説明

立体映像撮影システム

【課題】 フォーカスと連動して輻輳角が動作する立体映像撮撮影システムにおいて、フォーカスと輻輳角を、必要に応じて連動と非連動に切換える立体映像撮影システムを提供すること。
【解決手段】 立体映像撮影システムは、一対のレンズ装置と、該一対のレンズ装置による被写体像を撮像するカメラ装置と、該一対のレンズ装置の輻輳角を変更する輻輳角変更手段と、該一対のレンズ装置のフォーカス群の動作に連動して、該一対のレンズ装置の輻輳角を制御する制御手段と、該輻輳角をフォーカス群の動作に連動させる連動状態と連動させない非連動状態とで切換える連動切換手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のレンズ装置とカメラ装置を含む立体映像撮影システムに関し、特に、該一対のレンズ装置の輻輳角をフォーカスに連動して変更する連動制御機能を有する立体映像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体映像撮影システム(以下、3D撮影システムと記す)において、3D撮影装置の右目用(右側)と左目用(左側)のレンズ装置のフォーカス等に連動して、各レンズ装置の輻輳角(左右のレンズの光軸がなす角度)を制御し、視差を自動調整する技術が知られている。
例えば、特許文献1および特許文献2では、レンズ装置のフォーカス動作に連動して、各レンズ装置の輻輳角を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−026635号公報
【特許文献2】特開2006−162990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された従来技術では、例えば、撮影シーンを大きく変更するためにフォーカスと連動して輻輳角を動作させた後、輻輳角を固定して撮影したい場合、撮影者の意図に関係なく、輻輳角がフォーカスと連動して動作してしまう。
【0005】
一方で、フォーカスのマニュアル操作時、撮影者がマニュアル操作部材を不意に触れた場合や、同部材に機械的振動が与えられた場合、さらに固定が緩いなどの理由で、同部材が機械的に完全に停止していない場合など、意図しないフォーカス操作部材の動作に対して輻輳角が連動して動作してしまう。また、映像AFにおけるウォブリング動作(合焦位置を探る往復動作)に対しても、輻輳角が連動して往復動作してしまう。
【0006】
立体撮影ではない2次元撮影(以下、2D撮影と記す)の場合、被写界深度内であれば、上記のような意図しないフォーカス(部材)の動作やウォブリング動作は、映像上、大きな問題として顕在化しない。しかしながら、フォーカスと連動して輻輳角が動作する3D撮影システムの場合、被写界深度内であっても、輻輳角が連動して動作してしまうため、立体感が大きく変化してしまうという、3D撮影特有の大きな問題として顕在化する。
以上のように、フォーカスと連動して輻輳角が動作する3D撮影システムの場合、例えば、意図しないフォーカスの動きに対しては、連動を非連動に切換える必要がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、フォーカスと連動して輻輳角が動作する3D撮影システムにおいて、フォーカスと輻輳角を、必要に応じて連動と非連動に切換える3D撮影システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の立体映像撮影システムは、一対のレンズ装置と、該一対のレンズ装置による被写体像を撮像するカメラ装置と、該一対のレンズ装置の輻輳角を変更する輻輳角変更手段と、該一対のレンズ装置のフォーカス群の動作に連動して、該一対のレンズ装置の輻輳角を制御する制御部と、該輻輳角をフォーカス群の動作に連動させる連動状態と連動させない非連動状態に切換える連動切換手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フォーカスと連動して輻輳角が動作する3D撮影システムにおいて、輻輳角をフォーカスに対して、必要に応じて連動と非連動に切換える3D撮影システムを提供ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に用いる3D撮影システムの機能ブロック図。
【図2】実施例1に用いる3D撮影システムの台座3の模式図。
【図3】実施例1のレンズ装置1が有するDU部13の機能ブロック図。
【図4】実施例1のレンズ装置1が有する連動切替部132の機能ブロック図。
