説明

窯業系サイディング材用塗料及び窯業系サイディング材

【課題】住宅内外装壁材向け窯業系サイディング材に塗装する用途において、ライン塗装に必要な塗装適性、防湿性、防火性、さらには密着性に優れる塩化ビニリデン共重合樹脂ラテックスを主成分とする塗料を提供する。
【解決手段】塩化ビニリデン単量体(A)70〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)8〜30質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする窯業系サイディング材用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内外装壁材向け窯業系サイディング材に塗装する塩化ビニリデン共重合樹脂ラテックスを主成分とする塗料及び窯業系サイディング材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅内外装壁材は、現場においてモルタルや塗料を使用しない、いわゆる乾式工法の増加によって、建築用ボード類の使用が増加してきた。その中でも近年、多く用いられている窯業系サイディング材は、使用する原材料(木質系成分など)や加工方法などの影響から、吸湿を原因とするソリ・寸法変化や凍害によるひび割れなどが発生し易いという問題がある。
これらを防止する手段として窯業系サイディング材の表面や裏面に防湿性塗料を塗装することが一般的に行われている。この防湿性塗料を塗装することは、セメント成分を減らし木質成分などを増やして、軽量化やコストを抑えることが出来るという利点もある。その一方で、木質成分などを増やし過ぎて防火性が低下するという欠点を招くこともある。そのため、この防火性が、更には防湿塗料にまで求められるというのが現状である。
【0003】
防火性については基準や試験方法が変化しており、近年では信頼性と精度の高い、ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱量試験が導入されるなど、試験方法も見直されている。
【0004】
例えば、試験結果が、
(1)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、
(2)加熱開始後20分間に貫通亀裂・穴等の変形が試験体になく、
(3)加熱開始後20分間の200kw/mを超える最高発熱速度が10秒以上継続しない場合には、「不燃材料」と判定される。
【0005】
また、その試験結果が、
(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、
(2)加熱開始後10分間に貫通亀裂・穴等の変形が試験体になく、
(3)加熱開始後10分間の200kw/mを超える最高発熱速度が10秒以上継続しない場合には、「準不燃材料」と判定される。
【0006】
また、その試験結果が、
(1)加熱開始後5分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、
(2)加熱開始後5分間に貫通亀裂・穴等の変形が試験体になく、
(3)加熱開始後5分間の200kw/mを超える最高発熱速度が10秒以上継続しない場合には、「難燃材料」と判定される。
【0007】
防火性を高めるためには塗装する塗料が大きく影響する。窯業系サイディング材の場合には特にその傾向が強く、防湿性塗料が窯業系サイディング材の機能や性能に与える影響は少なくない。また、塗料としては、地球環境保護に対する関心が高まり、塗料に対する溶剤規制や重金属に対する規制が強化されるなどの影響で溶剤系塗料から水系塗料へ移行する動きが活発となっており、溶剤系塗料と同等かそれ以上の防湿性、防火性、変色性、密着性及びブロッキング性に優れた水系塗料が強く望まれている。
【0008】
種々の水系塗料用樹脂の中で特に塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスは、水蒸気透過率が低くバリヤ性に優れていることから住宅内外装壁材の防湿塗料用樹脂として非常に適している。しかし、一方では光・熱に対して変色し易いという問題がある。
特許文献1には特定の塩化ビニリデン高分子ラテックスに関し、難燃性、耐光変色性に優れることが記載されているが、耐光熱性に対しては十分な性能ではなかった。
光や熱に対する耐変色性に優れる塩化ビニリデン系ラテックスが特許文献2に開示されており、特定の構成モノマーとすることで変色が少ないものであるが、窯業系サイディング材に要求される耐光熱性を満足するものではなかった。
一方、特許文献3には塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを用いた建材用防湿水性塗料組成物が、また特許文献4には建築用ボード防湿ラテックスが開示されている。これらの塗料組成物は特定の塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスや特定の顔料比率からなり、低コストで良好な防湿性や耐ブロッキング性を示している。しかしながら、この塗料組成物も窯業系サイディング材用としての密着性や防火性が十分でないばかりでなく、光や熱によって黄色く変色するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平5−79698号明細書
【特許文献2】特開平11−35763号公報
【特許文献3】特開平11−269425号公報
【特許文献4】特開平2001−11363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、窯業系サイディング材に塗料を塗装するに際して、ライン塗装時に必要とされるブロッキング性を有し、なおかつ、窯業系サイディング材の吸湿によるソリ・寸法変化や凍害によるひび割れを防止できる高いレベルの防湿性と不燃窯業系サイディング材材料と判定されるレベルの防火性、さらには密着性を有する塗膜が形成される窯業系サイディング材用塗料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の問題に鑑み、防火性が燃焼時の発熱量によってその結果が左右され、特に窯業系サイディング材の場合は塗装する塗料の発熱量が判定結果に大きく影響することに着目して鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、特定の塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスに抗酸化剤を配合し、コーンカロリーメーターで測定した最高発熱速度が所定の値を有する塗料が、光や熱による塗膜の変色が少なく、防湿性、防火性、耐ブロッキング性及び密着性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、
(1)本発明の第1は、塩化ビニリデン単量体(A)70〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)8〜30質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする窯業系サイディング材用塗料である。
