立体構造的に動的なペプチド
例えば、疾患に関連し得るβシート二次構造を有する標的タンパク質を検出するために、かつそのような疾患を診断および処置するために有用な、新規ペプチドを開示する。関連する方法およびキットも開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている、2009年1月30日に出願された米国仮特許出願第61/148,659号の恩典を米国特許法119(e)条の下で主張するものである。
【0002】
1.本発明の分野
本発明は、例えば、疾患に関連し得るミスフォールドタンパク質またはβシート二次構造を有するタンパク質を含む特定の立体構造を有する標的タンパク質を検出するのに有用な、立体構造的に動的なペプチドを提供する。そのような標的タンパク質を検出する方法、そのような標的タンパク質に関連する疾患またはそのリスクを診断する方法、およびそのような標的タンパク質に関連する疾患を処置する方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
2.背景
ミスフォールドタンパク質障害の発症は、正常タンパク質が、凝集しやすいβシートリッチな立体構造へ変換することを特徴とする。アルツハイマー病(AD)の場合には、アミロイドβ(Aβ)タンパク質の神経毒性のあるオリゴマーおよび原線維への自己集合が、疾患の原因として十分に裏付けされている。疾患に関連する他のミスフォールドタンパク質には、伝達性海綿状脳症(TSE)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)におけるプリオン;パーキンソン病のレビー小体におけるα−シヌクレイン沈着物、前頭側頭認知症およびピック病の神経原線維変化におけるタウ;筋委縮性側索硬化症(amylotrophic lateral sclerosis)におけるスーパーオキシドジスムターゼ;ならびにハンチントン病におけるハンチンチンが含まれる。例えば、Glennerら,J.Neurol.Sci.94:1−28,1989;Haanら,Clin.Neurol.Neurosurg.92(4):305−310,1990(非特許文献1および2)を参照されたい。
【0004】
米国特許第7,166,471号、US2006/0286672、US2005/0026165、US2008/0171341、US2006/0057671、およびUS2008/0095706(特許文献1〜6)は、例えば、ミスフォールドタンパク質、主にβシート二次構造を有する標的タンパク質、および自己凝集の特定状態にある標的タンパク質の検出に有用なペプチドを記載している。本明細書に記載されるペプチドを、そのそれぞれの内容が参照することによりそれらの全体として本明細書に組み入れられている、これらの特許文献のいずれかに記載されている方法において用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,166,471号
【特許文献2】US2006/0286672
【特許文献3】US2005/0026165
【特許文献4】US2008/0171341
【特許文献5】US2006/0057671
【特許文献6】US2008/0095706
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Glennerら,J.Neurol.Sci.94:1−28,1989
【非特許文献2】Haanら,Clin.Neurol.Neurosurg.92(4):305−310,1990
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態によれば、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブを提供するものであって、該ペプチドプローブが、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとる、または標的タンパク質に結合したら検出可能なシグナルを生成する立体構造変化を受ける。バリアント配列は、(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような、かつ/あるいは(D)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとるような、かつ/あるいは(E)該バリアント配列のβシート構造が、該参照配列のものよりも熱力学的に弱いような、かつ/あるいは(F)該バリアント配列が、該参照配列よりも高い安定性および/または低い反応性を有するような、かつ/あるいは(G)該バリアント配列が、該参照配列よりも高い親水性および/または水溶液中での溶解度を有するような、かつ/あるいは(H)該バリアント配列が、該参照配列よりもさらなるAβ結合モチーフを有するような、かつ/あるいは(I)該バリアント配列が、増大した凝集体形成能を有するような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、C末端におけるリジン残基の付加をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、N末端、C末端、両末端、あるいは該ペプチドが標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとるまたは立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、蛍光標識などの検出可能な標識で標識する。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは2つ以上の標識で標識されており、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合の該ペプチドプローブ上の2つ以上の標識間の距離は、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合の距離とは異なる。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合に検出可能な標識によって生成されるシグナルは、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合に生成されるシグナルとは異なり、例えばペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合のシグナルは、該ペプチドプローブがランダムコイル/αヘリックス立体構造を示す場合に生成されるシグナルよりも大きい。これらの実施形態のいずれかにおいて、ペプチドプローブを、エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識してよい。ペプチドプローブをエキシマーペア、例えばピレンペアなどで標識した場合、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示すと、それはエキシマーシグナルを発し得る。ペプチドプローブをFRETペア、例えばDACIA−I/NBD、マリーナブルー/NBD、ダンシル(Dansyl)/Trp、EDANS/FAMなどで標識した場合、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示すと、それは蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発し得る。ペプチドプローブをフルオロフォア/クエンチャーペア、例えばピレン/ダブシル(Dabcyl)、EDANS/ダブシル、およびFAM/ダブシルなどで標識した場合、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示すと、フルオロフォアシグナルは消光され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブ中の1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失は、参照配列の内部でなされる、あるいは参照配列のN末端またはC末端で、または両末端で、または内部および末端でなされる。
【0010】
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、アラニン残基などの酸化に耐性をもつ残基によるメチオニン残基の置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列の少なくとも3個の連続した残基のアラニン残基による置換を含む。
【0011】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失によって、2個の塩基間、例えばグルタミン酸残基とヒスチジン残基の間、グルタミン酸残基とアルギニン残基の間、ならびに/またはグルタミン酸残基とリジン残基の間に塩橋を導入する。
【0012】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失によって、ペプチドプローブ内にGXXEGモチーフ(配列番号:25)などのAβ結合モチーフを導入する。
【0013】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、バリアント配列は、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる。具体的な実施形態では、標的タンパク質はAβタンパク質であり、かつバリアント配列は、G29H、G29R、G29K、およびG33Eからなる群より選択される1個以上の置換を含む。付加的または代替的に、バリアント配列のβシート構造は、参照配列のものよりも熱力学的に弱くてもよい。具体的な実施形態では、バリアント配列は、I32S、F19S、S26D、H29D、I31D、L34D、およびL34Pからなる群より選択される1個以上の置換を含む。
【0014】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列よりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有する。具体的な実施形態では、バリアント配列は、グルタミン酸残基および/またはd−アルギニン残基を導入する、1個以上のアミノ酸の付加または置換を含む。付加的または代替的に、バリアント配列を、可溶性ポリエチレングリコール成分などの親水性成分に結合させてよい。
【0015】
前述の実施形態のいずれかによれば、検出可能な標識を、ペプチドプローブの末端リジン残基の側鎖に、および/またはペプチドプローブの内部リジン残基の側鎖に結合させてよい。
【0016】
前述の実施形態のいずれかによれば、ペプチドプローブを、例えばペプチドリンカーを介して、ビオチン成分に結合させてよい。具体的な実施形態では、ペプチドリンカーは、可動性リンカー、らせん状リンカー、トロンビン部位リンカー、ねじれリンカーからなる群より選択される。より具体的な実施形態では、リンカーは、配列番号:56〜60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、ペプチドプローブを、内部リジン残基の側鎖を介してビオチン成分に結合させる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドプローブは、(i)標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体である。追加の実施形態では、そのようなペプチドプローブを、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識し、例えばエキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識する。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、エキシマーペア(例えば、2つのピレン成分)で標識されており、標的タンパク質に結合していない場合には増大したエキシマーシグナルを発し、標的タンパク質に結合している場合には増大した自己シグナルを発する。他の具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、FRETペアで標識されており、標的タンパク質に結合していない場合には増大した蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発し、標的タンパク質に結合している場合には非FRETフルオロフォアシグナルを発する。他の具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、フルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、標的タンパク質に結合していない場合には減少または消光したシグナルを発し、標的タンパク質に結合している場合にはフルオロフォアシグナルを発する。
【0018】
本明細書に記載される任意の実施形態によれば、バリアント配列は、配列番号:2〜55からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでも、またはそれからなってもよい。具体的な実施形態では、バリアント配列は、配列番号:2(ペプチド22)のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる。
【0019】
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、少なくとも1個の残基のグルタミン酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、少なくとも1個の残基のヒスチジン残基による置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、イソロイシン残基のセリン残基による置換;グルタミン酸残基のプロリン残基、グリシン残基、グルタミン残基、またはリジン残基のいずれかによる置換;フェニルアラニン残基のセリン残基による置換;ロイシン残基のプロリン残基による置換;アラニン残基のグリシン残基による置換;およびアスパラギン酸残基のアスパラギン残基による置換からなる群より選択される1個以上の置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、C末端におけるリジン残基の付加を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
他の実施形態によれば、試験サンプル中の標的タンパク質を検出するための方法であって、該標的タンパク質はアミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し、(i)該サンプルを本明細書に記載される任意のペプチドプローブと接触させて、試験混合物を形成する工程;および(ii)該ペプチドプローブと存在する任意の標的タンパク質との間の任意の結合を検出する工程を含む方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、工程(ii)は、標的タンパク質に結合したらβシート立体構造を示すまたは立体構造変化を受けるペプチドプローブの蛍光標識によって生成される任意のシグナルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、工程(ii)は、複合体中に存在する任意の検出可能な標識(例えば、蛍光標識)によって生成される任意のシグナルを検出することによって、ペプチドプローブおよび標的タンパク質を含む複合体を検出することを含む。いくつかの実施形態では、複合体は不溶性複合体(例えば、アミロイドβ原線維)であり、かつ工程(ii)は、該不溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識(例えば、蛍光標識)によって生成される任意のシグナルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、複合体は可溶性複合体(例えば、アミロイドβオリゴマー)であり、かつ工程(ii)は、該可溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識(例えば、蛍光標識)によって生成される任意のシグナルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、工程(ii)の前に、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティークロマトグラフィーを含む処理によって試験混合物から複合体を分離する工程をさらに含む。
【0022】
他の実施形態によれば、アミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するための方法であって、ペプチドプローブは対象由来の生理学的サンプル中にあり、(A)該サンプルを、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体であるペプチドプローブと接触させる工程;ならびに(B)該プローブと該サンプル中に存在する任意の標的タンパク質との間の任意の会合を検出する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識する。具体的な実施形態では、ペプチドプローブをエキシマーペアで標識し、かつ工程(ii)は、任意の増大した自己シグナルまたは減少したエキシマーシグナルを検出することを含む。他の実施形態では、ペプチドプローブをFRETペアで標識し、かつ工程(ii)は、任意の増大した非FRETフルオロフォアシグナルまたは減少したFRETシグナルを検出することを含む。他の実施形態では、ペプチドプローブをフルオロフォア/クエンチャーペアで標識し、かつ工程(ii)は、任意の増大したフルオロフォアシグナルを検出することを含む。
【0023】
他の実施形態では、対象においてアミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するためのインビボ方法であって、(A)本明細書に記載される任意のペプチドプローブを該対象に投与する工程であって、該プローブは、該プローブが標的タンパク質に結合した場合にシグナルを生成する検出可能な標識で標識されている工程、および(B)該シグナルを検出する工程を含むインビボ方法を提供する。いくつかの実施形態では、イメージング技術、例えばポジトロン放出断層撮影法(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、X線撮影法、断層撮影法、蛍光透視法、核医学、光学的画像法、脳造影法、および超音波検査法などを用いて、シグナルを検出する。
【0024】
他の実施形態では、アミロイド形成疾患に罹患しているかその発症リスクを有する対象を処置する方法であって、本明細書に記載される任意のペプチドプローブを該対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、プローブを、アミロイド形成疾患に対する追加の治療剤に結合させる。
【0025】
本明細書に記載される任意の実施形態によれば、標的タンパク質は、膵島アミロイドポリペプチド前駆体タンパク質、アミロイドβタンパク質、Aβペプチド、血清アミロイドA、インスリン、アミリン、非アミロイドβ成分、プリオン、ヘモグロビン、免疫グロブリンまたはそのフラグメント、β2−ミクログロブリン、α−シヌクレイン、ロドプシン、α1−アンチキモトリプシン、クリスタリン、タウ、p53、プレセニリン、低密度リポタンパク質受容体、アポリポタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、ニューロフィラメントタンパク質、トランスサイレチン、プロカルシトニンまたはカルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、ゲルゾリン、嚢胞性線維症膜貫通調節因子、ハンチントン病タンパク質、フィブリノゲンα鎖、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、コラーゲン、β−ヘキソサミニダーゼ、およびシスタチンCタンパク質からなる群より選択されてよい。具体的な実施形態によれば、標的タンパク質はAβタンパク質であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】Aβペプチドの領域に相当するペプチドのそれぞれの末端に結合させたピレンの、該ピレン化ペプチドの溶媒環境に依存した、ピレン間距離の分布についてのインシリコ予測を図解している(左のパネル:水、右のパネル:40%TFE)。
【図1B】ペプチドがβシート立体構造である場合の、該ペプチドのN末端およびC末端に結合させたピレン成分の密接な物理的近接性を図解している。
【図1C】ペプチドがランダムコイル/αヘリックス立体構造である場合の、該ペプチドのN末端およびC末端に結合させたピレン成分間の距離を図解している。
【図2】本明細書に記載されるペプチド(配列番号:2〜13)の具体的な実施形態、ならびに蛍光標識に結合させるためにC末端に付加されたリジンを含む「野生型」Aβタンパク質のアミノ酸16−35に基づく野生型参照配列(配列番号:1)と比較した、それらのアミノ酸の付加および/または置換を示す。
【図3】ペプチドプローブ(配列番号:1)を用いて不溶性Aβ42標的タンパク質線維を検出する、インビトロの遠心分離に基づく相互作用アッセイの結果を図解している。
【図4】図4Aおよび図4Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:4)を用いて可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのサイズ排除クロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマー(oligolmer)に結合することを意味する、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している結果を図4Bに図解する。図14に示されているように、配列番号:1の標識ペプチドプローブに関して、同様の結果が得られた。
【図5】図5Aおよび図5Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:2)を用いてビオチン標識可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのアフィニティークロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマーに結合することを意味する、高分子量オリゴマーの存在下で標識ペプチドプローブのみが捕捉物質中に検出されることを示している結果を図5Bに図解する。図15に示されているように、配列番号:1の標識ペプチドプローブに関して、同様の結果が得られた。
【図6】図6Aは、参照ペプチド(配列番号:1)と比較した、本明細書に記載されるペプチド(ペプチド22;配列番号:2)の溶媒誘導による立体構造変化に伴う最大シグナル獲得の測定を図解している。図6Bは、前記参照ペプチドのものと比較した、線維状アミロイド標的タンパク質の存在下における前記ペプチドの立体構造変化に伴う最大シグナル獲得の測定結果を報告している。
【図7】円偏光二色性分光偏光測定(CD)分析によって決定されるペプチド38(配列番号:3)の二次構造に対する、pHおよび塩濃度の効果を図解している。
【図8】CD分析によって決定されるペプチド38(配列番号:3)の二次構造に対する、Aβ42オリゴマー(標的タンパク質)の相互作用の効果を図解している。
【図9】図9Aおよび図9Bは、ペプチド45(配列番号:4)のピレン蛍光特性に対する、Aβ42オリゴマー(標的タンパク質)の相互作用の効果を図解している。図9Aは、ペプチド−標的複合体の蛍光発光を示している。図9Bは、ペプチド単独の蛍光発光を示している。
【図10】異なる基質に結合すると生じる、本明細書に記載されるペプチドプローブの立体構造変化を図解している。最上段パネル:それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ(例えば、配列番号:1)は、40%TFE中でAβ線維に結合したら、増大したピレンエキシマーシグナルによって検出される、増加したβシート立体構造をとる。下段パネルA:それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ(例えば、ペプチド22;配列番号:2)は、水中でAβオリゴマーに結合したら、増大したピレンモノマー(「自己」)シグナルによって検出される、より規則性の低い(例えば、減少したβシート)立体構造をとる。下段パネルB:それぞれの末端においてFRET標識で標識されたペプチドプローブは、水中でAβオリゴマーに結合したら、FRETシグナルによって検出される、増加したβシート立体構造をとる。ペプチドプローブAD293(配列番号:52)、AD292(配列番号:53)、AD291(配列番号:54)、およびAD290(配列番号:55)は、このタイプの立体構造変化と一致した蛍光挙動を示している。
【図11】可溶性Aβオリゴマーの非存在下(左)および存在下(右)での、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチド22(配列番号:2)に関する生の蛍光スペクトルを図解している。ペプチド22の蛍光は、オリゴマーの非存在下では長期間安定(モノマーまたはエキシマーの蛍光に増大なし)であるが、可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合には、ピレンモノマーシグナルの増大を示す。(実線=時間0;破線=3時間;点線=18時間)。
【図12】可溶性Aβオリゴマーに対するペプチド22(配列番号:2)の特異性を図解している。最初の2つのパネルは、ペプチド22を2つの異なる方法で調製された可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合のピレンモノマーシグナルの用量依存的増大を示している。次の2つのパネルは、ペプチド22をAβ40モノマーおよびAβ42モノマーとインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。次のパネルは、ペプチド22をAβ40線維とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示しており、そして次のパネルは、ペプチド22をAβ42線維とインキュベートした場合のモノマー蛍光のいくらかの用量依存的増大を示している。最後の2つのパネルは、ペプチド22をコントロール溶液(BSAまたは脱水酵素)とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。データは、経時的なモノマー蛍光領域の自然対数(Ln)を示している。(点線=0.3uMの基質;破線=0.1uM;一点鎖線=0.03uM;実線=p22単独)
【図13A】可溶性Aβ42オリゴマーと相互作用すると生じる、ペプチド22(配列番号:2)の立体構造変化を図解している。図13Aは、エキシマーからモノマーの蛍光へシフトする、可溶性Aβ42オリゴマーと相互作用すると生じるペプチド22の蛍光の変化を示している。(実線−Aβ42オリゴマーなし;一点鎖線−30nNのAβ42オリゴマー;大きな破線−100nNのAβ42オリゴマー;細かい点線−300nNのAβ42オリゴマー)。
【図13B】可溶性Aβ42オリゴマーと相互作用すると生じる、ペプチド22(配列番号:2)の立体構造変化を図解している。図13Bは、ピレン蛍光の変化によって検出可能である、Aβ42オリゴマーの存在下での立体構造変化を検出しない、CD分析によって決定されるペプチド22の二次構造を示している。(実線−ペプチド22;一点鎖線−Aβ42オリゴマー;大きな破線−個々のサンプルの結果の算術的合計;細かい点線−ペプチド22とAβ42オリゴマーの混合物)。
【図14】図14Aおよび図14Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:1)を用いて可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのサイズ排除クロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマーに結合することを意味する、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している結果を図14Bに図解する。
【図15】図15Aおよび図15Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:1)を用いてビオチン標識可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのアフィニティークロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマーに結合することを意味する、高分子量オリゴマーの存在下で標識ペプチドプローブのみが捕捉物質中に検出されることを示している結果を図15Bに図解する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
1.定義
本明細書において使用するとき、単数形「a」、「an」および「the」は、単数形のみを表すことが明確に記述されていない限り、単数形および複数形の両方を表す。
【0028】
「約」という用語、および範囲の使用は、一般に、約という用語によって条件を付されるかどうかにかかわらず、包含される数が本明細書に示される正確な数に限定されないことを意味し、かつ本発明の範囲から逸脱するものではないが、引用された範囲内に実質的にあることを表すことを意図する。本明細書において使用するとき、「約」は、当業者によって理解され、かつそれが用いられる文脈上である程度変化する。それが用いられる文脈を仮定して、当業者にとって明確でない用語の使用が存在する場合、「約」は、特定の用語の最大でプラスマイナス10%まで意味する。
【0029】
本明細書において使用するとき、「対象」とは、ヒトおよび家畜、例えばネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ等を含む、検出または治療的処置を必要としている任意の動物を表す。「対象」には、マウスおよび他の小型哺乳類を含む、研究の場で用いられる動物も含まれる。典型的な対象は、病状、疾患、もしくは障害のリスクを有する可能性があるか、そのような病状に罹患していることが疑わしい可能性があるか、あるいは、特定の病状、例えば標的タンパク質に関連する病状、疾患、または障害などに関するリスクまたは状態を判定することを望んでいる可能性がある。本明細書において使用するとき、「治療的」処置には、既存の病状を処置するための、対象が発症するリスクがある病状を予防するための、または健康維持のための治療剤の投与が含まれる。
【0030】
本明細書において使用するとき、「立体構造」とは、タンパク質またはペプチドの特定の二次構造、例えばαヘリックス、ランダムコイル、またはβシート二次構造を表す。「立体構造変化」とは、一方の立体構造からもう一方への変化である。
【0031】
「プリオン」とは、プリオンに基づく疾患に関連するタンパク質を表す。「PrPタンパク質」、「PrP」等は、本明細書において代替可能に用いられ、ヒトおよび動物において疾患(例えば、海綿状脳症)を引き起こすことが知られている感染性粒子形態(「PrPSc」)、ならびに適切な条件下で感染性PrPSc形態に変換する非感染性形態(「PrPC」)の両方を意味する。プリオン粒子は、排他的でない場合、PrP遺伝子によってコードされるPrPSc分子から大部分は構成されている。本明細書において使用するとき、「プリオン」には、用いられる任意の動物において、特にヒトおよび家畜において、これらの疾患または他のもののすべてまたはいずれかを引き起こす、すべての形態のプリオンが含まれる。
【0032】
本明細書において記載するとき、「アミロイド形成疾患」とは、体内にアミロイドプラークまたはアミロイド沈着物が形成される疾患である。アミロイドの形成は、多くの障害、例えば糖尿病、AD、スクレイピー、BSE、CJD、慢性消耗病(CWD)、関連伝達性海綿状脳症(TSE)、および本明細書に開示される他の疾患において見られる。しかしながら、本発明は、アミロイド形成疾患に限定されるものではなく、タンパク質の特定の立体構造または凝集状態に関連する任意の疾患または病状の診断および処置に有用である。
【0033】
「Aβタンパク質」という用語は、Aβ40およびAβ42を含む、すべての形態のAβタンパク質を表すために本明細書において用いられる。「Aβ」タンパク質には、凝集体を形成する傾向の増大を示すことが知られている天然に存在する変異体を含む、すべての天然に存在する変異体も含まれる。そのような変異体は、参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている、例えばMurakamiら,J.Biol.Chem.46:46179−46187,2003に開示されているものなど、当該技術分野において公知である。
【0034】
「標的タンパク質」は、例えば立体構造変化し得るタンパク質など、本発明による標的化、同定の検出に適した任意のタンパク質を表すために本明細書において用いられる。標的タンパク質は、本明細書に記載されるβシート立体構造を特徴とする疾患状態に関連し得る。標的タンパク質は、天然に存在するタンパク質であってよい。
【0035】
「天然型」または「天然に存在する」タンパク質とは、天然に存在する供給源から回収されるタンパク質を表す。天然型タンパク質は、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、アシル化、および切断を含むがこれらに限定されない、翻訳後修飾を含む。「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」は、代替可能に用いられる。
【0036】
「ペプチド模倣体(peptide mimic)」とは、ペプチド模倣物(peptidomimic)またはペプチド模倣薬(peptidomimetic)とも呼ばれ、ペプチドの特性を模倣する任意の分子を表す。ペプチド模倣体には、特定のペプチドの折り畳みおよび/または二次構造を模倣するポリマー分子、ならびにペプチドの生物学的または化学的特性を模倣するものが含まれる。ペプチド模倣体は、アミノ酸骨格を有していてよく、かつ天然でない化学物質(ehemical)またはアミノ酸置換を含有していてよい。あるいは、ペプチド模倣体は、種々の化学的骨格、例えば3−ペプチド、アントラニルアミドオリゴマー、オリゴ(m−フェニレンエチニレン)、オリゴウレア(oligourea)、オリゴピノリノン(oligopynolinone)、アザチド(azatide)、およびN−置換グリシンオリゴマーなどを有していてよい。ペプチド模倣体は、プロテアーゼに対する耐性などの種々の化学的特性を有していてよいが、一方で、ペプチドの折り畳みおよびペプチド−ペプチド相互作用(例えば、水素結合を介した相互作用、等々を含む)などのペプチド特性を保持する。任意の適切なペプチド模倣体を本発明において用いることができ、かつそれにはそれぞれが参照することによりそれらの全体として本明細書によって組み入れられている、Chongsiriwatana,N.P.ら,Proc Natl Acad Sci USA 2008,105,(8),2794−9;Kirshenbaum,K.ら,Current Opinion in Structural Biology 1999,9,(4),530−535;Lee,B.c.ら,Journal of the American Chemical Society 2005,127,(31),10999−11009に記載されているように設計および/または構築されたものが含まれてよい。
【0037】
2種のポリペプチド間の「類似性」は、一方のポリペプチドのアミノ酸配列を第二のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。一方のポリペプチドのアミノ酸は、それが同一または保存的アミノ酸置換である場合、第二のポリペプチドの対応するアミノ酸に類似している。保存的置換には、Dayhoff,M.O.編,The Atlas of Protein Sequence and Structure 5,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.(1978),およびArgos,P.(1989)EMBO J.8:779−785に記載されているものが含まれる。例えば、以下の群:
−Ala,Pro,Gly,Gln,Asn,Ser,Thr:
−Cys,Ser,Tyr,Thr;
−Val,Ile,Leu,Met,Ala,Phe;
−Lys,Arg,His;
−Phe,Tyr,Trp,His;および
−Asp,Glu
のうちの1群に属するアミノ酸は、保存的変化または置換を示す。
【0038】
「相同性」、「のホモログ」、「相同な」、「同一性」、または「類似性」とは、2つのペプチド間の配列類似性を表し、同一性はより厳密な比較である。比較のために整列させ得るそれぞれの配列における位置を比較することによって、相同性および同一性を決定することができる。比較配列における位置が同じアミノ酸によって占められている場合、そのとき分子はその位置において同一である。アミノ酸配列の同一性の程度は、該アミノ酸配列によって共有される位置における同一アミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の相同性または類似性の程度は、該アミノ酸によって共有される位置における、すなわち構造的に関連したアミノ酸の数の関数である。「関連しない」または「相同でない」配列は、本明細書に記載される配列の1つと10%以下の同一性を共有する。関連配列は、10%を上回る配列同一性、例えば少なくとも約15%の配列同一性、少なくとも約20%の配列同一性、少なくとも約30%の配列同一性、少なくとも約40%の配列同一性、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する。
【0039】
「同一性パーセント」という用語は、2つのアミノ酸配列間の配列同一性を表す。比較のために整列させたそれぞれの配列における位置を比較することによって、同一性を決定することができる。1組の比較配列における等価位置が、同じ位置でのもう一方における同じアミノ酸によって占められている場合、そのとき分子はその位置において同一であり;等価部位が同じまたは類似アミノ酸残基(例えば、ステアリン(stearic)および/または電子的性質が類似した)によって占められている場合、そのとき分子をその位置において相同である(類似している)と呼ぶことができる。相同性、類似性、または同一性のパーセンテージとしての表現は、比較配列によって共有される位置における同一または類似アミノ酸の数の関数を表す。FASTA、BLAST、またはENTREZを含む、種々のアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムを用いることができる。FASTAおよびBLASTは、GCG配列分析パッケージ(ウィスコンシン大学,マディソン,ウィスコンシン州)の一部として入手可能であり、例えばデフォルト設定で使用することができる。ENTREZは、国立医学図書館の国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NIH,ベセスダ,メリーランド州)を介して入手可能である。一実施形態では、例えばそれぞれのアミノ酸のギャップに、それが該2つの配列間のただ1つのアミノ酸ミスマッチであるかのように負荷をかける、ギャップウェイト1を用いたGCGプログラムによって、2つの配列の同一性パーセントを決定することができる。配列同一性を決定するための他の技術は、当該技術分野において周知であり、かつ記載されている。
【0040】
2.標的タンパク質および疾患
特定の立体構造または自己凝集状態をとる場合に、ヒトまたは動物の疾患に関連するタンパク質は、当該技術分野において公知である。そのような疾患の例には、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)を含むアミロイド形成疾患が含まれる。本明細書において使用するとき、「アミロイド形成疾患」とは、体内にアミロイドプラークまたはアミロイド沈着物が形成される疾患である。アミロイドの形成は、多くの障害、例えば糖尿病、AD、スクレイピー、牛海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、慢性消耗病(CWD)、関連伝達性海綿状脳症(TSE)などにおいて見られる。
【0041】
様々な疾患が、特定の構造形態をとるタンパク質(例えば、「ミスフォールドタンパク質」または自己凝集タンパク質)に関連しているが、異なる構造形態をとる該タンパク質(例えば、「正常タンパク質」)は無害である。したがって、これらの病状に関して、βシート立体構造は、疾患の検出のための標的構造状態であり得、一方で、αヘリックスおよび/またはランダムコイル立体構造は、疾患がないことを確認するためのまたは疾患の進行状態がないことを同定するための標的構造状態であり得る。多くの場合、正常タンパク質は可溶性であり、一方で、ミスフォールドタンパク質は不溶性凝集体を形成する。
【0042】
下記は、特定のタンパク質構造状態に関連する疾患の限定されない一覧であり、その後に関与するタンパク質が挿入されて続く;アルツハイマー病(APP、Aβペプチド、α1−アンチキモトリプシン、タウ、非Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2、アポE);プリオン病、CJD、スクレイピー、およびBSE(PrPSc);ALS(SODおよびニューロフィラメント);ピック病(ピック小体);パーキンソン病(レビー小体中のα−シヌクレイン);前頭側頭認知症(原線維中のタウ);II型糖尿病(アミリン);多発性骨髄腫−形質細胞疾患(IgGのL鎖);家族性アミロイド多発ニューロパチー(トランスサイレチン);甲状腺髄様癌(プロカルシトニン);慢性腎不全(β2−ミクログロブリン);鬱血性心不全(心房性ナトリウム利尿因子);老人性心アミロイドーシスおよび全身性アミロイドーシス(トランスサイレチン);慢性炎症(血清アミロイドA);アテローム性動脈硬化症(アポA1);家族性アミロイドーシス(ゲルゾリン);ならびにハンチントン病(ハンチンチン)。また、伝達性海綿状脳症(TSE)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)におけるプリオン;ならびに筋委縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ。例えば、Glennerら,J.Neurol.Sci.94:1−28,1989;Haanら,Clin.Neurol.Neurosurg.92(4):305−310,1990を参照されたい。
【0043】
しばしば、これらの不溶性タンパク質は、βプリーツシート立体構造という共通の特徴を有する分岐していない原線維から構成される凝集体を形成する。CNSにおいて、アミロイドは、脳血管および髄膜血管(脳血管沈着物)に、ならびに脳実質(プラーク)に存在し得る。ヒトおよび動物モデルにおける神経病理学的研究により、アミロイド沈着物の近位にある細胞は、その正常な機能を阻害されることが示されている。例えば、Mandybur,Acta Neuropathol.78:329−331,1989;Kawaiら,Brain Res.623:142−146,1993;Martinら,Am.J.Pathol.145:1348−1381,1994;Kalariaら,Neuroreport 6:477−80,1995;Masliahら,J.Neurosci.16:5795−5811,1996を参照されたい。他の研究により、アミロイド原線維は神経変性を実際に引き起こし得ることがさらに示されている。例えば、Lendonら,J.Am.Med.Assoc.277:825−831,1997;Yankner,Nat.Med.2:850−852,1996;Selkoe,J.Biol.Chem.271:18295−18298,1996;Hardy,Trends Neurosci.20:154−159,1997を参照されたい。
【0044】
タンパク質の誤った折り畳みをもたらす根本的な分子メカニズムは十分に理解されていないが、前述のすべての神経障害に共通の特徴は、集合してβシート構造を形成する原線維の形成である。原線維形成およびそれに続く、プラーク沈着物を伴うβシート二次構造の形成は、核形成段階を伴う複雑なメカニズムを介して起こり、ここで、タンパク質のモノマーが会合して原線維を形成し、その後にそれぞれの末端での原線維の伸長が続く。したがって、原線維形成を阻害し得るペプチド、タンパク質、または抗体プローブは、疾患の進行を阻止し、ゆえに治療上重要であろう。さらに、病的タンパク質の特定の自己会合状態と会合し得る薬剤は、ミスフォールドタンパク質の特定の形態を検出および定量化するための有用な診断ツールであり、ならびに疾患の進行についての洞察を提供する。したがって、自己凝集の特定状態にある特定のタンパク質と会合し得る選択性の高いペプチド薬剤は、検出用薬剤として、ならびに治療的用途のためのどちらでも有用である。
【0045】
本発明は、疾患に関連するミスフォールド標的タンパク質を検出するためのペプチドプローブおよび方法を提供する。そのようなミスフォールドタンパク質は、βシート二次構造または立体構造を示しおよび増加させ得、かつ不溶性の凝集体、原線維、またはそのような疾患の特徴であるプラークなど沈着物を形成し得る。
【0046】
(i)アミロイド形成疾患
アミロイドβタンパク質(Aβ)は、アミロイド形成疾患、例えばアルツハイマー病(AD)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)などにおける主要な原因物質である。可溶性Aβは、健常な個体の血漿中および脳脊髄液中に見られ、疾患は、罹患個体に見られるプラークまたは凝集体を形成する不溶性原線維と相関すると考えられる。
【0047】
Aβは、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)をいくつかの部位のいずれかで切断することによって生成され、いくつかの形態のAβが生じる。アミロイドプラークに見られる2種の豊富な形態は、APPのカルボキシ末端の代替的切断によって産生される、Aβ1−40(Aβ40とも呼ばれる)およびAβ1−42(Aβ42とも呼ばれる)である。例えば、Selkoeら,PNAS USA 85:7341−7345,1988;Selkoe,Trends Neurosci.16:403−409,1993を参照されたい。Aβ40およびAβ42は同一のアミノ酸配列を有し、Aβ42は2個のさらなる残基(IleとAla)およびそのC末端を有する。Aβ40はより豊富であるが、Aβ42はより原線維形成性であり、かつADおよびCAAの両方のアミロイド沈着物において2つのうちの主要な成分である。例えば、Wurthら,J.Mol.Biol.319:1279−90(2002)を参照されたい。前述のように、天然に存在するAβタンパク質のすべての変異体は、本発明との関連で、標的タンパク質であり得、または参照配列の基礎としての役割を果たし得る。
【0048】
高い血漿Aβ42レベルは、ADに関連しており、かつADに関する高いリスクにも関連している。また、Aβ42/Aβ40レベルの比率の大きさは、AD、CAA、および老年期うつ病(LLMD)など他の病状にとって臨床上重要である。例えば、Pomaraら,Neurochem.Res.(2006)を参照されたい。血漿中のAβ42およびAβ40レベルは、典型的にモノクローナル抗体を用いて測定される。前述のAD症例におけるアミロイド沈着物に加えて、ほとんどのAD症例は、血管壁におけるアミロイド沈着も伴う。例えば、Vinters H.V.,Stroke Mar−Apr;18(2):311−324,1987;Itoh Y.ら,Neurosci.Lett.155(2):144−147,Jun.11,1993を参照されたい。
【0049】
(ii)プリオン病および伝達性海綿状脳症
プリオンは、ヒトおよび動物において中枢神経系の海綿状脳症を引き起こす感染性病原体である。潜在的なプリオン前駆体は、PrP27−30と呼ばれるタンパク質であり、感染脳内でプラークとして見られる棒状フィラメントに重合する(凝集する)28キロダルトンの疎水性糖タンパク質である。正常型プリオンタンパク質(PrPC)は、大部分はαヘリックスおよびコイルドループ構造を有する細胞表面メタロ−糖タンパク質である。異常型(PrPSc)は、プロテアーゼに耐性のある配座異性体であり、主にβシートを含有する二次構造を有する。二次構造におけるこの立体構造変化が、プリオン病の過程における凝集および最終的な神経毒性のあるプラーク沈着につながると考えられている。
【0050】
伝達性海綿状脳症または「TSE]としても知られるプリオン関連疾患には、ヒツジおよびヤギのスクレイピー、シカおよびエルクの慢性消耗病、ならびにウシの牛海綿状脳症(BSE)が含まれる。例えば、WilesmithおよびWells,Microbiol.Immunol.172:21−38,1991を参照されたい。4つのヒトのプリオン病:(1)クールー、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)が同定されている。例えば、Gajdusek,D.C.,Science 197:943−969,1977;Medoriら,N.Engl.J.Med.326:444−449,1992を参照されたい。TSEは、致死性の神経変性疾患である。これらの疾患は、宿主によってコードされるプロテアーゼ感受性の正常型プリオンタンパク質(PrP−sen)のプロテイナーゼK耐性の異常型アイソフォーム(PrP−res)の形成および脳内での蓄積を特徴とする。PrP−resは、PrP−senをより高いβシート含有量を有するPrP−res分子凝集体へ変換させる立体構造変化を伴う翻訳後修飾過程によって、PrP−senから形成される。これらのPrP−res高分子凝集体の形成は、PrP−resのアミロイド沈着物が脳内で形成されている、最終的に「海綿状」(空洞だらけ)になる、TSE媒介性脳病変に密接に関連している。
【0051】
細胞タンパク質PrP−senは、ヒトにおいて第20染色体上に位置する遺伝子によってコードされるシアロ糖タンパク質である。PrP遺伝子は、神経組織および神経以外の組織の両方で発現しており、その最高濃度のmRNAはニューロンで見られる。Prp遺伝子の配列は、参照することにより本明細書に組み入れられている、米国特許第5,565,186号に開示されている。
【0052】
3.立体構造的に動的なペプチド
本明細書において、例えば、疾患に関連し得るミスフォールドタンパク質またはβシート二次構造を有するタンパク質を含む特定の立体構造を有する標的タンパク質を検出するのに有用な、立体構造的に動的なペプチドを記載する。前記ペプチドは、そのような標的タンパク質に関連する疾患またはそのリスクを診断する方法、およびそのような標的タンパク質に関連する疾患を処置する方法においても有用である。
【0053】
前記ペプチドは、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得るまたは示す標的タンパク質に対するプローブとして有用である。前記ペプチドは、ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造のどちらもとり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとる。他の実施形態では、ペプチドは、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い(例えば、減少したβシート)立体構造をとる。
【0054】
Aβタンパク質配列(配列番号:1)のアミノ酸残基16−35を含むペプチドプローブは、以前に記載されている。そのようなプローブは、分子内βシート形成およびタンパク質凝集の両方に関与する疎水性コアを含有する。この「野生型」ペプチドは、有機溶媒中での線維に基づくアッセイにおいては予想どおりに機能を果たすが(例えば、それは、基質の非存在下において40%TFE中でαヘリックス構造を有し、Aβ原線維基質を導入するとβシート構造への移行を受ける)、他の特性のために、それはインビトロアッセイにおける使用にとっての理想に満たないものとなっている。例えば、それは水溶液中で低い溶解度を有し、かつそのβシート構造は、熱力学的に強く、立体構造変化に耐性がある。したがって、インビトロアッセイおよびインビボ用途における性能を向上させるように、より望ましい特性を備えたペプチドプローブが設計されている。
