説明

立体映像表示装置

【課題】裸眼方式による3次元立体映像表示装置において、優れた映像特性を実現し、尚且つ容易にそして安価に製造することができるようにする。
【解決手段】発光素子を有する画素が2次元的に形成された画素アレイ部を有する画素アレイ基板101と、画素アレイの画素に向かって突出する斜面と平坦部を有する複数の凸部107を有する光制御フィルム102からなり、複数の凸部107の間は空気層が形成され、画素104からの光束の一部が凸部107の斜面と空気層106との界面で全反射することで光束の光軸中心が所定の方向へ向かうように凸部107の斜面が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像表示装置に関し、特に裸眼方式による3次元立体映像の表示装置を容易に製造することができるようにする立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像を立体的に認識できる3次元立体映像装置として、3Dテレビや3D表示可能な携帯型のゲーム機が商品化されている。3次元立体映像の鑑賞方法としては、視差を設けた左眼用映像と右眼用映像を鑑賞者に鑑賞させる両眼視差方式が普及しつつある。この両眼視差方式には、メガネを用いるメガネ方式と、メガネを用いない裸眼方式の2種類の方法が挙げられる。
【0003】
メガネ方式には、偏光方式とシャッター方式がある。偏光方式では、光の偏光特性を利用して、右眼用映像と左眼用映像とで偏光角度を変え同時に表示させ、メガネの偏光フィルターでそれぞれ右眼用と左眼用の映像を3次元立体映像として認識する。シャッター方式では、左右交互に開閉するシャッター機能をメガネに持たせ、時分割で表示される右眼用映像と左眼用映像にシャッターを同期させて3次元立体映像として認識する。
【0004】
メガネ方式は、比較的容易に右眼用映像と左眼用映像の分離が可能であるが、その反面、メガネを装着する必要があるという煩わしさがデメリットである。
これに対し、裸眼方式には、レンチキュラースクリーン方式などがある。レンチキュラースクリーン方式は、図10に示すように、かまぼこ型の細かなレンズであるレンチキュラーレンズ1001を配列することで、右眼用映像を表示する眼用画素1003と左眼用映像を表示する左眼用画素1004の光路を分離し、3次元立体映像として認識する方法である。
【0005】
裸眼方式は、メガネ方式とは反対に、メガネの装着が不要であることから観覧者に対する負担が少ない点がメリットとなる。反対に、観察位置や視域が制限されるという側面があるが、観察位置や視域が比較的限定される携帯電話やゲーム、コンピュータモニタなどで実用化が進んでいる。
【0006】
また、レンチキュラー方式では、表示面に合わせてレンチキュラーレンズと画素を非常に正確に位置合わせを行う必要があり、かつ精密な加工が必要なことから、通常の表示装置に比べてコストが増大してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、コストダウンをはかり、容易に製造することができるようにするために、たとえば図11に示す特開2011−47992号では、レンチキュラーレンズではなく、金属膜を用いたリフレクタを用いた3次元立体表示装置が開発されている。この3次元立体表示装置は、光制御フィルム102と、基板103上に形成された画素104、光制御フィルム102と基板とを固定するための透明接着部1101から構成されている。光制御部フィルムには、凸部1102が形成されており、この凸部1102の斜面には金属反射膜が形成された金属反射面1103a、1103bがある。画素104からの光束の一部は、金属反射斜面1103a、1103bで反射され、画素からの光束の光軸中心は所定の方向に傾く。右眼用映像を表示する右眼用画素からの光束が右眼に、左眼用映像を表示する左眼用画素からの光束が左眼に向かうよう金属膜を用いた金属反射面により、画素からの光束の光軸中心の角度を制御することで、3次元立体表示を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−47992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図11に示されるリフレクタを用いた3次元立体表示装置では、レンチキュラーレンズ方式に比べ安価に製造可能であるが、金属反射膜を光制御フィルムの凸部の斜面に成膜しなければならならない。求める3次元立体表示装置の仕様によっては、凸部の形状が非常に高く、かつ幅も狭い(アスペクト比が大きい)ものになることが予想される。