【図5】実施例1の連動切替に関する処理を説明したフローチャート図。
【図6】実施例2に用いる3D撮影システムの機能ブロック図。
【図7】実施例2のレンズ装置4が有するDU部43の機能ブロック図。
【図8】実施例2のレンズ装置4が有する連動切替部432の機能ブロック図。
【図9】実施例2のショット撮影シーンのイメージ図。
【図10】実施例2の連動切替に関する処理を説明したフローチャート図。
【図11】実施例3に用いる3D撮影システムの機能ブロック図。
【図12】実施例3のレンズ装置7が有するDU部73の機能ブロック図。
【図13】実施例3のレンズ装置7が有する連動切替部732の機能ブロック図。
【図14】実施例3の連動切替に関する処理を説明したフローチャート図。
【図15】実施例3の映像AFのウォブリング動作のイメージ図。
【図16】その他の実施例の連動切替に関する処理を説明したフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、図1〜4を用いて、本発明の第1の実施例の立体映像撮影システム(3D撮影システム)を説明する。
【0013】
まず、図1を用いて、本実施例に用いる3D撮影システムについて説明する。
図1は、3D撮影システムの機能ブロック図である。
図1に示す3D撮影システムは、主として、右眼及び左眼の役割を果たすレンズ装置1およびレンズ装置1α、これら2つのレンズ装置の各被写体像を撮影する2つのカメラ装置2およびカメラ装置2α、2つのレンズ装置の台座であって、かつこれら2つのレンズ装置の光軸がなす角度θ(以下、輻輳角θ)を作り出す台座3にて構成される。この輻輳角θの詳細を図2を用いて説明する。
【0014】
図2は、台座3の模式図であり、台座3は、レンズ装置1およびレンズ装置1αと、回転軸31および回転軸31αにて機械的に接続されている。図2に示すように、レンズ装置1およびレンズ装置1αが平行に配置される場合、基準(θ=0およびθα=0)として、そこから互いの光軸が近づく(交差する)方向に、上記の回転軸が回転した場合の、光軸が基準となす角度を輻輳角θおよび輻輳角θαとする。台座3は、不図示の輻輳角変更手段を有し、回転軸31、31αを介して回転可能に接続されたレンズ装置1、1αを回転軸31、31αの周りで回動させることができる。それにより、一対のレンズ装置1、1αによる輻輳角を変更することができる。
【0015】
以下の説明では、レンズ装置1およびレンズ装置1α、カメラ装置1およびカメラ装置2αは、配置が異なるが構成は同一であるため、レンズ装置1αやカメラ装置2αの説明は省略する。また、輻輳角もθαの説明を省略する。
なお、レンズ装置1αやカメラ装置2αの内部構成の記号は、レンズ装置1やカメラ装置2の内部の構成要素の番号の末尾にαを付している。
【0016】
レンズ装置1は、主として、被写体像を結像する光学レンズ部11、光学レンズ部11のフォーカス調整機能を果たすフォーカスリング部12、フォーカスリング部12の位置を検出し、台座3へ輻輳角θの制御信号を出力するドライブユニット部13(以下、DU部13)にて構成される。
【0017】
次に、図3を用いて、DU部13について説明する。
図3は、DU部13の機能ブロック図である。
DU部13は、主として、フォーカスリング部12の位置検出し、位置信号S_potを出力する回転型のアナログポテンションメータ部131(以下、POT部131)、台座3の輻輳角θを制御するための制御信号(以下、制御信号S_θctl)を出力する連動切換部132、連動切換部132の切換の基準を調整するための調整信号S_vrを出力する調整VR部133にて構成される。
【0018】
なお、フォーカスリング部12の表面には、機械的に凹凸が形成されており、POT部131の回転軸に取り付けられたギアと噛み合う構成をなし、POT部131は、このギアを介してフォーカスリング部12の回転を検出する。調整VR部133はアナログボリュームにて構成され、調整信号S_vrを連動切換部132に出力する。
【0019】
以下、図4を用いて、連動切換部132について説明する。
図4は、連動切換部132の機能ブロック図である。
連動切換部132は、主として、基準演算部1321、連動判断部1322、輻輳制御部1323にて構成される。
【0020】
