説明

窓装置

【課題】上下換気口を室外環境変化に応じて自動的に開閉できるようにしたダブルスキン構造の窓装置とする。
【解決手段】外ガラス2と内ガラス3との間の空気層4を上換気口5、換気口6で室外に開口したダブルスキン構造とし、前記上下換気口5,6を開閉する上扉7、下扉8と、空気層4内の温度で駆動する駆動体20と、その駆動部22と上扉7、下扉8を連結する伝達機構30をもうけ、前記空気層4内の温度が設定温度以上の時には上下扉7,8が開状態に作動して上下換気口5,6を自動的に開き、設定温度よりも低い時には上下扉7,8が閉じ状態に作動して上下換気口5,6を自動的に閉じるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体の開口部に用いられる窓、カーテンウオールに用いられる窓などのダブルスキン構造の窓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室外側の外ガラスと室内側の内ガラスとの間に空気層を有したダブルスキン構造の窓装置が種々提案されている。
例えば、特許文献1に開示されたように、室外側の外ガラスと室内側の内ガラスとの間に空気層を持ち、この空気層の上、下を室外に通じる上下の換気口を備え、この上下の換気口を開閉可能としたダブルスキン構造の窓装置が提案されている。
この窓装置においては、上下の換気口を開くことで空気層に外気が流通するから空気層の温度を低くでき、上下の換気口を閉じることで空気層に外気が流通しないから空気層の温度を高くできるので、室内の空調を効率良く実施することが可能となる。
【特許文献1】特開2001−253734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述した従来の窓装置において、換気口を開閉可能とするには、換気口に扉を取付け、この扉を手動、又はモータによって開閉動作することが考えられる。
しかし、手動で扉を開閉するようにした場合には、その開閉操作が煩しい。
また、換気口の扉の開閉は、日射熱を室内に伝えたくない時には開けておき、日射が無く断熱性を高めたい時は閉じる、というように室外環境の状況に応じて行う必要があるが、その開閉判断と開閉操作を使用者が行うのは非常に煩わしい。
モータにより扉を開閉するようにした場合には、手動でスイッチをON、OFFしてモータを駆動・停止して、開閉する場合とセンサーと制御システムによってモータを自動的に駆動・停止して開閉する場合がある。前者の場合には前述のように室外環境の状況に応じて開閉判断することになる操作が煩わしい。
後者の場合には非常に大掛かりな装置が必要でコストが高くなる。
【0004】
本発明の目的は、ダブルスキン構造で、その空気層の上下に換気口を有していると共に、その換気口を室外環境の状況に応じて自動的に開閉できると共に、コストが安い窓装置とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、枠体に室外側の外ガラスと室内側の内ガラスを装着し、この外ガラスと内ガラスとの間に空気層を有し、その空気層の上下を上換気口、下換気口で室外にそれぞれ開口した窓装置であって、前記上換気口、下換気口をそれぞれ開放する開状態とそれぞれ閉じる閉状態に作動する上扉、下扉をそれぞれ備え、前記枠体に自己温度感知型の駆動体を、前記空気層内の温度によって駆動部が駆動するように取付け、前記駆動部と前記上扉、下扉を伝達機構で、前記空気層内の温度が設定温度以上の時には上扉、下扉が開状態に作動し、設定温度よりも低い時には上扉、下扉が閉状態に作動するように連結したことを特徴とする窓装置である。
【0006】
本発明によれば、1つの駆動体の駆動部を伝達機構で上扉と下扉にそれぞれ連結することができる。
このようにすれば、1つの駆動体で上扉と下扉を開閉動作できる。
【0007】
本発明によれば、上扉、下扉を弾性部材で閉じ状態に保持し、駆動体の駆動部は空気層内の温度が設定温度以上の時に伸び駆動し、該駆動部と上扉、下扉を伝達機構で、その駆動部が伸び駆動すると上扉、下扉が弾性部材に抗して開状態に作動するように連結することができる。
このようにすれば、駆動体の駆動部の伸び駆動によって上扉、下扉を確実に開閉動作することができる。
【0008】
本発明においては、枠体の縦枠材の内面にカバー体を取付け、このカバー体と縦枠材の内面との間に空間部を形成し、この空間部に、駆動体と伝達機構を配設することができる。
