説明

立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルム

【課題】自動車等の曲面に貼付可能な柔軟性を有し、屋外やガソリン雰囲気での長期間の使用においても傷つきにくく、外観変化が少ない、金属調光輝性を有する立体的形状を持った樹脂装飾片を、高周波融着により容易に製造可能な積層体を提供すること。
【解決手段】フッ素系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する樹脂表面層、塩化ビニル系樹脂及び/またはポリエステル系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する透明樹脂層、該透明樹脂層の裏面に蒸着により形成された金属層を有する積層体により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、オートバイ、モーターボート等の車両や構造物の外面に貼り付ける立体樹脂装飾片製造用の積層樹脂フィルムおよび、該積層フィルムによって成形された立体樹脂装飾片に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から基材表面の装飾性(意匠性)を高める方法として、着色マーキングフィルムを被着して基材表面を保護する方法が広く行なわれている。マーキングフィルムは、基材表面を均一にムラなく容易に被覆することが可能であり、貼り付け作業に際しては、塗料の場合に問題となるような溶剤の揮散もないため、広範囲の分野において使用されている。
【0003】
種々の基材においては、前記マーキングフィルムは広く使用されているが、既存の表示の上に別な表示(ロゴマークや型番表示、注意表示等)をさらに追加する必要がある場合等には、着色フィルムを上貼りし、既存の表示を損なうことなく被着された基体の表面に新たな文字やマーク等を容易に加えることができるため、多様な表示が求められる分野において、効果的で経済的な装飾方法として、マーキングフィルムを重ね貼りすることが、広くおこなわれている。
【0004】
マーキングフィルムは、一般に軟質フィルムと接着剤とを積層した構造のフィルムが用いられるが、該軟質フィルム用の樹脂として、従来から塩化ビニル系樹脂が広く用いられているが、最近ではポリプロピレン系樹脂等の非塩化ビニル系樹脂も使用されるようになってきた。
【0005】
自動車・オートバイ等の2輪車、家電製品などにおいては、ロゴマーク等を光輝性のある表示にして、製品の高級感を高め、外装で他の部分と違う色を用いて意匠性にアクセントをつける場合等で広く行なわれているところであり、たとえば、特許文献1(特開平03−810562号)には金属様外観のマークを形成することが可能なマーキングフィルムが開示されている。
【0006】
一方、高級感と意匠性をさらに高めるため、従来から高グレード機械、高級車等に、金属性装飾片あるいは硬質プラスチック成形品に金属メッキした厚みのある装飾片(立体エンブレム)が取り付けられているものが多い。これらのエンブレムは、その機種・車種の高機能を象徴し、出所表示機能をも有する重要な装飾部品となっている。
【0007】
このような金属性エンブレムは屋外における耐久性や外観には優れるものの、自動車やオートバイ等の3次元曲面に追随して接着剤等で取り付けるためには、外観を変化させずに曲率の大きな曲面に追随した形への加工が非常に困難であり、限られた部位にしか取り付けられないものであった。
また、型式毎に成形型を変えて個々に成形しなければならず、費用・手間のかかるものとなっていた。
【0008】
さらに自動車等の側面に使用され、曲面貼りされた状態で異物とぶつかったり、こすられ易い部位に使用された場合は、剥がれてしまったり、他者を傷つけてしまったりする不都合が発生した。
【0009】
そこで、軟質で金属蒸着による光輝性を有する熱可塑性合成樹脂シートを用いて、高周波誘電加熱法によって立体エンブレムを製造することが行なわれている。(特許文献2:特開平08−230394)。特許文献2に開示された熱可塑性合成樹脂シートは、蒸着金属皮膜を設けた透明ポリウレタンフィルム/塩化ビニル樹脂バックアップ層/接着剤層/キャリアフィルム/離型紙を含む積層フィルムであって、高周波誘電加熱成形により、模様の外輪郭線に沿って溶断、溶着され所望の形状の装飾片をキャリアフィルム上に形成することができる。
【0010】
特許文献2によって開示された装飾片はポリウレタンフィルム等の柔軟な樹脂で形成されているため、基体の曲面に追随できる立体エンブレムを得ることができるものの、自動車、2輪車等の表面に貼られて使用された場合、柔軟であるがゆえに表面が傷つき易く外観が損なわれたり、長期間の使用で汚れが落ちにくくなる不都合があった。また、長期間のガソリン雰囲気での使用により、ポリウレタンフィルムが層間剥離したり、変色・変質することがあって、金属エンブレムの代わりに二輪車・自動車用途で使用するには、耐候性・耐薬品性の面で十分なものではなかった。