【0055】
本明細書においてより詳細に記載するように、いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、バリアント配列を有する。
【0056】
付加的または代替的に(特に、上記の実施形態(C)に関して)、ペプチドプローブは、(D)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造をとるような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、バリアント配列を有していてよい。いくつかのより特定の実施形態では、(E)バリアント配列のβシート構造は、参照配列からなるプローブのものよりも熱力学的に弱い。
【0057】
付加的または代替的に、ペプチドプローブは、(F)該バリアント配列が、該参照配列からなるプローブよりも増大した安定性および/または減少した反応性を有するような、(G)該バリアント配列が、該参照配列からなるプローブよりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有するような、かつ/あるいは(H)該バリアント配列が、該参照配列からなるプローブよりもさらなるAβ結合モチーフを有するような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、バリアント配列を有する。
【0058】
付加的または代替的に、該バリアント配列は、(I)該バリアント配列が、増大した凝集体形成能を有するような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。より特定の態様では、バリアント配列は、天然に存在する変異体の切断型を含んでいてよい。
【0059】
前記ペプチドを使用およびスクリーニングするための方法およびキットも記載する。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、立体構造依存的様式で標的タンパク質に結合し、かつ例えばβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、主にランダムコイル(構造化されていない)またはαヘリックス立体構造からβシートリッチな立体構造への構造変換を受ける。これらの実施形態では、ペプチドは、一般に、より規則性の低い立体構造からより規則性の高い立体構造へ変化する。これらのペプチドにレポーター成分を結合させることによって、立体構造変換をモニタリングするための単純なメカニズム(例えば、蛍光標識ペプチドを用いた蛍光スペクトルの変化を介して)を提供することができる。
【0061】
他の実施形態によれば、ペプチドは、立体構造依存的様式で標的タンパク質に結合し、かつβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、主にβシートリッチな立体構造からより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造への、あるいは増加したランダムコイル(構造化されていない)またはαヘリックス立体構造への構造変換を受ける。これらの実施形態では、ペプチドは、一般に、より規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化する。これらのペプチドにレポーター成分を結合させることによって、立体構造変換をモニタリングするための単純なメカニズム(例えば、蛍光標識ペプチドを用いた蛍光スペクトルの変化を介して)を提供することができる。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドを、種々のアッセイ条件(例えば、水性対有機溶媒中、種々のpHおよび/または塩条件下、等々における使用のための)におけるその性能を向上させるように設計する(例えば、特定のアミノ酸の欠失、置換、または付加の選択によって)。
【0063】
本発明の特定の実施形態を記載および開示する前に、本明細書に記載される特定の材料、方法、および組成物は、例としてのみ提示されるものであって、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本明細書に用いられる技術的および科学的用語は、別様に定義されていない限り、本発明が関連する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。参照がなされている公知の方法論を記述している刊行物および他の資料は、まるで完全に記述しているかのように、参照することによりそれらの全体として本明細書に組み入れられている。
【0064】
本明細書に記載されるペプチドを、直結合成または組換えなどの任意の方法によって作製することができる。組換えDNA技術の一般原理を記述している標準的な参照文献には、Sambrook,J.ら,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Planview,N.Y.;McPherson,M.J.編(1991)Directed Mutagenesis:A Practical Approach,IRL Press,Oxford;Jones,J.(1992)Amino Acid and Peptide Synthesis,Oxford Science Publications,Oxford;Austen,B.M.およびWestwood,O.M.R.(1991)Protein Targeting and Secretion,IRL Press,Oxfordが含まれる。
【0065】
当業者に公知の任意の適切な材料および/または方法を、本発明を実施するのに利用することができる。しかしながら、例示的な材料および方法を記載する。以下の記載および実施例において参照がなされている材料、試薬等は、別様に言及されていない限り、商業的供給源から入手可能である。
【0066】
前述のように、本明細書に記載される立体構造的に動的なペプチドは、例えば、疾患に関連し得るミスフォールドタンパク質またはβシート二次構造を有するタンパク質を含む、特定の立体構造を有する標的タンパク質を検出するのに有用である。例えば、前記ペプチドは、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得るまたは示す標的タンパク質に対するプローブとして有用である。前記ペプチドは、診断的および治療的手法において、ならびに薬剤候補をスクリーニングする方法においても有用であり得る。便宜上、他の状況におけるその有用性を損なうことなく、本明細書では前記ペプチドを「プローブ」と呼ぶ。
【0067】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含むものであって、該参照配列は、例えばαヘリックス/ランダムコイル立体構造からβシート立体構造へのシフトなど、立体構造シフトを受ける標的タンパク質のアミノ酸配列からなる。本明細書では、そのような領域を、標的タンパク質の「βシート形成領域」と呼ぶ。例えば、Aβタンパク質のアミノ酸16−35は、βシート形成領域を含むことが知られている。したがって、参照配列は、Aβタンパク質のアミノ酸16−35または17−35を含んでいてよい。したがって、ペプチドのアミノ酸配列を、既存の配列および立体構造情報に基づいて標的タンパク質から設計してよく、あるいは実験的に容易に決定してもよい。いくつかの実施形態では、参照配列は、標的タンパク質の天然に存在する変異体、例えばβシート立体構造をとるかつ/あるいは凝集体を形成する傾向の増大を示すことが知られている変異体のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる。Aβ変異体の例は、Murakami(前記参照)に記載されており、置換A21G、E22G、E22Q、E22K、およびD23Nを含む。
【0068】
参照配列は、標的タンパク質の最小数量の隣接アミノ酸、例えば標的タンパク質配列の少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、または少なくとも約50個の隣接アミノ酸、あるいはこれらの数の間の任意の範囲、例えば標的タンパク質配列の約10〜約25個の隣接アミノ酸を含んでいてよい。
【0069】
ペプチドプローブ自体は、少なくとも約5個のアミノ酸を含み、かつ長さが最大約300〜約400個のアミノ酸、またはそれ以上、あるいはその間の任意の大きさ、例えば約10個のアミノ酸〜約50個のアミノ酸を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、約5〜約100個、約10〜約50個、約10〜約25個、約15〜約25個、または約20〜約25個のアミノ酸からなる。追加の実施形態では、ペプチドは、約20個のアミノ酸、約21個のアミノ酸、約22個のアミノ酸、約23個のアミノ酸、約24個のアミノ酸、または約25個のアミノ酸を含む、約17〜約34個のアミノ酸を含む。異なる長さのペプチドは、標的タンパク質に対する異なる程度の相互作用および結合を示し得、かつ適切な長さは、本明細書における教示によって導かれた当業者によって選択され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、標的タンパク質のものに類似した構造変化を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、ペプチドは、ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとる。他の実施形態では、ペプチドプローブは、βシート立体構造で提供され、かつβシート立体構造の標的タンパク質と接触、結合、および/または相互作用すると、より規則性の低いまたは減少したβシート立体構造/増加したαヘリックス立体構造への立体構造変化を受ける。
【0071】
ペプチドは、約0.05〜約0.5の間のイオン強度を有し(典型的に、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩化物塩で調製した場合)、例えば約5〜約8の間など、約4〜約10の間のpHを有する水溶液などの溶液中に提供され得る。溶液は、例えば約45容量%〜約60容量%の間など、約30容量%〜約70容量%の間の量で、トリフルオロエタノールなどの水混和性の有機物質も含んでいてよい。溶媒を、適切な緩衝系、例えば酢酸塩/酢酸、トリス、またはリン酸塩などを用いて調製してよい。
【0072】
以下により詳細に論じるように、本明細書に開示されるペプチドプローブを用いて、インビトロまたはインビボで標的タンパク質を検出することができる。例えば、その全内容が参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている、US2008/0095706(米国特許出願第11/828,953号に相当)に記載されている方法によれば、前記ペプチドプローブは、治療剤を同定するのにも有用である。
【0073】
(i)バリアント配列
前述のように、いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、該参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、バリアント配列からなる。前述のように、参照配列は、標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を検出するためのアッセイにおけるペプチドの性能を向上させるように、バリアント配列を設計する。例えば、いくつかの実施形態では、バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるように、バリアントを設計する。付加的または代替的に、ランダムコイル/αヘリックス立体構造におけるバリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造におけるバリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なる(例えば、より大きい)ように、バリアント配列を設計する。付加的または代替的に、バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるように、バリアント配列を設計する。付加的または代替的に、バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造をとり、かつ参照配列のものよりも熱力学的に弱いβシート構造を有し得るように、バリアント配列を設計する。付加的または代替的に、バリアント配列が、増大した安定性および/または減少した反応性、増大した親水性および/または溶解度、ならびに/あるいはさらなるAβ結合モチーフを有するように、バリアント配列を設計してよい。付加的または代替的に、バリアント配列が増強した凝集体形成能を有するように、バリアント配列は、参照配列と比較して1個以上のアミノ酸の欠失を含んでいてよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、例えばペプチドのランダム/αヘリックス立体構造に付随する任意のシグナル(例えば、バックグラウンドシグナル)とペプチドのβシート立体構造に付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させることによって、標的タンパク質に結合していないペプチドに付随する任意のシグナルと標的タンパク質に結合しているペプチドに付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させるように、バリアント配列を設計する。これは、例えばペプチドのランダム/αヘリックス立体構造に付随する任意のバックグラウンドシグナルを低下させることによって、かつ/あるいはペプチドのβシート立体構造に付随するシグナルを増大させることによって、影響を受け得る。また、βシート立体構造で提供され、かつ標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造/増加したαヘリックス立体構造をとる、ペプチドプローブにも、(プローブのβシート立体構造にはバックグラウンドシグナルが付随するであろうが、)これらの同じ設計論理は有用である。
【0075】
例えば、標識成分が互いに物理的に近接している場合、例えばペプチドがN末端およびC末端が物理的に近接するβシート立体構造を示す場合に生じる該成分間での相互作用によって、シグナルが生成されるように、ペプチドプローブをそのN末端およびC末端のそれぞれにおいてまたはそれぞれの付近で標識してよい。そのようなシグナルは、ペプチドのβシート立体構造に付随するであろう。同様に、ペプチドがβシート立体構造である場合に標識が相互作用してシグナルを発するように、ペプチドがβシート立体構造である場合には物理的に近接しておりランダムコイル/αヘリックス立体構造である場合には離れている任意の1つ以上の部位において、ペプチドを標識してよい。βシート立体構造に付随するシグナルは、例えば程度がより大きいことおよび/あるいは周波数または波長が異なることなどによって、ランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随するいかなるシグナルとも異なりうる。
【0076】
ペプチドプローブが、標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造からより規則性の高い立体構造へ変化する実施形態では、バックグラウンドシグナルは、例えばランダムコイル/αヘリックス立体構造によって、標識がシグナルを生成するのに十分な物理的近さとなった場合、かつ/あるいはペプチドプローブが、標的タンパク質との接触、結合、または相互作用を伴わないβシート立体構造をとる場合、溶液中で生じ得るなどして観察され得る。ペプチドのランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随するバックグラウンドシグナルは、例えばランダムコイル/αヘリックス立体構造を安定化させて、標的タンパク質との接触、結合、または相互作用を伴わないβシート立体構造の形成を最小限に抑えることによって、低下し得る。例えば、結合していないペプチドプローブのランダムコイル/αヘリックス立体構造が安定性の増大を示すように、ペプチドプローブを設計してよい。例えば、αヘリックス形成残基(例えば、アラニン)および/または塩橋形成残基(例えば、ヒスチジンおよびグルタミン酸)による置換によって、結合していないペプチドプローブのランダムコイル/αヘリックス立体構造を安定化させることができる。そのような安定性の増大は、標識がシグナルを生成するのに物理的に十分近接する可能性を減らすことによって、バックグラウンドシグナルを減少させる。したがって、いくつかの実施形態では、ペプチドのバリアント配列は、ランダムコイル/αヘリックス立体構造の安定性を増大させるアミノ酸の置換、付加、および/または欠失を含む。
【0077】
付加的または代替的に、ペプチドがランダムコイル/αヘリックス立体構造である場合のN末端およびC末端の間(または標識部位の間)の距離を増大させることによって、ランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随する任意のシグナルは減少するであろう。付加的または代替的に、例えばペプチドがβシート立体構造である場合のN末端およびC末端の間(または標識部位の間)の距離を減少させることによって、ペプチドのβシート立体構造に付随するシグナルを増大することができる。ランダムコイル/αヘリックス立体構造対βシート立体構造のペプチドの末端間(または標識部位の間)の距離を、標準的タンパク質モデリング法を用いたインシリコでモデル化することができる。
【0078】
下記の考察では、Aβタンパク質のアミノ酸配列に基づいて点変異に番号を付し、その残基16−35を図2に示す(付加されたC末端のリジン残基を含む)。
【0079】
αヘリックスの形成および安定性
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、アラニン(A)などのαヘリックスを形成する傾向を有する1個以上のアミノ酸残基の付加、またはそれによる置換を含む。そのようなアミノ酸残基を、参照配列の内部部位にあるいは参照配列の末端のいずれかまたは両方に導入してよい。いくつかの実施形態では、参照配列は、追加の残基としてまたは標的タンパク質の残基の代わりに(置換)、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のそのようなアミノ酸残基を含む。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:3(ペプチド38)または配列番号:4(ペプチド45)のバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:3または配列番号:4からなる。
【0080】
AβペプチドプローブにおけるG29HおよびG33E変異など、相補的荷電残基を用いて点変異を導入することによっても、αヘリックスを形成する傾向を増大させることができる。これらの特定の置換によって、親水性および水溶液中での溶解度も増大する。したがって、標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2(ペプチド22)のバリアント配列を含む、または配列番号:2からなる。
【0081】
他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、アラニン残基または相補的荷電残基を含むようにさらに改変して、αヘリックス形成を促進することができる。
【0082】
塩橋
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、塩橋を形成し得るアミノ酸を導入する、または参照配列内にすでに存在するアミノ酸で塩橋を形成し得るアミノ酸を導入する、1個以上のアミノ酸の置換または付加を含む。塩橋とは、負に帯電したアミノ酸と正に帯電したアミノ酸との間の弱いイオン性相互作用である。いくつかの実施形態では、アミノ酸の置換または付加によって、配列内の別のアミノ酸で塩橋を形成し得る位置に、アルギニンまたはリジンなどの1個以上の正のアミノ酸残基を導入する。いくつかの実施形態では、アミノ酸の置換または付加によって、配列内の別のアミノ酸で塩橋を形成し得る位置に、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの1個以上の負のアミノ酸残基を導入する。いくつかの実施形態では、アミノ酸の置換または付加によって、互いにまたは配列内の別のアミノ酸で1つ以上の塩橋を形成し得る位置に、1個以上の正のアミノ酸残基および1個以上の負のアミノ酸残基の両方を導入する。他の実施形態では、塩橋は、ヒスチジン、チロシン、またはセリンなどの1個以上のイオン性残基を含む。具体的な実施形態では、バリアント配列は、1つ以上の塩橋を形成し得る位置に、1個以上のヒスチジン残基および/またはアルギニン残基および/またはリジン残基および/またはグルタミン酸および/またはアスパラギン酸残基および/またはチロシン残基および/またはセリン残基を導入する、アミノ酸の置換または付加を含む。
【0083】
標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4(ペプチド22、ペプチド38、またはペプチド45)のうちの1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4のうちの1つからなる。他の具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:14〜17(ペプチド22バリエーション1、ペプチド22バリエーション2、ペプチド59、ペプチド77)のうちの1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:14〜17のうちの1つからなる。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、塩橋を含むようにさらに改変することができる。
【0084】
前述のように、ペプチドのαヘリックス立体構造を安定化させるように、塩橋を設計することができる。付加的または代替的に、塩橋の存在によって、前記ペプチドを用いたアッセイにおいて生成されるシグナルを制御するためのメカニズムが提供される。例えば、アッセイバッファーの塩および/またはpHを選択または調整して、塩橋を強めるまたは弱めることができ、ゆえにαヘリックス立体構造の安定性およびβシート立体構造の形成を制御することができる。
【0085】
βシートの形成および安定性
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると(またはβシート立体構造につながる他の条件下で)βシート立体構造をとるのを促す、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含み、それによって、該バリアント配列(またはそれを含むペプチド)は、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると(またはβシート立体構造につながる他の条件下で)、参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとる。そのようなペプチドプローブは、参照配列よりも、βシート立体構造を有する標的タンパク質に対する検出感度の増大を示し得る。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、βシート立体構造をとるおよび/または凝集体を形成する傾向の増大を示す変異体など、天然に存在する変異体のβシート形成領域に見られる1個以上のアミノ酸置換を含む。例えば、配列番号:5または7など、置換I32SまたはE22Pのうちの1個以上を含むバリアントは、本文脈において有用である。他の例には、配列番号:11または12など、置換E22Q(「Dutch」)またはE22K(「Italian」)を含むバリアントが含まれる。別の実施形態では、バリアント置換は、配列番号:8など、置換F19SおよびL34Pのうちの1個以上を含む。他のバリアントは、Murakamiら,J.Biol.Chem.46:46179−46187,2003に開示されているものなど、当該技術分野において公知の変異体に由来し得る。例えば、バリアントは、置換A21G、E22G(「Arctic」)、およびD23Nのうちの1個以上を含んでいてよい。そのようなバリアントの例には、配列番号:9、10、または13が含まれる。さらに、本明細書に記載される任意のバリアントは、これらのまたは他の公知の変異体に基づく1個以上の点変異をさらに含んでいてよい。例えば、ペプチド22バリアントに基づくバリアントは、E22K、E22Q、またはE22Gなど、1個以上の点変異をさらに含んでいてよい。そのようなバリアントの例には、配列番号:19〜21が含まれる。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:5、7〜13、または18〜21のうちのいずれか1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブ(probide)は、配列番号:5、7〜13、または18〜21のうちのいずれか1つからなる。
【0086】
他の実施形態では、ペプチドプローブは、バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造ならびに/あるいは増加したαヘリックス立体構造をとるような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む該バリアント配列を有する。そのようなバリアントの例には、配列番号:2(ペプチド22)、配列番号:3(ペプチド38)、配列番号:4(ペプチド45)、配列番号:14(ペプチド22バリエーション1)、および配列番号:15(ペプチド22バリエーション2)が含まれる。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4または14〜15のうちのいずれか1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4または14〜15のうちのいずれか1つからなる。
【0087】
より具体的な実施形態では、バリアント配列は、参照配列と比較して1個以上のさらなるアミノ酸の付加、置換、または欠失を含み、それによって、該バリアント配列のβシート構造は、該参照配列からなるプローブのものよりも熱力学的に安定性が低いまたは弱い。例えば、配列番号:2のバリアント配列は、付番の野生型配列と比較して、F19S、S26D、H29D、I31D、L34D、およびL34Pなど、1個以上のさらなる置換を含んでいてよい。例えば、以下の表中のペプチドAD323(配列番号:28);AD325(配列番号:29);AD330(配列番号:30);AD329(配列番号:31);AD328(配列番号:32);AD327(配列番号:33);GM6(配列番号:34);GM6バリエーション1(配列番号:35)を参照されたい。ペプチドI32S(配列番号:5)もこのカテゴリーに分類され得る。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:5または28〜35のいずれか1つのバリアント配列を含んでいてよく、あるいは配列番号:5または28〜35のいずれか1つからなってよい。
【0088】
安定性の増大および/または反応性の低下
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、バリアント(またはそれを含むペプチド)を参照配列よりも酸化環境においてより安定にする、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。いくつかの実施形態では、C末端メチオニン残基などの1個以上のメチオニン残基を、アラニン残基などの酸化により耐性のある残基で置換する。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:6(ペプチドAD250)のバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:6からなる。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、アラニン残基などの酸化により耐性のある残基による、C末端メチオニン残基などのメチオニン残基の置換によってさらに改変してよい。
【0089】
溶解度および/または親水性
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、バリアント(またはそれを含むペプチド)をより親水性かつ/または水性環境でより可溶性にする、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。例えば、C末端および/またはN末端においてまたは付近に1個以上の荷電残基(例えば、グルタミン酸および/またはd−アルギニン)を含むバリアントは、増大した親水性および水溶液中での溶解度を示す。例えば、バリアント配列は、1個、2個、3個、またはそれ以上のN末端、C末端、または内部のグルタミン酸および/またはd−アルギニン残基を含んでいてよい。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、AD272(配列番号:22)、AD316(配列番号:23)、AD305(配列番号:24)、およびAD271(配列番号:26)のバリアント配列を含んでいてよく、またはこれらの配列からなってよい。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、N末端またはC末端においてまたは付近における、1個、2個、3個、またはそれ以上のグルタミン酸および/またはd−アルギニン残基の付加によってさらに改変してよい。
【0090】
付加的または代替的に、ペプチドプローブを、約10kDaの分子量を有するPEG(「PEG10」)を含む、約1、5、6、10、12、15、20、25、30、または35kDaの分子量を有するPEGなどの水溶性ポリエチレングリコール(PEG)など、親水性成分に結合させてよい。野生型βシート形成配列(配列番号:1)を含むそのようなペプチドプローブの例を、以下の実施例における表1に表す(AD274)。本明細書に記載される任意のバリアントまたはペプチドプローブを、親水性成分に結合させることができる。
【0091】
Aβ結合モチーフ
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、さらなるAβ結合モチーフ、例えばアミノ酸残基GxxEG(配列番号:25)(「X」は任意のアミノ酸残基を表す)を含むモチーフなどを提供する、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。そのようなバリアント配列の例には、P59(配列番号:17)およびP77(配列番号:16)が含まれる。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:16または17のうちのいずれか1つのバリアント配列を含んでいてよく、あるいは配列番号:16または17のうちのいずれか1つからなってよい。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、GxxEGモチーフを含むようにさらに改変してよい。
【0092】
本明細書に記載されるペプチドが、前述の付加、置換、および欠失の1つ以上の任意の組み合わせを含み得ることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、前述のアミノ酸の付加および置換に加えて、ペプチドは、標識付けを容易にする1個以上のアミノ酸残基の付加または置換を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ピレン成分による標識付けなどの標識付けを容易にする1個以上のリジン残基を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方においてまたは付近にリジン残基を含む。例えば、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方においてリジン残基を含んでいてよい。他の実施形態では、リジン残基は、前述のような標識付けに適し得る、ペプチドの他の部位にある。参照配列がAβタンパク質のアミノ酸16(リジン)を含む具体的な実施形態では、そのリジン残基を標識付けに用いることができる。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、C末端リジン上の側鎖を介して標識する。
【0093】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、C末端カルボキシル基の代わりに、C末端アミド基を有する。
【0094】
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。他の実施形態では、バリアント配列は、長さが約10〜約25個のアミノ酸からなり、かつバリアント配列は、参照配列と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。別の実施形態では、バリアント配列は、参照配列と約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約66%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、または約10%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列と約66%〜約97%の同一性を有する。
【0095】
任意の所与のペプチドの適合性を、実施例において以下に記載および例証される方法によって評価することができる。例えば、ペプチドのβシート立体構造をとる能力を、実施例1および5において例証するように評価することができる。ペプチドの標的タンパク質に結合する能力およびシグナルを発する能力を、実施例3〜5において例証するように確認することができる。
【0096】
(ii)標識
本明細書に記載されるプローブは、1種以上の検出可能な標識を含んでいてよい。例えば、プローブを、共有結合または非共有結合のいずれかで、標識に連結または融合させてよい。いくつかの実施形態では、プローブの特定の立体構造、例えばプローブが標的タンパク質と会合した場合にとる立体構造の検出を可能にする標識を選択する。このシナリオでは、標識は、プローブが第一の非会合立体構造(例えば、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造、あるいは組織化されていないまたはより低密度の形態)である場合には第一のシグナルを発し得(またはシグナルなしであり)、プローブが標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける(例えば、主としてβシート立体構造、あるいはより組織化されたまたはより高密度の形態の)場合には、第二のシグナルを発し得るかシグナルなしとなる(すなわち、プローブが消光される)。相補的一般原則が、標的タンパク質に結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するペプチドプローブに当てはまり、これは、プローブの第一の非会合立体構造(例えば、βシート立体構造、あるいはより組織化されたまたはより高密度の形態)に付随しする第一のシグナル、および第二のシグナルを有し、あるいは、ペプチドが標的タンパク質と会合すると立体構造シフト(例えば、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造、あるいは組織化されていないまたはより低密度の形態へ)を受ける場合にはシグナルが無い。前記第一のシグナルおよび第二のシグナルは1つ以上の特質、例えば強度、波長、等々の点で異なってよい。シグナルが光の放出を含む実施形態では、第一のシグナルおよび第二のシグナルは、励起波長および/または発光波長の点で異なってよい。プローブが立体構造シフトを受ける場合に生成されるシグナルは、同じプローブに結合している標識間の相互作用によって生じ得、かつ/あるいは異なるプローブに結合している標識間の相互作用によって生じ得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、標識がプローブの立体構造に基づいて相互作用するまたは相互作用しないように、例えば標識は、プローブがその非会合立体構造である場合には相互作用せず、標的タンパク質と会合して立体構造シフトを受ける場合には相互作用して、検出可能なシグナル(消光を含む)を生成するように、あるいは逆もまた同様であるように、標識および標識部位を選択する。これは、プローブの会合状態に依存して、例えばプローブが標的タンパク質と会合して立体構造シフトを受けているかどうかに依存して、さらに離れるまたは互いに近づく標識部位を選択することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、会合したプローブに伴うシグナルの大きさは、検出された標的タンパク質の量と直接相関する。したがって、本発明の方法によって、標的タンパク質の検出および定量化が可能となる。
【0098】
例えば、エキシマー、FRET、またはフルオロフォア/クエンチャー標識ペアを含む蛍光標識を用いて、プローブの特定の立体構造、例えばプローブがミスフォールドAβタンパク質などの標的タンパク質と会合した場合にとる立体構造などの検出が可能となり得る。これらの実施形態では、プローブを、離れた部位において、それぞれがエキシマー、FRET、またはフルオロフォア/クエンチャーペアの相補的構成要素である第一の標識および第二の標識で標識する。例えば、エキシマー形成標識は、プローブがその非会合状態にある場合にはそれらのモノマーシグナルを発し得、標的タンパク質と会合すると標識をより密接に物理的に近接させる立体構造シフトを受ける場合にはそれらのエキシマーシグナルを発し得る。これを、図10の最上段パネルに概略的に図解する。同様に、FRET標識は、プローブが標識をより密接に物理的に近接させる立体構造シフトを受ける場合には、それらのFRETシグナルを発し得る。これを、図10の下段パネルBに概略的に図解する。一方、フルオロフォア/クエンチャー標識ペアは、プローブがその非会合状態にある場合にはフルオロフォアシグナルを発し得、標識をより密接に物理的に近接させる立体構造シフトを受ける場合にはシグナルは消光され得る。前述のように、プローブが標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける場合に、シグナルの逆の変化が生じるように、標識を位置付けることができる。
【0099】
あるいは、標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するプローブに対するエキシマー形成標識は、プローブがその非会合状態にある場合にはそれらのエキシマーシグナルを発し得、標的タンパク質と会合すると標識の物理的近接性を減じる立体構造シフトを受ける場合にはそれらのモノマーシグナルを発し得る。これを、図10の下段パネルAに概略的に図解する。同様に、FRET標識は、プローブがその非会合状態にある場合にはそれらのFRETシグナルを発し得、標識の物理的近接性を減じる立体構造シフトを受ける場合には異なるシグナルまたはシグナルなしとなる。一方、フルオロフォア/クエンチャー標識ペアは、プローブがその非会合状態にある(標識が密接に物理的に近接している)場合には消光され得、標識の物理的近接性を減じるその非会合状態にある場合にはフルオロフォアシグナルを発し得る。先と同様に、プローブが標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける場合に、シグナルの逆の変化が生じるように、標識を位置付けることができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、プローブを、検出可能な標識で(ペプチドの一方または両方の末端において)エンドキャップ処理する。いくつかの実施形態では、プローブは、そのC末端、N末端、または両方においてまたは付近に検出可能な標識を含む。例えば、プローブは、そのC末端、N末端、または両方、あるいはプローブが標的タンパク質と会合したAβタンパク質凝集体と会合すると立体構造シフトを受ける場合にシグナルを生成する任意の他の部位において、検出可能な標識を含んでいてよい。したがって、例えば、標識部位を、(i)N末端およびC末端;(ii)N末端、およびC末端以外の離れた部位;(iii)C末端、およびN末端以外の離れた部位;ならびに(iv)N末端およびC末端以外の2つの部位から選択してよい。N末端またはC末端以外の標識部位は、末端残基から1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上離れた残基を含む、ペプチドプローブ内の任意の部位であってよい。以下の表1中のペプチドプローブAD272(配列番号:22)、AD316(配列番号:23)、AD305(配列番号:24)、AD271(配列番号:26)、およびAD273(配列番号:27)は、標識の一方が末端ではなく付近にあるペプチドプローブの例である。これらのプローブにおいて、標識部位は、N末端またはC末端から2個または3個の残基である。
【0101】
いくつかの実施形態では、N末端標識を、N末端アミノ酸残基のアミン基上に提供する。他の実施形態では、N末端標識を、N末端におけるまたは付近のアミノ酸残基の側鎖上、例えばN末端におけるまたは付近のリジン(K)残基の側鎖上などに提供する。ペプチドプローブの蛍光特性を変更し、かつノイズ比を改善または最適化するように、標識部位を選択することができる。以下の表1に表したペプチドプローブAD266(配列番号:36)およびAD268(配列番号:37)は、最初のN末端リジン残基の側鎖上にN末端標識が提供されているペプチドプローブの例である。
【0102】
いくつかの実施形態では、N末端標識をN末端アミン上に提供し、かつC末端標識をC末端リジン残基の側鎖上に提供する。他の実施形態では、N末端標識をN末端リジン残基の側鎖上に提供し、かつC末端標識をC末端リジン残基の側鎖上に提供する。
【0103】
一実施形態では、ピレン成分は、プローブのそれぞれの末端にまたは付近に存在し、かつピレンモノマーシグナル対ピレンエキシマーシグナルの比率は、プローブの立体構造に依存する。例えば、モノマーシグナルは、プローブがその非会合状態にある場合に優勢であり得、エキシマーシグナルは、プローブが標的タンパク質と会合して立体構造シフトを受ける場合に優勢であり得(あるいはエキシマーシグナルは、必ずしも優勢にならずに増大し得る)、あるいは逆もまた同様である。したがって、ピレンモノマーシグナル対ピレンエキシマーシグナルの比率を測定することができる。プローブ上の他の部位に存在するピレン成分も、エキシマー形成がペプチドプローブの会合または非会合状態に基づく立体構造依存的である限り、本文脈において有用であり得る。表1には、N末端およびC末端のそれぞれにおいてまたは付近においてピレン(「PBA」)で標識された多くのペプチドプローブが含まれている。
【0104】
エキシマーの形成を、光学特性の変化によって検出することができる。そのような変化を、フルオロフォア標識に依存した、多数ある中でも、UV、IR、CD、NMR、または蛍光を含む公知の蛍光分析技術によって測定することができる。これらの光学特性の変化の大きさは、シグナルを伴う立体構造をとっているプローブの量に直接関係し、ゆえに存在する標的タンパク質の量または構造に直接関係する。
【0105】
これらの実施形態は、エキシマーペアに関して詳細に記載しているが、当業者であれば、同様の考察がFRETおよびフルオロフォア/クエンチャーペアに当てはまることを理解するであろう。表1には、N末端およびC末端のそれぞれにおいてまたは付近においてFRETまたはフルオロフォア/クエンチャーペアで標識された多くのペプチドプローブが含まれている。例えば、AD326(配列番号:43)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端においてピレンで、もう一方の末端においてダブシル蛍光クエンチャー(4−(4−ジメチルアミノフェニル)ジアゼニル安息香酸)などのクエンチャーで標識することができる。あるいは、AD309(配列番号:44)、AD306(配列番号:45)、AD303(配列番号:46)、AD302(配列番号:47)、AD301(配列番号:48)、およびAD300(配列番号:49)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端においてフルオロフォアEDANS(5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸)で、もう一方の末端においてダブシルなどのクエンチャーで標識することができる。あるいは、AD295(配列番号:50)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端においてダンシル標識(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)で、もう一方の末端においてトリプトファン残基(Trp,W)で標識して、FRETペア標識付けを提供することができる。あるいは、AD294(配列番号:51)、AD293(配列番号:52)、AD292(配列番号:53)、AD291(配列番号:54)、およびAD290(配列番号:55)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端において5(6)カルボキシフルオレセイン(FAM)で、もう一方の末端においてEDANSで標識することができる。これらの例証的ペプチドプローブは、本明細書における他の部分に記載される野生型およびバリアント配列を含み、かつ本明細書に記載される任意のペプチドプローブを様々な標識部位において任意の標識ペアで標識することができることを実証している。いくつかの実施形態では、標識を、N末端、C末端、または内部(internl)リジン残基を含むリジン残基に結合させる。他の実施形態では、標識を、N末端、C末端、または内部グルタミン酸残基を含むグルタミン酸残基に結合させる。いくつかの実施形態では、一方の標識をリジン残基に結合させ、かつもう一方の標識をグルタミン酸残基に結合させる。標識部位の他の組み合わせおよび順列は、当業者によって容易に認識され、かつ本発明に含まれる。
【0106】
さらに、これらの実施形態は、1ペプチドにつき2つの標識の使用に関して記載しているが、複数の標識を用いることができることを理解すべきである。例えば、1つ以上の標識がそれぞれの標識部位に存在し得、またはプローブ上の異なる標識部位のそれぞれにおいて複数の標識が存在し得る。これらの実施形態では、標識は、独立したシグナルを生成し得、またはエキシマーペア、FRETペア、シグナル/クエンチャー、等々のように関連し得る。例えば、一方の部位は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のピレン成分を含んでいてよく、かつもう一方の部位は対応するクエンチャーを含んでいてよい。
【0107】
前述のように、本明細書に開示されるプローブは、検出可能な標識を含んでいてよい。例えば、プローブには、共有結合または非共有結合のいずれかで、標識に連結または融合させたペプチドプローブが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、検出可能な標識で(ペプチドの一方または両方の末端において)エンドキャップ処理する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方においてまたは付近に検出可能な標識を含む。例えば、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方、あるいはペプチドがβシート立体構造またはその会合状態に関連する他の立体構造をとる場合にシグナルを生成するいずれの他の部位において、検出可能な標識を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、C末端およびN末端の両方を、サイズが約1個〜約5個のアミノ酸に及ぶ小さな疎水性ペプチドでエンドキャップ処理する。これらのペプチドは天然のものであっても合成のものであってもよいが、好ましくは天然の(すなわち、標的タンパク質に由来する)ものである。ペプチドがβシート立体構造(または他の標的タンパク質と会合した立体構造)をとる場合に生成されるシグナルは、同じペプチドに結合している標識間(ペプチド内)の相互作用によって生じ得、かつ/あるいは異なるペプチドに結合している標識間(ペプチド間)の相互作用によって生じ得る。例えば、βシート立体構造のペプチドは自己会合し得、それによって、異なるペプチド分子に結合している標識は、ペプチド間シグナルを生成するのに物理的に十分近接する。
【0108】
いくつかの実施形態では、標識を用いて、ペプチドの特定の立体構造、例えばβシート立体構造または他の標的タンパク質と会合した立体構造などを検出する。このシナリオでは、標識は、ペプチドが第一の立体構造(例えば、ランダムコイル/αヘリックス立体構造)である場合には第一のシグナルを発し得(またはシグナルなしであり)、第二の立体構造(例えば、βシート)である場合には第二のシグナルを発し得る。前述のように、相補的原則が、標的タンパク質に結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するペプチドプローブに当てはまり、これは、プローブの第一の非会合立体構造(例えば、βシート立体構造、あるいはより組織化されたまたはより高密度の形態)に付随する第一のシグナル、および第二のシグナルを有し、または、ペプチドが標的タンパク質と会合すると立体構造シフト(例えば、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造、あるいは組織化されていないまたはより低密度の形態へ)を受ける場合にはシグナルを有さない。前記第一のシグナルおよび第二のシグナルは、強度、波長、等々のうちの1つ以上の点で異なってよい。シグナルが光の放出を含む実施形態では、第一のシグナルおよび第二のシグナルは、励起波長および/または発光波長の点で異なってよい。
【0109】
例示的標識には、蛍光剤(例えば、フルオロフォア、蛍光タンパク質、蛍光半導体ナノ結晶)、リン光発光剤、化学発光剤、発色剤、消光剤、色素、放射性核種、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、ハプテン等)、酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、酵素基質、酵素補因子(例えば、NADPH)、酵素阻害剤、シンチレーション剤、阻害剤、磁性粒子、オリゴヌクレオチド、および当該技術分野において公知の他の成分が含まれる。標識がフルオロフォアである場合、フルオロフォアの1つ以上の特徴を用いて、標識プローブの構造状態を評価することができる。例えば、フルオロフォアの励起波長は、標識プローブの構造状態に基づいて異なってよい。いくつかの実施形態では、発光波長、強度、または蛍光の偏光は、標識プローブの構造状態に基づいて変化し得る。
【0110】
本明細書において使用するとき、「フルオロフォア」とは、光によって励起されて、蛍光またはリン光を発し得る化学基である。「クエンチャー」とは、蛍光ドナー由来の蛍光シグナルを消光し得る物質である。第一のフルオロフォアは、第二のフルオロフォアを励起する蛍光シグナルを発し得る。第一のフルオロフォアは、第二のフルオロフォアによって消光されるシグナルを発し得る。本明細書に開示されるプローブは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を受け得る。
【0111】
