説明

立体構造経編地

【課題】コース方向において連結糸が連結される編み目の配置間隔を変化させることにより、コース方向における硬さが変化する立体構造経編地を提供する。
【解決手段】表側編地と、裏側編地と、表側編地と裏側編地とを連結している連結糸と、を備え、少なくとも1枚の筬から供給される連結糸が連結される編み目の間隔が、コース方向において同一ではなく変化している立体構造経編地。連結糸が連結される編み目のコース方向における間隔は1つ〜5つ隣である。また、2枚以上の筬から供給される連結糸の各々の材質及び繊度の少なくとも一方が異なっていることが好ましい。更に、連結糸の供給に用いられるは2〜4枚であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体構造経編地に関する。更に詳しくは、本発明は、表側編地と裏側編地とが連結糸によって連結された立体構造経編地であって、コース方向において連結糸が連結される編み目の配置間隔を変化させることにより、コース方向に硬度の異なる部位を有する立体構造経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表側編地と裏側編地との間を連結糸により連結してなる立体構造編地が、クッション材等の表皮材などとして用いられている。このような立体構造編地として、使用部位によって硬度を変えた敷き布団用クッション材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、表裏の地組織を連結糸で連結し、幅方向に所定の幅比率で硬度が異なるように編成され、特定の生地伸度等の物性を有する立体構造経編地が知られている(例えば、特許文献2参照。)。更に、上、下面部の少なくとも一方の外側部の組織を互いに同一のものとし、剛軟度が相異なる部分を一体的に有する編組織を備える立体構造編地が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−339480号公報
【特許文献1】特開2006−283250号公報
【特許文献1】特開2002−20954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、各種の立体構造編地が知られているが、特許文献1に記載された立体構造編地では、表編地及び裏編地の各々の編み目に連結されるそれぞれの連結糸の配置間隔は同じであり、連結糸が連結される編み目と、連結されない編み目とを有する組織にすることで、硬度を変化させており、2種類の硬度しか設定できない。また、特許文献2に記載された立体構造経編地では、連結糸の本数により幅方向の硬度が調整されているが、硬度の変化が幅方向のみであるため、用途によっては、好適な編地ではないことがある。更に、特許文献3に記載された立体構造編地では、連結糸の繊度により硬度が調整されているが、特許文献2の場合と同様に、硬度の変化が幅方向のみであるため、用途によっては、好適な編地ではないこともある。
【0005】
本発明は前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、表側編地と裏側編地とが連結糸によって連結された立体構造経編地であって、コース方向において連結糸が連結される編み目の配置間隔を変化させることにより、コース方向に硬度の異なる部位を有する立体構造経編地を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.表側編地と、裏側編地と、前記表側編地と前記裏側編地とを連結している連結糸と、を備える立体構造経編地であって、
少なくとも1枚の筬から供給される連結糸が連結される編み目の配置間隔が、コース方向において同一ではなく変化していることを特徴とする立体構造経編地。
2.前記連結糸が連結される一の編み目と、前記一の編み目の次に前記連結糸が連結される他の編み目は、コース方向において隣同士の配置関係から5つ隣の配置関係とされている前記1.に記載の立体構造経編地。
3.2枚以上の筬から供給される連結糸の各々の材質及び繊度の少なくとも一方が異なっている前記1.又は2.に記載の立体構造経編地。
4.前記連結糸の供給に用いられる筬が2〜4枚である前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の立体構造経編地。
【発明の効果】
【0007】
本発明の立体構造経編地によれば、コース方向に2種以上の硬度の異なる部位を設定することができ、例えば、コース方向が長さ方向となるようにして車両用シートの表皮材として用いた場合、長さ方向に3種以上の圧縮弾性率の異なる部位を有する座り心地のよいシートとすることができる。
また、連結糸が連結される一の編み目と、一の編み目の次に連結糸が連結される他の編み目が、コース方向において隣同士の配置関係から5つ隣の配置関係とされている場合は、コース方向に硬度の異なる部位を有する立体構造経編地の編成が容易である。
更に、2枚以上の筬から供給される連結糸の各々の材質及び繊度の少なくとも一方が異なっている場合は、硬度の異なる部位をより幅広く設定することができる。