【特許文献1】特開平3−810562号 公報
【特許文献2】特開平8−23084号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、自動車等の曲面に貼付可能な柔軟性を有し、屋外やガソリン雰囲気での長期間の使用においても傷つきにくく、外観変化が少ない、金属調光輝性を有する立体的形状を持った樹脂装飾片を、高周波融着により容易に製造可能な積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであって、フッ素系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する樹脂表面層、蒸着により形成された金属層を有する高周波誘電加熱成形可能な立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルムを提供するものであり、
【0013】
さらには、フッ素系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する樹脂表面層、塩化ビニル系樹脂及び/またはポリエステル系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する透明樹脂層、該透明樹脂層の裏面に蒸着により形成された金属層、を有する高周波誘電加熱成形可能な立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成により、本発明の積層フィルムは、曲面に貼付可能な柔軟性を有し、かつ自動車等の表面に貼り付け屋外・ガソリン雰囲気等での長期間の使用においても劣化や外観変化が少ない金属調の光輝性を有する立体的形状を持つという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明をさらに説明する。
本発明の立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルムは、フッ素系樹脂からなり、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上の全光線透過率を有する樹脂表面層を有する。該樹脂表面層は、立体的形状に成形することができる成形性を保持しかつ、成形された立体樹脂装飾片の耐候性や耐擦傷性に寄与するものである。
【0016】
本発明の「フッ素系樹脂」とは樹脂構造式中にフッ素を含有する樹脂であればいずれの樹脂でも良く、そのフッ素含有量は特に制限されるものではないが、一般的には30重量%以上、好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0017】
そのような含フッ素系樹脂としては、例えばエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体(ECTFE)、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(FET)、パーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン及び/又はモノクロロトリフルオロエチレン−ヒドロキシアルキルビニルエーテル−アルキルビニルエーテル系共重合体等が挙げられ、本発明ではこれらのいずれでも使用可能であるが、中でも、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体(ECTFE)、が好ましく、特にエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)が好適に使用される。
【0018】
耐候性や耐汚染性を考慮すると表面層樹脂としては、フッ素系樹脂を使用することがより好ましい。特に二輪車、自動車用エンブレムとして使用される場合には、耐ガソリン性、耐塩水性に優れかつ外観や加工性も所望の性能を有する ETFE 樹脂表面層が特に好ましく使用される。
【0019】
フッ素樹脂表面層は、高周波ウェルダー時の彫金刃(トムソン刃)とフッ素樹脂表面層との離れの良否が溶着・溶断の良否を決める点から、静止摩擦係数値が0.4以下、好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.06以下であるのがよい。静止摩擦係数が0.4より大きいと溶着・溶断面の悪くなり、不要部のカス取り性(除去性)が悪くなる。
【0020】
なお 樹脂表面層の静止摩擦係数はJIS K7215の方法で測定することができる。
【0021】
また本発明のフッ素樹脂積層フィルムの樹脂表面層は、誘電率2.0ε〜2.7ε、好ましくは2.1ε〜2.6εであるのがよい。誘電率が2.7ε以上であると高周波誘電加熱で溶融不足となり、積層シートの各層間密着が悪くなる。2.0ε以下では高周波誘電加熱で溶融過剰となり、フィルム表面が溶けたり、シワが入る等の外観不良となる。