基準演算部1321は、輻輳角θ(輻輳制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換えの判断基準である基準値refを算出する演算部であり、内蔵するAD変換器にて上記の調整信号S_vrを入力してデジタルへ変換し、基準値refを基準信号S_ref、として連動判断部1322に出力する。連動判断部1322は、上記の位置信号S_potおよび基準信号S_refを入力し、輻輳角θ(輻輳制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作のの連動/非連動の切換えの判断を行い、判断結果を切換信号S_swとして輻輳制御部1323に出力する。最後に、輻輳制御部1323は、位置信号S_potと切換信号S_swを入力し、制御信号S_θctlを台座3に出力する。なお、本実施例において、連動判断部1322には、AD変換器を有し、位置信号S_potをデジタルサンプリングするものとする。
【0021】
以下、図5を用いて、DU部13の内部動作、特に、連動切換部132における処理について、詳細に説明する。
図5は、主として、輻輳角θ(輻輳制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換え処理を説明したフローチャートである。
まず、ステップST01およびステップST02において、連動判断部1322は、サンプリング(n)のタイミングでフォーカス位置F(n)を取得する。次に、ステップST03で、フォーカス位置F(n+1)を取得する。次に、ステップST04およびステップST05において、基準算出部1321は、調整信号S_vrを取得し、これに基づいて、連動/非連動の切換えの判断基準である基準値refを算出して基準信号S_refとして連動判断部1322に出力する。
【0022】
さらに、ステップST06において、連動判断部1322は、フォーカス位置の変動である差分(F(n+1)−F(n))の絶対値が基準値ref(基準信号S_ref)以下の場合、ステップST07へ進み、基準値を超える場合、ステップST08へ進む。ステップST07では、輻輳制御部1323は、輻輳角θ(輻輳制御信号S_θctl)を前回のサンプリング(n)時のフォーカス位置に対応した輻輳角 = θ(F(n))を算出して、制御信号S_θctlとし台座3へ出力する。その一方で、ステップST08では、輻輳制御部1323は、輻輳角θを今回のサンプリング(n+1)時のフォーカス位置に対応した輻輳角 = θ(F(n+1))を算出して、制御信号S_θctlとし台座3へ出力する。最後に、ステップST09において、nをインクリメントして(n=n+1に更新して)、ステップST03へ戻る。
【0023】
このように、前回と今回のサンプリングにおけるフォーカス位置の差が閾値である基準値ref以下の場合、輻輳角θ(制御信号S_θctl)は前回のサンプリング(n)時のフォーカス位置に対応した輻輳角θを設定する。すなわち、輻輳角θ(制御信号S_θctl)はフォーカス位置と非連動状態となる。また、同様に基準値refを超える場合、今回のサンプリング(n+1)時のフォーカス位置に対応した輻輳角θを設定する。すなわち、輻輳角θ(制御信号S_θctl)はフォーカス位置と連動状態となる。
【0024】
本実施例において、上記の基準値refを、例えば、操作していない状態で生じるフォーカスリング12の微小動作(振動)や、POT131の検出結果に重畳されるノイズレベル等に設定すれば、こうした現象に応じて生じる不必要な輻輳角θの動作を排除することができる。
【0025】
また、基準値refを、不用意に撮影者の手などが触れてしまった場合のフォーカスリング12の動作範囲や、マニュアル操作時の手の微小なブレなどの動きによるフォーカスリング部12の動作範囲に設定すれば、フォーカス操作時に生じる撮影者の意図しないフォーカスリングの動作に対する不必要な輻輳角θの動作も排除することができる。
このような基準値refの決定は、上記の排除したい現象を観察しつつ、調整VR部133を調整すると良い。
【実施例2】
【0026】
以下、図6〜9を用いて、本発明の第2の実施例の立体映像撮影システムを説明する。
本実施例は、輻輳角θとフォーカス群の動作の連動と非連動の切換えに関して、フォーカスのショット機能に対応した点と、フォーカスの深度を考慮する点が、主として第1の実施例と異なる。
【0027】
以下、主として、この差異の詳細について説明する。
なお、本実施例においても、レンズ装置4およびレンズ装置4αは、配置が異なるが構成は同一であるため、レンズ装置4αの説明は省略する。また、レンズ装置4αの内部構成の記号は、レンズ装置4の内部の構成要素の番号の末尾にαを付している。
【0028】
図6は、本実施例で用いる3D撮影システムの機能ブロック図であり、主として、レンズ装置4およびレンズ装置4α、カメラ装置2およびカメラ装置2α、台座3、ショット制御部であるショット操作装置5、外部情報機器装置6にて構成される。