また、連結糸の供給に用いられる筬が2〜4枚である場合は、コース方向に硬度の異なる立体構造経編地を容易に編成することができる。更に、各々の筬から種類の異なる連結糸を供給することにより、硬度の異なる部位をより幅広く設定することができ、車両用シートの表皮材として用いた場合、圧縮弾性率の異なる部位を幅広く設定することができるため、より座り心地のよいシートとすることができる。
尚、立体構造経編地は、コース方向よりウエール方向の伸びが大きいため、本発明の立体構造経編地を、コース方向が長さ方向となるようにして車両用シートの表皮材として用いた場合、皺が発生し難く、仕立て栄えのよいシートとすることができる。一方、ウエール方向に2種以上の硬度の異なる部位が設定された立体構造編地を、ウエール方向が長さ方向となるようにして用いることも考えられるが、シートの幅方向の伸びが小さくなるため、皺が発生し易いシートとなってしまい、好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コース方向に硬度が異なる部位を有する立体構造経編地の模式的な斜視図である。
【図2】1本の連結糸が連結される編み目の配置間隔をコース方向において変化させることにより、コース方向に硬度が異なる部位を有する立体構造経編地となることを説明するための模式図である。
【図3】2枚の筬から供給される連結糸が、表側編地及び裏側編地の全ての編み目に連結された硬度の高い部位を説明するための模式図である。
【図4】2枚の筬から供給される連結糸のうちの一方が表側編地及び裏側編地の全ての編み目に連結され、他方が表側編地及び裏側編地において2つ隣の配置関係となる編み目に連結された中程度の硬度の部位を説明するための模式図である。
【図5】2枚の筬から供給される連結糸が、表側編地及び裏側編地おいて2つ隣の配置関係となる編み目に連結された硬度の低い部位を説明するための模式図である。
【図6】コース方向に硬度の異なる立体構造経編地が、コース方向が長さ方向となるように配設されてなる表皮材を備える車両用シートの一例を斜め方向からみた模式図である。
【図7】コース方向に硬度の異なる立体構造経編地が、コース方向が長さ方向となるように配設されてなる表皮材を備える車両用シートの他例を斜め方向からみた模式図である。
【図8】2枚の筬から供給される連結糸が、表側編地及び裏側編地の全ての編み目に連結された硬度の高い部位(2本の連結糸がともに隣同士の配置関係にある連結糸の密度の高い「密」な部分)に、少し硬度の低い部位[一方の連結糸が隣同士から2つ隣へと配置間隔が変化し、「密」な部分に比べて全体として連結密度の低い「粗」な部分(「密1粗1」の組織)]が連続して形成されてなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図9】「粗」な部分の組織が「密1粗2」となり、「粗」な部分の硬度が図8の場合と比べてより低くなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図10】「粗」な部分の組織が「密1粗3」となり、「粗」な部分の硬度が図9の場合と比べてより低くなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図11】「粗」な部分の組織が「密1粗4」となり、「粗」な部分の硬度が図10の場合と比べてより低くなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図12】「粗」な部分の組織が「密2粗1」となり、「粗」な部分の硬度が図9の場合と比べて少し高くなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図13】「粗」な部分の組織が「密3粗1」となり、「粗」な部分の硬度が図12の場合と比べてより高くなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図14】「粗」な部分の組織が「密1粗1密2粗1」となり、「粗」な部分の硬度をより細かく調整することができる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図15】「粗」な部分の組織が「密3粗1密2粗1」となり、「粗」な部分の硬度をより細かく調整することができるとともに、「粗」な部分の硬度が図14の場合と比べて少し高くなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【図16】「粗」な部分の組織が「密3粗1密4粗1」となり、「粗」な部分の硬度をより細かく調整することができるとともに、「粗」な部分の硬度が図15の場合と比べて少し高くなる立体構造経編地を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図1〜16を参照して詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