【0022】
本発明の立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルムは、さらに塩化ビニル系樹脂またはポリエステル系樹脂からなり、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上の全光線透過率を有する透明樹脂層を有する態様も用いられる。特に表面樹脂層にフッ素系樹脂を使用する場合には、蒸着層を均一かつ緻密に設けるために、透明樹脂層を介在させるのがよい。
【0023】
本発明の透明樹脂層に使用される塩化ビニル系樹脂は塩化ビニル系樹脂のなかでも、前述した 半硬質塩化ビニル樹脂のように紫外線吸収剤・熱安定剤などが添加された塩化ビニル系樹脂が好適に使用される。また、用途によっては、透明樹脂層の表面にスクリーン印刷等で印刷し、立体樹脂装飾片の意匠性をさらに高めることができる。
【0024】
透明樹脂層はまた 紫外線吸収剤・熱安定剤などが添加されたポリエステル樹脂からなる樹脂層であってもよい。使用可能なポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が使用できるが、高周波誘電加熱性が良い(溶着・溶断が早く、ショートが起き難い)点からPETが好ましい。
【0025】
前記各層は接着剤層を介した接着または熱融着によって積層されるが、加工性やエッジ形状から接着剤層による接着がより好ましい。接着剤層を介した接着の場合、 接着剤層は透明性、接着性等を考慮して適宜選択されるが、二液タイプの接着剤、感圧タイプの粘着剤、感熱タイプの粘着剤または接着剤等を挙げることができ、その中でも、作業性、エ−ジング時間の有無などを考え合わせると、感圧タイプの接着剤が好ましく、耐候性、透明性及び耐黄変性等の点からアクリル系樹脂が好ましい。
【0026】
上記アクリル系樹脂における単量体の主成分は、アルキル基の炭素数が4〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。炭素数が4〜14の範囲を逸脱すると樹脂層が硬くなって柔軟性に劣る虞がある。また、上記アクリル系共重合体における単量体の主成分は、50モル%以上含有されていることが好ましい。その割合が50モル%未満になると上記アクリル系樹脂が硬くなって柔軟性に劣る虞がある。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、2-メチルペンチル(メタ)アクリレ−ト、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ラウリル(メタ)アクリレ−ト等があげることができる。
【0028】
また、上記アクリル系樹脂と共重合する他成分の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等を挙げることができる。
【0029】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万〜100 万、より好ましくは40万〜80万である。斯る分子量は、重合開始剤の量によって、または連鎖移動剤を添加することによって調整することができる。
【0030】
接着剤層は光透過性である必要があり、硬化後の全光線透過率が30%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上であるのがよい。
【0031】
金属様の外観を長期間保つためには、促進耐候性試験後の表面層あるいは透明樹脂層に貼り合わされた接着剤層の色差が3.0以下であることが好ましい。経時的な変色(色差の増大)を防止するために、必要に応じて接着剤層に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を添加する。
【0032】
本発明の立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルムは、樹脂表面層または透明樹脂層の裏面に、金属層が蒸着される。該蒸着金属層の厚さは50〜2000Å、好ましくは100〜1000Å、さらに好ましくは300〜600Åの範囲内とすることができる。
該金属層は、原料金属気体をプラズマ状態にして化学的に非常に活性である励起分子原子イオンラジカルを作り出し化学反応を促進させて基板上に薄膜を作成するプラズマ法を用いて形成することも可能だが、一般には、既知の金属蒸着法で形成することができる。
【0033】
金属層を形成する金属の種類には特に制約はなく立体装飾片の色調などの用途に応じて選ぶことができ、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニツケル、クロム、マグネシウム、亜鉛等或いはこれら金属の2種以上からなる合金等を例示することができる。中でも、作業性、形成の容易さ、耐久性等の観点から、アルミニウム、クロム、ニツケル等が好適であり、高周波ウェルダー加工性(溶着・溶断が早く、ショートが起き難い)の点でアルミニウムが特に好適である。