そのような大きなアスペクト比を持つ凸部の斜面に金属反射膜を成膜することは非常に困難になる。そのため、コストアップ要因となり、しかも十分な反射膜の反射特性が得られない可能性がある。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、特性の優れた裸眼方式による3次元立体映像の表示装置を容易に、安価に製造することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面の立体映像表示装置は、発光素子を有する画素が2次元的に形成された画素アレイ部を有する画素アレイ基板と、前記画素に向かって突出する斜面と平坦部を有する複数の凸部を有する光制御フィルムとを備え、前記凸部の前記平坦部が前記画素の上部にくるように前記光制御フィルムが前記画素アレイ基板の上に配置されることで隣り合う前記凸部の間は空気層が形成され、前記画素からの光束は前記光制御フィルムの前記凸部の前記平坦部に入射し、その後光束の一部が前記凸部の前記斜面と前記空気層との界面で全反射することで前記画素からの光束の光軸中心が所定の方向へ向かうように前期凸部の前記斜面が形成されている。
【0012】
さらに、本発明の立体映像表示装置は、上記の立体映像表示装置の前記空気層に、前記凸部の前記斜面と前記空気層との界面で全反射しなかった光を吸収するための光吸収部が隣り合う前記凸部の間に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、裸眼方式による3次元立体映像の表示装置を容易に製造することができる。さらに、凸部の斜面で全反射しなかった光束は、凸部と凸部の間の空気層に形成された光吸収部に吸収されるため、3次元立体映像の画質を落とす原因となる迷光をカットでき、低価格な3次元立体映像表示装置でありながらも、高画質を実現できる。
【0014】
また、光吸収部が光制御フィルムと画素アレイ基板との位置あわせとして機能するので、精密な位置が必要な2枚の基板の張り合わせを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した表示装置の第一実施例を説明する図である。
【図2】第一実施例における一部の拡大図である。
【図3】本発明を適用した表示装置の第一実施例を説明する図である。
【図4】本発明を適用した表示装置の第一実施例を説明する図である。
【図5】本発明を適用した表示装置の第一実施例の表示装置を分解図である。
【図6】本発明を適用した表示装置の第二実施例を説明する図である。
【図7】本発明を適用した表示装置の第二実施例の表示装置を分解図である。
【図8】本発明を適用した表示装置の第三実施例を説明する図である。
【図9】本発明を適用した表示装置の第三実施例の表示装置を分解図である。
【図10】従来のレンチキュラースクリーン方式を説明する図である。
【図11】従来の3次元ディスプレイ方式を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例1]
図1から図5は、本発明を適用した表示装置の一実施の形態の構成例を示している。
図1は、3次元立体映像を表示可能な立体映像装置である。画素アレイ基板101には、基板103上に、たとえば有機EL素子の複数の画素104が形成されている。この画素を駆動するための配線や駆動回路は省略してある。なお、画素アレイ基板101の画素には、フルカラー対応のために、R、G、Bの各色成分に対応した有機EL素子が混在している。本実施例では、画素として有機EL素子を用いているが、これに限られることはなく、他の方式でもよいことは言うまでもない。
【0017】
画素アレイ基板101の上部には、複数の凸部107を有する光制御フィルム102が配置されている。光制御フィルム102は、画素アレイ基板101の画素104の上部に、光制御フィルム102の凸部107がくるように形成され、光制御フィルム102と画素アレイ基板101とは透明接着部105で固定されている。その際、光制御フィルム102の隣り合う凸部107の間には、透明接着剤部105がない空気層106が形成されている。なお、透明接着部105は、画素アレイ基板101と光制御フィルム102が固定されその位置関係が変わらなければよいので、必ずしも透明接着剤を使用する必要はなく、透明粘着剤を用いることもできる。さらに、透明接着剤や透明粘着剤を使用せず、画素アレイ基板101と光制御フィルム102を機械的にフレームなどを利用して固定してもよい。光制御フィルム102の材質は、画素からの光束に対して十分な透過性を有していればよく、たとえば、透明アクリル樹脂、透明ポリカーボネート樹脂、透明シクロオレフィン樹脂などを用いることができる。
