立体トラスの接合部構造
【課題】任意曲面の立体トラス架構を構成する場合において、各節点部が板材により形成されるトラス部材の接合を容易に行うことができる立体トラスの接合部構造を提供する。
【解決手段】下弦材2とラチス材3との節点に下弦節点継手金物8を配置する。下弦節点継手金物8は軸方向を上弦材の軸方向に一致させて平面視ほぼ十字型に配置された複数のコアプレート8aと、隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる各入り隅部cに、軸方向を下弦材2の軸方向に一致させて配置された複数のガセットプレート8bと、軸方向をラチス材3の軸方向に一致させて各入り隅部cにそれぞれ配置された複数のガセットプレート8cとから構成し、各ガセットプレート8bとガセットプレート8c間にリブプレート8dを取り付ける。
【解決手段】下弦材2とラチス材3との節点に下弦節点継手金物8を配置する。下弦節点継手金物8は軸方向を上弦材の軸方向に一致させて平面視ほぼ十字型に配置された複数のコアプレート8aと、隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる各入り隅部cに、軸方向を下弦材2の軸方向に一致させて配置された複数のガセットプレート8bと、軸方向をラチス材3の軸方向に一致させて各入り隅部cにそれぞれ配置された複数のガセットプレート8cとから構成し、各ガセットプレート8bとガセットプレート8c間にリブプレート8dを取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体育館などの屋根架構に用いられる立体トラスの接合部構造に関し、全体が曲面や多面体などの任意曲面の立体トラス架構を構成する場合において、各節点部が板材により形成されるトラス部材の接合を従来よりも容易に行うことができる。
【背景技術】
【0002】
構造が立体トラスで、例えば図1に図示するように上弦材1の軸方向と下弦材2の軸方向が概ね平行な架構、あるいは図2に図示するように上弦材1の軸方向と下弦材2の軸方向が概ね45度交差する架構において、全体が曲面や多面体などの任意形状である場合、上弦材1、下弦材2および上弦材1と下弦材2とを繋ぐラチス材3は任意の角度で上弦節点aあるいは下弦節点bに集まるため、各節点の接合部を板材で製作すると各板材同士の接合がきわめて複雑なものになる。
【0003】
そこで従来、それを避けるためにラチス材などの部材を捩じる、あるいは接合部の板材を曲げるなどの処置を施していたが、設計や製作に多くの時間と労力を費やすことが多かった。
【0004】
例えば、図11(a),(b)に図示する従来の立体トラスの例で説明すると、同図は、上弦材1と下弦材2の関係が図2に図示する立体トラス架構の一部分を示したものであり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のホ−ホ線断面図である。
【0005】
即ち、複数の上弦材1が構成する上弦面が直交格子、複数の下弦材2が構成する下弦面が平面視で概ね45度交差する斜交格子であり、下弦節点bは4本の上弦材1で囲まれた平面視で四角形の中央下面に位置し、上弦節点aと下弦節点bとを結ぶラチス材3は平面視で下弦材2の直上にあり、上弦面は平面、下弦面は下弦節点bを通る屋根版折り曲げ線ヘ−ヘにより1方向に折り曲げられた場合を示している。
【0006】
図11(b)から分るように、下弦面が折れ曲がっているために、上弦節点aの十字プレート4と下弦節点bの十字プレート5の向きがそれぞれ違う方向を向いているので、ラチス材3(図では2本のL形鋼材)の軸線が上下弦節点a、bに一致するように取り付けるには、図示するように上弦節点aのガセットプレート6と下弦節点bの十字プレート5のそれぞれの面と、ラチス材3のL形鋼両端部との接触面に肌すきが生じないように、ラチス材3のL形鋼を捩じって接合する必要があり、立体トラスの製作を難しいものにしていた。下弦材2についても同様であった。
【0007】
また、ラチス材3を捩じらない方法として、上弦節点aのガセットプレート6と下弦節点bの十字プレート5のそれぞれの面を、ラチス材3のL形鋼両端部との接触面に合うように折り曲げることでも接合は可能であるが、屋根版を二方向に折り曲げる(曲率を持つ)場合には、さらに複雑な接合部の納まりとなり、製作手間と製作コストだけでなく外観も悪くなるという問題もあった。
【0008】
上記問題を解決した従来方法として、接合部に球体や円柱を設け、各部材の端部を溶接する、あるいは部材端に特殊金物を設けた鋼管を用いて球体と1本ボルトで接合することで、無理なく各部材の軸線を一点に引き付ける方法、あるいは、接合部を板材で製作するが、各部材の軸線を一点に引き付けるのではなく若干偏心させることで、部材を捩じる、あるいはガセットプレートを曲げる等しなくてもよい方法が用いられていた。
【0009】
しかし、接合部に球体を用いる方法は、特殊金物とねじ切り等の機械加工が必要であること、円柱を用いる方法は、ガセットプレートとの溶接線が曲線となるため、精度確保等製作手間がかかる等の理由からコストが高くなり、また、部材軸線の引き付けを偏心させる方法は、偏心による局部曲げが発生し、別途処理が必要になるという面倒さがあった。本発明に関連する先行技術文献としては、例えば特許文献1〜3が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭45-33572「版状立体トラスの各接点の接合方法」
【特許文献2】実公昭53-28967「立体トラスに於ける仕口構造」
【特許文献3】特許第3537771号「立体トラスの接合部構造」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
文献1および2における立体トラスの接合方法は、上弦節点と下弦節点とを繋ぐラチス材の両端部を板材にて接合するものであるが、立体トラスの形状が概ね平版に限られるものであり、例えばドーム等のように曲面の場合では、部材を捩じるあるいは板材を曲げる、あるいは各部材の軸線を一点に引き付けるのではなく、若干偏心させる等の従来方法が必要になるという課題があった。
【0012】
また、特許文献3における立体トラスの接合方法は、上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね平行な架構について、上弦節点と下弦節点において平面視で概ね直交に交差配置される一対の接合金物と、一対の略山形状のガセットプレート頂部にほぞ溝を刻設したものから構成され、それら一対のガセットプレートが対向するようにほぞ溝を接合金物に挿入したものである。
【0013】
従って、ラチス材端部と接合される略山形状のガセットプレートの角度を変更することにより、平版だけでなく、例えば一方向に曲率を有する円筒形などの屋根版を形成することも可能である。
