説明

立体型情報表示ボード

【課題】反転表示された情報を正しく表示させるための反射ミラーを用いて、画像等の情報を複数面側から同時に認識し得るようにした立体型情報表示ボードを提供する。
【解決手段】2枚の基板間の空間内に色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体3W,3Bを封入し、表示媒体3W,3Bを互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた本発明の立体型情報表示ボードでは、前記情報表示用パネルを2枚の透明基板1,2から成る両面表示型情報表示用パネルとし、前記情報表示用パネルを四角柱状筺体8の1つの側面に搭載し、前記1つの側面に隣接する他の側面に表示用透明窓9を形成するとともに、前記1つの側面および前記他の側面の隣接しない側の端部間を結ぶ対角面上に反射ミラー10を設けることにより、情報を複数面側から同時に認識し得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、前記2種類の表示媒体を互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた立体型情報表示ボードであって、特に、画像等の情報を複数面側から同時に認識し得るようにした立体型情報表示ボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像等の情報を表示することができる情報表示用パネルとして、本願出願人は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、2種類の表示媒体を互いに反転移動させて透明基板側に画像等の情報を表示する可逆式の情報表示用パネル(例えば、特許文献1参照)を提案している。この情報表示用パネルは、表示媒体を移動させ、表示媒体を構成する表示媒体用粒子同士のクーロン力、電極との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力等のバランスによって、基板間の電界がなくなってもなお、表示情報を長期間にわたって維持できるという、優れた表示保存性を発揮できる利点を有している。そのため、この情報表示用パネルを用いた情報表示ボードは、透明基板側に画像等の情報を長期間表示した後、簡単に消去して書き換えることができ、繰り返し使用することができる。
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/050606号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の情報表示ボードに用いる情報表示用パネルは、「2枚の基板の一方において情報表示を行う、片面表示型の情報表示用パネル」として構成されているため、「2枚の基板の双方において情報表示を行う、両面表示型の情報表示用パネル」として使用することができない。そのため、この情報表示用パネルを用いて構成した情報表示ボードでは、情報の複数面表示(例えば2面表示)を行うことができない。
なお、上記片面表示型の情報表示用パネルの2枚の基板を共に透明基板とすれば、原理的には2面表示が可能ではあるが、その場合、一方の面で文字等が正しく認識できるように表示したときに、他方の面では文字等が反転表示されるため、正しく認識できなくなるため、実用性に難がある。
【0005】
本発明は、反転表示された情報を正しく表示させるための反射ミラーを用いて、画像等の情報を複数面側から同時に認識し得るようにした立体型情報表示ボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1発明の立体側情報表示ボードは、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、前記2種類の表示媒体を互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた立体型情報表示ボードにおいて、前記情報表示用パネルを2枚の透明基板から成る両面表示型情報表示用パネルとし、前記情報表示用パネルを四角柱状筺体の1つの側面に搭載し、前記1つの側面に隣接する他の側面に表示用透明窓を形成するとともに、前記1つの側面および前記他の側面の隣接しない側の端部間を結ぶ対角面上に反射ミラーを設けたことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、第2発明の立体型情報表示ボードは、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、2種類の表示媒体を互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた立体型情報表示ボードにおいて、前記情報表示用パネルを2枚の透明基板から成る両面表示型情報表示用パネルとし、前記情報表示用パネルを四角柱状筺体の対向する2つの側面にそれぞれ搭載し、前記対向する2つの側面に隣接する他の2つの側面にそれぞれ表示用透明窓を形成するとともに、前記対向する2つの側面の互いに逆方向の端部間を結ぶ対角面上に両面反射ミラーを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の立体型情報表示ボードの好適例としては、前記四角柱状筺体の内部空間の所定の位置に照明手段を設けること、および、前記2種類の表示媒体の色は、表示状態の認識性および視認性が高い色の組合せとすること、がある。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の第1発明の立体型情報表示ボードによれば、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、前記2種類の表示媒体を互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた立体型情報表示ボードにおいて、前記情報表示用パネルを2枚の透明基板から成る両面表示型情報表示用パネルとし、前記情報表示用パネルを四角柱状筺体の1つの側面に搭載し、前記1つの側面に隣接する他の側面に表示用透明窓を形成するとともに、前記1つの側面および前記他の側面の隣接しない端部間を結ぶ対角面上に反射ミラーを設けたので、例えば四角柱状筺体を上から見下ろした場合の下側の側面に搭載した両面表示型情報表示用パネルにおいて正しく認識できるように文字等の情報を表示したとき、四角柱状筺体を上から見下ろした場合の右側(または左側)の側面に形成した表示用透明窓には、前記両面表示型情報表示用パネルの裏面像が反転されて表示されるため、前記文字等の情報を正しく認識することができる。したがって、画像等の情報を複数面(この場合、2面)側から同時に認識し得るようにした立体型情報表示ボードを提供することができる。
