説明

窓シャッター及び窓シャッター付きサッシ

【課題】シャッターボックスを利用することにより、吸気ファン等を用いることなく、シャッターの使用、不使用にかかわらず常に効率的に換気をすることができ、さらには壁躯体に換気のための穴を形成する必要のないシャッター。
【解決手段】建物のサッシの上部に配置されたシャッターボックス19の屋外側に換気口21を形成し、前記シャッターボックス19の背面側に外気を室内に導入し及び/又は屋内空気を大気に排出する換気装置23を設け、前記外気導入口と換気装置23との間で、かつシャッター巻き取り軸18の上方に空気の流路Pを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の屋外側に配置されるシャッターを利用して換気する窓シャッター及び窓シャッター付きサッシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、建築材料の機能や施工技術が向上し、密閉性がよくなり、障子を閉めると、室内の空気は大気と遮断される。このため、冬は暖房装置により暖めた室内の暖気が外に逃げず、また夏は冷房装置により低温となった室内空気が外に逃げないので、暖冷房の効率が良くなった。ところが、その半面、厨房でガスを使ったり、暖房のために石油やガスのストーブを使用したときは、不完全燃焼による一酸化炭素が空気中に拡散することになり、これが少しずつ増えていくと、非常に危険な状態となる。そのほか、住宅の高気密化や化学物質を放散する建材や内装材の使用等により、新築・改築後の住宅や集合住宅に居住することで、居住者に様々な体調不良が起きることがある。これらの症状はシックハウス症候群とよばれ、厚生労働省から、ホルムアルデヒド、クロルピリホスなど13種類の化学物質が濃度指針値のある物質として示されている。室内空気の汚染源には、これらの人体に影響を与える有機化合物のほかにも、ダニやかび、微生物等が考えられている。
【0003】
そこで、現在は建築基準法によって住宅内の空気は24時間換気するために換気装置を設置することが義務づけられている。例えば、内装の仕上げ等にホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない場合であっても、家具等からもホルムアルデヒドが発散されるため、居室を有する全ての建築物に機械換気設備の設置が原則義務付けられている。また、天井裏等は、下地材をホルムアルデヒドの発散の少ない建築材料とするか、機械換気設備を天井裏等も換気できる構造とする必要があるなど、具体的かつ詳細に規定されている。
【0004】
以上のことから、換気は安全や衛生の上から重要なことではあるが、通常は、特許文献1に示されるように、換気のために屋内外の空気を導入、排出するための換気口は、主に建物の壁躯体の比較的低い位置に設けられていた。このため、換気時には室内の一部を覗くことができるという問題があり、また、構造が複雑であり、室内の換気口のある場所には建具などを置くことができない、内壁の意匠性が損なわれる、壁躯体に形成されるので、換気口は必要最小限の大きさにせざるを得ない、などの問題があった。
【0005】
これに関連するものとして、サッシと一体的に設けられたシャッターボックスを利用して外気を室内に導入する吸気構造が提案されている(特許文献2参照)。シャッターボックスは建物の壁躯体に形成されたサッシ取り付け用の開口部に隣接して設けられているので、初めからこの開口部を大きめに形成しておけばよく、わざわざ壁躯体に専用の開口部を形成する必要がない、シャッターサッシの下側に吸気口を開口しているので、屋外から室内を覗くことはできず、防犯上も好ましいほか、雨水対策も必要ない、等の長所を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−26892号公報
【特許文献2】特開2009−84924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の技術は、基本的に換気を目的としたものではなく、シャッタースラットと障子との間の空間部や吸気のためのファンを必要とする構成である。したがって、上記技術を換気に適用しようとしても、シャッターが巻き取られたときは、シャッターボックスの底部に設けられたシャッタースラットのガイド用開口部がシャッタースラットの下端の部材により閉じられてしまうので、空気の流通が遮断され、換気することができない。また、シャッター使用時にはシャッターボックス内の空間は大きくなるが、吸気用の開口部はサッシの下枠に設けられているから、これを換気用に利用しようとすれば、屋内の暖気を大気に放出するときは屋内暖気をファンなどの強制的手段によりシャッタースラットと障子との間の空間部の上部から下部に流れるようにしなければならず、あまり効率的とはいえない。
【0008】