【0014】
しかし、図1および図2に図示するようにドーム等の二方向に曲率を持つ形状に対しては、やはり特許文献1ないし2と同様、適用は難しい。
【0015】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、全体が曲面や多面体などの任意曲面の立体トラス架構を構成する場合でも、各節点部におけるトラス部材の接合を容易に行うことのできる立体トラスの接合部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の立体トラスの接合部構造は、平面視において直交格子とした上弦材と、当該直交格子の網目中央下面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記上弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした下弦材と、前記上弦材の上弦節点と前記下弦材の下弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記上弦節点と前記下弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記下弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を備え、前記下弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明は、立体トラス架構の各節点における上弦材、下弦材およびラチス材の端部を互いに節点継手金物を介して接合することにより、特に下弦材とラチス材の端部は、節点継手金物に形成された入り隅部の隣り合う二側面部にガセットプレートを介して接合することにより下弦材とラチス材の接合を容易に行えるようにしたものである。
【0018】
本発明によれば、各節点に集まる下弦材とラチス材の軸方向に合せて、ガセットプレートの向きを自由に設定することが可能なことにより、従来、接合部の納まりが難しかった曲面や多面体などの任意形状の立体トラス架構を容易かつ安価に製作することができる。
【0019】
また、採用されることの多い平版、山形あるいは一方向のみに曲率を持つ円筒形などの立体トラス架構の場合には、接合部の形状がより単純になり、立体トラス架構をより廉価に製作することができる。
【0020】
節点継手金物は、節点部に集まる上弦材、下弦材およびラチス材の数量や向きに合せて、プレートや鋳造により容易に形成することができる。
【0021】
請求項2記載の立体トラスの接合部構造は、平面視において直交格子とした下弦材と、当該直交格子の網目中央上面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記下弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした上弦材と、前記下弦材の下弦節点と前記上弦材の上弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記下弦節点と前記上弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記上弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を有し、前記上弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とするものである。
【0022】
本発明は、請求項1記載の立体トラスの接合部構造において、上弦面と下弦面の格子形状が入れ替わっただけであり、課題解決の手段・効果としては、請求項1と全く同じである。
【0023】
請求項3記載の立体トラスの接合部構造は、請求項1ないし2記載の立体トラスの接合部構造において、節点継手金物は複数のコアプレートから形成されてなることを特徴とするものである。
【0024】
節点継手金物は、例えば、四枚のコアプレートを平面視ほぼ十字型に突合せ、かつ互いを溶接等で結合することにより容易に製作することができる。また特に、屋根周縁部の節点部に設置される節点継手金物は、三枚のコアプレートを平面視ほぼT字型に突合せ、かつ互いを溶接等で結合することにより形成することができ、さらに屋根のコーナ部に設置される節点継手金物は、二枚のコアプレートを平面視ほぼL字型に突合せ、かつ互いを溶接等で結合することにより容易に製作することができる。
【0025】
そして、いずれのタイプも、隣り合う二枚のコアプレートからなる入り隅部にガセットプレートを配置し、かつ隣り合う二枚のコアプレートに溶接等により取り付けるだけでよい。
【0026】
また、ガセットプレートは、工場などで節点継手金物を製作する際に、金物の一部として予め取り付けておき、現場ではラチス材などの接合を接合ボルトのみで行うようにすれば、現場作業を効率的に行うことができる。
【0027】
請求項4記載の立体トラスの接合部構造は、請求項1ないし3記載の立体トラスの接合部構造において、ガセットプレートは、節点部に集まる複数の下弦材または上弦材が接合される共有のガセットプレートとして突設されてなることを特徴とするものである。
【0028】
本発明によれば、ガセットプレートの数量と溶接個所が少なく、容易に製作できる等のメリットがある。
【発明の効果】
【0029】
(1) 任意曲面を有する立体トラス架構を形鋼で構成する場合でも、本発明による節点継手金物を用いるトラス接合部の納め方によれば、ガセットプレートの傾きと形状で調整することができるので、部材軸線の引き付け点を偏心させる必要がなく、また部材を捩るあるいは接合部の板材を曲げる必要もなくなるので、節点継手金物を板材で構成しても、設計、製作が容易である。
【0030】
(2) 通常、よく採用される網目割(上弦面、下弦面共に直交格子)の屋根版(図1参照)において、経済性を考慮して部材数を減らすために格子寸法を大きくすることがあるが、そうすると上弦材の座屈長が長くなり、また上弦材に沿って設ける母屋受け材などの支点(上弦節点)間距離が長くなるという欠点があった。
【0031】
即ち、上弦材および母屋受け材などのサイズが大きくなるが、本発明が対象とする図2に図示するタイプの立体トラス構造によれば、平面視において、上弦(直交格子)の網目は、下弦(斜交格子)の網目に対して概ね45度回転して内接する形になるため、上弦面の網目一辺の長さは下弦面の70%程度となる。
【0032】
即ち、下弦材は長くなるが、上弦材は座屈長が短いので細い部材でも圧縮耐力を確保でき、また母屋受け材などの支点(上弦節点)間距離も短いので、上弦材および母屋受け材などのサイズは通常の網目割を大網目にした場合よりも小さくてすむ。また、下弦材とラチス材の本数が前記通常網目割よりも少なくて済む。