本発明の一実施形態の立体構造経編地は、表側編地と、裏側編地と、連結糸と、を備え、少なくとも1枚の筬(給糸装置)から供給される連結糸が連結される編み目の配置間隔が、コース方向において同一ではなく変化している。
また、この立体構造経編地では、全ての編み目に少なくとも1本の連結糸を連結させるとともに、他の連結糸を隣同士の配置関係から2つ〜5つ隣の配置関係へと変化させることにより、コース方向に硬度の異なる部位を形成することもできる。
【0011】
前記「立体構造経編地」(以下、「経編地」ということもある。)は、経編組織を有する編み物である。経編組織を有する編み物は、コース方向に供給される糸でループを形成し、これを順次ウエール方向に連結させることによって得られる編み物であり、ダブルラッセル編機等の編機により編成することができる。
【0012】
前記「表側編地」及び前記「裏側編地」の形成に用いる糸を構成する繊維は、合成繊維、再成繊維、天然繊維等のいずれでもよい。また、糸は1種の繊維のみからなる糸でもよく、複数の繊維を混合して製糸した糸でもよい。更に、繊維のままの色調で着色されていない糸でもよく、所定の色調に着色された糸でもよい。また、表側編地と裏側編地とは、同種の糸により形成されていてもよく、異種の糸により形成されていてもよい。
【0013】
繊維としては、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維などの合成繊維、綿、麻、絹、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リョセル等の再生繊維などが挙げられる。これらのうちでは合成繊維が好ましく、強度が大きく、優れた耐久性等を有するポリエステル系繊維がより好ましい。
【0014】
糸の形態も特に限定されず、フィラメント糸でもよく、紡績糸でもよい。更に、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等の嵩高加工糸などであってもよい。また、フィラメント糸である場合、マルチフィラメントでもモノフィラメントでもよいが、表側編地及び裏側編地を構成する糸は、マルチフィラメントであることが好ましい。
【0015】
表側編地を構成する糸の繊度は特に限定されないが、100〜1500デシテックス、特に150〜1200デシテックスであることが好ましい。繊度が100〜1500デシテックスであれば、経編地の編成が容易であり、優れた座り心地等を有する車両用シートなどとすることができる。また、表側編地の糸密度も特に限定されないが、コース方向の糸密度が5〜40本/inch、特に8〜30本/inch、且つウエール方向の糸密度が5〜40本/inch、特に8〜30本/inchであることが好ましい。このような糸密度であれば、優れた座り心地等を有する車両用シートなどとすることができる。
【0016】
裏側編地を構成する糸の繊度も特に限定されないが、100〜1500デシテックス、特に150〜1200デシテックスであることが好ましい。繊度が100〜1500デシテックスであれば、立体構造経編地の編成が容易であり、優れた座り心地等を有する車両用シートなどとすることができる。また、裏側編地の糸密度も特に限定されないが、コース方向の糸密度が5〜40本/inch、特に8〜30本/inch、且つウエール方向の糸密度が5〜40本/inch、特に8〜30本/inchであることが好ましい。このような糸密度であれば、優れた座り心地等を有する車両用シートなどとすることができる。
【0017】
表側編地と裏側編地とを連結する前記「連結糸」としては、通常、フィラメント糸が用いられる。このフィラメント糸を構成する繊維の種類は特に限定されず、経編地の用途等によって適宜選択して用いることが好ましい。この繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維などの合成繊維、綿、麻、絹、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リョセル等の再生繊維などが挙げられる。これらのうちでは、合成繊維が好ましく、強度が大きく、優れた耐久性等を有するポリエステル系繊維、特にポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート繊維がより好ましい。
【0018】
連結糸として用いるフィラメント糸は、モノフィラメントでもよく、マルチフィラメントでもよいが、モノフィラメントが好ましい。また、連結糸がマルチフィラメントの場合、連結糸は仮撚加工糸等であることが好ましい。仮撚加工糸等であれば、より優れた座り心地等を有する車両用シートなどとすることができる。更に、連結糸がモノフィラメントである場合、全ての連結糸がモノフィラメントであってもよく、編成時に、必要に応じてモノフィラメントを除く他の糸を交編させてもよい。例えば、モノフィラメントにマルチフィラメント仮撚加工糸等を交編させることができる。
【0019】