【0010】
上記構成の第2発明の立体型情報表示ボードによれば、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、2種類の表示媒体を互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた立体型情報表示ボードにおいて、前記情報表示用パネルを2枚の透明基板から成る両面表示型情報表示用パネルとし、前記情報表示用パネルを四角柱状筺体の対向する2つの側面にそれぞれ搭載し、前記対向する2つの側面に隣接する他の2つの側面にそれぞれ表示用透明窓を形成するとともに、前記対向する2つの側面の互いに逆方向の端部間を結ぶ対角面上に両面反射ミラーを設けたので、例えば四角柱状筺体を上から見下ろした場合の上側および下側の側面にそれぞれ搭載した両面表示型情報表示用パネルにおいて正しく認識できるように文字等の情報を表示したとき、四角柱状筺体を上から見下ろした場合の右側(または左側)および左側(または右側)の側面にそれぞれ形成した表示用透明窓には、前記各両面表示型情報表示用パネルの裏面像がそれぞれ反転されて表示されるため、前記文字等の情報を正しく認識することができる。したがって、画像等の情報を複数面(この場合、4面)側から同時に認識し得るようにした立体型情報表示ボードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明の立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、帯電した表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって移動方向を変えることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示を書き換える時あるいは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0013】
本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルの例を、図1(a),(b),図2(a),(b)に基づき説明する。なお、本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルは、表示面側基板として用いる2枚の透明基板から成る両面表示型情報表示用パネルとして構成されている。
【0014】
図1(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率(色)および帯電特性の異なる2種の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、互いに反転移動するように、基板1、2と垂直に移動させ、基板1側では、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うことにより画像等の情報を表示し、基板2側では、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うことにより基板1側に表示する画像等の情報を反転させて表示している。なお、図1(b)に示す例では、図1(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状に隔壁4を設けセルを形成している。また、図1(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0015】
図2(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率(色)および帯電特性の異なる2種の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、互いに反転移動するように、基板1、2と垂直に移動させ、基板1側では、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うことにより画像等の情報を表示し、基板2側では、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うことにより基板1側に表示する画像等の情報を反転させて表示している。なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状に隔壁4を設けセルを形成している。また、図2(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0016】
以上の説明は、粒子群からなる白色表示媒体3Wを粉流体からなる白色表示媒体に、粒子群からなる黒色表示媒体3Bを粉流体からなる黒色表示媒体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することができる。粉流体については後述する。
上記2種の表示媒体の色は、表示状態の認識性および視認性が高い色の組合せが好ましく、上述した「黒色および白色の組合せ」を好適に用いることができるが、「明色および暗色の組合せ」、「濃色および淡色の組合せ」など認識性、視認性が高い組合せであれば、他の色の組合せを用いることもできる。
【0017】
以下、本発明の立体型情報表示ボードの一例を図3(a)〜(d)に基づき説明する。この立体型情報表示ボードは、図2(b)に示す両面表示型情報表示用パネル(以下、両面表示型情報表示用パネル7という)を1枚搭載することにより、画像等の情報を2面側から同時に認識し得るように構成したものであり、平面図である図3(a)に示すように、両面表示型情報表示用パネル7を四角柱状筺体8の1つの側面(図示例では下側の側面)に搭載し、1つの側面に隣接する他の側面(図示例では右側の側面)に表示用透明窓9を形成するとともに、1つの側面および他の側面の隣接しない側の端部間を結ぶ対角面上に反射ミラー(好ましくは全反射ミラー)10を設けている。
【0018】
本発明の立体型情報表示ボードに搭載した両面表示型情報表示用パネル7に表示する情報の書き換えは、両面表示型情報表示用パネル7の基板間に封入した表示媒体(粒子)に電界を付与することによって行う。その際、両面表示型情報表示用パネル7に設けた電極5,6を用いて電界を付与することもできるし、両面表示型情報表示用パネル7を立体型情報表示ボードから取り外して、両面表示型情報表示用パネル7の外側から外部電界を付与することもできる。
【0019】
次に、上記立体型情報表示ボードにおける「画像等の情報の2面同時表示」について説明する。