【0033】
これらのことは、材料の効率的使用の観点から、特に多雪地域や重い仕上げ材(コンクリート等)を葺く場合に有利であるが、このようなタイプの立体トラス架構について、従来、接合部の納まりが難しかった任意形状の場合であっても、本発明によれば、容易かつ安価に製作することに対して大いに貢献する。
【0034】
(3) 本発明によれば、採用されることの多い平版、山形あるいは一方向のみに曲率を持つ円筒形などの場合には、接合部の形状がより単純になるので、より廉価な立体トラスの製作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね平行な立体トラス架構を示す斜視図である。
【図2】上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね45度交差する立体トラス架構を示す斜視図である。
【図3】上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね45度交差する立体トラス架構の平版タイプを示し、(a)はその平面図、(b)は(a)におけるイ−イ線断面図である。
【図4】立体トラス架構の節点部を示し、上弦節点部の平面図である。
【図5】立体トラス架構の節点部を示し、(a)は下弦節点部の縦断面図、(b)は(a)におけるロ−ロ線平面図である。
【図6】立体トラス架構の周辺部の節点部を示し、(a)はラチス材を含む上弦節点部の平面図、(b)はコーナ部のラチス材を含む上弦節点部の平面図である。
【図7】立体トラス架構の周辺部の節点部を示し、(a)はラチス材を含む下弦節点部の平面図、(b),(c)はコーナ部の下弦節点部の平面図である。
【図8】立体トラス架構の下弦節点部のガセットプレート共有の場合を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)におけるハ−ハ線平面図である。
【図9】立体トラス架構の下弦節点部のガセットプレートが共有の場合で、特に平版の場合を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)におけるニ−ニ線平面図である。
【図10】組立前の下弦節点継手金物を示し、(a)は分解平面図、(b)は分解側面図である。
【図11】従来の立体トラス架構の一部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)におけるホ−ホ線側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図2〜図10は、本発明に係る立体トラス架構とその接合部の一実施形態を示す。最も単純な平版タイプを示す図3にて説明すれば、複数の上弦材1と下弦材2は、その軸方向を概ね45度互いに交差し、上弦材1は直交格子に、下弦材2は斜交格子にそれぞれ配置され、平面視において、直交格子の網目中央下面に斜交格子の下弦節点b部が位置し、かつ直交格子の網目寸法は、斜交格子の網目寸法より小さく、斜交格子の網目に内接する大きさに形成されている。
【0037】
また、上弦節点aと下弦節点b間に複数のラチス材3が四角錐体形状に配置され、これにより上弦材格子と下弦材格子が立体的に結合されている。上弦材1と下弦材2は、いずれも2本のL形鋼を背中合わせに抱き合せることにより形成され、ラチス材3は鋼管から形成されている。
【0038】
なお、上弦材1と下弦材2にはL形鋼の他に溝形鋼などの形鋼や鋼管も利用することができ、またラチス材にはL形鋼や溝形鋼などの形鋼を利用することができる。
【0039】
また、各上弦節点aに上弦節点継手金物7が、各下弦節点bに下弦節点継手金物8がそれぞれ配置され、これら継手金物7と8を介して上弦材1同士および上弦材1とラチス材3、下弦材2同士および下弦材2とラチス材3がそれぞれ互いに接合されている。
【0040】
図4に図示するように上弦節点継手金物7は、軸方向を各上弦材1の軸方向に一致させて平面視ほぼ十字型に配置された複数のコアプレート7aと、隣り合う二枚のコアプレート7a,7aからなる各入り隅部cに軸方向をラチス材3の軸方向に一致させて配置された複数のガセットプレート7bとから構成されている。
【0041】
コアプレート7aは、四枚を互いに突き合せ、その突き合せた端部を溶接することにより一体に結合され、各ガセットプレート7bは隣り合う二枚のコアプレート7a,7aの側面部に溶接することによりコアプレート7a,7aと一体に結合されている。
【0042】
なお、一枚のコアプレート7aの両側に二枚のコアプレート7a,7aを対称に突き合せて平面視ほぼ十字型に配置し、その突き合せた端部を溶接により結合してもよい。ガセットプレート7bは、ラチス材3の軸方向に一致させて取り付ければよい。
【0043】
また特に、屋根周縁部の各上弦節点aに設置される節点継手金物7は、図6(a)に図示するように、三枚のコアプレート7aを平面視ほぼT字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート7a,7aからなる各入り隅部cにガセットプレート7bを突設することにより形成されている。
【0044】
また、屋根コーナ部の各上弦節点aに設置される節点継手金物7は、図6(b)に図示するように、二枚のコアプレート7aを平面視ほぼL字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート7a,7aからなる入り隅部cにガセットプレート7bを突設することにより形成されている。
【0045】
そして、各コアプレート7aに各上弦材1の端部が複数の接合ボルト9によって接合され、各ガセットプレート7bにラチス材3の上端部が複数の接合ボルト9によって接合されている。
【0046】
なお、ラチス材3の上端部は、ラチス材3の端部に突設された継手プレート3aをガセットプレート7bに接合ボルト9によってボルト締結することにより接合されている。
【0047】
図5(a)および図5(b)に図示するように、下弦節点継手金物8は、軸方向を各上弦材1の軸方向に一致させて平面視ほぼ十字型に配置された複数のコアプレート8aと、隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる各入り隅部cに、軸方向を下弦材2の軸方向に一致させて配置された複数のガセットプレート8bと、軸方向をラチス材3の軸方向に一致させて前記入り隅部にそれぞれ配置された複数のガセットプレート8cと、各ガセットプレート8bとガセットプレート8cとを連結する複数のリブプレート8dとから構成されている。
【0048】
