立体構造体
【課題】
稼動中においては加湿に十分な水分保持・拡散能力を発揮し、稼動していない場合には、水分を速やかに放出することのできる立体構造体を提供する。
【解決手段】
表裏編地が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地における1つの開口の面積が下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有している水分保持材である。
稼動中においては加湿に十分な水分保持・拡散能力を発揮し、稼動していない場合には、水分を速やかに放出することのできる立体構造体を提供する。
【解決手段】
表裏編地が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地における1つの開口の面積が下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有している水分保持材である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などに気体を当てて拡散させ、空気を加湿するために用いられる立体構造体に関し、詳細には、水分を適度に保持し、また、圧力損失の少ない立体構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加湿用の家電機における室内に適度な水分を分散させる機能としては、箱のような容器に水を貯めておき、細いパイプに通した水を熱して水分を蒸発させ、それを扇風機のような機器で室内に拡散させる方法がある。
【0003】
近年においては、箱のような容器に水を貯めておき、あるいは上部から水を流し、その水に接触するように配置されたウレタン材や発泡材、不織布、スポンジ、綿糸などの水分を保持させる材料(以下、水分保持材と称す)に水分を保持させ、この水分保持材の後ろから扇風機のような機器で風を当てて、保持されている水分を拡散させて加湿する方法も用いられている。水分保持材は、固定されている場合もあるが、上下方向、左右方向あるいは回転など、動く場合もある。
【0004】
いずれの場合であっても、十分な加湿性能を発揮するには、水分保持材が十分に水分を保持し、かつ、圧力損失が小さいことが望ましい。しかし、上記ウレタン材や発泡材、不織布、スポンジ、綿糸などにおいては、水分保持性能は十分であるものの、圧力損失が大きいことが問題であった。
【0005】
そのため、水分保持材として、ダブルラッセルなど2枚の生地が連結糸で連結している立体構造体が検討されている。この立体構造体は、多数の連結糸からなる中間層を有しているため、この連結糸の隙間に水分が保持されやすく、また、連結糸は風向と並行して存在しているため、圧力損失への影響が少ないという理由からである。
【0006】
たとえば、特許文献1には、複数の開口を有する2枚の編地と、間隔をあけて2枚の編地を連結する複数の連結繊維とを備えた立体編物であって、1つの編目から4本以上の連結繊維が延在しており、2.54cm角にある連結繊維のそれぞれの断面の総周が700mm以上である液体保持材が開示されている。このように複数の連結繊維を近接して並べることにより、繊維表面だけでなく、毛細管現象によって繊維間にも液体を保持することができるため、保持できる水分量が増加する。また、連結繊維を曲線状にすることによって、さらに液体保持量が向上することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、やはり、少なくとも表裏2面の繊維シート材と両シートを連結する繊維からなる加湿エレメントが開示されている。そして、この連結糸に、マルチフィラメントを使用することによって、水分保持量が増加することが記載されている。
【0008】
特許文献3には、吸水化材などを担持させた繊維や吸水性の繊維を用いて、吸水性を向上させたダブルラッセル編地からなる加湿フィルタが開示されている。
【0009】
これら文献においては、水分保持材の水分保持能力を高めることを主目的としているが、これら水分保持性を高められた水分保持材は、稼動が終了した後(つまり、風を送るのを止めた後)においても水分を保持し続ける。この水分保持材に室内の塵、ほこり、ごみなどが付着すると、そこに潜んでいたカビや雑菌が、保持されている水分により繁殖する。そして、再び稼動させた際に、加湿された空気と共に、カビ・雑菌自体や、雑菌による異臭が放たれ、新たな問題を引き起こしている。また、特許文献1のように連結繊維を多く存在させると、空隙率が小さくなるため、圧力損失が大きくなって、水分の拡散が十分でなくなるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−280927号公報
【特許文献2】特開2010−255894号公報
【特許文献3】特開2011−144945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、稼動中においては加湿に十分な水分保持・拡散能力を発揮し、稼動していない場合には、水分を速やかに放出することのできる水分保持材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、表裏編地の開口差と、連結糸における密度および角度を特定の範囲にすることにより、稼動中には水分を保持・拡散する十分な能力を発揮し、稼動外では速やかに水分を放出することを見いだし、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、表裏編地が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地における1つの開口の面積が下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有している水分保持材に関する。
【0014】
前記編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸が全連結糸の70〜90%であり、80度より大きな角度で配置されている連結糸が全連結糸の10〜30%であることが好ましい。
【0015】
前記編地が、12〜40コース、12〜25ウェールであることが好ましい。
【0016】
前記連結糸が、相対する編み針の1〜4針間にアンダーラップして表裏編地を交互に連結していることが好ましい。
【0017】
前記連結糸が、融着糸を20〜60重量%含んでいることが好ましい。
【0018】
前記立体構造体が、吸水性糸を30〜70重量%含んでいることが好ましい。
【0019】
前記連結糸が、1〜3本の編糸から構成されていることが好ましい。
【0020】
前記立体構造体が、全体を水に浸漬したのち、水から引き上げ、1時間経過したときの水分重量が、引き上げ直後の水分重量の15〜50%であることが好ましい。
【0021】
前記上流側の編地における1つの開口の面積が7〜350mm2であり、下流側の編地における1つの開口の面積が1.5〜120mm2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、稼動中においては、圧力損失を小さく保ちながら十分な水分保持・拡散能力を発揮し、稼動していない場合には、水分を速やかに放出することのできる水分保持材を提供することができる。そのため、水分保持材におけるカビや雑菌の繁殖が抑えられ、快適な加湿を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の水分保持材の一部における断面図である。
【図2】本発明の水分保持材の一部における斜視図である。
【図3】従来の水分保持材の一部における斜視図である。
【図4】従来の水分保持材の一部における断面図である。
【図5】本発明の水分保持材の一部における断面図である。
【図6】本発明で使用される編機を説明する概略図である。
【図7】本発明の水分保持材の形状の例を示す図である。
【図8】水分保持材の使用状態を示す概略図である。
【図9】本発明の水分保持材を作成するための編成組織図の一例を示す図である。
【図10】本発明の水分保持材を作成するための編成組織図の他の例を示す図である。
【図11】本発明の水分保持材を作成するための編成組織図の他の例を示す図である。
【図12】従来の水分保持材を作成するための編成組織図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の水分保持材は、表裏編地(以下、表裏地組織と称する場合がある)が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地(以下、表編地と称する場合がある)における1つの開口の面積が下流側の編地(以下、裏編地と称する場合がある)における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有していることを特徴とする。
【0025】
本発明で使用される立体構造体は、表裏編地がそれぞれ開口を有しているが、その1つの開口の面積は、表裏間で異なっている。風が送られてくる上流側の開口が大きく、下流側はそれよりも小さい。風は、開口の大きい編地から流れ込み、連結糸の間を通って、開口の小さい編地へと移動する。つまり、入り口よりも出口の開口の方が小さいため、吹き出すときの勢いが強くなって水分の拡散量が多くなる。
【0026】
また、このような構造にすると、連結糸は、大きな開口を有する編地面から小さな開口を有する編地面へとコースおよびウェール間において集まってくるような状態で存在することになる。つまり、図1に示すように、出口(小さな開口を有する編地2)付近の連結糸3は密な状態であるため、連結糸間に保持される水分量が多くなり、入り口の編地1付近よりも多くの水分が保持されることになる。そこに風が強い勢いで吹き抜けるため、効果的に水分を拡散させることができる。開口の面積比が1.5〜25倍であると、上流側の編地付近と下流側の編地付近とでの連結糸の最大密度の差は2〜4倍程度になる。図2には、図1における斜視図を示す。なお、符号4は大きな開口であり、符号5は小さな開口である。
【0027】