(2)本発明の第2は、上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する(1)記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(3)本発明の第3は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である(1)又は(2)に記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(4)本発明の第4は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して1〜10質量部である(1)〜(3)に記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(5)本発明の第5は、窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m塗装して乾燥したボードをISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/mにおいて測定した時の最高発熱速度が20kw/m以下である(1)〜(4)に記載の窯業系サイディング材用塗料である。
(6)本発明の第6は、塩化ビニリデン単量体(A)70〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)8〜30質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする塗料を塗布した窯業系サイディング材である。
(7)本発明の第7は、上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対し、抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する塗料を塗布した(6)記載の窯業系サイディング材である。
(8)本発明の第8は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である塗料を塗布した(6)又は(7)に記載の窯業系サイディング材である。
(9)本発明の第9は、上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対し1〜10質量部である塗料を塗布した(6)〜(8)に記載の窯業系サイディング材である。
(10)本発明の第10は、窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m塗装して乾燥したボードをISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/mにおいて測定した時の最高発熱速度が20kw/m以下である塗料を塗布した(6)〜(9)に記載の窯業系サイディング材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする窯業系サイディング材用塗料は、光や熱による塗膜の変色が少なく、ライン塗装時に必要とされる耐ブロッキング性を有し、防湿性と防火性さらには密着性に優れるという特性を併せ持つ耐久性に優れた塗膜を形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明の塩化ビニリデン単量体(A)の量は70〜92質量部であり、好ましくは80〜92質量部である。70質量部以上で防湿性と防火性が向上するばかりでなく、結晶化により塗膜のタック性が残らないため、ライン塗装したあとの窯業系サイディング材を積み重ね時に発生する窯業系サイディング材同士の固着現象、いわゆるブロッキングを防止することができる。一方、92質量部以下にすることで窯業系サイディング材との密着性を発現させ、光や熱による塗膜の変色も少なくすることができる。
【0014】
本発明の塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスには、塩化ビニリデンと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)が共重合されるが、その量は8〜30質量部であり、好ましくは8〜20質量部である。8質量部以上で密着性が向上するばかりでなく、光や熱による塗膜の変色が少なくすることができる。一方、30質量部以下にすることで優れた防湿性と防火性を発現させ、ブロッキングも防ぐことができる。
【0015】
塩化ビニリデンと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル等のエチレン系α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル単量体が挙げられる。
また、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体も同様に挙げられる。さらに、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン系α,β−不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエチレン系α,β−不飽和カルボン酸エポキシ基含有アルキルエステル、アクリルアミド等のエチレン系α,β−不飽和カルボン酸のアミド化合物、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル、ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル、酢酸アリル等のアリルエステル、アリルメチルエーテル等のアリルエーテル等が挙げられ、スチレン系化合物も挙げられる。
また、さらには、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸含有ビニル系単量体も挙げられる。
【0016】
上記、ビニル系単量体のうち特に塗膜の変色抑制効果があるものとして、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルが挙げられる。アクリル酸−2−ヒドロキシエチルの量は0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることが更に好ましい。アクリル酸−2−ヒドロキシエチルの量が0.5質量部以上で光や熱による塗膜の変色を少なくすることができる。一方、3質量部以下にすることで優れた防湿性を発現させることができる。
【0017】
また、ビニル系単量体のうち特に防火性を向上させるものとして、アクリロニトリルが挙げられる。アクリロニトリルの量は1〜10質量部であることが好ましい。アクリロニトリルの量が1以上で防火性と密着性をより向上させることができる。一方、10質量部以下にすることで光や熱による塗膜の変色を抑制することができる。
【0018】
塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスは、上記した各単量体を上記範囲内で混合し、重合開始剤、界面活性剤等を添加して乳化重合することにより得られるが、重合開始剤、界面活性剤等の種類は特に限定されない。この乳化重合は従来と同様の方法で実施することができる。
【0019】