コアプレート8aは、四枚が互いに突き合せられ、その突き合せた端部を溶接することにより一体に結合され、ガセットプレート8bとガセットプレート8cは隣り合う二枚のコアプレート8a,8aの側面部に溶接することにより隣り合う二枚のコアプレート8a,8aと一体に結合されている。そして、リブプレート8dは、ガセットプレート8bと8cの中央にそれぞれ溶接することによりガセットプレート8bと8cに一体に結合されている。
【0049】
なお、一枚のコアプレート8aの両側に二枚のコアプレート8a,8aを対称に突き合せて平面視ほぼ十字型に配置し、その突き合せた端部を溶接により結合してもよい。ガセットプレート8bと8cは、それぞれ下弦材2とラチス材3の軸方向に一致させて取り付ければよい。
【0050】
また特に、屋根周縁部の各下弦節点bに設置される節点継手金物8は、図7(a)に示すように、三枚のコアプレート8aを平面視ほぼT字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる各入り隅部cにガセットプレート8bと8cをそれぞれ突設することにより形成されている。
【0051】
また、屋根コーナ部の各下弦節点bに設置される節点継手金物8は、図7(b)、(c)に示すように、二枚のコアプレート8aを平面視ほぼL字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる入り隅部cにガセットプレート8bと8cをそれぞれ突設することにより形成されている。
【0052】
そして、ガセットプレート8bとリブプレート8dに下弦材2の端部が複数の接合ボルト9によって接合され、ガセットプレート8cにラチス材3の下端部が複数の接合ボルト9によって接合されている。
【0053】
なお、下弦材2の接合には継手プレート10が併用されている。また、ラチス材3の下端部は、ラチス材3の端部に突設された継手プレート3aをガセットプレート8cに複数の接合ボルト9によってボルト締結することにより接合されている。
【0054】
図8(a),(b)は、下弦節点継手金物8の変形例を示し、四本の下弦材2を接合する複数のガセットプレート8bが一枚のガセットプレートとして形成され、かつ屋根版の形状に合せて下方に折り曲げられている。
【0055】
また、ガセットプレート8bの形状に合せて、各コアプレート8aは下端部がガセットプレート8bの上面に密着するように形成され、かつガセットプレート8bの上面に溶接することにより結合されている。
【0056】
この変形例は、同筒形や山形の場合に適用でき、部品数と溶接個所が少なく、廉価に製作できる等のメリットがある。
【0057】
図9(a),(b)は、同じく下弦節点継手金物8の変形例を示し、四本の下弦材2を接合する複数のガセットプレート8bが一枚のプレートから平板状に形成されている。また、各コアプレート8aはガセットプレート8bの上面に溶接することにより結合されている。
【0058】
この変形例は、平版や片流れの屋根に適用でき、部品数と溶接個所が少なく、廉価に製作できる等のメリットがある。
【0059】
図10(a),(b)は、同じく下弦節点継手金物8の変形例を示し、隣り合う二本の下弦材2が接合される二枚のガセットプレート8bと、隣り合う二本のラチス材3が接合される二枚のガセットプレート8cが、それぞれ一枚のガセットプレートとして形成されている。また、ガセットプレート8bとガセットプレート8cの中央にほぞ溝8eがそれぞれ形成されている。そして、ガセットプレート8bとガセットプレート8cは、それぞれほぞ溝8eにコアプレート8aを挿入し、コアプレート8aに溶接することにより一体に結合されている。
【0060】
この変形例によれば、部品数と溶接個所が少なく、廉価に製作できる等のメリットがある。また、一方向に曲率を有する円筒形等の立体トラス架構に適用できる。
【0061】
なお、図2〜図10に図示する実施形態は、複数の上弦材1と下弦材2が、その軸方向を概ね45度互いに交差し、上弦材1は直交格子に、下弦材2は斜交格子にそれぞれ配置された立体トラス架構を想定したものであるが、上弦面と下弦面の格子形状が入れ替わった立体トラス架構についても適用可能なことはいうまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、全体が曲面や多面体などの任意曲面の立体トラス架構を構成する場合において、各節点部が板材により形成されるトラス部材の接合を従来よりも容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 上弦材
2 下弦材
3 ラチス材
3a 継手プレート
4 十字プレート
5 十字プレート
6 ガセットプレート
7 上弦節点継手金物
7a コアプレート
7b ガセットプレート
8 下弦節点継手金物
8a コアプレート
8b 下弦材と接合されるガセットプレート
8c ラチス材と接合されるガセットプレート
8d リブプレート
8e ほぞ溝
9 接合ボルト
10 継手プレート
a 上弦節点
b 下弦節点
c 入り隅部
【技術分野】
【0001】
本発明は、体育館などの屋根架構に用いられる立体トラスの接合部構造に関し、全体が曲面や多面体などの任意曲面の立体トラス架構を構成する場合において、各節点部が板材により形成されるトラス部材の接合を従来よりも容易に行うことができる。
【背景技術】
【0002】
構造が立体トラスで、例えば図1に図示するように上弦材1の軸方向と下弦材2の軸方向が概ね平行な架構、あるいは図2に図示するように上弦材1の軸方向と下弦材2の軸方向が概ね45度交差する架構において、全体が曲面や多面体などの任意形状である場合、上弦材1、下弦材2および上弦材1と下弦材2とを繋ぐラチス材3は任意の角度で上弦節点aあるいは下弦節点bに集まるため、各節点の接合部を板材で製作すると各板材同士の接合がきわめて複雑なものになる。
【0003】
そこで従来、それを避けるためにラチス材などの部材を捩じる、あるいは接合部の板材を曲げるなどの処置を施していたが、設計や製作に多くの時間と労力を費やすことが多かった。
【0004】
例えば、図11(a),(b)に図示する従来の立体トラスの例で説明すると、同図は、上弦材1と下弦材2の関係が図2に図示する立体トラス架構の一部分を示したものであり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のホ−ホ線断面図である。
【0005】
即ち、複数の上弦材1が構成する上弦面が直交格子、複数の下弦材2が構成する下弦面が平面視で概ね45度交差する斜交格子であり、下弦節点bは4本の上弦材1で囲まれた平面視で四角形の中央下面に位置し、上弦節点aと下弦節点bとを結ぶラチス材3は平面視で下弦材2の直上にあり、上弦面は平面、下弦面は下弦節点bを通る屋根版折り曲げ線ヘ−ヘにより1方向に折り曲げられた場合を示している。
【0006】