連結糸の繊度は特に限定されないが、100〜1500デシテックス、特に150〜1200デシテックスであることが好ましい。繊度が100〜1500デシテックスであれば、経編地の作製が容易であり、十分なクッション性等を有し、座り心地のよい車両用シートなどとすることができる。また、連結糸の糸密度も特に限定されないが、5〜40本/inch、特に8〜30本/inch、更に10〜25本/inchであることが好ましい。この糸密度が5〜40本/inch、特に10〜25本/inchであれば、優れた座り心地等を有する車両用シートなどとすることができる。
【0020】
本発明の立体構造経編地では、少なくとも1枚の筬から供給される連結糸が連結される編み目の配置間隔を、コース方向において変化させることにより、コース方向に硬度の異なる部位を形成することができる。連結糸が連結される編み目のコース方向における配置間隔は特に限定されないが、隣同士の配置関係から5つ隣の配置関係とすることができ、間隔が広いほど硬度が低くなり、間隔が狭いほど硬度が高くなる。ここで、5つ隣の配置関係とは、4つ間を置いた配置関係、即ち、連結糸が連結された一の編み目から数えて5つ目の編み目が、次に連結糸が連結される編み目であることを意味する(同様に、2〜4つ隣の配置関係とは、1〜3つ間を置いた配置関係である。)。また、2枚以上の筬から2本以上の連結糸が供給される場合、複数の筬から供給された複数本の連結糸が連結された編み目が連続する部位と、1枚の筬から供給される1本の連結糸のみが連結された編み目と、複数の筬から供給された複数本の連結糸が連結された編み目とが所定の間隔(1つ隣から5つ隣の配置関係)で配置された部位とを形成することにより、コース方向における硬度を変化させることもできる。
尚、連結糸の「本数」は、1枚の筬から供給される連結糸を1本であるとし、1枚の筬から複数本の連結糸が同時に供給される場合も、それらの連結糸は1本であるとする。
【0021】
経編地のコース方向における硬度は、前記のように、少なくとも1枚の筬から供給される連結糸が連結される編み目の配置間隔によって調整することができるが、2枚以上の筬から供給される連結糸の材質、繊度(連結糸の材質及び繊度については前記の記載を参照)等によって、より複雑に変化させることができ、硬度の異なる部位をより容易に、且つより幅広く設定することができる。筬の枚数は特に限定されないが、2〜4枚、特に2〜3枚、更に2枚とすることができ、2枚の筬を用いることにより、経編地のコース方向における硬度を実用的な観点で十分に変化させることができる。
【0022】
コース方向において硬度が異なる経編地としては、図1のような経編地が挙げられる。この図1の経編地は、例えば、連結糸が連結される編み目の配置間隔が狭い部位(符号10aで表される部位)、連結糸が連結される編み目の間隔が中程度である部位(符号10bで表される部位)、及び連結糸が連結される編み目の間隔が広い部位(符号10cで表される部位)を有する。このように、連結糸が連結される編み目の配置間隔が異なる部位をコース方向において変化させることにより、この経編地では、硬度の高低は、符号10aで表される部位>符号10bで表される部位>符号10cで表される部位となる。
【0023】
図1のようなコース方向における硬度の変化は、基本的には、図2のような連結糸の組織の模式図によって説明することができる。図2の経編地では、表側編地1及び裏側編地3の各々の編み目が連結糸2により連結されて編成されており、連結糸が連結された編み目の配置間隔が狭い(隣同士の配置関係)組織(符号aで表される部位)が硬度の高い部位となる。一方、配置間隔が広い(2つ又は3つ隣の配置関係)組織(符号bで表される部位)が硬度の低い部位となり、コース方向に硬度の異なる部位を有する経編地が編成される。
【0024】
図3〜5は、経編地において、コース方向において連結糸が連結される間隔を変化させるための基本的な組織を説明するための図である。図3は図1の符号10aで表される部位に相当し、2枚の筬から供給される連結糸2a、2bが、表側編地及び裏側編地の全ての編み目に連結され、連結糸が連結される編み目の配置間隔が狭く(隣同士の編み目)、硬度の高い部位が編成される。また、図4は図1の符号10bで表される部位に相当し、2枚の筬から供給される連結糸2a、2bのうちの連結糸2aは、表側編地及び裏側編地の各々の全ての編み目に連結され、連結糸2bは、表側編地及び裏側編地のそれぞれの編み目に1つ置き(2つ隣の配置関係)に連結され、符号10aで表される部位と符号10cで表される部位との間の硬度を有する部位が編成される。また、図5は図1の符号10cで表される部位に相当し、2枚の筬から供給される連結糸2a、2bが、表側編地及び裏側編地の各々の編み目に1つ置きに連結され、連結糸が連結される編み目の間隔が広く、硬度の低い部位が編成される。
尚、図3〜5における編み目1aは、表側編地の編み目のうち連結糸2a、2bがともに連結されている編み目、編み目1bは、一方が連結されていない編み目である。また、編み目3aは、裏側編地の編み目のうち連結糸2a、2bがともに連結されている編み目、編み目3bは、一方が連結されていない編み目である。
【0025】