前記上流側の編地における1つの開口の面積は、下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍である。好ましくは4〜25倍、より好ましくは4〜20倍、さらに好ましくは4〜16倍である。もちろん、効果を妨げない程度に、上記範囲外の開口が混在していてもよい。また、開口は、すべてが同じ形状、開口面積を有していることには限定されず、異なる開口が混在していてもよい。なお、たとえば、表裏編地の開口がいずれも円形である場合、その直径は、上流側が下流側の1.5〜5倍程度である。上流側の面積が1.5倍より小さい場合は、開口の大きさの差が少ないため、出口付近において風速が大きく減速し、水分の拡散量が十分でなくなり、25倍をこえると、風速が速くなりすぎるため、編地が水分を十分に吸い上げる前に拡散が起こり、結果として水分の拡散量が十分でなくなる。図3に、上流側と下流側とで開口が同じ場合における斜視図を示す。
【0028】
なお、開口の個数は、上流側の編地では12〜40個/平方インチであることが好ましく、16〜36個/平方インチであることがより好ましい。上流側の開口が12個/平方インチより少ないと、風速が速くなりすぎるため、編地が水分を十分に吸い上げる前に拡散が起こり、結果として水分の拡散量が十分でなくなる傾向にあり、40個/平方インチをこえると、立体構造体に流れ込む前に風速が大きく減速してしまう傾向にある。下流側の編地では、32〜120個/平方インチであることが好ましく、36〜90個/平方インチであることがより好ましい。下流側の開口が32個/平方インチより少ないと、連結糸同士の間隔が大きくなりすぎるため、水分を十分に保持できず、結果的に水分の拡散量が十分でなくなる傾向にあり、120個/平方インチをこえると、開口の大きさが小さくなりすぎて、風速が大きく減速してしまう。
【0029】
開口の形状は、菱形、丸形、楕円型、四角形などとくに限定されず、その大きさも、ゲージや使用する糸の繊度、求められる性能などに応じて、適宜設定することができる。なかでも、開口の面積として、大きい開口は7〜350mm2であることが好ましく、12〜180mm2であることがより好ましい。大きい開口の面積が7mm2より小さいと、立体構造体に流れ込む前に風速が大きく減速してしまう傾向にあり、350mm2をこえると立体構造体を通る際の風力が強くなり、水分の拡散量が多くなりすぎるため、過剰に湿度が上昇してしまうことが懸念される。また、小さい開口は、1.5〜120mm2であることが好ましく、3〜80mm2であることがより好ましい。小さい開口の面積が1.5mm2より小さいと、風速が大きく減速してしまう傾向にあり、120mm2をこえると連結糸同士の間隔が大きくなりすぎるため、水分を十分に保持できない傾向にある。
【0030】
また、最長の対角線または長径(以下、まとめて単に直径と称す)としては、大きい方の開口について3〜20mmであることが好ましく、4〜15mmであることがより好ましい。また、小さい方の直径が1.5〜12mmであることが好ましく、2〜10mmであることがより好ましい。
【0031】
また、連結糸の本数は144〜3456本/平方インチである。なかでも、288〜2592本/平方インチであることが好ましい。連結糸が144本/平方インチより少ないと、水分保持量が少なくなりすぎ、3456本/平方インチをこえると、連結糸が圧力損失に影響を与えることになり、風速、風圧が低下してしまう。なお、上流側の編地と下流側とで開口の大きさが異なるため、下流側では上流側付近と下流側付近の連結糸との粗密の状態は異なるが(上流付近では疎部分と密部分とが比較的明確になっているが、下流付近では比較的一様)、単位面積あたりの本数は同じである。
【0032】
前記連結糸は、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とからなっている。クロスする方向に配置されている連結糸は、40〜70度の角度で配置されていることが好ましい。なお、80度より大きな角度で配置されている連結糸の角度は、最大で90度である。通常、水分保持材は、編地を立てて加湿機内などに設置されるが、すべての連結糸を編地に対して80度より大きな角度で配置すると、図4に示すように、連結糸が同じように湾曲し、接触面が大きくなる。そのため、水分の切れが悪くなり、機器が稼動している場合には、保持した水分が放れ難く、十分な加湿効果が期待できず、また、圧力損失も大きくなる。機器が稼動していない場合にも、連結糸の間に水分を保持し続けることになってしまい、カビや雑菌などの繁殖を促してしまう。
【0033】
しかし、80度以下でクロスする方向に配置する連結糸を多くすることで、連結糸の湾曲の度合いが一様でなくなり、連結糸同士の接触面を小さくすることができる。その結果、機器が稼動している場合には、保持した水分が放たれやすく、十分な加湿が期待でき、また、圧力損失も低減される。機器停止の場合には、保持し続ける水分の量が低減され、カビや雑菌などの繁殖を抑えることができる。なお、40度より小さな角度とすると、編地自体の厚みを大きくすることが難しくなるため、かえって水分の切れを悪くしてしまったり、厚みを保持することができずに変形してしまう懸念がある。
【0034】
また、全ての連結糸が40〜80度の角度で配置されていると、立体構造体の厚みを出すことが難しくなり、また連結糸同士の接触部が増えるため、保持した水分が放出されにくくなる。
【0035】
また、前記編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸が全連結糸の70〜90%であり、80度より大きな角度で配置されている連結糸が全連結糸の10〜30%であることが好ましい。40〜80度の角度の連結糸が70%より少ないと、ある角度をもって配置する効果が小さくなってしまう傾向にある。また、80度より大きな角度を有する連結糸が10%より少ないと、立体構造体の厚みをある程度に保持することが難しくなる傾向にある。
【0036】
前記両編地は、12〜40コース、12〜25ウェールで編成されていることが好ましい。ループ数でいうと、144〜1000/平方インチであることが好ましい。12コースより少ないと、コース間の隙間が広くループが少ないため、水分を十分に保持することができない傾向にあり、40コースをこえると、ループが多くなって隙間が小さくなり、水分を多く保持することはできるが、水分を放出・拡散しにくくなる傾向にある。好ましくは14〜34コースであり、より好ましくは14〜32コースである。また、12ウェールより少ないと、ウェール間のループ同士の隙間が大きくなり、水分を十分に保持することができない傾向にあり、25ウェールをこえると、ループ間の隙間が小さくなって水分を放出・拡散しにくくなる傾向にある。好ましくは12〜22ウェールであり、より好ましくは14〜20ウェールである。
【0037】
前記連結糸は、相対する編み針の1〜4針間にアンダーラップして表裏編地を交互に連結していることが好ましい。より好ましくは、2〜4針間のアンダーラップである。ここで、1針間にアンダーラップして連結するというのは、連結糸が相対する編針に編成されることであり、2針間にアンダーラップするということは、相対する編針の隣の編針に編成されることである。つまり、1針間にアンダーラップすると、連結糸は編地に対してほぼ90度で連結することになる。4針以上アンダーラップすると、編地に対して40度より小さい角度で連結することがあり、やはり上記の通り好ましくない。
【0038】
また、前記連結糸が1〜3本の編糸から構成されていること、つまり、連結糸が1ガイドから1〜3本給糸されて形成されていることが好ましい。より好ましくは、1ガイドから1〜2本給糸されて形成されることである。これにより、連結糸に様々な特性(硬さや吸水性など)をもつ編糸を組み合わせることができるため、立体構造体の厚み、水分保持率、圧力損失などをより調整しやすくなる。
【0039】
なお、上記以外の場合として、連結糸には、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、紡績糸を使用してもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。また、吸水性糸や融着糸、撥水糸、加工糸などを組み合わせて使用してもよい。連結糸に性質の異なる糸を使用することで、水分保持性や厚み保持性などを調整することができる。
【0040】
たとえば、連結糸を主にモノフィラメントで構成する場合、その小さい吸水率を補うために、マルチフィラメント糸や加工糸などを組み合わせて使用し、水分保持性を調整することができる。ここで、通常、上下の編地を連結する際には2枚の筬を使用するが、このとき、一方の筬にモノフィラメント糸を導糸し、他方に吸水性糸を導糸することができる。そして、たとえば、各筬のアンダーラップ数を変えることで、それぞれの編糸の長さや角度、粗密さを調整することができる。モノフィラメント糸の筬を4針間にアンダーラップし、吸水性糸の筬を2針間にアンダーラップする場合では、モノフィラメント糸と比較して吸水性糸の長さが短くなるため、モノフィラメント糸の影響が大きくなる。このような簡便な方法により、水分保持性と厚み保持性などを適宜調整することができる。
【0041】
前記のように、筬ごとに使用する糸を非吸水性糸、吸水性糸とすると、それぞれの糸が混ざり合うことなく、それぞれの性質を十分に発揮することができる。つまり、吸水性糸の部分では吸水性が良好となり、非吸水性糸の部分では水切れがよくなる。この例を図5(a)、(b)、(c)および(d)に示す。図中、符号3aは非吸水性糸、3bは吸水性糸を示す。これによって、水分の保持と放出という相反する性質を効果的に発揮することができる。なお、1イン1アウトや2イン2アウトなど一般的な方法で、2本引き揃えるなどして配列をしてもよく、その配列などについては適宜設定することができる。
【0042】
なかでも、連結糸として融着糸を20〜60重量%含んでいることが好ましく、30〜50重量%含んでいることがより好ましい。融着糸をこの割合で含んでいると、融着糸を熱により溶融し硬化させたとき、立体構造体の経緯方向のズレを防いで連結糸の厚みと連結糸の角度を一定にすることができ、これにより、水分の保持・拡散の効果を維持させることができる。また、融着糸自体に水分を保持する効果もある。
【0043】