【0029】
レンズ装置4は、第1の実施例のDU部13の代わりに、DU部43を用いた点が異なる。このDU部43の詳細は、別途説明する。ショット操作装置5(以下、ショットデマンド5)は、レンズ装置4のフォーカス群とズーム群、さらに台座3の輻輳角θ(制御信号S_θctl)を、予め設定された位置へ移動させる、所謂、「ショット」動作をさせるためのコントローラであり、レンズ装置4へショット信号S_shtを出力する。外部情報機器装置6は、DU部43が有するショットテーブル(Table4325)を、レンズ装置4の外部から書換えるための情報機器で、ノートPCや書換用ソフトで構成される。なお、これらショットデマンド5や外部情報機器装置6は、レンズ装置4とそれぞれ通信ケーブル等で接続して通信を行うものとする。なお、これらの動作等の説明は、別途行う。
【0030】
次に、図7を用いて、DU部43の詳細について説明する。
図7は、DU部43の機能ブロック図である。
本実施例のDU部43は、第1の実施例のDU部13に対して、連動切換部132の代わりに連動切換部432を用いた点と、CPU434、駆動回路部435、MOT436を追加した点が異なる。
【0031】
CPU434は、DU部43の演算手段であり、POT131が出力する位置信号S_potを内蔵のAD変換器を介して取り込み、フォーカス駆動信号を生成して、駆動回路部435へ出力する。また、位置信号S_potのAD変換後のデジタルデータS_pot‘を連動切換部432へ出力する。さらに、ショットデマンド5が出力するショット信号S_shtを入力し、ショット動作完了信号S_fixを連動切換部432へ出力する。
【0032】
駆動回路部435およびMOT436は、フォーカスリング部12を電動で駆動するための駆動回路および駆動モータであり、駆動回路部435は、CPU434が出力するフォーカス駆動信号を増幅して、MOT436を駆動する。なお、POT131と同様に、フォーカスリング部12の表面に設けられた凹凸と、MOT436の駆動回転軸に取り付けられたギアが噛み合う構成をなし、MOT部436は、このギアを介してフォーカスリング部12を回転させる。
【0033】
さらに、図8を用いて、連動切換部432の詳細について説明する。
図8は、連動切換部432の機能ブロック図である。
連動切換部432は主として、基準演算部4321、連動判断部4322、輻輳制御部4323、深度演算部4324、ショットテーブル4325にて構成される。
【0034】
深度演算部4324は、位置信号S_pot’を入力し、現在のフォーカス物体距離を算出する。そして、この物体距離の被写界深度範囲を演算し、深度信号S_depとして基準演算部4321へ出力する。基準演算部4321は、深度信号S_depを入力して、この深度信号に応じた判断基準を算出し、基準信号S_refとして連動判断部4322へ出力する。この基準算出方法については、別途説明する。また、ショットテーブル(以下、Table4325)は、ショットデマンド5や外部情報機器装置6が出力するショット信号S_shtやテーブル設定信号S_setを入力し、ショット輻輳目標信号S_shtθを連動判断部4322と輻輳制御部4323に出力する。連動判断部4322は、位置信号S_pot’、基準信号S_ref、ショット輻輳目標信号S_shtθを入力し、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換えの判断を行い、判断結果を切換信号S_swとして輻輳制御部4323に出力する。最後に、輻輳制御部4323は、位置信号S_pot’、ショット輻輳目標信号S_shtθ、切換信号S_swを入力し、制御信号S_θctlを台座3に出力する。
【0035】
基準演算部4321および深度演算部4323における動作に関する説明をする。
深度演算部4323では、フォーカスの位置を示す位置信号S_pot’を入力し、この位置信号から物体距離を演算する。そして、物体距離の関数である深度Dを算出し、深度信号S_depとして基準演算部4321に出力する。
【0036】
基準演算部4321では、入力された深度信号S_depを考慮して、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換えの判断基準を作成する。本実施例では、この判断基準を深度Dと同一に設定する。
なお、深度Dは物体距離の関数であるため、フォーカス位置の変化に伴ってこの判断基準も更新する。また、同様に、絞りやズームの関数でもあるため、これらも併せて考慮し、同様に判断基準も更新する構成をとる。