フルオロフォアおよびクエンチャーには、以下の物質(または以下の商標名で販売されているフルオロフォアおよびクエンチャー):1,5IAEDANS;1,8−ANS;ウンベリフェロン(例えば、4−メチルウンベリフェロン);アクラジマム(acradimum)エステル、5−カルボキシ−2,7−ジクロロフルオレセイン;5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM);5−カルボキシテトラメチルローダミン(5−TAMRA);5−FAM(5−カルボキシフルオレセイン);5−HAT(ヒドロキシトリプタミン);5−ヒドロキシトリプタミン(HAT);5−ROX(カルボキシ−X−ローダミン);5−TAMRA(5−カルボキシテトラメチルローダミン);6−カルボキシローダミン6G;6−CR 6G;6−JOE;7−アミノ−4−メチルクマリン;7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD);7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン;9−アミノ−6−クロロ−2−メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9−アミノ−6−クロロ−2−メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン(Acriflavin);アクリフラビンフォイルゲンSITSA;アレクサフルオル350(商標);アレクサフルオル430(商標);アレクサフルオル488(商標);アレクサフルオル532(商標);アレクサフルオル546(商標);アレクサフルオル568(商標);アレクサフルオル594(商標);アレクサフルオル633(商標);アレクサフルオル647(商標);アレクサフルオル660(商標);アレクサフルオル680(商標);アリザリンコンプレクソン;アリザリンレッド;アロフィコシアニン(APC);AMC;AMCA−S;AMCA(アミノメチルクマリン);AMCA−X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アミノメチルクマリン(AMCA);アニリン(Anilin)ブルー;アントロシルステアレート;APC(アロフィコシアニン);APC−Cy7;APTS;アストラゾンブリリアントレッド4G;アストラゾンオレンジR;アストラゾンレッド6B;アストラゾンイエロー7GLL;アタブリン;ATTO−TAG(商標)CBQCA;ATTO−TAG(商標)FQ;オーラミン;オーロホスフィンG;オーロホスフィン;BAO9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);硫酸ベルベリン;βラクタマーゼ;BFPブルーシフトGFP(Y66H);青色蛍光タンパク質;BFP/GFP FRET;ビマン;ビスベンズアミド;ビスベンズイミド(ヘキスト);ブランコホルFFG;ブランコホルSV;BOBO(商標)−1;BOBO(商標)−3;Bodipy492/515;Bodipy493/503;Bodipy500/510;Bodipy505/515;Bodipy530/550;Bodipy542/563;Bodipy558/568;Bodipy564/570;Bodipy576/589;Bodipy581/591;Bodipy630/650−X;Bodipy650/665−X;Bodipy665/676;Bodipy FL;Bodipy FL ATP;Bodipy Fl−セラミド;Bodipy R6G SE;Bodipy TMR;Bodipy TMR−X結合体;Bodipy TMR−X,SE;Bodipy TR;Bodipy TR ATP;Bodipy TR−X SE;BO−PRO(商標)−1;BO−PRO(商標)−3;ブリリアントスルホフラビンFF;カルセイン;カルセインブルー;カルシウムクリムゾン(商標);カルシウムグリーン;カルシウムオレンジ;カルコフロールホワイト;カルボキシ−X−ローダミン(5−ROX);カスケードブルー(商標);カスケードイエロー;カテコールアミン;CCF2(GeneBlazer);CFDA;CFP−シアン蛍光タンパク質;CFP/YFP FRET;クロロフィル;クロモマイシンA;CL−NERF(レシオ色素,pH);CMFDA;セレンテラジンf;セレンテラジンfcp;セレンテラジンh;セレンテラジンhcp;セレンテラジンip;セレンテラジンn;セレンテラジンO;クマリンファロイジン;C−フィコシアニン(phycocyanine);CPMメチルクマリン;CTC;CTCホルマザン;Cy2(商標);Cy3.1 8;Cy3.5(商標);Cy3(商標);Cy5.1 8;Cy5.5(商標);Cy5(商標);Cy7(商標);シアンGFP;サイクリックAMPフルオロセンサー(FiCRhR);ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシルカダベリン;ダンシルクロリド;ダンシルDHPE;ダンシルフルオリド;DAPI;ダポキシル;ダポキシル2;ダポキシル3;DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン(Dihydorhodamine)123);Di−4−ANEPPS;Di−8−ANEPPS(非レシオ);DiA(4−Di−16−ASP);ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCFH);DiD−親油性トレーサー;DiD(DiIC18(5));DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);DiI(DiIC18(3));ジニトロフェノール;DiO(DiOC18(3));DiR;DiR(DiIC18(7));DNP;ドーパミン;DsRed;DTAF;DY−630−NHS;DY−635−NHS;EBFP;ECFP;EGFP;ELF97;エオシン;エリトロシン;エリトロシンITC;エチジウムブロマイド;エチジウムホモダイマー−1(EthD−1);オイクリシン;EukoLight;塩化ユウロピウム(III);EYFP;ファストブルー;FDA;フォイルゲン(パラローズアニリン);FITC;Flazoオレンジ;Fluo−3;Fluo−4;フルオレセイン(FITC);フルオレセインジアセテート;フルオロ−エメラルド;フルオロ−ゴールド(ヒドロキシスチルバミジン);フルオロ(Fluor)−ルビー;FluorX;FM1−43(商標);FM4−46;Furaレッド(商標);Furaレッド(商標)/Fluo−3;Fura−2;Fura−2/BCECF;ゲナクリルブリリアントレッドB;ゲナクリルブリリアントイエロー10GF;ゲナクリルピンク3G;ゲナクリルイエロー5GF;GeneBlazer(CCF2);蛍光タンパク質(例えば、GFP(S65T);GFPレッドシフト(rsGFP);GFP野生型,非UV励起(wtGFP);GFP野生型,UV励起(wtGFP);およびGFPuv);グロキサン酸(Gloxalic Acid);グラニュラーブルー;ヘマトポルフィリン;ヘキスト33258;ヘキスト33342;ヘキスト34580;HPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(フルオロゴールド);ヒドロキシトリプタミン;インド−1;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);イントラホワイトCf;JC−1;JO−JO−1;JO−PRO−1;ラウロダン;LDS751(DNA);LDS751(RNA);ロイコホルPAF;ロイコホルSF;ロイコホルWS;リサミンローダミン;リサミンローダミンB;カルセイン/エチジウムホモダイマー;LOLO−1;LO−PRO−1;ルシファーイエロー;ルミノール,Lyso Trackerブルー;Lyso Trackerブルー−ホワイト;Lyso Trackerグリーン;Lyso Trackerレッド;Lyso Trackerイエロー;LysoSensorブルー;LysoSensorグリーン;LysoSensorイエロー/ブルー;Magグリーン;マグダラレッド(フロキシンB);Mag−Furaレッド;Mag−Fura−2;Mag−Fura−5;Mag−インド−1;マグネシウムグリーン;マグネシウムオレンジ;マラカイトグリーン;マリーナブルー;マキシロン・ブリリアント・フラビン10GFF;マキシロン・ブリリアント・フラビン8GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;MitotrackerグリーンFM;Mitotrackerオレンジ;Mitotrackerレッド;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr−GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーン・ピロニン・スチルベン);NBD;NBDアミン;ナイルレッド;NED(商標);ニトロベンゾキサジドール(Nitrobenzoxadidole);ノルアドレナリン;ヌクレアファストレッド;ヌクレアイエロー;NylosanブリリアントIavin E8G;オレゴングリーン;オレゴングリーン488−X;オレゴングリーン(商標);オレゴングリーン(商標)488;オレゴングリーン(商標)500;オレゴングリーン(商標)514;パシフィックブルー;パラローズアニリン(フォイルゲン);PBFI;PE−Cy5;PE−Cy7;PerCP;PerCP−Cy5.5;PE−テキサスレッド[レッド613];フロキシンB(マグダラレッド);Phorwite AR;Phorwite BKL;Phorwite Rev;Phorwite RPA;ホスフィン3R;フィコエリトリンB[PE];フィコエリトリンR[PE];PKH26(Sigma);PKH67;PMIA;ポントクロムブルーブラック;POPO−1;POPO−3;PO−PRO−1;PO−PRO−3;プリムリン;プロシオンイエロー;ヨウ化プロピジウム(Propidium Iodid)(PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;ピロザール・ブリリアント・フラビン7GF;QSY7;キナクリンマスタード;レッド613[PE−テキサスレッド];レソルフィン;RH414;Rhod−2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5GLD;ローダミン6G;ローダミンB;ローダミンB200;ローダミンBエクストラ;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミングリーン;ローダミンファリシジン;ローダミンファロイジン;ローダミンレッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R−フィコシアニン;R−フィコエリトリン(PE);RsGFP;S65A;S65C;S65L;S65T;サファイアGFP;SBFI;セロトニン;セブロンブリリアントレッド2B;セブロンブリリアントレッド4G;セブロンブリリアントレッドB;セブロンオレンジ;セブロンイエローL;sgBFP(商標);sgBFP(商標)(スーパーグローBFP);sgGFP(商標);sgGFP(商標)(スーパーグローGFP);SITS;SITS(プリムリン);SITS(スチルベンイソチオスルホン酸);SNAFLカルセイン;SNAFL−1;SNAFL−2;SNARFカルセイン;SNARF1;ナトリウムグリーン;Spectrumアクア;Spectrumグリーン;Spectrumオレンジ;Spectrumレッド;SPQ(6−メトキシ−N−(3−スルホプロピル)キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンB can C;スルホローダミンGエクストラ;SYTO11;SYTO12;SYTO13;SYTO14;SYTO15;SYTO16;SYTO17;SYTO18;SYTO20;SYTO21;SYTO22;SYTO23;SYTO24;SYTO25;SYTO40;SYTO41;SYTO42;SYTO43;SYTO44;SYTO45;SYTO59;SYTO60;SYTO61;SYTO62;SYTO63;SYTO64;SYTO80;SYTO81;SYTO82;SYTO83;SYTO84;SYTO85;SYTOXブルー;SYTOXグリーン;SYTOXオレンジ;TET(商標);テトラサイクリン;テトラメチルローダミン(TRITC);テキサスレッド(商標);テキサスレッド−X(商標)結合体;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッドR;チアゾールオレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTCN;チオライト;チオゾールオレンジ;チノポールCBS
(カルコフロールホワイト);TMR;TO−PRO−1;TO−PRO−3;TO−PRO−5;TOTO−1;TOTO−3;トリコロール(PE−Cy5);TRITCテトラメチルローダミンイソチオシアネート;トゥルーブルー;トゥルーレッド(TruRed);ウルトラライト;ウラニンB;Uvitex SFC;VIC(登録商標);wtGFP;WW781;X−ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;イエローGFP;YFP;YO−PRO−1;YO−PRO−3;YOYO−1;YOYO−3;およびそれらの塩が含まれてよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、標識はピレン成分である。本明細書において使用するとき、ピレン成分には、4個の融合ベンゼン環を含むピレン、またはピレンの誘導体が含まれる。ピレン誘導体とは、ピレン炭素原子のうちの1個以上が置換されているまたはさらなる成分に結合している、ピレンの4個の融合ベンゼン環を含む分子を意味する。例示的ピレン誘導体には、ピレン炭素原子のうちの1個以上が、直鎖のまたは分岐した、置換されているまたは置換されていないアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアシル基、例えばC1−C20の、直鎖のまたは分岐した、置換されているまたは置換されていないアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアシル基で置換されているアルキル化ピレンが含まれ、前記基は、例えばO、N、またはS原子を含む成分(例えば、カルボニル、アミン、スルフヒドリル)で、あるいはハロゲンで置換されていてよい。いくつかの実施形態では、ピレン誘導体は、1個以上の遊離カルボキシル基および/または1個以上の遊離アミン基を含み、そのそれぞれはピレン炭素原子に直接付着していても、あるいはピレン炭素から1原子以上、例えば1〜3原子、1〜5原子、またはそれ以上の原子離れている炭素原子で付着しているなど、前述の直鎖のまたは分岐した、置換されているまたは置換されていないアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアシル基上の任意の位置に付着していてもよい。いくつかの実施形態では、ピレンを、1個以上の酢酸成分および/または1個以上のエチルアミン成分で置換する。いくつかの実施形態では、ピレン誘導体を、ただ1個のメチル、エチル、プロピル、またはブチル基で置換する。いくつかの実施形態では、ピレンを、ピレンブチレートなどの短鎖脂肪酸で置換する。別の実施形態では、ピレンを、アルブミン、トランスフェリン(transferring)、または抗体のFcフラグメントに結合させる。いくつかの実施形態では、置換基を、炭素−炭素結合、アミノ基、ペプチド結合、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、またはエステル結合を介してピレンに付着させる。他の実施形態では、ピレン誘導体はPEG化ピレン、すなわちポリエチレングリコール(PEG)に結合したピレンである。そのようなピレン誘導体は、インビボでより長い循環半減期を示し得る。他の実施形態では、ピレン誘導体は、アルブミンに結合したピレンである。
【0113】
いくつかの実施形態では、標識は、融合タンパク質の一部としてペプチドプローブ内に組み入れられている蛍光タンパク質を含む。蛍光タンパク質には、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、eGFP、AcGFP、ターボGFP、エメラルド、アザミグリーン、およびZsGreen)、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、サファイア、およびT−サファイア)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、mCFP、セルリアン、CyPet、AmCyan1、およびミドリイシシアン)、黄色蛍光タンパク質(例えば、EYFP、トパーズ、ビーナス、mCitrine、YPet、PhiYFP、ZsYellow1、およびmBanana)、ならびにオレンジおよび赤色蛍光タンパク質(クサビラオレンジ、mOrange、dTomato、dTomato−タンデム、DsRed、DsRed2、DsRed−エクスプレス(T1)、DsREd−モノマー、mTangerine、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、HcRed1、mRaspberry、HcRed−タンデム、mPlum、およびAQ143)が含まれてよい。他の蛍光タンパク質が当該技術分野において記載されている(Tsien,R.Y.,Annual.Rev.Biochem.67:509−544(1998);およびLippincott−Schwartzら,Science 300:87−91(2003))。前述のように、プローブは、該プローブのN末端またはC末端に連結させた蛍光タンパク質も含む融合タンパク質内に含まれていてよい。蛍光タンパク質を当該技術分野において記載されているペプチドリンカーを介して連結させてよい(参照することによりそれらの全体として本明細書に組み入れられている、U.S.6,448,087;Wurthら,J.Mol.Biol.319:1279−1290(2002);およびKimら,J.Biol.Chem.280:35059−35076(2005))。いくつかの実施形態では、適切なリンカーは、長さが約8〜12個のアミノ酸であり得る。さらなる実施形態では、リンカーの約75%を上回るアミノ酸残基は、セリン、グリシン、およびアラニン残基から選択される。
【0114】
インビボ検出またはイメージングを含む実施形態では、インビボイメージングに有用な標識を用いることができる。例えば、フッ素−18などの磁気共鳴画像法に有用な標識を、化学発光標識のように用いることができる。別の実施形態では、プローブを、放射性標識で標識する。例えば、前記標識は、この目的のために現在利用されている機器によって検出されるのに十分なエネルギーのポジトロン放出を提供し得る。そのような実体の一例には、酸素−15(ポジトロン放出によって崩壊する酸素の同位体)または他の放射性核種が含まれる。別の例は、炭素−11である。そのような標識で標識されたプローブを、患者に投与し、標的タンパク質に局在させることができ、かつ該患者を撮像(スキャン)して局在したプローブを検出し、こうして局在した標的タンパク質の部位を同定することができる。標識プローブを、鼻腔内へのまたは経口での直接注入などによる、標的タンパク質の部位への局在を可能にする任意の適切な手段によって投与することができる。いくつかの実施形態では、放射性標識プローブを、患者に注入して、該プローブのタンパク質標的への結合によって外部からモニタリングすることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、標識はオリゴヌクレオチドを含む。例えば、ペプチドプローブを、当該技術分野における公知の方法(例えば、PCR、TMA、b−DNA、NASBA等の増幅アッセイ)によって検出され得るオリゴヌクレオチドタグに連結させてよい。
【0116】
4.方法
本明細書に記載されるペプチドプローブは、標的タンパク質と選択的に会合し、かつ標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプローブは、標的タンパク質と会合したAβタンパク質凝集体に結合し、かつそのような結合をすると立体構造シフトを受ける。前述のように、立体構造シフトには、プローブのN末端とC末端の間(または任意の他の2箇所の間)の距離の変化、より密な折り畳みまたはより密でない折り畳み、より規則性の高いまたはより規則性の低い立体構造をとること、主に一方の二次構造から主にもう一方の二次構造への変化、あるいは異なる二次構造の相対量の任意の変化が含まれる。前述のように、「立体構造シフト」には、たとえCDなどの立体構造のより直接的尺度によって立体構造の変化が明らかにならないとしても、以下に論じる標識シグナル伝達などを介した間接的手段によって検出され得るシフトが含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態では、プローブは、標的タンパク質のものに類似した立体構造変化を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、プローブは、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造および主としてβシート立体構造の両方をとることができ、かつ主としてβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら主としてβシート立体構造をとる。いくつかの実施形態では、プローブは、主としてαヘリックス/ランダムコイル立体構造で提供され、かつ主としてβシート立体構造の標的タンパク質と接触、結合、会合、および/または相互作用すると立体構造シフトを受ける。他の実施形態では、プローブは、より凝縮する、より拡散する、または任意の異なる立体構造をとることによって立体構造をシフトさせる。いくつかの実施形態では、プローブは、Aβタンパク質凝集体の立体構造をより密接にとる。他の実施形態では、プローブは、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造および主としてβシート立体構造の両方をとることができ、かつ主としてβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造をとる。これらの実施形態では、プローブは、主としてβシート立体構造で提供されてよく、かつ主としてβシート立体構造の標的タンパク質と接触、結合、会合、および/または相互作用するとより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造/増加したランダムコイル/αヘリックス立体構造への立体構造シフトを受けることになる。
【0118】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、特定状態の自己凝集、例えばモノマー、ダイマー、可溶性オリゴマー(例えば、4〜12マー)、不溶性凝集体、および原線維(例えば、100〜1000マー以上)などの標的タンパク質に優先的に結合する。これは、US2008/0095706(米国特許出願第11/828,953号に相当)に一般的に記載されており、その全内容は参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている。これを、ペプチド22(配列番号:2)を用いて行う作業で例証する。
【0119】
図12は、可溶性Aβオリゴマーに対するペプチド22(配列番号:2)の特異性を図解している。最初の2つのパネルは、ペプチド22を2つの異なる方法で調製された可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合のピレンモノマーシグナルの用量依存的増大を示している。次の2つのパネルは、ペプチド22をAβ40モノマーおよびAβ42モノマーとインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。次のパネルは、ペプチド22をAβ40線維とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示しており、そして次のパネルは、ペプチド22をAβ42線維とインキュベートした場合のモノマー蛍光のいくらかの用量依存的増大を示している。最後の2つのパネルは、ペプチド22をコントロール溶液(BSAまたは脱水酵素)とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。したがって、ペプチド22は、可溶性Aβオリゴマーの形態のAβタンパク質に優先的に結合する。同様のデータがペプチド38(配列番号:3)に関して得られており、それも可溶性Aβオリゴマーの形態のAβタンパク質に優先的に結合することを示している。
【0120】
可溶性オリゴマーはAβタンパク質の活発な病原型であると考えられているため、可溶性Aβオリゴマー検出能は、特に臨床上重要であり得る。さらに、可溶性Aβオリゴマー検出能によって、Aβ原線維の検出によって可能となるよりも、疾患の進行の経過中でのより早い検出、診断、および処置が可能となり得る。
【0121】
したがって、いくつかの実施形態によれば、試験サンプル中の標的タンパク質を検出するための方法であって、該標的タンパク質がアミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し、(i)該サンプルをペプチドプローブと接触させて、試験混合物を形成する工程;および(ii)該ペプチドプローブと存在する任意の標的タンパク質との間の任意の結合を検出する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法はインビトロで効果を生じる。
【0122】
「試験サンプル」とは、試験される任意のサンプルであり、とりわけ、ヒトまたは動物の組織、血液、脳脊髄液、尿、糞、毛髪、唾液、または任意の他の患者の一部に由来するものであってよい。別の実施形態では、試験サンプルは、医薬品、食品、衣類、または他の動物由来の材料、あるいは環境サンプルを含む、対象となる標的タンパク質を含有する生物材料を含有し得る任意の供給源に由来するものであってよい。試験サンプルを、本発明の方法に適合する任意の様式で、例えばホモジナイゼーション、細胞破壊、希釈、清澄化、等々で、本発明の方法における使用のために調製することができる。標的タンパク質がその元の立体構造を保持できるように、試験サンプル中のタンパク質を変性させない注意を払うべきである。試験サンプルを、ペプチドプローブを添加する前に、場合によっては超音波処理などの従来技術を用いて分離させてよい。インビボ検出に関連した実施形態では、試験サンプルは生きた対象である。
【0123】
インビトロ使用に関して、プローブは、約0.01〜約0.5の間のイオン強度を有し(典型的に、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩化物塩で調製した場合)、例えば約5〜約8の間など、約4〜約10の間のpHを有する水溶液などの溶液中に提供され得る。溶液は、例えば約45容量%〜約60容量%の間など、約30容量%〜約100容量%の間の量で、水混和性の有機物質(例えば、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール(propanal)(HFIP)、またはアセトニトリル(ACN))も含んでいてよい。溶媒を、適切な緩衝系、例えば酢酸塩/酢酸、トリス、またはリン酸塩などを用いて調製してよい。インビボ使用に関して、プローブは、生理学的に許容可能な任意の溶液中に提供され得る。例えば、プローブを、トリフルオロ酢酸塩(trifluoracetic salt)として調製し、100%HFIPまたは50%ACNなどの有機溶媒中に再懸濁してもよい。
【0124】
他の実施形態では、前記方法は、インビボで効果を生じるものであって、ペプチドプローブを対象に投与する工程、および例えば該対象をスキャンして、βシート立体構造標的タンパク質の部位に局在した標識ペプチドプローブを検出する工程を含む。インビボ方法論に関するさらなる詳細は、例えばUS2008/0095706に提供されており、その内容は参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている。そのようなインビボ実施形態では、標識ペプチドプローブを局所注入などによって患者に投与することができ、該患者内に存在する標的タンパク質またはより規則性の高い標的タンパク質構造の任意の部位への局在が可能となり、次いで該患者をスキャンして、標的タンパク質またはより規則性の高い標的タンパク質構造の任意の部位に局在した標識プローブの部位を検出することができる。鼻腔内および経口を含む、他の投与経路も企図される。前述のように、プローブを、インビボイメージングに適した任意の標識で標識することができる。患者を全身スキャンにかけて、任意の部位の標的タンパク質を同定することができる。あるいは、患者の特定領域をスキャンして、標的タンパク質が該特定領域内に局在するかどうかを判定することができる。対象となる特定領域には、血管組織、リンパ組織、または脳(海馬または前頭葉を含む)、あるいは他の器官、例えば心臓、腎臓、肝臓、または肺などが含まれてよい。例示的な適切なスキャンまたはイメージング技術には、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、X線撮影法、断層撮影法、蛍光透視法、核医学、光学的画像法、脳造影法、および超音波検査法が含まれる。
【0125】
いくつかの実施形態では、不溶性標的タンパク質(例えば、Aβ原線維)の検出などに関して、ペプチドプローブおよび標的タンパク質間の結合により不溶性複合体の形成をもたらす。不溶性複合体を、従来技術を用いて、例えば不溶性混合物をペレットにする遠心分離および/または濾過などの従来技術を用いて反応混合物から不溶性複合体を分離することによって、検出することができる。次いで、不溶性複合体を、例えば該不溶性複合体中に存在する任意のペプチドプローブを検出する技術によって、さらに特徴付けすることができる。そのような検出技術には、例えばペプチドプローブの標識を検出すること、あるいは分子量に基づいてタンパク質を分離するSDS−PAGEのような技術または当該技術分野において公知の他の従来技術を用いて不溶性複合体を特徴付けするなどの他の技術が含まれてよい。不溶性複合体中でのペプチドプローブ上の検出可能な標識の検出は、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の存在と相関し、それは同様に試験サンプル中の標的タンパク質と相関する。
【0126】
いくつかの実施形態では、可溶性標的タンパク質凝集体(例えば、可溶性Aβオリゴマー)の検出などに関して、ペプチドプローブおよび標的タンパク質間の結合は、可溶性複合体の形成をもたらす。可溶性複合体を含む複合体の検出は、いくつかの異なる方法によってもたらされ得る。例えば、複合体を、反応混合物の他の構成成分、例えば結合していないペプチドプローブおよび/または結合していない標的タンパク質などから分離することができ、次いで該複合体中に存在するペプチドプローブ上の検出可能な標識を検出することによって、該複合体を検出することができる。当該技術分野において公知の任意の方法を用いて、分離を達成することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて分離する。SECは、捕捉媒体(固定相とも呼ばれる)中の孔または隙間を用いてより小さな分子を保持し、それによって、該より小さな分子は捕捉媒体の中を通じてよりゆっくりと移動し、一方で、より大きな分子はより速く通過する。これらの孔または隙間は、既定サイズであり、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体と結合していないペプチドプローブおよび/または結合していない標的タンパク質とを区別するように選択することができる。これらの方法論によれば、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体は、結合していないペプチドプローブの前に溶出する。より早い画分中でのペプチドプローブ上の検出可能な標識の検出は、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の存在と相関し、それは同様に試験サンプル中の標的タンパク質と相関する。
【0128】
代替的実施形態は、捕捉媒体上にペプチドプローブ−標的タンパク質複合体を保持するアフィニティークロマトグラフィーを用いる。この手法は、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体に結合するアフィニティー分子を含む、固相などの捕捉媒体を利用する。標的タンパク質、ペプチドプローブ、複合体、またはペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の任意の成分に結合した標識に特異的に結合するアフィニティー分子を選択することができる。いくつかの実施形態では、アフィニティー分子は、標的タンパク質または標的タンパク質に結合した標識に特異的に結合し、それによって、該標的タンパク質は捕捉媒体上に保持される。結合していない構成成分(任意の結合していないペプチドプローブを含む)が洗い流された時点で、典型的には溶出バッファーを用いて結合している物質を溶出することができ、かつ溶出液を分析することができる。溶出液中でのペプチドプローブ上の検出可能な標識の検出は、溶出液中のペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の存在と相関し、それは同様に試験サンプル中の標的タンパク質と相関する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を、捕捉媒体のアフィニティー分子が結合する成分に結合させる。例えば、アフィニティー分子がアビジンまたはストレプトアビジンを含む場合には、標的タンパク質をビオチンに結合させてよい。
【0129】
他の実施形態では、ペプチドプローブを、ビオチンなどのアフィニティー分子が特異的に結合する成分に結合させる。そのようなペプチドプローブは、ELISAおよび免疫沈降アッセイにおける使用に特に適している。例えば、アビジンコートされたプレートを、ビオチン標識ペプチドプローブとともに用いることができる。非特異的に結合しているプローブを洗浄して除去した後、標的タンパク質についてアッセイするサンプルを添加する。非特異的に結合している基質を洗浄して除去した後、標的タンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、Aβタンパク質を認識するがペプチドプローブを認識しない6E10抗体などのマウス抗Aβ抗体)を添加する。非特異的に結合している抗体を洗浄して除去した後、標識抗体(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識されたマウス抗IgG抗体)を添加する。そのようなアッセイでは、抗体標識の検出は、サンプル中の標的タンパク質の存在と相関する。
【0130】
以下の表1中のペプチドプローブAD310(配列番号:38)、AD313(配列番号:39)、AD314(配列番号:40)、AD317(配列番号:41)、およびAD321(配列番号:42)は、ビオチン化の代替的部位の例とともに、そのようなペプチドプローブの具体的な実施形態を例証している。これらのペプチドプローブのそれぞれは、配列番号:2(ペプチド22)を含むが、当業者であれば、前文に一般的に記載されているように、かつこれらのペプチドプローブによって具体的に例証されるように、本明細書に記載される任意のペプチドプローブをビオチン化することができることを理解するであろう。例えば、AD310(配列番号:38)によって例証されるように、C末端においてらせん状リンカー(例えば、EAAAK;配列番号:56)を介して、ビオチン化を達成することができる。一般に、らせん状リンカーは、アラニン残基などのαヘリックスを形成する残基を含む。あるいは、AD313(配列番号:39)によって例証されるように、内部または末端リジン残基を含むリジン残基上の側鎖を介して、ビオチン化を達成することができる。あるいは、AD314(配列番号:40)によって例証されるように、C末端において可動性リンカー(例えば、GSSGSSK(配列番号:57))を介して、ビオチン化を達成することができる。一般に、可動性リンカーは、1個以上のグリシンおよび/またはセリン残基、あるいはそれらのphiおよびpsi角の周りを自由に回転させ得る他の残基を含む。あるいは、AD317(配列番号:41)によって例証されるように、C末端においてトロンビン部位リンカー(例えば、GLVPRGSGK(配列番号:59)など、LVPRGS(配列番号:58)を含むリンカー)を介して、ビオチン化を達成することができる。あるいは、AD321(配列番号:42)によって例証されるように、C末端においてねじれリンカー(例えば、PSGSPK(配列番号:60))を介して、ビオチン化を達成することができる。一般に、ねじれリンカーは、1個以上のプロリン残基、またはペプチドプローブのタンパク質結合モチーフから離れてビオチン成分を強固に突出させた固定phiおよびpsi角を有する他の残基を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブおよび標的タンパク質間の結合を、ペプチドプローブによって生成されるシグナル、例えばペプチドプローブがβシート立体構造、またはその標的タンパク質との会合状態に関連する他の立体構造を示す場合に生成されるシグナルを検出することによって検出する。これらの実施形態は、インビトロまたはインビボで、反応混合物からペプチドプローブ−標的タンパク質複合体を分離させて(例えば、前述の)または分離させずに(例えば、インビボ実施形態において)、もたらされ得る。これらの実施形態では、ペプチドプローブを、ピレンなどのエキシマー形成標識で、またはFRET標識で標識することができる。いずれかの種類の標識があると、ペプチドプローブが、例えばβシート立体構造を示す標的タンパク質と接触、相互作用、または結合すると生じ得る、βシート立体構造またはその標的タンパク質との会合状態関連する他の立体構造をとる場合に、シグナルが生成される。
【0132】
エキシマーとは、必ずしも共有結合でない、かつ光子によって励起されている分子全体および同一の励起されていない分子全体の間に形成される付加物である。前記付加物は、本来は一過性であり、それが光子の放出によって蛍光を発するまで存在する。エキシマーは、特定波長の光で励起すると、いずれかのフルオロフォアの作用単独によって発せられるものとは大きさの点でも異なる、異なる波長の光を発する2つのフルオロフォアの相互作用を表す。通常の発光スペクトルのものよりも長い波長に新しい蛍光バンドを産生することによって、エキシマー(またはエキシマーの形成)を認識することが可能である。励起スペクトルはモノマーのものと同一であるため、エキシマーを蛍光共鳴エネルギー移動と区別することができる。エキシマーの形成は、フルオロフォアの幾何学的配置に依存し、かつそれらの間の距離によって強い影響を受ける。
【0133】
一実施形態では、ピレン成分は、ペプチドプローブのそれぞれの末端にまたは付近に存在し、フルオロフォア間のエキシマー形成は、全体的なペプチド立体構造がαヘリックスまたはランダムコイルである限りは無視できる程度であるが、ペプチド物質がピレン成分を互いに近接させるような構造変化(例えば、βシート立体構造への立体構造変化)を受ける場合にはエキシマーが形成される。ペプチドの他の位置に存在するピレン成分も、エキシマー形成が立体構造依存的である限り、本文脈において有用であり得る。さらに、エキシマー形成の大きさは、存在するタンパク質分析物の量に直接関係する。したがって、本発明の方法は、エキシマー形成を検出することによって、標的タンパク質または構造の検出およびインビボイメージングを可能にする。
【0134】
ペプチドプローブが標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化する実施形態では、ピレン成分がペプチドプローブのそれぞれの末端にまたは付近に存在する場合、エキシマーシグナルは、ペプチドの非会合状態に付随するシグナルであり得、かつピレンモノマー蛍光(fluoresce)はより低くなる。そのようなペプチドが、βシート立体構造の標的タンパク質と接触した場合、それらはピレン標識の物理的近接性を減じる立体構造変化を受け、結果としてピレンエキシマーシグナルの減少およびピレンモノマーシグナルの増大をもたらす。ペプチドの他の位置に存在するピレン成分も、ペプチドプローブが会合(例えば、結合している)状態または非会合(例えば、標的タンパク質に結合していない)状態にあるかどうかに依存して変化する立体構造にエキシマー/モノマーシグナル伝達が依存する限り、本文脈において有用であり得る。さらに、これらの実施形態では、ピレンモノマーシグナルの増大またはピレンエキシマーシグナルの低下は、存在する標的タンパク質の量に直接関係する。したがって、これらの実施形態は、同様に、エキシマーおよびモノマーシグナル伝達をモニタリングすることによって、標的タンパク質または構造の検出およびインビボイメージングを可能にする。これを、ペプチド22を用いた図11に示す(以下により詳細に記載される)。特に、図11は、可溶性Aβオリゴマーの非存在下(左)および存在下(右)での、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチド22(配列番号:2)に関する生の蛍光スペクトルを図解している。ペプチド22の蛍光は、オリゴマーの非存在下では長期間安定(モノマーまたはエキシマーの蛍光に増大なし)であるが、可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合には、ピレンモノマーシグナルの増大を示す。
【0135】
エキシマーの形成を、光学特性の変化によって検出することができる。そのような変化を、プローブに付着させたフルオロフォアに依存した、多数ある中でも、UV、IR、CD、NMR、または蛍光を含む公知の蛍光分析技術によって測定することができる。これらの光学特性の変化の大きさは、変化に付随する構造状態をとっている結合体の量に直接関係し、かつ存在する標的タンパク質の量または構造に直接関係する。
【0136】
同様の考察がFRETに当てはまる。例えば、ペプチドプローブを、以下のFRET標識ペア:DACIA−I/NBD、マリーナブルー/NBD、およびEDANS/Fam(フルオレセイン(fluorescene))から選択される標識で、それぞれの末端においてまたは付近において標識することができる。標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の低い立体構造からより規則性の高い立体構造へ変化するペプチドプローブに関して、FRETシグナルの検出は、ペプチドプローブのβシート立体構造に関連し、かつ標的タンパク質の存在と相関する。標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するペプチドプローブに関して、FRETシグナルの検出はプローブの非会合状態に関連し、一方で、異なる(モノマー)シグナルまたは、シグナルなしの検出は標的タンパク質の存在と相関する。
【0137】
同様の考察が、前述のように、フルオロフォア/クエンチャーペアにも当てはまる。
【0138】
前述のように、本明細書に記載されるペプチドプローブを、例えばバックグラウンドシグナルの低下を示すことによって、検出アッセイにおける性能の向上を達成するように設計する。したがって、ペプチドプローブは、βシート立体構造を示す標的タンパク質を検出することにおける参照ペプチドよりも、より感度が高くかつより信頼性が高いものであり得る。
【0139】
前述のように、標的タンパク質は、疾患または病状に関連し得る。したがって、標的タンパク質の検出は、疾患または病状の診断またはそのリスクと相関し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるペプチドプローブによって検出されるβシート立体構造を示す標的タンパク質の量は、臨床的に関連のある疾患の特徴、例えば疾患の進行または状態、あるいは疾患に対する素因などと相関し得る。他の実施形態では、本明細書に記載される方法を用いて、その特徴がADなどのアミロイド形成疾患における疾患の進行に対応することが知られている、患者に存在するミスフォールドアミロイドタンパク質の量、および/またはAβ40対Aβ42タンパク質の比率を測定することができる。
【0140】
本明細書に記載されるペプチドプローブは、標的タンパク質が、例えば治療状況において有用であり得るβシート立体構造を示す能力を阻害する薬剤を同定するのにも有用である。そのような方法では、薬剤を標的タンパク質とインキュベートし、ペプチドプローブとβシート立体構造を示す標的タンパク質との結合を検出する。薬剤とのインキュベーションありおよびインキュベーションなしで、標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの量を比較することによって、該薬剤の阻害能を判定することができる。例示的方法は、US2008/0095706(米国特許出願第11/828,953号に相当)に記載されており、その全内容は参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている。
【0141】
5.インビボ治療法
他の実施形態では、標的タンパク質のタンパク質凝集体の形成を阻止するためのインビボ方法論であって、該標的タンパク質を該標的タンパク質に対するペプチドプローブとインビボで接触させる工程であって、該ペプチドプローブは該標的タンパク質に優先的に結合し、それによって、該標的タンパク質のより規則性の高いタンパク質凝集体の形成を阻止する工程を含む方法論を提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、モノマー、可溶性オリゴマー、および不溶性自己凝集体からなる群より選択される自己凝集の特定状態にある標的タンパク質に優先的に結合する。
【0142】
他の実施形態によれば、標的タンパク質に治療剤を送達するための方法論であって、該治療剤を該標的タンパク質に対するペプチドプローブと結合させる工程、およびペプチドプローブ−治療剤結合体をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法論を提供する。例えば、標的タンパク質の部位への治療剤の標的送達のために、ペプチドプローブを治療剤に(直接的にまたはリンカーを介して)結合させることができる。上記のUS2008/0095706に開示されている、そのようなインビボ実施形態では、ペプチドプローブを(単独でまたは別の治療剤を含む組み合わせで)局所注入などによって患者に投与することができ、かつ該患者内に存在する標的タンパク質またはより規則性の高い標的タンパク質構造の任意の部位への局在が可能となり、治療効果をもたらす。鼻腔内および経口を含む、他の投与経路も企図される。対象となる特定領域には、血管組織、リンパ組織、または脳(海馬または前頭葉を含む)、あるいは他の器官、例えば心臓、腎臓、肝臓、または肺などが含まれてよい。
【0143】
6.キット
本明細書に記載されるペプチドを含むキットも提供する。本明細書に記載される方法を実践するためのキットを調製することができる。典型的には、キットは、方法を実践するのに有用な、少なくとも1つの成分または成分のパッケージされた組み合わせを含む。「パッケージされた組み合わせ」とは、キットが、1つ以上の成分、例えばペプチドプローブ、バッファー、使用指示書等の組み合わせを含有するただ1つのパッケージを提供することを意味する。ただ1つの容器を含有するキットは、「パッケージされた組み合わせ」の定義の範囲に含まれる。キットは、本明細書に記載される方法を実践するのに必要な成分の一部またはすべてを含んでいてよい。典型的には、キットは、少なくとも1つの容器内に少なくとも1種のペプチドプローブを含む。キットは、1つ以上の容器内に、同じであっても異なってもよい複数種のペプチドプローブ、例えば異なる配列および/または異なる標識を含むプローブを含んでいてよい。複数種のプローブは、ただ1つの容器内、またはそれぞれがただ1種のプローブを含有する別々の容器内に存在してよい。
【実施例】
【0144】
実施例1
ペプチドに蛍光レポーター成分を結合させることによって、種々の溶媒条件下での、または相互作用パートナー(例えば、標的タンパク質)および補因子(例えば、抗アミロイド剤)の存在下での、ペプチドの立体構造的動態をモニタリングする単純なメカニズムを提供することができる。前述のように、ピレンは、ピレンがモノマー状態にあるかどうか、あるいはそれが密接に物理的に近接しているまたは他のピレン成分と対合している(エキシマー状態)かどうかに依存して、2つの明確に区別できる蛍光プロファイルを発する。ピレンを本明細書に記載されるペプチドのN末端およびC末端にまたは付近に結合させた場合、ピレン成分は、該ペプチドの立体構造に依存して異なる距離で分離され得、ピレンは、βシート立体構造では密接に物理的に近接し(図1B)、ランダムコイル/αヘリックス立体構造ではさらに離れる(図1C)。したがって、ピレンを本明細書に記載されるペプチドのN末端およびC末端にまたは付近に結合させた場合、それは、該ペプチドの立体構造に依存して2つの明確に区別できる蛍光プロファイルを有する蛍光シグナルを提供し得、モノマーシグナルは該ペプチドのランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随し、エキシマーシグナルは該ペプチドのβシート立体構造に付随する。結果を、βシート立体構造のシグナル(エキシマー)として、またはβシート立体構造に由来するシグナル(エキシマー)とαヘリックス立体構造由来のシグナル(モノマー)の蛍光比として報告することができる。
【0145】
ペプチドの立体構造に依存して異なるシグナルを生じるペプチドを選択するために、インシリコモデリングを用いて、1つより多いピレン成分を対象となるペプチドに結合させた場合のピレン間距離を予測することができる。図1Aは、Aβペプチド(配列番号:1)の領域に相当するペプチドのそれぞれの末端に結合させたピレンの、室温における該ペプチドの溶媒環境に依存した、ピレン間距離の分布についてのインシリコ予測を図解している。この図に示されているように、前記ペプチドは水中ではβシート立体構造をとり、ピレン成分は相対的に密接に近接している(N末端およびC末端ピレン環の中心間は約10Å)。対照的に、前記ペプチドは40%トリフルオロエタノール(TFE)中ではαヘリックス立体構造をとり、ピレン成分はさらに離れている(N末端およびC末端ピレン環の中心間は約20Å)。
【0146】
実施例2
本明細書に記載される原則に従って、新規なペプチドプローブを設計した。図2に図解されているように、前記ペプチドの配列は、Aβペプチドのβシート形成領域であるAβペプチドのアミノ酸17−35に基づく。参照配列(WT;配列番号:1)は、ピレン標識付けを容易にするために付加された末端リジン残基を含む野生型配列に相当する。
【0147】
ペプチド22(配列番号:2)は、ヒスチジン残基による置換、グルタミン酸残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0148】
ペプチド38(配列番号:3)は、4個の連続したアラニン残基による置換、ヒスチジン残基による置換、グルタミン酸残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0149】
ペプチド45(配列番号:4)は、3個の連続したN末端アラニン残基の付加、ヒスチジン残基による置換、グルタミン酸残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0150】
ペプチドI32S(配列番号:5)は、イソロイシン残基のロイシン残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0151】
ペプチドM35A(配列番号:6)は、C末端残基のアラニン残基による置換、および該ペプチドのC末端残基としてのリジン残基の付加を含む。
【0152】
ペプチドE22P(配列番号:7)は、グルタミン酸残基のプロリン残基による置換を含む。
【0153】
ペプチドGM6(配列番号:8)は、フェニルアラニン残基のセリン残基による置換、ならびにロイシン残基のプロリン残基による置換を含む。
【0154】
