説明

立上がりブロックの施工方法

【課題】本発明は、アンカーボルト施工時に床スラブに負荷をかけることなく、しかも、立上がりブロックの設置に利用されるレベル金物を用いて、床スラブにアンカーボルトを精度良く立設させるようにした立上がりブロックの施工方法を提供する。
【解決手段】立上がりブロックの施工方法は、床スラブ2に所定深さの孔部2aをドリルによって穿設する。その後、アンカーボルト3にレベル金物4を螺着させた状態で、アンカーボルト3の下端側のナット21及びワッシャ22を床スラブ2の孔部2a内に挿入する。このとき、アンカーボルト3の下端側のナット21が孔部2aの底から浮いた状態で、レベル金物4の保持片4bを床スラブ2の表面上に設置させる。この状態で、グラウト注入部Pから孔部2a内にグラウトG2を注入する。グラウトG2硬化後、目地部Mを形成するために、レベル金物4を回しながら、床スラブ2の表面から所定の高さ寸法Hまでレベル金物4を上昇させる。そして、レベル金物4上に立上がりブロック5を載置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床スラブの上方に立上がりブロックを設置する際の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許4225861号公報がある。この公報に記載された立上がりブロックの施工方法は、床スラブにアンカーボルトを固定する工程と、目地部を作るために、アンカーボルト下部にレベル金物を所定の高さに位置調整して取付ける工程と、立上がりブロック端部の目地部もしくは立上がりブロックの中間孔部からアンカーボルトを貫通させて、レベル金物で立上がりブロック下面を支持して、立上がりブロックを設置する工程と、立上がりブロックの上面から突出したアンカーボルトの突出部に抑え金物を設けて立上がりブロックを固定する立上がりブロック固定工程と、目地部及び立上がりブロックの中間孔部にグラウト材を注入して床スラブと立上がりブロックとの間にグラウト材を充填するグラウト材充填工程と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4225861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、床スラブにアンカーボルトを固定する際、床スラブにドリルによって孔部を形成し、この孔部にアンカーボルトを螺着させているので、ドリルによって床スラブに孔部を鉛直方向に正確に穿設しなければ、アンカーボルトを鉛直方向に正確に立設させることができない。アンカーボルトを床スラブに正確に固定できなければ、アンカーボルトに螺着されるレベル金物が傾いて設置されることになり、その結果として、立上がりブロックも傾いて設置されることになる。また、孔部にアンカーボルトを螺着させるにあたって、アンカーボルトの埋め込み深さを正確に把握し難く、更に、アンカーボルトは孔部内に強い力で打ち込まれるので、施工時に床スラブに負荷が加わり、孔部周辺で床スラブにヒビ割れが発生する虞があった。
【0005】
本発明は、アンカーボルト施工時に床スラブに負荷をかけることなく、しかも、立上がりブロックの設置に利用されるレベル金物を用いて、床スラブにアンカーボルトを精度良く立設させるようにした立上がりブロックの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床スラブにアンカーボルトが固定され、床スラブから露出させたアンカーボルトの雄ネジ部にレベル金物が螺着され、レベル金物上に立上がりブロックが載置されてなる立上がり基礎構造において、
床スラブに孔部を形成する工程と、
アンカーボルトにレベル金物を螺着させた状態で、アンカーボルトの下端側を床スラブの孔部内に挿入して、アンカーボルトの下端が孔部の底から浮いた状態で、レベル金物を床スラブの表面上に設置させる工程と、
レベル金物に形成されたグラウト注入部から孔部内にグラウトを注入する工程と、
床スラブの表面と立上がりブロックとの隙間を形成するために、グラウト硬化後に、レベル金物を回しながら、床スラブの表面から所定の高さ寸法までレベル金物を上昇させる工程と、