【0037】
次に、ショットデマンド5、ショットテーブル4325について説明する。
ショットデマンド5は、本実施例の2つのレンズ装置のズーム群、フォーカス群、輻輳角θをショット駆動するための操作装置であり、主として、表示部、表示選択スイッチ、表示ON/OFFスイッチ、ショットスイッチ1〜5、メモリにて構成される。
【0038】
詳細には、表示部は、表示ON/OFFスイッチにて表示状態と非表示状態を切換える。そして表示部は、表示選択スイッチにて操作した結果(下記、ショットテーブルの(1)〜(25)番と一対一対応)を表示する。さらに、この表示された(1)〜(25)の番号に対して、割り付けしたいショットスイッチを押すと、表示の番号とショットスイッチ1〜5の関係が対応付けられ、この関係がメモリに保存される。なお、表示ON/OFFスイッチにて表示部を非表示状態にした時は、割り付け不可状態とする。ショット動作の詳細は、別途説明する。
【0039】
表1は、Table4325が有している、レンズ装置4のズーム群、フォーカス群、輻輳角θのショット目標位置を示したショットテーブルである。
【0040】
【表1】

【0041】
ショットテーブルは、表1に示すように、ズームの焦点距離とフォーカスの物体距離をそれぞれ5分割し、これら5×5のマトリックスの組み合わせに対して、1つの輻輳角θが決定する構成をしており、それぞれθ1〜θ25の輻輳角が割り当てられている。なお、このマトリックスの場所を規定するために、本実施例では、当ショットテーブルの1列1行を(1)番とし、1列2行を(2)番、以降、5列5行を(25)番とする。
ここで、図9、表1〜2を用いて、ショット動作の詳細について説明を行う。
【0042】
図9は、2つの撮影シーンをイメージした撮影シーンの模式図である。
図9の撮影シーン−1(ショットテーブルの(1)番)と撮影シーン−2(ショットテーブルの(18)番)を、ショットスイッチ1およびショットスイッチ2に割り付けたい場合、上記の割り付け方法に従い、ショットデマンドの表示部が1番および18番を表示している時に、ショットスイッチ1およびショットスイッチ2を押す。これにより、ショットスイッチ1およびショットスイッチ2に、撮影シーン−1(ズーム:A、フォーカスa、輻輳角:θ1)および撮影シーン−2(ズーム:C、フォーカス:d、輻輳角:θ18)が設定される。
【0043】
上記ショット機能の実使用上の一例を説明すると、ショットスイッチ1を押すと、撮影シーン−1に適したズーム:A、フォーカスa、輻輳角:θ1にショットされる。次に、撮影シーン−2へ撮影シーンを変更する場合、スイッチ2を押すと、撮影シーン−2に適したズーム位置:C、フォーカス位置:d、輻輳角:θ18にショットされる。
【0044】
また、外部情報機器装置6は、上記ショットテーブルの書換えるための編集機器であり、一般的にパソコンとライタ機器等で構成される。
この外部情報機器装置6から、ショットテーブル自体を書換えることが可能であり、また、表2に示す割当1〜5のショット位置を表1からピックアップして、レンズ装置に再実装するなどができるような構成としてもよい。この場合、必要最低限(ショットスイッチの数と同一である必要なない)のショットテーブルを用意することで、より簡単に素早くショットデマンドからショットテーブルを選択可能となる。また、ショットデマンド5がこの外部情報機器装置6を有していてもよい。
【0045】
【表2】

【0046】
以下、図10を用いて、DU部43の内部動作、特に、連動切換部432における処理について、詳細に説明する。なお、第1の実施例と同一のステップの説明は省略する。
図10は、主として、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換え処理を説明したフローチャートであり、上記のショット機能を考慮した切換を行う。
【0047】
ステップST10では、ショットが完了している場合、ステップST06へ進み、未完了の場合はステップST08へ進む。
このように、ショット動作が完了した場合、輻輳角θ(制御信号S_θctl)はフォーカス群の動作と非連動状態となる。また、未完了の場合、輻輳角θ(制御信号S_θctl)はフォーカス群の動作と連動状態となる。
【0048】
例えば、図9に示す撮影シーン−1から撮影シーン2へショット動作で撮影シーンの移行を行う場合、上記の処理により、複雑な輻輳角θの設定の必要が無く、適切な輻輳角θが、即座に設定されると共に、ショット動作が完了した後は、輻輳角θはフォーカス群の動作と非連動状態となり、輻輳角θの連動なくフォーカス群の動作の調整のみを行うことができる。