前述のように、ペプチド22、38、および45(配列番号:2〜4)におけるヒスチジンおよびグルタミン酸残基置換によって、αヘリックス立体構造を安定化させ、かつ/あるいはアッセイ条件を制御することによって生成されるシグナルを制御するための手段を提供し得る、それらの残基間での塩橋の形成が可能となる。前述のように、βシート立体構造の標的タンパク質の非存在下では、ペプチドはβシート立体構造をとる可能性が低いため、これらのペプチドはバックグラウンドシグナルの低下を示す。
【0155】
前述のように、ペプチド38(配列番号:3)およびペプチド45(配列番号:4)における連続したアラニン置換(アラニン反復)は、強いαヘリックス傾向を有し、ゆえにペプチドのαヘリックス立体構造を安定化する。先と同様に、βシート立体構造の標的タンパク質の非存在下では、ペプチドはβシート立体構造をとる可能性が低いため、これらのペプチドはバックグラウンドシグナルの低下を示す。
【0156】
前述のように、いくつかの置換によって、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用するとβシート立体構造または他の立体構造変化をとることが容易になり、それによって、ペプチドは、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると、参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるまたは立体構造変化を受ける。配列番号:7、9〜13、および19〜21における、アラニンのグリシンへの置換、グルタミン酸のプロリン、グリシン、グルタミン、またはリジンへの置換、およびアスパラギン酸のアスパラギンへの置換によって、増強したβシート形成および凝集特性を備えたペプチドプローブが生じる。
【0157】
ペプチドM35A(配列番号:6)におけるC末端メチオニン置換によって、該ペプチドは参照(野生型)配列よりも酸化環境においてより安定となる。
【0158】
追加の作業によって、ペプチドI32S(配列番号:5)におけるイソロイシンのセリンへの置換、ペプチドAD323、AD325、AD330、AD329、AD328、およびAD327(配列番号:28〜33)におけるセリン、ヒスチジン、イソロイシン、および/またはロイシンのアスパラギン酸への置換、ならびにペプチドGM6およびGM6バリエーション1(配列番号:34〜35)におけるフェニルアラニン(phenylalanie)のセリンへの置換およびロイシンのフェニルアラニンへの置換によって、これらのプローブは、Aβオリゴマーなどの標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると、参照(野生型)配列よりもより効率的に立体構造変化を受け得るが、結果として生じるプローブのβシート立体構造は不安定になることが示されている。
【0159】
実施例3
ペプチドプローブを、いくつかの異なるアッセイで公知の標的タンパク質に対して用い、既定のアッセイにおける使用に関するおよび/または既定のアッセイ条件下での使用に関するそれらの適合性を評価することができる。例えば、あるペプチドはある特定のアッセイでより有効であり得、一方で、異なるペプチドは異なるアッセイでより効果を生じ得る。配列番号:1のペプチドを、以下に記載するように、いくつかの異なるアッセイで用いた。同様のアッセイを用いて、試験サンプル中の標的タンパク質を検出することができる。
【0160】
(i)不溶性複合体
このアッセイでは、インビトロの遠心分離に基づく相互作用アッセイにおいて、可溶性ペプチドプローブを不溶性標的タンパク質線維と結合させる。標的タンパク質に結合するペプチドプローブは、遠心分離を用いて分離し得る不溶性ペレット中に検出される。不溶性標的タンパク質線維に結合しないペプチドプローブは、上清にとどまり、ペレット中には検出されない。
【0161】
Aβ42線維(標的タンパク質)およびペプチドプローブ(配列番号:1)を、増大していく量のトリフルオロエタノール(TFE)の存在下で3時間インキュベートする。サンプルを17,000×gで30分間遠心分離し、ペレットをサンプルバッファー中で変性させ、SDS−PAGEによって分析する。結果を図3に示す。参照サンプル(インプット)を比較のために示す。本実施例において、標的タンパク質とペプチドプローブの結合は、40%TFE条件ではっきりと観察される(40%TFEにおける左と右のパネルを比較されたく、左のパネルでは「ペプチド」バンドが現れているが、右のパネルでは現れていない)。このことは、ペプチドが、標的タンパク質の原線維形態を含む回転させたペレット中に落ちたことを意味しており、原線維はSDS−PAGE条件下でモノマーに分解するため、それはSDS−PAGE上ではモノマーAβ42として示されている。
【0162】
ペプチドを検出可能な標識で標識した場合、ペレットにした不溶性複合体中のシグナルは、標的−ペプチド結合と相関するであろう(図示せず)。
【0163】
(ii)サイズ排除クロマトグラフィー
このアッセイでは、インビトロのサイズ排除クロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイにおいて、可溶性ペプチドプローブを、例えば可溶性標的タンパク質オリゴマーと結合させる。
【0164】
標識ペプチドプローブ(配列番号:1,2μM)および標的タンパク質(Aβオリゴマー,2μM)を、Hepesバッファー(10mM,pH7.0)中で90分間一緒にインキュベートし、次いで5000Da分子量のカットオフを有するG25サイズ排除カラムにロードする。カラムを735×gで2分間の遠心分離にかける。溶出液およびカラム物質をTECAN蛍光光度計によって分析する。この方法を図14Aに図解する。溶出液をSDS−PAGEによって分析してもよい(図示せず)。
【0165】
このアッセイでは、結合していないペプチドプローブは、そのサイズが小さいためにカラムにとどまる。したがって、溶出液中での標識ペプチドプローブの検出は、該溶出液中の標的タンパク質−ペプチド複合体の存在を意味する。このことは、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している、図14Bに図解された結果によって確認される。
【0166】
ペプチド45を用いた同様のアッセイでは、標識ペプチドプローブ(配列番号:4,2μM)および標的タンパク質(Aβオリゴマー,2μM)を、Hepesバッファー(10mM,pH7.0)中で90分間一緒にインキュベートし、次いで5000Da分子量のカットオフを有するG25サイズ排除カラムにロードする。カラムを735×gで2分間の遠心分離にかける。溶出液およびカラム物質をTECAN蛍光光度計によって分析する。この方法を図4Aに図解する。このアッセイでは、結合していないペプチドプローブは、そのサイズが小さいためにカラムにとどまる。したがって、溶出液中での標識ペプチドプローブの検出は、該溶出液中の標的タンパク質−ペプチド複合体の存在を意味する。このことは、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している、図4Bに図解された結果によって確認される。
【0167】
(iii)アフィニティークロマトグラフィー
このアッセイでは、インビトロのアフィニティークロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイにおいて、可溶性ペプチドプローブを、例えば可溶性標的タンパク質オリゴマーと結合させる。
【0168】
本実施例のために、標的タンパク質をビオチンなどのアフィニティー分子で標識し、標識ペプチドプローブとインキュベートする。インキュベーション後、混合物を、例えばカラムまたはビーズの支持体上のストレプトアビジンなどの捕捉成分とインキュベートし、それによって、標的タンパク質を捕捉する。結合していない物質を洗浄後、支持体上の結合している標的タンパク質−ペプチドプローブ複合体の存在を意味するであろう、標識ペプチドプローブの検出のために支持体を調べることができる。あるいは、結合している物質を溶出し、次いで標識ペプチドプローブの検出のために調べてもよい。先と同様に、標識ペプチドプローブの検出は、溶出液中の標的タンパク質−ペプチドプローブ複合体の存在を意味するであろう。図5Aおよび15Aは、ビオチン標識標的タンパク質とストレプトアビジンコートされたビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィーを図解している。このタイプのアッセイは、例えば既定のペプチドプローブの有効性を評価するのに有用である。
【0169】
標識ペプチドプローブ(配列番号:1,2μM)とビオチン化標的タンパク質(Aβ42オリゴマー,2μM)をPBS中で30分間インキュベートする。次いで、混合液をストレプトアビジンでコートされた磁気ビーズを用いた捕捉工程にかける。ビーズをPBSで洗浄して結合していない物質を除去し、捕捉物質をSDS−PAGEによって分析する。
【0170】
代替的アッセイ(図15Aに図解されているプロトコールB)では、4μNのビオチン化Aβ42オリゴマーを、あらかじめ洗浄したストレプトアビジンダイナビーズと室温で30分間インキュベートした。次いで、複合体をPBSバッファーで2回洗浄し、PBSバッファー中に再懸濁した。次いで、等量の結合しているオリゴマーと4μMの標識ペプチドプローブ(配列番号:1)を混ぜ合わせ、室温で30分間インキュベートした。次いで、結合していない物質を3回のPBS洗浄で洗い流し、続いて磁石によってビーズ複合体を回収した。次いで、複合体を1×LDSバッファーに再懸濁し、10分間ボイルし、10%Bis−Trisゲルにロードした。
【0171】
図15Bは、結果を図解している。図に示されているように、高分子量オリゴマーの存在下では、標識ペプチドプローブのみが捕捉物質中に検出され、ペプチドプローブが標的タンパク質オリゴマーに結合することを示している。捕捉物質を、蛍光プロファイルによっても分析することができる(図示せず)。
【0172】
ペプチド22を用いた同様のアッセイ(プロトコールA)では、標識ペプチドプローブ(配列番号:2,4μM)とビオチン化標的タンパク質(Aβ42オリゴマー,4μN)を、Hepesバッファー(10mM,pH7.0)中で90分間インキュベートする。次いで、混合液をストレプトアビジンでコートされた磁気ビーズを用いた捕捉工程にかける。ビーズをPBSで洗浄して結合していない物質を除去し、捕捉された物質をSDS−PAGEによって分析する。
【0173】
ペプチド22を用いた代替的アッセイ(図5Aに図解されているプロトコールB)では、4μNのビオチン化Aβ42オリゴマーを、あらかじめ洗浄したストレプトアビジンダイナビーズと室温で30分間インキュベートした。次いで、複合体をPBSバッファーで2回洗浄し、PBSバッファー中に再懸濁した。次いで、等量の結合しているオリゴマーと4μMの標識ペプチドプローブ(配列番号:2)を混ぜ合わせ、室温で30分間インキュベートした。次いで、結合していない物質を3回のPBS洗浄で洗い流し、続いて磁石によってビーズ複合体を回収した。次いで、複合体を1×LDSバッファーに再懸濁し、10分間ボイルし、10%Bis−Trisゲルにロードした。
【0174】
図5Bは、結果を図解している。左のパネル(レーン1〜3)は、ストレプトアビジン磁気ビーズによって合成ビオチン化オリゴマーが落ちたことを示している(レーン2および3をレーン1と比較されたい)。レーン4は、100%結合に類似した、4μMの濃度でゲルに直接ロードしたペプチドプローブ(ペプチド22)を示している。レーン2は、ゲルにロードした結合反応物(プロトコールA)を示しており、Aβオリゴマーとペプチドプローブが共溶出することに留意されたい。レーン3および4は、ビオチン化Aβ42オリゴマーの添加なし(レーン3)および添加あり(レーン4)で、プロトコールBに従って調製した結合反応物を示している。オリゴマーの非存在下では、ペプチドプローブはゲル上に存在せず、それがストレプトアビジンビーズに結合していないことを意味する。ビオチン化オリゴマーの存在下では、ペプチドプローブは回収される。これらの結果は、ペプチドプローブ(probed)がビオチン化Aβ42オリゴマーに直接結合することを示している。
【0175】
実施例4
前述のように、いくつかの実施形態では、例えばペプチドの(結合していない)ランダム/αヘリックス立体構造に付随する任意のシグナル(例えば、バックグラウンドシグナル)とペプチドの(結合している)βシート立体構造に付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させることによって、標的タンパク質に結合していないペプチドに付随する任意のシグナルと標的タンパク質に結合しているペプチドに付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させるように、ペプチドプローブのバリアント配列を設計する。このパラメーターを評価するための一方法は、ペプチドにαヘリックス立体構造を誘導する有機溶媒である種々の濃度のTFE中で、標識ペプチドをインキュベートすることである。そのαヘリックスおよびβシート立体構造間のシグナルに有意差のあるペプチドは、前述の理由で特に有用であり得る。
【0176】
それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ22(配列番号:2,2μM)を、trisバッファー(10mM Tris,pH7.0)中0〜80%TFE中で30分間インキュベートする。反応物をTECAN蛍光光度計によって測定し、エキシマー:モノマーの蛍光比を記録する。図6Aに示されているように、バッファー中でのペプチド22の最大シグナル応答は(80〜20%TFEでシグナルが得られる)、およそ100比単位であり、参照ペプチド(配列番号:1)のものの4倍を上回る。線維状アミロイド標的タンパク質の存在下で立体構造変化を受ける能力について試験した場合、ペプチド22は参照配列(配列番号:1)より2.6倍高く機能する。つまり、ペプチド22は、線維状アミロイド標的タンパク質の存在下で、参照ペプチドの最大シグナル獲得より約2.6倍高い最大シグナル獲得を示す。
【0177】
実施例5
(i)ペプチドプローブ立体構造の構造解析
実施例2で論じているように、ペプチド22、38、および45(配列番号:2〜4)内にヒスチジンおよびグルタミン酸置換を導入して、それらの残基間での塩橋の形成を可能にした。種々のpHおよび塩の条件下でそのようなペプチドに対してCD分析を行い、既定の条件下でのペプチドの立体構造を決定することができる。
【0178】
本実施例では、それぞれの末端においてピレン成分で標識されたペプチド38(配列番号:3)を用いる。図7に示されているように、pH7において(実線)、ペプチドは高度にαヘリックスであり(38%)、αヘリックス立体構造の割合はpH4(細かい点線)においてさらに大きい(52%)。500mMのNaClの添加によって、どちらのpHレベルにおいても、βシート立体構造を好んで、αヘリックス立体構造が大幅に減少する。したがって、pH7で500mMのNaClの存在下では(大きな破線)、αヘリックス含有量は4%であり、一方で、βシート含有量は40%である(塩なしでは10%より高い)。pH4で500mMのNaClの存在下では(一点鎖線)、αヘリックス含有量は6%であり、一方で、βシート含有量は52%である(塩なしでは4%より高い)。これらの結果は、塩橋によってαヘリックス立体構造が安定化し、その形成は低いpHおよび低塩で促されることを意味する。より高塩濃度では、塩橋は破壊され、αヘリックス立体構造はもはや安定でない。
【0179】
(ii)標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの構造解析
標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの立体構造を、CD分析によって評価することができる。図8は、それぞれ別々のならびに混ぜ合わせた、2ピレン標識ペプチド38(配列番号:3)およびAβ42オリゴマー(標的タンパク質)の立体構造を示している。ペプチド単独では高度にαヘリックスである(36%)。ペプチド38と標的タンパク質を混合すると、ペプチドは、βシート立体構造の増加およびαヘリックス立体構造の減少をもたらす立体構造シフトを受ける。つまり、ペプチド38の二次構造が変化し、それによって、αヘリックスの割合が半減し(18%)、一方で、βシート構造の割合が20%から31%に高まる。したがって、ペプチド38は、Aβ42オリゴマー標的タンパク質と接触するとβシート立体構造をとり、その立体構造変化をCD分析によって検出することができる。
【0180】
(iii)標的タンパク質に結合しているペプチドプローブのエキシマー分析
標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの立体構造を、ペプチド単独におけるおよび標的タンパク質と組合させたものにおけるピレン蛍光を測定することによって、検出することもできる。図9Bは、遊離2ピレン標識ペプチド45(配列番号:4)のピレン蛍光を示している。βシート立体構造に付随するエキシマー蛍光は、αヘリックス立体構造に付随するモノマー蛍光とは異なる波長を有し、エキシマー:モノマーの蛍光比は9:1である。図9Aは、種々の量のAβ42オリゴマー標的タンパク質(0、0.03、0.1、および0.3μM)の存在下での、2ピレン標識ペプチド45のピレン蛍光を示している。Aβ42オリゴマー標的タンパク質の添加によって、最も高いAβ42オリゴマー濃度(0.3μM)において20:1へのエキシマー:モノマーの蛍光比の用量依存的シフトが生じる。このエキシマー:モノマーの蛍光比の変化は、βシート立体構造の増加およびαヘリックス立体構造の減少をもたらす、対応するペプチドの立体構造変化を反映している。したがって、ペプチド45は、Aβ42オリゴマー標的タンパク質と接触すると用量依存的様式でβシート立体構造をとり、その立体構造変化をピレン蛍光を測定することによって検出することができる。
【0181】
実施例6
図10は、本明細書に記載される方法およびプローブのいくつかの異なる実施形態を概略的に図解している。
【0182】
(i)Aβ線維アッセイ(最上段パネル)
Aβ線維アッセイを、40%TFEなどの有機溶媒中で行うことができる。図10の最上段パネルに図解されているように、Aβ線維の非存在下にて40%TFE中でインキュベートした、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ(例えば、配列番号:1)は、CD分光法によって観察し得る、主としてαヘリックスである立体構造を示す(データ示さず)。この立体構造は、ピレン成分のモノマー蛍光すなわち自己蛍光を伴う(370〜410nm;図6を参照されたい)。Aβ線維基質を導入すると、プローブはβシート立体構造をとる。この立体構造は、ピレン成分のエキシマー蛍光を伴う(430〜530nm;図6を参照されたい)。
【0183】
(ii)Aβオリゴマーアッセイ(下段パネル)
Aβオリゴマーアッセイを、水などの水性溶媒中で行うことができる。図10の下段パネルAに図解されているように、Aβオリゴマーの非存在下で、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ22(例えば、配列番号:2)は、ピレン成分のエキシマー蛍光を伴う立体構造を示し(図11を参照されたい)、ゆえに増加したβシート構造を有すると考えられる。Aβオリゴマーを導入すると、蛍光プロファイルは主として自己蛍光(モノマー)にシフトし(図11を参照されたい)、これは、βシート構造の減少またはαヘリックス構造の増加に関連する。
【0184】
あるいは、図10の下段パネルBに図解されているように、ペプチドプローブを、それぞれの末端においてFRETペアの構成要素(例えば、FAMおよびEDANS)で標識することができる。例証されている実施形態によれば、FRET標識はAβオリゴマーの非存在下では相互作用しないが、Aβオリゴマーを導入すると、蛍光プロファイルは、βシート構造の増加に関連するFRET蛍光にシフトする。ペプチドプローブAD293(配列番号:52)、AD292(配列番号:53)、AD291(配列番号:54)、およびAD290(配列番号:55)は、このタイプの立体構造変化と一致した蛍光挙動を示している。
【0185】
図10の下段パネルに関する観察により、ペプチドプローブのアミノ酸配列に加えて、少なくともこれらのペプチドに関して、標識の性質はペプチドプローブの折り畳み特性および/または立体構造に影響し得ることが示唆される。したがって、Aβオリゴマーの非存在下で、ピレン標識は、エキシマー蛍光をもたらすβシート構造の形成を促し得る。一方、FRETペアは、基質の非存在下ではそれほど強く相互しないようである。
【0186】
実施例7
前述のように、ペプチド22(配列番号:2)は、Aβオリゴマーと相互作用すると立体構造変化を受ける。図11は、それぞれの末端においてピレンで標識されており、かつ10mMのHepes(pH7.0)中で室温にて水性条件中でいくつかの時間インキュベートした、ペプチド22に関する蛍光スペクトルを図解している。ペプチド22の蛍光は、オリゴマーの非存在下では長期間安定(モノマーまたはエキシマーの蛍光に増大なし)であるが、可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合には、ピレンモノマーシグナルの増大を示す。(実線=時間0;破線=3時間;点線=18時間)。具体的には、図11(右のパネル)に示されているように、ペプチド22は、ピレンエキシマー(〜460および485nmで最大発光)からピレンモノマー(〜380および400nmで最大発光)への時間依存的立体構造シフトを示す。
【0187】
実施例8
本実施例は、Aβオリゴマーに対するペプチド22の特異性を例証する。
【0188】
ペプチド22(100nM)を、等モル濃度(0、30、100、および300nN)のいくつかの潜在的Aβ基質:Aβ42オリゴマー(タイプ1);Aβ42オリゴマー(タイプ2);Aβ1−42モノマー;Aβ1−40モノマー;Aβ1−42線維;Aβ1−40線維:ウシ血清アルブミン(コントロール基質);および炭酸脱水酵素(コントロール基質)と、室温で15時間水中にてインキュベートする。
【0189】
図12に示されているように、ペプチド22は、2種のAβオリゴマー基質に関して、オリゴマー投入量が増加するにつれてピレンモノマー(自己)蛍光が増大することを特徴とする、用量依存的な蛍光応答を示す。Aβ42モノマーおよびAβ40線維は、高い基質投入量でわずかな蛍光応答を誘導した。これらのデータは、水性条件下で、ペプチド22の蛍光応答は、標的特異的かつ用量反応的であることを実証している。
【0190】
実施例9
本実施例は、ペプチド22の反応性をさらに調査する。
【0191】
図13Aに関して、ペプチド22(70nM)を、0、30、100、または300nNの合成Aβ42オリゴマーと25℃でインキュベートし、3時間のインキュベーション後に蛍光発光スペクトルを記録する。図13(最上段パネル)に示されているように、Aβ42オリゴマーの非存在下で、ペプチド22は、非常にわずかなピレンモノマー(自己)蛍光を示す(370〜420nm)。しかしながら、ピレンモノマー(自己)蛍光は、Aβ42オリゴマー濃度とともに用量依存的様式で増大する。例えば、図13に示されているように、ペプチド22は、30のAβ42オリゴマーとよりも300nNのAβ42オリゴマーとインキュベートした場合に、より大きなピレンモノマー蛍光を示す。(実線−Aβ42オリゴマーなし;一点鎖線−30nNのAβ42オリゴマー;大きな破線−100nNのAβ42オリゴマー;細かい点線−300nNのAβ42オリゴマー)。
【0192】
円偏光二色性(CD)分析を用いて、ペプチド22、合成Aβ42オリゴマー、およびそれらの混合物の二次構造を決定する。CDを測定する前に、サンプルを10mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)中で室温にて3時間インキュベートする。それぞれのサンプルについて、相対的楕円率を190〜260nmから評価する。図13(下段パネル)は、4μMのペプチド22(実線);33nMの合成Aβ42オリゴマー(一点鎖線);2つの個々のサンプルの算術的合計(大きな破線);ペプチド22と合成Aβ42オリゴマー混合物の混合物(細かい点線)のCDプロファイルを示している。それぞれのデータセットは、3回の別々のスペクトルスキャンの平均を表す。
【0193】
データによれば、ペプチド22は、単独で、主としてβシート二次構造を有するのに対し(36%)、合成Aβ42オリゴマーは本質的に組織化されていない(すなわち、楕円率はゼロ)ことが示されている。2つの種を一緒にインキュベートした場合、ペプチド22の構造は主としてβシートのままであり(43%)、2種の個々の成分の合計に非常に類似したプロファイルを有する。データによれば、ペプチド22の蛍光プロファイルを変化させる、ペプチド22とAβ42オリゴマーとの相互作用があると生じる立体構造変化は、CDによって検出され得ず、ゆえに該ペプチドまたはペプチド−オリゴマー複合体のβシート総含有量を有意には変化させないことが示唆される。
【0194】
実施例10
前述の原則に従って設計された例示的ペプチドプローブを、以下の表1に示す。配列中の陰影付けによって示されるように、ペプチド配列の大部分は、Aβペプチドのβシート形成領域であるAβペプチドのアミノ酸16−35(WT;配列番号:1)に基づいており(他は、Aβペプチドのより長い部分に基づく)、標識付けを容易にするために付加されたC末端リジン残基を含む。配列バリアントのカテゴリー(または複数のカテゴリー)を表中に表示する(例えば、安定性を向上させる、塩橋を提供する、溶解度を増大させる、αヘリックス形成を促進する、βシート構造を不安定化する、Aβ結合モチーフを付加する、等々のための改変)。異なる標識部位および標識ペアを含む、ペプチドプローブ標識付けの選択肢も例証する。別様に明記されていない限り、すべてのペプチドを2つのピレン標識で、一方をN末端アミン上で、もう一方をC末端リジン残基の側鎖上で標識した。さらに、別様に明記されていない限り、すべての構築物は、カルボキシル基の代わりにC末端アミドを含有する。
【0195】
以下の略語を表中で用いている。
「PBA」=ピレン酪酸
「r」=d−アルギニン
「ダブシル」=4−(4−ジメチルアミノフェニル)ジアゼニル安息香酸
「EDANS」=5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸
「FAM」=5(6)カルボキシフルオレセイン
「ダンシル」=5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル
【0196】
【表1】
【0197】
天然に存在する変異体に基づくペプチドは、増強した凝集種形成能を有すると期待される。
【0198】
ペプチドプローブのペプチド22(配列番号:2)、ペプチド22バリエーション1(配列番号:14)、ペプチド22バリエーション2(配列番号:15)、ペプチド38(配列番号:3)、およびペプチド45(配列番号:4)は、水性アッセイにおいてAβ42オリゴマーと反応することが示されている。驚いたことには、この反応性は、主としてピレンエキシマー蛍光からピレン自己蛍光への移行を特徴とした。データによれば、これらのペプチドプローブは、水性条件下でAβ42オリゴマーと相互作用すると、βシート立体構造から減少したβシートまたは増加したαヘリックス立体構造(あるいは他の立体構造)への立体構造シフトを受けることが示唆される。
【0199】
P22設計を追求するために、Aβ42オリゴマーと相互作用すると観察される立体構造移行が、P22配列に関して観察されるよりもより熱力学的に有利であろうという見込みで、より不安定なβシート構造を有するP22バリアントを作製した。これらのペプチドを合成し、上の表1に一覧にする。
【0200】
表1に明記されているように、FRETペア、またはペアの蛍光成分(例えば、EDANS)の蛍光シグナル伝達を消光するダブシルクエンチャー成分を用いて、ペプチドを構築した。代替的標識ペアを有するこれらのペプチドによって、水性アッセイにおけるより高い感度が可能となり得る。
【0201】
Aβ42オリゴマーと相互作用するとβシート立体構造から減少したβシートまたは増加したαヘリックス立体構造(あるいは他の立体構造)への立体構造シフトを受けるペプチドプローブ(例えば、ペプチド22)を、上の表1に例証される蛍光標識/クエンチャーペアで標識した場合、蛍光標識シグナルは、初めに消光され、次いで該ペプチドプローブがAβ42オリゴマーと相互作用して立体構造シフトを受けた場合には消光されず、蛍光シグナルの誘導が生じる。
【0202】
本発明の実践において、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、種々の修正および変化がなされ得ることは当業者に明白であろう。本発明の他の実施形態は、本明細書および本発明の実践についての検討から当業者に明白であろう。本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって明記されており、本明細書および実施例は、単なる例示として見なされることを意図する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている、2009年1月30日に出願された米国仮特許出願第61/148,659号の恩典を米国特許法119(e)条の下で主張するものである。
【0002】
1.本発明の分野
本発明は、例えば、疾患に関連し得るミスフォールドタンパク質またはβシート二次構造を有するタンパク質を含む特定の立体構造を有する標的タンパク質を検出するのに有用な、立体構造的に動的なペプチドを提供する。そのような標的タンパク質を検出する方法、そのような標的タンパク質に関連する疾患またはそのリスクを診断する方法、およびそのような標的タンパク質に関連する疾患を処置する方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
2.背景
ミスフォールドタンパク質障害の発症は、正常タンパク質が、凝集しやすいβシートリッチな立体構造へ変換することを特徴とする。アルツハイマー病(AD)の場合には、アミロイドβ(Aβ)タンパク質の神経毒性のあるオリゴマーおよび原線維への自己集合が、疾患の原因として十分に裏付けされている。疾患に関連する他のミスフォールドタンパク質には、伝達性海綿状脳症(TSE)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)におけるプリオン;パーキンソン病のレビー小体におけるα−シヌクレイン沈着物、前頭側頭認知症およびピック病の神経原線維変化におけるタウ;筋委縮性側索硬化症(amylotrophic lateral sclerosis)におけるスーパーオキシドジスムターゼ;ならびにハンチントン病におけるハンチンチンが含まれる。例えば、Glennerら,J.Neurol.Sci.94:1−28,1989;Haanら,Clin.Neurol.Neurosurg.92(4):305−310,1990(非特許文献1および2)を参照されたい。
【0004】
米国特許第7,166,471号、US2006/0286672、US2005/0026165、US2008/0171341、US2006/0057671、およびUS2008/0095706(特許文献1〜6)は、例えば、ミスフォールドタンパク質、主にβシート二次構造を有する標的タンパク質、および自己凝集の特定状態にある標的タンパク質の検出に有用なペプチドを記載している。本明細書に記載されるペプチドを、そのそれぞれの内容が参照することによりそれらの全体として本明細書に組み入れられている、これらの特許文献のいずれかに記載されている方法において用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,166,471号
【特許文献2】US2006/0286672
【特許文献3】US2005/0026165
【特許文献4】US2008/0171341
【特許文献5】US2006/0057671
【特許文献6】US2008/0095706
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Glennerら,J.Neurol.Sci.94:1−28,1989
【非特許文献2】Haanら,Clin.Neurol.Neurosurg.92(4):305−310,1990
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態によれば、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブを提供するものであって、該ペプチドプローブが、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとる、または標的タンパク質に結合したら検出可能なシグナルを生成する立体構造変化を受ける。バリアント配列は、(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような、かつ/あるいは(D)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとるような、かつ/あるいは(E)該バリアント配列のβシート構造が、該参照配列のものよりも熱力学的に弱いような、かつ/あるいは(F)該バリアント配列が、該参照配列よりも高い安定性および/または低い反応性を有するような、かつ/あるいは(G)該バリアント配列が、該参照配列よりも高い親水性および/または水溶液中での溶解度を有するような、かつ/あるいは(H)該バリアント配列が、該参照配列よりもさらなるAβ結合モチーフを有するような、かつ/あるいは(I)該バリアント配列が、増大した凝集体形成能を有するような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、C末端におけるリジン残基の付加をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、N末端、C末端、両末端、あるいは該ペプチドが標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとるまたは立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、蛍光標識などの検出可能な標識で標識する。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは2つ以上の標識で標識されており、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合の該ペプチドプローブ上の2つ以上の標識間の距離は、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合の距離とは異なる。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合に検出可能な標識によって生成されるシグナルは、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合に生成されるシグナルとは異なり、例えばペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合のシグナルは、該ペプチドプローブがランダムコイル/αヘリックス立体構造を示す場合に生成されるシグナルよりも大きい。これらの実施形態のいずれかにおいて、ペプチドプローブを、エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識してよい。ペプチドプローブをエキシマーペア、例えばピレンペアなどで標識した場合、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示すと、それはエキシマーシグナルを発し得る。ペプチドプローブをFRETペア、例えばDACIA−I/NBD、マリーナブルー/NBD、ダンシル(Dansyl)/Trp、EDANS/FAMなどで標識した場合、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示すと、それは蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発し得る。ペプチドプローブをフルオロフォア/クエンチャーペア、例えばピレン/ダブシル(Dabcyl)、EDANS/ダブシル、およびFAM/ダブシルなどで標識した場合、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示すと、フルオロフォアシグナルは消光され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブ中の1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失は、参照配列の内部でなされる、あるいは参照配列のN末端またはC末端で、または両末端で、または内部および末端でなされる。
【0010】
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、アラニン残基などの酸化に耐性をもつ残基によるメチオニン残基の置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列の少なくとも3個の連続した残基のアラニン残基による置換を含む。
【0011】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失によって、2個の塩基間、例えばグルタミン酸残基とヒスチジン残基の間、グルタミン酸残基とアルギニン残基の間、ならびに/またはグルタミン酸残基とリジン残基の間に塩橋を導入する。
【0012】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失によって、ペプチドプローブ内にGXXEGモチーフ(配列番号:25)などのAβ結合モチーフを導入する。
【0013】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、バリアント配列は、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる。具体的な実施形態では、標的タンパク質はAβタンパク質であり、かつバリアント配列は、G29H、G29R、G29K、およびG33Eからなる群より選択される1個以上の置換を含む。付加的または代替的に、バリアント配列のβシート構造は、参照配列のものよりも熱力学的に弱くてもよい。具体的な実施形態では、バリアント配列は、I32S、F19S、S26D、H29D、I31D、L34D、およびL34Pからなる群より選択される1個以上の置換を含む。
【0014】
付加的または代替的に、いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列よりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有する。具体的な実施形態では、バリアント配列は、グルタミン酸残基および/またはd−アルギニン残基を導入する、1個以上のアミノ酸の付加または置換を含む。付加的または代替的に、バリアント配列を、可溶性ポリエチレングリコール成分などの親水性成分に結合させてよい。
【0015】
前述の実施形態のいずれかによれば、検出可能な標識を、ペプチドプローブの末端リジン残基の側鎖に、および/またはペプチドプローブの内部リジン残基の側鎖に結合させてよい。
【0016】
前述の実施形態のいずれかによれば、ペプチドプローブを、例えばペプチドリンカーを介して、ビオチン成分に結合させてよい。具体的な実施形態では、ペプチドリンカーは、可動性リンカー、らせん状リンカー、トロンビン部位リンカー、ねじれリンカーからなる群より選択される。より具体的な実施形態では、リンカーは、配列番号:56〜60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、ペプチドプローブを、内部リジン残基の側鎖を介してビオチン成分に結合させる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドプローブは、(i)標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体である。追加の実施形態では、そのようなペプチドプローブを、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識し、例えばエキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識する。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、エキシマーペア(例えば、2つのピレン成分)で標識されており、標的タンパク質に結合していない場合には増大したエキシマーシグナルを発し、標的タンパク質に結合している場合には増大した自己シグナルを発する。他の具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、FRETペアで標識されており、標的タンパク質に結合していない場合には増大した蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発し、標的タンパク質に結合している場合には非FRETフルオロフォアシグナルを発する。他の具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、フルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、標的タンパク質に結合していない場合には減少または消光したシグナルを発し、標的タンパク質に結合している場合にはフルオロフォアシグナルを発する。
【0018】
本明細書に記載される任意の実施形態によれば、バリアント配列は、配列番号:2〜55からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでも、またはそれからなってもよい。具体的な実施形態では、バリアント配列は、配列番号:2(ペプチド22)のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる。
【0019】
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、少なくとも1個の残基のグルタミン酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、少なくとも1個の残基のヒスチジン残基による置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、イソロイシン残基のセリン残基による置換;グルタミン酸残基のプロリン残基、グリシン残基、グルタミン残基、またはリジン残基のいずれかによる置換;フェニルアラニン残基のセリン残基による置換;ロイシン残基のプロリン残基による置換;アラニン残基のグリシン残基による置換;およびアスパラギン酸残基のアスパラギン残基による置換からなる群より選択される1個以上の置換を含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、C末端におけるリジン残基の付加を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
他の実施形態によれば、試験サンプル中の標的タンパク質を検出するための方法であって、該標的タンパク質はアミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し、(i)該サンプルを本明細書に記載される任意のペプチドプローブと接触させて、試験混合物を形成する工程;および(ii)該ペプチドプローブと存在する任意の標的タンパク質との間の任意の結合を検出する工程を含む方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、工程(ii)は、標的タンパク質に結合したらβシート立体構造を示すまたは立体構造変化を受けるペプチドプローブの蛍光標識によって生成される任意のシグナルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、工程(ii)は、複合体中に存在する任意の検出可能な標識(例えば、蛍光標識)によって生成される任意のシグナルを検出することによって、ペプチドプローブおよび標的タンパク質を含む複合体を検出することを含む。いくつかの実施形態では、複合体は不溶性複合体(例えば、アミロイドβ原線維)であり、かつ工程(ii)は、該不溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識(例えば、蛍光標識)によって生成される任意のシグナルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、複合体は可溶性複合体(例えば、アミロイドβオリゴマー)であり、かつ工程(ii)は、該可溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識(例えば、蛍光標識)によって生成される任意のシグナルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、工程(ii)の前に、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティークロマトグラフィーを含む処理によって試験混合物から複合体を分離する工程をさらに含む。
【0022】
他の実施形態によれば、アミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するための方法であって、ペプチドプローブは対象由来の生理学的サンプル中にあり、(A)該サンプルを、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体であるペプチドプローブと接触させる工程;ならびに(B)該プローブと該サンプル中に存在する任意の標的タンパク質との間の任意の会合を検出する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識する。具体的な実施形態では、ペプチドプローブをエキシマーペアで標識し、かつ工程(ii)は、任意の増大した自己シグナルまたは減少したエキシマーシグナルを検出することを含む。他の実施形態では、ペプチドプローブをFRETペアで標識し、かつ工程(ii)は、任意の増大した非FRETフルオロフォアシグナルまたは減少したFRETシグナルを検出することを含む。他の実施形態では、ペプチドプローブをフルオロフォア/クエンチャーペアで標識し、かつ工程(ii)は、任意の増大したフルオロフォアシグナルを検出することを含む。
【0023】
他の実施形態では、対象においてアミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するためのインビボ方法であって、(A)本明細書に記載される任意のペプチドプローブを該対象に投与する工程であって、該プローブは、該プローブが標的タンパク質に結合した場合にシグナルを生成する検出可能な標識で標識されている工程、および(B)該シグナルを検出する工程を含むインビボ方法を提供する。いくつかの実施形態では、イメージング技術、例えばポジトロン放出断層撮影法(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、X線撮影法、断層撮影法、蛍光透視法、核医学、光学的画像法、脳造影法、および超音波検査法などを用いて、シグナルを検出する。
【0024】
他の実施形態では、アミロイド形成疾患に罹患しているかその発症リスクを有する対象を処置する方法であって、本明細書に記載される任意のペプチドプローブを該対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、プローブを、アミロイド形成疾患に対する追加の治療剤に結合させる。
【0025】
本明細書に記載される任意の実施形態によれば、標的タンパク質は、膵島アミロイドポリペプチド前駆体タンパク質、アミロイドβタンパク質、Aβペプチド、血清アミロイドA、インスリン、アミリン、非アミロイドβ成分、プリオン、ヘモグロビン、免疫グロブリンまたはそのフラグメント、β2−ミクログロブリン、α−シヌクレイン、ロドプシン、α1−アンチキモトリプシン、クリスタリン、タウ、p53、プレセニリン、低密度リポタンパク質受容体、アポリポタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、ニューロフィラメントタンパク質、トランスサイレチン、プロカルシトニンまたはカルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、ゲルゾリン、嚢胞性線維症膜貫通調節因子、ハンチントン病タンパク質、フィブリノゲンα鎖、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、コラーゲン、β−ヘキソサミニダーゼ、およびシスタチンCタンパク質からなる群より選択されてよい。具体的な実施形態によれば、標的タンパク質はAβタンパク質であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】Aβペプチドの領域に相当するペプチドのそれぞれの末端に結合させたピレンの、該ピレン化ペプチドの溶媒環境に依存した、ピレン間距離の分布についてのインシリコ予測を図解している(左のパネル:水、右のパネル:40%TFE)。
【図1B】ペプチドがβシート立体構造である場合の、該ペプチドのN末端およびC末端に結合させたピレン成分の密接な物理的近接性を図解している。
【図1C】ペプチドがランダムコイル/αヘリックス立体構造である場合の、該ペプチドのN末端およびC末端に結合させたピレン成分間の距離を図解している。
【図2】本明細書に記載されるペプチド(配列番号:2〜13)の具体的な実施形態、ならびに蛍光標識に結合させるためにC末端に付加されたリジンを含む「野生型」Aβタンパク質のアミノ酸16−35に基づく野生型参照配列(配列番号:1)と比較した、それらのアミノ酸の付加および/または置換を示す。
【図3】ペプチドプローブ(配列番号:1)を用いて不溶性Aβ42標的タンパク質線維を検出する、インビトロの遠心分離に基づく相互作用アッセイの結果を図解している。
【図4】図4Aおよび図4Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:4)を用いて可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのサイズ排除クロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマー(oligolmer)に結合することを意味する、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している結果を図4Bに図解する。図14に示されているように、配列番号:1の標識ペプチドプローブに関して、同様の結果が得られた。
【図5】図5Aおよび図5Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:2)を用いてビオチン標識可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのアフィニティークロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマーに結合することを意味する、高分子量オリゴマーの存在下で標識ペプチドプローブのみが捕捉物質中に検出されることを示している結果を図5Bに図解する。図15に示されているように、配列番号:1の標識ペプチドプローブに関して、同様の結果が得られた。
【図6】図6Aは、参照ペプチド(配列番号:1)と比較した、本明細書に記載されるペプチド(ペプチド22;配列番号:2)の溶媒誘導による立体構造変化に伴う最大シグナル獲得の測定を図解している。図6Bは、前記参照ペプチドのものと比較した、線維状アミロイド標的タンパク質の存在下における前記ペプチドの立体構造変化に伴う最大シグナル獲得の測定結果を報告している。
【図7】円偏光二色性分光偏光測定(CD)分析によって決定されるペプチド38(配列番号:3)の二次構造に対する、pHおよび塩濃度の効果を図解している。
【図8】CD分析によって決定されるペプチド38(配列番号:3)の二次構造に対する、Aβ42オリゴマー(標的タンパク質)の相互作用の効果を図解している。
【図9】図9Aおよび図9Bは、ペプチド45(配列番号:4)のピレン蛍光特性に対する、Aβ42オリゴマー(標的タンパク質)の相互作用の効果を図解している。図9Aは、ペプチド−標的複合体の蛍光発光を示している。図9Bは、ペプチド単独の蛍光発光を示している。