【0034】
樹脂層の蒸着面は必要に応じて、蒸着層の付着性を向上させるために公知のプライマー樹脂を塗布しても良い。このようなプライマー樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が使用可能であり、付着性及びコーティング性が良い点からウレタン系樹脂が特に好ましい。
【0035】
より厚みのある立体的形状を有する立体装飾片を製造するために、本件発明積層フィルムには、前記樹脂表面層、透明樹脂層に加えて積層シートに適当な厚みを与える支持層が積層されることが好ましい。支持層としては立体的形状を形成し易い発泡樹脂層が積層されてもよい。発泡樹脂層は不透明であるため、積層シート中で金属層より下側に積層される。さらに必要に応じ、支持体層の下に、装飾片を基材に接着するための接着剤層を設けることができる。
【0036】
発泡樹脂層としては、その柔軟性、高周波成形性、他層との溶着性等を満たす塩化ビニル系樹脂の発泡樹脂層が好適に用いられる。立体エンブレムとして、金属板様の高級感あるエンブレムを製造するためには、樹脂発泡層の厚さは300μm以上1mm以下であることが好ましい。厚さ1mm以下であれば、高周波溶着によって耐久性のある溶着成形が可能となる。
【0037】
本件の積層シートを高周波誘電加熱機の電極板上で加熱しつつ、彫金刃あるいはトムソン刃等の切断刃を用いて所望の形状に溶断と同時に溶着することによって、立体的な装飾片を製造することができる。
【0038】
前記の方法によって製造される立体樹脂装飾片のエッジ曲率は積層シートの構造および溶断・溶着の条件、装置によって任意に調製可能である。
【0039】
以下に実施例により、本発明の効果をさらに詳しく説明する。
表1に示す積層シートをそれぞれ作成し評価した結果を表2に示す。なおシートの特性・性能は、以下の測定方法により測定・評価した。
【0040】
試験片の調製
耐候性、耐塩水性(防汚性)、耐ガソリン性の試験片の調製は、アクリルメラミン焼付白塗装板(日本テストパネル社製)に実施例等で作製された立体樹脂装飾片を貼付後、23℃で24時間経過したものを試験片とした。その他の試験は、作製された立体樹脂装飾片を試験片として評価を行なった。
【0041】
層間密着性
JISK5400(塗料一般試験法)に記載の方法により、以下の基準によって評価した。
○ :層間密着不良によって発生する浮き、剥れ、シワ等が全く無い。
△ :層間密着不良によって発生する浮き、剥れ、シワ等が一部にある。
× :層間密着不良によって発生する浮き、剥れ、シワ等がある。
【0042】
エッジ
目視により、高周波溶着・溶断された端面の形状と状態を以下の基準によって評価した。
○:高周波溶圧着・溶断された端面の各層間が一体層に見える。
△:高周波溶圧着・溶断された端面の各層間が判り難い。
×:高周波溶圧着・溶断された端面の各層間が判る。
【0043】
透明性
透明樹脂層及び蒸着層に高周波溶圧着時の加熱による発泡で透明性が低下してないか、目視により、以下の基準によって評価した。
○:発泡による透明性の低下が無い。
△:一部に発泡があり透明性も若干低下している。
×:発泡があり透明性も低下している。
【0044】
表面性
目視により、試験片の表面層、透明樹脂層及び蒸着層に高周波溶圧着時に加熱によるシワと溶圧着跡がないか以下の基準によって評価した。
○:シワと溶圧着跡がない。
△:一部にシワと溶圧着跡がある。
×:シワと溶圧着跡が多い。
【0045】
意匠性(印刷性)
試験片の透明樹脂層上に、スクリーン印刷(インキ:日本カーバイド工業製 Hi−S SP INK)し、目視により、インキのハジキ、滲み等の印刷不良がないか以下の基準によって評価した。
○:ハジキ、滲み等の印刷不良がない。
△:一部にハジキ、滲み等の印刷不良がある。
×:ハジキ、滲み等の印刷不良が多い。
【0046】
加工性(型抜き性)
積層体を高周波溶圧着・溶断して立体樹脂装飾片を成形した後、目視により、溶断された端面の状態観察(めくれ、剥れ)と不要部のカス取り性の評価を以下の基準によって評価した。
○:端面にめくれ、剥れが無く、カス取り性が良好。
△:一部の端面にめくれ、剥れがあり、一部にカス取り性の悪いところがある。
×:端面にめくれ、剥れがあり、カス取り性が不良。
【0047】
耐候性
JISD205(自動車部品の耐候性試験法)に基づいて、以下の基準により評価した。
◎:サンシャインウェザオメーター 2000時間で外観変化なし。
○:サンシャインウェザオメーター 1000時間で外観変化なし。
△:サンシャインウェザオメーター 400時間で外観変化なし。
×:サンシャインウェザオメーター 400時間で外観変化あり。
【0048】
傷付性