図6は、例えば、図1の本発明の立体構造経編地を、車両用シートの表皮材として用いた場合の一例である。この図6の車両用シートでは、図1の経編地(表皮材)が、そのコース方向がシートの長さ方向となるように配設されるとともに、長さ方向において加わる荷重等に基づいて、硬度の異なる部位が適所に配置されている。このように配置されることにより、皺が発生し難く、座り心地のよい車両用シートとすることができる。
【0026】
更に、図7は、コース方向における連結糸の組織がより複雑に変化している経編地を表皮材として使用することにより、長さ方向における硬度をより複雑に変化させた車両用シートの他例である。この図7の車両用シートに用いた経編地では、繊度が大きい連結糸と繊度が小さい連結糸とを各々の編み目に連続して連結させた連結間隔の狭い(隣同士の配置関係)連結組織からなる部位(符号20aで表される部位)、繊度が大きい連結糸を各々の編み目に連続して連結させるとともに、繊度が小さい連結糸を間隔を置いて連結させた連結間隔の広い(2つ〜5つ隣の配置関係)連結組織からなる部位(符号20bで表される部位)、繊度が小さい連結糸を各々の編み目に連続して連結させるとともに、繊度が大きい連結糸を間隔を置いて連結させた連結組織からなる部位(符号20cで表される部位)、及び繊度が大きい連結糸と繊度が小さい連結糸とを間隔を置いて連結させた連結間隔の広い連結組織からなる部位(符号20dで表される部位)、を有する。
【0027】
前記のように、図7の経編地では、図1の経編地と比べて、それぞれの編み目に連結される連結糸の配置間隔のみでなく、連結糸の繊度も異なっている。そのため、この経編地では、硬度は、符号20aで表される部位>符号20dで表される部位となり、符号20b及び符号20cで表される部位は、各々、符号20aで表される部位と符号20dで表される部位との間の硬度となるが、符号20bで表される部位と符号20cで表される部位とは、連結糸の繊度と、各々の編み目に連結される連結糸の配置間隔によって硬度の高低が定まることになる。この図7の車両用シートでも、経編地のコース方向がシートの長さ方向となるように配設されるとともに、長さ方向において加わる荷重等に基づいて、硬度の異なる部位が適所に配置されている。このように配置することにより、皺が発生し難く、座り心地のよい車両用シートとすることができる。
【0028】
また、図8〜16は、本発明の立体構造経編地において、コース方向における編み目のうち、複数本の連結糸(図では2本の連結糸)が連結される編み目の間隔を幅広く変化させることができることを説明するための図である。これらの図では、2枚の筬から供給される連結糸2a、2bが、表側編地及び裏側編地の全ての編み目に連結され、即ち、連結間隔が狭く(隣同士の配置関係)、硬度の高い編み地が編成される部位[図8〜16では、「密」(この「密」は、表側編地及び裏側編地の全ての編み目に2本の連結糸が連結されているという意味である。)と表記された部位]に続いて、この「密」な部位とは連結糸が連結される編み目の個数が異なり、連結間隔が広くなる部分(2つ〜5つ隣の配置関係)があって、硬度が変化する(全体として硬度が低くなる)部位が編成された経編地が例示されている。
【0029】
図8では、「密」な部位に続いて、相対的に粗な部位(連結間隔が広い部分が多い部位)が、連結糸の組織を「密1粗1」とすることにより編成されている。ここで、「密1粗1」とは、2本の連結糸が連結された編み目1つと、それに続く1本の連結糸が連結された編み目1つとからなる単位が繰り返されるという意味である(以下、密、粗及びそれに付された数字は同様の意味である。)。また、「密」な部位に続く相対的に粗な部位として、図9では、連結糸の組織が「密1粗2」とされ、図10では、連結糸の組織が「密1粗3」とされ、図11では、連結糸の組織が「密1粗4」とされることにより編成されている。これらの経編地では、「密」な部位に続く相対的に粗な部位は、図8の経編地から図11の経編地へと、連結糸の組織がより粗となり、硬度はより低くなる。
【0030】
更に、「密」な部位に続く相対的に粗な部位として、図12では、連結糸の組織が「密2粗1」とされ、図13では、連結糸の組織が「密3粗1」とされることにより編成されている。これらの経編地では、「密」な部位に続く相対的に粗な部位は、図12の経編地から図13の経編地へと、連結糸の組織が少し密となり、硬度は少し高くなる。また、図12、13の経編地では、図8〜11の経編地と比べて、「密」な編み目が多くなり、全体として硬度が少し高い経編地となる。
【0031】
図14〜16では、「密」な部位に続く相対的に粗な部位は、連結糸がより複雑な組織を有している。即ち、図14では、連結糸の組織が「密1粗1密2粗1」とされ、図15では、連結糸の組織が「密3粗1密2粗1」とされ、図16では、連結糸の組織が「密3粗1密4粗1」とされることにより編成されている。これらの経編地では、「密」な部位に続く相対的に粗な部位は、図14の経編地から図16の経編地へと、連結糸の組織が少し密となり、硬度は少し高くなる。更に、図14〜16の経編地では、図8〜11の経編地と比べて、「密」な編み目が多くなり、全体として硬度が少し高い経編地となる。