このようにすれば、内ガラス、外ガラスを通して駆動体、伝達機構が室内、室外から見えないようにできるので、見栄えが良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外ガラスと内ガラスとの間に空気層を有したダブルスキン構造で、その空気層の上下を室外に開口する上下換気口が上下扉で開閉動作されると共に、その上下扉は空気層の温度で駆動部が駆動する駆動体によって開閉動作されるので、上下換気口を室外環境の状況に応じて自動的に開閉できる。
また、自己温度感知型の駆動体と伝達機構を用いているので、コストが安い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1と図2に示すように、枠体1に室外側の外ガラス2と室内側の内ガラス3が装着され、この外ガラス2と内ガラス3との間に空気層4を有したダブルスキン構造の窓装置としてある。
前記空気層4の上下に上換気口5、下換気口6を有し、この上下換気口5,6で空気層4が室外に開口している。
前記上下換気口5,6は上下扉7,8でそれぞれ開閉される。
【0011】
前記枠体1は上横枠材10と下横枠材11と左右の縦枠材12を方形状に連結してある。
前記外ガラス2の左右縦縁部が左右の縦枠材12で支持され、この外ガラス2の上横縁2aと上横枠材10とが離隔し、その両者の間を上換気口5としてある。
前記外ガラス2の下横縁2bと下横枠材11とが離隔し、その両者の間を下換気口6としてある。
【0012】
このように、外ガラス2の上横縁2aと上横枠材10との間に上換気口5を形成したので、その上横枠材10は上換気口を有しないから、上下寸法が小さく、単純な断面形状である。
すなわち、通常一般は、上横枠材10が上換気口を有する断面形状で、その上横枠材10に外ガラスの上横縁2aが支持されているから、その上横枠材10は、上換気口のために上下寸法が大きく、複雑な断面形状である。
また、外ガラス2の下横縁2bと下横枠材11との間に下換気口6を形成したので、その下横枠材11は前述と同様に上下寸法が小さく、単純な断面形状である。
なお、上下横枠材は前述した通常一般の上、下換気口を有するものとしても良いし、上下横枠材のどちらか一方を前述した通常一般の上、下換気口を有するものとしても良い。
【0013】
前記枠体1には図3に示すように、自己温度感知型の駆動体(アクチュエータ)20の本体21が、前記空気層4内の温度を感知して駆動部22が駆動するように取付けてある。
この駆動体20の駆動部22は伝達機構30を介して前記上扉7、下扉8に連結してある。
前記空気層4内の温度が設定温度以上の時には、上扉7、下扉8が図3に示すように上下換気口5,6を開放する開状態に作動し、前述の設定温度よりも低い時には図4に示すように上下扉7,8は上下換気口5,6を閉じる閉状態に作動する。
【0014】
このようであるから、空気層4内の温度で上下扉7,8が開閉状態に作動し、上下換気口5,6を自動的に開閉できる。
前記空気層4内の温度は、室外の温度、日射の有無等の室外環境の状況によって変化する。例えば、室外の温度が高い時には温度が上昇し、低くなると温度が降下する。日射が有る時には温度が上昇し、日射が無くなると温度が降下する。
したがって、上下換気口5,6を室外環境の状況に応じて自動的に開閉できる。
また、自己温度感応型の駆動体20の駆動部22の動作で上下扉7,8を作動するので、構造が簡単で、部品点数も少ないので、コストが安い。
【0015】
この実施の形態では、1つの駆動体20で上下扉7,8を作動しているから、より一層コストが安い。
また、弾性部材、例えばコイルスプリング23で上下扉7,8を閉じ状態に保持し、駆動体20の駆動部22は空気層4内の温度が設定温度以上の時に伸び駆動し、その駆動部22の伸び駆動によって上下扉7,8を開状態に作動しているので、空気層4内の温度が設定温度よりも低い時にはコイルスプリング23で上下換気口5,6は確実に閉じられる。なお、前記弾性部材で上下扉7,8を直接閉状態に保持しても良い。例えば、上下扉7,8の支軸に巻ばねを設けて上下扉7,8を直接閉状態に保持する。
【0016】
この実施の形態では、図5,6に示すように縦枠材12の内側面にカバー体13が着脱自在に取付けてあり、このカバー体13と縦枠材12の内側面との間に空間部14を形成している。
そして、前記駆動体20、伝達機構30は前記空間部14内に収容されているので、その駆動体20、伝達機構30が外ガラス2、内ガラス3を通して室外、室内から見えることがなく、見栄えが良い。なお、このカバー体13は図3、図4では図示が省略してある。
【0017】
次に、各部材を詳細に説明する。
図3と図6に示すように、前記縦枠12の室外側部分12aにおける上部と下部に上下の支持部材40がそれぞれ取付けてある。例えばビス41で固着して取付けてある。