【図10】異なる基質に結合すると生じる、本明細書に記載されるペプチドプローブの立体構造変化を図解している。最上段パネル:それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ(例えば、配列番号:1)は、40%TFE中でAβ線維に結合したら、増大したピレンエキシマーシグナルによって検出される、増加したβシート立体構造をとる。下段パネルA:それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ(例えば、ペプチド22;配列番号:2)は、水中でAβオリゴマーに結合したら、増大したピレンモノマー(「自己」)シグナルによって検出される、より規則性の低い(例えば、減少したβシート)立体構造をとる。下段パネルB:それぞれの末端においてFRET標識で標識されたペプチドプローブは、水中でAβオリゴマーに結合したら、FRETシグナルによって検出される、増加したβシート立体構造をとる。ペプチドプローブAD293(配列番号:52)、AD292(配列番号:53)、AD291(配列番号:54)、およびAD290(配列番号:55)は、このタイプの立体構造変化と一致した蛍光挙動を示している。
【図11】可溶性Aβオリゴマーの非存在下(左)および存在下(右)での、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチド22(配列番号:2)に関する生の蛍光スペクトルを図解している。ペプチド22の蛍光は、オリゴマーの非存在下では長期間安定(モノマーまたはエキシマーの蛍光に増大なし)であるが、可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合には、ピレンモノマーシグナルの増大を示す。(実線=時間0;破線=3時間;点線=18時間)。
【図12】可溶性Aβオリゴマーに対するペプチド22(配列番号:2)の特異性を図解している。最初の2つのパネルは、ペプチド22を2つの異なる方法で調製された可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合のピレンモノマーシグナルの用量依存的増大を示している。次の2つのパネルは、ペプチド22をAβ40モノマーおよびAβ42モノマーとインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。次のパネルは、ペプチド22をAβ40線維とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示しており、そして次のパネルは、ペプチド22をAβ42線維とインキュベートした場合のモノマー蛍光のいくらかの用量依存的増大を示している。最後の2つのパネルは、ペプチド22をコントロール溶液(BSAまたは脱水酵素)とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。データは、経時的なモノマー蛍光領域の自然対数(Ln)を示している。(点線=0.3uMの基質;破線=0.1uM;一点鎖線=0.03uM;実線=p22単独)
【図13A】可溶性Aβ42オリゴマーと相互作用すると生じる、ペプチド22(配列番号:2)の立体構造変化を図解している。図13Aは、エキシマーからモノマーの蛍光へシフトする、可溶性Aβ42オリゴマーと相互作用すると生じるペプチド22の蛍光の変化を示している。(実線−Aβ42オリゴマーなし;一点鎖線−30nNのAβ42オリゴマー;大きな破線−100nNのAβ42オリゴマー;細かい点線−300nNのAβ42オリゴマー)。
【図13B】可溶性Aβ42オリゴマーと相互作用すると生じる、ペプチド22(配列番号:2)の立体構造変化を図解している。図13Bは、ピレン蛍光の変化によって検出可能である、Aβ42オリゴマーの存在下での立体構造変化を検出しない、CD分析によって決定されるペプチド22の二次構造を示している。(実線−ペプチド22;一点鎖線−Aβ42オリゴマー;大きな破線−個々のサンプルの結果の算術的合計;細かい点線−ペプチド22とAβ42オリゴマーの混合物)。
【図14】図14Aおよび図14Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:1)を用いて可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのサイズ排除クロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマーに結合することを意味する、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している結果を図14Bに図解する。
【図15】図15Aおよび図15Bは、標識ペプチドプローブ(配列番号:1)を用いてビオチン標識可溶性Aβ42標的タンパク質オリゴマーを検出する、インビトロのアフィニティークロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイを図解しており、該ペプチドプローブが該標的タンパク質オリゴマーに結合することを意味する、高分子量オリゴマーの存在下で標識ペプチドプローブのみが捕捉物質中に検出されることを示している結果を図15Bに図解する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
1.定義
本明細書において使用するとき、単数形「a」、「an」および「the」は、単数形のみを表すことが明確に記述されていない限り、単数形および複数形の両方を表す。
【0028】
「約」という用語、および範囲の使用は、一般に、約という用語によって条件を付されるかどうかにかかわらず、包含される数が本明細書に示される正確な数に限定されないことを意味し、かつ本発明の範囲から逸脱するものではないが、引用された範囲内に実質的にあることを表すことを意図する。本明細書において使用するとき、「約」は、当業者によって理解され、かつそれが用いられる文脈上である程度変化する。それが用いられる文脈を仮定して、当業者にとって明確でない用語の使用が存在する場合、「約」は、特定の用語の最大でプラスマイナス10%まで意味する。
【0029】
本明細書において使用するとき、「対象」とは、ヒトおよび家畜、例えばネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ等を含む、検出または治療的処置を必要としている任意の動物を表す。「対象」には、マウスおよび他の小型哺乳類を含む、研究の場で用いられる動物も含まれる。典型的な対象は、病状、疾患、もしくは障害のリスクを有する可能性があるか、そのような病状に罹患していることが疑わしい可能性があるか、あるいは、特定の病状、例えば標的タンパク質に関連する病状、疾患、または障害などに関するリスクまたは状態を判定することを望んでいる可能性がある。本明細書において使用するとき、「治療的」処置には、既存の病状を処置するための、対象が発症するリスクがある病状を予防するための、または健康維持のための治療剤の投与が含まれる。
【0030】
本明細書において使用するとき、「立体構造」とは、タンパク質またはペプチドの特定の二次構造、例えばαヘリックス、ランダムコイル、またはβシート二次構造を表す。「立体構造変化」とは、一方の立体構造からもう一方への変化である。
【0031】
「プリオン」とは、プリオンに基づく疾患に関連するタンパク質を表す。「PrPタンパク質」、「PrP」等は、本明細書において代替可能に用いられ、ヒトおよび動物において疾患(例えば、海綿状脳症)を引き起こすことが知られている感染性粒子形態(「PrPSc」)、ならびに適切な条件下で感染性PrPSc形態に変換する非感染性形態(「PrPC」)の両方を意味する。プリオン粒子は、排他的でない場合、PrP遺伝子によってコードされるPrPSc分子から大部分は構成されている。本明細書において使用するとき、「プリオン」には、用いられる任意の動物において、特にヒトおよび家畜において、これらの疾患または他のもののすべてまたはいずれかを引き起こす、すべての形態のプリオンが含まれる。
【0032】
本明細書において記載するとき、「アミロイド形成疾患」とは、体内にアミロイドプラークまたはアミロイド沈着物が形成される疾患である。アミロイドの形成は、多くの障害、例えば糖尿病、AD、スクレイピー、BSE、CJD、慢性消耗病(CWD)、関連伝達性海綿状脳症(TSE)、および本明細書に開示される他の疾患において見られる。しかしながら、本発明は、アミロイド形成疾患に限定されるものではなく、タンパク質の特定の立体構造または凝集状態に関連する任意の疾患または病状の診断および処置に有用である。
【0033】
「Aβタンパク質」という用語は、Aβ40およびAβ42を含む、すべての形態のAβタンパク質を表すために本明細書において用いられる。「Aβ」タンパク質には、凝集体を形成する傾向の増大を示すことが知られている天然に存在する変異体を含む、すべての天然に存在する変異体も含まれる。そのような変異体は、参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている、例えばMurakamiら,J.Biol.Chem.46:46179−46187,2003に開示されているものなど、当該技術分野において公知である。
【0034】
「標的タンパク質」は、例えば立体構造変化し得るタンパク質など、本発明による標的化、同定の検出に適した任意のタンパク質を表すために本明細書において用いられる。標的タンパク質は、本明細書に記載されるβシート立体構造を特徴とする疾患状態に関連し得る。標的タンパク質は、天然に存在するタンパク質であってよい。
【0035】
「天然型」または「天然に存在する」タンパク質とは、天然に存在する供給源から回収されるタンパク質を表す。天然型タンパク質は、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、アシル化、および切断を含むがこれらに限定されない、翻訳後修飾を含む。「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」は、代替可能に用いられる。
【0036】
「ペプチド模倣体(peptide mimic)」とは、ペプチド模倣物(peptidomimic)またはペプチド模倣薬(peptidomimetic)とも呼ばれ、ペプチドの特性を模倣する任意の分子を表す。ペプチド模倣体には、特定のペプチドの折り畳みおよび/または二次構造を模倣するポリマー分子、ならびにペプチドの生物学的または化学的特性を模倣するものが含まれる。ペプチド模倣体は、アミノ酸骨格を有していてよく、かつ天然でない化学物質(ehemical)またはアミノ酸置換を含有していてよい。あるいは、ペプチド模倣体は、種々の化学的骨格、例えば3−ペプチド、アントラニルアミドオリゴマー、オリゴ(m−フェニレンエチニレン)、オリゴウレア(oligourea)、オリゴピノリノン(oligopynolinone)、アザチド(azatide)、およびN−置換グリシンオリゴマーなどを有していてよい。ペプチド模倣体は、プロテアーゼに対する耐性などの種々の化学的特性を有していてよいが、一方で、ペプチドの折り畳みおよびペプチド−ペプチド相互作用(例えば、水素結合を介した相互作用、等々を含む)などのペプチド特性を保持する。任意の適切なペプチド模倣体を本発明において用いることができ、かつそれにはそれぞれが参照することによりそれらの全体として本明細書によって組み入れられている、Chongsiriwatana,N.P.ら,Proc Natl Acad Sci USA 2008,105,(8),2794−9;Kirshenbaum,K.ら,Current Opinion in Structural Biology 1999,9,(4),530−535;Lee,B.c.ら,Journal of the American Chemical Society 2005,127,(31),10999−11009に記載されているように設計および/または構築されたものが含まれてよい。
【0037】
2種のポリペプチド間の「類似性」は、一方のポリペプチドのアミノ酸配列を第二のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。一方のポリペプチドのアミノ酸は、それが同一または保存的アミノ酸置換である場合、第二のポリペプチドの対応するアミノ酸に類似している。保存的置換には、Dayhoff,M.O.編,The Atlas of Protein Sequence and Structure 5,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.(1978),およびArgos,P.(1989)EMBO J.8:779−785に記載されているものが含まれる。例えば、以下の群:
−Ala,Pro,Gly,Gln,Asn,Ser,Thr:
−Cys,Ser,Tyr,Thr;
−Val,Ile,Leu,Met,Ala,Phe;
−Lys,Arg,His;
−Phe,Tyr,Trp,His;および
−Asp,Glu
のうちの1群に属するアミノ酸は、保存的変化または置換を示す。
【0038】
「相同性」、「のホモログ」、「相同な」、「同一性」、または「類似性」とは、2つのペプチド間の配列類似性を表し、同一性はより厳密な比較である。比較のために整列させ得るそれぞれの配列における位置を比較することによって、相同性および同一性を決定することができる。比較配列における位置が同じアミノ酸によって占められている場合、そのとき分子はその位置において同一である。アミノ酸配列の同一性の程度は、該アミノ酸配列によって共有される位置における同一アミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の相同性または類似性の程度は、該アミノ酸によって共有される位置における、すなわち構造的に関連したアミノ酸の数の関数である。「関連しない」または「相同でない」配列は、本明細書に記載される配列の1つと10%以下の同一性を共有する。関連配列は、10%を上回る配列同一性、例えば少なくとも約15%の配列同一性、少なくとも約20%の配列同一性、少なくとも約30%の配列同一性、少なくとも約40%の配列同一性、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する。
【0039】
「同一性パーセント」という用語は、2つのアミノ酸配列間の配列同一性を表す。比較のために整列させたそれぞれの配列における位置を比較することによって、同一性を決定することができる。1組の比較配列における等価位置が、同じ位置でのもう一方における同じアミノ酸によって占められている場合、そのとき分子はその位置において同一であり;等価部位が同じまたは類似アミノ酸残基(例えば、ステアリン(stearic)および/または電子的性質が類似した)によって占められている場合、そのとき分子をその位置において相同である(類似している)と呼ぶことができる。相同性、類似性、または同一性のパーセンテージとしての表現は、比較配列によって共有される位置における同一または類似アミノ酸の数の関数を表す。FASTA、BLAST、またはENTREZを含む、種々のアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムを用いることができる。FASTAおよびBLASTは、GCG配列分析パッケージ(ウィスコンシン大学,マディソン,ウィスコンシン州)の一部として入手可能であり、例えばデフォルト設定で使用することができる。ENTREZは、国立医学図書館の国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NIH,ベセスダ,メリーランド州)を介して入手可能である。一実施形態では、例えばそれぞれのアミノ酸のギャップに、それが該2つの配列間のただ1つのアミノ酸ミスマッチであるかのように負荷をかける、ギャップウェイト1を用いたGCGプログラムによって、2つの配列の同一性パーセントを決定することができる。配列同一性を決定するための他の技術は、当該技術分野において周知であり、かつ記載されている。
【0040】
2.標的タンパク質および疾患
特定の立体構造または自己凝集状態をとる場合に、ヒトまたは動物の疾患に関連するタンパク質は、当該技術分野において公知である。そのような疾患の例には、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)を含むアミロイド形成疾患が含まれる。本明細書において使用するとき、「アミロイド形成疾患」とは、体内にアミロイドプラークまたはアミロイド沈着物が形成される疾患である。アミロイドの形成は、多くの障害、例えば糖尿病、AD、スクレイピー、牛海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、慢性消耗病(CWD)、関連伝達性海綿状脳症(TSE)などにおいて見られる。
【0041】
様々な疾患が、特定の構造形態をとるタンパク質(例えば、「ミスフォールドタンパク質」または自己凝集タンパク質)に関連しているが、異なる構造形態をとる該タンパク質(例えば、「正常タンパク質」)は無害である。したがって、これらの病状に関して、βシート立体構造は、疾患の検出のための標的構造状態であり得、一方で、αヘリックスおよび/またはランダムコイル立体構造は、疾患がないことを確認するためのまたは疾患の進行状態がないことを同定するための標的構造状態であり得る。多くの場合、正常タンパク質は可溶性であり、一方で、ミスフォールドタンパク質は不溶性凝集体を形成する。
【0042】
下記は、特定のタンパク質構造状態に関連する疾患の限定されない一覧であり、その後に関与するタンパク質が挿入されて続く;アルツハイマー病(APP、Aβペプチド、α1−アンチキモトリプシン、タウ、非Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2、アポE);プリオン病、CJD、スクレイピー、およびBSE(PrPSc);ALS(SODおよびニューロフィラメント);ピック病(ピック小体);パーキンソン病(レビー小体中のα−シヌクレイン);前頭側頭認知症(原線維中のタウ);II型糖尿病(アミリン);多発性骨髄腫−形質細胞疾患(IgGのL鎖);家族性アミロイド多発ニューロパチー(トランスサイレチン);甲状腺髄様癌(プロカルシトニン);慢性腎不全(β2−ミクログロブリン);鬱血性心不全(心房性ナトリウム利尿因子);老人性心アミロイドーシスおよび全身性アミロイドーシス(トランスサイレチン);慢性炎症(血清アミロイドA);アテローム性動脈硬化症(アポA1);家族性アミロイドーシス(ゲルゾリン);ならびにハンチントン病(ハンチンチン)。また、伝達性海綿状脳症(TSE)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)におけるプリオン;ならびに筋委縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ。例えば、Glennerら,J.Neurol.Sci.94:1−28,1989;Haanら,Clin.Neurol.Neurosurg.92(4):305−310,1990を参照されたい。
【0043】
しばしば、これらの不溶性タンパク質は、βプリーツシート立体構造という共通の特徴を有する分岐していない原線維から構成される凝集体を形成する。CNSにおいて、アミロイドは、脳血管および髄膜血管(脳血管沈着物)に、ならびに脳実質(プラーク)に存在し得る。ヒトおよび動物モデルにおける神経病理学的研究により、アミロイド沈着物の近位にある細胞は、その正常な機能を阻害されることが示されている。例えば、Mandybur,Acta Neuropathol.78:329−331,1989;Kawaiら,Brain Res.623:142−146,1993;Martinら,Am.J.Pathol.145:1348−1381,1994;Kalariaら,Neuroreport 6:477−80,1995;Masliahら,J.Neurosci.16:5795−5811,1996を参照されたい。他の研究により、アミロイド原線維は神経変性を実際に引き起こし得ることがさらに示されている。例えば、Lendonら,J.Am.Med.Assoc.277:825−831,1997;Yankner,Nat.Med.2:850−852,1996;Selkoe,J.Biol.Chem.271:18295−18298,1996;Hardy,Trends Neurosci.20:154−159,1997を参照されたい。
【0044】
タンパク質の誤った折り畳みをもたらす根本的な分子メカニズムは十分に理解されていないが、前述のすべての神経障害に共通の特徴は、集合してβシート構造を形成する原線維の形成である。原線維形成およびそれに続く、プラーク沈着物を伴うβシート二次構造の形成は、核形成段階を伴う複雑なメカニズムを介して起こり、ここで、タンパク質のモノマーが会合して原線維を形成し、その後にそれぞれの末端での原線維の伸長が続く。したがって、原線維形成を阻害し得るペプチド、タンパク質、または抗体プローブは、疾患の進行を阻止し、ゆえに治療上重要であろう。さらに、病的タンパク質の特定の自己会合状態と会合し得る薬剤は、ミスフォールドタンパク質の特定の形態を検出および定量化するための有用な診断ツールであり、ならびに疾患の進行についての洞察を提供する。したがって、自己凝集の特定状態にある特定のタンパク質と会合し得る選択性の高いペプチド薬剤は、検出用薬剤として、ならびに治療的用途のためのどちらでも有用である。
【0045】
本発明は、疾患に関連するミスフォールド標的タンパク質を検出するためのペプチドプローブおよび方法を提供する。そのようなミスフォールドタンパク質は、βシート二次構造または立体構造を示しおよび増加させ得、かつ不溶性の凝集体、原線維、またはそのような疾患の特徴であるプラークなど沈着物を形成し得る。
【0046】
(i)アミロイド形成疾患
アミロイドβタンパク質(Aβ)は、アミロイド形成疾患、例えばアルツハイマー病(AD)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、および脳血管疾患(CVD)などにおける主要な原因物質である。可溶性Aβは、健常な個体の血漿中および脳脊髄液中に見られ、疾患は、罹患個体に見られるプラークまたは凝集体を形成する不溶性原線維と相関すると考えられる。
【0047】
Aβは、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)をいくつかの部位のいずれかで切断することによって生成され、いくつかの形態のAβが生じる。アミロイドプラークに見られる2種の豊富な形態は、APPのカルボキシ末端の代替的切断によって産生される、Aβ1−40(Aβ40とも呼ばれる)およびAβ1−42(Aβ42とも呼ばれる)である。例えば、Selkoeら,PNAS USA 85:7341−7345,1988;Selkoe,Trends Neurosci.16:403−409,1993を参照されたい。Aβ40およびAβ42は同一のアミノ酸配列を有し、Aβ42は2個のさらなる残基(IleとAla)およびそのC末端を有する。Aβ40はより豊富であるが、Aβ42はより原線維形成性であり、かつADおよびCAAの両方のアミロイド沈着物において2つのうちの主要な成分である。例えば、Wurthら,J.Mol.Biol.319:1279−90(2002)を参照されたい。前述のように、天然に存在するAβタンパク質のすべての変異体は、本発明との関連で、標的タンパク質であり得、または参照配列の基礎としての役割を果たし得る。
【0048】
高い血漿Aβ42レベルは、ADに関連しており、かつADに関する高いリスクにも関連している。また、Aβ42/Aβ40レベルの比率の大きさは、AD、CAA、および老年期うつ病(LLMD)など他の病状にとって臨床上重要である。例えば、Pomaraら,Neurochem.Res.(2006)を参照されたい。血漿中のAβ42およびAβ40レベルは、典型的にモノクローナル抗体を用いて測定される。前述のAD症例におけるアミロイド沈着物に加えて、ほとんどのAD症例は、血管壁におけるアミロイド沈着も伴う。例えば、Vinters H.V.,Stroke Mar−Apr;18(2):311−324,1987;Itoh Y.ら,Neurosci.Lett.155(2):144−147,Jun.11,1993を参照されたい。
【0049】
(ii)プリオン病および伝達性海綿状脳症
プリオンは、ヒトおよび動物において中枢神経系の海綿状脳症を引き起こす感染性病原体である。潜在的なプリオン前駆体は、PrP27−30と呼ばれるタンパク質であり、感染脳内でプラークとして見られる棒状フィラメントに重合する(凝集する)28キロダルトンの疎水性糖タンパク質である。正常型プリオンタンパク質(PrPC)は、大部分はαヘリックスおよびコイルドループ構造を有する細胞表面メタロ−糖タンパク質である。異常型(PrPSc)は、プロテアーゼに耐性のある配座異性体であり、主にβシートを含有する二次構造を有する。二次構造におけるこの立体構造変化が、プリオン病の過程における凝集および最終的な神経毒性のあるプラーク沈着につながると考えられている。
【0050】
伝達性海綿状脳症または「TSE]としても知られるプリオン関連疾患には、ヒツジおよびヤギのスクレイピー、シカおよびエルクの慢性消耗病、ならびにウシの牛海綿状脳症(BSE)が含まれる。例えば、WilesmithおよびWells,Microbiol.Immunol.172:21−38,1991を参照されたい。4つのヒトのプリオン病:(1)クールー、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)が同定されている。例えば、Gajdusek,D.C.,Science 197:943−969,1977;Medoriら,N.Engl.J.Med.326:444−449,1992を参照されたい。TSEは、致死性の神経変性疾患である。これらの疾患は、宿主によってコードされるプロテアーゼ感受性の正常型プリオンタンパク質(PrP−sen)のプロテイナーゼK耐性の異常型アイソフォーム(PrP−res)の形成および脳内での蓄積を特徴とする。PrP−resは、PrP−senをより高いβシート含有量を有するPrP−res分子凝集体へ変換させる立体構造変化を伴う翻訳後修飾過程によって、PrP−senから形成される。これらのPrP−res高分子凝集体の形成は、PrP−resのアミロイド沈着物が脳内で形成されている、最終的に「海綿状」(空洞だらけ)になる、TSE媒介性脳病変に密接に関連している。
【0051】
細胞タンパク質PrP−senは、ヒトにおいて第20染色体上に位置する遺伝子によってコードされるシアロ糖タンパク質である。PrP遺伝子は、神経組織および神経以外の組織の両方で発現しており、その最高濃度のmRNAはニューロンで見られる。Prp遺伝子の配列は、参照することにより本明細書に組み入れられている、米国特許第5,565,186号に開示されている。
【0052】
3.立体構造的に動的なペプチド
本明細書において、例えば、疾患に関連し得るミスフォールドタンパク質またはβシート二次構造を有するタンパク質を含む特定の立体構造を有する標的タンパク質を検出するのに有用な、立体構造的に動的なペプチドを記載する。前記ペプチドは、そのような標的タンパク質に関連する疾患またはそのリスクを診断する方法、およびそのような標的タンパク質に関連する疾患を処置する方法においても有用である。
【0053】
前記ペプチドは、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得るまたは示す標的タンパク質に対するプローブとして有用である。前記ペプチドは、ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造のどちらもとり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとる。他の実施形態では、ペプチドは、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い(例えば、減少したβシート)立体構造をとる。
【0054】
Aβタンパク質配列(配列番号:1)のアミノ酸残基16−35を含むペプチドプローブは、以前に記載されている。そのようなプローブは、分子内βシート形成およびタンパク質凝集の両方に関与する疎水性コアを含有する。この「野生型」ペプチドは、有機溶媒中での線維に基づくアッセイにおいては予想どおりに機能を果たすが(例えば、それは、基質の非存在下において40%TFE中でαヘリックス構造を有し、Aβ原線維基質を導入するとβシート構造への移行を受ける)、他の特性のために、それはインビトロアッセイにおける使用にとっての理想に満たないものとなっている。例えば、それは水溶液中で低い溶解度を有し、かつそのβシート構造は、熱力学的に強く、立体構造変化に耐性がある。したがって、インビトロアッセイおよびインビボ用途における性能を向上させるように、より望ましい特性を備えたペプチドプローブが設計されている。
【0055】
本明細書においてより詳細に記載するように、いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、バリアント配列を有する。
【0056】
付加的または代替的に(特に、上記の実施形態(C)に関して)、ペプチドプローブは、(D)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造をとるような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、バリアント配列を有していてよい。いくつかのより特定の実施形態では、(E)バリアント配列のβシート構造は、参照配列からなるプローブのものよりも熱力学的に弱い。
【0057】
付加的または代替的に、ペプチドプローブは、(F)該バリアント配列が、該参照配列からなるプローブよりも増大した安定性および/または減少した反応性を有するような、(G)該バリアント配列が、該参照配列からなるプローブよりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有するような、かつ/あるいは(H)該バリアント配列が、該参照配列からなるプローブよりもさらなるAβ結合モチーフを有するような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、バリアント配列を有する。
【0058】
付加的または代替的に、該バリアント配列は、(I)該バリアント配列が、増大した凝集体形成能を有するような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。より特定の態様では、バリアント配列は、天然に存在する変異体の切断型を含んでいてよい。
【0059】
前記ペプチドを使用およびスクリーニングするための方法およびキットも記載する。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、立体構造依存的様式で標的タンパク質に結合し、かつ例えばβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、主にランダムコイル(構造化されていない)またはαヘリックス立体構造からβシートリッチな立体構造への構造変換を受ける。これらの実施形態では、ペプチドは、一般に、より規則性の低い立体構造からより規則性の高い立体構造へ変化する。これらのペプチドにレポーター成分を結合させることによって、立体構造変換をモニタリングするための単純なメカニズム(例えば、蛍光標識ペプチドを用いた蛍光スペクトルの変化を介して)を提供することができる。
【0061】
他の実施形態によれば、ペプチドは、立体構造依存的様式で標的タンパク質に結合し、かつβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、主にβシートリッチな立体構造からより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造への、あるいは増加したランダムコイル(構造化されていない)またはαヘリックス立体構造への構造変換を受ける。これらの実施形態では、ペプチドは、一般に、より規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化する。これらのペプチドにレポーター成分を結合させることによって、立体構造変換をモニタリングするための単純なメカニズム(例えば、蛍光標識ペプチドを用いた蛍光スペクトルの変化を介して)を提供することができる。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドを、種々のアッセイ条件(例えば、水性対有機溶媒中、種々のpHおよび/または塩条件下、等々における使用のための)におけるその性能を向上させるように設計する(例えば、特定のアミノ酸の欠失、置換、または付加の選択によって)。
【0063】
本発明の特定の実施形態を記載および開示する前に、本明細書に記載される特定の材料、方法、および組成物は、例としてのみ提示されるものであって、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本明細書に用いられる技術的および科学的用語は、別様に定義されていない限り、本発明が関連する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。参照がなされている公知の方法論を記述している刊行物および他の資料は、まるで完全に記述しているかのように、参照することによりそれらの全体として本明細書に組み入れられている。
【0064】
本明細書に記載されるペプチドを、直結合成または組換えなどの任意の方法によって作製することができる。組換えDNA技術の一般原理を記述している標準的な参照文献には、Sambrook,J.ら,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Planview,N.Y.;McPherson,M.J.編(1991)Directed Mutagenesis:A Practical Approach,IRL Press,Oxford;Jones,J.(1992)Amino Acid and Peptide Synthesis,Oxford Science Publications,Oxford;Austen,B.M.およびWestwood,O.M.R.(1991)Protein Targeting and Secretion,IRL Press,Oxfordが含まれる。
【0065】
当業者に公知の任意の適切な材料および/または方法を、本発明を実施するのに利用することができる。しかしながら、例示的な材料および方法を記載する。以下の記載および実施例において参照がなされている材料、試薬等は、別様に言及されていない限り、商業的供給源から入手可能である。
【0066】
前述のように、本明細書に記載される立体構造的に動的なペプチドは、例えば、疾患に関連し得るミスフォールドタンパク質またはβシート二次構造を有するタンパク質を含む、特定の立体構造を有する標的タンパク質を検出するのに有用である。例えば、前記ペプチドは、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得るまたは示す標的タンパク質に対するプローブとして有用である。前記ペプチドは、診断的および治療的手法において、ならびに薬剤候補をスクリーニングする方法においても有用であり得る。便宜上、他の状況におけるその有用性を損なうことなく、本明細書では前記ペプチドを「プローブ」と呼ぶ。
【0067】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含むものであって、該参照配列は、例えばαヘリックス/ランダムコイル立体構造からβシート立体構造へのシフトなど、立体構造シフトを受ける標的タンパク質のアミノ酸配列からなる。本明細書では、そのような領域を、標的タンパク質の「βシート形成領域」と呼ぶ。例えば、Aβタンパク質のアミノ酸16−35は、βシート形成領域を含むことが知られている。したがって、参照配列は、Aβタンパク質のアミノ酸16−35または17−35を含んでいてよい。したがって、ペプチドのアミノ酸配列を、既存の配列および立体構造情報に基づいて標的タンパク質から設計してよく、あるいは実験的に容易に決定してもよい。いくつかの実施形態では、参照配列は、標的タンパク質の天然に存在する変異体、例えばβシート立体構造をとるかつ/あるいは凝集体を形成する傾向の増大を示すことが知られている変異体のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる。Aβ変異体の例は、Murakami(前記参照)に記載されており、置換A21G、E22G、E22Q、E22K、およびD23Nを含む。
【0068】
参照配列は、標的タンパク質の最小数量の隣接アミノ酸、例えば標的タンパク質配列の少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、または少なくとも約50個の隣接アミノ酸、あるいはこれらの数の間の任意の範囲、例えば標的タンパク質配列の約10〜約25個の隣接アミノ酸を含んでいてよい。
【0069】
ペプチドプローブ自体は、少なくとも約5個のアミノ酸を含み、かつ長さが最大約300〜約400個のアミノ酸、またはそれ以上、あるいはその間の任意の大きさ、例えば約10個のアミノ酸〜約50個のアミノ酸を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、約5〜約100個、約10〜約50個、約10〜約25個、約15〜約25個、または約20〜約25個のアミノ酸からなる。追加の実施形態では、ペプチドは、約20個のアミノ酸、約21個のアミノ酸、約22個のアミノ酸、約23個のアミノ酸、約24個のアミノ酸、または約25個のアミノ酸を含む、約17〜約34個のアミノ酸を含む。異なる長さのペプチドは、標的タンパク質に対する異なる程度の相互作用および結合を示し得、かつ適切な長さは、本明細書における教示によって導かれた当業者によって選択され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、標的タンパク質のものに類似した構造変化を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、ペプチドは、ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとる。他の実施形態では、ペプチドプローブは、βシート立体構造で提供され、かつβシート立体構造の標的タンパク質と接触、結合、および/または相互作用すると、より規則性の低いまたは減少したβシート立体構造/増加したαヘリックス立体構造への立体構造変化を受ける。
【0071】
ペプチドは、約0.05〜約0.5の間のイオン強度を有し(典型的に、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩化物塩で調製した場合)、例えば約5〜約8の間など、約4〜約10の間のpHを有する水溶液などの溶液中に提供され得る。溶液は、例えば約45容量%〜約60容量%の間など、約30容量%〜約70容量%の間の量で、トリフルオロエタノールなどの水混和性の有機物質も含んでいてよい。溶媒を、適切な緩衝系、例えば酢酸塩/酢酸、トリス、またはリン酸塩などを用いて調製してよい。
【0072】
以下により詳細に論じるように、本明細書に開示されるペプチドプローブを用いて、インビトロまたはインビボで標的タンパク質を検出することができる。例えば、その全内容が参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている、US2008/0095706(米国特許出願第11/828,953号に相当)に記載されている方法によれば、前記ペプチドプローブは、治療剤を同定するのにも有用である。
【0073】
(i)バリアント配列
前述のように、いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、該参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、バリアント配列からなる。前述のように、参照配列は、標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を検出するためのアッセイにおけるペプチドの性能を向上させるように、バリアント配列を設計する。例えば、いくつかの実施形態では、バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるように、バリアントを設計する。付加的または代替的に、ランダムコイル/αヘリックス立体構造におけるバリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造におけるバリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なる(例えば、より大きい)ように、バリアント配列を設計する。付加的または代替的に、バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるように、バリアント配列を設計する。付加的または代替的に、バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造をとり、かつ参照配列のものよりも熱力学的に弱いβシート構造を有し得るように、バリアント配列を設計する。付加的または代替的に、バリアント配列が、増大した安定性および/または減少した反応性、増大した親水性および/または溶解度、ならびに/あるいはさらなるAβ結合モチーフを有するように、バリアント配列を設計してよい。付加的または代替的に、バリアント配列が増強した凝集体形成能を有するように、バリアント配列は、参照配列と比較して1個以上のアミノ酸の欠失を含んでいてよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、例えばペプチドのランダム/αヘリックス立体構造に付随する任意のシグナル(例えば、バックグラウンドシグナル)とペプチドのβシート立体構造に付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させることによって、標的タンパク質に結合していないペプチドに付随する任意のシグナルと標的タンパク質に結合しているペプチドに付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させるように、バリアント配列を設計する。これは、例えばペプチドのランダム/αヘリックス立体構造に付随する任意のバックグラウンドシグナルを低下させることによって、かつ/あるいはペプチドのβシート立体構造に付随するシグナルを増大させることによって、影響を受け得る。また、βシート立体構造で提供され、かつ標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造/増加したαヘリックス立体構造をとる、ペプチドプローブにも、(プローブのβシート立体構造にはバックグラウンドシグナルが付随するであろうが、)これらの同じ設計論理は有用である。
【0075】
例えば、標識成分が互いに物理的に近接している場合、例えばペプチドがN末端およびC末端が物理的に近接するβシート立体構造を示す場合に生じる該成分間での相互作用によって、シグナルが生成されるように、ペプチドプローブをそのN末端およびC末端のそれぞれにおいてまたはそれぞれの付近で標識してよい。そのようなシグナルは、ペプチドのβシート立体構造に付随するであろう。同様に、ペプチドがβシート立体構造である場合に標識が相互作用してシグナルを発するように、ペプチドがβシート立体構造である場合には物理的に近接しておりランダムコイル/αヘリックス立体構造である場合には離れている任意の1つ以上の部位において、ペプチドを標識してよい。βシート立体構造に付随するシグナルは、例えば程度がより大きいことおよび/あるいは周波数または波長が異なることなどによって、ランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随するいかなるシグナルとも異なりうる。
【0076】
ペプチドプローブが、標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造からより規則性の高い立体構造へ変化する実施形態では、バックグラウンドシグナルは、例えばランダムコイル/αヘリックス立体構造によって、標識がシグナルを生成するのに十分な物理的近さとなった場合、かつ/あるいはペプチドプローブが、標的タンパク質との接触、結合、または相互作用を伴わないβシート立体構造をとる場合、溶液中で生じ得るなどして観察され得る。ペプチドのランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随するバックグラウンドシグナルは、例えばランダムコイル/αヘリックス立体構造を安定化させて、標的タンパク質との接触、結合、または相互作用を伴わないβシート立体構造の形成を最小限に抑えることによって、低下し得る。例えば、結合していないペプチドプローブのランダムコイル/αヘリックス立体構造が安定性の増大を示すように、ペプチドプローブを設計してよい。例えば、αヘリックス形成残基(例えば、アラニン)および/または塩橋形成残基(例えば、ヒスチジンおよびグルタミン酸)による置換によって、結合していないペプチドプローブのランダムコイル/αヘリックス立体構造を安定化させることができる。そのような安定性の増大は、標識がシグナルを生成するのに物理的に十分近接する可能性を減らすことによって、バックグラウンドシグナルを減少させる。したがって、いくつかの実施形態では、ペプチドのバリアント配列は、ランダムコイル/αヘリックス立体構造の安定性を増大させるアミノ酸の置換、付加、および/または欠失を含む。
【0077】
付加的または代替的に、ペプチドがランダムコイル/αヘリックス立体構造である場合のN末端およびC末端の間(または標識部位の間)の距離を増大させることによって、ランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随する任意のシグナルは減少するであろう。付加的または代替的に、例えばペプチドがβシート立体構造である場合のN末端およびC末端の間(または標識部位の間)の距離を減少させることによって、ペプチドのβシート立体構造に付随するシグナルを増大することができる。ランダムコイル/αヘリックス立体構造対βシート立体構造のペプチドの末端間(または標識部位の間)の距離を、標準的タンパク質モデリング法を用いたインシリコでモデル化することができる。
【0078】
下記の考察では、Aβタンパク質のアミノ酸配列に基づいて点変異に番号を付し、その残基16−35を図2に示す(付加されたC末端のリジン残基を含む)。
【0079】
αヘリックスの形成および安定性
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、アラニン(A)などのαヘリックスを形成する傾向を有する1個以上のアミノ酸残基の付加、またはそれによる置換を含む。そのようなアミノ酸残基を、参照配列の内部部位にあるいは参照配列の末端のいずれかまたは両方に導入してよい。いくつかの実施形態では、参照配列は、追加の残基としてまたは標的タンパク質の残基の代わりに(置換)、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のそのようなアミノ酸残基を含む。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:3(ペプチド38)または配列番号:4(ペプチド45)のバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:3または配列番号:4からなる。
【0080】
AβペプチドプローブにおけるG29HおよびG33E変異など、相補的荷電残基を用いて点変異を導入することによっても、αヘリックスを形成する傾向を増大させることができる。これらの特定の置換によって、親水性および水溶液中での溶解度も増大する。したがって、標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2(ペプチド22)のバリアント配列を含む、または配列番号:2からなる。
【0081】
他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、アラニン残基または相補的荷電残基を含むようにさらに改変して、αヘリックス形成を促進することができる。
【0082】
塩橋
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、塩橋を形成し得るアミノ酸を導入する、または参照配列内にすでに存在するアミノ酸で塩橋を形成し得るアミノ酸を導入する、1個以上のアミノ酸の置換または付加を含む。塩橋とは、負に帯電したアミノ酸と正に帯電したアミノ酸との間の弱いイオン性相互作用である。いくつかの実施形態では、アミノ酸の置換または付加によって、配列内の別のアミノ酸で塩橋を形成し得る位置に、アルギニンまたはリジンなどの1個以上の正のアミノ酸残基を導入する。いくつかの実施形態では、アミノ酸の置換または付加によって、配列内の別のアミノ酸で塩橋を形成し得る位置に、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの1個以上の負のアミノ酸残基を導入する。いくつかの実施形態では、アミノ酸の置換または付加によって、互いにまたは配列内の別のアミノ酸で1つ以上の塩橋を形成し得る位置に、1個以上の正のアミノ酸残基および1個以上の負のアミノ酸残基の両方を導入する。他の実施形態では、塩橋は、ヒスチジン、チロシン、またはセリンなどの1個以上のイオン性残基を含む。具体的な実施形態では、バリアント配列は、1つ以上の塩橋を形成し得る位置に、1個以上のヒスチジン残基および/またはアルギニン残基および/またはリジン残基および/またはグルタミン酸および/またはアスパラギン酸残基および/またはチロシン残基および/またはセリン残基を導入する、アミノ酸の置換または付加を含む。
【0083】
標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4(ペプチド22、ペプチド38、またはペプチド45)のうちの1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4のうちの1つからなる。他の具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:14〜17(ペプチド22バリエーション1、ペプチド22バリエーション2、ペプチド59、ペプチド77)のうちの1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:14〜17のうちの1つからなる。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、塩橋を含むようにさらに改変することができる。
【0084】
前述のように、ペプチドのαヘリックス立体構造を安定化させるように、塩橋を設計することができる。付加的または代替的に、塩橋の存在によって、前記ペプチドを用いたアッセイにおいて生成されるシグナルを制御するためのメカニズムが提供される。例えば、アッセイバッファーの塩および/またはpHを選択または調整して、塩橋を強めるまたは弱めることができ、ゆえにαヘリックス立体構造の安定性およびβシート立体構造の形成を制御することができる。
【0085】
βシートの形成および安定性