尚、図8〜16における編み目1aは、表側編地の編み目のうち連結糸2a、2bがともに連結されている編み目、編み目1bは、一方が連結されていない編み目である。また、編み目3aは、裏側編地の編み目のうち連結糸2a、2bがともに連結されている編み目、編み目3bは、一方が連結されていない編み目である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
6枚の筬を装備する9ゲージ/インチ、釜間23mmのダブルラッセル編機(カールマイヤー社製)を使用し、表側編地形成用の筬(L1、L2)から288本の単繊維からなる繊度1000デシテックスのマルチフィラメント[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維仮撚加工糸]を1イン1アウトの配列で供給し、裏側編地形成用の筬(L5、L6)から144本の単繊維からなる繊度500デシテックスのマルチフィラメント(PET繊維仮撚加工糸)を、また、連結構造形成用の筬(L3、L4)から繊度880デシテックスのPETモノフィラメントを、いずれもオールインの配列で供給し、打ち込み13コース/インチで、以下の編組織とすることにより、L3とL4の筬から供給された連結糸の組織が密な部分と、粗な部分とによって、コース方向に硬度の高い部位と、硬度の低い部位とが形成された立体構造経編地を編成した。
【0033】
L1;2322/2122/2322/2122/2322/2111/
1011/1211/1011/1211/1011/2111/
L2;1011/1211/1011/1211/1011/1222/
2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L3;1010/1212/
L4;1212/1010/
L5;1112/1110/
L6;1110/2223/
このような組織を有する編地部分は、例えば、図1の硬度の高い部位(符号10aで表される部位)に相当する。
【0034】
L1;2322/2122/2322/2122/2322/2111/
1011/1211/1011/1211/1011/2111/
L2;1011/1211/1011/1211/1011/1222/
2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L3;1010/1212/
L4;1212/1111/1010/1111/
L5;1112/1110/
L6;1110/2223/
このような組織を有する編地部分は、例えば、図1の中間の硬度を有する部位(10bで表される部位)に相当する。
【0035】
L1;2322/2122/2322/2122/2322/2111/
1011/1211/1011/1211/1011/2111/
L2;1011/1211/1011/1211/1011/1222/
2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L3;1111/1010/1111/1212/
L4;1212/1111/1010/1111
L5;1112/1110/
L6;1110/2223/
このような組織を有する編地部分は、例えば、図1の硬度の低い部位(符号10cで表される部位)に相当する。
【0036】
実施例2
6枚の筬を装備する14ゲージ/インチ、釜間13mmのダブルラッセル編機(カールマイヤー社製)を使用し、表側編地形成用の筬(L1、L2)から96本の単繊維からなる繊度334デシテックスのマルチフィラメント(PET繊維仮撚加工糸)を1イン1アウトの配列で供給し、裏側編地形成用の筬(L5、L6)から48本の単繊維からなる繊度167デシテックスのマルチフィラメント(PET繊維仮撚加工糸)を、また、連結構造形成用の筬(L3、L4)から繊度390デシテックスのPETモノフィラメントを、いずれもオールインの配列で供給し、打ち込み13コース/インチで、実施例1と同じ編組織とすることにより、L3とL4の筬から供給された連結糸の組織が密な部分と、粗な部分とによって、コース方向に硬度の高い部位と、硬度の低い部位とが形成された立体構造経編地を編成した。
【0037】
実施例3
6枚の筬を装備する9ゲージ/インチ、釜間23mmのダブルラッセル編機(実施例1で用いた編機)を使用し、表側編地形成用の筬(L1、L2)から288本の単繊維からなる繊度1000デシテックスのマルチフィラメント(PET繊維仮撚加工糸)を1イン1アウトの配列で供給し、裏側編地形成用の筬(L5、L6)から144本の単繊維からなる繊度500デシテックスのマルチフィラメント(PET繊維仮撚加工糸)を、連結構造形成用の筬(L3)から繊度880デシテックスのPETモノフィラメントを、また、連結構造形成用の筬(L4)から繊度390デシテックスのPETモノフィラメントを、いずれもオールインの配列で供給し、打ち込み13コース/インチで、以下の編組織とすることにより、L3とL4の筬から供給された連結糸の組織が密な部分と、粗な部分とによって、コース方向に硬度の高い部位と、硬度の低い部位とが形成された立体構造経編地を編成した。