本発明は上記問題を解消し、シャッターボックスを利用することにより、吸気ファン等を用いることなく、シャッターの使用、不使用にかかわらず常に効率的に換気をすることができ、さらには壁部に換気のための穴を形成する必要のない窓シャッター及び窓シャッター付きサッシを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、建物のサッシ枠の上部に配置されたシャッターボックスの屋外側に換気口を形成し、前記シャッターボックスの背面側に外気を室内に導入し及び/又は屋内空気を大気に排出する換気装置を設け、前記換気口と換気装置との間で、かつシャッター巻取り軸の上方に空気の流路を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記換気装置は、屋内側から開閉操作可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記換気装置が、前記シャッターボックスと一体的に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2において、前記換気装置が、前記シャッターボックスの室内側の壁部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記請求項1〜4のいずれかに記載の窓シャッターがサッシに一体又は別体に取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、換気口をシャッターボックスの屋外側に形成したので、シャッターボックスを利用することにより、吸気ファン等を用いることなく、シャッターの使用、不使用にかかわらず常に効率的に換気をすることができ、シャッターを閉じた状態であっても換気を行うことができる。また、シャッターが巻き上げられた状態であっても、換気できる。このように、シャッターの開閉に関係なく、窓に施錠したまま室内の換気を行うことができ、防犯性に優れる。
【0015】
また、屋内側に設けた換気装置は、サッシの上方、つまり屋内の比較的高い位置に設けられるから、家具等を設置する場合の邪魔にならず、自由なレイアウトが可能になり、換気のための開口面積も大きくとることができる。
【0016】
さらに、換気口も換気装置も従来の換気框に比べて開口面積を大きくとることができるので、単位時間当たりの換気流量が大きく、換気効率を向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、換気装置は屋内側から開閉操作可能としたので、いつでも必要なときに屋内側から換気操作することができ、また換気するかどうかの切り替えも行うことができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、換気装置が、シャッターボックスと一体的に形成されているから、意匠を大きく変えずに済み、壁部に開口部を形成し、その室内側に換気装置23を取り付けること以外に特別の工事を必要としない。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、換気装置が、前記シャッターボックスの室内側の壁部に設けられているから、躯体には穴を設けるが、室外側には従来のような換気口を設ける必要がなく意匠性に優れる。また、室内壁の室内側に設ける換気口は従来と同じものを使用することもできる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、窓シャッターがサッシに一体又は別体に取り付けられるので、いろいろな構成のサッシ構造に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る窓シャッター付きサッシの内観正面図
【図2】図1のX−X線上の拡大断面図
【図3】図1のY−Y線上の拡大断面図
【図4】換気装置納まりの他の実施形態の内観正面図
【図5】換気装置納まりのさらに他の実施形態の内観正面図
【図6】他の実施形態のシャッターサッシの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
図1は建物に設けられた窓シャッター付きサッシの内観正面図、図2は図1のX−X線上の断面図であり、図3は図1のY−Y線上の断面図である。これらの図において符号1は壁部を示す。2は内装材、3は外装材である。壁部1には開口部4が形成され、開口部4にはサッシ上枠5とサッシ下枠6と左右の縦枠7とからなるサッシ枠8が取り付けられている。サッシ枠8は半外付け納まりで、サッシ枠8の内側には障子10と網戸11が摺動自在に配置されている。
【0023】
次に、上記サッシ枠8の屋外側にはサッシ枠8と一体的に窓シャッター12が取り付けられている。すなわち、両側の縦枠7の間にサッシ上枠5とサッシ下枠6とを取り付けるとともに、縦枠7の上部を延長形成し、この延長部7a間にシャッター上枠13とサッシ上枠5を一体的に取り付け、さらに縦枠7の屋外側に案内レール20とシャッター下枠27を設けることにより、全体が窓シャッター付きサッシとして構成されている。そして、サッシ枠8の上部に形成されたシャッターボックス19はシャッター上枠13とサッシ上枠5と縦枠7aと前板14と背面板15とから構成されている。前板14はシャッター上枠13の前端から延長して下方に垂下形成されている。そして、窓シャッター付きサッシは、その周縁に形成された取付フィン9を開口部4の周縁材に止着することにより固定されている。