例えば正面図である図3(b)に示すように、四角柱状筺体8の1つの側面に搭載した両面表示型情報表示用パネル7の表面に、図3(d)に例示するような情報(白色の背景と、1段目が「お知らせ」で、2段目が「講演会」で、3段目が「講師」で、4段目が「○○△△」で、5段目が「日時 ・・・・・・・」で、6段目が「場所 ・・・・・・・」である、黒色の文字とから成る)を表示したとき、両面表示型情報表示用パネル7の裏面に表示される情報は、左右が反転するとともに白黒が反転したものとなるが、四角柱状筺体8の他の側面に形成した表示用透明窓9を通して視認される情報は、反射ミラー10によって左右反転表示されるため、図3(c)に示すように、「図3(d)に示す両面表示型情報表示用パネル7の表面に表示した情報を、白黒反転させた情報」となる。したがって、画像等の情報を2面側から同時に認識し得るようにした立体型情報表示ボードを提供することができる。
なお、上記本発明の立体型情報表示ボードの四角柱状筺体8の内部空間の所定の位置に照明手段を設けることもでき、そのようにした場合、両面表示型情報表示用パネル7の裏面に表示される情報が反射ミラー10により反射され、表示用透明窓9を通して視認する際に暗くなって多少見にくくなる問題を回避することができる。
【0020】
次に、本発明の立体型情報表示ボードの他の例を図4(a)〜(e)に基づき説明する。この立体型情報表示ボードは、図2(b)に示す両面表示型情報表示用パネル(以下、両面表示型情報表示用パネル7という)を2枚搭載することにより、画像等の情報を4面側から同時に認識し得るように構成したものであり、平面図である図4(a)に示すように、両面表示型情報表示用パネル7を四角柱状筺体8の対向する2つの側面(図示例では上側および下側の側面)にそれぞれ搭載し、前記対向する2つの側面に隣接する他の2つの側面(図示例では右側および左側の側面)にそれぞれ表示用透明窓9を形成するとともに、前記対向する2つの側面の互いに逆方向の端部間(図示例では上側の側面の右端部および下側の側面の左端部間)を結ぶ対角面上に両面反射ミラー(好ましくは両面全反射ミラー)11を設けている。
【0021】
次に、上記立体型情報表示ボードにおける「画像等の情報の4面同時表示」について説明する。
例えば、四角柱状筺体8の1つの側面(この場合、上側の側面)に搭載した両面表示型情報表示用パネル7の表面に、図4(b)に例示するような情報(白色の背景と、1段目が「お知らせ」で、2段目が「講演会」で、3段目が「講師」で、4段目が「○○△△」で、5段目が「日時 ・・・・・・・」で、6段目が「場所 ・・・・・・・」である、黒色の文字とから成る)を表示したとき、両面表示型情報表示用パネル7の裏面に表示される情報は、左右が反転するとともに白黒が反転したものとなるが、四角柱状筺体8の他の側面(この場合、左側の側面)に形成した表示用透明窓9を通して視認される情報は、両面反射ミラー11によって左右反転表示されるため、図4(c)に示すように、「図4(b)に示す両面表示型情報表示用パネル7の表面に表示した情報を、白黒反転させた情報」となる。これと同時に、四角柱状筺体8の上記側面と対向する側面(この場合、下側の側面)に搭載した両面表示型情報表示用パネル7の表面に、図4(d)に例示するような情報(白色の背景と、1段目が「INFORMATION」で、2段目が「明日の天気」で、3段目が「晴れ:○」で、4段目が「気温:25℃」である、黒色の文字とから成る)を表示したとき、両面表示型情報表示用パネル7の裏面に表示される情報は、左右が反転するとともに白黒が反転したものとなるが、四角柱状筺体8の他の側面(この場合、右側の側面)に形成した表示用透明窓9を通して視認される情報は、両面反射ミラー11によって左右反転表示されるため、図4(e)に示すように、「図4(d)に示す両面表示型情報表示用パネル7の表面に表示した情報を、白黒反転させた情報」となる。したがって、画像等の情報を4面側から同時に認識し得るようにした立体型情報表示ボードを提供することができる。
なお、上記本発明の立体型情報表示ボードの四角柱状筺体8の内部空間の所定の位置に照明手段を設けることもでき、そのようにした場合、両面表示型情報表示用パネル7の裏面に表示される情報が両面反射ミラー11により反射され、表示用透明窓9を通して視認する際に暗くなって多少見にくくなる問題を回避することができる。
【0022】
以下、本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0023】
基板については、2枚の基板は共に、パネル外側から表示媒体の色が確認できる透明な基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適であり、透明であれば、着色していてもよい。上記基板としては、ガラスやセラミックス等の無機系基板や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、アクリル等の有機高分子系基板を用いることが可能であり、これらのうちの透明なものを用いる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0024】
必要に応じて基板に設ける電極の電極形成材料としては、ITO(酸化インジウム錫)のほか、酸化亜鉛、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、透明なものが適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いられる。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様である。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0025】
基板に設ける隔壁については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、図5に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0026】
次に、本発明の立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルで表示媒体として用いる粉流体について説明する。なお、本発明の情報表示用パネルで用いる粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標):登録番号4636931」の権利を得ている。
【0027】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0028】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の情報表示用パネルで固体状物質を分散質とするものである。