また、前記吸水性糸は立体構造体として30〜70重量%含んでいることが好ましく、30〜65重量%含んでいることがより好ましく、30〜60重量%含んでいることがとくに好ましい。30重量%より少ないと吸水性糸を含有させる効果が小さく、70重量%をこえると機器停止時にも水分を多く保持することになるため、雑菌の繁殖等の問題が生じる。この吸水性糸は、地組織や連結糸のいずれかに用いてもよいし、両方に用いてもよい。地組織にのみ吸水性糸を用いると、水分の拡散性能はやや低下するものの水切れのよい水分保持材を得ることができる。吸水性糸とは、表面や内部の隙間に水を吸着する性質をもつ糸であり、一般的には綿やレーヨン、ナイロンなどがあげられる。また、異形断面や加工により、表面積や内部隙間を増大させた糸を用いてもよく、マルチフィラメント糸、加工糸および前記融着糸もここでは吸水性糸として作用する。なお、ここで非吸水性糸とは、公定水分率が2%以下程度のものをいう。
【0044】
また、本発明の水分保持材の厚みは、用途などに応じて適宜決定することができる。なかでも、4〜14mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。厚みが4mmより小さいと、編地が十分に水分を保持することが難しく、水分の拡散が不十分となる傾向にあり、14mmをこえると、圧力損失が大きくなる傾向にある。
【0045】
本発明で使用される表裏編地を構成する編糸の繊度も、用途などに応じて適宜決定することができる。なかでも、56〜550dtexであることが好ましく、84〜330dtexであることが好ましい。56dtexより小さいと、編地の強度が不足したり、水分保持量が少なくなりすぎる傾向にあり、550dtexをこえると、編地が硬く扱いにくくなり、また、保持された水分が放出されにくくなる傾向にある。
【0046】
また、本発明で使用される連結糸の繊度は、33〜440dtexであることが好ましく、56〜330dtexであることが好ましい。33dtexより小さいと、立体構造体の厚みを保持することが難しく、変形する懸念があり、440dtexをこえると、連結糸間の隙間が小さくなりすぎ、保持された水分が拡散・放出されにくくなる傾向にある。
【0047】
このような立体構造体は、図6に示す編機によって編成される。ビームB1およびB2から解除された編糸は、ガイドバーGB1およびGB2を通ってウェール方向に捌かれる。ついで、ガイドG1、G2に導糸されて、後部編針N9で編成され、後部H7の針釜を通り後部基布C11となる。ビームB5、B6から解除された編糸は、ガイドバーGB5、GB6を通ってウェール方向に捌かれる。ついで、ガイドG5、G6に導糸されて、前部編針N10で編成され、前部H8の針釜を通り前部基布C12となる。連結糸については、ビームB3、B4から解除された編糸が、ガイドバーGB3、GB4を通って、ウェール方向に捌かれたのち、ガイドG3、G4に導糸され、前後編針N9、N10で交互に連結編成されてなる。これによって、前部(表または裏)編地と後部(裏または表)編地とが繋がれ、立体構造体となる。
【0048】
本発明で使用される立体構造体の形状は、使用される目的、設置される機器の形状などに応じて、適宜整形し、水分保持材6とすることができる。たとえば、楕円形、円形、四角、三角、六角形などにすることがあげられる。図7に一例を示す。
【0049】
このようにして得られた水分保持材6は、図8に示すように、加湿器などの機器の内部に設置され、容器に入った水7に対して、上下方向、左右方向への移動、回転または振動などによって、あるいは、上部からの水分の散布などによって、その内部に水分が保持される。そして、一方の編地方向から風を送り込み、他方から水分を拡散させ、空気中の湿度を上昇させる。
【0050】
本発明の水分保持材は、機器稼動外における水分保持量が少ないことが特徴である。具体的には、水分保持材全体を水に浸漬したのち、水から引き上げ、1時間経過したときの水分重量が、引き上げ直後の水分重量の15〜50%であることが好ましい。より好ましくは、20〜40%である。この1時間後の水分保持量が15%より少ないと、水分が保持材からすぐに流れ落ちるということであり、機器稼動時においても水分保持性が低く、十分に水分を拡散することができない傾向にある。50%をこえると、水分を保持する性能が高すぎるため、風を送り込んでも水分による抵抗が大きくなって、十分に水分を拡散することができず、さらに、稼動外におけるカビ・雑菌の温床となりやすい。
【0051】
また、本発明の水分保持材を通った後の風速の減少率が、10〜50%の範囲であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。減少率が10%より小さいということは、水分保持材を通り抜けるスピードが速いということであり、立体構造体が十分に水分を保持する前に拡散が起こってしまい、十分な量とはならない傾向にある。50%をこえると、風速が大きく減速するため立体構造体が保持する水分を十分に拡散することができず、また、水分の切れが悪くなる傾向にある。
【0052】
実施例
(水分保持率の測定)
立体構造体を1m2にカットして水分保持材を得た。全体を水中に浸漬し、十分に水分を保持させた後、立てた状態で引き上げ、直後の重量を測定した。さらに、1時間立てたままで放置したのち重量を測定して、水の保持率を算出した。
=(浸漬1時間後の基布重量)−(浸漬前の基布重量)
/(浸漬直後の基布重量)−(浸漬前の基布重量)
【0053】
(風速の減少率)
JIS A1431に準じて、立体構造体の開口面積の大きな編地側から風を送り、他方の編地側から排気される風速を測定した。
=100−(立体構造体通過後の風速/立体構造体通過前の風速×100)
【0054】
実施例1
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に84dtex/36fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は18コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが90%を占め、90度のものは10%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は30%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0055】
実施例2
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み6mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56tex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃え、筬L4には56dtex/24fのマルチフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃えを使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は4針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、60度の角度でクロスしているものが80%を占め、90度のものは20%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は25%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0056】
実施例3
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸440dtex/96f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み12mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用し、筬L4に110dtex/48fのマルチフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は45%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0057】
実施例4
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸167dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み8mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用し、筬L4に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃えと56dtex/24fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップで編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は35%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0058】
実施例5
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−18G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み5mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56dtex−1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用し、筬L4に56dtex/24fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は20コース/18ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップで編成した。連結糸は、75度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は45%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0059】