【0018】
図1に示す立体映像装置において、裸眼で3次元立体映像として認識するためには、左眼用、右眼用の映像がそれぞれ別々の画素に表示され、右眼用映像を表示する画素からの光束が右眼に、左眼用映像を表示する画素からの光束が左眼に向かうようする制御する必要がある。このような光束の制御は、画素からの光束の光軸中心の角度をそれぞれ制御することで実現する。
【0019】
図2は、図1中の1つの画素部分を拡大した立体形状をあらわす図である。図1と同じ部分については同じ符号を用いている。
光制御フィルム102の凸部は、平坦部201と斜面202から構成されている。平坦部201は、基板103上に形成された画素104の上部に配置されている。そして、基板103と光制御フィルム102の間には、空気層106が形成されている。斜面202の形状は、画素104からの光束の中心軸方向を所定の方向に傾けるために、単純な回転対照形状でなく、画素のサイズ、発光特性、求める3次元表示特性に応じた特殊な形状になっている。
【0020】
次に、画素から出射される光束の光軸中心の角度制御方法について説明する。
図3において、光制御フィルム102の凸部107は、平坦部301と斜面302a、302bからなる。画素104からの光束は、透明接着部105と平坦部301を透過し斜面302a、302bで反射されないで光制御フィルム102の上部に出射される光束と、斜面302aあるいは斜面302bで反射されてから出射される光束がある。斜面302a、302bの形状を適宜設計することで、光制御フィルム102を透過した画素104からの光束の光軸中心の角度を所定の角度に制御する。
【0021】
斜面302a、302bで反射される光束は、凸部107と空気層106との界面である斜面302a、302bで全反射される。光束は斜面302a、302bで全反射されるため、反射率はほぼ100%であり、ほとんどロスなく反射される。
【0022】
図4に示すように、凸部107の斜面302a、302bの形状を変えることにとり、右眼用画素401からの光束の光軸中心をたとえば右方向に傾け、左眼用画素402からの光束の光軸中心を左側に傾けることで、右眼と左眼に入射される光束を制御し、3次元立体映像として認識できるようになる。
【0023】
次に、光制御フィルムと画素アレイ基板の間に形成される空気層について説明する。
図5は、光制御フィルム102と画素アレイ基板とを固定する前の状態を表している。
光制御フィルム102は、複数の凸部をもっており、凸部の平坦部301が基板103上に形成された画素104の上部にくるように配置されている。基板103には、画素104をカバーする形で透明接着部105が基板103上全面に形成されている。この状態で光制御フィルム102と画素アレイ基板を透明接着部105により固定する。固定の際には、必要に応じて、加圧や加熱等する場合もある。このように光制御フィルム102と画素アレイ基板を固定することにより、凸部と凸部の間が図1から図4で説明した空気層106が形成される。
【0024】
以上のように、図1から図5を用いて説明したように、画素から出射される光束の光軸中心角度を光制御フィルム102に形成した凸部と空気層の界面での全反射で制御することができ、右眼用映像と左眼用映像の光路を分離することができる。これにより鑑賞者の裸眼による3次元立体映像を鑑賞可能にし、しかも、低コスト化が実現可能となる。
【0025】
[実施例2]
図6から図7は、本発明を適用した表示装置の他の実施の形態の構成例を示している。実施例1と同じ部分については、同じ符号を付け、一部説明を省略する。
【0026】
実施例2は、実施例1にさらに光吸収部601を追加したものである。図6および図7において、光制御フィルムと画素アレイ基板上部の透明接着部105との間にできた空気層106に、光吸収部601を形成した。
【0027】
実施例1において、光制御フィルム102の凸部の斜面302a、302bで全反射しなかった光は、光制御フィルム102の上部方向に出射されずに、迷光となり、画質の低下を引き起こす。そこで、そのような迷光をカットするために、透明接着部105の上部に光吸収部601を設けた。この、光吸収部601は、斜面302a、302bとは接触しないことが望ましい。また、斜面302a、302bでの全反射条件が崩れる可能性が高いのは、凸部の平坦部に近い部分であり、この部分の光のみを吸収すればよい。よって、光制御フィルム102の凸部と凸部の間の深さを光吸収部601の高さとする必要はない。
【0028】