図11(b)から分るように、下弦面が折れ曲がっているために、上弦節点aの十字プレート4と下弦節点bの十字プレート5の向きがそれぞれ違う方向を向いているので、ラチス材3(図では2本のL形鋼材)の軸線が上下弦節点a、bに一致するように取り付けるには、図示するように上弦節点aのガセットプレート6と下弦節点bの十字プレート5のそれぞれの面と、ラチス材3のL形鋼両端部との接触面に肌すきが生じないように、ラチス材3のL形鋼を捩じって接合する必要があり、立体トラスの製作を難しいものにしていた。下弦材2についても同様であった。
【0007】
また、ラチス材3を捩じらない方法として、上弦節点aのガセットプレート6と下弦節点bの十字プレート5のそれぞれの面を、ラチス材3のL形鋼両端部との接触面に合うように折り曲げることでも接合は可能であるが、屋根版を二方向に折り曲げる(曲率を持つ)場合には、さらに複雑な接合部の納まりとなり、製作手間と製作コストだけでなく外観も悪くなるという問題もあった。
【0008】
上記問題を解決した従来方法として、接合部に球体や円柱を設け、各部材の端部を溶接する、あるいは部材端に特殊金物を設けた鋼管を用いて球体と1本ボルトで接合することで、無理なく各部材の軸線を一点に引き付ける方法、あるいは、接合部を板材で製作するが、各部材の軸線を一点に引き付けるのではなく若干偏心させることで、部材を捩じる、あるいはガセットプレートを曲げる等しなくてもよい方法が用いられていた。
【0009】
しかし、接合部に球体を用いる方法は、特殊金物とねじ切り等の機械加工が必要であること、円柱を用いる方法は、ガセットプレートとの溶接線が曲線となるため、精度確保等製作手間がかかる等の理由からコストが高くなり、また、部材軸線の引き付けを偏心させる方法は、偏心による局部曲げが発生し、別途処理が必要になるという面倒さがあった。本発明に関連する先行技術文献としては、例えば特許文献1〜3が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭45-33572「版状立体トラスの各接点の接合方法」
【特許文献2】実公昭53-28967「立体トラスに於ける仕口構造」
【特許文献3】特許第3537771号「立体トラスの接合部構造」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
文献1および2における立体トラスの接合方法は、上弦節点と下弦節点とを繋ぐラチス材の両端部を板材にて接合するものであるが、立体トラスの形状が概ね平版に限られるものであり、例えばドーム等のように曲面の場合では、部材を捩じるあるいは板材を曲げる、あるいは各部材の軸線を一点に引き付けるのではなく、若干偏心させる等の従来方法が必要になるという課題があった。
【0012】
また、特許文献3における立体トラスの接合方法は、上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね平行な架構について、上弦節点と下弦節点において平面視で概ね直交に交差配置される一対の接合金物と、一対の略山形状のガセットプレート頂部にほぞ溝を刻設したものから構成され、それら一対のガセットプレートが対向するようにほぞ溝を接合金物に挿入したものである。
【0013】
従って、ラチス材端部と接合される略山形状のガセットプレートの角度を変更することにより、平版だけでなく、例えば一方向に曲率を有する円筒形などの屋根版を形成することも可能である。
【0014】
しかし、図1および図2に図示するようにドーム等の二方向に曲率を持つ形状に対しては、やはり特許文献1ないし2と同様、適用は難しい。
【0015】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、全体が曲面や多面体などの任意曲面の立体トラス架構を構成する場合でも、各節点部におけるトラス部材の接合を容易に行うことのできる立体トラスの接合部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の立体トラスの接合部構造は、平面視において直交格子とした上弦材と、当該直交格子の網目中央下面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記上弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした下弦材と、前記上弦材の上弦節点と前記下弦材の下弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記上弦節点と前記下弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記下弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を備え、前記下弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明は、立体トラス架構の各節点における上弦材、下弦材およびラチス材の端部を互いに節点継手金物を介して接合することにより、特に下弦材とラチス材の端部は、節点継手金物に形成された入り隅部の隣り合う二側面部にガセットプレートを介して接合することにより下弦材とラチス材の接合を容易に行えるようにしたものである。
【0018】
本発明によれば、各節点に集まる下弦材とラチス材の軸方向に合せて、ガセットプレートの向きを自由に設定することが可能なことにより、従来、接合部の納まりが難しかった曲面や多面体などの任意形状の立体トラス架構を容易かつ安価に製作することができる。
【0019】
また、採用されることの多い平版、山形あるいは一方向のみに曲率を持つ円筒形などの立体トラス架構の場合には、接合部の形状がより単純になり、立体トラス架構をより廉価に製作することができる。
【0020】
節点継手金物は、節点部に集まる上弦材、下弦材およびラチス材の数量や向きに合せて、プレートや鋳造により容易に形成することができる。
【0021】
請求項2記載の立体トラスの接合部構造は、平面視において直交格子とした下弦材と、当該直交格子の網目中央上面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記下弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした上弦材と、前記下弦材の下弦節点と前記上弦材の上弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記下弦節点と前記上弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記上弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を有し、前記上弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とするものである。