実施例6
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−18G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み8mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56T−1dtexのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃え、筬L4に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用した。立体構造体の経緯の密度は20コース/18ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップで編成した。連結糸は、80度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は45%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0060】
実施例7
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110tex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで、筬L4には110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが80%を占め、90度のものは20%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は15%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0061】
実施例8
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−22G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み8mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで、筬L4には110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで使用した。立体構造体の経緯の密度は20コース/22ウェール、連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、80度の角度でクロスしているものが80%を占め、90度のものは20%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は20%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0062】
比較例1
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に84dtex/48fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は1針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、90度のものが100%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は60%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0063】
比較例2
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸を使用)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に56dtex/24fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)2本引き揃えを使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は1針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、90度のものが100%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は65%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0064】
比較例3
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−12G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に117dtexの綿紡績糸(50/1)を使用した。立体構造体の経緯の密度は12コース/12ウェール、連結糸は1針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、90度のものが100%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は60%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0065】
比較例4
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−20G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸167dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3,L4は表裏地組織を連結して、厚み6mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃えを使用し、筬L4に84dtex/36fの加工糸(ポリエステル糸)2本引き揃えを使用した。立体構造体の経緯の密度は40コース/24ウェール、連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが50%を占め、90度のものが50%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は60%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0066】
比較例5
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−24G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3,L4は表裏地組織を連結して、厚み3mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に33dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)と56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を引き揃えて、筬L4に84dtex/36fの加工糸(ポリエステル糸)を2本引き揃えて使用した。立体構造体の経緯の密度は36コース/28ウェール、連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、80度の角度でクロスしているものが40%を占め、90度のものが60%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は70%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0067】
【表1】
【符号の説明】
【0068】
1 上流側編地
2 下流側編地
3 連結糸
3a 連結糸(非吸水性糸)
3b 連結糸(吸水性糸)
4 大きい開口
5 小さい開口
6 水分保持材
7 水
B ビーム
G ガイド
GB ガイドバー
H 針釜
N 編針
C 基布
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などに気体を当てて拡散させ、空気を加湿するために用いられる立体構造体に関し、詳細には、水分を適度に保持し、また、圧力損失の少ない立体構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加湿用の家電機における室内に適度な水分を分散させる機能としては、箱のような容器に水を貯めておき、細いパイプに通した水を熱して水分を蒸発させ、それを扇風機のような機器で室内に拡散させる方法がある。
【0003】
近年においては、箱のような容器に水を貯めておき、あるいは上部から水を流し、その水に接触するように配置されたウレタン材や発泡材、不織布、スポンジ、綿糸などの水分を保持させる材料(以下、水分保持材と称す)に水分を保持させ、この水分保持材の後ろから扇風機のような機器で風を当てて、保持されている水分を拡散させて加湿する方法も用いられている。水分保持材は、固定されている場合もあるが、上下方向、左右方向あるいは回転など、動く場合もある。
【0004】
いずれの場合であっても、十分な加湿性能を発揮するには、水分保持材が十分に水分を保持し、かつ、圧力損失が小さいことが望ましい。しかし、上記ウレタン材や発泡材、不織布、スポンジ、綿糸などにおいては、水分保持性能は十分であるものの、圧力損失が大きいことが問題であった。
【0005】
そのため、水分保持材として、ダブルラッセルなど2枚の生地が連結糸で連結している立体構造体が検討されている。この立体構造体は、多数の連結糸からなる中間層を有しているため、この連結糸の隙間に水分が保持されやすく、また、連結糸は風向と並行して存在しているため、圧力損失への影響が少ないという理由からである。
【0006】
