説明

窓構造

【課題】 窓枠内を開閉する障子の錠本体と錠受けからなる錠装置を外観上視認できないものとして見栄えよく意匠性の高い窓構造を実現する窓構造を提供する。
【解決手段】 窓枠1,4と障子2bからなり、前記障子2bを摺動させるレールを上下に備えた窓構造であって、前記レールの移動手段を備え、前記レールを障子パネル面に略垂直な方向に移動した後に、前記障子2bを前記レールに平行な方向に移動し開閉する窓構造において、前記窓枠1,4に前記錠本体が備わり、前記障子2bに前記錠受けが備わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置を外側から見えなくして意匠性を高め、錠操作と窓の開閉のための操作を1回の操作で可能とする窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い窓の障子パネル(単にパネルともいう)の錠装置は、2枚の障子間の召し合わせ框の一方に操作用ハンドルを具備した錠本体を、他方に錠受けを設けて構成される。また、押し開いて開閉する窓の障子パネルの錠装置は、障子の縦框に操作用ハンドルを具備した錠本体を、相対する縦枠に錠受けを設けて構成される。このような窓構造は、錠装置が室外から視認できるため、見栄えが悪いものである。また、防犯上錠装置が外から視認できない方が望ましい。ここで、パネルとは一般的にガラス板などの採光性を有する板状部材の周辺を框で囲まれたものをいう。
【0003】
サッシ用錠装置が特許文献1に記載されている。この錠装置は、召し合わせ框に備わる係止アームをたて骨に備わる錠突起に当接させて錠するものである。しかし、特許文献1のサッシ用錠装置は、錠装置自体が室外側から視認可能であり、特に召し合わせ框のように窓の中央部に錠装置があると見栄えが悪いものである。
【0004】
窓障子の制御装置が特許文献2に記載されている。この窓障子は、縦框に取付けられたラッチと、縦枠に備わるラッチ受けで錠手段を構成する。このラッチは縦框内に形成され、ラッチ受けは縦枠内に形成されるため、室外側から視認できない。しかし、特許文献2の窓障子の制御装置に備わる錠手段は、開閉する窓の縦框にラッチを形成するため、縦框はラッチを収容できる程度の大きさが必要となる。したがって、框の大きさに制約が伴うため、デザイン的に優れたパネルを形成することができない。また、ラッチを縦框内に形成するため、その分窓障子の重量が大きくなり、パネルの開閉動作に大きな力を有する。特に、特許文献2のような伝動手段により2個のラッチを連結するような複雑な機構を縦框内に形成することは、このような問題を顕著にする。
【0005】
【特許文献1】特開平5−214853号公報
【特許文献2】特開平5−18153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、窓枠内を開閉する障子の錠本体と錠受けからなる錠装置を外観上視認できないものとして見栄えよく意匠性の高い窓構造を実現する窓構造の提供を目的とする。特に窓を閉めた状態で隣り合う障子が同一平面上に形成される窓構造に適している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、窓枠と障子からなり、前記障子を摺動させるレールを上下に備えた窓構造であって、前記レールの移動手段を備え、前記レールを障子パネル面に略垂直な方向に移動した後に、前記障子を前記レールに平行な方向に移動し開閉する窓構造において、前記窓枠に前記錠本体が備わり、前記障子に前記錠受けが備わることを特徴とする窓構造を提供する。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記錠装置は前記窓枠に複数個備わり、各錠装置は連動棒で連結されることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記錠装置は前記窓枠の2辺以上に備わることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれかの発明において、前記錠装置と連動して前記レールが障子面に対して垂直方向に移動可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、窓枠に錠本体が備わり、障子に錠受けが備わるため、錠本体と錠受けからなる錠装置を外部から視認しにくくできる。特に窓枠の可動部分は障子のような可動部分がないために錠装置の設置場所に自由度が得られる。このため、外観上見栄えのよい窓構造を得ることができる。