【0022】
本発明は、請求項1記載の立体トラスの接合部構造において、上弦面と下弦面の格子形状が入れ替わっただけであり、課題解決の手段・効果としては、請求項1と全く同じである。
【0023】
請求項3記載の立体トラスの接合部構造は、請求項1ないし2記載の立体トラスの接合部構造において、節点継手金物は複数のコアプレートから形成されてなることを特徴とするものである。
【0024】
節点継手金物は、例えば、四枚のコアプレートを平面視ほぼ十字型に突合せ、かつ互いを溶接等で結合することにより容易に製作することができる。また特に、屋根周縁部の節点部に設置される節点継手金物は、三枚のコアプレートを平面視ほぼT字型に突合せ、かつ互いを溶接等で結合することにより形成することができ、さらに屋根のコーナ部に設置される節点継手金物は、二枚のコアプレートを平面視ほぼL字型に突合せ、かつ互いを溶接等で結合することにより容易に製作することができる。
【0025】
そして、いずれのタイプも、隣り合う二枚のコアプレートからなる入り隅部にガセットプレートを配置し、かつ隣り合う二枚のコアプレートに溶接等により取り付けるだけでよい。
【0026】
また、ガセットプレートは、工場などで節点継手金物を製作する際に、金物の一部として予め取り付けておき、現場ではラチス材などの接合を接合ボルトのみで行うようにすれば、現場作業を効率的に行うことができる。
【0027】
請求項4記載の立体トラスの接合部構造は、請求項1ないし3記載の立体トラスの接合部構造において、ガセットプレートは、節点部に集まる複数の下弦材または上弦材が接合される共有のガセットプレートとして突設されてなることを特徴とするものである。
【0028】
本発明によれば、ガセットプレートの数量と溶接個所が少なく、容易に製作できる等のメリットがある。
【発明の効果】
【0029】
(1) 任意曲面を有する立体トラス架構を形鋼で構成する場合でも、本発明による節点継手金物を用いるトラス接合部の納め方によれば、ガセットプレートの傾きと形状で調整することができるので、部材軸線の引き付け点を偏心させる必要がなく、また部材を捩るあるいは接合部の板材を曲げる必要もなくなるので、節点継手金物を板材で構成しても、設計、製作が容易である。
【0030】
(2) 通常、よく採用される網目割(上弦面、下弦面共に直交格子)の屋根版(図1参照)において、経済性を考慮して部材数を減らすために格子寸法を大きくすることがあるが、そうすると上弦材の座屈長が長くなり、また上弦材に沿って設ける母屋受け材などの支点(上弦節点)間距離が長くなるという欠点があった。
【0031】
即ち、上弦材および母屋受け材などのサイズが大きくなるが、本発明が対象とする図2に図示するタイプの立体トラス構造によれば、平面視において、上弦(直交格子)の網目は、下弦(斜交格子)の網目に対して概ね45度回転して内接する形になるため、上弦面の網目一辺の長さは下弦面の70%程度となる。
【0032】
即ち、下弦材は長くなるが、上弦材は座屈長が短いので細い部材でも圧縮耐力を確保でき、また母屋受け材などの支点(上弦節点)間距離も短いので、上弦材および母屋受け材などのサイズは通常の網目割を大網目にした場合よりも小さくてすむ。また、下弦材とラチス材の本数が前記通常網目割よりも少なくて済む。
【0033】
これらのことは、材料の効率的使用の観点から、特に多雪地域や重い仕上げ材(コンクリート等)を葺く場合に有利であるが、このようなタイプの立体トラス架構について、従来、接合部の納まりが難しかった任意形状の場合であっても、本発明によれば、容易かつ安価に製作することに対して大いに貢献する。
【0034】
(3) 本発明によれば、採用されることの多い平版、山形あるいは一方向のみに曲率を持つ円筒形などの場合には、接合部の形状がより単純になるので、より廉価な立体トラスの製作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね平行な立体トラス架構を示す斜視図である。
【図2】上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね45度交差する立体トラス架構を示す斜視図である。
【図3】上弦材の軸方向と下弦材の軸方向が概ね45度交差する立体トラス架構の平版タイプを示し、(a)はその平面図、(b)は(a)におけるイ−イ線断面図である。
【図4】立体トラス架構の節点部を示し、上弦節点部の平面図である。
【図5】立体トラス架構の節点部を示し、(a)は下弦節点部の縦断面図、(b)は(a)におけるロ−ロ線平面図である。
【図6】立体トラス架構の周辺部の節点部を示し、(a)はラチス材を含む上弦節点部の平面図、(b)はコーナ部のラチス材を含む上弦節点部の平面図である。
【図7】立体トラス架構の周辺部の節点部を示し、(a)はラチス材を含む下弦節点部の平面図、(b),(c)はコーナ部の下弦節点部の平面図である。
【図8】立体トラス架構の下弦節点部のガセットプレート共有の場合を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)におけるハ−ハ線平面図である。
【図9】立体トラス架構の下弦節点部のガセットプレートが共有の場合で、特に平版の場合を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)におけるニ−ニ線平面図である。
【図10】組立前の下弦節点継手金物を示し、(a)は分解平面図、(b)は分解側面図である。
【図11】従来の立体トラス架構の一部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)におけるホ−ホ線側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図2〜図10は、本発明に係る立体トラス架構とその接合部の一実施形態を示す。最も単純な平版タイプを示す図3にて説明すれば、複数の上弦材1と下弦材2は、その軸方向を概ね45度互いに交差し、上弦材1は直交格子に、下弦材2は斜交格子にそれぞれ配置され、平面視において、直交格子の網目中央下面に斜交格子の下弦節点b部が位置し、かつ直交格子の網目寸法は、斜交格子の網目寸法より小さく、斜交格子の網目に内接する大きさに形成されている。
【0037】
また、上弦節点aと下弦節点b間に複数のラチス材3が四角錐体形状に配置され、これにより上弦材格子と下弦材格子が立体的に結合されている。上弦材1と下弦材2は、いずれも2本のL形鋼を背中合わせに抱き合せることにより形成され、ラチス材3は鋼管から形成されている。
【0038】
なお、上弦材1と下弦材2にはL形鋼の他に溝形鋼などの形鋼や鋼管も利用することができ、またラチス材にはL形鋼や溝形鋼などの形鋼を利用することができる。