たとえば、特許文献1には、複数の開口を有する2枚の編地と、間隔をあけて2枚の編地を連結する複数の連結繊維とを備えた立体編物であって、1つの編目から4本以上の連結繊維が延在しており、2.54cm角にある連結繊維のそれぞれの断面の総周が700mm以上である液体保持材が開示されている。このように複数の連結繊維を近接して並べることにより、繊維表面だけでなく、毛細管現象によって繊維間にも液体を保持することができるため、保持できる水分量が増加する。また、連結繊維を曲線状にすることによって、さらに液体保持量が向上することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、やはり、少なくとも表裏2面の繊維シート材と両シートを連結する繊維からなる加湿エレメントが開示されている。そして、この連結糸に、マルチフィラメントを使用することによって、水分保持量が増加することが記載されている。
【0008】
特許文献3には、吸水化材などを担持させた繊維や吸水性の繊維を用いて、吸水性を向上させたダブルラッセル編地からなる加湿フィルタが開示されている。
【0009】
これら文献においては、水分保持材の水分保持能力を高めることを主目的としているが、これら水分保持性を高められた水分保持材は、稼動が終了した後(つまり、風を送るのを止めた後)においても水分を保持し続ける。この水分保持材に室内の塵、ほこり、ごみなどが付着すると、そこに潜んでいたカビや雑菌が、保持されている水分により繁殖する。そして、再び稼動させた際に、加湿された空気と共に、カビ・雑菌自体や、雑菌による異臭が放たれ、新たな問題を引き起こしている。また、特許文献1のように連結繊維を多く存在させると、空隙率が小さくなるため、圧力損失が大きくなって、水分の拡散が十分でなくなるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−280927号公報
【特許文献2】特開2010−255894号公報
【特許文献3】特開2011−144945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、稼動中においては加湿に十分な水分保持・拡散能力を発揮し、稼動していない場合には、水分を速やかに放出することのできる水分保持材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、表裏編地の開口差と、連結糸における密度および角度を特定の範囲にすることにより、稼動中には水分を保持・拡散する十分な能力を発揮し、稼動外では速やかに水分を放出することを見いだし、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、表裏編地が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地における1つの開口の面積が下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有している水分保持材に関する。
【0014】
前記編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸が全連結糸の70〜90%であり、80度より大きな角度で配置されている連結糸が全連結糸の10〜30%であることが好ましい。
【0015】
前記編地が、12〜40コース、12〜25ウェールであることが好ましい。
【0016】
前記連結糸が、相対する編み針の1〜4針間にアンダーラップして表裏編地を交互に連結していることが好ましい。
【0017】
前記連結糸が、融着糸を20〜60重量%含んでいることが好ましい。
【0018】
前記立体構造体が、吸水性糸を30〜70重量%含んでいることが好ましい。
【0019】
前記連結糸が、1〜3本の編糸から構成されていることが好ましい。
【0020】
前記立体構造体が、全体を水に浸漬したのち、水から引き上げ、1時間経過したときの水分重量が、引き上げ直後の水分重量の15〜50%であることが好ましい。
【0021】
前記上流側の編地における1つの開口の面積が7〜350mm2であり、下流側の編地における1つの開口の面積が1.5〜120mm2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、稼動中においては、圧力損失を小さく保ちながら十分な水分保持・拡散能力を発揮し、稼動していない場合には、水分を速やかに放出することのできる水分保持材を提供することができる。そのため、水分保持材におけるカビや雑菌の繁殖が抑えられ、快適な加湿を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の水分保持材の一部における断面図である。
【図2】本発明の水分保持材の一部における斜視図である。
【図3】従来の水分保持材の一部における斜視図である。
【図4】従来の水分保持材の一部における断面図である。
【図5】本発明の水分保持材の一部における断面図である。
【図6】本発明で使用される編機を説明する概略図である。
【図7】本発明の水分保持材の形状の例を示す図である。
【図8】水分保持材の使用状態を示す概略図である。
【図9】本発明の水分保持材を作成するための編成組織図の一例を示す図である。
【図10】本発明の水分保持材を作成するための編成組織図の他の例を示す図である。
【図11】本発明の水分保持材を作成するための編成組織図の他の例を示す図である。
【図12】従来の水分保持材を作成するための編成組織図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の水分保持材は、表裏編地(以下、表裏地組織と称する場合がある)が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地(以下、表編地と称する場合がある)における1つの開口の面積が下流側の編地(以下、裏編地と称する場合がある)における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有していることを特徴とする。
【0025】
本発明で使用される立体構造体は、表裏編地がそれぞれ開口を有しているが、その1つの開口の面積は、表裏間で異なっている。風が送られてくる上流側の開口が大きく、下流側はそれよりも小さい。風は、開口の大きい編地から流れ込み、連結糸の間を通って、開口の小さい編地へと移動する。つまり、入り口よりも出口の開口の方が小さいため、吹き出すときの勢いが強くなって水分の拡散量が多くなる。
【0026】
また、このような構造にすると、連結糸は、大きな開口を有する編地面から小さな開口を有する編地面へとコースおよびウェール間において集まってくるような状態で存在することになる。つまり、図1に示すように、出口(小さな開口を有する編地2)付近の連結糸3は密な状態であるため、連結糸間に保持される水分量が多くなり、入り口の編地1付近よりも多くの水分が保持されることになる。そこに風が強い勢いで吹き抜けるため、効果的に水分を拡散させることができる。開口の面積比が1.5〜25倍であると、上流側の編地付近と下流側の編地付近とでの連結糸の最大密度の差は2〜4倍程度になる。図2には、図1における斜視図を示す。なお、符号4は大きな開口であり、符号5は小さな開口である。
【0027】
前記上流側の編地における1つの開口の面積は、下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍である。好ましくは4〜25倍、より好ましくは4〜20倍、さらに好ましくは4〜16倍である。もちろん、効果を妨げない程度に、上記範囲外の開口が混在していてもよい。また、開口は、すべてが同じ形状、開口面積を有していることには限定されず、異なる開口が混在していてもよい。なお、たとえば、表裏編地の開口がいずれも円形である場合、その直径は、上流側が下流側の1.5〜5倍程度である。上流側の面積が1.5倍より小さい場合は、開口の大きさの差が少ないため、出口付近において風速が大きく減速し、水分の拡散量が十分でなくなり、25倍をこえると、風速が速くなりすぎるため、編地が水分を十分に吸い上げる前に拡散が起こり、結果として水分の拡散量が十分でなくなる。図3に、上流側と下流側とで開口が同じ場合における斜視図を示す。
【0028】
なお、開口の個数は、上流側の編地では12〜40個/平方インチであることが好ましく、16〜36個/平方インチであることがより好ましい。上流側の開口が12個/平方インチより少ないと、風速が速くなりすぎるため、編地が水分を十分に吸い上げる前に拡散が起こり、結果として水分の拡散量が十分でなくなる傾向にあり、40個/平方インチをこえると、立体構造体に流れ込む前に風速が大きく減速してしまう傾向にある。下流側の編地では、32〜120個/平方インチであることが好ましく、36〜90個/平方インチであることがより好ましい。下流側の開口が32個/平方インチより少ないと、連結糸同士の間隔が大きくなりすぎるため、水分を十分に保持できず、結果的に水分の拡散量が十分でなくなる傾向にあり、120個/平方インチをこえると、開口の大きさが小さくなりすぎて、風速が大きく減速してしまう。
【0029】
開口の形状は、菱形、丸形、楕円型、四角形などとくに限定されず、その大きさも、ゲージや使用する糸の繊度、求められる性能などに応じて、適宜設定することができる。なかでも、開口の面積として、大きい開口は7〜350mm2であることが好ましく、12〜180mm2であることがより好ましい。大きい開口の面積が7mm2より小さいと、立体構造体に流れ込む前に風速が大きく減速してしまう傾向にあり、350mm2をこえると立体構造体を通る際の風力が強くなり、水分の拡散量が多くなりすぎるため、過剰に湿度が上昇してしまうことが懸念される。また、小さい開口は、1.5〜120mm2であることが好ましく、3〜80mm2であることがより好ましい。小さい開口の面積が1.5mm2より小さいと、風速が大きく減速してしまう傾向にあり、120mm2をこえると連結糸同士の間隔が大きくなりすぎるため、水分を十分に保持できない傾向にある。
【0030】
また、最長の対角線または長径(以下、まとめて単に直径と称す)としては、大きい方の開口について3〜20mmであることが好ましく、4〜15mmであることがより好ましい。また、小さい方の直径が1.5〜12mmであることが好ましく、2〜10mmであることがより好ましい。
【0031】