以上の結果、3D撮影システムで非常に複雑で時間を要する輻輳角θのセッティング作業が不要となり、撮影シーンの移行も2D撮影システムと遜色ない利便性を確保することができる。
【実施例3】
【0049】
以下、図11〜14を用いて、本発明の第3の実施例の立体映像撮影システムを説明する。
【0050】
本実施例は、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動と非連動の切換えに関して、撮影された映像に基づいてオートフォーカスを行う映像AF機能を有するカメラ装置のフォーカス群のウォブリング動作に対応した点が、主として第1の実施例と異なる。映像AF機能を有するカメラ装置のフォーカス調整は、撮像素子からの出力信号を用いてコントラストが極大値となる位置で合焦位置と判定するため、合焦判定後も、フォーカス群を駆動して、それに伴うコントラストの変化から極大値を示す合焦位置あるいは合焦位置の方向を確認する必要がある。すなわち、映像AFにおいて合焦判定のためになされる、フォーカス群の微小範囲の往復移動が、所謂、ウォブリングであり、輻輳角をウォブリング動作に追従して変化させる必要はない。本実施例は、そのための機構を備えた3D撮影装置である。
【0051】
以下、主として、この差異の詳細について説明する。
なお、本実施例においても、レンズ装置7およびレンズ装置7α、カメラ装置8およびカメラ装置8αは、配置が異なるが構成は同一であるため、レンズ装置7αやカメラ装置8αの説明は省略する。また、レンズ装置7αやカメラ装置8αの内部構成の記号は、レンズ装置7やカメラ装置8の構成要素における番号の末尾にαを付している。
【0052】
図11は、本実施例で用いる3D撮影システムの機能ブロック図であり、主として、レンズ装置7およびレンズ装置7α、カメラ装置8およびカメラ装置8α、台座3にて構成される。
【0053】
レンズ装置7は、第1の実施例のDU部13の代わりに、DU部73を用いた点が異なる。また、カメラ装置8は、第1の実施例のカメラ装置2に対して、映像AF機能を制御する映像AF制御部を有している点が異なる。なお、この映像AF機能によって算出されたAF信号S_af(AF目標値等を含む)は、通信ケーブルを介して、カメラ装置8からレンズ装置7へ出力される。
【0054】
次に、図12を用いて、DU部73の詳細について説明する。
図12は、DU部73の機能ブロック図である。
本実施例のDU部73は、第1の実施例のDU部13に対して、連動切換部432およびCPU434の代わりに、連動切換部732およびCPU734を用いた点が異なる。
CPU734は、DU部73の演算手段であり、POT131が出力する位置信号S_potを内蔵のAD変換器を介して取り込み、フォーカス駆動信号を駆動回路部435へ出力する。また、位置信号S_potのAD変換後のデジタルデータS_pot‘を連動切換部732へ出力する。さらに、カメラ装置8が出力するAF信号S_afを入力し、ウォブリング情報S_af’を連動切換部732へ出力する。
【0055】
さらに、図13を用いて、連動切換部732の詳細について説明する。
図13は、連動切換部732の機能ブロック図である。
連動切換部732は主として、基準演算部7321、連動判断部7322、輻輳制御部7323、深度演算部4324にて構成される。
【0056】
連動判断部7322は、位置信号S_pot’、基準信号S_ref、ウォブリング情報S_af’を入力し、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換えの判断を行い、判断結果を切換信号S_swとして輻輳制御部7323に出力する。最後に、輻輳制御部7323は、位置信号S_pot’、切換信号S_swを入力し、制御信号S_θctlを台座3に出力する。
【0057】
以下、図14を用いて、DU部73の内部動作、特に、連動切換部732における処理について、詳細に説明する。なお、第1の実施例と同一のステップの説明は省略する。
図14は、主として、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換え処理を説明したフローチャートであり、上記の映像AFのウォブリング機能を考慮した切換を行う。
【0058】
ステップST11では、ウォブリング状態の場合、ステップST06へ進み、ウォブリング状態ではない場合、ステップST12へ進む。ステップST12においては、輻輳角θ(制御信号S_θctl)を、ウォブリングによるフォーカス群の往復動作の中心のフォーカス位置に対する輻輳角に設定する。