また、複雑な機構を有する錠本体が窓枠に備わるため、障子(特に框部分)に錠本体を備えるスペースを確保する必要がなく、障子の構成が簡単なものとなり、障子のデザイン性の向上を図ることができる。また、障子に錠本体の重量が加重されないため、障子の開閉操作を小さな力で行うことができる。ここで、窓枠とは建物の壁材の開口部に設けられ、開口部周縁に接するものをいうが、接していなくても、開口部中間に設けた柱であるたて骨を含むものとする。また、発明の効果としてさらに、錠装置を枠内に収めることでより意匠性を上げ、防犯性も上げることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、窓枠に複数個備わる錠本体と錠受けからなる錠装置が連動棒で互いに連結されるため、錠装置の開閉錠操作を1回の操作で行うことができる。したがって、迅速に錠装置の操作を行うことができ、操作性が向上する。また、錠装置や連動棒の少なくとも一方を枠内に収めることでより意匠性を上げ、防犯性も上げることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、錠装置が窓枠の2辺以上に備わるため、1回の操作で窓枠の2辺以上に備わる複数個の錠装置の開閉錠操作を行うことができ、錠装置の操作性が高まる。また、防犯性能も上がる。
【0014】
請求項4の発明によれば、開閉動作する障子を摺動させるために、上下の窓枠に備わるレールがその障子とともに錠装置の開閉錠操作と連動して障子面に対して垂直方向に移動する。このため、錠装置の操作と障子の開閉のための操作を1回の操作で行うことができ、さらに操作性を高めることができる。本発明では、ハンドルなどの操作部分が1つで済むために更に外観上見栄えがよく、意匠性が上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る窓構造の概略図である。
(A)は窓枠と障子の外観を示す。なお、(A)で示す窓枠や障子の形状、構造は本発明が適用される実施例の一例を示し、この実施例に限定されるものではない。建物外壁Wの開口部Kに窓枠1が取付けられる。この窓枠1内に障子2が取付けられる(図では2枚の障子2a,2b)。この障子2は窓枠1に固定されたはめ殺しの固定障子2aと引き違いスライド式の可動障子2bで構成される。窓枠1は、4辺の枠材と障子2a、2b間に配されるたて骨4で構成される。可動障子2bはガラス板Gとその4側周縁に備わる框3で構成される。框3は上下の上框3a、下框3b、右の縦框3c及び左の召し合わせ框3dで構成される。
【0016】
(B)は可動障子外周の枠の内部の概略図である。たて骨4には操作部5及び2つの錠装置6aが備わり、操作部5と錠装置6aは連動棒7で連結される。連動棒7は、たて骨4、上窓枠1a、下窓枠1b及び縦窓枠1cに配設され、それぞれ窓枠の角部で板バネ8により連結される。縦窓枠1cにもそれぞれ連動枠7で連結された2個の錠装置6bが備わる。操作部5は、その上下端が連動棒7に連結される。連動棒7は、框3の4辺を周回するように一連一体としてコーナー部における板バネ8を介して連結されている。このために操作部5から見て、上方に連動棒7を押し上げると下方から連動棒7で押し上げられるので、操作部5に作用させる力が小さくても後述する錠装置の開閉操作、レールの前後操作が楽にできる。
【0017】
このように、各連動棒7が板バネ8により連結されるため、例えば操作部5を上方に移動させたときに、たて骨4に備わる錠装置6aもこれに伴いたて骨4内を上方に移動する。上窓枠1a内の連動棒7は縦窓枠1c側(図の右側)に移動し、これに伴い縦窓枠1c内の錠装置6bは下方に移動する。下窓枠1b内の連動棒7はたて骨4側(図の左側)に移動する。操作部5を下方に移動すると、各連動棒7はこの逆に移動する。このような構成により、操作部5を操作するだけで、窓枠1内の全ての連動棒7を操作することができ、連動棒7と連動して動作する錠装置6a,6bも操作部5の操作で動作させることができる。したがって、窓枠1の2辺以上に備わる複数個の錠装置6a,6bを操作部5による1回の操作で同時に動作させることができ、開閉錠操作の操作性が高まる。なお、板バネ8には連動棒7への移動を確実に伝えるために、例えば内側に円弧状のガイド部材(不図示)等を設けることが好ましい。
【0018】
図2は操作部5の拡大図である。操作部5はハンドル等の回転運動を連動棒7の上下運動に変えるための機構である。