また、連結糸の本数は144〜3456本/平方インチである。なかでも、288〜2592本/平方インチであることが好ましい。連結糸が144本/平方インチより少ないと、水分保持量が少なくなりすぎ、3456本/平方インチをこえると、連結糸が圧力損失に影響を与えることになり、風速、風圧が低下してしまう。なお、上流側の編地と下流側とで開口の大きさが異なるため、下流側では上流側付近と下流側付近の連結糸との粗密の状態は異なるが(上流付近では疎部分と密部分とが比較的明確になっているが、下流付近では比較的一様)、単位面積あたりの本数は同じである。
【0032】
前記連結糸は、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とからなっている。クロスする方向に配置されている連結糸は、40〜70度の角度で配置されていることが好ましい。なお、80度より大きな角度で配置されている連結糸の角度は、最大で90度である。通常、水分保持材は、編地を立てて加湿機内などに設置されるが、すべての連結糸を編地に対して80度より大きな角度で配置すると、図4に示すように、連結糸が同じように湾曲し、接触面が大きくなる。そのため、水分の切れが悪くなり、機器が稼動している場合には、保持した水分が放れ難く、十分な加湿効果が期待できず、また、圧力損失も大きくなる。機器が稼動していない場合にも、連結糸の間に水分を保持し続けることになってしまい、カビや雑菌などの繁殖を促してしまう。
【0033】
しかし、80度以下でクロスする方向に配置する連結糸を多くすることで、連結糸の湾曲の度合いが一様でなくなり、連結糸同士の接触面を小さくすることができる。その結果、機器が稼動している場合には、保持した水分が放たれやすく、十分な加湿が期待でき、また、圧力損失も低減される。機器停止の場合には、保持し続ける水分の量が低減され、カビや雑菌などの繁殖を抑えることができる。なお、40度より小さな角度とすると、編地自体の厚みを大きくすることが難しくなるため、かえって水分の切れを悪くしてしまったり、厚みを保持することができずに変形してしまう懸念がある。
【0034】
また、全ての連結糸が40〜80度の角度で配置されていると、立体構造体の厚みを出すことが難しくなり、また連結糸同士の接触部が増えるため、保持した水分が放出されにくくなる。
【0035】
また、前記編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸が全連結糸の70〜90%であり、80度より大きな角度で配置されている連結糸が全連結糸の10〜30%であることが好ましい。40〜80度の角度の連結糸が70%より少ないと、ある角度をもって配置する効果が小さくなってしまう傾向にある。また、80度より大きな角度を有する連結糸が10%より少ないと、立体構造体の厚みをある程度に保持することが難しくなる傾向にある。
【0036】
前記両編地は、12〜40コース、12〜25ウェールで編成されていることが好ましい。ループ数でいうと、144〜1000/平方インチであることが好ましい。12コースより少ないと、コース間の隙間が広くループが少ないため、水分を十分に保持することができない傾向にあり、40コースをこえると、ループが多くなって隙間が小さくなり、水分を多く保持することはできるが、水分を放出・拡散しにくくなる傾向にある。好ましくは14〜34コースであり、より好ましくは14〜32コースである。また、12ウェールより少ないと、ウェール間のループ同士の隙間が大きくなり、水分を十分に保持することができない傾向にあり、25ウェールをこえると、ループ間の隙間が小さくなって水分を放出・拡散しにくくなる傾向にある。好ましくは12〜22ウェールであり、より好ましくは14〜20ウェールである。
【0037】
前記連結糸は、相対する編み針の1〜4針間にアンダーラップして表裏編地を交互に連結していることが好ましい。より好ましくは、2〜4針間のアンダーラップである。ここで、1針間にアンダーラップして連結するというのは、連結糸が相対する編針に編成されることであり、2針間にアンダーラップするということは、相対する編針の隣の編針に編成されることである。つまり、1針間にアンダーラップすると、連結糸は編地に対してほぼ90度で連結することになる。4針以上アンダーラップすると、編地に対して40度より小さい角度で連結することがあり、やはり上記の通り好ましくない。
【0038】
また、前記連結糸が1〜3本の編糸から構成されていること、つまり、連結糸が1ガイドから1〜3本給糸されて形成されていることが好ましい。より好ましくは、1ガイドから1〜2本給糸されて形成されることである。これにより、連結糸に様々な特性(硬さや吸水性など)をもつ編糸を組み合わせることができるため、立体構造体の厚み、水分保持率、圧力損失などをより調整しやすくなる。
【0039】
なお、上記以外の場合として、連結糸には、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、紡績糸を使用してもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。また、吸水性糸や融着糸、撥水糸、加工糸などを組み合わせて使用してもよい。連結糸に性質の異なる糸を使用することで、水分保持性や厚み保持性などを調整することができる。
【0040】
たとえば、連結糸を主にモノフィラメントで構成する場合、その小さい吸水率を補うために、マルチフィラメント糸や加工糸などを組み合わせて使用し、水分保持性を調整することができる。ここで、通常、上下の編地を連結する際には2枚の筬を使用するが、このとき、一方の筬にモノフィラメント糸を導糸し、他方に吸水性糸を導糸することができる。そして、たとえば、各筬のアンダーラップ数を変えることで、それぞれの編糸の長さや角度、粗密さを調整することができる。モノフィラメント糸の筬を4針間にアンダーラップし、吸水性糸の筬を2針間にアンダーラップする場合では、モノフィラメント糸と比較して吸水性糸の長さが短くなるため、モノフィラメント糸の影響が大きくなる。このような簡便な方法により、水分保持性と厚み保持性などを適宜調整することができる。
【0041】
前記のように、筬ごとに使用する糸を非吸水性糸、吸水性糸とすると、それぞれの糸が混ざり合うことなく、それぞれの性質を十分に発揮することができる。つまり、吸水性糸の部分では吸水性が良好となり、非吸水性糸の部分では水切れがよくなる。この例を図5(a)、(b)、(c)および(d)に示す。図中、符号3aは非吸水性糸、3bは吸水性糸を示す。これによって、水分の保持と放出という相反する性質を効果的に発揮することができる。なお、1イン1アウトや2イン2アウトなど一般的な方法で、2本引き揃えるなどして配列をしてもよく、その配列などについては適宜設定することができる。
【0042】
なかでも、連結糸として融着糸を20〜60重量%含んでいることが好ましく、30〜50重量%含んでいることがより好ましい。融着糸をこの割合で含んでいると、融着糸を熱により溶融し硬化させたとき、立体構造体の経緯方向のズレを防いで連結糸の厚みと連結糸の角度を一定にすることができ、これにより、水分の保持・拡散の効果を維持させることができる。また、融着糸自体に水分を保持する効果もある。
【0043】
また、前記吸水性糸は立体構造体として30〜70重量%含んでいることが好ましく、30〜65重量%含んでいることがより好ましく、30〜60重量%含んでいることがとくに好ましい。30重量%より少ないと吸水性糸を含有させる効果が小さく、70重量%をこえると機器停止時にも水分を多く保持することになるため、雑菌の繁殖等の問題が生じる。この吸水性糸は、地組織や連結糸のいずれかに用いてもよいし、両方に用いてもよい。地組織にのみ吸水性糸を用いると、水分の拡散性能はやや低下するものの水切れのよい水分保持材を得ることができる。吸水性糸とは、表面や内部の隙間に水を吸着する性質をもつ糸であり、一般的には綿やレーヨン、ナイロンなどがあげられる。また、異形断面や加工により、表面積や内部隙間を増大させた糸を用いてもよく、マルチフィラメント糸、加工糸および前記融着糸もここでは吸水性糸として作用する。なお、ここで非吸水性糸とは、公定水分率が2%以下程度のものをいう。
【0044】
また、本発明の水分保持材の厚みは、用途などに応じて適宜決定することができる。なかでも、4〜14mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。厚みが4mmより小さいと、編地が十分に水分を保持することが難しく、水分の拡散が不十分となる傾向にあり、14mmをこえると、圧力損失が大きくなる傾向にある。
【0045】
本発明で使用される表裏編地を構成する編糸の繊度も、用途などに応じて適宜決定することができる。なかでも、56〜550dtexであることが好ましく、84〜330dtexであることが好ましい。56dtexより小さいと、編地の強度が不足したり、水分保持量が少なくなりすぎる傾向にあり、550dtexをこえると、編地が硬く扱いにくくなり、また、保持された水分が放出されにくくなる傾向にある。
【0046】
また、本発明で使用される連結糸の繊度は、33〜440dtexであることが好ましく、56〜330dtexであることが好ましい。33dtexより小さいと、立体構造体の厚みを保持することが難しく、変形する懸念があり、440dtexをこえると、連結糸間の隙間が小さくなりすぎ、保持された水分が拡散・放出されにくくなる傾向にある。
【0047】
このような立体構造体は、図6に示す編機によって編成される。ビームB1およびB2から解除された編糸は、ガイドバーGB1およびGB2を通ってウェール方向に捌かれる。ついで、ガイドG1、G2に導糸されて、後部編針N9で編成され、後部H7の針釜を通り後部基布C11となる。ビームB5、B6から解除された編糸は、ガイドバーGB5、GB6を通ってウェール方向に捌かれる。ついで、ガイドG5、G6に導糸されて、前部編針N10で編成され、前部H8の針釜を通り前部基布C12となる。連結糸については、ビームB3、B4から解除された編糸が、ガイドバーGB3、GB4を通って、ウェール方向に捌かれたのち、ガイドG3、G4に導糸され、前後編針N9、N10で交互に連結編成されてなる。これによって、前部(表または裏)編地と後部(裏または表)編地とが繋がれ、立体構造体となる。
【0048】