以上の結果、映像AFのウォブリングの往復動作の場合、輻輳角θ(制御信号S_θctl)はフォーカス群の動作と非連動状態となり、フォーカス群の動作との連動による不必要な輻輳角θの動作を排除することができる。
【0059】
ここで、図15を用いて、映像AFによるフォーカス群のウォブリング動作と、輻輳角θ(制御信号S_θctl)の連動について説明する。
図15は、映像AFのウォブリングによるフォーカス群の動作のイメージ図である。
同図に示すように、一般的にウォブリングによる往復動作で、方向判定を行いながら、目標となる合焦位置へフォーカス群を駆動する。
【0060】
この場合、1回の往復動作範囲のいずれかの場所、例えば往復動作範囲−1と往復動作範囲−2のそれぞれ中心位置であるCenter−1、Center−2を仮のフォーカス位置とし、各往復動作中はこれらのフォーカス位置に対応した輻輳角θをそれぞれ設定する。
【0061】
映像AFのウォブリングの往復動作に輻輳角θが連動して動作する必要はないので、映像AFのウォブリングによるフォーカス群の往復動作に対しては、輻輳角θ(制御信号S_θctl)はフォーカス群の動作と非連動状態とする。
【0062】
本実施例においては、ウォブリングによるフォーカス群の往復動作範囲内の中心値に対応した輻輳角となるように制御したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、ウォブリング動作により、コントラストの極大値やウォブリング範囲内での最大値を検出したフォーカス群の位置に対応する輻輳角となるように制御してもよく、ウォブリングによる往復動作範囲内で輻輳角に対応させる一つのフォーカス値を指定することで、本発明の効果を享受することができる。
【0063】
なお、合焦状態においても低輝度などの条件下などでは、こうしたウォブリングが起動する場合がある。その場合、フォーカス群の往復動作が被写界深度内にあっても、輻輳角θがフォーカス群の動作に連動して動作してしまうが、本実施例では、こうした場合でも、不必要に輻輳角θを連動させることがない。
また、合焦方向の迅速な判断のための位相差AFと、精細な焦点調整のための映像AFを併用する、所謂、ハイブリッドAFにおいても、映像AF機能が働いてウォブリング動作しているときに本実施例は適用可能であり、本発明の効果を享受することができる。
【0064】
その他の実施例として、図16を用いて説明する。
ここでは、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動と非連動の切換えに関して、フォーカス群のサーボで生じてしまうオーバーシュート動作に対応した実施例を説明する。フォーカス群の駆動をサーボで実施する場合において、目標とするフォーカス位置を越えてしまい、逆方向に駆動して目標移動先に到達する、所謂、オーバーシュート動作、を伴うフォーカス駆動をすることがある。この場合も、フォーカス群の駆動に逐次、輻輳角が追従してしまうと、違和感のある映像となってしまう。
【0065】
図16は、主として、輻輳角θ(制御信号S_θctl)とフォーカス群の動作の連動/非連動の切換え処理を説明したフローチャートであり、上記オーバーシュート動作を考慮した切換を行う。図10に示した第2の実施例のフローチャートとほぼ同様であるが、第2の実施例におけるST10のショット完了の判断に替えて、ST13のフォーカス駆動の反転動作の有無の判断が入ったことが異なる。ステップST13で、フォーカス群の駆動に反転動作があると判断された場合はステップST06へ進む。反転動作がないと判断された場合はステップST08へ進み、今回のフォーカス値に対応する輻輳角θ(F(n+1))に輻輳角を更新する。
【0066】
ここで、ST13の反転動作の有無の判断は、フォーカス群の目標コントロールに到達するまでの間に、実際に検出されるフォーカス位置(F(n))の変化量の符号が変化したか否かを以て判断しても良いし、フォーカス群の目標コントロール値をフォーカス群のフォロー値がオーバーした(通り過ぎた)ことを判定基準としても良い。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能であり、特に、上記の連動切換部やショットテーブルなどは、レンズ装置、カメラ装置、台座等など、撮影システムのいずれの構成にあってもよい。さらに、輻輳角を作り出す構成要素は、上記した機械的にレンズ装置の向きを変えて直接光軸の方向を変更する構成で輻輳角変更手段を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各レンズ装置内もしくは各レンズ装置からの光路それぞれに対して、光軸に対して垂直方向に移動可能な各種防振レンズ等の光学系を光軸に垂直な方向に移動させることによる輻輳を作り出す構成や、レンズ装置やカメラ装置内部、または外部に配置したミラー等によって輻輳を操作する構成によって、像面上の被写体像の位置を互いに逆方向に移動させてレンズ装置の光軸方向の互いの角度(輻輳角)を変更した場合と同じ効果を得る、3D撮影システムにおいても、本発明を適用することが可能であり、本発明の効果を得ることができる。