【0029】
本発明の立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、小さな電界の力でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の情報表示用パネルでは、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で表示媒体として用いられる。
【0030】
次に、本発明の立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルにおいて表示媒体を構成する表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)について説明する。表示媒体用粒子は、そのまま該表示媒体用粒子だけで構成して表示媒体としたり、その他の粒子と合わせて構成して表示媒体としたり、粉流体となるように調整、構成して表示媒体としたりして用いられる。
粒子には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0031】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0032】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0033】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0034】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0035】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0036】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0037】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0038】
また、本発明の表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0039】
さらに本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体移動が可能となる。
【0040】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0041】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行うことができる。
【0042】
さらに、表示媒体用粒子で構成する粒子群や粉流体等の表示媒体を乾式の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1(a),(b)、図2(a),(b)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0043】
本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の情報表示用パネルおよび立体型情報表示ボードは、画像ムラがなく、看板、ポスター、黒板等の立体掲示板、電子広告、電子POP、電子棚札、電子値札、電子楽譜、RF−ID機器の立体表示部などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれ、本発明の立体型情報表示ボードの一例を示す図である。
【図4】(a)〜(e)はそれぞれ、本発明の立体型情報表示ボードの他の例を示す図である。
【図5】本発明の対象となる立体型情報表示ボードに搭載する情報表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 基板(背面側基板)
2 基板(表示面側透明基板)
3 表示媒体(粒子群、粉流体)
3W 白色表示媒体
3B 黒色表示媒体
3Wa 白色表示媒体用粒子
3Ba 黒色表示媒体用粒子
4 隔壁
5 電極
6 電極
7 両面表示型情報表示用パネル
8 四角柱状筺体
9 表示用透明窓
10 反射ミラー
11 両面反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、前記2種類の表示媒体を互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた立体型情報表示ボードにおいて、
前記情報表示用パネルを2枚の透明基板から成る両面表示型情報表示用パネルとし、前記情報表示用パネルを四角柱状筺体の1つの側面に搭載し、前記1つの側面に隣接する他の側面に表示用透明窓を形成するとともに、前記1つの側面および前記他の側面の隣接しない側の端部間を結ぶ対角面上に反射ミラーを設けたことを特徴とする立体型情報表示ボード。
【請求項2】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間の空間内に、色および帯電特性が異なる2種類の表示媒体を封入し、2種類の表示媒体を互いに反転移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを用いた立体型情報表示ボードにおいて、
前記情報表示用パネルを2枚の透明基板から成る両面表示型情報表示用パネルとし、前記情報表示用パネルを四角柱状筺体の対向する2つの側面にそれぞれ搭載し、前記対向する2つの側面に隣接する他の2つの側面にそれぞれ表示用透明窓を形成するとともに、前記対向する2つの側面の互いに逆方向の端部間を結ぶ対角面上に両面反射ミラーを設けたことを特徴とする立体型情報表示ボード。
【請求項3】
前記四角柱状筺体の内部空間の所定の位置に照明手段を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の立体型情報表示ボード。
【請求項4】
前記2種類の表示媒体の色は、表示状態の認識性および視認性が高い色の組合せとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体型情報表示ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−156005(P2007−156005A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349421(P2005−349421)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)