本発明で使用される立体構造体の形状は、使用される目的、設置される機器の形状などに応じて、適宜整形し、水分保持材6とすることができる。たとえば、楕円形、円形、四角、三角、六角形などにすることがあげられる。図7に一例を示す。
【0049】
このようにして得られた水分保持材6は、図8に示すように、加湿器などの機器の内部に設置され、容器に入った水7に対して、上下方向、左右方向への移動、回転または振動などによって、あるいは、上部からの水分の散布などによって、その内部に水分が保持される。そして、一方の編地方向から風を送り込み、他方から水分を拡散させ、空気中の湿度を上昇させる。
【0050】
本発明の水分保持材は、機器稼動外における水分保持量が少ないことが特徴である。具体的には、水分保持材全体を水に浸漬したのち、水から引き上げ、1時間経過したときの水分重量が、引き上げ直後の水分重量の15〜50%であることが好ましい。より好ましくは、20〜40%である。この1時間後の水分保持量が15%より少ないと、水分が保持材からすぐに流れ落ちるということであり、機器稼動時においても水分保持性が低く、十分に水分を拡散することができない傾向にある。50%をこえると、水分を保持する性能が高すぎるため、風を送り込んでも水分による抵抗が大きくなって、十分に水分を拡散することができず、さらに、稼動外におけるカビ・雑菌の温床となりやすい。
【0051】
また、本発明の水分保持材を通った後の風速の減少率が、10〜50%の範囲であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。減少率が10%より小さいということは、水分保持材を通り抜けるスピードが速いということであり、立体構造体が十分に水分を保持する前に拡散が起こってしまい、十分な量とはならない傾向にある。50%をこえると、風速が大きく減速するため立体構造体が保持する水分を十分に拡散することができず、また、水分の切れが悪くなる傾向にある。
【0052】
実施例
(水分保持率の測定)
立体構造体を1m2にカットして水分保持材を得た。全体を水中に浸漬し、十分に水分を保持させた後、立てた状態で引き上げ、直後の重量を測定した。さらに、1時間立てたままで放置したのち重量を測定して、水の保持率を算出した。
=(浸漬1時間後の基布重量)−(浸漬前の基布重量)
/(浸漬直後の基布重量)−(浸漬前の基布重量)
【0053】
(風速の減少率)
JIS A1431に準じて、立体構造体の開口面積の大きな編地側から風を送り、他方の編地側から排気される風速を測定した。
=100−(立体構造体通過後の風速/立体構造体通過前の風速×100)
【0054】
実施例1
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に84dtex/36fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は18コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが90%を占め、90度のものは10%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は30%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0055】
実施例2
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み6mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56tex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃え、筬L4には56dtex/24fのマルチフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃えを使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は4針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、60度の角度でクロスしているものが80%を占め、90度のものは20%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は25%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0056】
実施例3
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸440dtex/96f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み12mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用し、筬L4に110dtex/48fのマルチフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は45%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0057】
実施例4
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸167dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸84dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み8mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用し、筬L4に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃えと56dtex/24fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップで編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は35%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0058】
実施例5
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−18G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み5mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56dtex−1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用し、筬L4に56dtex/24fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は20コース/18ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップで編成した。連結糸は、75度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は45%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0059】
実施例6
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−18G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み8mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56T−1dtexのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃え、筬L4に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を使用した。立体構造体の経緯の密度は20コース/18ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップで編成した。連結糸は、80度の角度でクロスしているものが70%を占め、90度のものは30%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は45%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0060】
実施例7
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110tex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで、筬L4には110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は3針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが80%を占め、90度のものは20%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は15%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0061】
実施例8
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−22G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み8mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで、筬L4には110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を1イン1アウトで使用した。立体構造体の経緯の密度は20コース/22ウェール、連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、80度の角度でクロスしているものが80%を占め、90度のものは20%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は20%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0062】