(A)は操作前、(B)は操作後の概略図である。操作部5は2枚の板材からなるカバー材9と、移動板10と、回転板11と、カム12で構成される。2枚のカバー材9に移動板10と回転板11とカム12が挟持されて構成される(図では上側のカバー材9のみ記載)。回転板11の端部には、例えば操作ハンドル(不図示)の角軸13が備わり、他方の端部でカム12と連結される。カム12の端部は丸軸14を介して移動板10と連結される。したがって、操作ハンドルを回転させて角軸13を回転させると回転板11が矢印R方向に回転する。これに伴い、カム12が上方に移動し、カム12と丸軸14で連結される移動板10も上方に移動する(矢印U)。移動板10は連結部15においてネジ等(不図示)により連動棒7と連結される。連動棒7を上下に移動できる機構であれば、例えばラックピニオン方式等、操作部5の構造はどのような構造でもよい。
【0019】
図3は施錠時の錠装置の断面図であり、図4は開錠時の錠装置の断面図である。
図3、図4共に、縦窓枠1c(図1参照)に備わる錠装置(図1の6b)を例にして説明する。図3に示すように、縦窓枠1cの内部に板部材16が固定される。この板部材16に錠本体17が角軸18を支点に回動可能に取付けられる。錠本体17の先端部17aはフック状に形成され、障子2b(図1参照)の縦框3cの室内側の面に形成された錠受け19と係合して施錠される。操作部5を操作してたて骨4(図1参照)の連動棒7を上方に移動させると、縦窓枠1c内の連動棒7は下方に移動する。連動棒7の錠装置部分には連動補助板7aが設置されて、連動補助板7aには凸部20が形成される。連動棒7の下降に伴い、凸部20も下降し、錠本体17の後端部17bの突き当て面S1を下に押し、錠本体17を角軸18廻りに回転させる。
【0020】
このとき、連動補助板7aに形成されたガイド孔21に沿って最初に角軸18は回転することなくガイド孔21内を上昇する。ガイド孔21は幅広部21aとその上下の幅狭部21bからなり、幅広部21aの幅Mは角軸18の対角線の長さより長いものであり、幅狭部21bの幅Nは角軸18の1辺の長さと同程度の長さである。したがって、凸部20の下降に伴って角軸18は下側の幅狭部21bから幅広部21aに移動し、この幅広部21aを通るため、自由に回転することができる。すなわち、錠本体17は凸部20に後端部17bを押されて回転する。錠本体17が回転すると、先端部17aが錠受け19から開放されるため、開錠される(図4)。これにより、障子2bを窓枠1から開放することができる。
【0021】
このように、錠本体17は縦窓枠1cに、錠受け19は縦框3cに形成されるので、外観上視認できず、見栄えのよい窓構造を得ることができる。また、障子の縦框3cには錠本体17を備えるスペースを確保する必要がなく、錠受け19のみを形成すればよいため、例えば框の幅を細くしてガラス板を大きくするような構成とすることができ、パネルの採光性を向上させることができ、意匠性も上げることができる。また、障子に錠本体17の重量は加重されず、また、錠本体を収めるために框幅を太くすることがないために軽量化でき、障子の開閉操作を小さな力で行うことができる。
【0022】
後述するように、連動棒7はこの後さらに下降する。このとき、角軸18は連動補助板7aに形成されたガイド孔21の上側の幅狭部21bを通って移動するため、角軸18の回転が規制されるので、錠本体17は回転しない。なお、図3、図4では障子に対して室内側から錠本体を回転させる錠装置(障子2bの框が窓枠1の周縁の室外側に重ねて装着される窓構造)を示したが、錠受けを框の外側面(図1(B)の錠装置6bに対しては右側の面)に設けて錠本体を障子の外周縁側から回転させる機構の錠装置(障子3が窓枠1の4辺の内側に嵌め込まれる窓構造)としてもよい。
【0023】
図5(A)〜(C)は開錠時の図3から図4に移行するまでの途中の状態を順番に示す。
(A)は、凸部20が連動棒7の下降とともに下降して、突き当て面S1に当接した状態を示す。ここに達するまで角軸18は下側の幅狭部21b内を移動するだけであるので、ここまでは回転しない。したがって、錠本体17も回転しない。この状態では、錠本体17は図3と同じ状態で、施錠状態である。
【0024】
(B)は、凸部20が突き当て面S1を押し下げている途中の状態を示す。凸部20は突き当て面S1に当接したまま、連動棒7の下降に伴って下降する。このとき、角軸18は幅広部21a内に移動するので、自由に回転できる。したがって、突き当て面S1の押し下げに伴い角軸18が回転して錠本体17が斜めに傾き、半分だけ開錠した状態となる。
【0025】