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると(またはβシート立体構造につながる他の条件下で)βシート立体構造をとるのを促す、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含み、それによって、該バリアント配列(またはそれを含むペプチド)は、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると(またはβシート立体構造につながる他の条件下で)、参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとる。そのようなペプチドプローブは、参照配列よりも、βシート立体構造を有する標的タンパク質に対する検出感度の増大を示し得る。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、βシート立体構造をとるおよび/または凝集体を形成する傾向の増大を示す変異体など、天然に存在する変異体のβシート形成領域に見られる1個以上のアミノ酸置換を含む。例えば、配列番号:5または7など、置換I32SまたはE22Pのうちの1個以上を含むバリアントは、本文脈において有用である。他の例には、配列番号:11または12など、置換E22Q(「Dutch」)またはE22K(「Italian」)を含むバリアントが含まれる。別の実施形態では、バリアント置換は、配列番号:8など、置換F19SおよびL34Pのうちの1個以上を含む。他のバリアントは、Murakamiら,J.Biol.Chem.46:46179−46187,2003に開示されているものなど、当該技術分野において公知の変異体に由来し得る。例えば、バリアントは、置換A21G、E22G(「Arctic」)、およびD23Nのうちの1個以上を含んでいてよい。そのようなバリアントの例には、配列番号:9、10、または13が含まれる。さらに、本明細書に記載される任意のバリアントは、これらのまたは他の公知の変異体に基づく1個以上の点変異をさらに含んでいてよい。例えば、ペプチド22バリアントに基づくバリアントは、E22K、E22Q、またはE22Gなど、1個以上の点変異をさらに含んでいてよい。そのようなバリアントの例には、配列番号:19〜21が含まれる。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:5、7〜13、または18〜21のうちのいずれか1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブ(probide)は、配列番号:5、7〜13、または18〜21のうちのいずれか1つからなる。
【0086】
他の実施形態では、ペプチドプローブは、バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造ならびに/あるいは増加したαヘリックス立体構造をとるような、参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む該バリアント配列を有する。そのようなバリアントの例には、配列番号:2(ペプチド22)、配列番号:3(ペプチド38)、配列番号:4(ペプチド45)、配列番号:14(ペプチド22バリエーション1)、および配列番号:15(ペプチド22バリエーション2)が含まれる。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4または14〜15のうちのいずれか1つのバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:2〜4または14〜15のうちのいずれか1つからなる。
【0087】
より具体的な実施形態では、バリアント配列は、参照配列と比較して1個以上のさらなるアミノ酸の付加、置換、または欠失を含み、それによって、該バリアント配列のβシート構造は、該参照配列からなるプローブのものよりも熱力学的に安定性が低いまたは弱い。例えば、配列番号:2のバリアント配列は、付番の野生型配列と比較して、F19S、S26D、H29D、I31D、L34D、およびL34Pなど、1個以上のさらなる置換を含んでいてよい。例えば、以下の表中のペプチドAD323(配列番号:28);AD325(配列番号:29);AD330(配列番号:30);AD329(配列番号:31);AD328(配列番号:32);AD327(配列番号:33);GM6(配列番号:34);GM6バリエーション1(配列番号:35)を参照されたい。ペプチドI32S(配列番号:5)もこのカテゴリーに分類され得る。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:5または28〜35のいずれか1つのバリアント配列を含んでいてよく、あるいは配列番号:5または28〜35のいずれか1つからなってよい。
【0088】
安定性の増大および/または反応性の低下
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、バリアント(またはそれを含むペプチド)を参照配列よりも酸化環境においてより安定にする、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。いくつかの実施形態では、C末端メチオニン残基などの1個以上のメチオニン残基を、アラニン残基などの酸化により耐性のある残基で置換する。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:6(ペプチドAD250)のバリアント配列を含む。具体的な実施形態では、ペプチドは、配列番号:6からなる。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、アラニン残基などの酸化により耐性のある残基による、C末端メチオニン残基などのメチオニン残基の置換によってさらに改変してよい。
【0089】
溶解度および/または親水性
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、バリアント(またはそれを含むペプチド)をより親水性かつ/または水性環境でより可溶性にする、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。例えば、C末端および/またはN末端においてまたは付近に1個以上の荷電残基(例えば、グルタミン酸および/またはd−アルギニン)を含むバリアントは、増大した親水性および水溶液中での溶解度を示す。例えば、バリアント配列は、1個、2個、3個、またはそれ以上のN末端、C末端、または内部のグルタミン酸および/またはd−アルギニン残基を含んでいてよい。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、AD272(配列番号:22)、AD316(配列番号:23)、AD305(配列番号:24)、およびAD271(配列番号:26)のバリアント配列を含んでいてよく、またはこれらの配列からなってよい。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、N末端またはC末端においてまたは付近における、1個、2個、3個、またはそれ以上のグルタミン酸および/またはd−アルギニン残基の付加によってさらに改変してよい。
【0090】
付加的または代替的に、ペプチドプローブを、約10kDaの分子量を有するPEG(「PEG10」)を含む、約1、5、6、10、12、15、20、25、30、または35kDaの分子量を有するPEGなどの水溶性ポリエチレングリコール(PEG)など、親水性成分に結合させてよい。野生型βシート形成配列(配列番号:1)を含むそのようなペプチドプローブの例を、以下の実施例における表1に表す(AD274)。本明細書に記載される任意のバリアントまたはペプチドプローブを、親水性成分に結合させることができる。
【0091】
Aβ結合モチーフ
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、さらなるAβ結合モチーフ、例えばアミノ酸残基GxxEG(配列番号:25)(「X」は任意のアミノ酸残基を表す)を含むモチーフなどを提供する、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。そのようなバリアント配列の例には、P59(配列番号:17)およびP77(配列番号:16)が含まれる。標的タンパク質がAβタンパク質である具体的な実施形態では、ペプチドプローブは、配列番号:16または17のうちのいずれか1つのバリアント配列を含んでいてよく、あるいは配列番号:16または17のうちのいずれか1つからなってよい。他の実施形態では、本明細書に記載される他のバリアントのいずれかを、GxxEGモチーフを含むようにさらに改変してよい。
【0092】
本明細書に記載されるペプチドが、前述の付加、置換、および欠失の1つ以上の任意の組み合わせを含み得ることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、前述のアミノ酸の付加および置換に加えて、ペプチドは、標識付けを容易にする1個以上のアミノ酸残基の付加または置換を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ピレン成分による標識付けなどの標識付けを容易にする1個以上のリジン残基を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方においてまたは付近にリジン残基を含む。例えば、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方においてリジン残基を含んでいてよい。他の実施形態では、リジン残基は、前述のような標識付けに適し得る、ペプチドの他の部位にある。参照配列がAβタンパク質のアミノ酸16(リジン)を含む具体的な実施形態では、そのリジン残基を標識付けに用いることができる。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、C末端リジン上の側鎖を介して標識する。
【0093】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、C末端カルボキシル基の代わりに、C末端アミド基を有する。
【0094】
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。他の実施形態では、バリアント配列は、長さが約10〜約25個のアミノ酸からなり、かつバリアント配列は、参照配列と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む。別の実施形態では、バリアント配列は、参照配列と約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約66%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、または約10%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列と約66%〜約97%の同一性を有する。
【0095】
任意の所与のペプチドの適合性を、実施例において以下に記載および例証される方法によって評価することができる。例えば、ペプチドのβシート立体構造をとる能力を、実施例1および5において例証するように評価することができる。ペプチドの標的タンパク質に結合する能力およびシグナルを発する能力を、実施例3〜5において例証するように確認することができる。
【0096】
(ii)標識
本明細書に記載されるプローブは、1種以上の検出可能な標識を含んでいてよい。例えば、プローブを、共有結合または非共有結合のいずれかで、標識に連結または融合させてよい。いくつかの実施形態では、プローブの特定の立体構造、例えばプローブが標的タンパク質と会合した場合にとる立体構造の検出を可能にする標識を選択する。このシナリオでは、標識は、プローブが第一の非会合立体構造(例えば、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造、あるいは組織化されていないまたはより低密度の形態)である場合には第一のシグナルを発し得(またはシグナルなしであり)、プローブが標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける(例えば、主としてβシート立体構造、あるいはより組織化されたまたはより高密度の形態の)場合には、第二のシグナルを発し得るかシグナルなしとなる(すなわち、プローブが消光される)。相補的一般原則が、標的タンパク質に結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するペプチドプローブに当てはまり、これは、プローブの第一の非会合立体構造(例えば、βシート立体構造、あるいはより組織化されたまたはより高密度の形態)に付随しする第一のシグナル、および第二のシグナルを有し、あるいは、ペプチドが標的タンパク質と会合すると立体構造シフト(例えば、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造、あるいは組織化されていないまたはより低密度の形態へ)を受ける場合にはシグナルが無い。前記第一のシグナルおよび第二のシグナルは1つ以上の特質、例えば強度、波長、等々の点で異なってよい。シグナルが光の放出を含む実施形態では、第一のシグナルおよび第二のシグナルは、励起波長および/または発光波長の点で異なってよい。プローブが立体構造シフトを受ける場合に生成されるシグナルは、同じプローブに結合している標識間の相互作用によって生じ得、かつ/あるいは異なるプローブに結合している標識間の相互作用によって生じ得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、標識がプローブの立体構造に基づいて相互作用するまたは相互作用しないように、例えば標識は、プローブがその非会合立体構造である場合には相互作用せず、標的タンパク質と会合して立体構造シフトを受ける場合には相互作用して、検出可能なシグナル(消光を含む)を生成するように、あるいは逆もまた同様であるように、標識および標識部位を選択する。これは、プローブの会合状態に依存して、例えばプローブが標的タンパク質と会合して立体構造シフトを受けているかどうかに依存して、さらに離れるまたは互いに近づく標識部位を選択することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、会合したプローブに伴うシグナルの大きさは、検出された標的タンパク質の量と直接相関する。したがって、本発明の方法によって、標的タンパク質の検出および定量化が可能となる。
【0098】
例えば、エキシマー、FRET、またはフルオロフォア/クエンチャー標識ペアを含む蛍光標識を用いて、プローブの特定の立体構造、例えばプローブがミスフォールドAβタンパク質などの標的タンパク質と会合した場合にとる立体構造などの検出が可能となり得る。これらの実施形態では、プローブを、離れた部位において、それぞれがエキシマー、FRET、またはフルオロフォア/クエンチャーペアの相補的構成要素である第一の標識および第二の標識で標識する。例えば、エキシマー形成標識は、プローブがその非会合状態にある場合にはそれらのモノマーシグナルを発し得、標的タンパク質と会合すると標識をより密接に物理的に近接させる立体構造シフトを受ける場合にはそれらのエキシマーシグナルを発し得る。これを、図10の最上段パネルに概略的に図解する。同様に、FRET標識は、プローブが標識をより密接に物理的に近接させる立体構造シフトを受ける場合には、それらのFRETシグナルを発し得る。これを、図10の下段パネルBに概略的に図解する。一方、フルオロフォア/クエンチャー標識ペアは、プローブがその非会合状態にある場合にはフルオロフォアシグナルを発し得、標識をより密接に物理的に近接させる立体構造シフトを受ける場合にはシグナルは消光され得る。前述のように、プローブが標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける場合に、シグナルの逆の変化が生じるように、標識を位置付けることができる。
【0099】
あるいは、標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するプローブに対するエキシマー形成標識は、プローブがその非会合状態にある場合にはそれらのエキシマーシグナルを発し得、標的タンパク質と会合すると標識の物理的近接性を減じる立体構造シフトを受ける場合にはそれらのモノマーシグナルを発し得る。これを、図10の下段パネルAに概略的に図解する。同様に、FRET標識は、プローブがその非会合状態にある場合にはそれらのFRETシグナルを発し得、標識の物理的近接性を減じる立体構造シフトを受ける場合には異なるシグナルまたはシグナルなしとなる。一方、フルオロフォア/クエンチャー標識ペアは、プローブがその非会合状態にある(標識が密接に物理的に近接している)場合には消光され得、標識の物理的近接性を減じるその非会合状態にある場合にはフルオロフォアシグナルを発し得る。先と同様に、プローブが標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける場合に、シグナルの逆の変化が生じるように、標識を位置付けることができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、プローブを、検出可能な標識で(ペプチドの一方または両方の末端において)エンドキャップ処理する。いくつかの実施形態では、プローブは、そのC末端、N末端、または両方においてまたは付近に検出可能な標識を含む。例えば、プローブは、そのC末端、N末端、または両方、あるいはプローブが標的タンパク質と会合したAβタンパク質凝集体と会合すると立体構造シフトを受ける場合にシグナルを生成する任意の他の部位において、検出可能な標識を含んでいてよい。したがって、例えば、標識部位を、(i)N末端およびC末端;(ii)N末端、およびC末端以外の離れた部位;(iii)C末端、およびN末端以外の離れた部位;ならびに(iv)N末端およびC末端以外の2つの部位から選択してよい。N末端またはC末端以外の標識部位は、末端残基から1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上離れた残基を含む、ペプチドプローブ内の任意の部位であってよい。以下の表1中のペプチドプローブAD272(配列番号:22)、AD316(配列番号:23)、AD305(配列番号:24)、AD271(配列番号:26)、およびAD273(配列番号:27)は、標識の一方が末端ではなく付近にあるペプチドプローブの例である。これらのプローブにおいて、標識部位は、N末端またはC末端から2個または3個の残基である。
【0101】
いくつかの実施形態では、N末端標識を、N末端アミノ酸残基のアミン基上に提供する。他の実施形態では、N末端標識を、N末端におけるまたは付近のアミノ酸残基の側鎖上、例えばN末端におけるまたは付近のリジン(K)残基の側鎖上などに提供する。ペプチドプローブの蛍光特性を変更し、かつノイズ比を改善または最適化するように、標識部位を選択することができる。以下の表1に表したペプチドプローブAD266(配列番号:36)およびAD268(配列番号:37)は、最初のN末端リジン残基の側鎖上にN末端標識が提供されているペプチドプローブの例である。
【0102】
いくつかの実施形態では、N末端標識をN末端アミン上に提供し、かつC末端標識をC末端リジン残基の側鎖上に提供する。他の実施形態では、N末端標識をN末端リジン残基の側鎖上に提供し、かつC末端標識をC末端リジン残基の側鎖上に提供する。
【0103】
一実施形態では、ピレン成分は、プローブのそれぞれの末端にまたは付近に存在し、かつピレンモノマーシグナル対ピレンエキシマーシグナルの比率は、プローブの立体構造に依存する。例えば、モノマーシグナルは、プローブがその非会合状態にある場合に優勢であり得、エキシマーシグナルは、プローブが標的タンパク質と会合して立体構造シフトを受ける場合に優勢であり得(あるいはエキシマーシグナルは、必ずしも優勢にならずに増大し得る)、あるいは逆もまた同様である。したがって、ピレンモノマーシグナル対ピレンエキシマーシグナルの比率を測定することができる。プローブ上の他の部位に存在するピレン成分も、エキシマー形成がペプチドプローブの会合または非会合状態に基づく立体構造依存的である限り、本文脈において有用であり得る。表1には、N末端およびC末端のそれぞれにおいてまたは付近においてピレン(「PBA」)で標識された多くのペプチドプローブが含まれている。
【0104】
エキシマーの形成を、光学特性の変化によって検出することができる。そのような変化を、フルオロフォア標識に依存した、多数ある中でも、UV、IR、CD、NMR、または蛍光を含む公知の蛍光分析技術によって測定することができる。これらの光学特性の変化の大きさは、シグナルを伴う立体構造をとっているプローブの量に直接関係し、ゆえに存在する標的タンパク質の量または構造に直接関係する。
【0105】
これらの実施形態は、エキシマーペアに関して詳細に記載しているが、当業者であれば、同様の考察がFRETおよびフルオロフォア/クエンチャーペアに当てはまることを理解するであろう。表1には、N末端およびC末端のそれぞれにおいてまたは付近においてFRETまたはフルオロフォア/クエンチャーペアで標識された多くのペプチドプローブが含まれている。例えば、AD326(配列番号:43)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端においてピレンで、もう一方の末端においてダブシル蛍光クエンチャー(4−(4−ジメチルアミノフェニル)ジアゼニル安息香酸)などのクエンチャーで標識することができる。あるいは、AD309(配列番号:44)、AD306(配列番号:45)、AD303(配列番号:46)、AD302(配列番号:47)、AD301(配列番号:48)、およびAD300(配列番号:49)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端においてフルオロフォアEDANS(5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸)で、もう一方の末端においてダブシルなどのクエンチャーで標識することができる。あるいは、AD295(配列番号:50)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端においてダンシル標識(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル)で、もう一方の末端においてトリプトファン残基(Trp,W)で標識して、FRETペア標識付けを提供することができる。あるいは、AD294(配列番号:51)、AD293(配列番号:52)、AD292(配列番号:53)、AD291(配列番号:54)、およびAD290(配列番号:55)によって例証されるように、ペプチドプローブを、一方の末端において5(6)カルボキシフルオレセイン(FAM)で、もう一方の末端においてEDANSで標識することができる。これらの例証的ペプチドプローブは、本明細書における他の部分に記載される野生型およびバリアント配列を含み、かつ本明細書に記載される任意のペプチドプローブを様々な標識部位において任意の標識ペアで標識することができることを実証している。いくつかの実施形態では、標識を、N末端、C末端、または内部(internl)リジン残基を含むリジン残基に結合させる。他の実施形態では、標識を、N末端、C末端、または内部グルタミン酸残基を含むグルタミン酸残基に結合させる。いくつかの実施形態では、一方の標識をリジン残基に結合させ、かつもう一方の標識をグルタミン酸残基に結合させる。標識部位の他の組み合わせおよび順列は、当業者によって容易に認識され、かつ本発明に含まれる。
【0106】
さらに、これらの実施形態は、1ペプチドにつき2つの標識の使用に関して記載しているが、複数の標識を用いることができることを理解すべきである。例えば、1つ以上の標識がそれぞれの標識部位に存在し得、またはプローブ上の異なる標識部位のそれぞれにおいて複数の標識が存在し得る。これらの実施形態では、標識は、独立したシグナルを生成し得、またはエキシマーペア、FRETペア、シグナル/クエンチャー、等々のように関連し得る。例えば、一方の部位は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のピレン成分を含んでいてよく、かつもう一方の部位は対応するクエンチャーを含んでいてよい。
【0107】
前述のように、本明細書に開示されるプローブは、検出可能な標識を含んでいてよい。例えば、プローブには、共有結合または非共有結合のいずれかで、標識に連結または融合させたペプチドプローブが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブを、検出可能な標識で(ペプチドの一方または両方の末端において)エンドキャップ処理する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方においてまたは付近に検出可能な標識を含む。例えば、ペプチドは、そのC末端、N末端、または両方、あるいはペプチドがβシート立体構造またはその会合状態に関連する他の立体構造をとる場合にシグナルを生成するいずれの他の部位において、検出可能な標識を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、C末端およびN末端の両方を、サイズが約1個〜約5個のアミノ酸に及ぶ小さな疎水性ペプチドでエンドキャップ処理する。これらのペプチドは天然のものであっても合成のものであってもよいが、好ましくは天然の(すなわち、標的タンパク質に由来する)ものである。ペプチドがβシート立体構造(または他の標的タンパク質と会合した立体構造)をとる場合に生成されるシグナルは、同じペプチドに結合している標識間(ペプチド内)の相互作用によって生じ得、かつ/あるいは異なるペプチドに結合している標識間(ペプチド間)の相互作用によって生じ得る。例えば、βシート立体構造のペプチドは自己会合し得、それによって、異なるペプチド分子に結合している標識は、ペプチド間シグナルを生成するのに物理的に十分近接する。
【0108】
いくつかの実施形態では、標識を用いて、ペプチドの特定の立体構造、例えばβシート立体構造または他の標的タンパク質と会合した立体構造などを検出する。このシナリオでは、標識は、ペプチドが第一の立体構造(例えば、ランダムコイル/αヘリックス立体構造)である場合には第一のシグナルを発し得(またはシグナルなしであり)、第二の立体構造(例えば、βシート)である場合には第二のシグナルを発し得る。前述のように、相補的原則が、標的タンパク質に結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するペプチドプローブに当てはまり、これは、プローブの第一の非会合立体構造(例えば、βシート立体構造、あるいはより組織化されたまたはより高密度の形態)に付随する第一のシグナル、および第二のシグナルを有し、または、ペプチドが標的タンパク質と会合すると立体構造シフト(例えば、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造、あるいは組織化されていないまたはより低密度の形態へ)を受ける場合にはシグナルを有さない。前記第一のシグナルおよび第二のシグナルは、強度、波長、等々のうちの1つ以上の点で異なってよい。シグナルが光の放出を含む実施形態では、第一のシグナルおよび第二のシグナルは、励起波長および/または発光波長の点で異なってよい。
【0109】
例示的標識には、蛍光剤(例えば、フルオロフォア、蛍光タンパク質、蛍光半導体ナノ結晶)、リン光発光剤、化学発光剤、発色剤、消光剤、色素、放射性核種、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、ハプテン等)、酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、酵素基質、酵素補因子(例えば、NADPH)、酵素阻害剤、シンチレーション剤、阻害剤、磁性粒子、オリゴヌクレオチド、および当該技術分野において公知の他の成分が含まれる。標識がフルオロフォアである場合、フルオロフォアの1つ以上の特徴を用いて、標識プローブの構造状態を評価することができる。例えば、フルオロフォアの励起波長は、標識プローブの構造状態に基づいて異なってよい。いくつかの実施形態では、発光波長、強度、または蛍光の偏光は、標識プローブの構造状態に基づいて変化し得る。
【0110】
本明細書において使用するとき、「フルオロフォア」とは、光によって励起されて、蛍光またはリン光を発し得る化学基である。「クエンチャー」とは、蛍光ドナー由来の蛍光シグナルを消光し得る物質である。第一のフルオロフォアは、第二のフルオロフォアを励起する蛍光シグナルを発し得る。第一のフルオロフォアは、第二のフルオロフォアによって消光されるシグナルを発し得る。本明細書に開示されるプローブは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を受け得る。
【0111】
フルオロフォアおよびクエンチャーには、以下の物質(または以下の商標名で販売されているフルオロフォアおよびクエンチャー):1,5IAEDANS;1,8−ANS;ウンベリフェロン(例えば、4−メチルウンベリフェロン);アクラジマム(acradimum)エステル、5−カルボキシ−2,7−ジクロロフルオレセイン;5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM);5−カルボキシテトラメチルローダミン(5−TAMRA);5−FAM(5−カルボキシフルオレセイン);5−HAT(ヒドロキシトリプタミン);5−ヒドロキシトリプタミン(HAT);5−ROX(カルボキシ−X−ローダミン);5−TAMRA(5−カルボキシテトラメチルローダミン);6−カルボキシローダミン6G;6−CR 6G;6−JOE;7−アミノ−4−メチルクマリン;7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD);7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン;9−アミノ−6−クロロ−2−メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9−アミノ−6−クロロ−2−メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン(Acriflavin);アクリフラビンフォイルゲンSITSA;アレクサフルオル350(商標);アレクサフルオル430(商標);アレクサフルオル488(商標);アレクサフルオル532(商標);アレクサフルオル546(商標);アレクサフルオル568(商標);アレクサフルオル594(商標);アレクサフルオル633(商標);アレクサフルオル647(商標);アレクサフルオル660(商標);アレクサフルオル680(商標);アリザリンコンプレクソン;アリザリンレッド;アロフィコシアニン(APC);AMC;AMCA−S;AMCA(アミノメチルクマリン);AMCA−X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アミノメチルクマリン(AMCA);アニリン(Anilin)ブルー;アントロシルステアレート;APC(アロフィコシアニン);APC−Cy7;APTS;アストラゾンブリリアントレッド4G;アストラゾンオレンジR;アストラゾンレッド6B;アストラゾンイエロー7GLL;アタブリン;ATTO−TAG(商標)CBQCA;ATTO−TAG(商標)FQ;オーラミン;オーロホスフィンG;オーロホスフィン;BAO9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);硫酸ベルベリン;βラクタマーゼ;BFPブルーシフトGFP(Y66H);青色蛍光タンパク質;BFP/GFP FRET;ビマン;ビスベンズアミド;ビスベンズイミド(ヘキスト);ブランコホルFFG;ブランコホルSV;BOBO(商標)−1;BOBO(商標)−3;Bodipy492/515;Bodipy493/503;Bodipy500/510;Bodipy505/515;Bodipy530/550;Bodipy542/563;Bodipy558/568;Bodipy564/570;Bodipy576/589;Bodipy581/591;Bodipy630/650−X;Bodipy650/665−X;Bodipy665/676;Bodipy FL;Bodipy FL ATP;Bodipy Fl−セラミド;Bodipy R6G SE;Bodipy TMR;Bodipy TMR−X結合体;Bodipy TMR−X,SE;Bodipy TR;Bodipy TR ATP;Bodipy TR−X SE;BO−PRO(商標)−1;BO−PRO(商標)−3;ブリリアントスルホフラビンFF;カルセイン;カルセインブルー;カルシウムクリムゾン(商標);カルシウムグリーン;カルシウムオレンジ;カルコフロールホワイト;カルボキシ−X−ローダミン(5−ROX);カスケードブルー(商標);カスケードイエロー;カテコールアミン;CCF2(GeneBlazer);CFDA;CFP−シアン蛍光タンパク質;CFP/YFP FRET;クロロフィル;クロモマイシンA;CL−NERF(レシオ色素,pH);CMFDA;セレンテラジンf;セレンテラジンfcp;セレンテラジンh;セレンテラジンhcp;セレンテラジンip;セレンテラジンn;セレンテラジンO;クマリンファロイジン;C−フィコシアニン(phycocyanine);CPMメチルクマリン;CTC;CTCホルマザン;Cy2(商標);Cy3.1 8;Cy3.5(商標);Cy3(商標);Cy5.1 8;Cy5.5(商標);Cy5(商標);Cy7(商標);シアンGFP;サイクリックAMPフルオロセンサー(FiCRhR);ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシルカダベリン;ダンシルクロリド;ダンシルDHPE;ダンシルフルオリド;DAPI;ダポキシル;ダポキシル2;ダポキシル3;DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン(Dihydorhodamine)123);Di−4−ANEPPS;Di−8−ANEPPS(非レシオ);DiA(4−Di−16−ASP);ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCFH);DiD−親油性トレーサー;DiD(DiIC18(5));DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);DiI(DiIC18(3));ジニトロフェノール;DiO(DiOC18(3));DiR;DiR(DiIC18(7));DNP;ドーパミン;DsRed;DTAF;DY−630−NHS;DY−635−NHS;EBFP;ECFP;EGFP;ELF97;エオシン;エリトロシン;エリトロシンITC;エチジウムブロマイド;エチジウムホモダイマー−1(EthD−1);オイクリシン;EukoLight;塩化ユウロピウム(III);EYFP;ファストブルー;FDA;フォイルゲン(パラローズアニリン);FITC;Flazoオレンジ;Fluo−3;Fluo−4;フルオレセイン(FITC);フルオレセインジアセテート;フルオロ−エメラルド;フルオロ−ゴールド(ヒドロキシスチルバミジン);フルオロ(Fluor)−ルビー;FluorX;FM1−43(商標);FM4−46;Furaレッド(商標);Furaレッド(商標)/Fluo−3;Fura−2;Fura−2/BCECF;ゲナクリルブリリアントレッドB;ゲナクリルブリリアントイエロー10GF;ゲナクリルピンク3G;ゲナクリルイエロー5GF;GeneBlazer(CCF2);蛍光タンパク質(例えば、GFP(S65T);GFPレッドシフト(rsGFP);GFP野生型,非UV励起(wtGFP);GFP野生型,UV励起(wtGFP);およびGFPuv);グロキサン酸(Gloxalic Acid);グラニュラーブルー;ヘマトポルフィリン;ヘキスト33258;ヘキスト33342;ヘキスト34580;HPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(フルオロゴールド);ヒドロキシトリプタミン;インド−1;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);イントラホワイトCf;JC−1;JO−JO−1;JO−PRO−1;ラウロダン;LDS751(DNA);LDS751(RNA);ロイコホルPAF;ロイコホルSF;ロイコホルWS;リサミンローダミン;リサミンローダミンB;カルセイン/エチジウムホモダイマー;LOLO−1;LO−PRO−1;ルシファーイエロー;ルミノール,Lyso Trackerブルー;Lyso Trackerブルー−ホワイト;Lyso Trackerグリーン;Lyso Trackerレッド;Lyso Trackerイエロー;LysoSensorブルー;LysoSensorグリーン;LysoSensorイエロー/ブルー;Magグリーン;マグダラレッド(フロキシンB);Mag−Furaレッド;Mag−Fura−2;Mag−Fura−5;Mag−インド−1;マグネシウムグリーン;マグネシウムオレンジ;マラカイトグリーン;マリーナブルー;マキシロン・ブリリアント・フラビン10GFF;マキシロン・ブリリアント・フラビン8GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;MitotrackerグリーンFM;Mitotrackerオレンジ;Mitotrackerレッド;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr−GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーン・ピロニン・スチルベン);NBD;NBDアミン;ナイルレッド;NED(商標);ニトロベンゾキサジドール(Nitrobenzoxadidole);ノルアドレナリン;ヌクレアファストレッド;ヌクレアイエロー;NylosanブリリアントIavin E8G;オレゴングリーン;オレゴングリーン488−X;オレゴングリーン(商標);オレゴングリーン(商標)488;オレゴングリーン(商標)500;オレゴングリーン(商標)514;パシフィックブルー;パラローズアニリン(フォイルゲン);PBFI;PE−Cy5;PE−Cy7;PerCP;PerCP−Cy5.5;PE−テキサスレッド[レッド613];フロキシンB(マグダラレッド);Phorwite AR;Phorwite BKL;Phorwite Rev;Phorwite RPA;ホスフィン3R;フィコエリトリンB[PE];フィコエリトリンR[PE];PKH26(Sigma);PKH67;PMIA;ポントクロムブルーブラック;POPO−1;POPO−3;PO−PRO−1;PO−PRO−3;プリムリン;プロシオンイエロー;ヨウ化プロピジウム(Propidium Iodid)(PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;ピロザール・ブリリアント・フラビン7GF;QSY7;キナクリンマスタード;レッド613[PE−テキサスレッド];レソルフィン;RH414;Rhod−2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5GLD;ローダミン6G;ローダミンB;ローダミンB200;ローダミンBエクストラ;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミングリーン;ローダミンファリシジン;ローダミンファロイジン;ローダミンレッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R−フィコシアニン;R−フィコエリトリン(PE);RsGFP;S65A;S65C;S65L;S65T;サファイアGFP;SBFI;セロトニン;セブロンブリリアントレッド2B;セブロンブリリアントレッド4G;セブロンブリリアントレッドB;セブロンオレンジ;セブロンイエローL;sgBFP(商標);sgBFP(商標)(スーパーグローBFP);sgGFP(商標);sgGFP(商標)(スーパーグローGFP);SITS;SITS(プリムリン);SITS(スチルベンイソチオスルホン酸);SNAFLカルセイン;SNAFL−1;SNAFL−2;SNARFカルセイン;SNARF1;ナトリウムグリーン;Spectrumアクア;Spectrumグリーン;Spectrumオレンジ;Spectrumレッド;SPQ(6−メトキシ−N−(3−スルホプロピル)キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンB can C;スルホローダミンGエクストラ;SYTO11;SYTO12;SYTO13;SYTO14;SYTO15;SYTO16;SYTO17;SYTO18;SYTO20;SYTO21;SYTO22;SYTO23;SYTO24;SYTO25;SYTO40;SYTO41;SYTO42;SYTO43;SYTO44;SYTO45;SYTO59;SYTO60;SYTO61;SYTO62;SYTO63;SYTO64;SYTO80;SYTO81;SYTO82;SYTO83;SYTO84;SYTO85;SYTOXブルー;SYTOXグリーン;SYTOXオレンジ;TET(商標);テトラサイクリン;テトラメチルローダミン(TRITC);テキサスレッド(商標);テキサスレッド−X(商標)結合体;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッドR;チアゾールオレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTCN;チオライト;チオゾールオレンジ;チノポールCBS
(カルコフロールホワイト);TMR;TO−PRO−1;TO−PRO−3;TO−PRO−5;TOTO−1;TOTO−3;トリコロール(PE−Cy5);TRITCテトラメチルローダミンイソチオシアネート;トゥルーブルー;トゥルーレッド(TruRed);ウルトラライト;ウラニンB;Uvitex SFC;VIC(登録商標);wtGFP;WW781;X−ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;イエローGFP;YFP;YO−PRO−1;YO−PRO−3;YOYO−1;YOYO−3;およびそれらの塩が含まれてよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、標識はピレン成分である。本明細書において使用するとき、ピレン成分には、4個の融合ベンゼン環を含むピレン、またはピレンの誘導体が含まれる。ピレン誘導体とは、ピレン炭素原子のうちの1個以上が置換されているまたはさらなる成分に結合している、ピレンの4個の融合ベンゼン環を含む分子を意味する。例示的ピレン誘導体には、ピレン炭素原子のうちの1個以上が、直鎖のまたは分岐した、置換されているまたは置換されていないアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアシル基、例えばC1−C20の、直鎖のまたは分岐した、置換されているまたは置換されていないアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアシル基で置換されているアルキル化ピレンが含まれ、前記基は、例えばO、N、またはS原子を含む成分(例えば、カルボニル、アミン、スルフヒドリル)で、あるいはハロゲンで置換されていてよい。いくつかの実施形態では、ピレン誘導体は、1個以上の遊離カルボキシル基および/または1個以上の遊離アミン基を含み、そのそれぞれはピレン炭素原子に直接付着していても、あるいはピレン炭素から1原子以上、例えば1〜3原子、1〜5原子、またはそれ以上の原子離れている炭素原子で付着しているなど、前述の直鎖のまたは分岐した、置換されているまたは置換されていないアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアシル基上の任意の位置に付着していてもよい。いくつかの実施形態では、ピレンを、1個以上の酢酸成分および/または1個以上のエチルアミン成分で置換する。いくつかの実施形態では、ピレン誘導体を、ただ1個のメチル、エチル、プロピル、またはブチル基で置換する。いくつかの実施形態では、ピレンを、ピレンブチレートなどの短鎖脂肪酸で置換する。別の実施形態では、ピレンを、アルブミン、トランスフェリン(transferring)、または抗体のFcフラグメントに結合させる。いくつかの実施形態では、置換基を、炭素−炭素結合、アミノ基、ペプチド結合、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、またはエステル結合を介してピレンに付着させる。他の実施形態では、ピレン誘導体はPEG化ピレン、すなわちポリエチレングリコール(PEG)に結合したピレンである。そのようなピレン誘導体は、インビボでより長い循環半減期を示し得る。他の実施形態では、ピレン誘導体は、アルブミンに結合したピレンである。
【0113】
いくつかの実施形態では、標識は、融合タンパク質の一部としてペプチドプローブ内に組み入れられている蛍光タンパク質を含む。蛍光タンパク質には、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、eGFP、AcGFP、ターボGFP、エメラルド、アザミグリーン、およびZsGreen)、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、サファイア、およびT−サファイア)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、mCFP、セルリアン、CyPet、AmCyan1、およびミドリイシシアン)、黄色蛍光タンパク質(例えば、EYFP、トパーズ、ビーナス、mCitrine、YPet、PhiYFP、ZsYellow1、およびmBanana)、ならびにオレンジおよび赤色蛍光タンパク質(クサビラオレンジ、mOrange、dTomato、dTomato−タンデム、DsRed、DsRed2、DsRed−エクスプレス(T1)、DsREd−モノマー、mTangerine、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、HcRed1、mRaspberry、HcRed−タンデム、mPlum、およびAQ143)が含まれてよい。他の蛍光タンパク質が当該技術分野において記載されている(Tsien,R.Y.,Annual.Rev.Biochem.67:509−544(1998);およびLippincott−Schwartzら,Science 300:87−91(2003))。前述のように、プローブは、該プローブのN末端またはC末端に連結させた蛍光タンパク質も含む融合タンパク質内に含まれていてよい。蛍光タンパク質を当該技術分野において記載されているペプチドリンカーを介して連結させてよい(参照することによりそれらの全体として本明細書に組み入れられている、U.S.6,448,087;Wurthら,J.Mol.Biol.319:1279−1290(2002);およびKimら,J.Biol.Chem.280:35059−35076(2005))。いくつかの実施形態では、適切なリンカーは、長さが約8〜12個のアミノ酸であり得る。さらなる実施形態では、リンカーの約75%を上回るアミノ酸残基は、セリン、グリシン、およびアラニン残基から選択される。
【0114】
インビボ検出またはイメージングを含む実施形態では、インビボイメージングに有用な標識を用いることができる。例えば、フッ素−18などの磁気共鳴画像法に有用な標識を、化学発光標識のように用いることができる。別の実施形態では、プローブを、放射性標識で標識する。例えば、前記標識は、この目的のために現在利用されている機器によって検出されるのに十分なエネルギーのポジトロン放出を提供し得る。そのような実体の一例には、酸素−15(ポジトロン放出によって崩壊する酸素の同位体)または他の放射性核種が含まれる。別の例は、炭素−11である。そのような標識で標識されたプローブを、患者に投与し、標的タンパク質に局在させることができ、かつ該患者を撮像(スキャン)して局在したプローブを検出し、こうして局在した標的タンパク質の部位を同定することができる。標識プローブを、鼻腔内へのまたは経口での直接注入などによる、標的タンパク質の部位への局在を可能にする任意の適切な手段によって投与することができる。いくつかの実施形態では、放射性標識プローブを、患者に注入して、該プローブのタンパク質標的への結合によって外部からモニタリングすることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、標識はオリゴヌクレオチドを含む。例えば、ペプチドプローブを、当該技術分野における公知の方法(例えば、PCR、TMA、b−DNA、NASBA等の増幅アッセイ)によって検出され得るオリゴヌクレオチドタグに連結させてよい。
【0116】
4.方法
本明細書に記載されるペプチドプローブは、標的タンパク質と選択的に会合し、かつ標的タンパク質と会合すると立体構造シフトを受ける。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプローブは、標的タンパク質と会合したAβタンパク質凝集体に結合し、かつそのような結合をすると立体構造シフトを受ける。前述のように、立体構造シフトには、プローブのN末端とC末端の間(または任意の他の2箇所の間)の距離の変化、より密な折り畳みまたはより密でない折り畳み、より規則性の高いまたはより規則性の低い立体構造をとること、主に一方の二次構造から主にもう一方の二次構造への変化、あるいは異なる二次構造の相対量の任意の変化が含まれる。前述のように、「立体構造シフト」には、たとえCDなどの立体構造のより直接的尺度によって立体構造の変化が明らかにならないとしても、以下に論じる標識シグナル伝達などを介した間接的手段によって検出され得るシフトが含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態では、プローブは、標的タンパク質のものに類似した立体構造変化を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、プローブは、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造および主としてβシート立体構造の両方をとることができ、かつ主としてβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら主としてβシート立体構造をとる。いくつかの実施形態では、プローブは、主としてαヘリックス/ランダムコイル立体構造で提供され、かつ主としてβシート立体構造の標的タンパク質と接触、結合、会合、および/または相互作用すると立体構造シフトを受ける。他の実施形態では、プローブは、より凝縮する、より拡散する、または任意の異なる立体構造をとることによって立体構造をシフトさせる。いくつかの実施形態では、プローブは、Aβタンパク質凝集体の立体構造をより密接にとる。他の実施形態では、プローブは、主としてランダムコイル/αヘリックス立体構造および主としてβシート立体構造の両方をとることができ、かつ主としてβシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造をとる。これらの実施形態では、プローブは、主としてβシート立体構造で提供されてよく、かつ主としてβシート立体構造の標的タンパク質と接触、結合、会合、および/または相互作用するとより規則性の低いまたは減少したβシート立体構造/増加したランダムコイル/αヘリックス立体構造への立体構造シフトを受けることになる。
【0118】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、特定状態の自己凝集、例えばモノマー、ダイマー、可溶性オリゴマー(例えば、4〜12マー)、不溶性凝集体、および原線維(例えば、100〜1000マー以上)などの標的タンパク質に優先的に結合する。これは、US2008/0095706(米国特許出願第11/828,953号に相当)に一般的に記載されており、その全内容は参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている。これを、ペプチド22(配列番号:2)を用いて行う作業で例証する。
【0119】
図12は、可溶性Aβオリゴマーに対するペプチド22(配列番号:2)の特異性を図解している。最初の2つのパネルは、ペプチド22を2つの異なる方法で調製された可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合のピレンモノマーシグナルの用量依存的増大を示している。次の2つのパネルは、ペプチド22をAβ40モノマーおよびAβ42モノマーとインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。次のパネルは、ペプチド22をAβ40線維とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示しており、そして次のパネルは、ペプチド22をAβ42線維とインキュベートした場合のモノマー蛍光のいくらかの用量依存的増大を示している。最後の2つのパネルは、ペプチド22をコントロール溶液(BSAまたは脱水酵素)とインキュベートした場合に蛍光に変化がないことを示している。したがって、ペプチド22は、可溶性Aβオリゴマーの形態のAβタンパク質に優先的に結合する。同様のデータがペプチド38(配列番号:3)に関して得られており、それも可溶性Aβオリゴマーの形態のAβタンパク質に優先的に結合することを示している。