【0068】
さらに、左右のレンズの光軸間の距離である基線長も撮像された3D映像の立体感に影響を与えるので、フォーカス群の動作に対する輻輳角の制御に代えて(あるいは、加えて)、基線長もフォーカス群の動作に連動あるいは非連動の制御対象とすることによっても、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1、4、7: レンズ装置(右眼用)
1α、4α、7α: レンズ装置(左眼用)
2、8: カメラ装置(右眼用)
2α、8α: カメラ装置(左眼用)
3: 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のレンズ装置と、
該一対のレンズ装置による被写体像を撮像するカメラ装置と、
該一対のレンズ装置の輻輳角を変更する輻輳角変更手段と、
該一対のレンズ装置のフォーカス群の動作に連動して、該輻輳角変更手段を制御する制御手段と、
該輻輳角を該フォーカス群の動作に連動させる連動状態と連動させない非連動状態とで切換える、連動切換手段と、
を有することを特徴とする立体映像撮影システム。
【請求項2】
前記連動切換手段は、前記フォーカス群の動作範囲が基準値の範囲内である場合、前記非連動状態にする、ことを特徴とする請求項1に記載の立体映像撮影システム。
【請求項3】
前記基準値の範囲は、被写界深度に対応する前記フォーカス群の動作の範囲である、ことを特徴とする請求項2に記載の立体映像撮影システム。
【請求項4】
撮影された映像に基づいて、オートフォーカスを行う映像AF制御手段を有し、
前記基準値の範囲は、該映像AF制御手段の前記フォーカス群のウォブリングの往復動作範囲である、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体映像撮影システム。
【請求項5】
前記一対のレンズ装置の前記フォーカス群のショット機能を制御するショット制御手段を有し、
前記連動切換手段は、該フォーカス群がショット機能により移動する時、前記輻輳角を前記フォーカス群の動作に連動する連動状態とし、該フォーカス群のショット動作が完了した後、該輻輳角を該フォーカス群の動作に連動しない非連動状態とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体映像撮影システム。
【請求項6】
撮影された映像に基づいて、オートフォーカスを行う映像AF制御手段を有し、
前記AF制御手段によってフォーカス群がウォブリング動作をしている時、前記連動切換手段が前記非連動状態に切換えると共に、前記輻輳角変更手段が、前記レンズ装置の輻輳角を前記フォーカス群のウォブリング動作の往復動作範囲内の一のフォーカス位置に対する輻輳角とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体映像撮影システム。
【請求項7】
前記フォーカス群のウォブリング動作の往復動作範囲内の前記一のフォーカス位置は、前記往復動作範囲内の中心位置である、ことを特徴とする請求項6に記載の立体映像撮影システム。
【請求項8】
前記連動切換手段は、前記フォーカス群の動作が反転した時、前記輻輳角を前記フォーカス群の動作と非連動状態にする、ことを特徴とする請求項1に記載の立体映像撮影システム。
【請求項9】
前記連動切換手段は、前記フォーカス群の動作が、目標とするフォーカス位置を越える時、前記輻輳角を前記フォーカス群の動作と非連動状態にする、ことを特徴とする請求項1に記載の立体映像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−109010(P2013−109010A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251467(P2011−251467)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】