さらに、本発明の塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスは、そのまま窯業系サイディング材用塗料としてクリヤー皮膜を形成させるために使用することもできるし、必要に応じて、一般的に使用されている種々の公知成分、たとえば、造膜助剤、消泡剤、レオロジー調整剤、増粘剤、分散剤、及び、界面活性剤等の安定化剤、湿潤剤、可塑剤、着色剤、防腐剤などを添加してもよい。また、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、防錆顔料を配合して使用することも可能である。
【0020】
本発明の塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスには、抗酸化剤も配合されるが、該塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とした窯業系サイディング材用塗料は加熱や光による変色が少なくなる。抗酸化剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、これらを一種以上併用してもよい。
フェノール系酸化防止剤として、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT)、3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1076)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(イルガノックス1330)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート(イルガノックス245)、α、β、γ、δの各種トコフェロール及びその混合物、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(イルガノックス1010)、2,2'−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)(スミライザーMDP−S)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミライザーGM)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン(アデカスタブAO−30)、6,6’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ブチリデンジ−m−クレゾール(アデカスタブAO−40)等を挙げることができる。特に、好ましいものとしてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを挙げることができる。さらに好ましくは2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールとオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートの混合割合(重量比)が99/1〜50/50としたものであり、より好ましくは90/10〜70/30(イルガスタブMBS11)である。
【0021】
抗酸化剤の量は0.05〜2質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることが更に好ましい。抗酸化剤の量が0.05質量部以上で窯業系サイディング材用塗料が光や熱による変色が少なくなるばかりでなく、窯業系サイディング材との密着性を向上させることができる。一方、2質量部以下とすることで防湿性や防火性を向上させることができる。
【0022】
本発明の窯業系サイディング材用塗料は、前述したISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱量試験を用いて、窯業系サイディング材表面に塗料を300g/mの塗布量で塗装した乾燥ボードを試験した時の最高発熱速度が20kw/m以下であることが重要である。最高発熱量が20kw/m以下の場合は、窯業系サイディング材を含めた発熱性評価判定に悪影響を及ぼすことを防止できるからである。
【実施例】
【0023】
以下、実施例などにより本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の部及び%はそれぞれ質量部、及び質量%を示す。本発明の実施例等で用いる分析、評価手段は以下の通りである。
【0024】
(イ)防火性
コーンカロリーメーター((株)東洋精機製作所製 CONE III)を用いて、窯業系サイディング材表面に塗料をスプレー塗装機にて300g/mの塗布量で塗装した乾燥ボードを窯業系サイディング材の塗装面がヒーター側になるように保持フレーム上に乗せ、ISO5660に準拠した発熱量試験を行い、輻射熱条件50kW/mで20分間加熱して最高発熱速度と総発熱量を測定した。
【0025】
(ロ)防湿性
JIS−Z−0208(カップ法)に準拠した方法にて、40℃、90%RHの条件で測定した。
【0026】
(ハ)変色性
分光式色差計(日本電色工業(株)製Z−300A)を用いて、60℃、1000時間加熱処理を行い、加熱前後の塗膜表面の色調を測定してその色差(ΔE)を測定した。
【0027】
(ニ)密着性
JIS K 5600−5−6の付着性(クロスカット法)に準拠した方法にて測定した。なお試験結果の分類は以下とした。
0:カットの縁が完全で滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれがある。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を下回る。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を下回る。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に15%を超えるが35%を下回る。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に35%を超えるが65%を下回る。
5:はがれの程度が分類4を超えている。
【0028】
(ホ)ブロッキング性
10cm角、16mm厚みの窯業系サイディング材表面にスプレー塗装機にて塗布量として300g/mで塗装し乾燥した。窯業系サイディング材の塗装面どうしを重ねて恒温恒湿槽に入れ、槽内温度40℃、相対湿度90%の環境下、窯業系サイディング材に10kg/cm荷重を掛けて、30分間放置後の窯業系サイディング材どうしの固着状態を調べた。なお試験結果の分類は以下とした。
◎:固着なし
○:僅かに固着はあるが簡単に剥がれる。
×:完全に固着して剥がそうとしても剥がれない。
【0029】
(実施例1)
塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを下記の方法により製造した。ガラスライニングを施した耐圧反応器中に水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.20部、過硫酸ナトリウム0.1部を仕込み、脱気を行った後、内容物の温度を55℃に保った。別の容器に塩化ビニリデン(VDC)82.0部、塩化ビニル(VC)12.0部、アクリロニトリル(AN)3部、およびアクリル酸ブチル(BA)2.0部、アクリル酸(AA)1.0部を計量混合してモノマー混合物を作成した。該モノマー混合物のうち2部を上記耐圧反応器中に一括添加し、内圧が降下するまで重合した。続いて、単量体混合物98部を12時間にわたって連続的に定量圧入した。並行して、アルキルスルホン酸ソーダ1.0部も10時間にわたって連続的に定量圧入した。この間内容物を55℃に保ち、内圧が十分に降下するまで反応を進行させた。重合収率は99.9%であった。重合収率は、ほぼ100%なので、共重合体の組成は仕込み比にほぼ等しい。かくして得られたラテックスの未反応モノマーをエバポレーターにて除去した後、樹脂固形分を50%に調整した。
【0030】
かくして得られた塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを用いて下記に示す配合比で窯業系サイディング材用塗料を調製した。
<窯業系サイディング材用塗料の調製>
純水40.0部、イルガノックスMBS11(抗酸化剤:BASFジャパン(株)製)1部、BYK−154(分散剤:BYK Chemie Gmbh製)1部、エマルゲンPP−290(分散剤:花王(株)製を30%水溶液に調整)3部、SNデフォーマー5031(消泡剤:サンノプコ(株)製)0.4部を容器に仕込み、VMA GETZMANN GmbH社製 DISPERMAT GMBH−D−51580にて毎分3000回転で20分間攪拌して分散液を調製した。ついでタルクMS(体質顔料:日本タルク(株)製)30部、CR−97(顔料:石原産業(株)社製)18部を上記、分散液容器に仕込み、VMA GETZMANN GmbH社製 DISPERMAT GMBH−D−51580にて毎分10000回転で20分間攪拌して顔料分散液を調製した。さらに上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックス100部、SNシックナー615 10%水溶液(増粘剤:サンノプコ(株)製)5部を仕込みVMA GETZMANN GmbH社製 DISPERMAT GMBH−D−51580にて毎分3000回転で10分間攪拌して窯業系サイディング材用塗料を得た。
【0031】
上記で得た塗料をスプレー塗装機にて窯業系サイディング材(16mm厚み)表面に塗装後、120℃で10分間乾燥した。なお、塗布量は300g/mとした。評価結果を表−2に示した。
【0032】
(実施例2)
窯業系サイディング材用塗料の調製時に抗酸化剤(イルガノックスMBS11:BASFジャパン(株)製)を0.5部配合した以外は実施例1と全く同様とし、評価結果を表−2に示した。
【0033】
(実施例3〜10、比較例1〜2)
塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックス製造時のモノマー組成と窯業系サイディング材用塗料の調製時の抗酸化剤(イルガノックスMBS11:BASFジャパン(株)製)を表−1に示す通りとした以外は実施例1と全く同様とし、評価結果を表−2に示した。
【0034】
表−1
【表1】


表中、VDCは塩化ビニリデン、VCは塩化ビニル、ANはアクリロニトリル、BAはアクリル酸ブチル、2HEAはアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、AAはアクリル酸を示す。
【0035】
表−2
【表2】

【0036】
以上の実施例の結果から、本発明の窯業系サイディング材用塗料は、ライン塗装時のブロッキング性、防火性、防湿性、耐変色性、密着性のいずれの特性にも優れ、きわめて有用なものであることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は住宅内外装壁材向け窯業系サイディング材の水系防湿塗料分野に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニリデン単量体(A)70〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)8〜30質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする窯業系サイディング材用塗料。
【請求項2】
上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する請求項1に記載の窯業系サイディング材用塗料。
【請求項3】
上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である請求項1又は2に記載の窯業系サイディング材用塗料。
【請求項4】
上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して1〜10質量部である請求項1〜3に記載の窯業系サイディング材用塗料。
【請求項5】
窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m塗装して乾燥したボードをISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/mにおいて測定した時の最高発熱速度が20kw/m以下である請求項1〜4に記載の窯業系サイディング材用塗料。
【請求項6】
塩化ビニリデン単量体(A)70〜92質量部と、これと共重合可能な1種以上のその他のビニル系単量体(B)8〜30質量部と、からなる塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスを主成分とする塗料を塗布した窯業系サイディング材。
【請求項7】
上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して、抗酸化剤を0.05〜2質量部含有する塗料を塗布した請求項6に記載の窯業系サイディング材。
【請求項8】
上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリル酸−2−ヒドロキシエチルであって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して0.5〜3質量部である塗料を塗布した請求項6又は7に記載の窯業系サイディング材。
【請求項9】
上記その他のビニル系単量体(B)の少なくとも1種がアクリロニトリル単量体であって、その量が上記塩化ビニリデン系共重合樹脂ラテックスの固形分100質量部に対して1〜10質量部である塗料を塗布した請求項6〜8に記載の窯業系サイディング材。
【請求項10】
窯業系サイディング材表面に塗布量として300g/m塗装して乾燥したボードを、ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験で輻射熱50kW/mにおいて測定した時の最高発熱速度が20kw/m以下である塗料を塗布した請求項6〜9に記載の窯業系サイディング材。

【公開番号】特開2012−197391(P2012−197391A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63723(P2011−63723)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】