レベル金物上に立上がりブロックを載置させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この立上がりブロックの施工方法においては、アンカーボルトにレベル金物を螺着させた状態で、アンカーボルトの下端側を床スラブの孔部内に挿入して、アンカーボルトの下端が孔部から浮いた状態で、レベル金物を床スラブの表面上に配置させ、その状態を保持したまま、孔部内にグラウトが注入されるので、床スラブに孔部をドリル施工するにあたって、孔部が所定位置で鉛直方向に正確に形成されていなくても、孔部の加工精度に影響されることなく、鉛直方向に精度良くアンカーボルトを立設させることができる。従って、ドリル施工に神経を使うことなく、床スラブにアンカーボルトを精度良く立設させることができる。さらに、アンカーボルトの固定作業に使われたレベル金物を、立上がりブロックの設置に再度利用するために、レベル金物を回しながら、床スラブの表面から所定の高さ寸法までレベル金物を上昇させる。このように、一個のレベル金物は、アンカーボルトの自立と立上がりブロックの設置との両方に利用されることになる。また、レベル金物の位置調整だけで、アンカーボルトの埋設深さを容易に設定することができる。更に、アンカーボルトはグラウトにより床スラブに固定されるので、アンカーボルトの施工時に床スラブに負荷が加わることなく、孔部周辺で床スラブにヒビ割れが発生する虞も無い。
【0008】
また、レベル金物は、中央に形成されてアンカーボルトに螺合する雌ネジ部と、径方向に延在する複数の保持片と、を有する。
このような構成を採用すると、レベル金物にグラウト注入用の孔部を別途形成することなく、グラウト注入部をレベル金物の保持片間に形成することができる。
【0009】
また、保持片は、4本で十字状に配置されている。
このような構成を採用すると、ケガキ線や墨出し線の交点にドリルの中心を合わせて正確なドリル施工がなされていなくても、4本の保持片を、床スラブ上に引かれたケガキ線や墨出し線に合わせるだけで、アンカーボルトの芯出しを正確に行うことができる。このことは、アンカーボルトの設置作業性を良好にする。
【0010】
また、アンカーボルトの下端には、アンカーボルトの径より拡径された抜け止め部が設けられている。
このような構成は、アンカーボルトの抜け耐力の向上に寄与する。
【0011】
また、抜け止め部は、アンカーボルトの下端に螺着されたナットと、アンカーボルトが挿入されると共に、ナットの上面に当接させられるワッシャと、を有する。
この場合、ナットとワッシャといった既製の部品で抜け止め部を構成させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンカーボルト施工時に床スラブに負荷をかけることなく、しかも、立上がりブロックの設置に利用されるレベル金物を用いて、床スラブにアンカーボルトを精度良く立設させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る立上がりブロックの施工方法が適用された立上がり基礎構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】立上がりブロックの施工方法に適用する立上がりブロック設置金具を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る立上がりブロックの施工方法を示す断面図である。
【図4】レベル金物を利用してアンカーボルトを立設させた状態を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図5】レベル金物を利用してアンカーボルトを立設させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る立上がりブロックの施工方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示されるように、建物の外観をなす壁パネル1は、立上がり基礎構造A上に設置されている。この立上がり基礎構造Aは、床スラブ2に固定されたアンカーボルト3と、アンカーボルト3に螺着されたレベル金物4と、レベル金物4上に設置されたコンクリート製の立上がりブロック5と、を主として備えている。
【0016】
このような立上がり基礎構造Aを施工した後、立上がりブロック5の上面には、定規アングル材6が設置され、この定規アングル材6は、押さえプレート7を介してアンカーボルト3に固定されている。このアンカーボルト3は、押さえプレート7を貫通し、押さえプレート7は、ナット8aの締め付けにより、アンカーボルト3を介して立上がりブロック5の上面にしっかりと固定され、そして、押さえプレート7の押さえ付けにより、定規アングル材6が立上がりブロック5の上面にしっかりと固定される。
【0017】
なお、貫通孔5aの上端開口からグラウトG1を注入するにあたって、幅の狭い固定用プレート(不図示)が利用される。この固定用プレートにアンカーボルト3の上部を貫通させ、ナット8aの締め付けにより、固定用プレートは立上がりブロック5の上面にしっかりと固定される。この状態では、貫通孔5aの上端開口が完全に塞がれていないので、貫通孔5aの上端開口からグラウトG1が注入される。そして、グラウトG1硬化後に、固定用プレート(不図示)及びナット8aが外される。その後、アンカーボルト3の上部を押さえプレート7に貫通させ、押さえプレート7は、ナット8aの締め付けにより、アンカーボルト3を介して立上がりブロック5の上面にしっかりと固定される。