比較例1
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に84dtex/48fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)を使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は1針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、90度のものが100%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は60%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0063】
比較例2
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸を使用)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に56dtex/24fの融着糸(製品名:ベルカップル、KBセーレン社製)2本引き揃えを使用した。立体構造体の経緯の密度は14コース/14ウェール、連結糸は1針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、90度のものが100%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は65%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0064】
比較例3
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−12G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸220dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、厚み10mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に110dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)、筬L4に117dtexの綿紡績糸(50/1)を使用した。立体構造体の経緯の密度は12コース/12ウェール、連結糸は1針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、90度のものが100%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は60%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0065】
比較例4
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−20G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸167dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3,L4は表裏地組織を連結して、厚み6mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)2本引き揃えを使用し、筬L4に84dtex/36fの加工糸(ポリエステル糸)2本引き揃えを使用した。立体構造体の経緯の密度は40コース/24ウェール、連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、70度の角度でクロスしているものが50%を占め、90度のものが50%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は60%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0066】
比較例5
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−24G(マイヤー製)を使用して、筬L1、L2は裏面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を、筬L5、L6は表面の開口部を有する地組織(編糸110dtex/48f、ポリエステル糸)を編成し、筬L3,L4は表裏地組織を連結して、厚み3mmの立体構造体を編成した。連結糸として、筬L3に33dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)と56dtex/1fのモノフィラメント糸(ポリエステル糸)を引き揃えて、筬L4に84dtex/36fの加工糸(ポリエステル糸)を2本引き揃えて使用した。立体構造体の経緯の密度は36コース/28ウェール、連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。連結糸は、80度の角度でクロスしているものが40%を占め、90度のものが60%であった。得られた水分保持材の1時間後の水分保持率は70%であった。評価結果をまとめて表1に示す。
【0067】
【表1】
【符号の説明】
【0068】
1 上流側編地
2 下流側編地
3 連結糸
3a 連結糸(非吸水性糸)
3b 連結糸(吸水性糸)
4 大きい開口
5 小さい開口
6 水分保持材
7 水
B ビーム
G ガイド
GB ガイドバー
H 針釜
N 編針
C 基布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏編地が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地における1つの開口の面積が下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有している水分保持材。
【請求項2】
前記編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸が全連結糸の70〜90%であり、80度より大きな角度で配置されている連結糸が全連結糸の10〜30%である請求項1記載の水分保持材。
【請求項3】
前記編地が、12〜40コース、12〜25ウェールである請求項1または2記載の水分保持材。
【請求項4】
前記連結糸が、相対する編み針の1〜4針間にアンダーラップして表裏編地を交互に連結している請求項1、2または3記載の水分保持材。
【請求項5】
前記連結糸が、融着糸を20〜60重量%含んでいる請求項1、2、3または4記載の水分保持材。
【請求項6】
前記立体構造体が、吸水性糸を30〜70重量%含んでいる請求項1、2、3、4または5記載の水分保持材。
【請求項7】
前記連結糸が、1〜3本の編糸から構成されている請求項1、2、3、4、5または6記載の水分保持材。
【請求項8】
前記立体構造体が、全体を水に浸漬したのち、水から引き上げ、1時間経過したときの水分重量が、引き上げ直後の水分重量の15〜50%である1、2、3、4、5、6または7記載の水分保持材。
【請求項9】
前記上流側の編地における1つの開口の面積が7〜350mm2であり、下流側の編地における1つの開口の面積が1.5〜120mm2である請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の水分保持材。
【請求項1】
表裏編地が連結糸で連結された立体構造体からなり、空気を加湿するために用いられる水分保持材であって、表裏編地ともに開口を有しており、風流の上流側の編地における1つの開口の面積が下流側の編地における1つの開口の面積の1.5〜25倍、連結糸の本数が144〜3456本/平方インチであり、編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸と80度より大きな角度で配置されている連結糸とを有している水分保持材。
【請求項2】
前記編地に対して40〜80度の角度でクロスする方向に配置されている連結糸が全連結糸の70〜90%であり、80度より大きな角度で配置されている連結糸が全連結糸の10〜30%である請求項1記載の水分保持材。
【請求項3】
前記編地が、12〜40コース、12〜25ウェールである請求項1または2記載の水分保持材。
【請求項4】
前記連結糸が、相対する編み針の1〜4針間にアンダーラップして表裏編地を交互に連結している請求項1、2または3記載の水分保持材。
【請求項5】
前記連結糸が、融着糸を20〜60重量%含んでいる請求項1、2、3または4記載の水分保持材。
【請求項6】
前記立体構造体が、吸水性糸を30〜70重量%含んでいる請求項1、2、3、4または5記載の水分保持材。
【請求項7】
前記連結糸が、1〜3本の編糸から構成されている請求項1、2、3、4、5または6記載の水分保持材。
【請求項8】
前記立体構造体が、全体を水に浸漬したのち、水から引き上げ、1時間経過したときの水分重量が、引き上げ直後の水分重量の15〜50%である1、2、3、4、5、6または7記載の水分保持材。
【請求項9】
前記上流側の編地における1つの開口の面積が7〜350mm2であり、下流側の編地における1つの開口の面積が1.5〜120mm2である請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の水分保持材。
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−76181(P2013−76181A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216175(P2011−216175)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
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