以上のように、実施例2では、実施例1の効果に加え、光吸収部で迷光をカットできるので、より鮮明で高画質は3次元立体映像を鑑賞することができる。
また、光吸収部601が透明接着部105よりも飛び出ていることから、光制御フィルムの凸部と凸部の間に光吸収部が入り込み、光制御フィルム102と基板103との固定の際の位置あわせとして、光吸収部601が機能することで、精密な張り合わせが容易となる。
【0029】
[実施例3]
図8から図9は、本発明を適用した表示装置の他の実施の形態の構成例を示している。実施例1あるいは実施例2と同じ部分については、同じ符号を付け、一部説明を省略する。
【0030】
本実施例は、実施例2と同様に、光制御フィルム102の凸部と凸部の間の空気層106に光吸収部を配置した実施例であるが、光吸収部の形状と配置が実施例2とは異なる。
図8および図9において、基板103上に形成された画素104の間に隙間なく光吸収部802が形成されている。そして、光制御フィルム102と基板104との固定には、画素104の上部にのみ透明接着部801を形成してある。光吸収部802の高さは、透明接着部801の上面よりも高くすることが望ましい。
【0031】
このような構成にすることで、画素104から出射し、凸部の平坦部301に入射しないような非常に角度のついた光も、光吸収部801で吸収することができ、実施例2よりもさらに迷光が少なくなり、より鮮明で高画質な3次元立体映像を鑑賞することができる。
【符号の説明】
【0032】
101 画素アレイ基板、 102 光制御フィルム、 103 基板、 104 画素、 105 透明接着部、 106 空気層、 107凸部
201 平坦部、 202 斜面
301 平坦部、 302a 斜面、 302b 斜面
401 右眼用画素、 402 左眼用画素
601 光吸収部
801 透明接着部、 802 光吸収部
1001 レンチキュラーレンズ、 1002 画素アレイ基板、 1003 右眼用画素、 1004 左眼用画素
1101 透明接着部、 1102 凸部、 1103a 金属反射斜面、 1103b 金属反射斜面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する画素が2次元的に形成された画素アレイ部を有する画素アレイ基板と、
前記画素に向かって突出する斜面と平坦部を有する複数の凸部を有する光制御フィルムとを備え、
前記凸部の前記平坦部が前記画素の上部にくるように前記光制御フィルムが前記画素アレイ基板の上に配置されることで、隣り合う前記凸部の間は空気層が形成され、
前記画素からの光束は前記光制御フィルムの前記凸部の前記平坦部に入射し、その後光束の一部が前記凸部の前記斜面と前記空気層との界面で全反射することで、前記画素からの光束の光軸中心が所定の方向へ向かうように前期凸部の前記斜面が形成されていることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
前記空気層に、前記凸部の前記斜面と前記空気層との界面で全反射しなかった光を吸収するための光吸収部が隣り合う前記凸部の間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項3】
前記光吸収部は、前記基板の前記画素の上部を除く位置に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の立体映像表示装置。
【請求項4】
前記光吸収部が、前記基板と前記光制御フィルムの位置合わせとして機能することを特徴とする請求項2に記載の立体映像表示装置。
【請求項5】
前記画素アレイ基板と前記光制御フィルムは、前記空気層を維持した状態で透明接着部あるいは透明粘着部により固着されていることを特徴とする請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項6】
前記光吸収部は、前記基板に形成され、且つ複数の前記画素の間に前記画素の高さよりも高く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の立体映像表示装置。


【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−92704(P2013−92704A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235569(P2011−235569)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】