【0018】
また、壁パネル1には、輪付きボルト10が差し込まれており、このリング部10aには、壁パネル1の内部で水平方向に延在するアンカー鋼棒11が挿入され、これによって、輪付きボルト10が壁パネル1に固定される。ボルト部10bの端部は、壁パネル1の裏面から露出させられ、輪付きボルト10のボルト部10bと定規アングル材6の上端とを架け渡すように、イナズマプレート12を壁パネル1の裏面に沿って配置させる。
【0019】
このとき、イナズマプレート12の上端側では、輪付きボルト10のボルト部10bが貫通され、イナズマプレート12の下端は、定規アングル材6を上から押さえ込む。この状態で、ボルト部10bにナット13を螺着させ、ナット13を締め込むことにより、壁パネル1が立上がり基礎構造A上にしっかりと固定させられる。
【0020】
なお、立上がりブロック5の上面と壁パネル1の下面との間には、ポリエチレン発泡体などのバックアップ材14が挿入され、更にバックアップ材14に突き当てるようにしてシーリング材15が取り付けられる。また、屋外となる表側において、床スラブ2と立上がりブロック5との間にも、シーリング材16が取り付けられる。これにより、立上がりブロック5と壁パネル1の間及び床スラブ2と立上がりブロック5との間に外部からの水や埃などが侵入するのを防止している。
【0021】
ここで、立上がり基礎構造Aに利用される立上がりブロック設置金具20について説明する。
【0022】
図2に示されるように、立上がりブロック設置金具20は、立上がりブロック5の高さよりも長いアンカーボルト3と、アンカーボルト3に螺着される板状のレベル金物4と、アンカーボルト3の下端に螺着されるナット21と、アンカーボルト3が貫通し且つナット21で支持されるワッシャ22と、からなる。
【0023】
レベル金物4は、中央に形成されてアンカーボルト3に螺合する雌ネジ部4aと、径方向に延在する複数の保持片4bと、を有する。そして、保持片4bは、4本で十字状になるように配置され、各保持片4bには、略三角形状の端部4cが形成されている。また、ナット21とワッシャ22とで、アンカーボルト3の径より拡径された抜け止め部23が構成され、アンカーボルト3の抜け耐力の向上に寄与する。なお、保持片4bの間は、グラウト注入部Pとして利用される。
【0024】
次に、立上がりブロックの施工方法について説明する。
【0025】
図3(a)に示されるように、床スラブ2に所定深さの孔部2aをドリルによって穿設する。その後、図3(b)及び図4に示されるように、アンカーボルト3にレベル金物4を螺着させた状態で、アンカーボルト3の下端側のナット21及びワッシャ22を床スラブ2の孔部2a内に挿入する。このとき、アンカーボルト3の下端側のナット21が孔部2aの底から浮いた状態で、レベル金物4の保持片4bを床スラブ2の表面上に設置させる。
【0026】
このとき、孔部2aのドリル施工時に芯出しとして利用されるケガキ線L上に、レベル金物4の保持片4bにおける略三角形状の端部4cの頂部が載るようにする。これにより、4本の保持片4bを、床スラブ2上に引かれたケガキ線Lに合わせるだけで、アンカーボルト3の芯出しを正確に行うことができる。このことは、アンカーボルト3の設置作業性を良好にする。
【0027】
この状態で、図3(c)及び図5に示されるように、グラウト注入部Pから孔部2a内にグラウトG2を注入する。図3(d)に示されるように、グラウトG2の硬化後に、床スラブ2の表面と立上がりブロック5との隙間すなわち目地部Mを形成するために、レベル金物4を回しながら、床スラブ2の表面から所定の高さ寸法Hまでレベル金物4を上昇させる。そして、立上がりブロック5の貫通孔5a内にアンカーボルト3を挿入させながら、レベル金物4上に立上がりブロック5を載置させる。
【0028】
その後、図1に示されるように、固定用プレート(不図示)にアンカーボルト3の上部を貫通させ、ナット8aの締め付けにより、アンカーボルト3を介して立上がりブロック5の上面にしっかりと固定させる。この状態で、貫通孔5aの上端開口が完全に塞がれていないので、貫通孔5aの上端開口からグラウトG1が注入される。また、目地部MにもグラウトG1を注入する。これによって、グラウトG1が、床スラブ2の表面と立上がりブロック5との間の目地部Mや貫通孔5aに充填される。なお、グラウトG1の注入前に、床スラブ2と立上がりブロック5との間にシーリング材16が取り付けられる。そして、グラウトG1硬化後に、固定用プレート(不図示)及びナット8aが外される。
【0029】