【0038】
L1;2322/2122/2322/2122/2322/2111/
1011/1211/1011/1211/1011/2111/
L2;1011/1211/1011/1211/1011/1222/
2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L3;1010/1212/
L4;1212/1010/
L5;1112/1110/
L6;1110/2223/
このような組織を有する編地部分は、例えば、図7の硬度の高い部位(符号20aで表される部位)に相当する。
【0039】
L1;2322/2122/2322/2122/2322/2111/
1011/1211/1011/1211/1011/2111/
L2;1011/1211/1011/1211/1011/1222/
2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L3;1010/1212/
L4;1212/1111/1010/1111/
L5;1112/1110/
L6;1110/2223/
このような組織を有する編地部分は、例えば、図7の、符号20aで表される部位と符号20dで表される部位との間の硬度を有する部位(符号20bで表される部位)に相当する。
【0040】
L1;2322/2122/2322/2122/2322/2111/
1011/1211/1011/1211/1011/2111/
L2;1011/1211/1011/1211/1011/1222/
2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L3;1212/1111/1010/1111/
L4;1010/1212/
L5;1112/1110/
L6;1110/2223/
このような組織を有する編地部分も、例えば、図7の、符号20aで表される部位と符号20dで表される部位との間の硬度を有する部位(符号20cで表される部位)に相当する。
【0041】
L1;2322/2122/2322/2122/2322/2111/
1011/1211/1011/1211/1011/2111/
L2;1011/1211/1011/1211/1011/1222/
2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L3;1111/1010/1111/1212/
L4;1212/1111/1010/1111
L5;1112/1110/
L6;1110/2223/
このような組織を有する編地部分は、例えば、図7の硬度の低い部位(符号20dで表される部位)に相当する。
【0042】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、各種の用途に用いられる立体構造経編地の技術分野において利用することができる。この立体構造経編地の用途としては、例えば、車両用シート、事務用椅子、肘掛け椅子、安楽椅子、カウチ、パイプ椅子、ストール等の少なくとも座面を有する各種の椅子の表皮材が挙げられ、本発明の立体構造経編地は、特に乗用車などの車両用シート等の用途において有用である。
【符号の説明】
【0044】
100;立体構造経編地、1;表側編地、2;連結糸、3;裏側編地、1a;表側編地の編み目のうち連結糸2a、2bがともに連結されている編み目、1b;一方が連結されていない編み目、2a、2b;連結糸、3a;裏側編地の編み目のうち連結糸2a、2bがともに連結されている編み目、3b;一方が連結されていない編み目、200;車両用シート、10a〜10c、20a〜20d;コース方向における連結糸の組織が異なり、硬度が異なる部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側編地と、
裏側編地と、
前記表側編地と前記裏側編地とを連結している連結糸と、を備える立体構造経編地であって、
少なくとも1枚の筬から供給される連結糸が連結される編み目の配置間隔が、コース方向において同一ではなく変化していることを特徴とする立体構造経編地。
【請求項2】
前記連結糸が連結される一の編み目と、前記一の編み目の次に前記連結糸が連結される他の編み目は、コース方向において隣同士の配置関係から5つ隣の配置関係とされている請求項1に記載の立体構造経編地。
【請求項3】
2枚以上の筬から供給される連結糸の各々の材質及び繊度の少なくとも一方が異なっている請求項1又は2に記載の立体構造経編地。
【請求項4】
前記連結糸の供給に用いられる筬が2〜4枚である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の立体構造経編地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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