【0039】
また、各上弦節点aに上弦節点継手金物7が、各下弦節点bに下弦節点継手金物8がそれぞれ配置され、これら継手金物7と8を介して上弦材1同士および上弦材1とラチス材3、下弦材2同士および下弦材2とラチス材3がそれぞれ互いに接合されている。
【0040】
図4に図示するように上弦節点継手金物7は、軸方向を各上弦材1の軸方向に一致させて平面視ほぼ十字型に配置された複数のコアプレート7aと、隣り合う二枚のコアプレート7a,7aからなる各入り隅部cに軸方向をラチス材3の軸方向に一致させて配置された複数のガセットプレート7bとから構成されている。
【0041】
コアプレート7aは、四枚を互いに突き合せ、その突き合せた端部を溶接することにより一体に結合され、各ガセットプレート7bは隣り合う二枚のコアプレート7a,7aの側面部に溶接することによりコアプレート7a,7aと一体に結合されている。
【0042】
なお、一枚のコアプレート7aの両側に二枚のコアプレート7a,7aを対称に突き合せて平面視ほぼ十字型に配置し、その突き合せた端部を溶接により結合してもよい。ガセットプレート7bは、ラチス材3の軸方向に一致させて取り付ければよい。
【0043】
また特に、屋根周縁部の各上弦節点aに設置される節点継手金物7は、図6(a)に図示するように、三枚のコアプレート7aを平面視ほぼT字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート7a,7aからなる各入り隅部cにガセットプレート7bを突設することにより形成されている。
【0044】
また、屋根コーナ部の各上弦節点aに設置される節点継手金物7は、図6(b)に図示するように、二枚のコアプレート7aを平面視ほぼL字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート7a,7aからなる入り隅部cにガセットプレート7bを突設することにより形成されている。
【0045】
そして、各コアプレート7aに各上弦材1の端部が複数の接合ボルト9によって接合され、各ガセットプレート7bにラチス材3の上端部が複数の接合ボルト9によって接合されている。
【0046】
なお、ラチス材3の上端部は、ラチス材3の端部に突設された継手プレート3aをガセットプレート7bに接合ボルト9によってボルト締結することにより接合されている。
【0047】
図5(a)および図5(b)に図示するように、下弦節点継手金物8は、軸方向を各上弦材1の軸方向に一致させて平面視ほぼ十字型に配置された複数のコアプレート8aと、隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる各入り隅部cに、軸方向を下弦材2の軸方向に一致させて配置された複数のガセットプレート8bと、軸方向をラチス材3の軸方向に一致させて前記入り隅部にそれぞれ配置された複数のガセットプレート8cと、各ガセットプレート8bとガセットプレート8cとを連結する複数のリブプレート8dとから構成されている。
【0048】
コアプレート8aは、四枚が互いに突き合せられ、その突き合せた端部を溶接することにより一体に結合され、ガセットプレート8bとガセットプレート8cは隣り合う二枚のコアプレート8a,8aの側面部に溶接することにより隣り合う二枚のコアプレート8a,8aと一体に結合されている。そして、リブプレート8dは、ガセットプレート8bと8cの中央にそれぞれ溶接することによりガセットプレート8bと8cに一体に結合されている。
【0049】
なお、一枚のコアプレート8aの両側に二枚のコアプレート8a,8aを対称に突き合せて平面視ほぼ十字型に配置し、その突き合せた端部を溶接により結合してもよい。ガセットプレート8bと8cは、それぞれ下弦材2とラチス材3の軸方向に一致させて取り付ければよい。
【0050】
また特に、屋根周縁部の各下弦節点bに設置される節点継手金物8は、図7(a)に示すように、三枚のコアプレート8aを平面視ほぼT字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる各入り隅部cにガセットプレート8bと8cをそれぞれ突設することにより形成されている。
【0051】
また、屋根コーナ部の各下弦節点bに設置される節点継手金物8は、図7(b)、(c)に示すように、二枚のコアプレート8aを平面視ほぼL字型に突合わせ、その突合せた端部を溶接によって一体に結合し、かつ隣り合う二枚のコアプレート8a,8aからなる入り隅部cにガセットプレート8bと8cをそれぞれ突設することにより形成されている。
【0052】
そして、ガセットプレート8bとリブプレート8dに下弦材2の端部が複数の接合ボルト9によって接合され、ガセットプレート8cにラチス材3の下端部が複数の接合ボルト9によって接合されている。
【0053】
なお、下弦材2の接合には継手プレート10が併用されている。また、ラチス材3の下端部は、ラチス材3の端部に突設された継手プレート3aをガセットプレート8cに複数の接合ボルト9によってボルト締結することにより接合されている。
【0054】
図8(a),(b)は、下弦節点継手金物8の変形例を示し、四本の下弦材2を接合する複数のガセットプレート8bが一枚のガセットプレートとして形成され、かつ屋根版の形状に合せて下方に折り曲げられている。
【0055】
また、ガセットプレート8bの形状に合せて、各コアプレート8aは下端部がガセットプレート8bの上面に密着するように形成され、かつガセットプレート8bの上面に溶接することにより結合されている。
【0056】
この変形例は、同筒形や山形の場合に適用でき、部品数と溶接個所が少なく、廉価に製作できる等のメリットがある。
【0057】
図9(a),(b)は、同じく下弦節点継手金物8の変形例を示し、四本の下弦材2を接合する複数のガセットプレート8bが一枚のプレートから平板状に形成されている。また、各コアプレート8aはガセットプレート8bの上面に溶接することにより結合されている。
【0058】
この変形例は、平版や片流れの屋根に適用でき、部品数と溶接個所が少なく、廉価に製作できる等のメリットがある。
【0059】
図10(a),(b)は、同じく下弦節点継手金物8の変形例を示し、隣り合う二本の下弦材2が接合される二枚のガセットプレート8bと、隣り合う二本のラチス材3が接合される二枚のガセットプレート8cが、それぞれ一枚のガセットプレートとして形成されている。また、ガセットプレート8bとガセットプレート8cの中央にほぞ溝8eがそれぞれ形成されている。そして、ガセットプレート8bとガセットプレート8cは、それぞれほぞ溝8eにコアプレート8aを挿入し、コアプレート8aに溶接することにより一体に結合されている。
【0060】