その後、アンカーボルト3の上部を押さえプレート7に貫通させて、押さえプレート7の下に定規アングル材6の端部を潜り込ませるように、立上がりブロック5の上面に定規アングル材6を載置させる。そして、アンカーボルト3にナット8aを螺着させて、ナット8aを締め込むことで、立上がりブロック5の上面で、押さえプレート7により定規アングル材6が固定される。
【0030】
この立上がりブロックの施工方法においては、床スラブ2に孔部2aをドリル施工するにあたって、孔部2aが所定位置で鉛直方向に正確に形成されていなくても、孔部2aの加工精度に影響されることなく、鉛直方向に精度良くアンカーボルト3を立設させることができる。従って、ドリル施工に神経を使うことなく、床スラブ2にアンカーボルト3を精度良く立設させることができる。
【0031】
さらに、アンカーボルト3の固定作業に使われたレベル金物4を、立上がりブロック5の設置に再度利用するために、レベル金物4を回しながら、床スラブ2の表面から所定の高さ寸法Hまでレベル金物4を上昇させるので、一個のレベル金物4は、アンカーボルト3の自立と立上がりブロック5の設置との両方に利用されることになる。また、レベル金物4の位置調整だけで、アンカーボルト3の埋設深さを容易に設定することができる。更に、アンカーボルト3はグラウトG2により床スラブ2に固定されるので、アンカーボルト3の施工時に床スラブ2に負荷が加わることなく、孔部2aの周辺で床スラブ2にヒビ割れが発生する虞も無い。
【0032】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、レベル金物4の保持片4bの本数は、2本以上であればよく、保持片4bは、十字状に限定されず、Y字状であってもよい。円形又は矩形の板状をなすレベル金物に孔部を形成し、この孔部をグラウト注入部にしてもよい。また、抜け止め部23は、フランジ付きナットであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…壁パネル、2…床スラブ、2a…孔部、3…アンカーボルト、4…レベル金物、4a…雌ネジ部、4b…保持片、5…立ち上がりブロック、20…立上がりブロック設置金具、21…ナット、22…ワッシャ、23…抜け止め部、A…立上がり基礎構造、G2…グラウト、L…ケガキ線、P…グラウト注入部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブにアンカーボルトが固定され、床スラブから露出させたアンカーボルトの雄ネジ部にレベル金物が螺着され、前記レベル金物上に立上がりブロックが載置されてなる立上がり基礎構造において、
前記床スラブに孔部を形成する工程と、
前記アンカーボルトに前記レベル金物を螺着させた状態で、前記アンカーボルトの下端側を前記床スラブの前記孔部内に挿入して、前記アンカーボルトの下端が前記孔部の底から浮いた状態で、前記レベル金物を前記床スラブの表面上に設置させる工程と、
前記レベル金物に形成されたグラウト注入部から前記孔部内にグラウトを注入する工程と、
前記床スラブの表面と前記立上がりブロックとの隙間を形成するために、前記グラウト硬化後に、前記レベル金物を回しながら、前記床スラブの前記表面から所定の高さ寸法まで前記レベル金物を上昇させる工程と、
前記レベル金物上に前記立上がりブロックを載置させる工程と、を備えたことを特徴とする立上がりブロックの施工方法。
【請求項2】
前記レベル金物は、中央に形成されて前記アンカーボルトに螺合する雌ネジ部と、径方向に延在する複数の保持片と、を有することを特徴とする請求項1記載の立上がりブロックの施工方法。
【請求項3】
前記保持片は、4本で十字状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の立上がりブロックの施工方法。
【請求項4】
前記アンカーボルトの下端には、前記アンカーボルトの径より拡径された抜け止め部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の立上がりブロックの施工方法。
【請求項5】
前記抜け止め部は、前記アンカーボルトの下端に螺着されたナットと、前記アンカーボルトが挿入されると共に、前記ナットの上面に当接させられるワッシャと、を有することを特徴とする請求項4に記載の立上がりブロックの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44204(P2013−44204A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184022(P2011−184022)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】