JISL0803(染色堅牢度試験法)に基づいて以下の基準により評価した
○:試験後の表面に傷が認められない。
△:試験後の表面の一部に傷が認められる。
×:試験後の表面に傷が多く認められる。
【0049】
耐塩水性(防汚性)
JISZ2371(塩水噴霧試験法)に基づいて以下の基準により評価した
○:試験後の表面に塩水の跡が認められない。
△:試験後の表面の一部に塩水の跡が認められる。
×:試験後の表面に塩水の跡が多く認められる。
【0050】
耐ガソリン性
試験片を、ガソリン(JIS K2202 自動車用ガソリン1号)に23℃で1時間浸漬、23℃で1時間放置した後、未使用のガーゼで拭き取り、更に23℃で1時間放置後に外観異常の有無を目視で試験し以下の基準により評価した。
○:外観異常が認められない。
△:外観異常が一部に認められる。
×:外観異常が認められる。
【0051】
実施例1
エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)シート(日本カーバイド工業製、ハイエスカル EF40801 0.08mm厚 全光線透過率 94%)を表面層とし、蒸着された透明樹脂層として、アルミ蒸着された塩化ビニル製シート(日本カーバイド工業製、ハイエスカル メタルフェース 70−100 0.08mm厚 フィルムの全光線透過率 90%)を貼り合わせた。
さらに、蒸着された透明樹脂層の下に、支持層として、エンブレム用軟質塩化ビニル製シート(菱興プラスチック製XT−102 1.0mm厚(接着剤:日本カーバイド工業製 アクリル系接着剤PE−121 0.03mm厚付き)を貼り合わせ、接着剤付積層体を作製した。
尚表面層−透明樹脂層間、透明樹脂層−支持層間の接着剤は、日本カーバイド工業製 アクリル系接着剤 PE−121を使用した。
高周波ウェルダー同時溶断機(イズミカンコ製 IZH−07−20TS)の金型台に、上記の積層シートを載置し、周波数:40.46MHz、発振時間:3.0秒、電流値:0.45A、予備ヒーター温度:80℃、圧着圧:200kg/cm2で加熱、押圧、溶断した後、2秒間冷却して立体樹脂装飾片を成形した。
作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、加熱溶圧着・溶断された端面(エッジ)の形状は各層間が一体となって判らなく、端面にめくれ、剥れが無く不要部のカス取り性も良好であった。及び表面に加熱溶圧着時の発泡が無く透明性が良く、シワ・圧着跡が無く、層間密着性も良好であり、耐候性・耐傷付性・耐塩水性(防汚性)・耐ガソリン性が良好なことが試験で確認された。
【0052】
実施例2
実施例1で 表面層としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)接着シート(日本カーバイド工業製、ハイエスカル EF41820 0.08mm厚 全光線透過率 90%)を貼り合わせた以外は実施例1と同様にして積層体および立体樹脂装飾片を作製した。作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、加熱溶圧着・溶断された端面(エッジ)にめくれ、剥れが無く不要部のカス取り性も良好であった。及び表面に加熱溶圧着時の発泡が無く透明性が良く、シワ・圧着跡が無く、耐候性・耐傷付性・耐塩水性(防汚性)・耐ガソリン性が良好なことが試験で確認された。
【0053】
実施例3
実施例1で支持層としてPVCフォーム (大和化成製 オスターホワイト0.65mm厚)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体および立体樹脂装飾片を作製した。作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、加熱溶圧着・溶断された端面(エッジ)にめくれ、剥れが無く不要部のカス取り性も良好であった。及び表面に加熱溶圧着時の発泡が無く透明性が良く、シワ・圧着跡が無く、耐候性・耐傷付性・耐塩水性(防汚性)・耐ガソリン性が良好なことが試験で確認された。
【0054】
実施例4
エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)シート(日本カーバイド工業製、ハイエスカル EF40801 0.08mm厚 全光線透過率 94%)を表面層とし、蒸着された透明樹脂層として、透明塩化ビニル製シート(菱興プラスチック製XT−102 1.0mm厚 全光線透過率 95%)とアルミ蒸着されたPETシート(恩希愛化工製PM−152 0.08mm厚 フィルムの全光線透過率 90%)との積層体を接着剤で貼り合わせた。さらに、蒸着された透明樹脂層の下に、接着剤(日本カーバイド工業製 アクリル系接着剤PE−121 0.03mm厚)を設け、接着剤付積層体を作製した。
尚表面層−透明樹脂層間、透明樹脂層−支持層間の接着剤は、日本カーバイド工業製 アクリル系接着剤 PE−121を使用した。