【0120】
可溶性オリゴマーはAβタンパク質の活発な病原型であると考えられているため、可溶性Aβオリゴマー検出能は、特に臨床上重要であり得る。さらに、可溶性Aβオリゴマー検出能によって、Aβ原線維の検出によって可能となるよりも、疾患の進行の経過中でのより早い検出、診断、および処置が可能となり得る。
【0121】
したがって、いくつかの実施形態によれば、試験サンプル中の標的タンパク質を検出するための方法であって、該標的タンパク質がアミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し、(i)該サンプルをペプチドプローブと接触させて、試験混合物を形成する工程;および(ii)該ペプチドプローブと存在する任意の標的タンパク質との間の任意の結合を検出する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法はインビトロで効果を生じる。
【0122】
「試験サンプル」とは、試験される任意のサンプルであり、とりわけ、ヒトまたは動物の組織、血液、脳脊髄液、尿、糞、毛髪、唾液、または任意の他の患者の一部に由来するものであってよい。別の実施形態では、試験サンプルは、医薬品、食品、衣類、または他の動物由来の材料、あるいは環境サンプルを含む、対象となる標的タンパク質を含有する生物材料を含有し得る任意の供給源に由来するものであってよい。試験サンプルを、本発明の方法に適合する任意の様式で、例えばホモジナイゼーション、細胞破壊、希釈、清澄化、等々で、本発明の方法における使用のために調製することができる。標的タンパク質がその元の立体構造を保持できるように、試験サンプル中のタンパク質を変性させない注意を払うべきである。試験サンプルを、ペプチドプローブを添加する前に、場合によっては超音波処理などの従来技術を用いて分離させてよい。インビボ検出に関連した実施形態では、試験サンプルは生きた対象である。
【0123】
インビトロ使用に関して、プローブは、約0.01〜約0.5の間のイオン強度を有し(典型的に、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩化物塩で調製した場合)、例えば約5〜約8の間など、約4〜約10の間のpHを有する水溶液などの溶液中に提供され得る。溶液は、例えば約45容量%〜約60容量%の間など、約30容量%〜約100容量%の間の量で、水混和性の有機物質(例えば、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール(propanal)(HFIP)、またはアセトニトリル(ACN))も含んでいてよい。溶媒を、適切な緩衝系、例えば酢酸塩/酢酸、トリス、またはリン酸塩などを用いて調製してよい。インビボ使用に関して、プローブは、生理学的に許容可能な任意の溶液中に提供され得る。例えば、プローブを、トリフルオロ酢酸塩(trifluoracetic salt)として調製し、100%HFIPまたは50%ACNなどの有機溶媒中に再懸濁してもよい。
【0124】
他の実施形態では、前記方法は、インビボで効果を生じるものであって、ペプチドプローブを対象に投与する工程、および例えば該対象をスキャンして、βシート立体構造標的タンパク質の部位に局在した標識ペプチドプローブを検出する工程を含む。インビボ方法論に関するさらなる詳細は、例えばUS2008/0095706に提供されており、その内容は参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている。そのようなインビボ実施形態では、標識ペプチドプローブを局所注入などによって患者に投与することができ、該患者内に存在する標的タンパク質またはより規則性の高い標的タンパク質構造の任意の部位への局在が可能となり、次いで該患者をスキャンして、標的タンパク質またはより規則性の高い標的タンパク質構造の任意の部位に局在した標識プローブの部位を検出することができる。鼻腔内および経口を含む、他の投与経路も企図される。前述のように、プローブを、インビボイメージングに適した任意の標識で標識することができる。患者を全身スキャンにかけて、任意の部位の標的タンパク質を同定することができる。あるいは、患者の特定領域をスキャンして、標的タンパク質が該特定領域内に局在するかどうかを判定することができる。対象となる特定領域には、血管組織、リンパ組織、または脳(海馬または前頭葉を含む)、あるいは他の器官、例えば心臓、腎臓、肝臓、または肺などが含まれてよい。例示的な適切なスキャンまたはイメージング技術には、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、X線撮影法、断層撮影法、蛍光透視法、核医学、光学的画像法、脳造影法、および超音波検査法が含まれる。
【0125】
いくつかの実施形態では、不溶性標的タンパク質(例えば、Aβ原線維)の検出などに関して、ペプチドプローブおよび標的タンパク質間の結合により不溶性複合体の形成をもたらす。不溶性複合体を、従来技術を用いて、例えば不溶性混合物をペレットにする遠心分離および/または濾過などの従来技術を用いて反応混合物から不溶性複合体を分離することによって、検出することができる。次いで、不溶性複合体を、例えば該不溶性複合体中に存在する任意のペプチドプローブを検出する技術によって、さらに特徴付けすることができる。そのような検出技術には、例えばペプチドプローブの標識を検出すること、あるいは分子量に基づいてタンパク質を分離するSDS−PAGEのような技術または当該技術分野において公知の他の従来技術を用いて不溶性複合体を特徴付けするなどの他の技術が含まれてよい。不溶性複合体中でのペプチドプローブ上の検出可能な標識の検出は、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の存在と相関し、それは同様に試験サンプル中の標的タンパク質と相関する。
【0126】
いくつかの実施形態では、可溶性標的タンパク質凝集体(例えば、可溶性Aβオリゴマー)の検出などに関して、ペプチドプローブおよび標的タンパク質間の結合は、可溶性複合体の形成をもたらす。可溶性複合体を含む複合体の検出は、いくつかの異なる方法によってもたらされ得る。例えば、複合体を、反応混合物の他の構成成分、例えば結合していないペプチドプローブおよび/または結合していない標的タンパク質などから分離することができ、次いで該複合体中に存在するペプチドプローブ上の検出可能な標識を検出することによって、該複合体を検出することができる。当該技術分野において公知の任意の方法を用いて、分離を達成することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて分離する。SECは、捕捉媒体(固定相とも呼ばれる)中の孔または隙間を用いてより小さな分子を保持し、それによって、該より小さな分子は捕捉媒体の中を通じてよりゆっくりと移動し、一方で、より大きな分子はより速く通過する。これらの孔または隙間は、既定サイズであり、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体と結合していないペプチドプローブおよび/または結合していない標的タンパク質とを区別するように選択することができる。これらの方法論によれば、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体は、結合していないペプチドプローブの前に溶出する。より早い画分中でのペプチドプローブ上の検出可能な標識の検出は、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の存在と相関し、それは同様に試験サンプル中の標的タンパク質と相関する。
【0128】
代替的実施形態は、捕捉媒体上にペプチドプローブ−標的タンパク質複合体を保持するアフィニティークロマトグラフィーを用いる。この手法は、ペプチドプローブ−標的タンパク質複合体に結合するアフィニティー分子を含む、固相などの捕捉媒体を利用する。標的タンパク質、ペプチドプローブ、複合体、またはペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の任意の成分に結合した標識に特異的に結合するアフィニティー分子を選択することができる。いくつかの実施形態では、アフィニティー分子は、標的タンパク質または標的タンパク質に結合した標識に特異的に結合し、それによって、該標的タンパク質は捕捉媒体上に保持される。結合していない構成成分(任意の結合していないペプチドプローブを含む)が洗い流された時点で、典型的には溶出バッファーを用いて結合している物質を溶出することができ、かつ溶出液を分析することができる。溶出液中でのペプチドプローブ上の検出可能な標識の検出は、溶出液中のペプチドプローブ−標的タンパク質複合体の存在と相関し、それは同様に試験サンプル中の標的タンパク質と相関する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質を、捕捉媒体のアフィニティー分子が結合する成分に結合させる。例えば、アフィニティー分子がアビジンまたはストレプトアビジンを含む場合には、標的タンパク質をビオチンに結合させてよい。
【0129】
他の実施形態では、ペプチドプローブを、ビオチンなどのアフィニティー分子が特異的に結合する成分に結合させる。そのようなペプチドプローブは、ELISAおよび免疫沈降アッセイにおける使用に特に適している。例えば、アビジンコートされたプレートを、ビオチン標識ペプチドプローブとともに用いることができる。非特異的に結合しているプローブを洗浄して除去した後、標的タンパク質についてアッセイするサンプルを添加する。非特異的に結合している基質を洗浄して除去した後、標的タンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、Aβタンパク質を認識するがペプチドプローブを認識しない6E10抗体などのマウス抗Aβ抗体)を添加する。非特異的に結合している抗体を洗浄して除去した後、標識抗体(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識されたマウス抗IgG抗体)を添加する。そのようなアッセイでは、抗体標識の検出は、サンプル中の標的タンパク質の存在と相関する。
【0130】
以下の表1中のペプチドプローブAD310(配列番号:38)、AD313(配列番号:39)、AD314(配列番号:40)、AD317(配列番号:41)、およびAD321(配列番号:42)は、ビオチン化の代替的部位の例とともに、そのようなペプチドプローブの具体的な実施形態を例証している。これらのペプチドプローブのそれぞれは、配列番号:2(ペプチド22)を含むが、当業者であれば、前文に一般的に記載されているように、かつこれらのペプチドプローブによって具体的に例証されるように、本明細書に記載される任意のペプチドプローブをビオチン化することができることを理解するであろう。例えば、AD310(配列番号:38)によって例証されるように、C末端においてらせん状リンカー(例えば、EAAAK;配列番号:56)を介して、ビオチン化を達成することができる。一般に、らせん状リンカーは、アラニン残基などのαヘリックスを形成する残基を含む。あるいは、AD313(配列番号:39)によって例証されるように、内部または末端リジン残基を含むリジン残基上の側鎖を介して、ビオチン化を達成することができる。あるいは、AD314(配列番号:40)によって例証されるように、C末端において可動性リンカー(例えば、GSSGSSK(配列番号:57))を介して、ビオチン化を達成することができる。一般に、可動性リンカーは、1個以上のグリシンおよび/またはセリン残基、あるいはそれらのphiおよびpsi角の周りを自由に回転させ得る他の残基を含む。あるいは、AD317(配列番号:41)によって例証されるように、C末端においてトロンビン部位リンカー(例えば、GLVPRGSGK(配列番号:59)など、LVPRGS(配列番号:58)を含むリンカー)を介して、ビオチン化を達成することができる。あるいは、AD321(配列番号:42)によって例証されるように、C末端においてねじれリンカー(例えば、PSGSPK(配列番号:60))を介して、ビオチン化を達成することができる。一般に、ねじれリンカーは、1個以上のプロリン残基、またはペプチドプローブのタンパク質結合モチーフから離れてビオチン成分を強固に突出させた固定phiおよびpsi角を有する他の残基を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、ペプチドプローブおよび標的タンパク質間の結合を、ペプチドプローブによって生成されるシグナル、例えばペプチドプローブがβシート立体構造、またはその標的タンパク質との会合状態に関連する他の立体構造を示す場合に生成されるシグナルを検出することによって検出する。これらの実施形態は、インビトロまたはインビボで、反応混合物からペプチドプローブ−標的タンパク質複合体を分離させて(例えば、前述の)または分離させずに(例えば、インビボ実施形態において)、もたらされ得る。これらの実施形態では、ペプチドプローブを、ピレンなどのエキシマー形成標識で、またはFRET標識で標識することができる。いずれかの種類の標識があると、ペプチドプローブが、例えばβシート立体構造を示す標的タンパク質と接触、相互作用、または結合すると生じ得る、βシート立体構造またはその標的タンパク質との会合状態関連する他の立体構造をとる場合に、シグナルが生成される。
【0132】
エキシマーとは、必ずしも共有結合でない、かつ光子によって励起されている分子全体および同一の励起されていない分子全体の間に形成される付加物である。前記付加物は、本来は一過性であり、それが光子の放出によって蛍光を発するまで存在する。エキシマーは、特定波長の光で励起すると、いずれかのフルオロフォアの作用単独によって発せられるものとは大きさの点でも異なる、異なる波長の光を発する2つのフルオロフォアの相互作用を表す。通常の発光スペクトルのものよりも長い波長に新しい蛍光バンドを産生することによって、エキシマー(またはエキシマーの形成)を認識することが可能である。励起スペクトルはモノマーのものと同一であるため、エキシマーを蛍光共鳴エネルギー移動と区別することができる。エキシマーの形成は、フルオロフォアの幾何学的配置に依存し、かつそれらの間の距離によって強い影響を受ける。
【0133】
一実施形態では、ピレン成分は、ペプチドプローブのそれぞれの末端にまたは付近に存在し、フルオロフォア間のエキシマー形成は、全体的なペプチド立体構造がαヘリックスまたはランダムコイルである限りは無視できる程度であるが、ペプチド物質がピレン成分を互いに近接させるような構造変化(例えば、βシート立体構造への立体構造変化)を受ける場合にはエキシマーが形成される。ペプチドの他の位置に存在するピレン成分も、エキシマー形成が立体構造依存的である限り、本文脈において有用であり得る。さらに、エキシマー形成の大きさは、存在するタンパク質分析物の量に直接関係する。したがって、本発明の方法は、エキシマー形成を検出することによって、標的タンパク質または構造の検出およびインビボイメージングを可能にする。
【0134】
ペプチドプローブが標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化する実施形態では、ピレン成分がペプチドプローブのそれぞれの末端にまたは付近に存在する場合、エキシマーシグナルは、ペプチドの非会合状態に付随するシグナルであり得、かつピレンモノマー蛍光(fluoresce)はより低くなる。そのようなペプチドが、βシート立体構造の標的タンパク質と接触した場合、それらはピレン標識の物理的近接性を減じる立体構造変化を受け、結果としてピレンエキシマーシグナルの減少およびピレンモノマーシグナルの増大をもたらす。ペプチドの他の位置に存在するピレン成分も、ペプチドプローブが会合(例えば、結合している)状態または非会合(例えば、標的タンパク質に結合していない)状態にあるかどうかに依存して変化する立体構造にエキシマー/モノマーシグナル伝達が依存する限り、本文脈において有用であり得る。さらに、これらの実施形態では、ピレンモノマーシグナルの増大またはピレンエキシマーシグナルの低下は、存在する標的タンパク質の量に直接関係する。したがって、これらの実施形態は、同様に、エキシマーおよびモノマーシグナル伝達をモニタリングすることによって、標的タンパク質または構造の検出およびインビボイメージングを可能にする。これを、ペプチド22を用いた図11に示す(以下により詳細に記載される)。特に、図11は、可溶性Aβオリゴマーの非存在下(左)および存在下(右)での、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチド22(配列番号:2)に関する生の蛍光スペクトルを図解している。ペプチド22の蛍光は、オリゴマーの非存在下では長期間安定(モノマーまたはエキシマーの蛍光に増大なし)であるが、可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合には、ピレンモノマーシグナルの増大を示す。
【0135】
エキシマーの形成を、光学特性の変化によって検出することができる。そのような変化を、プローブに付着させたフルオロフォアに依存した、多数ある中でも、UV、IR、CD、NMR、または蛍光を含む公知の蛍光分析技術によって測定することができる。これらの光学特性の変化の大きさは、変化に付随する構造状態をとっている結合体の量に直接関係し、かつ存在する標的タンパク質の量または構造に直接関係する。
【0136】
同様の考察がFRETに当てはまる。例えば、ペプチドプローブを、以下のFRET標識ペア:DACIA−I/NBD、マリーナブルー/NBD、およびEDANS/Fam(フルオレセイン(fluorescene))から選択される標識で、それぞれの末端においてまたは付近において標識することができる。標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の低い立体構造からより規則性の高い立体構造へ変化するペプチドプローブに関して、FRETシグナルの検出は、ペプチドプローブのβシート立体構造に関連し、かつ標的タンパク質の存在と相関する。標的タンパク質と会合または結合したらより規則性の高い立体構造からより規則性の低い立体構造へ変化するペプチドプローブに関して、FRETシグナルの検出はプローブの非会合状態に関連し、一方で、異なる(モノマー)シグナルまたは、シグナルなしの検出は標的タンパク質の存在と相関する。
【0137】
同様の考察が、前述のように、フルオロフォア/クエンチャーペアにも当てはまる。
【0138】
前述のように、本明細書に記載されるペプチドプローブを、例えばバックグラウンドシグナルの低下を示すことによって、検出アッセイにおける性能の向上を達成するように設計する。したがって、ペプチドプローブは、βシート立体構造を示す標的タンパク質を検出することにおける参照ペプチドよりも、より感度が高くかつより信頼性が高いものであり得る。
【0139】
前述のように、標的タンパク質は、疾患または病状に関連し得る。したがって、標的タンパク質の検出は、疾患または病状の診断またはそのリスクと相関し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるペプチドプローブによって検出されるβシート立体構造を示す標的タンパク質の量は、臨床的に関連のある疾患の特徴、例えば疾患の進行または状態、あるいは疾患に対する素因などと相関し得る。他の実施形態では、本明細書に記載される方法を用いて、その特徴がADなどのアミロイド形成疾患における疾患の進行に対応することが知られている、患者に存在するミスフォールドアミロイドタンパク質の量、および/またはAβ40対Aβ42タンパク質の比率を測定することができる。
【0140】
本明細書に記載されるペプチドプローブは、標的タンパク質が、例えば治療状況において有用であり得るβシート立体構造を示す能力を阻害する薬剤を同定するのにも有用である。そのような方法では、薬剤を標的タンパク質とインキュベートし、ペプチドプローブとβシート立体構造を示す標的タンパク質との結合を検出する。薬剤とのインキュベーションありおよびインキュベーションなしで、標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの量を比較することによって、該薬剤の阻害能を判定することができる。例示的方法は、US2008/0095706(米国特許出願第11/828,953号に相当)に記載されており、その全内容は参照することによりその全体として本明細書に組み入れられている。
【0141】
5.インビボ治療法
他の実施形態では、標的タンパク質のタンパク質凝集体の形成を阻止するためのインビボ方法論であって、該標的タンパク質を該標的タンパク質に対するペプチドプローブとインビボで接触させる工程であって、該ペプチドプローブは該標的タンパク質に優先的に結合し、それによって、該標的タンパク質のより規則性の高いタンパク質凝集体の形成を阻止する工程を含む方法論を提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドプローブは、モノマー、可溶性オリゴマー、および不溶性自己凝集体からなる群より選択される自己凝集の特定状態にある標的タンパク質に優先的に結合する。
【0142】
他の実施形態によれば、標的タンパク質に治療剤を送達するための方法論であって、該治療剤を該標的タンパク質に対するペプチドプローブと結合させる工程、およびペプチドプローブ−治療剤結合体をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法論を提供する。例えば、標的タンパク質の部位への治療剤の標的送達のために、ペプチドプローブを治療剤に(直接的にまたはリンカーを介して)結合させることができる。上記のUS2008/0095706に開示されている、そのようなインビボ実施形態では、ペプチドプローブを(単独でまたは別の治療剤を含む組み合わせで)局所注入などによって患者に投与することができ、かつ該患者内に存在する標的タンパク質またはより規則性の高い標的タンパク質構造の任意の部位への局在が可能となり、治療効果をもたらす。鼻腔内および経口を含む、他の投与経路も企図される。対象となる特定領域には、血管組織、リンパ組織、または脳(海馬または前頭葉を含む)、あるいは他の器官、例えば心臓、腎臓、肝臓、または肺などが含まれてよい。
【0143】
6.キット
本明細書に記載されるペプチドを含むキットも提供する。本明細書に記載される方法を実践するためのキットを調製することができる。典型的には、キットは、方法を実践するのに有用な、少なくとも1つの成分または成分のパッケージされた組み合わせを含む。「パッケージされた組み合わせ」とは、キットが、1つ以上の成分、例えばペプチドプローブ、バッファー、使用指示書等の組み合わせを含有するただ1つのパッケージを提供することを意味する。ただ1つの容器を含有するキットは、「パッケージされた組み合わせ」の定義の範囲に含まれる。キットは、本明細書に記載される方法を実践するのに必要な成分の一部またはすべてを含んでいてよい。典型的には、キットは、少なくとも1つの容器内に少なくとも1種のペプチドプローブを含む。キットは、1つ以上の容器内に、同じであっても異なってもよい複数種のペプチドプローブ、例えば異なる配列および/または異なる標識を含むプローブを含んでいてよい。複数種のプローブは、ただ1つの容器内、またはそれぞれがただ1種のプローブを含有する別々の容器内に存在してよい。
【実施例】
【0144】
実施例1
ペプチドに蛍光レポーター成分を結合させることによって、種々の溶媒条件下での、または相互作用パートナー(例えば、標的タンパク質)および補因子(例えば、抗アミロイド剤)の存在下での、ペプチドの立体構造的動態をモニタリングする単純なメカニズムを提供することができる。前述のように、ピレンは、ピレンがモノマー状態にあるかどうか、あるいはそれが密接に物理的に近接しているまたは他のピレン成分と対合している(エキシマー状態)かどうかに依存して、2つの明確に区別できる蛍光プロファイルを発する。ピレンを本明細書に記載されるペプチドのN末端およびC末端にまたは付近に結合させた場合、ピレン成分は、該ペプチドの立体構造に依存して異なる距離で分離され得、ピレンは、βシート立体構造では密接に物理的に近接し(図1B)、ランダムコイル/αヘリックス立体構造ではさらに離れる(図1C)。したがって、ピレンを本明細書に記載されるペプチドのN末端およびC末端にまたは付近に結合させた場合、それは、該ペプチドの立体構造に依存して2つの明確に区別できる蛍光プロファイルを有する蛍光シグナルを提供し得、モノマーシグナルは該ペプチドのランダムコイル/αヘリックス立体構造に付随し、エキシマーシグナルは該ペプチドのβシート立体構造に付随する。結果を、βシート立体構造のシグナル(エキシマー)として、またはβシート立体構造に由来するシグナル(エキシマー)とαヘリックス立体構造由来のシグナル(モノマー)の蛍光比として報告することができる。
【0145】
ペプチドの立体構造に依存して異なるシグナルを生じるペプチドを選択するために、インシリコモデリングを用いて、1つより多いピレン成分を対象となるペプチドに結合させた場合のピレン間距離を予測することができる。図1Aは、Aβペプチド(配列番号:1)の領域に相当するペプチドのそれぞれの末端に結合させたピレンの、室温における該ペプチドの溶媒環境に依存した、ピレン間距離の分布についてのインシリコ予測を図解している。この図に示されているように、前記ペプチドは水中ではβシート立体構造をとり、ピレン成分は相対的に密接に近接している(N末端およびC末端ピレン環の中心間は約10Å)。対照的に、前記ペプチドは40%トリフルオロエタノール(TFE)中ではαヘリックス立体構造をとり、ピレン成分はさらに離れている(N末端およびC末端ピレン環の中心間は約20Å)。
【0146】
実施例2
本明細書に記載される原則に従って、新規なペプチドプローブを設計した。図2に図解されているように、前記ペプチドの配列は、Aβペプチドのβシート形成領域であるAβペプチドのアミノ酸17−35に基づく。参照配列(WT;配列番号:1)は、ピレン標識付けを容易にするために付加された末端リジン残基を含む野生型配列に相当する。
【0147】
ペプチド22(配列番号:2)は、ヒスチジン残基による置換、グルタミン酸残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0148】
ペプチド38(配列番号:3)は、4個の連続したアラニン残基による置換、ヒスチジン残基による置換、グルタミン酸残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0149】
ペプチド45(配列番号:4)は、3個の連続したN末端アラニン残基の付加、ヒスチジン残基による置換、グルタミン酸残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0150】
ペプチドI32S(配列番号:5)は、イソロイシン残基のロイシン残基による置換、およびC末端リジン残基の付加を含む。
【0151】
ペプチドM35A(配列番号:6)は、C末端残基のアラニン残基による置換、および該ペプチドのC末端残基としてのリジン残基の付加を含む。
【0152】
ペプチドE22P(配列番号:7)は、グルタミン酸残基のプロリン残基による置換を含む。
【0153】
ペプチドGM6(配列番号:8)は、フェニルアラニン残基のセリン残基による置換、ならびにロイシン残基のプロリン残基による置換を含む。
【0154】
前述のように、ペプチド22、38、および45(配列番号:2〜4)におけるヒスチジンおよびグルタミン酸残基置換によって、αヘリックス立体構造を安定化させ、かつ/あるいはアッセイ条件を制御することによって生成されるシグナルを制御するための手段を提供し得る、それらの残基間での塩橋の形成が可能となる。前述のように、βシート立体構造の標的タンパク質の非存在下では、ペプチドはβシート立体構造をとる可能性が低いため、これらのペプチドはバックグラウンドシグナルの低下を示す。
【0155】
前述のように、ペプチド38(配列番号:3)およびペプチド45(配列番号:4)における連続したアラニン置換(アラニン反復)は、強いαヘリックス傾向を有し、ゆえにペプチドのαヘリックス立体構造を安定化する。先と同様に、βシート立体構造の標的タンパク質の非存在下では、ペプチドはβシート立体構造をとる可能性が低いため、これらのペプチドはバックグラウンドシグナルの低下を示す。
【0156】
前述のように、いくつかの置換によって、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用するとβシート立体構造または他の立体構造変化をとることが容易になり、それによって、ペプチドは、標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると、参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるまたは立体構造変化を受ける。配列番号:7、9〜13、および19〜21における、アラニンのグリシンへの置換、グルタミン酸のプロリン、グリシン、グルタミン、またはリジンへの置換、およびアスパラギン酸のアスパラギンへの置換によって、増強したβシート形成および凝集特性を備えたペプチドプローブが生じる。
【0157】
ペプチドM35A(配列番号:6)におけるC末端メチオニン置換によって、該ペプチドは参照(野生型)配列よりも酸化環境においてより安定となる。
【0158】
追加の作業によって、ペプチドI32S(配列番号:5)におけるイソロイシンのセリンへの置換、ペプチドAD323、AD325、AD330、AD329、AD328、およびAD327(配列番号:28〜33)におけるセリン、ヒスチジン、イソロイシン、および/またはロイシンのアスパラギン酸への置換、ならびにペプチドGM6およびGM6バリエーション1(配列番号:34〜35)におけるフェニルアラニン(phenylalanie)のセリンへの置換およびロイシンのフェニルアラニンへの置換によって、これらのプローブは、Aβオリゴマーなどの標的タンパク質と接触、結合、または相互作用すると、参照(野生型)配列よりもより効率的に立体構造変化を受け得るが、結果として生じるプローブのβシート立体構造は不安定になることが示されている。
【0159】
実施例3
ペプチドプローブを、いくつかの異なるアッセイで公知の標的タンパク質に対して用い、既定のアッセイにおける使用に関するおよび/または既定のアッセイ条件下での使用に関するそれらの適合性を評価することができる。例えば、あるペプチドはある特定のアッセイでより有効であり得、一方で、異なるペプチドは異なるアッセイでより効果を生じ得る。配列番号:1のペプチドを、以下に記載するように、いくつかの異なるアッセイで用いた。同様のアッセイを用いて、試験サンプル中の標的タンパク質を検出することができる。
【0160】
(i)不溶性複合体
このアッセイでは、インビトロの遠心分離に基づく相互作用アッセイにおいて、可溶性ペプチドプローブを不溶性標的タンパク質線維と結合させる。標的タンパク質に結合するペプチドプローブは、遠心分離を用いて分離し得る不溶性ペレット中に検出される。不溶性標的タンパク質線維に結合しないペプチドプローブは、上清にとどまり、ペレット中には検出されない。
【0161】
Aβ42線維(標的タンパク質)およびペプチドプローブ(配列番号:1)を、増大していく量のトリフルオロエタノール(TFE)の存在下で3時間インキュベートする。サンプルを17,000×gで30分間遠心分離し、ペレットをサンプルバッファー中で変性させ、SDS−PAGEによって分析する。結果を図3に示す。参照サンプル(インプット)を比較のために示す。本実施例において、標的タンパク質とペプチドプローブの結合は、40%TFE条件ではっきりと観察される(40%TFEにおける左と右のパネルを比較されたく、左のパネルでは「ペプチド」バンドが現れているが、右のパネルでは現れていない)。このことは、ペプチドが、標的タンパク質の原線維形態を含む回転させたペレット中に落ちたことを意味しており、原線維はSDS−PAGE条件下でモノマーに分解するため、それはSDS−PAGE上ではモノマーAβ42として示されている。
【0162】
ペプチドを検出可能な標識で標識した場合、ペレットにした不溶性複合体中のシグナルは、標的−ペプチド結合と相関するであろう(図示せず)。
【0163】
(ii)サイズ排除クロマトグラフィー
このアッセイでは、インビトロのサイズ排除クロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイにおいて、可溶性ペプチドプローブを、例えば可溶性標的タンパク質オリゴマーと結合させる。
【0164】
標識ペプチドプローブ(配列番号:1,2μM)および標的タンパク質(Aβオリゴマー,2μM)を、Hepesバッファー(10mM,pH7.0)中で90分間一緒にインキュベートし、次いで5000Da分子量のカットオフを有するG25サイズ排除カラムにロードする。カラムを735×gで2分間の遠心分離にかける。溶出液およびカラム物質をTECAN蛍光光度計によって分析する。この方法を図14Aに図解する。溶出液をSDS−PAGEによって分析してもよい(図示せず)。
【0165】
このアッセイでは、結合していないペプチドプローブは、そのサイズが小さいためにカラムにとどまる。したがって、溶出液中での標識ペプチドプローブの検出は、該溶出液中の標的タンパク質−ペプチド複合体の存在を意味する。このことは、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している、図14Bに図解された結果によって確認される。
【0166】
ペプチド45を用いた同様のアッセイでは、標識ペプチドプローブ(配列番号:4,2μM)および標的タンパク質(Aβオリゴマー,2μM)を、Hepesバッファー(10mM,pH7.0)中で90分間一緒にインキュベートし、次いで5000Da分子量のカットオフを有するG25サイズ排除カラムにロードする。カラムを735×gで2分間の遠心分離にかける。溶出液およびカラム物質をTECAN蛍光光度計によって分析する。この方法を図4Aに図解する。このアッセイでは、結合していないペプチドプローブは、そのサイズが小さいためにカラムにとどまる。したがって、溶出液中での標識ペプチドプローブの検出は、該溶出液中の標的タンパク質−ペプチド複合体の存在を意味する。このことは、蛍光標識ペプチドがオリゴマーの存在下で回収されることを示している、図4Bに図解された結果によって確認される。
【0167】
(iii)アフィニティークロマトグラフィー
このアッセイでは、インビトロのアフィニティークロマトグラフィーに基づく相互作用アッセイにおいて、可溶性ペプチドプローブを、例えば可溶性標的タンパク質オリゴマーと結合させる。
【0168】
本実施例のために、標的タンパク質をビオチンなどのアフィニティー分子で標識し、標識ペプチドプローブとインキュベートする。インキュベーション後、混合物を、例えばカラムまたはビーズの支持体上のストレプトアビジンなどの捕捉成分とインキュベートし、それによって、標的タンパク質を捕捉する。結合していない物質を洗浄後、支持体上の結合している標的タンパク質−ペプチドプローブ複合体の存在を意味するであろう、標識ペプチドプローブの検出のために支持体を調べることができる。あるいは、結合している物質を溶出し、次いで標識ペプチドプローブの検出のために調べてもよい。先と同様に、標識ペプチドプローブの検出は、溶出液中の標的タンパク質−ペプチドプローブ複合体の存在を意味するであろう。図5Aおよび15Aは、ビオチン標識標的タンパク質とストレプトアビジンコートされたビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィーを図解している。このタイプのアッセイは、例えば既定のペプチドプローブの有効性を評価するのに有用である。
【0169】
標識ペプチドプローブ(配列番号:1,2μM)とビオチン化標的タンパク質(Aβ42オリゴマー,2μM)をPBS中で30分間インキュベートする。次いで、混合液をストレプトアビジンでコートされた磁気ビーズを用いた捕捉工程にかける。ビーズをPBSで洗浄して結合していない物質を除去し、捕捉物質をSDS−PAGEによって分析する。
【0170】
代替的アッセイ(図15Aに図解されているプロトコールB)では、4μNのビオチン化Aβ42オリゴマーを、あらかじめ洗浄したストレプトアビジンダイナビーズと室温で30分間インキュベートした。次いで、複合体をPBSバッファーで2回洗浄し、PBSバッファー中に再懸濁した。次いで、等量の結合しているオリゴマーと4μMの標識ペプチドプローブ(配列番号:1)を混ぜ合わせ、室温で30分間インキュベートした。次いで、結合していない物質を3回のPBS洗浄で洗い流し、続いて磁石によってビーズ複合体を回収した。次いで、複合体を1×LDSバッファーに再懸濁し、10分間ボイルし、10%Bis−Trisゲルにロードした。
【0171】
図15Bは、結果を図解している。図に示されているように、高分子量オリゴマーの存在下では、標識ペプチドプローブのみが捕捉物質中に検出され、ペプチドプローブが標的タンパク質オリゴマーに結合することを示している。捕捉物質を、蛍光プロファイルによっても分析することができる(図示せず)。
【0172】
ペプチド22を用いた同様のアッセイ(プロトコールA)では、標識ペプチドプローブ(配列番号:2,4μM)とビオチン化標的タンパク質(Aβ42オリゴマー,4μN)を、Hepesバッファー(10mM,pH7.0)中で90分間インキュベートする。次いで、混合液をストレプトアビジンでコートされた磁気ビーズを用いた捕捉工程にかける。ビーズをPBSで洗浄して結合していない物質を除去し、捕捉された物質をSDS−PAGEによって分析する。
【0173】
ペプチド22を用いた代替的アッセイ(図5Aに図解されているプロトコールB)では、4μNのビオチン化Aβ42オリゴマーを、あらかじめ洗浄したストレプトアビジンダイナビーズと室温で30分間インキュベートした。次いで、複合体をPBSバッファーで2回洗浄し、PBSバッファー中に再懸濁した。次いで、等量の結合しているオリゴマーと4μMの標識ペプチドプローブ(配列番号:2)を混ぜ合わせ、室温で30分間インキュベートした。次いで、結合していない物質を3回のPBS洗浄で洗い流し、続いて磁石によってビーズ複合体を回収した。次いで、複合体を1×LDSバッファーに再懸濁し、10分間ボイルし、10%Bis−Trisゲルにロードした。
【0174】
図5Bは、結果を図解している。左のパネル(レーン1〜3)は、ストレプトアビジン磁気ビーズによって合成ビオチン化オリゴマーが落ちたことを示している(レーン2および3をレーン1と比較されたい)。レーン4は、100%結合に類似した、4μMの濃度でゲルに直接ロードしたペプチドプローブ(ペプチド22)を示している。レーン2は、ゲルにロードした結合反応物(プロトコールA)を示しており、Aβオリゴマーとペプチドプローブが共溶出することに留意されたい。レーン3および4は、ビオチン化Aβ42オリゴマーの添加なし(レーン3)および添加あり(レーン4)で、プロトコールBに従って調製した結合反応物を示している。オリゴマーの非存在下では、ペプチドプローブはゲル上に存在せず、それがストレプトアビジンビーズに結合していないことを意味する。ビオチン化オリゴマーの存在下では、ペプチドプローブは回収される。これらの結果は、ペプチドプローブ(probed)がビオチン化Aβ42オリゴマーに直接結合することを示している。
【0175】
実施例4
前述のように、いくつかの実施形態では、例えばペプチドの(結合していない)ランダム/αヘリックス立体構造に付随する任意のシグナル(例えば、バックグラウンドシグナル)とペプチドの(結合している)βシート立体構造に付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させることによって、標的タンパク質に結合していないペプチドに付随する任意のシグナルと標的タンパク質に結合しているペプチドに付随するシグナルとの間のシグナル差を増大させるように、ペプチドプローブのバリアント配列を設計する。このパラメーターを評価するための一方法は、ペプチドにαヘリックス立体構造を誘導する有機溶媒である種々の濃度のTFE中で、標識ペプチドをインキュベートすることである。そのαヘリックスおよびβシート立体構造間のシグナルに有意差のあるペプチドは、前述の理由で特に有用であり得る。
【0176】
それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ22(配列番号:2,2μM)を、trisバッファー(10mM Tris,pH7.0)中0〜80%TFE中で30分間インキュベートする。反応物をTECAN蛍光光度計によって測定し、エキシマー:モノマーの蛍光比を記録する。図6Aに示されているように、バッファー中でのペプチド22の最大シグナル応答は(80〜20%TFEでシグナルが得られる)、およそ100比単位であり、参照ペプチド(配列番号:1)のものの4倍を上回る。線維状アミロイド標的タンパク質の存在下で立体構造変化を受ける能力について試験した場合、ペプチド22は参照配列(配列番号:1)より2.6倍高く機能する。つまり、ペプチド22は、線維状アミロイド標的タンパク質の存在下で、参照ペプチドの最大シグナル獲得より約2.6倍高い最大シグナル獲得を示す。
【0177】
実施例5
(i)ペプチドプローブ立体構造の構造解析
実施例2で論じているように、ペプチド22、38、および45(配列番号:2〜4)内にヒスチジンおよびグルタミン酸置換を導入して、それらの残基間での塩橋の形成を可能にした。種々のpHおよび塩の条件下でそのようなペプチドに対してCD分析を行い、既定の条件下でのペプチドの立体構造を決定することができる。
【0178】
本実施例では、それぞれの末端においてピレン成分で標識されたペプチド38(配列番号:3)を用いる。図7に示されているように、pH7において(実線)、ペプチドは高度にαヘリックスであり(38%)、αヘリックス立体構造の割合はpH4(細かい点線)においてさらに大きい(52%)。500mMのNaClの添加によって、どちらのpHレベルにおいても、βシート立体構造を好んで、αヘリックス立体構造が大幅に減少する。したがって、pH7で500mMのNaClの存在下では(大きな破線)、αヘリックス含有量は4%であり、一方で、βシート含有量は40%である(塩なしでは10%より高い)。pH4で500mMのNaClの存在下では(一点鎖線)、αヘリックス含有量は6%であり、一方で、βシート含有量は52%である(塩なしでは4%より高い)。これらの結果は、塩橋によってαヘリックス立体構造が安定化し、その形成は低いpHおよび低塩で促されることを意味する。より高塩濃度では、塩橋は破壊され、αヘリックス立体構造はもはや安定でない。
【0179】
(ii)標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの構造解析
標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの立体構造を、CD分析によって評価することができる。図8は、それぞれ別々のならびに混ぜ合わせた、2ピレン標識ペプチド38(配列番号:3)およびAβ42オリゴマー(標的タンパク質)の立体構造を示している。ペプチド単独では高度にαヘリックスである(36%)。ペプチド38と標的タンパク質を混合すると、ペプチドは、βシート立体構造の増加およびαヘリックス立体構造の減少をもたらす立体構造シフトを受ける。つまり、ペプチド38の二次構造が変化し、それによって、αヘリックスの割合が半減し(18%)、一方で、βシート構造の割合が20%から31%に高まる。したがって、ペプチド38は、Aβ42オリゴマー標的タンパク質と接触するとβシート立体構造をとり、その立体構造変化をCD分析によって検出することができる。
【0180】
(iii)標的タンパク質に結合しているペプチドプローブのエキシマー分析
標的タンパク質に結合しているペプチドプローブの立体構造を、ペプチド単独におけるおよび標的タンパク質と組合させたものにおけるピレン蛍光を測定することによって、検出することもできる。図9Bは、遊離2ピレン標識ペプチド45(配列番号:4)のピレン蛍光を示している。βシート立体構造に付随するエキシマー蛍光は、αヘリックス立体構造に付随するモノマー蛍光とは異なる波長を有し、エキシマー:モノマーの蛍光比は9:1である。図9Aは、種々の量のAβ42オリゴマー標的タンパク質(0、0.03、0.1、および0.3μM)の存在下での、2ピレン標識ペプチド45のピレン蛍光を示している。Aβ42オリゴマー標的タンパク質の添加によって、最も高いAβ42オリゴマー濃度(0.3μM)において20:1へのエキシマー:モノマーの蛍光比の用量依存的シフトが生じる。このエキシマー:モノマーの蛍光比の変化は、βシート立体構造の増加およびαヘリックス立体構造の減少をもたらす、対応するペプチドの立体構造変化を反映している。したがって、ペプチド45は、Aβ42オリゴマー標的タンパク質と接触すると用量依存的様式でβシート立体構造をとり、その立体構造変化をピレン蛍光を測定することによって検出することができる。
【0181】
実施例6
図10は、本明細書に記載される方法およびプローブのいくつかの異なる実施形態を概略的に図解している。
【0182】
(i)Aβ線維アッセイ(最上段パネル)
Aβ線維アッセイを、40%TFEなどの有機溶媒中で行うことができる。図10の最上段パネルに図解されているように、Aβ線維の非存在下にて40%TFE中でインキュベートした、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ(例えば、配列番号:1)は、CD分光法によって観察し得る、主としてαヘリックスである立体構造を示す(データ示さず)。この立体構造は、ピレン成分のモノマー蛍光すなわち自己蛍光を伴う(370〜410nm;図6を参照されたい)。Aβ線維基質を導入すると、プローブはβシート立体構造をとる。この立体構造は、ピレン成分のエキシマー蛍光を伴う(430〜530nm;図6を参照されたい)。
【0183】
(ii)Aβオリゴマーアッセイ(下段パネル)
Aβオリゴマーアッセイを、水などの水性溶媒中で行うことができる。図10の下段パネルAに図解されているように、Aβオリゴマーの非存在下で、それぞれの末端においてピレンで標識されたペプチドプローブ22(例えば、配列番号:2)は、ピレン成分のエキシマー蛍光を伴う立体構造を示し(図11を参照されたい)、ゆえに増加したβシート構造を有すると考えられる。Aβオリゴマーを導入すると、蛍光プロファイルは主として自己蛍光(モノマー)にシフトし(図11を参照されたい)、これは、βシート構造の減少またはαヘリックス構造の増加に関連する。
【0184】
あるいは、図10の下段パネルBに図解されているように、ペプチドプローブを、それぞれの末端においてFRETペアの構成要素(例えば、FAMおよびEDANS)で標識することができる。例証されている実施形態によれば、FRET標識はAβオリゴマーの非存在下では相互作用しないが、Aβオリゴマーを導入すると、蛍光プロファイルは、βシート構造の増加に関連するFRET蛍光にシフトする。ペプチドプローブAD293(配列番号:52)、AD292(配列番号:53)、AD291(配列番号:54)、およびAD290(配列番号:55)は、このタイプの立体構造変化と一致した蛍光挙動を示している。
【0185】
図10の下段パネルに関する観察により、ペプチドプローブのアミノ酸配列に加えて、少なくともこれらのペプチドに関して、標識の性質はペプチドプローブの折り畳み特性および/または立体構造に影響し得ることが示唆される。したがって、Aβオリゴマーの非存在下で、ピレン標識は、エキシマー蛍光をもたらすβシート構造の形成を促し得る。一方、FRETペアは、基質の非存在下ではそれほど強く相互しないようである。
【0186】
実施例7
前述のように、ペプチド22(配列番号:2)は、Aβオリゴマーと相互作用すると立体構造変化を受ける。図11は、それぞれの末端においてピレンで標識されており、かつ10mMのHepes(pH7.0)中で室温にて水性条件中でいくつかの時間インキュベートした、ペプチド22に関する蛍光スペクトルを図解している。ペプチド22の蛍光は、オリゴマーの非存在下では長期間安定(モノマーまたはエキシマーの蛍光に増大なし)であるが、可溶性Aβオリゴマーとインキュベートした場合には、ピレンモノマーシグナルの増大を示す。(実線=時間0;破線=3時間;点線=18時間)。具体的には、図11(右のパネル)に示されているように、ペプチド22は、ピレンエキシマー(〜460および485nmで最大発光)からピレンモノマー(〜380および400nmで最大発光)への時間依存的立体構造シフトを示す。
【0187】
実施例8
本実施例は、Aβオリゴマーに対するペプチド22の特異性を例証する。
【0188】
ペプチド22(100nM)を、等モル濃度(0、30、100、および300nN)のいくつかの潜在的Aβ基質:Aβ42オリゴマー(タイプ1);Aβ42オリゴマー(タイプ2);Aβ1−42モノマー;Aβ1−40モノマー;Aβ1−42線維;Aβ1−40線維:ウシ血清アルブミン(コントロール基質);および炭酸脱水酵素(コントロール基質)と、室温で15時間水中にてインキュベートする。
【0189】
図12に示されているように、ペプチド22は、2種のAβオリゴマー基質に関して、オリゴマー投入量が増加するにつれてピレンモノマー(自己)蛍光が増大することを特徴とする、用量依存的な蛍光応答を示す。Aβ42モノマーおよびAβ40線維は、高い基質投入量でわずかな蛍光応答を誘導した。これらのデータは、水性条件下で、ペプチド22の蛍光応答は、標的特異的かつ用量反応的であることを実証している。
【0190】
実施例9
本実施例は、ペプチド22の反応性をさらに調査する。
【0191】
図13Aに関して、ペプチド22(70nM)を、0、30、100、または300nNの合成Aβ42オリゴマーと25℃でインキュベートし、3時間のインキュベーション後に蛍光発光スペクトルを記録する。図13(最上段パネル)に示されているように、Aβ42オリゴマーの非存在下で、ペプチド22は、非常にわずかなピレンモノマー(自己)蛍光を示す(370〜420nm)。しかしながら、ピレンモノマー(自己)蛍光は、Aβ42オリゴマー濃度とともに用量依存的様式で増大する。例えば、図13に示されているように、ペプチド22は、30のAβ42オリゴマーとよりも300nNのAβ42オリゴマーとインキュベートした場合に、より大きなピレンモノマー蛍光を示す。(実線−Aβ42オリゴマーなし;一点鎖線−30nNのAβ42オリゴマー;大きな破線−100nNのAβ42オリゴマー;細かい点線−300nNのAβ42オリゴマー)。
【0192】
円偏光二色性(CD)分析を用いて、ペプチド22、合成Aβ42オリゴマー、およびそれらの混合物の二次構造を決定する。CDを測定する前に、サンプルを10mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)中で室温にて3時間インキュベートする。それぞれのサンプルについて、相対的楕円率を190〜260nmから評価する。図13(下段パネル)は、4μMのペプチド22(実線);33nMの合成Aβ42オリゴマー(一点鎖線);2つの個々のサンプルの算術的合計(大きな破線);ペプチド22と合成Aβ42オリゴマー混合物の混合物(細かい点線)のCDプロファイルを示している。それぞれのデータセットは、3回の別々のスペクトルスキャンの平均を表す。
【0193】
データによれば、ペプチド22は、単独で、主としてβシート二次構造を有するのに対し(36%)、合成Aβ42オリゴマーは本質的に組織化されていない(すなわち、楕円率はゼロ)ことが示されている。2つの種を一緒にインキュベートした場合、ペプチド22の構造は主としてβシートのままであり(43%)、2種の個々の成分の合計に非常に類似したプロファイルを有する。データによれば、ペプチド22の蛍光プロファイルを変化させる、ペプチド22とAβ42オリゴマーとの相互作用があると生じる立体構造変化は、CDによって検出され得ず、ゆえに該ペプチドまたはペプチド−オリゴマー複合体のβシート総含有量を有意には変化させないことが示唆される。
【0194】
実施例10