【0024】
窓シャッター12のシャッターボックス19の内部にはシャッター17の巻き取り軸18が設けられ、巻き取り軸18にはシャッター17が巻き取られて収納されている。また、縦枠7にはシャッター17の案内レール20が一体的に取り付けられ、シャッター17を構成する金属製スラット17aが摺動可能となっている
【0025】
なお、壁部1に形成された開口部4の上端は、シャッターボックス19の背面が屋内側に露出する程度に形成されている。
【0026】
次に、シャッターボックス19の屋外側の前板14はシャッター17の案内レール20よりも屋外側に突出しており、シャッターボックス19の前板14の下端部には、シャッター17の案内レール20の上端部に向けて屈曲する前部底板16が形成されている。この前部底板16には換気口21が形成されている。この換気口21は前部底板16の全長に沿って複数個設けてもよく、前部底板16の一部に形成してもよい。換気口21にはフィルターを取り付けてもよい。
【0027】
なお、本実施形態では前部底板14に換気口を形成しているが、前板の屋外側に面する部位に換気口を形成してもよい。この場合、換気口には雨水の浸入を塞ぐ覆いを設けるのが好ましい。
【0028】
また、シャッターボックス19の背面側には背面板15が配置され、背面板15には開口部22が形成されている。この開口部22は室内側に開口し、開口部22には換気装置23が一体的に設けられている。換気装置23は、方形な窓枠形の装置本体23aに開閉蓋24を備えた開閉窓を設けている。開閉蓋24の取っ手24aを持って屋内側に引き出し操作することにより装置本体を開放し、開閉蓋24を装置本体23aに押し込むことで換気装置23を閉じることができる。開閉は室内外方向に作動する方式に限定されない。例えば、左右にスライドする開閉窓でもよく、また換気框のように作動板が開閉する形式のものでもよい。
【0029】
そして、換気口21とシャッター巻取り軸18の上方と換気装置23との間には空気の流路Pが形成されている。換気口21も換気装置23も従来の換気框に比べて開口面積が大きいので、単位時間当たりの換気流量は大きいから、換気効率が向上する。また、換気框は内外障子のいずれかにしか設けられないのに対し、換気口21、換気装置23はいずれも開口部4の全幅に沿って長尺状に形成することができる。
【0030】
なお、シャッター下枠27には雨水を排水するための排水孔(図示せず)が形成されている。また、シャッター上枠13は壁部1から水平に突出し、シャッター17の手前まで延びている。これにより、サッシ上枠5の先端とシャッターボックス19の前板14との間にはシャッター17が通る程度の隙間が形成されている。
【0031】
したがって、上記構成のシャッター17によれば、サッシ枠8の障子10を閉じ、シャッター17を下ろして閉じ状態にして換気装置23を開放すると、屋内と屋外とが空気流路Pを介して連通するから、屋内側と屋外側の差圧により、高圧側から低圧側に空気が流れる。屋内側が屋外側に対して負圧になれば外気が屋内に流れ込み、逆の場合は屋内空気が大気に流れ出す。このようにして換気が促される。
【0032】
シャッター17を巻き上げて開放状態にした場合でも、換気口21とシャッター巻き取り軸18の上方と換気装置23との間には換気のための空気の流路Pが形成されているから、障子10が閉じられていても換気が滞ることはない。
【0033】
上記構成によれば、シャッターボックス19を利用することにより、吸気ファン等を用いることなく、シャッター17の使用、不使用にかかわらず常に効率的に換気をすることができ、さらには壁部1に換気のための穴を形成する必要のないシャッター及びシャッター付きサッシを提供することができる。
【0034】
また、シャッターボックスとサッシ枠とは一体に形成されているから、意匠を大きく変えずに済み、壁部1に開口部を形成し、その室内側に換気装置23を取り付けること以外に特別の工事を必要としない。
【0035】
さらに、屋内側に設けた換気装置は、サッシの上方、つまり屋内の比較的高い位置に設けられるから、家具等を設置する場合の邪魔にならず、自由なレイアウトが可能になり、換気のための開口面積も大きくとることができる。
【0036】
なお、窓シャッター12とサッシ枠8とは一体構成のものに限定されない。サッシ枠とは別に窓シャッターをサッシ枠と一体的に組み付ける構成であってもよい。また、シャッターボックスの裏側の換気装置の納まりとしては、図1〜図3に示したものに限定されない。例えば、図4に示すように、サッシ枠8と一体的に取り付けられた窓シャッター12の背面板15の一部に換気口28を設ける構造でもよい。また、図5に示されるように、背面板15の左右2つの換気口29、29に換気扇30を設ける構成であってもよい。後述の実施形態2においても同様である。なお、図5の形態において、左右2つの換気口29、29のうち、一方の換気口は吸気、他方の換気口は排気とすることもできる。