この上の支持部材40は上横枠材10の室外側部内側面10aに接していると共に、外ガラス2の上横縁2aの左右端部分に接し、下の支持部材40は、下横枠材11の室外側部内側面11aに接していると共に、外ガラス2の下横縁2bの左右端部分に接している。
前記外ガラス2の左右縦縁部は、図5に示すように、縦枠12の室外側部分12aに室外側縦シール材15、室内側縦シール材16によって水密して支持されている。
前記室外側縦シール材15の上下部分は図3に示すように、前記上下の支持部材40の室外側面40aに接し、上下端面が上下横枠材10,11の室外側部内側面10a,11aに接している。
前記室内側縦シール材16の上下端面は前記上下の支持部材40の内側面40bに接している。
【0018】
前記上の支持部材40は、本体42とシリコーンスポンジ等の緩衝材43を有し、その本体42がビス41で縦枠材12に固着してあると共に、緩衝材43に外ガラス2の上横縁2aが接していると共に、室内側縦シール材16の上端面が接している。前記下の支持部材40は本体42とガラス支持部43を有した一体の樹脂部品としてある。
前記上下扉7,8は、所定の幅と厚さと長さを有した扉体7a,8aと、その幅方向両端に装着した一対のシール材7b,8bと、その幅方向中央に取付けた支軸7c,8cを備えている。
前記支軸7c,8cが前記上下の支持部材40(本体42)の横向孔44に回転自在に挿入され、上下扉7,8は上下方向に回転自在に支持部材40に支持されている。
【0019】
前記縦枠材12の室内外側中間部分12bにカバー体13が取付けてあると共に、その室内外側中間部分12bに前述の駆動体20と伝達機構30が取付けてある。
前記縦枠材12の室内側部分12cに内ガラス3が設けてある。
この実施の形態では、枠組体3aに内ガラス3を装着し、その枠組体3aを前記枠体1の室内側部分に取付けてある。
このようであるから、枠組体3aとともに内ガラス3を取り外しでできるから、空気層4内の交換、保守等が容易に実施できる。
【0020】
前記駆動体20は図7に示すように、本体21内に熱膨張材を封入し、その熱膨張材の膨張によって駆動部22が伸び駆動する、いわゆるサーモエレメントと呼ばれるものである。
前記縦枠材12の室内外側中間部分12bにビス24で取付けたプレート25に前記本体21が取付けてあり、その駆動部22は上方に向けて伸び駆動するようにしてある。例えば、プレート25に固着した取付片26に本体21が上向きに固着してある。
【0021】
前記伝達機構30は、前記プレート25に上下方向に移動自在に支承した可動体31と、前記プレート25の上下に支軸32aで上下揺動自在に取付けた上下のアーム32と、この各アーム32にピン33aで回動自在に連結したロッド33と、この各ロッド33にピン34aで回動自在に連結したレバー34を備えている。
前記可動体31は上下方向の長孔35を有し、この長孔35からビス36をプレート25に螺合し、そのビス36に沿って上下に移動可能としてある。
前記可動体31とアーム32は可動体31が上下に移動するとアーム32が上下揺動するように連結してある。例えば、アーム32に設けたピン37を可動体31の溝38に挿入してある。
前記可動体31は前述したコイルスプリング23で図4に示すように下方に移動して保持され、駆動体20の駆動部22は本体21に接近した装置(縮んだ状態)となっている。
【0022】
前記レバー34は上下扉7,8の支軸7c,8cに固定してある。
例えば、図8に示すように前記支持部材40(本体42)は室内側面と室外側面に貫通した開口部45を有し、この開口部45は前記横向孔44と交差して前記支軸7c,8cが開口部45内を通るようにしてある。
前記レバー34は開口部45内に挿入可能で、かつ支軸7c,8cに固定され、その支軸7c,8cととも開口部45内で上下方向にレバー34が揺動可能としてある。
そして、前記レバー34を開口部45内に挿入した状態で支軸7c,8cを横向孔44内に挿入してレバー34に嵌合することでレバー34を支持部材40に取付ける。
【0023】
次に上下扉7,8の動作を説明する。
前記可動体31が図4に示すように下方に移動した場合には、上のアーム32が下方に揺動し、下のアーム32が上方に揺動する。
前記上のアーム32が下方に揺動することで上のロッド33が下方に移動して上のレバー34が下方に揺動し、上扉7が縦向き姿勢となることで、一対のシール材7bが上横枠材10、外ガラス2の上横縁2aに接して上換気口5を閉じる。