この変形例によれば、部品数と溶接個所が少なく、廉価に製作できる等のメリットがある。また、一方向に曲率を有する円筒形等の立体トラス架構に適用できる。
【0061】
なお、図2〜図10に図示する実施形態は、複数の上弦材1と下弦材2が、その軸方向を概ね45度互いに交差し、上弦材1は直交格子に、下弦材2は斜交格子にそれぞれ配置された立体トラス架構を想定したものであるが、上弦面と下弦面の格子形状が入れ替わった立体トラス架構についても適用可能なことはいうまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、全体が曲面や多面体などの任意曲面の立体トラス架構を構成する場合において、各節点部が板材により形成されるトラス部材の接合を従来よりも容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 上弦材
2 下弦材
3 ラチス材
3a 継手プレート
4 十字プレート
5 十字プレート
6 ガセットプレート
7 上弦節点継手金物
7a コアプレート
7b ガセットプレート
8 下弦節点継手金物
8a コアプレート
8b 下弦材と接合されるガセットプレート
8c ラチス材と接合されるガセットプレート
8d リブプレート
8e ほぞ溝
9 接合ボルト
10 継手プレート
a 上弦節点
b 下弦節点
c 入り隅部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において直交格子とした上弦材と、該直交格子の網目中央下面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記上弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした下弦材と、前記上弦材の上弦節点と前記下弦材の下弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記上弦節点と下弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記下弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を有し、前記下弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【請求項2】
平面視において直交格子とした下弦材と、当該直交格子の網目中央上面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記下弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした上弦材と、前記下弦材の下弦節点と前記上弦材の上弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記下弦節点と上弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記上弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を有し、前記上弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【請求項3】
請求項1ないし2記載の立体トラスの接合部構造において、節点継手金物は複数のコアプレートから形成されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【請求項4】
請求項1ないし3記載の立体トラスの接合部構造において、ガセットプレートは、節点部に集まる複数の下弦材または上弦材が接合される共有のガセットプレートとして突設されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【請求項1】
平面視において直交格子とした上弦材と、該直交格子の網目中央下面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記上弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした下弦材と、前記上弦材の上弦節点と前記下弦材の下弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記上弦節点と下弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記下弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を有し、前記下弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【請求項2】
平面視において直交格子とした下弦材と、当該直交格子の網目中央上面に節点が位置しかつ部材軸方向が前記下弦材に対して概ね45度交差する斜交格子とした上弦材と、前記下弦材の下弦節点と前記上弦材の上弦節点間に配置された複数のラチス材、および前記下弦節点と上弦節点にそれぞれ配置された複数の節点継手金物とを備えてなる立体トラスの接合部構造において、前記節点継手金物は前記上弦材およびラチス材の端部に対向し、かつ隣り合う二側面部からなる入り隅部を有し、前記上弦材およびラチス材の端部は前記入り隅部の隣り合う二側面部にそれぞれのガセットプレートを介して接合されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【請求項3】
請求項1ないし2記載の立体トラスの接合部構造において、節点継手金物は複数のコアプレートから形成されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【請求項4】
請求項1ないし3記載の立体トラスの接合部構造において、ガセットプレートは、節点部に集まる複数の下弦材または上弦材が接合される共有のガセットプレートとして突設されてなることを特徴とする立体トラスの接合部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−149224(P2011−149224A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12202(P2010−12202)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000153616)株式会社巴コーポレーション (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000153616)株式会社巴コーポレーション (27)
【Fターム(参考)】
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