[実施形態2]
【0037】
次に、図6は、換気のための空気の流路Pの別の形態の窓シャッター付きサッシを示したもので、同図において、窓シャッター12のシャッターボックス19と壁部1の構造は図1のものと異なっているが、他は同じである。したがって、図1と同じ符号は同じ部材を示すものとする。なお、この窓シャッター付きサッシの横断面図は図2とほとんど同じなので省略する。
【0038】
すなわち、壁部1には開口部4が形成され、開口部4にはサッシ上枠5とサッシ下枠6と左右の縦枠7とからなる半外付け納まりのサッシ枠8が取り付けられている。
【0039】
サッシ枠8の屋外側上部にはサッシ枠8と一体的に窓シャッター12が取り付けられ、全体が窓シャッター付きサッシとして構成されている。
【0040】
なお、壁部1の開口部4はサッシ枠8の上端までとなっている。
【0041】
窓シャッター12のシャッターボックス19の内部にはシャッター17の巻き取り軸18が設けられ、巻き取り軸18にはシャッター17が巻き取られて収納されている。また、縦枠7aにはシャッター17の案内レール20が形成され、シャッター17を構成する金属製スラット17aが摺動可能となっている。
【0042】
ところで、シャッターボックス19の屋外側の前板14のシャッター17の案内レール20に対して突出する出量は小さく、出っ張り感がない分だけ意匠的には好ましい外観を呈している。その半面、前板14の下部とシャッター17との間に十分な大きさの換気口を形成するのは困難である。このため、換気口21は前板14の上部に形成されている。換気口21は図3の楕円枠に示されたように、多数のスリット25を平行に並べた構造で、前板14の強度があまり損なわれないように形成されている。
【0043】
また、シャッターボックス19の背面板15は壁部1の屋外側の面に当接している。
【0044】
次に、背面板15の上部と壁部1には開口部26が連続的に形成されている。そして、開口部26の屋内側には開閉蓋24の操作により開閉可能な換気装置23が取り付けられている。これにより、シャッターボックス19の前板14とシャッター巻き取り軸18の上方と換気装置23との間には空気の流路Pが形成されている。
【0045】
上記構成のシャッター17によれば、開閉蓋24を引き出して装置本体を開放すると、屋内と屋外とが空気流路Pを介して連通するから、屋内側と屋外側の差圧により、高圧側から低圧側に空気が流れる。したがって、屋内側が屋外側に対して負圧になれば外気が屋内に流れ込み、逆の場合は屋内空気が大気に流れ出す。このようにして換気が促される。
【0046】
なお、サッシ枠8の障子10を閉じ、シャッター17を下ろして閉じ状態にしても、シャッター17を巻き上げて開放状態にしても、換気口21とシャッター巻き取り軸18の上方と換気装置23との間には換気のための空気の流路Pが形成されているから、換気が滞ることはない。
【0047】
なお、この形態の場合も、窓シャッター12とサッシ枠8とは一体構成のものに限定されない。
【符号の説明】
【0048】
P 空気流路
8 サッシ枠
17 シャッター
18 巻き取り軸
19 シャッターボックス
21 換気口
22、26 開口部
23 換気装置
24 開閉蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のサッシ枠の上部に配置されたシャッターボックスの屋外側に換気口を形成し、前記シャッターボックスの背面側に外気を室内に導入し及び/又は屋内空気を大気に排出する換気装置を設け、前記換気口と換気装置との間で、かつシャッター巻き取り軸の上方に空気の流路を形成したことを特徴とする窓シャッター。
【請求項2】
前記換気装置は、屋内側から開閉可能な開閉窓を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の窓シャッター。
【請求項3】
前記換気装置が、前記シャッターボックスと一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の窓シャッター。
【請求項4】
前記換気装置が、前記シャッターボックスの室内側の壁部に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の窓シャッター。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の窓シャッターがサッシ枠に一体又は別体に取り付けられたことを特徴とするシャッター付きサッシ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−127331(P2011−127331A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286687(P2009−286687)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】