前記下のアーム32が上方に揺動することで下のロッド33が上方に移動して下のレバー34が上方に揺動し、下扉8が縦向き姿勢となることで、一対のシール材8bが下横枠材11、外ガラス2の下横縁2bに接して下換気口6を閉じる。
【0024】
前述した図4に示す状態で、空気層4内の温度が設定温度以上となると駆動体20の駆動部22が伸び駆動して可動体31が図3に示すようにコイルスプリング23に抗して上方に移動する。
前記可動体31が図3に示すように上方に移動すると、上のアーム32が上方に揺動し、下方のアーム32が下方に揺動する。
前記上のアーム32が上方に揺動すると上のロッド33が上方に移動し、上のレバー34が上方に揺動して上扉7が横向き姿勢に回転し、その一対のシール材7bが上横枠材10、外ガラス2の上横縁2aから離れて上換気口5が開放する。
前記下のアーム32が下方に揺動すると下のロッド33が下方に移動し、下のレバー34が下方に揺動して下扉8が横向き姿勢に回転し、その一対のシール材8bが下横枠材11、外ガラス2の下横縁2bと離れて下換気口6が開放する。
【0025】
前述の実施の形態では、一つの駆動体20で上下扉7,8を開閉動作させたが、上下扉7,8を異なる駆動体20でそれぞれ開閉動作するようにしても良い。
例えば、上下扉7,8を弾性部材で閉じ状態に保持し、2つの駆動体20の駆動部22を前述のレバー34にそれぞれ連結する。
また、駆動体20は駆動部22が伸び駆動するサーモエレメントとしたが、バイメタルを利用したものでも良い。
また、駆動体20と伝達機構30を左右の縦枠材12にそれぞれ取付けしたが、左右一方の縦枠材12にのみ取付けるようにしても良い。
また、空気層4にブラインドを設置しても良い。
【0026】
前述の実施の形態は建物躯体の開口部に用いる窓装置としてあるが、これに限ることはない。
例えば、カーテンウオールの窓部に用いる窓装置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態を示す全体外観図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す一部破断した全体斜視図である。
【図3】扉開き状態の縦断面詳細図である。
【図4】扉閉じ状態の縦断面詳細図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】図3のB−B断面図である。
【図7】駆動体取付け部分の斜視図である。
【図8】上扉と上の支持部材の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1…枠体、2…外ガラス、3…内ガラス、4…空気層、5…上換気口、6…下換気口、7…上扉、8…下扉、12…縦枠材、13…カバー体、14…空間部、20…駆動体、21…本体、22…駆動部、23…コイルスプリング(弾性部材)、30…伝達機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に室外側の外ガラスと室内側の内ガラスを装着し、この外ガラスと内ガラスとの間に空気層を有し、その空気層の上下を上換気口、下換気口で室外にそれぞれ開口した窓装置であって、
前記上換気口、下換気口をそれぞれ開放する開状態とそれぞれ閉じる閉状態に作動する上扉、下扉をそれぞれ備え、
前記枠体に自己温度感知型の駆動体を、前記空気層内の温度によって駆動部が駆動するように取付け、
前記駆動部と前記上扉、下扉を伝達機構で、前記空気層内の温度が設定温度以上の時には上扉、下扉が開状態に作動し、設定温度よりも低い時には上扉、下扉が閉状態に作動するように連結したことを特徴とする窓装置。
【請求項2】
1つの駆動体の駆動部を伝達機構で上扉と下扉にそれぞれ連結した請求項1記載の窓装置。
【請求項3】
上扉、下扉を弾性部材で閉じ状態に保持し、
駆動体の駆動部は空気層内の温度が設定温度以上の時に伸び駆動し、
該駆動部と上扉、下扉を伝達機構で、その駆動部が伸び駆動すると上扉、下扉が弾性部材に抗して開状態に作動するように連結した請求項1又は2記載の窓装置。
【請求項4】
枠体の縦枠材の内面にカバー体を取付け、このカバー体と縦枠材の内面との間に空間部を形成し、
この空間部に、駆動体と伝達機構を配設した請求項1又は2又は3記載の窓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−150099(P2009−150099A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328168(P2007−328168)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】