作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、加熱溶圧着・溶断された端面(エッジ)の形状は各層間が一体となって判らなく、端面にめくれ、剥れが無く不要部のカス取り性も良好であった。及び表面に加熱溶圧着時の発泡が無く透明性が良く、シワ・圧着跡が無く、層間密着性も良好であり、耐候性・耐傷付性・耐塩水性(防汚性)・耐ガソリン性が良好なことが試験で確認された。
【0055】
比較例1
実施例1で 表面層を設けない以外はは実施例1と同様にして積層体および立体樹脂装飾片を作製した。作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、外観や耐久性において不十分なものであった。
【0056】
比較例2
表面層を設けず、蒸着された透明樹脂層として、透明塩化ビニル製シート(菱興プラスチック製XT−102 1.0mm厚 全光線透過率 95%)とアルミ蒸着されたPETシート(恩希愛化工製PM−152 0.08mm厚 フィルムの全光線透過率 90%)との積層体を、接着剤(日本カーバイド工業製 アクリル系接着剤PE−121 0.03mm厚)で接着し、さらに、蒸着された透明樹脂層の下に接着剤(日本カーバイド工業製 アクリル系接着剤PE−121 0.03mm厚)を塗布して、接着剤付積層体を作製した。作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、外観や耐久性において不十分なものであった。
【0057】
比較例3
市販のポリウレタン樹脂表面層を有する立体樹脂装飾片成形用シート、「プラストコーポレーション社製 270SX」を用い同様の試験を行ったところ。作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、耐久性(特に傷付性)において不十分なものであった。
【0058】
比較例4
市販のポリウレタン樹脂表面層を有し、塩化ビニル樹脂を透明樹脂層として有する立体樹脂装飾片成形用シート、「槌屋製 ハイボスカル」を用い同様の試験を行ったところ。作製された立体樹脂装飾片は、表2に示すように、耐久性(特に傷付性)において不十分なものであった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する樹脂表面層、蒸着により形成された金属層を有する高周波誘電加熱成形可能な立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルム。
【請求項2】
フッ素系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する樹脂表面層、塩化ビニル系樹脂及び/またはポリエステル系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する透明樹脂層、該透明樹脂層の裏面に蒸着により形成された金属層、を有する高周波誘電加熱成形可能な立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルム。
【請求項3】
フッ素系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する樹脂表面層、塩化ビニル系樹脂及び/またはポリエステル系樹脂からなり、少なくとも70%以上の全光線透過率を有する透明樹脂層、該透明樹脂層の裏面に蒸着により形成された金属層、および、該透明樹脂層または金属層に粘着剤層を介して積層された塩化ビニル系樹脂発泡層を有する高周波誘電加熱成形可能な立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルム。
【請求項4】
樹脂表面層樹脂の静摩擦係数値が0.1以下である請求項1〜請求項3いずれかに記載の立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルム。
【請求項5】
樹脂表面層樹脂が誘電率2.0ε〜2.7εであるフッ素系樹脂である請求項1〜請求項4いずれかに記載の立体樹脂装飾片用樹脂層フィルム。
【請求項6】
粘着剤層の促進耐候性試験後の色差が3.0以下である請求項2〜請求項5いずれかに記載の立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルム。
【請求項7】
請求項1から6記載の立体樹脂装飾片用樹脂積層フィルムより型抜きと同時に高周波誘電加熱成形して得られる立体樹脂装飾片。



【公開番号】特開2006−187968(P2006−187968A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2156(P2005−2156)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】