前述の原則に従って設計された例示的ペプチドプローブを、以下の表1に示す。配列中の陰影付けによって示されるように、ペプチド配列の大部分は、Aβペプチドのβシート形成領域であるAβペプチドのアミノ酸16−35(WT;配列番号:1)に基づいており(他は、Aβペプチドのより長い部分に基づく)、標識付けを容易にするために付加されたC末端リジン残基を含む。配列バリアントのカテゴリー(または複数のカテゴリー)を表中に表示する(例えば、安定性を向上させる、塩橋を提供する、溶解度を増大させる、αヘリックス形成を促進する、βシート構造を不安定化する、Aβ結合モチーフを付加する、等々のための改変)。異なる標識部位および標識ペアを含む、ペプチドプローブ標識付けの選択肢も例証する。別様に明記されていない限り、すべてのペプチドを2つのピレン標識で、一方をN末端アミン上で、もう一方をC末端リジン残基の側鎖上で標識した。さらに、別様に明記されていない限り、すべての構築物は、カルボキシル基の代わりにC末端アミドを含有する。
【0195】
以下の略語を表中で用いている。
「PBA」=ピレン酪酸
「r」=d−アルギニン
「ダブシル」=4−(4−ジメチルアミノフェニル)ジアゼニル安息香酸
「EDANS」=5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸
「FAM」=5(6)カルボキシフルオレセイン
「ダンシル」=5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル
【0196】
【表1】
【0197】
天然に存在する変異体に基づくペプチドは、増強した凝集種形成能を有すると期待される。
【0198】
ペプチドプローブのペプチド22(配列番号:2)、ペプチド22バリエーション1(配列番号:14)、ペプチド22バリエーション2(配列番号:15)、ペプチド38(配列番号:3)、およびペプチド45(配列番号:4)は、水性アッセイにおいてAβ42オリゴマーと反応することが示されている。驚いたことには、この反応性は、主としてピレンエキシマー蛍光からピレン自己蛍光への移行を特徴とした。データによれば、これらのペプチドプローブは、水性条件下でAβ42オリゴマーと相互作用すると、βシート立体構造から減少したβシートまたは増加したαヘリックス立体構造(あるいは他の立体構造)への立体構造シフトを受けることが示唆される。
【0199】
P22設計を追求するために、Aβ42オリゴマーと相互作用すると観察される立体構造移行が、P22配列に関して観察されるよりもより熱力学的に有利であろうという見込みで、より不安定なβシート構造を有するP22バリアントを作製した。これらのペプチドを合成し、上の表1に一覧にする。
【0200】
表1に明記されているように、FRETペア、またはペアの蛍光成分(例えば、EDANS)の蛍光シグナル伝達を消光するダブシルクエンチャー成分を用いて、ペプチドを構築した。代替的標識ペアを有するこれらのペプチドによって、水性アッセイにおけるより高い感度が可能となり得る。
【0201】
Aβ42オリゴマーと相互作用するとβシート立体構造から減少したβシートまたは増加したαヘリックス立体構造(あるいは他の立体構造)への立体構造シフトを受けるペプチドプローブ(例えば、ペプチド22)を、上の表1に例証される蛍光標識/クエンチャーペアで標識した場合、蛍光標識シグナルは、初めに消光され、次いで該ペプチドプローブがAβ42オリゴマーと相互作用して立体構造シフトを受けた場合には消光されず、蛍光シグナルの誘導が生じる。
【0202】
本発明の実践において、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、種々の修正および変化がなされ得ることは当業者に明白であろう。本発明の他の実施形態は、本明細書および本発明の実践についての検討から当業者に明白であろう。本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって明記されており、本明細書および実施例は、単なる例示として見なされることを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイド形成疾患に関連する立体構造変化を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブであって、該ペプチドプローブが、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したら検出可能なシグナルを生成する立体構造変化を受ける、ペプチドまたはペプチド模倣体であり、
該バリアント配列が、
(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは
(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは
(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような、かつ/あるいは
(D)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとるような、かつ/あるいは
(E)該バリアント配列のβシート構造が、該参照配列のものよりも熱力学的に弱いような、かつ/あるいは
(F)該バリアント配列が、該参照配列よりも増大した安定性および/または減少した反応性を有するような、かつ/あるいは
(G)該バリアント配列が、該参照配列よりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有するような、かつ/あるいは
(H)該バリアント配列が、該参照配列よりもさらなるAβ結合モチーフを有するような、かつ/あるいは
(I)該バリアント配列が、増大した凝集体形成能を有するような、
該参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、ペプチドプローブ。
【請求項2】
N末端、C末端、両末端、または、前記ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項1に記載のペプチドプローブ。
【請求項3】
前記ペプチドプローブが2つ以上の標識で標識されており、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合の該ペプチドプローブ上の2つ以上の標識間の距離が、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合の距離とは異なる、請求項1または2に記載のペプチドプローブ。
【請求項4】
前記ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合に検出可能な標識によって生成される前記シグナルが、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合に生成されるシグナルとは異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項5】
エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項3に記載のペプチドプローブ。
【請求項6】
エキシマーペアで標識されており、かつ、前記ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にエキシマーシグナルを発する、請求項5に記載のペプチドプローブ。
【請求項7】
前記検出可能な標識がピレン成分を含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項8】
FRETペアで標識されており、かつ、前記ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合に蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発する、請求項5に記載のペプチドプローブ。
【請求項9】
前記FRETペアが、DACIA−I/NBD、マリーナブルー/NBD、ダンシル/Trp、およびEDANS/FAMからなる群より選択される、請求項8に記載のペプチドプローブ。
【請求項10】
前記ペプチドプローブがフルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にフルオロフォアシグナルが消光される、請求項5に記載のペプチドプローブ。
【請求項11】
前記フルオロフォア/クエンチャーペアが、ピレン/ダブシル、EDANS/ダブシル、およびFAM/ダブシルからなる群より選択される、請求項10に記載のペプチドプローブ。
【請求項12】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失が、前記参照配列の内部でなされる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項13】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失が、前記参照配列のN末端またはC末端でなされる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項14】
バリアント配列が、C末端におけるリジン残基の付加をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項15】
前記バリアント配列が、酸化に耐性をもつ残基によるメチオニン残基の置換を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項16】
前記メチオニン残基がアラニン残基で置換されている、請求項15に記載のペプチドプローブ。
【請求項17】
前記バリアント配列が、前記参照配列の少なくとも3個の連続した残基のアラニン残基による置換または付加を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項18】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失により、前記バリアント配列内に塩橋が導入される、請求項1〜17のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項19】
前記バリアント配列が、グルタミン酸残基とヒスチジン残基の間、グルタミン酸残基とアルギニン残基の間、およびグルタミン酸残基とリジン残基の間からなる群より選択される残基間の塩橋を含む、請求項18に記載のペプチドプローブ。
【請求項20】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失により、前記ペプチドプローブ内にAβ結合モチーフが導入される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項21】
前記Aβ結合モチーフがGXXEGを含む、請求項20に記載のペプチドプローブ。
【請求項22】
前記バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、請求項1〜21のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項23】
前記標的タンパク質がAβタンパク質であり、かつ前記バリアント配列が、G29H、G29R、G29K、およびG33Eからなる群より選択される1個以上の置換を含む、請求項22に記載のペプチドプローブ。
【請求項24】
前記バリアント配列のβシート構造が、前記参照配列のβシート構造よりも熱力学的に弱い、請求項22または23に記載のペプチドプローブ。
【請求項25】
前記標的タンパク質がAβタンパク質であり、かつ前記バリアント配列が、I32S、F19S、S26D、H29D、I31D、L34D、およびL34Pからなる群より選択される1個以上の置換を含む、請求項24に記載のペプチドプローブ。
【請求項26】
前記バリアント配列が、前記参照配列よりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有する、請求項1〜25のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項27】
前記バリアント配列が、グルタミン酸残基および/またはd−アルギニン残基を導入する、1個以上のアミノ酸の付加または置換を含む、請求項26に記載のペプチドプローブ。
【請求項28】
前記バリアント配列が親水性成分に結合している、請求項26に記載のペプチドプローブ。
【請求項29】
前記親水性成分が可溶性ポリエチレングリコール成分を含む、請求項28に記載のペプチドプローブ。
【請求項30】
検出可能な標識が、前記ペプチドプローブの末端リジン残基の側鎖に結合している、請求項1〜29のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項31】
検出可能な標識が、前記ペプチドプローブの内部リジン残基の側鎖に結合している、請求項1〜30のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項32】
ビオチン成分に結合している、請求項1〜31のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項33】
ペプチドリンカーを介してビオチン成分に結合している、請求項32に記載のペプチドプローブ。
【請求項34】
前記ペプチドリンカーが、可動性リンカー、らせん状リンカー、トロンビン部位リンカー、およびねじれリンカーからなる群より選択される、請求項33に記載のペプチドプローブ。
【請求項35】
前記リンカーが、配列番号:56〜60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項34に記載のペプチドプローブ。
【請求項36】
内部リジン残基の側鎖を介してビオチン成分に結合している、請求項32に記載のペプチドプローブ。
【請求項37】
前記標的タンパク質がAβタンパク質である、請求項1〜36のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項38】
前記バリアント配列が、配列番号:2〜55からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のペプチドプローブ。
【請求項39】
前記バリアント配列が、配列番号:2(ペプチド22)のアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のペプチドプローブ。
【請求項40】
アミロイド形成疾患に関連する立体構造変化を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブであって、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体である、ペプチドプローブ。
【請求項41】
N末端、C末端、両末端、または、前記ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項40に記載のペプチドプローブ。
【請求項42】
エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項41に記載のペプチドプローブ。
【請求項43】
エキシマーペアで標識されており、かつ、標的タンパク質に結合していない場合には増大したエキシマーシグナルを発し、かつ、標的タンパク質に結合している場合には増大した自己シグナルを発する、請求項42に記載のペプチドプローブ。
【請求項44】
前記エキシマーペアが2つのピレン成分を含む、請求項43に記載のペプチドプローブ。
【請求項45】
FRETペアで標識されており、かつ、標的タンパク質に結合していない場合には増大した蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発し、かつ、標的タンパク質に結合している場合には非FRETフルオロフォアシグナルを発する、請求項42に記載のペプチドプローブ。
【請求項46】
フルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ、標的タンパク質に結合していない場合には減少または消光したシグナルを発し、かつ、標的タンパク質に結合している場合にはフルオロフォアシグナルを発する、請求項42に記載のペプチドプローブ。
【請求項47】
前記標的タンパク質がAβタンパク質である、請求項40〜46のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項48】
前記バリアント配列が、配列番号:2〜4、14〜15、および28〜35からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項47に記載のペプチドプローブ。
【請求項49】
前記標的タンパク質が、膵島アミロイドポリペプチド前駆体タンパク質、アミロイドβタンパク質、Aβペプチド、血清アミロイドA、インスリン、アミリン、非アミロイドβ成分、プリオン、ヘモグロビン、免疫グロブリンまたはそのフラグメント、β2−ミクログロブリン、α−シヌクレイン、ロドプシン、α1−アンチキモトリプシン、クリスタリン、タウ、p53、プレセニリン、低密度リポタンパク質受容体、アポリポタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、ニューロフィラメントタンパク質、トランスサイレチン、プロカルシトニンまたはカルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、ゲルゾリン、嚢胞性線維症膜貫通調節因子、ハンチントン病タンパク質、フィブリノゲンα鎖、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、コラーゲン、β−ヘキソサミニダーゼ、およびシスタチンCタンパク質からなる群より選択される、請求項1〜36および40〜46のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項50】
以下の工程を含む、試験サンプル中の標的タンパク質を検出するための方法であって、該標的タンパク質が、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示す、方法:
(i)該サンプルを請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドプローブと接触させて、試験混合物を形成する工程;および
(ii)該ペプチドプローブと該サンプル中に存在する任意の標的タンパク質との間の任意の結合を検出する工程。
【請求項51】
前記ペプチドプローブが、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ペプチドプローブが2つ以上の標識で標識されており、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合の該ペプチドプローブ上の2つ以上の標識間の距離が、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合の距離とは異なる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合に検出可能な標識によって生成される前記シグナルが、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合に生成されるシグナルとは異なる、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記ペプチドプローブが、エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項50〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記ペプチドプローブが、エキシマーペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にエキシマーシグナルを発する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記検出可能な標識がピレン成分を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ペプチドプローブが、FRETペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合に蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発する、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記ペプチドプローブが、フルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にフルオロフォアシグナルが消光される、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
工程(ii)が、標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける前記ペプチドプローブによって生成される任意のシグナルを検出することを含む、請求項50〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
工程(ii)が、前記ペプチドプローブおよび標的タンパク質を含む複合体中に存在する任意の検出可能な標識によって生成される任意のシグナルを検出することによって該複合体を検出することを含む、請求項51〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記複合体が不溶性複合体であり、かつ工程(ii)が、該不溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識によって生成される任意のシグナルを検出することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記複合体が可溶性複合体であり、かつ工程(ii)が、該可溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識によって生成される任意のシグナルを検出することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
工程(ii)の前に、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーから選択される処理によって前記試験混合物から前記複合体を分離する工程をさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
以下の工程を含む、アミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するための方法であって、ペプチドプローブが対象由来の生理学的サンプル中にある、方法:
(A)該サンプルを、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体であるペプチドプローブと、接触させる工程;ならびに
(B)該プローブと該サンプル中に存在する任意の標的タンパク質との間の任意の会合を検出する工程。
【請求項65】
前記ペプチドプローブが、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ペプチドプローブが、エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ペプチドプローブがエキシマーペアで標識されており、かつ工程(ii)が、任意の増大した自己シグナルまたは減少したエキシマーシグナルを検出することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ペプチドプローブがFRETペアで標識されており、かつ工程(ii)が、任意の増大した非FRETフルオロフォアシグナルまたは減少したFRETシグナルを検出することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記ペプチドプローブがフルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ工程(ii)が、任意の増大したフルオロフォアシグナルを検出することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
以下の工程を含む、対象においてアミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するためのインビボ方法:
(A)請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドプローブを該対象に投与する工程であって、該プローブが、該プローブが標的タンパク質に結合した場合にシグナルを生成する検出可能な標識で標識されている工程、および
(B)該シグナルを検出する工程。
【請求項71】
前記シグナルがイメージング技術を用いることによって検出される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記イメージング技術が、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、X線撮影法、断層撮影法、蛍光透視法、核医学、光学的画像法、脳造影法、および超音波検査法からなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
アミロイド形成疾患に罹患しているかその発症リスクを有する対象を処置する方法であって、請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドプローブを該対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項74】
前記プローブが、前記アミロイド形成疾患に対する追加の治療剤に結合している、請求項70〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブであって、該ペプチドプローブが、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとり;
該バリアント配列が、
(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは
(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは
(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような
該参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、ペプチドプローブ。
【請求項76】
アミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するためのインビボ方法における、請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項77】
アミロイド形成疾患に罹患しているかその発症リスクを有する対象を処置する方法における、請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項1】
アミロイド形成疾患に関連する立体構造変化を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブであって、該ペプチドプローブが、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したら検出可能なシグナルを生成する立体構造変化を受ける、ペプチドまたはペプチド模倣体であり、
該バリアント配列が、
(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは
(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは
(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような、かつ/あるいは
(D)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとるような、かつ/あるいは
(E)該バリアント配列のβシート構造が、該参照配列のものよりも熱力学的に弱いような、かつ/あるいは
(F)該バリアント配列が、該参照配列よりも増大した安定性および/または減少した反応性を有するような、かつ/あるいは
(G)該バリアント配列が、該参照配列よりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有するような、かつ/あるいは
(H)該バリアント配列が、該参照配列よりもさらなるAβ結合モチーフを有するような、かつ/あるいは
(I)該バリアント配列が、増大した凝集体形成能を有するような、
該参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、ペプチドプローブ。
【請求項2】
N末端、C末端、両末端、または、前記ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項1に記載のペプチドプローブ。
【請求項3】
前記ペプチドプローブが2つ以上の標識で標識されており、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合の該ペプチドプローブ上の2つ以上の標識間の距離が、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合の距離とは異なる、請求項1または2に記載のペプチドプローブ。
【請求項4】
前記ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合に検出可能な標識によって生成される前記シグナルが、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合に生成されるシグナルとは異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項5】
エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項3に記載のペプチドプローブ。
【請求項6】
エキシマーペアで標識されており、かつ、前記ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にエキシマーシグナルを発する、請求項5に記載のペプチドプローブ。
【請求項7】
前記検出可能な標識がピレン成分を含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項8】
FRETペアで標識されており、かつ、前記ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合に蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発する、請求項5に記載のペプチドプローブ。
【請求項9】
前記FRETペアが、DACIA−I/NBD、マリーナブルー/NBD、ダンシル/Trp、およびEDANS/FAMからなる群より選択される、請求項8に記載のペプチドプローブ。
【請求項10】
前記ペプチドプローブがフルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にフルオロフォアシグナルが消光される、請求項5に記載のペプチドプローブ。
【請求項11】
前記フルオロフォア/クエンチャーペアが、ピレン/ダブシル、EDANS/ダブシル、およびFAM/ダブシルからなる群より選択される、請求項10に記載のペプチドプローブ。
【請求項12】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失が、前記参照配列の内部でなされる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項13】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失が、前記参照配列のN末端またはC末端でなされる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項14】
バリアント配列が、C末端におけるリジン残基の付加をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項15】
前記バリアント配列が、酸化に耐性をもつ残基によるメチオニン残基の置換を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項16】
前記メチオニン残基がアラニン残基で置換されている、請求項15に記載のペプチドプローブ。
【請求項17】
前記バリアント配列が、前記参照配列の少なくとも3個の連続した残基のアラニン残基による置換または付加を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項18】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失により、前記バリアント配列内に塩橋が導入される、請求項1〜17のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項19】
前記バリアント配列が、グルタミン酸残基とヒスチジン残基の間、グルタミン酸残基とアルギニン残基の間、およびグルタミン酸残基とリジン残基の間からなる群より選択される残基間の塩橋を含む、請求項18に記載のペプチドプローブ。
【請求項20】
前記1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失により、前記ペプチドプローブ内にAβ結合モチーフが導入される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項21】
前記Aβ結合モチーフがGXXEGを含む、請求項20に記載のペプチドプローブ。
【請求項22】
前記バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、請求項1〜21のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項23】
前記標的タンパク質がAβタンパク質であり、かつ前記バリアント配列が、G29H、G29R、G29K、およびG33Eからなる群より選択される1個以上の置換を含む、請求項22に記載のペプチドプローブ。
【請求項24】
前記バリアント配列のβシート構造が、前記参照配列のβシート構造よりも熱力学的に弱い、請求項22または23に記載のペプチドプローブ。
【請求項25】
前記標的タンパク質がAβタンパク質であり、かつ前記バリアント配列が、I32S、F19S、S26D、H29D、I31D、L34D、およびL34Pからなる群より選択される1個以上の置換を含む、請求項24に記載のペプチドプローブ。
【請求項26】
前記バリアント配列が、前記参照配列よりも増大した親水性および/または水溶液中での溶解度を有する、請求項1〜25のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項27】
前記バリアント配列が、グルタミン酸残基および/またはd−アルギニン残基を導入する、1個以上のアミノ酸の付加または置換を含む、請求項26に記載のペプチドプローブ。
【請求項28】
前記バリアント配列が親水性成分に結合している、請求項26に記載のペプチドプローブ。
【請求項29】
前記親水性成分が可溶性ポリエチレングリコール成分を含む、請求項28に記載のペプチドプローブ。
【請求項30】
検出可能な標識が、前記ペプチドプローブの末端リジン残基の側鎖に結合している、請求項1〜29のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項31】
検出可能な標識が、前記ペプチドプローブの内部リジン残基の側鎖に結合している、請求項1〜30のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項32】
ビオチン成分に結合している、請求項1〜31のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項33】
ペプチドリンカーを介してビオチン成分に結合している、請求項32に記載のペプチドプローブ。
【請求項34】
前記ペプチドリンカーが、可動性リンカー、らせん状リンカー、トロンビン部位リンカー、およびねじれリンカーからなる群より選択される、請求項33に記載のペプチドプローブ。
【請求項35】
前記リンカーが、配列番号:56〜60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項34に記載のペプチドプローブ。
【請求項36】
内部リジン残基の側鎖を介してビオチン成分に結合している、請求項32に記載のペプチドプローブ。
【請求項37】
前記標的タンパク質がAβタンパク質である、請求項1〜36のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項38】
前記バリアント配列が、配列番号:2〜55からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のペプチドプローブ。
【請求項39】
前記バリアント配列が、配列番号:2(ペプチド22)のアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のペプチドプローブ。
【請求項40】
アミロイド形成疾患に関連する立体構造変化を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブであって、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体である、ペプチドプローブ。
【請求項41】
N末端、C末端、両末端、または、前記ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項40に記載のペプチドプローブ。
【請求項42】
エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項41に記載のペプチドプローブ。
【請求項43】
エキシマーペアで標識されており、かつ、標的タンパク質に結合していない場合には増大したエキシマーシグナルを発し、かつ、標的タンパク質に結合している場合には増大した自己シグナルを発する、請求項42に記載のペプチドプローブ。
【請求項44】
前記エキシマーペアが2つのピレン成分を含む、請求項43に記載のペプチドプローブ。
【請求項45】
FRETペアで標識されており、かつ、標的タンパク質に結合していない場合には増大した蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発し、かつ、標的タンパク質に結合している場合には非FRETフルオロフォアシグナルを発する、請求項42に記載のペプチドプローブ。
【請求項46】
フルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ、標的タンパク質に結合していない場合には減少または消光したシグナルを発し、かつ、標的タンパク質に結合している場合にはフルオロフォアシグナルを発する、請求項42に記載のペプチドプローブ。
【請求項47】
前記標的タンパク質がAβタンパク質である、請求項40〜46のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項48】
前記バリアント配列が、配列番号:2〜4、14〜15、および28〜35からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項47に記載のペプチドプローブ。
【請求項49】
前記標的タンパク質が、膵島アミロイドポリペプチド前駆体タンパク質、アミロイドβタンパク質、Aβペプチド、血清アミロイドA、インスリン、アミリン、非アミロイドβ成分、プリオン、ヘモグロビン、免疫グロブリンまたはそのフラグメント、β2−ミクログロブリン、α−シヌクレイン、ロドプシン、α1−アンチキモトリプシン、クリスタリン、タウ、p53、プレセニリン、低密度リポタンパク質受容体、アポリポタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、ニューロフィラメントタンパク質、トランスサイレチン、プロカルシトニンまたはカルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、ゲルゾリン、嚢胞性線維症膜貫通調節因子、ハンチントン病タンパク質、フィブリノゲンα鎖、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、コラーゲン、β−ヘキソサミニダーゼ、およびシスタチンCタンパク質からなる群より選択される、請求項1〜36および40〜46のいずれか一項に記載のペプチドプローブ。
【請求項50】
以下の工程を含む、試験サンプル中の標的タンパク質を検出するための方法であって、該標的タンパク質が、アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示す、方法:
(i)該サンプルを請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドプローブと接触させて、試験混合物を形成する工程;および
(ii)該ペプチドプローブと該サンプル中に存在する任意の標的タンパク質との間の任意の結合を検出する工程。
【請求項51】
前記ペプチドプローブが、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ペプチドプローブが2つ以上の標識で標識されており、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合の該ペプチドプローブ上の2つ以上の標識間の距離が、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合の距離とは異なる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ペプチドプローブが標的タンパク質に結合している場合に検出可能な標識によって生成される前記シグナルが、該ペプチドプローブが標的タンパク質に結合していない場合に生成されるシグナルとは異なる、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記ペプチドプローブが、エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項50〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記ペプチドプローブが、エキシマーペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にエキシマーシグナルを発する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記検出可能な標識がピレン成分を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ペプチドプローブが、FRETペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合に蛍光共鳴移動(FRET)シグナルを発する、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記ペプチドプローブが、フルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ、該ペプチドプローブがβシート立体構造を示す場合にフルオロフォアシグナルが消光される、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
工程(ii)が、標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける前記ペプチドプローブによって生成される任意のシグナルを検出することを含む、請求項50〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
工程(ii)が、前記ペプチドプローブおよび標的タンパク質を含む複合体中に存在する任意の検出可能な標識によって生成される任意のシグナルを検出することによって該複合体を検出することを含む、請求項51〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記複合体が不溶性複合体であり、かつ工程(ii)が、該不溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識によって生成される任意のシグナルを検出することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記複合体が可溶性複合体であり、かつ工程(ii)が、該可溶性複合体中に存在する任意の検出可能な標識によって生成される任意のシグナルを検出することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
工程(ii)の前に、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーから選択される処理によって前記試験混合物から前記複合体を分離する工程をさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
以下の工程を含む、アミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するための方法であって、ペプチドプローブが対象由来の生理学的サンプル中にある、方法:
(A)該サンプルを、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)標的タンパク質に結合したらより規則性の低い立体構造をとる、ペプチドまたはペプチド模倣体であるペプチドプローブと、接触させる工程;ならびに
(B)該プローブと該サンプル中に存在する任意の標的タンパク質との間の任意の会合を検出する工程。
【請求項65】
前記ペプチドプローブが、N末端、C末端、両末端、または、該ペプチドが標的タンパク質に結合したら立体構造変化を受ける場合にシグナルを生成する1つ以上の位置において、検出可能な標識で標識されている、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ペプチドプローブが、エキシマーペア、FRETペア、およびフルオロフォア/クエンチャーペアから選択される検出可能な標識ペアで標識されている、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ペプチドプローブがエキシマーペアで標識されており、かつ工程(ii)が、任意の増大した自己シグナルまたは減少したエキシマーシグナルを検出することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ペプチドプローブがFRETペアで標識されており、かつ工程(ii)が、任意の増大した非FRETフルオロフォアシグナルまたは減少したFRETシグナルを検出することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記ペプチドプローブがフルオロフォア/クエンチャーペアで標識されており、かつ工程(ii)が、任意の増大したフルオロフォアシグナルを検出することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
以下の工程を含む、対象においてアミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するためのインビボ方法:
(A)請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドプローブを該対象に投与する工程であって、該プローブが、該プローブが標的タンパク質に結合した場合にシグナルを生成する検出可能な標識で標識されている工程、および
(B)該シグナルを検出する工程。
【請求項71】
前記シグナルがイメージング技術を用いることによって検出される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記イメージング技術が、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、X線撮影法、断層撮影法、蛍光透視法、核医学、光学的画像法、脳造影法、および超音波検査法からなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
アミロイド形成疾患に罹患しているかその発症リスクを有する対象を処置する方法であって、請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドプローブを該対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項74】
前記プローブが、前記アミロイド形成疾患に対する追加の治療剤に結合している、請求項70〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
アミロイド形成疾患に関連するβシート立体構造を示し得る標的タンパク質に対するペプチドプローブであって、該ペプチドプローブが、(i)該標的タンパク質のβシート形成領域のアミノ酸配列からなる参照配列のバリアントであるアミノ酸配列を含む10〜50個のアミノ酸残基からなり、(ii)ランダムコイル/αヘリックス立体構造およびβシート立体構造の両方をとることができ、かつ(iii)βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したらβシート立体構造をとり;
該バリアント配列が、
(A)該バリアント配列のランダムコイル/αヘリックス立体構造が、該参照アミノ酸配列からなるプローブよりも酸化環境においてより安定であるような、かつ/あるいは
(B)ランダムコイル/αヘリックス立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離が、βシート立体構造における該バリアント配列のN末端とC末端の間の距離とは異なるような、かつ/あるいは
(C)該バリアント配列が、βシート立体構造を示す標的タンパク質に結合したら、該参照配列よりもより効率的にβシート立体構造をとるような
該参照配列に対する1個以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失を含む、ペプチドプローブ。
【請求項76】
アミロイド形成疾患に関連する標的タンパク質を検出するためのインビボ方法における、請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項77】
アミロイド形成疾患に罹患しているかその発症リスクを有する対象を処置する方法における、請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−516452(P2012−516452A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548306(P2011−548306)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022435
【国際公開番号】WO2010/088411
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(507077558)エイディーライフ インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022435
【国際公開番号】WO2010/088411
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(507077558)エイディーライフ インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
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