項6】
前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングしたことを特徴とする請求項1に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項7】
前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1,4〜6のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項8】
前記ガラス板に直接、前記接着層及び前記導電層を積層印刷したことを特徴とする請求項1,4〜7のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項9】
前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成したことを特徴とする請求項1,4〜8のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項10】
前記接着層として両面テープまたは熱硬化型接着剤を用いたことを特徴とする請求項1,4〜9のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項11】
前記導電層は、渦巻き状に延設されていることを特徴とする請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項12】
前記接着層と前記導電層との間に形成される絶縁層を有し、当該絶縁層を、前記導電層の延設方向と直交する方向に延びるようにパターニングしたことを特徴とする請求項2に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項13】
前記導電層は、その表面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2,11,12のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項14】
前記導電層は、金属粒子を直接溶着にて電気的につないで構成したことを特徴とする請求項2,11〜13のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項15】
前記ベースフィルムは、ガラス板に貼り付け後において剥離されることを特徴とする請求項2,11〜14のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項16】
前記導電層を、少なくとも有機金属粒子を含む印刷インクを使用して形成することを特徴とする請求項3に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記有機金属粒子として有機銀粒子を用いたことを特徴とする請求項16に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記窓は自動車用窓であることを特徴とする請求項1,4〜10のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ。
【請求項19】
前記窓は自動車用窓であることを特徴とする請求項2,11〜15のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルム。
【請求項20】
前記窓は自動車用窓であることを特徴とする請求項3,16,17のいずれか1項に記載の窓ガラス破損センサ用フィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−287126(P2010−287126A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141546(P2009−141546)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】
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