(C)は、開錠された状態を示す。凸部20が(B)の状態よりさらに下降して突き当て面S1を押し下げるため錠本体17がさらに回転して、錠受け19から外れて開錠状態になる。このとき、角軸18は上側の幅狭部21b内に移動するため、これ以降凸部20が連動補助板7aとともに下降しても角軸18は上側の幅狭部21b内を上側に移動するだけであるので、回転しない。したがって、錠本体17はこれ以上連動棒7及び連動補助板7aが下降しても回転しない。これにより、後述するように(図6参照)、窓の開閉のための機構としてさらに連動棒7を下降させても、すなわち、凸部20が突き当て面S1から離れてさらに下降しても、角軸18が回転することはなく、開錠状態を保持することができる。なお、施錠時には凸部20が上昇して突き当て面S2を押し、上述した開錠と逆の動作をする。
【0026】
図6は下窓枠の連動棒と障子のレールからなる機構を示す平面図である。この機構は連動棒7の動きを連動棒7に略垂直方向の動きに変換する機構である。この機構により、レールを障子パネルに略垂直に移動することができる。
(A)はカムの回転前、(B)は回転後を示す。連動棒7には凸部22が突出して形成される。図の点線で示す凸部22が施錠状態の位置にある凸部である。上述したように、錠装置を開錠操作すると、連動棒が移動し、図の実線の位置まで凸部22が移動する。すなわち、距離Sが錠装置6の開錠に必要な連動棒7の移動距離である。開錠操作が終わり、さらに操作ハンドルを回転させると、下窓枠1b(図1参照)の連動棒7はたて骨4側(矢印L)に移動する。これに伴い、凸部22は下窓枠1bに固定されるカム23を押す。カム23は軸24を支点に回動可能であり、凸部22に押されることにより矢印T方向に回転する。カム23の先端には回転板26が設けられる。回転板26は、その上のレール25に設置された回転板受けである溝(図示せず)に取付けられる。したがって、レールは室外側に押し出されて、隣り合う障子と前後に段違いとなるため、障子2b(図1参照)をレールに沿って開閉することができる。なお、上窓枠1aに備わるレールも同様の構造である。なお、図5Aの状態では、凸部22がカム23の逆回転防止の役割も果たす。
【0027】
このような窓を閉めた状態で隣り合う障子が同一平面上に形成される窓構造において、上窓枠及び下窓枠に備わる一方の障子を摺動させるレール25が錠装置の開閉錠操作と連動して移動するため、錠装置の操作とレールの移動操作を操作部による1回の操作で行うことができる。また、レールの移動操作部と錠の開閉操作部を1つの操作部5のみにすることができるために意匠性の向上、部品数の低減、枠に設置した場合での省スペース化などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、錠装置を備える窓構造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る窓構造の概略図。
【図2】操作部の拡大図。
【図3】施錠時の錠装置の断面図。
【図4】開錠時の錠装置の断面図。
【図5】開錠時の図3から図4に移行するまでの途中の状態を順番に示す説明図。
【図6】下窓枠の連動棒と障子のレールからなる機構を示す平面図。
【符号の説明】
【0030】
1:窓枠、2(2a,2b):障子、3:框、3a:上框、3b:下框、3c:縦框、3d:召し合わせ框、4:たて骨、5:操作部、6a,6b:錠装置、7:連動棒、7a:連動補助板、8:板バネ、9:カバー材、10:移動板、11:回転板、12:カム、13:角軸、14:丸軸、15:連結部、
16:板部材、17:錠本体、18:角軸、19:錠受け、20:凸部、21:ガイド孔、21a:幅広部、21b:幅狭部、22:凸部、23:カム、24:軸、25:レール、26:回転板、S1,S2:突き当て面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠と障子からなり、前記障子を摺動させるレールを上下に備えた窓構造であって、
前記レールの移動手段を備え、前記レールを障子パネル面に略垂直な方向に移動した後に、前記障子を前記レールに平行な方向に移動し開閉する窓構造において、
前記窓枠に前記錠本体が備わり、前記障子に前記錠受けが備わることを特徴とする窓構造。
【請求項2】
前記錠装置は前記窓枠に複数個備わり、各錠装置は連動棒で連結されることを特徴とする請求項1に記載の窓構造。
【請求項3】
前記錠装置は前記窓枠の2辺以上に備わることを特徴とする請求項1又は2に記載の窓構造。
【請求項4】
前記錠装置と連動して前記レールが障子面に対して垂直方向に移動可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の窓構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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